( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

2: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:22:15.94 ID:P0k3ogm/0
活動グループ別現状一覧

( ´∀`) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ |゚ノ ^∀^)
所属:不滅世界&魔法世界
位置:都市ニューソク
状況:押しかけシュー房+α

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` ) [゚д゚]
(#゚;;-゚) (`・ω・´) <_プー゚)フ ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚)
所属:不滅世界&機械世界&英雄世界
位置:ロシア・古城
状況:潜伏中

从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *)
所属:魔法世界?
位置:不明
状況:逃亡中



4: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:25:53.17 ID:P0k3ogm/0
第三十話 『光明』

奇妙な情報が舞い込んできたのは、ある日の寒い朝だった。

自室としている部屋で目覚めた彼は、簡易キッチンへと足を向ける。
目を覚ますための熱いコーヒーを自分で淹れるのも、随分と慣れてしまったことに苦笑する。

仕事場とする広めの部屋に移動。
いくつかのデスクとPCが並ぶそこは、得た情報を統括し、判断するための広い会議室だ。

事の始まりは、外にて単独で情報収集をしていた軍神からの連絡である。

ある少女がモララーと会いたがっている、と。
外で散らばっている仲間を捜索していた軍神は、電話越しにまずそう言った。

軽い朝食をとりつつそれを聞いたモララーは、露骨に嫌な表情し

( ・∀・)「一つ言っておくが、私にそういった趣向はないのだがね」

『馬鹿言っとらんでさっさと準備しぃ。
 アンタが求めとったお客さんや』

( ・∀・)「ふむ?」

自分が求めている客。
いくつかあるが、相手が少女だということを考慮すれば――

( ・∀・)「……やはり思い当たらんな」



6: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:28:41.10 ID:P0k3ogm/0
『ええから会うだけ会ってみぃ。
 多分、気に入ると思うよ……この無駄に溢れる自信とかアンタそっくりやわ』

( ・∀・)「そういった自信はむしろ君の専売特許だと思うのだが、どうかね?」

『あのな、敢えて詳しく言うけど、アンタそっくりってことは話すだけでもエライ疲れる言うことなんよ。
 で、何でまた本人であるアンタと問答して疲れなあかんのっつー話でな』

( ・∀・)「ははは、むしろ私は癒しのプロフェッショナルだよ?
      こう揉み込むように、そして食い込ませるような美声は女性の官能を刺激してだね――」

『もうええわ……頼むよ、ホンマに』

返事も待たずに通話を切られる。
もはや電子音しか発さない携帯電話を耳から離し

( ・∀・)「彼女には心のゆとりが足りないようだ。
      しかし、それ故に仕事はしっかりとやってくれる」

と、視線の先にいる人間に語りかけた。

(´<_` )「いや、まぁ、アンタが物凄く特殊ってだけな気もするが」

(#´_ゝ`)「少女だと? 幼女ではないのか? どっちなのだ!?」

まったく正反対の性格を持つ双子がいた。
二人ともにデスクのPCを操作しつつ、口々に言っている。



8: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:31:12.02 ID:P0k3ogm/0
(´<_` )「で、どうする?」

( ・∀・)「とりあえず会うことにするよ。
      確かに軍神君は未だ油断ならないが、だからといって信用しないわけにもいかないしね。
      それに私は心が無駄に広い……たとえ相手が年端もいかぬ少女であっても、紳士的に接する所存だ」

(´<_` )「……言葉だけ聞いてると人格者だよなぁ」

( ´_ゝ`)「ねぇねぇ、俺もついて行っていい?」

( ・∀・)「目的が犯罪的でなければ」

答えを聞いた途端、兄者は奇声を上げて席を立つ。

(*´_ゝ`)「やった!」

それを半目で睨むのは弟者だ。

(´<_` )「この自己判断による喜びはどうなのよ」



10: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:33:16.56 ID:P0k3ogm/0
( ・∀・)「世に犯罪を犯す者にあまり犯罪意識がないのと同じだろう」

(´<_` )「目的しか見えていないからか」

( ・∀・)「うむ、こうなった者は色んな意味で強いよ?」

(´<_` )「アンタ見てたら納得だわ」

( ・∀・)「ふふふやはり私は人としての模範となっているようだね。
      いやぁ、やはり立派な人間を目指していれば、自然とそういう目で見られてしまうから困ったものだよ」

(´<_` )「そういうところが……うん、もうどうにでもなれ」

(*´_ゝ`)「無垢な瞳で俺を見上げてくる幼女かなぁ、それとも健気で可愛げのある少女かなぁ。
      うーん、どっちを持っていけばいいのか悩むなぁ」

(´<_` )「アンタ一体何を持っていこうと……もう面倒だから警察呼んでていいか?」

とまぁ、このようにして本日のFC残党の活動が開始された。



11: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:36:41.28 ID:P0k3ogm/0
古城の地下通路の先には、FC残党が外で活動するための場所がある。
この『アングヌエ』という名を冠する町は、一年中雪に閉ざされた小さな町だ。

