( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

3: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 16:56:17.94 ID:te3tLM6t0
活動グループ別現状一覧

( ´∀`) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ |゚ノ ^∀^)
所属:不滅世界&魔法世界
位置:都市ニューソク
状況:押しかけシュー房+α

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` ) [゚д゚]
<_プー゚)フ ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *)
所属:不滅世界&機械世界&英雄世界&魔法世界
位置:ロシア・古城
状況:潜伏中

(`・ω・´) VS ???&(メ _凵j
所属:機械世界VS魔法世界
位置:ロシア北部上空
状況:逃亡阻止

(#゚;;-゚)
所属:機械世界
位置:不明
状況:情報&戦力収集のため単独行動中



4: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 16:58:37.65 ID:te3tLM6t0
第三十一話 『その手に握る刃の理由』

風切音
風切音

ノイズ

『速いな……GIFと同程度か……?』

風切音

『――あ――は―――を――ますか』

『む、割り込み通信……?』

ノイズ

『――あな―はわた―をこ――と――ます―』

『何、だと?
 これは……あの正体不明機からの通信か?』

ノイズ
沈黙


『ヒトという貴方は、電子世界に生きる私を殺すことが出来ますか』



6: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:00:59.38 ID:te3tLM6t0
飛翔音

『何を言っている……お前は何者だ? あの赤いEMAの仲間か?』

『私はシステム。 貴方はヒト。
 根本から異なりながらも同じ空に何かを見出そうとする存在』

掠音
爆音爆音爆音

『くっ!』

『感情というノイズを持つヒトは、純粋なる電子世界に住まう私を殺せるのですか』

『つまらん問答など要らん……!
 お前は何者だと聞いている!』

空抜音
飛翔、掠音

『私はシステム。
 呼称するならば「Killing Alternative System」――キオルと御呼び下さい』

『人殺し……代替品……?』

『感情というノイズを持たぬがための代替です』

『何を言っているのか知らんが――』

『私は命を奪うことが出来ます』



8: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:02:47.05 ID:te3tLM6t0
ノイズ

『無感情が故に、後悔も心の裂傷も感じることなく実行することが出来ます』

ノイズ

『故に私は「Alternative(代替)」。
 故に私は――』

駆動音
鉄軋音

ノイズ

『なっ……!?』

『故に私は――あの方の業を担えるのです』

爆音

爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音爆音ノイズ




沈黙



9: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:04:49.35 ID:te3tLM6t0
結果から言えば、シャキンの追跡は失敗した。
乱入してきた謎の正体不明機に邪魔をされたのだ。

ならば、と、ターゲットを正体不明機へ設定するシャキン。

戦いは互角だった。
比べて解ったのだが、正体不明機の大きさはGIFの二倍近くある。
故に動きは大味となり、小回りの効くシャキンが有利かと思われた。

が、そう簡単にはいかなかった。

機体性能ではなく、単純に正体不明機のパイロットの技量が高かったのだ。

大味になる動きを敢えて制動せず、悠々と吹雪の中を舞う正体不明機。
対し、直線的な機動で攻撃しに掛かるシャキン。

次の瞬間、何が起こったのかを見たのはシャキン本人だけだ。
ただ珍しく彼が驚きの声を発したのは、通信を隔ててモララー達にも聞こえた。
そして彼は言う。

――高速で変形した、と。


<_プー゚)フ「で、天下のシャキン様は、そのビックリ戦闘機にビックリしてやられてビックリ?」

(#`・ω・´)「……うるさい」

何とか帰還したシャキンを迎えたのは、嫌な笑みを浮かべたエクストだった。



10: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:07:18.45 ID:te3tLM6t0
<_プー゚)フ「俺だったらやれてたかもなぁー」

(#`・ω・´)「『やられてた』の間違いだろう」

<_#プー゚)フ「逃げ帰ってきたヘタレに言われたくねぇな」

(#`・ω・´)「逃げ時を見失って死ぬ奴に言われたくない」

<_#プー゚)フ「んだと? テメェ、シミュレーターでの訓練は俺の――」

[#゚д゚]「テメェはガキか!?」

怒声と同時、エクストの脳天に拳が落ちた。

<_;プー゚)フ「いってぇ!?」

[#゚д゚]「ウダウダ言う暇があったら、さっさと整備に走れ!」

<_;プー゚)フ「サーイエッサー!」

大袈裟な敬礼をし、逃げるように走っていく。
その後姿をデフラグが吐息しつつ

[゚д゚]「ったく……何でアイツは執拗に突っ掛かるんだ? しかもお前限定で。
    ゲイなのか? お前限定で」

(`・ω・´)「勘弁してくれ。
     理由は何となく見当が付くが……それも、昔の話だ」

振り切るように片手を振り、シャキンは格納庫から出て行った。



12: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:09:34.39 ID:te3tLM6t0
しばらく雪の大地を飛ぶと、海が見えてきた。

しかし臆することなく飛び続ける。
自分が何処へ行けば良いのか、解っているからだ。

『……ミカヅキ様、追手は無いようです』

通信が入り、女性の声が聞こえてくる。
同時にレーダーに反応。
自機の斜め後方に、魔力を備えた機体が飛翔していることを示している。

(メ _凵j「すまないな、システム『キオル』」

『いえ、当然のことをしたまでです。
 それにこの世界の戦力というものに興味がありましたから』

(メ _凵j「……ところで、お前は今まで何を?」

『貴方を捜していました。
 そしてついでに、この世界の情報を……データは後で送っておきます』

(メ _凵j「この世界?」

『やはり存じておりませんでしたか。
 今私達がいるのは、私達のいた世界ではありません』



13: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:11:30.63 ID:te3tLM6t0
放たれた言葉。
それを頭の中で理解し

