( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

7: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:05:31.35 ID:qL8ulUZH0
活動グループ別現状一覧

( ´∀`) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ
所属:不滅世界&魔法世界
位置:都市ニューソク
状況:押しかけシュー房

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` ) [゚д゚]
(#゚;;-゚) (`・ω・´) <_プー゚)フ ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚)
所属:不滅世界&機械世界&英雄世界
位置:ロシア・古城
状況:潜伏中



9: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:07:55.23 ID:qL8ulUZH0
第二十八話 『奇妙な客人』

結局のところ、あの山から降りるのは大変な苦労があった。
疲労困憊で帰り着いたのは、既に朝日が差し込むような時間帯だった。
モナーの家に入ってすぐ、泥のように眠ったのは言うまでもない。

彼女の目が覚めたのは、翌日の昼時だった。

(;´∀`)「う、うーん……もう山はこりごりモナ……Zzz……」

lw´‐ _‐ノv「…………」

ありきたりな寝言を言うモナーを余所に、シューはゆっくりと上半身を起こした。

鍛えられてはいるが、流石に一晩中山の中を歩き続ければ疲労もする。
とはいえ他人の前で簡単に寝てしまった不注意さを恨み、シューは自分の頭を軽く叩いた。

そしてその目で、モナーの隣で眠るミツキの顔を見る。

ハ(リメ -ノリ「――――」

出血は酷かったようだが、何とか持ち直しつつあるようだった。



12: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:10:17.58 ID:qL8ulUZH0
いつの間にか掛かっていた毛布をどけ、起き上がる。

まだ完全に覚めていない脳を動かしつつも、洗面台へと移動し
乱れている髪を適当に直すと、小さく腹が鳴ったことに気付いた。

lw´‐ _‐ノv「…………」

その足で台所へ。
何か食べるものはないかと、勝手に冷蔵庫を開けたりしていると

lw´‐ _‐ノv「!」

足元に転がるそれを見て、シューは軽く目を見開いた。

手に取り、そして自分の望んだものだと確認。
ただ、その嬉しさは表情に表れていない。

しかし、もしも彼女に犬の尻尾があったとすれば、おそらく盛大に振られていたことだろう。

微かに軽い足取りで、シューはそれを手にリビングへと戻っていった。



14: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:12:40.76 ID:qL8ulUZH0
音がする。
硬質なモノを砕く音だ。

しかし危険は感じない。
むしろ心地良ささえも感じさせる、軽快な音だった。

( ´∀`)「……?」

それを聞いて、モナーは片目を開ける。
普段から一人暮らしだったので、自分以外の鳴らす音には敏感なのだ。

( ´∀`)「誰か、いるモナ?」

ボーッとする頭で呟き、そして起き上がる。
音の主はすぐ近くにいた。

lw´‐ _‐ノv「起きたか……この御寝坊さんっ☆」

(;´∀`)「……は?」

シューだ。
シューだと、思う。
放たれた言葉を除けば、シューだと思うことが出来る。

彼女はテーブルの前に座り、起きたばかりのモナーを見ていた。
その表情は無であるものの、どこか幸せそうなオーラを放っている。



15: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:14:38.71 ID:qL8ulUZH0
(;´∀`)「えーっと……んー……?」

動き始めた脳から、昨夜の記憶が蘇ってくる。

山の中。
青い機体。
気絶した男。
エマ。

(;´∀`)「モナナッ!」

思い出した。
そして目の前にいるシューを見て、その存在があることに納得する。
と、そこでようやく、彼女が何をしているのかに気付いた。

(;´∀`)「……何してるモナ?」

lw´‐ _‐ノv「美味しい(ポリポリ)」

(;´∀`)「それ、お米モナよ?」

lw´‐ _‐ノv「とても美味しい(カリカリ)」

(;´∀`)「しかも生?」

lw´‐ _‐ノv「止められない止まらない(ポリポリ)」

米の入った袋を膝の上に抱き、数粒とり出しては口の中に放り込んでいるシュー。
問答の途中でも手が止まらないのは、相当に好きだからなのだろうか。



19: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:16:50.76 ID:qL8ulUZH0
lw´‐ _‐ノv「久しぶり(ポリポリ)」