外にはあまり人の姿が見えない。
元々の住人が少ないこともあるが、わざわざ外に出るメリットがないためだ。
時たま大型車が雪を掻き分けながら走る程度で、微かに聞こえるクラシックの音楽以外は静かなものである。

そんな白一色の景色の中に、何人かの人間の集まりがあった。

街灯に身を預けているのは黒いコートを着た長身の女性。
まるで顔を見られるのを恐れているかのように、深くフードを被っている。

軍神だ。

そしてその隣には、三つの人影。
分厚い防寒具を着込み、しかし尚も寒さに震えつつ足踏みしている。

(;><)「さ、さささ寒いんです!」

(((*‘ω‘ *)))「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」

从・∀・ノ!リ「このような寒さは初めて経験するのぅ……ところでおぬし、寒くないのか?」

見上げるように、少女が軍神を見た。

(#゚;;-゚)「んー?」

これほどまでの重装備においても刺すような寒さを感じるのだというのに
彼女は薄い服の上に、やはり薄めの黒コートを羽織っているのみだ。



13: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:39:22.83 ID:P0k3ogm/0
(#゚;;-゚)「寒い、ねぇ。
    生憎ウチは、もうそんなモン感じられる人間じゃないんよ」

从・∀・ノ!リ「ふむ」

その言葉を聞き、考えるような素振りを見せ

从・∀・ノ!リ「おぬしもまた『異常者』か」

(#゚;;-゚)「ん?」

从・∀・ノ!リ「何でもない。
      それよりもおぬしの主人は遅いのぅ」

(#゚;;-゚)「いや、主人って……うーん、雇い主というか半同志というか」

半目で頬を掻きつつ言う。
少女が、自身の引っかかる言葉を口にして首をかしげた。

从・∀・ノ!リ「半?」

(#゚;;-゚)「まだちゃんとした総意を聞いてないっていうか。
    保身に走るんか、それとも異獣を一緒に倒してくれるんか。
    今はまだ目的が同一やから協力関係の間柄やけどね」

目的とは、世界運営政府のことだ。
モララー達は捕まった仲間を助けに、軍神達は世界交差の主導権を奪い取るために。
今後のことを考えれば決して利害一致とはいえないものの、しかし互いが互いを必要としているのは事実だった。

そして今、互いにとって重要なことをこなそうとしているというわけだ。



15: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:41:58.87 ID:P0k3ogm/0
从・∀・ノ!リ「まぁ、そう簡単に出せる結論でもあるまいて。
       異獣を相手にしようなぞ、普通は考えることさえもせんからなぁ」

うんうん、と偉そうに頷く少女。
実際に偉いらしい。

(;><)「ちんぽっぽちゃん、寒くないですか?」

((((*‘ω‘ *))))「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽ」

( ><)「凄いんです! 振動で身体を温めてるんです! 原子振動なんです!」

というようなやり取りをしている彼女の従者らしい二人が、口を揃えて言っていたのだ。
この方は一国の主なのだ、と。
いや、『ぽっぽ』言ってる方は『ぽっぽ!』としか言っていないのだが。

(#゚;;-゚)(……うーん)

そう見えなくもない。
偉そうな態度や物腰、知識などに気品が感じられる。
しかし彼女が軍神の知る世界の住人ならば、そしてその一国の主ならば知らぬはずがない。

(#゚;;-゚)(色々と変わったんかな?)

知っているとはいえ、それはもう何年も前の話だ。
その間に戦争の一つでも起こっていれば、体制が大きく変わっていても不思議ではない。

何にせよ、これから話してもらうことなので聞き出すようなことはしなかった。



16: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:43:39.93 ID:P0k3ogm/0
と、そこで新たな人影が現れる。

( ・∀・)「やぁ、遅れて済まないね」

モララーだ。
そして付き従うように、双子の兄弟が彼の背後にいる。

どうやら三人だけで来たらしいが、おそらく護衛の兵が付近にいるのだろう。
平穏とはかけ離れた存在感をいくつか感じ取れる。

( ・∀・)「立ち話も難だ、あそこでゆっくりと話し合おうではないか」

从・∀・ノ!リ「む?」

指差す先にはバーがあった。
訝しげにそれを見る少女に

( ・∀・)「あの店は私の部下が経営しているので大丈夫だよ。
     表向きはバーで、裏向きには情報収集拠点の一つだということにしているのでね」

安心させるような笑顔でそう言った。
しかし、その表情に違和感を持った男が一人。

(´<_` )「……何かおかしくないか?」

(*´_ゝ`)「何が? いや、確かにあの少女はおかしいくらい可愛いけどハァハァ」

(´<_` )「気のせいなら良いんだが……」



18: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:45:58.36 ID:P0k3ogm/0
( ´_ゝ`)「弟にスルーされたよ。
     っていうかアレだろ、ジェイルさんがいないから苛立ってるだけなんじゃね?」

