( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

26: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:49:49.78 ID:fjRVA6UF0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
(`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚] ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 
从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ
所属:四世界
位置:ロシア北部・古城
状況:襲撃準備

( <●><●>) |(●),  、(●)、| / ゚、。 /
( ̄ー ̄) ( ^Д^) (゜3゜) ,(・)(・), ┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) ('、`*川 爪゚ -゚) 从'ー'从 川д川 ( ´∀`)
所属:世界運営政府
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:???

(メ _) キオル
所属:魔法世界
位置:不明
状況:???

メ(リ゚ ー゚ノリ ル(i|゚ ー゚ノリ
所属:???
位置:???
状況:???



28: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:51:35.80 ID:fjRVA6UF0
反逆編
第三十三話 『今日の戦友は明日の敵と為り得るか』

ロシア北部に位置する古城の一室に当たる大会議室。
広い空間はデスクやPCによって削られ、床は歩く間もないほどに紙やファイルが散らかっている。
その隙間を縫うようにして存在しているのは様々な人間で、目の下に隈を作りつつも作業に没頭していた。

もはや時刻的には深夜となろうとしているのだが、室内の熱気や騒がしさは昼のそれと同等である。

(´<_` )「モララーさん」

( ・∀・)「――それは第二倉庫に――くれぐれも慎重は――うむ――あぁ、しかしそこで――」

弟者が他者と同様に疲労した顔で、電話四つを同時相手しているモララーに話しかける。
早口で言葉を放つモララーは、目線だけで『話せ』と告げてきた。

(´<_` )「明日には、人工魔力を使った対魔力装甲服、そして魔力武器や兵器の数が揃うぞ。
      あと例の『仕掛け』も完成したらしい」

報告を聞いたモララーは眉を微かに動かし、口の端を吊り上げた。
返事さえも出来ない状況を見て、弟者は自分の仕事に戻ることにする。

(*゚ー゚)「お疲れ様です」

デスクに座ると同時、しぃがお茶を持ってきた。



30: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:53:44.57 ID:fjRVA6UF0
(´<_` )「ありがとう、しぃさん。
     あとモララーさんのお茶も淹れてやってくれ。 もう無くなってたから」

(*゚ー゚)「あ、はい」

(´<_` )「しかしすまないな……皆にも手伝ってもらうようなことになって。
     慣れない仕事、疲れるだろ?」

(*゚ー゚)「いいえ、そんなことないですよ。
    こういう時こそ皆で力を合わせないと」

(,,゚Д゚)「おい、キャンベラの市街地図はどこやった?」

会議室に入って来たギコは、開口一番そんなことを言う。
これまで単独訓練漬けであったはずの彼であるが、今は一般兵を相手に日夜訓練の相手をしていた。

(´<_` )「えーっと、ほら、あの棚にあるから勝手に取ってっていいぞ。
     っていうか今回はそっち方面とは逆から攻めるって聞いてるけど」

(,,゚Д゚)「念のためにな。 どうも嫌な予感がする」

(*゚ー゚)「ギコ君、大丈夫? 最近は色々頑張ってるみたいだけど……」

(,,゚Д゚)「自己鍛練よりも、FC残党兵の訓練の相手をしてやる方が何倍も面白い。
    元が元だけあって鍛え甲斐もあるしな」



32: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:55:27.45 ID:fjRVA6UF0
FCの主力を担っていた総合精鋭戦隊は、今や世界政府に捕らわれている。
いわば二軍以下の兵しか揃っていない現状、その基礎能力の底上げは不可欠だ。

その訓練教官役を買って出たのが、暇だったギコだという話である。

(,,゚Д゚)「しぃも無理はするなよ」

(*゚ー゚)「うん、ちゃんと休憩とってるから大丈夫」

(,,゚Д゚)「しかし一週間とは……モララーも無茶を言ったものだ」

一週間。
世界運営政府本部がある、オーストラリア首都キャンベラへ攻め込むまでの期間である。

そのため、モララー達は久々の忙しさに身を委ねていた。

各地に潜伏させている兵から送られてくる情報をまとめ、その真偽を確かめていく。
それだけでも大変だというのに、今のFC残党は様々な事柄を同時に進めようとしていた。



38: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:57:42.32 ID:fjRVA6UF0
件の各地に送った兵が見つけてくる、未だ事情を掴めていない異世界の人間。

現状を説明し、FCの戦力とするために、この古城へ送られてくるわけだが
その詳しい身元確認や役割を与えるための検査など、一人一人にしなければならない。

そして兄者達が没頭している人工魔力の生成。
レイン監督の下、それは次々と生み出されていった。
それは同時に、対魔力装備や新武器、新兵器の充実も進められる。

しかしやはりというか、かなりの人手がいるらしく、地下にある格納庫には人がほとんどいなくなってしまった。

というわけで、今までは訓練しかすることのなかった一般兵なども手伝わされるハメになっている。
今や、FC残党で暇な人材など皆無であった。

それが一週間――今日で四日目だ。
皆の疲労も限界を迎えようとしている。

(´<_` )「でも――」

しかし、それは身体的な要因だけではなかった。



40: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 20:59:14.42 ID:fjRVA6UF0
(´<_` )「モララーさんの言葉がけっこう響いてるんだろうな……」