(メ _凵j「そうか……」

『驚きにならないのですか?』

(メ _凵j「レーダーに魔力反応が無かったことに納得した」

気を取り直し、目の前のウインドウへ目を移す。
目的先を示す小さな矢印が、進行方向へと頭を向けているのを確認し

(メ _凵j「この先に、奴が――」

『はい』

(メ _凵j「決着を望むか?」

『……それは、貴方が求めることかと』

(メ _凵j「そうだな」

それっきり、会話は続かなかった。



14: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:13:17.45 ID:te3tLM6t0
途中で彼女が集めたと思われるデータが届き、それを視界の端で眺める。
この世界の簡単な歴史、地理、人種、生活方法、主に食すモノ、最近のニュース。
それらを見つめ、ミカヅキは結論した。

――この世界は恵まれている、と。

思わず呟いた。

(メ _凵j「……何故、私達はこの世界へ来たのだろうか」

『それについて一つ情報があります。
 とても小さく、まだ確証を得ていないものですが』

(メ _凵j「何だ?」

『呼び出した存在がいます。
 私達の力か存在かを求め、利用、研究、もしくは破壊するために』

つまり自分達が異世界に来てしまったのは、偶然ではないということだ。



17: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:15:27.27 ID:te3tLM6t0
呼び出された、という事実を理解し

(メ _凵j「力を利用する、か。
     それは出来ない相談だな」

『えぇ、私達の機体は人との戦争に用いられるものではありません』

一息。

『……異獣との戦闘に用いるべき兵器なのですから』

(メ _凵j「しかし私は、それを個人的な理由で人に用いようとしている。
     それは罪か?」

『罪でしょう』

即答された答えに、ミカヅキは満足そうな笑みを浮かべる。

(メ _凵j「やはりお前は優秀だ。 私の代わりに殺しを担うだけある」

『いえ、だからこその欠陥品です』

(メ _凵j「そうか……なら、いい」

今度こそ会話が途切れる。

自分が向かう小さな国、JAPAN。
その中に隠れているであろう男を目指し、ミカヅキの機体は更に速度を高めた。



19: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:17:41.86 ID:te3tLM6t0
FC残党が潜伏する古城。
魔法世界の協力者を得たモララー達は、早速その技術の検証に入っていた。

人工魔力の作り方に始まり、それを用いた有用な戦法や戦術、応用。
どれもこれもが目新しいモノばかりだ。

从・∀・ノ!リ「いいか? つまりこれを『砕』の魔力に通すことで――」

( ´_ゝ`)「ほぅほぅ、ってことは――」

[゚д゚]「アレは城の中にある機材で――」

(´<_` )「しかし場所が重要――」

(-@ハ@)「いや、格納庫の隅に放り捨てとったアレで――」

と、技術者四人が特に首を突っ込んで話し合っている。

何やら色々なアイデアが出ているらしい。

例えばGIFの強化装備案に始まり、ジェイルの新型特殊兵装、兵器の魔力付加による強力化。
加えて対魔力装備の高速量産案や、実現不可能とされていた設備の開発、etc――

そういった知識に乏しいシャキンやエクスト、ギコなどは完全に蚊帳の外だ。
会議室の隅で、レインがまとめた『魔力を用いた戦い方:初心者編』というテキストに目を通している。

<_プー゚)フ「アイツら馬鹿のくせに、こういう話になったら変貌するよな」

(`・ω・´)「お前はいつまで経っても馬鹿から変わらんのは何故だろうな」



20: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:20:20.29 ID:te3tLM6t0
(,,゚Д゚)「本職だから、こちらが本来の姿だろう。
    それに好奇心という意味では、俺達も似たようなものだ」

と、ギコがテキストをひらひらと揺らした。

ミ,,"Д゚彡「戦術の幅が広がる――というか、様変わりしますね」

そのテキストから目を離さず、フサギコが吐息混じりに言う。

ミ,,"Д゚彡「いやぁ、この調子だと射撃訓練してた甲斐がありそうです」

読んでいるページが記しているのは、銃器関係の内容だ。
カタログのように、様々な形状の魔力銃が掲載されている。

しかし、この世界にある銃器とは決定的に異なる点があった。

大きさだ。

どれもこれもが大砲レベルの巨大さを誇っている。
戦闘時だけでなく担いで走るだけでも、かなり体力を消費しそうだった。

( ・∀・)「機構上、仕方のない話らしい」

と、会議に参加していたはずのモララーが歩いてくるのが見えた。



22: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:23:10.51 ID:te3tLM6t0
(,,゚Д゚)「会議、いいのか?」

( ・∀・)「私には半分ほどしか理解出来ん話だよ。
     ならば彼らに任せておいた方が、結果的には良いだろう。

(`・ω・´)「こうやってのんびり会議しているのが良いが……逃げた赤いEMAは?」

( ・∀・)「珍しく軍神君が追跡志願してね、彼女に任せることにした。
     で、話を戻すが――」

テキストを数枚めくり

( ・∀・)「本来、魔力というモノは物質に依存するらしい。
     簡単に言えば、物質を通してしか効果を発揮しない特性を持つということだ」

言われ、ギコは自身の指にはめた指輪を見た。
確かにどのウェポンも武器という形を持って力を発揮する。
剣であったり、槍であったり、鎌であったり、身体であったり――

(,,゚Д゚)「そういえば、ドクオの持つ6th−Wも巨大だったな」

( ・∀・)「魔力を形にして維持する機構が、どうしても大きくなってしまうらしい。
     まぁ、そもそも魔力銃自体が破砕砲――『デモリッションガン』のようなものだ。
     携行しても用途には限りがあるだろうから、問題ないかもしれない」