(´<_` )「その根拠は?」

( ;_ゝ;)「俺、先週あたりにそれを理由にフィギュア叩き壊されたから……えぅぁぁぁ」

(´<_` )「涙が凍るぞ。
     しかもそれって単にアンタが目障りだったんじゃないか?
     仕事場にフィギュアボックス持ってくるのはアウトだろ、常識的に考えて」

( ´_ゝ`)b「馬ッ鹿、俺的にはセーフなのだ、これが」

(´<_` )「しかしふざけているのならともかく、ジェイルさんがいなくなったことで表情に出すとは思えんのだが。
      ……何かあったんだろうか」

( ´_ゝ`)「最近、弟者が俺に冷たい件。
     どうしたらいい? ねぇ、どうしたらいいの?」

(#゚;;-゚)「ウチに聞かんといて、頼むから」

しっしっ、と羽虫を払うかのような動作で兄者から距離をとる軍神。
『ツンデレツンデレ』と謎の呪文を呟き、ニヤニヤする不審者。

結局、モララーの笑みに違和感を覚えたのは弟者だけだった。



22: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:48:44.94 ID:P0k3ogm/0
ぼやけた過去を夢として見る。

全てが上手く回っていた頃の夢を。
全てが終わってしまった夢を。

そこには自分がいた。
尊敬する上司もいた。
切磋琢磨する戦友もいた。

自分達がいれば、国の平和は安泰だと思っていた。

しかし、それもある日を境に終わってしまった。
戦友が上司を殺し、もう一つの大国へと寝返ってしまったのだ。
愛機である青い機体と共に。


許せなかった。
戦友も、そして止められなかった自分も許せなかった。

戦おうと誓った。
たとえそれが仲間であっても、肩を並べて戦った戦友だったとしても――


――それで無念を晴らせるのならば、と。



23: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:50:20.89 ID:P0k3ogm/0
(メ _)「…………」

目を開く。
同時に、自分が目を瞑って眠っていたのだと気付いた。

霞む視界に見えるのは白い天井。
鼻から入ってきたのは薬の臭い。
感じる空気は新鮮そのものだ。

自分の身体に布が掛けられていた。
白く清潔な、心地良い感触が身体全体を包み込んでいる。
このような場所で身を横にするのは久しぶりだった。

再度、眠気が来る。
疲労の残る体に『このまま好きなだけ眠りたい』という誘惑が這い寄ってくる。
しかしそれを何とか耐え

(メ _)「……ッ」

起き上がる。
上半身を起こすと同時に身体も目が覚めたようで、酷く喉が渇いた。
焼け付くような飢えを発する喉を抑え、周囲を見る。

ポットがあった。
いつでも飲めるように、傍らにはコップもある。
震える手を押さえつけながら水を注ぎ、口の中に流し込んだ。

(;メ _)「……くっ」

何度かそれを繰り返して飢えを消す。



24: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:52:02.10 ID:P0k3ogm/0
深い深呼吸。
そこでやっと、周囲の様子を見る余裕が出てきた。

(メ _)「ここは?」

見た限りは病室のようだ。
小さな部屋の中にベッドが一つだけあり、自分はそれに寝ていた。
傍に小さなテーブルがある以外、何も無い部屋だった。

現状が解らない。
あの時、自分は絶対に助からない状況下にいたはずだ。
しかし今、何故かこうして生き永らえている。
となると

(メ _)(誰かが私を助けた、か……?)

あの森の中に自分以外の人間がいたらしい。
感謝の念を抱くと同時、疑惑の念も浮かび上がってくる。

何故、自分を助けたのか、と。
二つほど考えられる。

本当に助けるつもりなのか、それとも利用するために恩を売ったのか、だ。

と、そこで部屋の出入り口を司る扉が開いた。
一体どちらなのかを見極めるため、男は鋭い視線を敢えて向けた。

(*゚ー゚)「あ、起きてたんですね」



27: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:53:36.25 ID:P0k3ogm/0
女性だ。
人の良さそうな笑みを口元に浮かべている。
強制的に安心感を与えてくるような錯覚を得て、男は頭を軽く振った。

(*゚ー゚)「まだ何処か痛みますか?」

(メ _)「……いや」

(*゚ー゚)「そうですか、良かったです」

女性はそのまま部屋の中へ入り、ベッド脇の椅子に座った。
備え付けられていた機械を操作しているのは、おそらく意識が目覚めたことを誰かに知らせているのだろう。

(メ _)「ここは何処だ?」

(*゚ー゚)「……あまり詳しくは言えないんですが、北の方です」

彼女が詳しい地名を知らないのか。
それともこの場所が秘匿されているのか。

後者だろう、と男は判断した。

(*゚ー゚)「吹雪の中で倒れてたんですよ。
     寒さの他に栄養不足で気を失った、と医師の方は言ってました」

(メ _)「……そうか」

何日も食べなかったのだから当然だ。
いくら鍛えられているとはいえ、元となる栄養が無ければいつかは倒れる。



31: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:55:30.06 ID:P0k3ogm/0
と、そこであることに気が付いた。