(;´∀`)「え? 米が?」

lw´‐ _‐ノv「うん(カリカリ)」

( ´∀`)「……お米なんて、何処でも手に入りそうなものモナ。
     もしくはとんでもない地に住んでたんですかモナ、海底とか宇宙とか」

lw´‐ _‐ノv「私のいた世界にはなかった(ポリポリ)」

(:´∀`)「世界?」

lw´‐ _‐ノv「うん(ガリガリ)」

( ´∀`)「……kwsk」

lw´‐ _‐ノv「モナーを巻き込みたくない(ポリカリ)」

じゃあ言うなよ、という無粋な突っ込みはしなかった。
昨夜からの疑問が色々と解消しそうで、むしろ食って掛かる。
自分の力では何も出来ないような問題かもしれないが、概要くらいは知りたいものだ。

( ´∀`)「ちょっとで良いから教えて欲しいなぁー」

lw´‐ _‐ノv「駄目(ポカリ)」



20: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:19:04.70 ID:qL8ulUZH0
( ´∀`)「もっと美味しい米、買ってきてあげようモナ?」

lw´‐ _‐ノv「!(ポリポリカリポリカリポリポリカリポリポリカリポリポポポポポ)」

今、速度が上がった。
しかも物凄く。
やはり女性は物で釣るのが早いらしい。

(*´∀`)「どうしようかなぁー」

lw´‐ _‐ノv「…………(ガサゴソ)」

目を微かに輝かせていたシューの手が止まる。
どうやら米が無くなってしまったようだ。

lw´‐ _‐ノv「…………」

(;´∀`)「そ、そんな恨めしそうな目でこっちを見ないでほしいモナ!
     速度が劇的に上がったのは僕のせいじゃないモナ!」

lw#´‐ _‐ノv「…………」

(;´∀`)「解りましたモナ! すぐ買ってきますモナ!
     だからそんな小動物みたいなつぶらな瞳でこっち見ちゃらめぇぇぇぇぇ!」

女は釣られ易いが、逆に問答無用な部分もある。
昨日と今日の二日間で、モナーは女という動物を身に染みて理解することとなった。



24: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:22:03.58 ID:qL8ulUZH0
それから三十分後。

スーパーで比較的高値の米を買い、モナーは帰り道を歩いていた。
ついでに日用品や食料も入手したので、その両手に大きな買い物袋をぶら下げている。

そして隣にはシューがいた。
買ったばかりの米袋を、両腕で抱きしめるように持っている。
やはり無表情だが、その歩調がとても軽やかであるような気がするのは見間違えだろうか。

( ´∀`)「ところで……あの男の人の傍にいなくて良かったモナ?」

lw´‐ _‐ノv「私といると逆に危険かもしれないから」

じゃあ今彼女と一緒にいる自分は危険に遭っても平気なのか、と思うが口にはしない。

( ´∀`)「で、さっきの話なんだけど」

lw´‐ _‐ノv「黙秘」

(;´∀`)「心底幸せそうに米袋抱えて言う台詞じゃないモナ」

lw´‐ _‐ノv「……無理矢理ハメられた」

(;´∀`)「何かやらしいから止めるモナ」

つい溜息が出てしまい、そして気付く。
会って間もないのだというのに、彼女のペースに慣れ始めている自分がいることに。
やはり教師としての経験が順応させたのだろうか。



28: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:25:09.85 ID:qL8ulUZH0
なかなか自分の技能も捨てたものじゃないな、と思いつつ視線を横へ向けると