デモリッションガンとは、邪魔な構造物などを文字通り破砕する砲のことだ。
人に用いるような力を軽々と超えている点は、魔力と通じるものがある。



23: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:24:53.57 ID:te3tLM6t0
(*゚ー゚)「大きさ……」

ふと、ギコの隣にいたしぃが呟いた。

(,,゚Д゚)「どうした?」

(*゚ー゚)「うん、私達のウェポンも大きいよね。
    でもその中に小さなモノがあるなぁって」

ミ,,"Д゚彡「……8th−W『クレティウス』ですか」

1stは大剣、2ndは大鎚、3rdは大鎌――
などと、ウェポンの形状はどれも普通のそれよりも、多少なりとも大きめになっている。
しかしブーンの持つ8th−Wだけは、別に大きいというわけではない。

(`・ω・´)「ただの偶然かもしれん」

(*゚ー゚)「その可能性もあるけど……私、8th−Wだけは何か違うなって感じる時があって」

( ・∀・)「確かに十五ある内で、八といえば中間点に位置する数字だが……ふむ」

モララーは少し考える素振りを見せる。
しかし首を振り

( ・∀・)「まぁ、本人がいない現状で語っても答えは出るまい。
 それよりも、このテキストを熟読することが先決だね」

<_プー゚)フ「やっぱ動き始める日は近いってことか?」

( ・∀・)「彼ら次第だよ」



25: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:26:39.34 ID:te3tLM6t0
振り返った先には、熱弁を振るう技術者達――であるはずなのだが
『スリーサイズ』やら『撮影会』などという単語が混じっているのは気のせいだろうか。

(;,,゚Д゚)「嫌な予感が拭えん……そもそもあのメンバー内の誰を撮影するというのだ」

<_プー゚)フ「あのレインっていう嬢ちゃんじゃね?」

(,,゚Д゚)「つまりはロリコン集団か」

(*゚ー゚)「ギコ君?」

(;,,゚Д゚)「……単語で反応するのは止めてくれ。
    俺はそんなモノに興味はないし、奴らの輪の中に入りたいなど思わん」

<_プー゚)フ「いわゆるペチャパイには興味ない、と」

半目のエクストが呟き、しぃが自分の胸元へ視線を落とす。
直後、何とも微妙な沈黙が流れた。
誰もが『アレは属するのだろうか』という疑問を思い、しかし口には出さない。

(;,,゚Д゚)「……と、ところで」

珍しくギコが狼狽した様子で、話を無理矢理に切り替えた。

(,,゚Д゚)「あのレインという少女なのだが……やけに口が軽くないか?」

( ・∀・)「技術提供の話かな?
     確かに、まるで我々に協力するのが義務かのような様子だがね」



26: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:30:01.76 ID:te3tLM6t0
<_プー゚)フ「何か裏があるんかね」

( ・∀・)「裏にしろ表にしろ、後で彼女からの要求があるだろう。
      しかもそれなりに大きな形で、ね」

(,,゚Д゚)「そう思える理由は?」

( ・∀・)「君が言った口の軽さだよ。
     こちらの欲する技術を先に提供し、本命の要求を断りにくい空気にする。
     もちろん簡単にその手に乗るような馬鹿ではないがね、私は」

その『要求』の話が来たのは数分後のことだった。
何やら重要な話らしく、二人でコソコソと話し合い始める。
皆の注目の中、レインの口から内容全てを聞いたモララーは開口一番

( ・∀・)「うむ、良かろう」

「……あっさり乗った件」
「っつーか、軽ッ!」
「氏ね馬鹿」

( ・∀・)「落ち着きたまえ、諸君。
     あと『馬鹿』と言った人は、自分が馬鹿なのだよ?」

(;´_ゝ`)「マジでッ!?
      どうしよう弟者! お前の兄貴が馬鹿になっちまう!」

(´<_` )「もう慣れてるから大丈夫さ」

( ´_ゝ`)「そっかぁ、大丈夫かぁ」



28: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:32:42.77 ID:te3tLM6t0
というやり取りの後、半目睨みの集中砲火がモララーへ襲い掛かる。
しかし彼は平然と受け流し

( ・∀・)「彼女が望むモノと、我々が望むモノが一致していたのだよ」

(`・ω・´)「望むモノ?」

( ・∀・)「レイン君、彼らの前でもう一度説明を御願い出来るかな?」

从・∀・ノ!リ「うむ」

一歩踏み出したレインは、無い胸を張って言い放つ。

从・∀・ノ!リ「我は特殊なEWを開発したいのだ。
      そのために、おぬし達の組織と設備を使用させてもらいたい。
      この世界には魔力の知識がないようじゃが、機械関係の技術は我らよりも数段上なのでな」

<_プー゚)フ「せんせー、EWってなぁにー?」

(´<_` )「Enchant Weaponの略で『魔法兵器』のことだ……って、さっき説明されただろうがヴォケ」

( ´_ゝ`)「で、その特殊なEWって何よ?」

うむ、と、レインは勿体ぶってから詳細を言い放った。

从・∀・ノ!リ「超大出力の超大型EW――『龍砲』じゃ」



31: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:34:36.08 ID:te3tLM6t0
言い放たれた言葉は、しかし誰の反応をも呼ばない。
生まれたのは沈黙だ。
誰もが互いを見渡し、頭に『?』を浮かべている。

( ・∀・)「……いわゆる超大型の広域殲滅兵器を作り出したい、ということだよ」

<_プー゚)フ「おいおい、まさかそれを世界政府の本拠地にぶち込むつもりじゃねぇだろうな?」

( ・∀・)「だとしたら?」

<_;プー゚)フ「んなことしたらテメェ……た、楽しいことになるじゃねぇか」

「「「ならねぇよ」」」

その場にいたほとんどの人間のツッコミが入り、エクストが精神的なダメージを負って倒れる。
と、そこで静観していたギコが手を上げた。

(,,゚Д゚)「その対象は……まさか異獣か?」

( ・∀・)「流石に察しが良いね。
     来るかもしれない対決に備えるための決戦兵器だと思ってもらいたい。
     誓うよ、決して人との戦いに用いたりはしないと」