(メ _)「一つ聞いていいか」

(*゚ー゚)「はい?」

(メ _)「そこの男は何だ?」

指差す先は出入り口。
閉じたはずの扉が半分ほど開いており、しかめっ面の男が腕を組んでこちらを睨んでいた。

(,,゚Д゚)「…………」

(;*゚ー゚)「ギ、ギコ君……何してるの?」

(,,゚Д゚)「見張っているだけだ。 問題ない」

ぶっきらぼうに言い放つ。
その無遠慮な視線は、ベッドの上の男をジロジロと睨んでいる。
相当に警戒されているようだ。

(;*゚ー゚)(どういった意味で見張ってるんだろう……気になるなぁ)

(メ _)「……何か?」

(,,゚Д゚)「いや、気にするな」

無理だろう。
そんな視線を注がれては、誰もが気になるに決まっている。



32 名前: ◆BYUt189CYA [訂正] 投稿日: 2007/07/24(火) 18:56:52.07 ID:P0k3ogm/0
と、そこであることに気が付いた。

(メ _)「一つ聞いていいか」

(*゚ー゚)「はい?」

(メ _)「そこの男は何だ?」

指差す先は出入り口。
閉じたはずの扉が半分ほど開いており、しかめっ面の男がこちらを睨んでいた。

(,,゚Д゚)「…………」

(;*゚ー゚)「ギ、ギコ君……何してるの?」

(,,゚Д゚)「見張っているだけだ。 問題ない」

ぶっきらぼうに言い放つ。
その無遠慮な視線は、ベッドの上の男をジロジロと睨んでいる。
相当に警戒されているようだ。

(;*゚ー゚)(どういった意味で見張ってるんだろう……気になるなぁ)

(メ _)「……何か?」

(,,゚Д゚)「いや、気にするな」

無理だろう。
そんな視線を注がれては、誰もが気になるに決まっている。



34: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:58:16.93 ID:P0k3ogm/0
(メ _)「……もう一ついいか」

(*゚ー゚)「何ですか?」

(メ _)「おそらくではあるが、俺の倒れていたすぐ傍に赤い機体があったろう」

赤色をした鉄の巨人。
この男の分身ともいえる機体だ。

(*゚ー゚)「えぇ、勝手で悪いですけど……こちらが回収させてもらってます」

(メ _)「勝手ついでに分解などしていないだろうな」

(*゚ー゚)「持ち主である貴方が生きていたから、手を出さないように言ってますよ」

(メ _)「そうか、ならいい」

(,,゚Д゚)「…………」

一層、ドアの傍にいる男の視線が強くなる。

(メ _)「……何か?」

(,,゚Д゚)「気にするな」

この男、随分と無茶を言う。



36: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 18:59:51.90 ID:P0k3ogm/0
そんなやり取りを無視し、女性は席を立った。

(*゚ー゚)「あとは簡単な検査をしてもらいますね。
     で、しばらくは衣食住をこちらが負担することになるんですけど――」

(メ _)「その代わりとして、あの機体についての情報を吐け、と?」

(;*゚ー゚)「え、えぇ」

見透かされたのに驚いたのか、女性は己の身体を抱き締めるようにして身を固めた。
そして同時に、ドアの男の視線が更に強くなる。
不可視の針が首を刺していると錯覚するほど、その視線は鋭かった。

今度は敢えて無視しつつ、悩む素振りを見せ

(メ _)「……少し考える時間が欲しい」

(;*゚ー゚)「あ、やっぱりそうですよね……じゃあ、私から上の人に伝えておきます」



37: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:01:24.19 ID:P0k3ogm/0
そして背中を向けかけ、しかし何かを思い出したかのように振り向いた。

(*゚ー゚)「そういえば貴方の名前を示す物品がなかったんですが……。
     良ければ、教えてもらえますか?」

偽名を使うか一瞬迷う。
しかし安易に嘘を吐いても、後で面倒になるだけだと思い直し

(メ _)「……ミカヅキだ」

と、素直に名を言った。
持っていたボードにペンを走らせた女性は、ドアの傍に立つ男を押し出しつつ部屋から退出。

一人取り残され、ミカヅキは溜め込んでいた緊張の息を吐いた。

(メ _)「さて、どうにもやり辛そうだな……」



39: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:03:16.53 ID:P0k3ogm/0
廊下に出たしぃは、すぐさまギコを睨んだ。