( ´∀`)「あ、公園モナ」

lw´‐ _‐ノv「そうだモナ。 見れば解るモナ」

(;´∀`)「何で真似を……まぁそれはいいとして、ちょっと休んでいくモナ。
     ずっと荷物を抱えてたから疲れたモナ?」

lw´‐ _‐ノv「私は米があるから大丈夫」

( ´∀`)「意味が解らんモナ。
     いいから、ちょっとベンチで休憩していくモナよ」

勝手に歩き始めるモナー。
逡巡するような動きを見せた後、シューはゆっくりとその後を追った。

( ´∀`)「ここは僕がいつも散歩する公園だモナ」

lw´‐ _‐ノv(米食べたい……)

( ´∀`)「あそこから見える景色がとても良いモナ」

lw´‐ _‐ノv(米食べたい……)



31: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:27:43.83 ID:qL8ulUZH0
古びたベンチに腰掛ける。
一人分空け、シューが隣に座った。

( ´∀`)「ここでシューと会ったモナ。 憶えてるモナ?」

lw´‐ _‐ノv「志村ー、昨日昨日」

(;´∀`)「う……いや、でも結構日にちが経ってる気がするモナよ」

それだけ内容が濃かったのだろう。
シューとの出会いから、自分のペースは狂わせられっ放しだ。

しばらく無言が続く。

『そろそろ帰ろうか』と言いかけた、その時。
か細い声が隣から

lw´‐ _‐ノv「……私のいた世界には魔法があったんよ」

ポツリ、と。
呟かれた言葉の意味を理解するのに、モナーは数秒の時間を必要とした。

( ´∀`)「え? 話してくれるモナ?」

lw´‐ _‐ノv「お米買ってもらった。
      それに、何も知らない方が危ないかもしれないから」



32: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:29:45.57 ID:qL8ulUZH0
やはり危険なことなのだろう。
シューの眉がほんの少しだけ下がっているのを見逃さなかった。
しかし彼女は話を続ける。

lw´‐ _‐ノv「私のいた世界は魔法っていう技術が発達してた」

( ´∀`)「魔法……魔法って、あの魔法使いが使うような?」

lw´‐ _‐ノv「違う、『魔粒子制御法』の略。
      この世界の機械科学よりも優れた利便性を持つエネルギーのこと」

( ´∀`)「へぇ〜、それは凄いモナ」

lw´‐ _‐ノv「…………」

彼女がこちらを見る。

lw´‐ _‐ノv「……信じるの?」

( ´∀`)「もちろんだモナ」

lw´‐ _‐ノv「何で? 嘘を言ってるかもしれないのに」

( ´∀`)「んー」

モナーはシューの顔を見つめた。
そして弓になっている目を更に細め

( ´∀`)「君の顔は、嘘をついてるような表情じゃないモナ」



34: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:31:20.28 ID:qL8ulUZH0
もちろんそれは確証のある答えではない。

彼が信じようと思えたのは、あのEMAという機動兵器を見たからだ。
この世界のモノだと言えなくはないが、それでもモナーはシューを信じたかった。

lw´‐ _‐ノv「……?」

シューが不思議そうにぺたぺたと自分の頬を触る。
その様子が可笑しく、モナーはつい声を出して笑ってしまう。

lw´‐ _‐ノv「何が可笑しい?」

( ´∀`)「いやいや、別に何でもないモナ。
     で、その世界に住んでたシューは何でこっちの世界に来たモナ?」

lw´‐ _‐ノv「解らない。 ただ、気付いたら木の上にいた」

木の上とは、あの木の上だろう。
モナーは背後にある大木を見上げた。
この世界でのシューは、あそこを出発点としたらしい。



37: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:34:01.41 ID:qL8ulUZH0
( ´∀`)「ということは、この世界のモノは珍しいんじゃないモナ?
     車とか……ほら、さっき入ったスーパーとか」