(´<_` )「なるほど……まぁ、それがレインの要望ならアンタが頷いたのは納得だ」

( ・∀・)「ただ、残念ながらそれだけに終わらなくてね」



32: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:36:58.64 ID:te3tLM6t0
レインを見て、次に皆を見て

( ・∀・)「超大型EWを『作るだけ』なら可能として、しかし出力元が通常のものでは駄目だとは解ると思う。
      我々が知るようなルイルを用いても、その膨大な出力を賄うことなど出来ないだろう」

ミ,,"Д゚彡「大出力を持つ相応の元が必要なのですね?」

フサギコが理解を示し、順にギコやシャキンも無言で一つ頷いた。
相変わらずエクスト辺りが首を捻っているが、話が進まないので無視する。

さて、通常のルイルが駄目だとすれば、

从・∀・ノ!リ「方法は二つじゃ。
       まず一つは多量の魔力を詰め込んで……という方法じゃが、これはあまり良い方法ではなくての。
       いくら人工魔力を作れるようになるとはいえ、その使い道はあり余るほどじゃからな」

(´<_` )「と、なればアレしかないか」

( ・∀・)「そう……魔法世界の純正ルイルだ」

( ´_ゝ`)「ん? ちょっと待て」

兄者が手を上げた。
一瞬だけ露骨に嫌な顔をしつつも、モララーは頷き一つで発言を促す。

( ´_ゝ`)「渡辺ちゃんから聞いた話だと、魔法世界の純正ルイルは既に無いんじゃなかったか?
      地殻変動期以前から世界中に砕け散ってたって話だろ?」

从・∀・ノ!リ「うむ、間違ってはおらん。
       しかし逆に問わせてもらうが……ルイルが最初からその形を持って存在していると思うか?」



35: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:39:38.18 ID:te3tLM6t0
( ´_ゝ`)「……うーん」

从・∀・ノ!リ「結論から言えば、純正ルイルには『核』が存在しておる。
      その核から魔粒子が生まれ、結晶化し、宝石のような煌きを発するようになるのだ」

<_プー゚)フ「っつーことは、俺らが普段から使ってるのは『実』みてぇなモンか」

从・∀・ノ!リ「そういうことじゃ」

(,,゚Д゚)「話からすると、魔法世界の純正ルイル核が存在しているのだな?
     しかもおそらく何処にあるのかが、アンタには解っている」

( ・∀・)「そしてその在り処が厄介だからこそ、適度で自由な軍事力を持つ我々を頼った。
     技術提供の第二の理由として、そうだね?」

モララーの問いに、レインは黙って頷く。

<_プー゚)フ「で、その在り処ってのは?」

从・∀・ノ!リ「EMAじゃ」

(*´_ゝ`)「エッチなマジシャン明日を夢見る?」

<_プー゚)フ「あのさー頼むからマジで一回氏ねよーセンスねぇよー」

(`・ω・´)「お前が言うな」

从・∀・ノ!リ「さっきの赤いEMAの動力が、魔法世界の純正ルイル核の片割れじゃよ。
       そしてもう一つの片割れは――」



36: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:41:26.60 ID:te3tLM6t0
時刻は午後八時過ぎ。
夕食を終えたモナーは、ミツキの話に耳を傾けていた。
それは食後とは思えないほどの重要な話であり

(;´∀`)「え……つまり、貴方の乗っていた機体には、そんな大事なモノが?」

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ」

モナーの家は、何やら神妙な空気で溢れていた。
テーブルを囲うように、モナー、シュー、レモナ、そしてミツキという男が並んで座っている。

話を聞けば、やはりあの山中に落ちた青いロボットの乗り手らしい。

そして彼の口から、その機体に搭載している大切なモノの話を聞いていたのだが――

(;´∀`)「……えっと」

ミツキの話に驚くモナーであるが、それよりも気になることが一つあった。

|゚ノ#^∀^)「…………」

レモナだ。

ミツキの反対側に座る形になっている彼女は、鬼のような目で彼を睨んでいる。
ここへ来て、ミツキを一目見た時からずっとこの調子だった。



38: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:44:01.98 ID:te3tLM6t0
(;´∀`)「あの、レモナさん? 様って呼んだ方がいモナ?
     何でミツキさんをそうやって、親の仇のように睨んでどうしたんですかモナ?」

|゚ノ#^∀^)「っていうか親の仇だし」

(;´∀`)「な、なんだってー!?」

慌ててミツキを見れば

ハ(リメー゚ノリ「そういうことになるのかな」

と、彼は苦笑混じりに答える。
恨まれている相手を目の前にしているとは思えなかった。

(;´∀`)「ど、どういうことですかモナ?」

ハ(リメ -゚ノリ「ん……まぁ、僕からは何も言えない。
      彼女から聞いてくれ」

|゚ノ#^∀^)「言うわけないじゃない馬鹿」

(;´∀`)「ひぃ! そんな睨んだら『女王様』って呼びたくなるからやめてぇ!」

その鋭過ぎる視線に、ついつい目を逸らすモナー。

lw´‐ _‐ノv「…………」

年上の貫録というモノが無さすぎる様子に、シューの口元が僅かに吊り上がった。



40: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:46:15.81 ID:te3tLM6t0
それをミツキが目ざとくそれを見つけ、感嘆といえる声を発す。