(*゚ー゚)「あそこまで睨むことないのに。
     っていうか、何でギコ君がここにいるの?」

彼女の記憶によれば、ギコは訓練室でグラニードを振っていたはずだ。
ここへ来ることも伝えた憶えはない。
しかし何故か、現実にギコが目の前にいる。

(#*゚ー゚)「そもそも睨むだけってどういうことなの?
     あのミカヅキさんって人に警戒心与えただけじゃない!」

(;,,゚Д゚)「い、いや、その」

(#*゚ー゚)「ギコ君も説明受けてるよね? あの機体が魔法世界のものである可能性が高いって。
     その搭乗者を警戒させてどうするのよ」

押しに押され、ギコは言い訳を探すかのように言葉を濁らせ、しかし遂には諦め

(;,,゚Д゚)「……すまん」

(*゚ー゚)「まったく」

頬を膨らませて怒るしぃ。
ついつい『可愛い』と思ってしまったが、ここで口に出すと後が怖いので黙っておくギコ。



40: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:05:21.19 ID:P0k3ogm/0
(*゚ー゚)「いくら異世界の人だからって疑い過ぎ。
     まだこっちに来て間もないんだから、味方でもなければ敵でもないんだよ?」

『解ってる?』と確認するように言われ、ギコは妙な汗が出るのを止められなくなる。

誰だって説教を受けるのは嫌だ。
しかも好きな人からされるというのは、男的には酷く情けない。
早くこの場を切り抜けたい一心で、ギコは機械的に首を上下に振った。

そんなギコの反応に満足したのか、それとも呆れたのか、しぃはわざとらしい溜息を吐いて

(*゚ー゚)「今度からは気をつけてよね?」

と、階段へ続く廊下を歩いていった。
その後姿を目で追いつつ、ギコはガシガシと後頭部を掻く。

(;,,゚Д゚)「……違うんだがなぁ」

ミカヅキという男を、別に敵として警戒していたわけではなかった。
男として警戒していただけなのだ。

つまり、ただ単に惚れた女の傍に寄る男を監視していただけなのだが
しかしそれを言うと、またややこしいことになりそうなので――

(;,,-Д-)「仕方ない、か」

反省半分、寂しさ半分。
そんな溜息を吐き、彼女の機嫌を直すための作戦を考えつつ、ギコはまた訓練室へと足を向けたのだった。



41: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:07:46.06 ID:P0k3ogm/0
薄暗い店内には、しかし軽快な調子の音楽が鳴り響いていた。
そんな雰囲気ぶち壊しなバーの奥隅で、幾人かの人間がテーブルを囲んでいる。

モララーを初めとしたFC残党の面々。
そして向かい合うように座っているのは、少女を中心とした三名。

軍神が集めてきた情報と、その少女達の証言から導かれた結論とは

( ・∀・)「……つまり、君達は魔法世界の人間なのだね?」

从・∀・ノ!リ「そゆことじゃ」

既に自己紹介は済んでいた。
三人中の真ん中に陣取る少女の名を『レイン』と言った。
そして左隣にいる臆病そうな少年を『ビロード』、右隣にいる不思議な雰囲気を持つ少女を『チン』と言うらしい。

何故かレインが流石兄弟を気にするようにチラチラ見ているが、モララーはそれを無視し

( ・∀・)「証拠はあるのか、と言ってみようか」

从・∀・ノ!リ「随分と疑い深いのぅ……ならば、これでどうじゃ?」

レインが取り出したのは、赤い小さな玉だった。



44: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:09:49.24 ID:P0k3ogm/0
軍神や流石兄弟が、覗き込むようにそれを見る。

( ・∀・)「それが何か?」

从・∀・ノ!リ「いいか? 魔力というのは意外と厄介での。
       その範囲は、内容魔力の密度によって変わるが……割と広範囲なのじゃ」

で、と言い

从・∀・ノ!リ「我らのいた魔法世界では、この範囲を制御するための研究が進められておってな。
      一応の完成品がこれじゃ」

ジュースの入ったグラスを引き寄せる。
躊躇することなく、赤い玉を投げ入れた。

「「「!?」」」

レイン達を除いた全員が、仰け反るように身を引く。

その行為は、魔力の性質を知っているからだ。
『力』の名を冠しつつも、その効果は『奇跡』に等しい。
問答無用で物理法則を書き換えるのだから。

つまり仰け反った彼らは、その投げ入れられたグラスを中心に何らかの変化が起きると予想したのだ。

先ほどレインが言った通り、魔力効果の範囲は意外と広い。
投げ入れたのは小さな玉であったが、何処までを範囲とするのか解らないのだ。

『ははは大丈夫大丈夫』などと言って油断し、半身が消えるなどという結果になってしまっては笑うに笑えない。
これまでの経験から、こと魔力に関してモララー達は非常に敏感になっているのだった。



47: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:13:10.13 ID:P0k3ogm/0
しかし小さな音と共に起きた変化は、グラスの中のみに収まっていた。
簡単に言えば、グラスの中にあったはずのジュースが消えてしまったのだ。

(;´_ゝ`)「……手品?」

( ・∀・)「いや、魔力効果範囲を限定した……のか?」

状況を瞬時に判断したモララーが言い、レインが満足そうに頷いた。

从・∀・ノ!リ「『空間』を範囲とするのではなく、『物質』を範囲とさせる。
       つまり先ほどの赤い玉から発せられた魔力は、その周囲空間ではなく、ジュースという物質を破砕させた。
       我はそんな魔力を作り出す技術を持っているのじゃ」