lw´‐ _‐ノv「ううん」

( ´∀`)「じゃあ、そっちの世界にもあるモナ?」

lw´‐ _‐ノv「無い」

( ´∀`)「?」

向こうの世界に無いはずなのだが、車もスーパーも知っているという。
よく解らない回答にモナーは首をかしげる。
すると、シューは

lw´‐ _‐ノv「……だって、私は元々この世界の人間だから」

と、何やらとんでもない発言をぶっ放した。

( ´∀`)「…………」

言葉を頭の中で反芻し、そして意味を理解する。

(;´∀`)「……えぇ!? つ、つまりこっちからあっち行ってあっちからこっちに来たってことかモナ!」

lw´‐ _‐ノv「うん。 この世界ではきっと、行方不明扱いになってると思う」

(;´∀`)「お、親御さんは?」

lw´‐ _‐ノv「ずーっと昔に死んでる。 だから私は師匠の家に住んでた」



38: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:36:16.79 ID:qL8ulUZH0
腰に吊ってある刀を掴む。

lw´‐ _‐ノv「私が今この刀を持っていられるのは……レインを護れるのは師匠のおかげ。
       でも、私があの世界に迷い込んだのは師匠のせい」

(;´∀`)「師匠の……?」

lw´‐ _‐ノv「修行だとか言ってた。
       意味が解らないけど、結果的に私はもっと強くなった」

嬉しいのか、それとも怒っているのか。
声と表情からは、彼女の感情をまったく読み取れなかった。
そのことに違和感を覚えつつ、モナーは納得したかのように首を縦に振る。

( ´∀`)「だから、この世界のモノを知ってて……」

lw´‐ _‐ノv「米もね。
      でもあっちの世界には無かった」

ぎゅ、と米袋を抱き締めるシュー。
好物の無い世界にいた彼女は、やはり精神的に飢えていたのだろう。
今朝の米に対する執着心は、ここから来ていたのだ。

(;´∀`)「…………あぅ」

その姿を見て、悪いことをしたな、と思う。
結果的に、切望していた米で彼女を釣ったのだ。
知らなかったこととはいえ、モナーは心の内が痛むのを無視出来なかった。



42: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:38:53.84 ID:qL8ulUZH0
(;´∀`)「で、でも良かったモナ、元の世界に戻れて――」

lw´‐ _‐ノv「そうなのかな」

(;´∀`)「え?」

lw´‐ _‐ノv「私は、この世界に何の想いも持ってない。
       私の大切な人は、全員あっちの世界にいるのに……」

( ´∀`)「シュー……」

人間、生まれた場所よりも育った場所の方に心が寄るものだ。
シューも同じく、育った向こうの世界を大切に思っているのだろう。
それは悲しいことであるが、本人ではないモナーが口を出すべき部分ではない。

lw´‐ _‐ノv「……でも、EMAとミツキが来たっていうことは」

( ´∀`)「あ!」

そうだ。

シューとEMAとミツキがこの世界に現れたと言うことは、彼女の言う『大切な人』も来ているのかもしれない。



43: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:41:23.59 ID:qL8ulUZH0
( ´∀`)「なら、早く探さないと」

lw´‐ _‐ノv「うん」

( ´∀`)「出来る限り、僕も手伝うモナ」

lw´‐ _‐ノv「……いいの?」

( ´∀`)「ここで見捨るなんて教師たる僕には出来ないモナ」

lw´‐ _‐ノv「先生なんだ」

(;´∀`)「頼りないかもしれないけど……モナ」

ううん、とシューが首を振った。

lw´‐ _‐ノv「そんなことない。 頼れる」

(*´∀`)「……べ、別に御世辞言ったって夕飯が豪勢になるわけじゃないモナよ!」

文句を言いつつも、今日の夕食は米メイン料理にもう一品増やしてやろう、などと考えるモナー。

優しいのか甘いのか、もしくはどちらともなのか。
単純だという意見が一番多そうではあるが。



47: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:44:06.33 ID:qL8ulUZH0
と、その時だった。