ハ(リメ -゚ノリ「シューが誰かに笑みを見せるなんて珍しいな」

lw´‐ _‐ノv「なっ」

(*´∀`)「え? それってシューが僕に懐いて――ヘアッオ”!?」

何かがモナーの股間を直撃する。
奇声を上げて倒れる彼を、レモナが心底気持ち悪そうな目で睨んだ。

ハ(リメー゚ノリ「ははは、シューの照れ隠しもなかなか可愛くなってきたね」

(;´∀`)「可愛く……?」

ハ(リメ -゚ノリ「うん、僕が初めてシューと会った頃は普通に刀で切りつけられたりしたものだよ」

腕をまくり、数本の刀傷を見せてくるミツキ。
何故か楽しい思い出を語るような口調に、シューが無表情で

lw´- _-ノv「……ポッ」

(;´∀`)「いやいやいや、『ポッ』じゃないモナ!」

|゚ノ#^∀^)「そうよ! なんでその時に殺してくれなかったの!?」

(;´∀`)「君は出来れば黙っててほしいモナ!」



42: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:48:52.62 ID:te3tLM6t0
早くも異世界の住人との、いわゆるワールドギャップに驚愕するモナー。
習慣の違いは覚悟していたし、実際その通りだったのだが、まさか感覚まで異なるとは。

(;´∀`)「異世界おそるべしだモナ……!」

|゚ノ;^∀^)「何言ってんのアンタ、キモい」

( ´∀`)「……そういえば、レモナは何で黙ってるんだモナ?」

|゚ノ#^∀^)「は? 何が?」

地べたの虫を見るような目に、モナーは震えてる視線を逸らしつつ

(;´∀`)「い、いや、レモナ様の親の仇がミツキさんだって言うけど
     すぐさま襲うようなことをしないし、それはどうしてかなぁごめんなさい殺さないでくださいモナ」

|゚ノ;^∀^)「それは、その、別に……」

ハ(リメ -゚ノリ「レモナ」

ミツキの優しい声が響く。

ハ(リメ -゚ノリ「今すぐに僕を殺したいならそうするといい。 別に抵抗はしない」

lw´‐ _‐ノv「ミツキ」

ハ(リメ -゚ノリ「いいから」

立ち上がりかけたシューを手で制するミツキ。
その視線は、逡巡するような表情を見せるレモナへと向けられている。



45: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:50:50.89 ID:te3tLM6t0
|゚ノ ^∀^)「……私は、確かに、アンタが憎い」

絞り出すような言葉は、確かにどす黒い怨念が籠っていた。
先ほどまであった明るい雰囲気が一瞬で消え失せる。

|゚ノ ^∀^)「でも」

首を振り

|゚ノ ^∀^)「アンタを殺す役は私なんかじゃない……アンタを殺すべき人は、別にいる」

ハ(リメー゚ノリ「うん、そうだね」

ミツキが満足そうに頷く。
自分の殺害という話題にはとても見えない表情だ。

そこにあるのは、ただただ圧倒的な違和感である。
モナーは背筋が凍るのを感じつつ

(;´∀`)「ど、どういう……?」

ハ(リメ -゚ノリ「ん、悪いけど……やっぱり僕の口からは言えない」

目を瞑り、首を横へ振る。
聞き出そうとしても、例え殺されようとも絶対に口を割らないだろう。
そんな冷たい雰囲気を臭わせる。

表情は笑顔のはずなのだが、それが笑顔に見えない何かがあった。



47: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:53:35.01 ID:te3tLM6t0
その時、いつもの雰囲気とは異なる部屋の中に、聞き慣れない音が聞こえた。

lw´‐ _‐ノv「――!」

まず動いたのは、刀を掴み、勢いよく席を立ったシュー。
続くようにレモナとミツキも窓へと駆け寄った。
釣られるようにモナーも視線を向け、そして目を見開く。

赤色だ。

甲冑にも見えるそれは、赤色の鉄身を構成する装甲。
闇夜に浮かぶ二対の紅蓮は、死神の瞳を彷彿とさせる不気味さがある。

それは巨人。
いや、それは人型兵器だった。

ハ(リメ -゚ノリ「来たか」

ミツキが暗い声で呟く。
青い機体の乗り手は、あの赤い機体の正体を知っているらしい。

lw´‐ _‐ノv「でも、何故ここが解ったんよ?
       魔力反応を調べようにも、私達の武装はロックしてるはず……」

ハ(リメ -゚ノリ「システム『キオル』の力だろうね。
       ただ、正確な場所までは把握出来ていないらしい……まだ、僕達を見つけたわけじゃなさそうだ」

確かに、赤い巨人はこちらを見てはいない。
不気味に光る機械の瞳を動かし、何かを探しているようにも見受けられる。



49: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:55:20.65 ID:te3tLM6t0
(;´∀`)「っていうか、こんな場所であんなモノが暴れたらパニックになるモナ!」

ハ(リメ -゚ノリ「それはいけないね。
       シュー、僕のEMAは?」

lw´‐ _‐ノv「隠してきたけど、受信装置は動いてる」

ハ(リメ -゚ノリ「ありがとう」

懐から取り出したのは、腕時計のような円を描く機械だ。
小さなパネルと数個のボタンがあり、ミツキはその一つを押した。

電子音。

ハ(リメ -゚ノリ「後は待つだけなんだけど――」

言葉が止まった。

突如、部屋の中を緊張感が走る。
痺れるような感覚を受け、モナーは思わず窓の外を見た。
そして危うく腰を抜かしそうになる。

(;´∀`)「……!?」

赤い巨人が、こちらを見ているのだ。



52: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:57:19.11 ID:te3tLM6t0
lw´‐ _‐ノv「レモナ」