その言葉に、軍神が片眉を吊り上げた。

(#゚;;-゚)「魔力を作り出す?」

从・∀・ノ!リ「そう。
       本来は魔力というものは、空気中に霧散している魔粒子を凝縮することによって作られる。
       しかし我らが編み出したのは、一から魔力を作り出すという技術……いわば『人工魔力』じゃな」

(´<_` )「そんなことが出来るのか」

从・∀・ノ!リ「ただまぁ、本物の魔力に比べると純度は低くなるが……戦闘で扱う分には問題なかろうて」

そしてモララーの目を真正面から睨み

从・∀・ノ!リ「さて、これが我の提示する証拠じゃ……他世界にはない魔法を心得ておる、というな。
       『魔法世界』という言葉からよく考えて判断せぃ」



50: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:15:38.45 ID:P0k3ogm/0
(メ _凵j「…………」

再度の眠りについたミカヅキは、心の内に決めた時間通りに目を開いた。
静かに上半身を起こし、軽く肩を回す。

(メ _凵j「……よし、何とか動けるか」

運ばれてきた食事を綺麗に片付け、それを栄養とするために眠っていたのだ。
気絶していた時のような深い眠りではなく、いつでも覚められるような浅い眠りで。
そして今、摂取した栄養が身体中に行き渡ったことを確認した。

本調子にはほど遠いが、機体を操縦するくらいなら問題なく行えるだろう。
ただし全速力で走ったり、殴り合いの格闘をするのは難しそうだった。

(メ _凵j「さて」

ベッドから抜け出し、傍にあった自分の服に着替える。
そのままの足で出口となる扉の前へと移動した。

(メ _凵j「…………」

気配を消し、気配を探る。
あまり調子は良くないが、それでも扉の向こう周辺に人がいないことくらいは知覚出来た。

静かに部屋から脱出する。

向かう先は、己の機体が置かれている場所だ。
詳しい位置は解らないが、とにかく移動して情報を集めていけば、いつかは見つかるだろう。
もし見つかった場合の言い訳をいくつか考え、ミカヅキは廊下を静かに疾駆し始めた。



51: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:17:35.71 ID:P0k3ogm/0
( ・∀・)「ふむ……」

レインの提示した証拠を目の当たりにし、モララーは少しだけ思考した。

興味深い話だ、と思うが、出来過ぎてはいないか、とも思う。

他世界に魔力という常識が通じていると知った今、
その魔力を主体とする魔法世界の住人にとって、証拠を提示することは難しいはずだ。
しかし彼女は躊躇することなく、『魔力の効果範囲限定』という技術を見せてきた。

それは充分に証拠となるだろう。
だが、そこである一つの疑問が浮かんでいる。

――何故、その技術が他世界にないと知っているのか。

( ・∀・)「…………」

言葉を放とうとし、しかしモララーは軽く首を振った。

これは後で聞けば解ることだ。
今は彼女を懐柔することだけに目を向けていればいい、と。
そして言う。

( ・∀・)「うむ、信じるに値する証拠だね。
      私は君達を魔法世界の住人だと信じることにするよ」

从・∀・ノ!リ「ありがたい」

モララーが手を差し出し、レインがそれを握った。



54: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:19:51.99 ID:P0k3ogm/0
( ・∀・)「で、どこまでの事情を知っているのかね?」

(#゚;;-゚)「あぁ、大体のことは勝手に教えてるよ」

从・∀・ノ!リ「何やらややこしいことになっておるみたいだな。
       ちなみに異獣の話は以前から知っておったよ。
       機械世界に侵攻しているのもな」

( ´_ゝ`)「……そっか、魔法世界と機械世界は以前から繋がってたんだっけ」

機械世界にあるEWという魔法兵器は魔法世界から得た技術だと、渡辺が言っていたのを思い出す。

从・∀・ノ!リ「技術交流という名目でな。
       もちろん違う情報の交換も多く行われたようだが」

(´<_` )「『ようだが』――って、アンタは詳しい話を知らないのか?」

从・∀・ノ!リ「当時の我は、まだ政治に関係しとらんかったから知らんで当然よ」

「「「?」」」

ビロードとチンを除いた全員が首をかしげる。
それを見たレインは、思い出したかのように手を叩き

从・∀・ノ!リ「あぁ、我がイルドの主になったのは二年前の話だからな。
      ふむ……紹介ついでに、ちと我のいた世界の話をしようか」



55: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:22:34.24 ID:P0k3ogm/0
魔法世界には、二つの大国がある。

一つはイルド。
一つはオークス。

その二つの国が、大陸の東西をそれぞれ治めていた。
過去に戦争がいくつもあったらしいが、それらを経て今の形になっているらしい。
いがみ合う仲だったのが、良好な関係を結ぶまでになったのだ。