lw´‐ _‐ノv「!」

突如、シューが立ち上がった。
あれほど大切にしていた米袋をベンチに置き、右手を刀の柄に添える。

その瞳は鋭い。
彼女の視線を追うように向けると、今までいなかった人影があった。

|゚ノ ^∀^)「…………」

女性だ。
ここからではよく見えないが、美しい金髪だけは視認出来る。
それだけなら良かったものの

( ´∀`)「あれは……?」

女の右腕に何かが握られていた。

大きな物体だ。
灰色を基調とし、その大きさは人間よりも少し小さい程度。
よく見えないため正体が解らないが、少なくとも女性が持つような大きさの物体ではない。

三人以外誰もいない公園内が、不穏な空気に包まれる。



49: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:46:55.21 ID:qL8ulUZH0
lw´‐ _‐ノv「モナー」

シューが、視線を女性に向けたまま言う。

lw´‐ _‐ノv「言ったよね、大切な人もこの世界に来たかもしれないって」

( ´∀`)「……言ったモナ」

lw´‐ _‐ノv「でも私は忘れてた。
      『大切じゃない人』も来てる可能性があるんだって」

見える女性が、その『大切じゃない人』なのだろう。
今も一歩一歩ゆっくりと近付いてくる姿は、何よりも悪寒を感じさせた。

憎悪、とでも言うのだろうか。
背後に黒い何かが錯覚として見えるほど、彼女の雰囲気は不気味だった。
嫌な予感がする。

(;´∀`)「シュ――」

lw´‐ _‐ノv「モナーはここから動かないで」

返事も待たずに歩き出す。
か細い音を立てつつ刀を抜き、正眼に構えた。



52: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:48:15.11 ID:qL8ulUZH0
変化は直後。

向こうにいた女性が前方へ身を飛ばしたのだ。
一瞬だけ遅れ、シューもまた地を蹴って走った。

ぶつかる。
甲高い金属音がモナーの鼓膜を震わせた。

(;´∀`)「!」

距離が近くなって、シューと相対する女性が持っているモノの正体を理解する。

あれは、巨大な諸刃剣だ。

いや、それにしてはあまりに無骨過ぎる。
むしろ剣の形をした岩、と言った方がしっくりくる武器だった。
そしてシューの持つ刀と同じく、その手元に一つのトリガーが存在している。

「ッ!」

息を詰め、女性が身を横に回した。
駒のような動きから繰り出される一撃は、遠心力と質量とが相まって強烈になる。

無理に受け止めることをせず、シューは一歩下がってやり過ごす。



54: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:51:19.17 ID:qL8ulUZH0
lw´‐ _‐ノv「レモナ」

諭すような口調で単語を述べる。
おそらく女性の名前なのだろう。

それを聞いた女性は、しかし苛烈に眉を逆ハの字に立て

|゚ノ#^∀^)「……ミツキは何処!? さっさと居場所を言いなさい!」

lw´‐ _‐ノv「言わない」

|゚ノ#^∀^)「言いなさい!」

lw´‐ _‐ノv「だから、言わない」

|゚ノ#^∀^)「このっ!」

レモナと呼ばれた女性がトリガーを引き込む。
次の瞬間、柄尻から乾電池のような筒が吐き出され、高音が響く。

叩きつけるかのような一撃。
しかしシューの身体を裂くことなく、土の地面を爆ぜさせるのみに終わる。

その威力の程は、離れているモナーにも簡単に理解出来た。



56: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:53:39.55 ID:qL8ulUZH0
シューが一歩二歩と下がりつつ

lw´‐ _‐ノv「レモナ、混乱してるのは解るけど敢えて言う。
       情報元である私を殺したら何もならないと思う」

|゚ノ#^∀^)「うるさいうるさいっ!
      敵国の一員であるアンタに『そうですか』って言って素直に下がるもんですか!」

lw´‐ _‐ノv「理性とプライドの問題。
       この場合、理性を優先させた方が良いと思われ」

|゚ノ#^∀^)「だったらミツキの居場所を教えなさいよ!」

なかなか奇妙な関係にあるようだ。
レモナの方はシューに敵意を持っているが、逆はそうでもないらしい。
むしろ暴走する友達を止めるかのような、シューはそんな口調で言葉を放っている。

( ´∀`)(ふぅむ、どういう関係なんだモナ……?)