感情の籠らない、しかし鋭い声。
見れば、レモナが灰色の巨剣を持って笑みを浮かべていた。
その剣身には幾筋かの光が走っている。

|゚ノ ^∀^)「私はミカヅキ様の味方。
      敵の位置を教えるのは当然でしょう?」

lw´‐ _‐ノv「一宿一飯の礼を欠かすか……オークスの人間の質も堕ちた」

|゚ノ ^∀^)「ふン、私はそういう面倒事は嫌いなの。
      ただミカヅキ様のために……それだけよ」

lw´‐ _‐ノv「前々から思ってたけど、レモナって可哀想だね」

|゚ノ ^∀^)「……何ですって?」

lw´‐ _‐ノv「可哀想、って言った。
       自分の親の仇さえも奪われている貴女は、もはや他人にすがって生きているだけ」

レモナの表情が凍る。

lw´‐ _‐ノv「もし、ミカヅキとミツキの決着がついたとして。
      レモナは以後の人生をどうやって生きるつもり? 何を先に見るつもり?
      それとも――」



53: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:59:27.99 ID:te3tLM6t0
|゚ノ#^∀^)「やめて……」

lw´‐ _‐ノv「また、誰かにすがって生きていくの?」

|゚ノ#^∀^)「やめろって言ってるでしょ!?」

(#)∀`)「げふぁ!? やっぱり僕かチクショー!」

振るった拳がモナーに直撃する。
頬を穿たれた彼は、ヨロヨロとよろけて床に倒れた。

ハ(リメ -゚ノリ(自分からシューを庇っておいてよく言うね……面白い人だ)

lw´‐ _‐ノv「ミツキ、私が時間を稼いでくる」

ハ(リメ -゚ノリ「うん、頼むよ」

(#)´∀`)「ちょ、ちょっと待つモナ!
      あんなデカイのを彼女が相手するって言うモナ!?
      確かにシューは強いかもしれないけど、あんなのと戦うなんて無理だモナ!」

あの巨大な拳や足が、シューの身体を容易く砕くシーンしか想像出来ない。
それほどまでに、あの赤いEMAが与えてくる威圧感は強かった。



56: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:01:51.23 ID:te3tLM6t0
悲痛な言葉に、ミツキはゆっくりと首を振った。

ハ(リメ -゚ノリ「落ち着いて、モナーさん。
       ここは確かに貴方の常識が適用される世界かもしれないけど、これから行われるのは――」

lw´‐ _‐ノv「私達の常識内での戦い」

止める暇もなく、シューが跳躍した。
開かれた窓から飛び出し、赤いEMAへと一直線に向かっていく。

(#);´∀`)「シュー!」

ハ(リメ -゚ノリ「モナーさん、貴方はこの家から出ないように……レモナは彼を護ってあげてくれ」

|゚ノ#^∀^)「……ふン、勝手に飛び出したら知らないフリするわよ」

ハ(リメ -゚ノリ「それでいいから、頼む」

ミツキも玄関から外へ出て行った。
未だ怪我は完治していないのだというのに、何をしに行ったのだろうか。
いや、それよりも

(#);´∀`)「シューが危ないモナ!」

|゚ノ ^∀^)「アンタ死にたいの?」

(#);´∀`)「!?」

走り出そうとしたモナーの背中に、冷たい言葉が突き刺さった。



58: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:03:17.15 ID:te3tLM6t0
たった一言。

――死にたいのか。

本来は現実味のない、笑い飛ばせるはずの一言がモナーの足を止めた。

(#);´∀`)「…………」

現実なのだ。
死が、現実まで這い寄っているのだ。
モナーは、無意識にそれを恐れているのである。

小さく膝が震えるのを自覚した。

|゚ノ ^∀^)「アンタが今出て行っても邪魔になるだけよ。
      だったらせめて、この窓から見える景色を一部始終、記憶に刻んでおきなさい」

頭を掴まれ、無理矢理に外を見せられる。
そこに展開していたのは――



60: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:04:48.78 ID:te3tLM6t0
月明かりが照らす住宅街。

人気がない道路の上に、一体の赤い鉄の巨人。
そして対峙するように立つのは、一振りの刀を腰に吊った少女。

『お前もここに来ていたのか』

ノイズが混じった声が聞こえた。

lw´‐ _‐ノv「ここで暴れるつもり?」

『奴が……ミツキが、ここで戦いたいと言うのであれば暴れよう。
 私個人としては、もっと人気の無さそうな場所で戦いたいものだが』

lw´‐ _‐ノv「だったら、ミカヅキがそういう場所に身を移して」

『そうもいかん。
 私はもう我慢が利かないのでな……こうして、貴様と喋っているのも煩わしいくらいだ』

鉄を軋ませ、赤いEMAは右腕を動かす。
握り拳の形を作り上げたそれは、シューへと向けられた。
それは最上級の威圧を発し

『ミツキを出せ』

lw´‐ _‐ノv「だが断る」

『ならば、引っ張り出すまでだ』



63: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:06:10.48 ID:te3tLM6t0
空気が変わった。
夜特有の湿ったものから、殺気の籠る乾いたものへと。
敏感に感じ取ったシューが腰を落とした次の瞬間

lw´‐ _‐ノv「――!!」

バックステップ。
追うように、巨大な右拳が打ち込まれる。

激音。

容易くアスファルトを砕いた赤き巨人は、しかし標的を潰せなかったことを手応えで理解する。
動きを止めることなく、次の動作へと移行。

lw´‐ _‐ノv「赤きEMA……青きEMAと対を為す名は『ウルグルフ』。
       敵として、不足無し」

向かってくるEMAを睨み、シューが刀を抜いた。
涼しい音が夜に響く。
引き金を付属させた特殊な刀が、飢えを発するかのように月光を反射させた。

前へ。

左足で蹴込み、迫る巨人へと跳躍。

『敢えて飛び込むか!』

しかし、そのタイミングを見極めたかのような動きで拳が打ち出される。
大気の壁を破壊し、小さな彼女の身体を容易く砕くであろう鉄の塊が迫った。



64: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:07:10.61 ID:te3tLM6t0
lw´‐ _‐ノv「ッ!」