しかし、その事件は突然に起きた。

从・∀・ノ!リ「オークスで起きた事なので詳しいことは知らん。
       そこの一兵士が、オークスで有名だったある人物を殺した、と……我は聞いている」

(´<_` )「有名?」

从・∀・ノ!リ「部隊を率いていた総隊長じゃ。
      極度の愛娘家であり、実力も気概もある粋な男であったと聞いている」

(#゚;;-゚)(……まさか)

从・∀・ノ!リ「で、その総隊長を殺した一兵士は
       オークスで独自に開発されていたEMAという兵器を持って、我の国へと渡ってきおった。
       つまり裏切り亡命といったところじゃな」



57: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:24:31.60 ID:P0k3ogm/0
( ・∀・)「EMA……噂の人型機動兵器だね」

从・∀・ノ!リ「ふむ、知っておるのか」

( ・∀・)「機械世界の住人に教えてもらっていてね。
      そして今、その内の一機を我々が確保している状況だ」

从・∀・ノ!リ「一機を……?
      待て、その機体の色は?」

( ・∀・)「赤色だ」

从;・∀・ノ!リ「……!」

それを聞いたレインの表情が消えた。
余裕を見せていた色が、みるみる焦りの色へと変化していく。

そして身を乗り出し、強い口調でこう言った。

从;・∀・ノ!リ「モララー、悪いことは言わん。
       その搭乗者を今すぐに拘束しろ……!」



60: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:26:19.61 ID:P0k3ogm/0
違和感を持った時には手遅れだった。

まず気付いたのはデフラグ。
比較的、赤いEMAの付近で作業していた彼は、格納庫に響く疾駆音を耳にする。

FC整備兵がまた走っているのだろう、と思う。

別におかしいことではない。
忙しい時には早足にもなるだろうし、急ぐ時は走るだろう。
規則として禁止されているわけではない。
しかし

[#゚д゚]「ったく……」

FC残党の利用する格納庫とはいえ、もはや主はデフラグと言っても過言ではなかった。
つまり端的に言えば、彼がルールとなる。

そんな彼にとって、疾駆の音は集中力を削られる一因だ。
緊急時以外は出来るだけ走るな、と部下に言いつけているほどである。
故にデフラグは、作業元から目を逸らし、頭を上げて

[#゚д゚]「おい、走るなと何度――」

注意しようとして、言葉が止まった。

見慣れない人間がいたのだ。
この格納庫に出入りする人物のほとんどを、デフラグは記憶している。
しかし今、赤い機体に走り寄っている人物は、どう見ても初見――

[;゚д゚]「いや、まさか……!?」



62: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:28:17.14 ID:P0k3ogm/0
見慣れはしないが、見覚えがあった。
確かあの男は赤いEMAの搭乗者だったはず。
その彼が、今まさにEMAに触れようとしていた。

[#゚д゚]「誰か止めろッ!!」

嫌な予感がし、デフラグが走り出しながら大声を発する。
反応した影がいくつかあり、その中でも速かったのが

<_;プー゚)フ「な、なn――いてぇ!?」

(`・ω・´)「どけ!」

声に驚いたエクストがGIFの翼に頭をぶつけ、その脇をシャキンが駆け抜けた。

[;゚д゚]「間に合わんか……!?」

対する男の行動は速かった。
跪いているEMAの傍までくると、手馴れた様子でコックピットの位置まで登り始める。
この距離では難しいと判断したシャキンは

(`・ω・´)(ギルミルキルを使うしか――!)

ポケットへ手を突っ込んだ。
装飾品を嫌う彼は、普段から6th−Wを装着していなかったのである。

そしてその一瞬の隙に、男はEMAの中へと滑り込んでしまった。



64: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:30:36.22 ID:P0k3ogm/0
<_;プー゚)フ「でも、その機体の魔力は枯渇してるはずだろ!?」

動力であるルイルに光が宿っていなかった。
故にあのEMAは、搭乗者が乗っても動きはしない――

――はずだった。

[;゚д゚]「!?」

鼓動が大きく響いた。
まるで命に点火された瞬間を示すかのような衝撃。
続いて駆動音が響き、EMAの顔部分の一部に光が灯った。

[;゚д゚]「馬鹿な! 何で起動しやがる!?」

<_;プー゚)フ「待て待て待て……やべぇんじゃねぇのか、これ!?
         ここ地下だぞ! まさか天井ぶち破って飛んでいくつもりじゃねぇだろうな!」

(`・ω・´)「魔力があれば可能とするかもしれん……デフラグ! すぐに地上への――」

シャキンの言いたいことを理解したデフラグは、傍にあるコンソールへ駆け寄り操作する。

轟音が響き、格納庫の壁の一部が展開。
地上へ直通の出撃口が出来上がった。

[゚д゚]「俺達の手で逃がすのは癪だが、格納庫で暴れさすわけにもいかねぇからな……!」

言葉と同時、赤いEMAの目が出口捉えた。
そして理解し、格納庫から出撃口を通り、極寒の世界へと飛び出していく姿勢を作り出す。



69: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:33:16.95 ID:P0k3ogm/0
轟音と風切音が重なった。
被さるように強風が吹き荒れ、赤いEMAは一瞬で地上へと離脱する。