部外者である自分に解るはずもなく。

しかし、両者の動きが非常に卓越した技術の下に発されていることは理解出来た。
足捌きや体重移動は、素人のそれとは比較にならない。

両者ともに戦闘慣れしている。

それも、モナーの想像を遥かに超えるほどに。



58: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:55:41.06 ID:qL8ulUZH0
|゚ノ#^∀^)「はぁっ!」

振り回すかのような連撃の合間を縫い、高速の突きを放つ。

lw´‐ _‐ノv「駄目」

言葉と共にシューが消える。
いや、素早い身のこなしがそう見せているのだ。
それらを織り交ぜつつ、互角と思える攻防が展開される。

(;´∀`)(いや……違うモナ)

レモナの攻撃を、シューが回避しているだけだ。
攻撃側の迫力が凄いからか、高度な戦いに見えているのだろう。

そんな一方通行の攻撃は、意外な言葉で収まることとなった。

lw´‐ _‐ノv「一つ聞く」

|゚ノ#^∀^)「何よっ!」

lw´‐ _‐ノv「そう言うレモナはミカヅキの居場所、知ってるの?」

|゚ノ;^∀^)「……ッ」

ピタリ、とレモナの剣が止まった。



62: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 17:58:09.90 ID:qL8ulUZH0
|゚ノ;^∀^)「……し、知らないわよ」

lw´‐ _‐ノv「じゃあミツキの居場所を知っても意味ないと思う」

|゚ノ#^∀^)「わ、私がミカヅキ様を見付けた時のために、ミツキの居場所を知っておくのよ!」

lw´‐ _‐ノv「それは駄目。
       あの二人の戦いに私達が手を出すのは。
       私達は二人のパートナーでも何でもないんだよ?」

|゚ノ;^∀^)「くっ……」

lw´‐ _‐ノv「解ってる?」

|゚ノ;^∀^)「……うぅ」

正論のオンパレードらしい。
顔に『悔しいが反論出来ない』と書いてありそうなほど、彼女の恨めしそうな睨みは強い。
話から察するに、レモナがルール違反をしようとしていたようだ。

シューの言葉に反することが出来なかったレモナは、半分泣き声で

|゚ノ ;∀;)「だ、だって……いきなりミカヅキ様が消えるし、全然解んない場所に来ちゃったし……。
      私、不安で、でも、こういう時こそミカヅキ様の役に立たなきゃって……」

lw´‐ _‐ノv「うん、普通の人間だったらその混乱は当然」

と、シューがこちらを見た。



64: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:01:25.59 ID:qL8ulUZH0
そして、大きな声で言った。

lw´‐ _‐ノv「モナー、また一人客が増えるけどいいかな?」

(;´∀`)「……モナ?」

要するに、そういうことらしい。

lw´‐ _‐ノv「レモナ良かったね、いいって言ってくれた」

(;´∀`)「いや、許可してないモナ!!」

lw´‐ _‐ノv「それじゃあ駄目?」

(;´∀`)「え? えーっと……」

混乱しつつある頭を落ち着かせ、冷静に考える。
そして出てしまった結論に肩を落とし

(;´∀`)「……OKですモナ」

lw´‐ _‐ノv「ありがと」

そしてまた一人、モナーの家に奇妙な客人が増えることとなった。

(;´∀`)(でも僕の家にはミツキって人がいるモナ……それはいいんだろうかモナ)

まさかレモナの前で言うわけにもいかず。
モナーは、突き抜けるような青い空を見上げて溜息を吐いた。



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