息を詰め、トリガーを引き込み、一瞬だけ振動した刃を拳へと向ける。




直後、シューの身体が赤色に呑まれた。







66: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:08:27.14 ID:te3tLM6t0
その光景を、モナーは自宅の窓から見ていた。

(;´∀`)「シュー!?」

どう見ても直撃である。
シューの身体がその場から消えたのを、証拠として視認した。

鉄拳の威力は、おそらく高速で走る電車の激突以上の破壊力を持つだろう。
四肢が千切れ、首が飛び、衣服は塵のように霧散するはずだ。

そのような想像が、モナーの頭を過ぎる。
生きていられるはずがない、と。
しかし

|゚ノ ^∀^)「よく見なさい」

レモナの声を合図とし、モナーは弾かれるかのように顔を上げた。

さまよう視線はある一点で停止する。
ここから少し離れた一軒家の屋根の上に、無傷のシューがいるのを確認し

(;´∀`)「な、何で……」

|゚ノ ^∀^)「言ったでしょう?」

信じられないといった表情のモナーを面白そうに見やり

|゚ノ ^∀^)「これから起こるのは、私達の常識内での戦いだって」



67: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:09:43.25 ID:te3tLM6t0
月下。
住宅街の一角を戦場とする赤いEMAは、未だ命を保ち続けるシューを見ていた。
聞こえる声は満足そうな色で

『流石だ。
 伊達にレインの護衛を務めているわけではないな』

lw´‐ _‐ノv「手加減したくせに」

『ハ、貴様に加減をするほどの余裕はない。
 このような人が集まっている場所での戦闘など、長い間出来るものではないからな。
 私としては、さっさとミツキを引っ張り出したいのだが』

周囲は当初よりも騒がしくなっている。
見たこともない、赤い巨人が暴れているので当然だ。
その様子を、赤色の人口瞳が見渡し

『この世界は恵まれ、そして平和なのだな。
 このような鉄の巨人が戦闘を始めても、逃げもせずに物珍しそうに見るだけとは』

lw´‐ _‐ノv「手を出したら駄目」

『私を誰だと知る?
 オークス騎士団を統括する騎士長代理を担うからには、その刃の向け先など敵軍のみ。
 民を守るが我が使命であり、その命を無為に奪うことなどしない……異世界と言えどもな』

lw´‐ _‐ノv「まだ代理を名乗る?」



68: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:11:16.65 ID:te3tLM6t0
シューは無表情だ。
しかし、その声の調子は強い。

lw´‐ _‐ノv「あの人はもう死んだ。 それだけなのに」

『だが、まだ終わってはいない。
 あの方を、レモナの父を――騎士長を殺したミツキを放っておくことは出来ん。
 しかもあろうことか、機密兵器であるEMAを持ち出して敵国へ亡命するとは……もはや与えるべき罰は死のみ。
 レモナもそれを望んでいるからこそ、私にその役を託してくれたのだ』

lw´‐ _‐ノv「退くことなど出来ない、と?」

『一度向けた刃を下げるなど、騎士の誇りが許さない。
 逆を言えば刃を向けるという行為が、騎士にとってどれだけの覚悟を要するのかを――』

赤いEMAは突進の構えを作り出し

『推して知れ!』

鉄の圧壁が、シューに再度の牙を剥いた。



69: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:12:36.39 ID:te3tLM6t0
迫るは、まず圧迫感。
『退かねば死ぬ』などといった脅迫感を、無理矢理に押し付けられる。
続いて威圧感が檻として周囲を包みこみ、そして感覚を証明するかのように、鉄の身を持つ赤き巨人が雪崩れ込むのだ。

この三段にもなる恐怖を弾き飛ばせる者は少ない。
大概の戦士は、そこで全力を以って退避するだろう。
果たしてシューは

lw´‐ _‐ノv「――!」

その少ない者の内に入っていた。

足を敢えて地に張り付かせ、深く腰を落とす。
握った刀を後方へ構え、引き金を素早く絞り込んだのだ。

風が来る。
いや、『死』そのものが来る。
『死』を運ぶ赤き巨人が跳躍し、眼前にまで迫ってきた。

『逃げぬか!』

lw´‐ _‐ノv「逃げる自分に価値なんてない」

咆哮と共に落ちる鉄拳。
己克と共に振り上げる刀。

絶望的なまでの質量差を持つ二つの武器が、激突した。



70: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:13:56.97 ID:te3tLM6t0
さて、ここまではこの世界の常識に当てはまる光景と言えよう。
しかしこれよりは、異世界の常識が戦場を支配する。

lw´‐ _‐ノv「……!」

本来ならば圧倒的質量差で潰れるはずのシューが、何故か立っているのだ。

白色の光が花火のように散らばり、周囲が昼間のように明るく照らされた。
それらは、そのまま威力の程を語っている。

握る刀身が細かく振動し、悲鳴のような甲高い音を立てる。
悲鳴というからにはやはり力が足りないらしく、シューは二、三回ほど更にトリガーを引く。
応じるように青白い湯気のような光が立ち上り、肉迫している拳の盾となった。