<_;プー゚)フ「このまま逃がすのかよ!?」

[#゚д゚]「馬鹿野郎! 俺がまだイジってねぇのに逃がすわけねぇだろ!
     行け、シャキン!」

(`・ω・´)「他力本願か」

やれやれ、と肩をすくめ、シャキンは整備済みのGIF『レイドール』へ搭乗する。
すぐさま出撃口へ向かうGIFを見て

<_プー゚)フ「あー、俺も久々に飛びてぇなぁ」

[゚д゚]「普通の戦闘機で良いんなら、その中で最もポンコツなのを貸してやってもいいぞ。
    撃墜されてもそんな悔しくねぇから」

<_;プー゚)フ「墜とされるのが前提?
         それに、この世界の戦闘機は操縦めんどいんだよなぁ」

[゚д゚]「嫌だったら自分のGIFが見つかるまで我慢することだ」

<_プー゚)フ「今からでいいから俺専用機作ってくれよー、アンタ技術者なんだろー?」

傲慢な物言いに、デフラグは工具を握った拳を振り上げ

[#゚д゚]「機体を一番熟知してるパイロットが言う台詞じゃねぇだろ! 氏ね!」

<_;プー゚)フ「ってぇ!? 頭割れる頭割れる!」



71: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:35:07.24 ID:P0k3ogm/0
格納庫から飛び出したGIF『レイドール』は早速、吹き荒れる白雪に視界を遮られていた。

(`・ω・´)「どの方角へ飛んだ……?」

魔力を探知するESSを搭載したレーダーには反応がない。
おそらく、既に範囲外へと逃れているのだろう。
見渡す視界内にも、白色しか見えない。

『南東だ』

(`・ω・´)「……社長?」

通信機から聞こえてきたのは、モララーの声だった。

『あの赤い機体は、おそらく南東の先……JAPANを目指している。
 出来ればロシア領を出る前に止めてほしい』

疑問の声には答えない。
おそらく向こうにも緊急事態が発生しているのだ。
そしてそれを止められるのは、今や自分だけだと悟った。

(`・ω・´)「了解」

呟き、スロットルレバーを操作。
機首を南東へ向け、全速力で駆けた。



72: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:36:59.02 ID:P0k3ogm/0
いくらEMAという機体が速いとしても、空を支配するGIFには勝てない。
そう思った矢先、視線の先に白以外の色が見えた。

揺れる青白い光と、微かに見える赤色。

(`・ω・´)「赤い機体を目視」

『出来る限りの手を尽くして連れ戻せ。
 パイロットを殺すのは禁ずるが』

(`・ω・´)「限界時間は?」

『君の機体の魔力が果てるまで、と言おうかね』

シャキンは頭に『?』を浮かべた。
魔力調達の手段がほとんど無い今、このGIF内の魔力も節約すべきだと聞いていたのだが――

『問題が解決しそうになっていてね。
 もしかしたら近々、本格的な活動を開始出来るかもしれない』

(`・ω・´)「……了解」

笑みが浮かぶのを止められない。

今まで息苦しい思いをしてきたのだ。
それから解放されたと思うと、自然と嬉しさがこみ上げてくる。



77: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:39:13.15 ID:P0k3ogm/0
(`・ω・´)(エクストには悪いが……先に楽しませてもらおうか)

と、思った瞬間だった。

(`・ω・´)「!?」

シャキンから見て右側の視界に何かが映った。
吹雪によって見辛いが、それは自分の愛機と同じ――

(;`・ω・´)「くっ!」

正面に重なった正体不明機が、弾丸の幕を張った。
機体を小刻みに動かし、放たれた薄めの弾幕を突き抜ける。

しかし、その動作が速度の遅延となった。
先ほどよりも赤いEMAとの距離が離れてしまう。

機体の損傷がゼロだということを確認し、正体不明機へ目を向ける。

(`・ω・´)「コイツ……」



79: ◆BYUt189CYA :2007/07/24(火) 19:40:45.00 ID:P0k3ogm/0
正体不明機は、赤いEMAを援護しようとしている。

データベースに登録されていない機体で、パネルには『UNKNOWN』と表示された。
形状は戦闘機に近く、高速で飛び回っている。

その動きは、シャキンが乗るGIFと似た特性を持っている。
この世界にある戦闘機の類ではない。

(`・ω・´)「異世界のモノと思われる戦闘機と接敵。
      何とかやってみるが……」

『赤い機体の行き先は解っているので、あまり無理な追跡はやめたまえ。
 むしろその正体不明機のデータ取得をしっかりと頼むよ』

(`・ω・´)「了解」

目の前、挑発するように正体不明機が飛んでいる。

(`・ω・´)「……やるか」

冷える声を残し、シャキンはスロットルレバーを握り直した。



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