それは、想像出来ても現実にはありえない光景だった。
自分の身よりを巨大な鉄の塊を、少女が刀一本で支えているのだから。

『貴様という、その気概を含めた技術……是非にも我が騎士団に欲しかったな……!』

lw´‐ _‐ノv「私は別に特別なんかじゃない。
       こんな心の奥から出る力なんて、誰でも持ってるから」

『しかし、それを自在に引き出せる者は多くあるまい……!』

lw´‐ _‐ノv「引き出せるから強いんじゃない。
       引き出せるようにと願い行動するのが、結果的に強さを生み出す」



72: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:15:07.59 ID:te3tLM6t0
そして、と言い、シューは腰を深く落とした。

lw´‐ _‐ノv「私はただ『護りたい』と願っただけ」

押し返す。
全身のバネを利用した伸びは、数百倍の重量を持つであろう鉄拳を弾き飛ばした。

『ッ!』

バランスを崩したEMAは踏鞴を踏み、一歩二歩と後退した。
その度にアスファルトが砕け、巨人の足跡が残されていく。

lw´‐ _‐ノv「私はね、ミカヅキ」

姿勢を戻したシューが刀を振った。
同時に柄尻からマジックカートリッジが排莢され、瓦屋根の上で跳ね回る。
刀身からは、まるで飛沫ように光が舞い散った。

その背後では大きな三日月が輝き、後光のように彼女を照らす。

lw´‐ _‐ノv「私は、ミカヅキやレモナみたいな『何かを無くす』ような動機で剣を振りたくない。
       そんな思いで戦えば、いずれ怨恨の鎖が地獄へ引きずり込もうとするから」

『何かを無くさなければ、何かを得ることなど出来ないだろう!』

lw´‐ _‐ノv「ミカヅキは何を得たいの? ミツキを殺して得られるモノって何なの?」

『それは――』



73: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:16:33.92 ID:te3tLM6t0
lw´‐ _‐ノv「誇り? 自信? 誰かの感情? それとも達成感?
      でもね、物事には必ず表があるからこそ裏があるんだよ」

再度、刀を構える。

lw´‐ _‐ノv「ミツキを殺したら、少なくとも私が許さない。
      その時は私がミカヅキになり、ミカヅキがミツキになることになる。
      でも、私はそういう道を歩むのは嫌」

『……怨恨の連鎖か』

lw´‐ _‐ノv「人は、誰かのためにしか動けないから」

でも、と言い

lw´‐ _‐ノv「私は、自分のために動いてみたいから」

跳躍する。
硬い音を立てながら夜空へ飛んだシューは、身体を捻らせ一回転。
その勢いは落下速度にプラスされ、更に更にと鋭くなる。

まるで、自身を刃に見立てたかのように。

『――!』

赤いEMAが迎撃の姿勢を作る。
重い駆動音を響かせ、右腕を盾とするように、だ。
それを、高い位置から冷静に見つつ

lw´‐ _‐ノv「そのために、私は――」



75: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:17:40.65 ID:te3tLM6t0
lw´‐ _‐ノv「ミカヅキの屈服を望む」

落下のインパクトと同時、刀を叩きつけるかのように振り抜いた。

交差する。

巨躯の鉄腕と、少女の白刃が、一瞬の光を撒き散らした。
続いて着地する音が響き

lw´‐ _‐ノv「だから、私はそれを為してくれるミツキやレインを護るんだ」

未だ衝撃に打ち震える刀を抑えるかのように、ゆっくりと納刀した。

『貴様……』

ミカヅキの声色には微かな震えが混じっていた。

それは怒りか感嘆か。

原因として、彼の操るEMAの右腕。
盾とした装甲表面に、抉られたかのような一文字の傷が入っている。

lw´‐ _‐ノv「私の意志は形として刻み、証明した。
       あとは、ミツキに任せる」

声と同時、高音が周囲一体を包んだ。
ひ、という音を伸ばし続けるそれは、鼓膜を特に刺激する。

北東の方角から、青い何かが来ることを示すかのように。



76: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:19:20.33 ID:te3tLM6t0
(;´∀`)「あれは……!」

満身創痍のミツキが操縦していたと思われる、青いEMAだ。
無人のはずのそれが、何故か低空を飛びつつこちらに向かってきている。

|゚ノ ^∀^)「決着、つくのかな……」

(;´∀`)「……レモナ?」

|゚ノ ^∀^)「…………」

望んでいるはずだろうに、何故かレモナの声色が沈んで聞こえた気がした。

窓の外へ視線を向ける。
赤いEMAとシューが対峙し、しかし両者の視線は北東へ向けられている。
待ち望んだ何かを迎えるかのような雰囲気だ。
そして、それは事実なのだろう。

音が段々と大きくなり、そして最高位に達し

(;´∀`)「!!」

大きな音が響いた。
微かに床が振動し、降り立った物体の重量を証明する。

そしてアパートの玄関から、ミツキが飛び出したのを見た。
彼は建物の陰に着陸したEMAへ近付こうとしている。

やはり、あの赤いEMAを倒すためなのだろう。
前屈姿勢気味の青い機体に足を掛け、手慣れた動作でコックピットを目指し始める。



77: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:20:36.15 ID:te3tLM6t0
と、そこで異変が起きた。

(;´∀`)「ミツキさん……!?」

動きが止まったのだ。
いや、正確にはミツキが苦しそうに喘息しているのが見える。
やはり怪我が完治していないのが理由なのだろうか。

|゚ノ;^∀^)「ちょ、ちょっとどうしたのよ……?」

レモナが、モナーを半分押しのけるかのように身を乗り出した。

そこで気付く。

ここからではミツキの様子が見えるが、おそらく赤いEMAからは見えないはずだ、と。
幸か不幸か、そういう位置に青い機体が降りてしまっている。

敵がなかなか動かないことを知れば、あの赤いEMAはどうするだろうか?

(;´∀`)「――!」

嫌な予感が背筋を撫でた。
このままでは危ない、と脳内に警鐘が鳴り響く。

(;´∀`)「ミ、ミツキさん!」

|゚ノ;^∀^)「あ、ちょっと!!」

もはや身体が止まっていてくれなかった。
レモナの制止の声を振り切るかのように、モナーは玄関から外へ飛び出した。



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