周囲を見る。
この会議室で忙しなく働いているのは、FCに所属する兵のみだ。
他世界の人間達は、別の会議室で動いているのだろう。

(*゚ー゚)「……ギスギスしちゃってるね」

(,,゚Д゚)「あんなことを言えば当然だろう。
    ただ、事実なだけに厄介な話ではあるが――」


――話は四日前に遡る――


( ・∀・)「我々は一週間後、世界政府に喧嘩を売る」

宣言されたかのように放たれた言葉は、一瞬の静寂を生んだ。
誰もが、その意味を頭の中で反芻する。

(`・ω・´)「この時期に、か?」

シャキンが皆の言葉を代弁した。
人工魔力の生成方法を得たとはいえ、それから数日しか経っていない。
作業に移ろうと思えばすぐに出来るとはいえ、一週間で戦闘準備など不可能に近い。



43: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:01:20.85 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「正直言えば、そろそろ時間の方も限界に近いと思うのでね。
     助けるべき人物達が、助ける準備に時間をかけたばかりに死んでしまうのは虚しいだろう?」

FCに置き去りにされた主力兵軍、そしてブーン達のことを言っているのだろう。
行方が知れないところから見て、世界政府に捕らわれているのは明白だった。

(*゚ー゚)「でももう一ヶ月以上経ってるのに……大丈夫なのかな?」

( ・∀・)「私が世界政府のトップならば、すぐに殺しはしない。
     何せ我々という存在を探さなければならないからね……情報を引き出そうとするはずだ。
     殺したら殺したで、それを公表するはずだしね」

皆の頭に、拷問や尋問という言葉が浮かぶ。

( ・∀・)「まぁ、彼らのことだからしぶとく生きているとは思う。
     しかしそれでも人間だ。
     出来るだけ早く救出するに越したことはない」

从・∀・ノ!リ「そのための一週間後襲撃、というわけじゃな」

( ・∀・)「既に世界政府の情報は集め終わっている。
     連中、どうやら魔法を用いた兵器の実用化に成功しているらしい。
     世界政府本部の周囲に見慣れぬ砲台群が確認されていてね……どうやら魔法兵器のようだ」

<_;プー゚)フ「マジか……厄介だな」



48: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:03:42.03 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「英雄世界の連中や、秩序守護者の技術的な協力があったのだろうね。
     敵兵もそれなりの魔法装備を持っていると考えて良い。
     つまり、我々にも対魔力装備が必要だということだ」

レインを見やり

( ・∀・)「人工魔力生成と同時に対魔力装備の件……出来るかね?」

从・∀・ノ!リ「人手さえ割いてくれれば可能としてみせよう」

自信満々に無い胸を張るレイン。
その横ではビロードとチンが頬を叩いて気合を入れている。

( ´_ゝ`)「一ついいか?」

( ・∀・)「あぁ」

( ´_ゝ`)「一週間で戦力を整えて攻め込むのは解った。
     何とかなるように俺も尽力してみるが、一つ……大切なことが抜けてないか?」

(,,゚Д゚)「俺もそこが気になっていた。
    どういう理屈で攻め込むのか、だな?」

<_プー゚)フ「え? どゆこと?」



50: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:05:55.19 ID:fjRVA6UF0
( ´_ゝ`)「俺達はいわゆるテロリスト――悪者として認識されてる。
      そういう今の状態で世界政府に攻め込んだら、まさに悪の組織そのものじゃないか。
      どんなに正論を言っても、正当性なんて認められるわけがないだろ」

ミ,,"Д゚彡「本格的に全世界が敵に回るでしょうね。
      それを突っ撥ねる何かがあるのですか?」

( ・∀・)「それに関してはいくつか考えがある。
     まぁ最悪、私がイクヨリに代わって世界の王になっても良いかもしれんね」

(´<_`;)「おいおい……本気か?」

( ・∀・)「とりあえずそこらについては心配無用だ。
     それよりも私としては、その後について一つの懸念がある」

( ><)「その後って何なんですか?」

( ・∀・)「君達、忘れてはいないかね?
     我々は四世界の戦力を混合させた部隊だということを。
     その最終目的が、実はそれぞれ異なるのだということを」

言葉に、全員の表情が固まった。
思い出したのか、それとも気付いたのか。



52: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:07:41.82 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「良い機会だから確認しておこうか。
     まず機械世界の代表者は……渡辺君も軍神君もいないので、今のところデフラグ君かな? どうだね?」

[゚д゚]「……異獣をぶっ殺すことが俺達の目的だ。
    そのために世界交差のメインシステムを世界政府から奪い返したい」

( ・∀・)「シャキン君達も同じかな?」

(`・ω・´)「意識に違いはあるが、概ねは同じだ」

( ・∀・)「では……英雄世界代表のミルナ君としては?」

( ゚д゚ )「俺個人としては異獣の滅びを手伝いたい。
     ただ、英雄神を始めとする主要人物はここにはいないからな……総意とは言い難いが」

( ・∀・)「魔法世界のレイン君」

从・∀・ノ!リ「先日言ったとおり、我は対異獣用EW『龍砲』の開発を望んでおる」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

从・∀・ノ!リ「そう……チンの言う通り、だからと言って異獣との戦いを望んでおるわけではない。
       あくまで『自衛的』だということを覚えておいてほしいのぅ」

(´<_`;)(あの『ぽっぽ!』に、そこまでの意味があったのか……)



54: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:09:57.47 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「さて残る我々だが、実を言えば異獣との激突は望んでいない者が多いだろうと思っている。
     戦いになれば身を守るために剣を持つだろうが……自ら戦おうと思っている者はあまりいないはずだ」

言葉に、FCに所属するメンバーが頷いた。

<_プー゚)フ「ん? 待てよ? ってことは……二つの意見に分かれるっつーことか?」

異獣との激突を望む機械&英雄世界。
逆に望んではいない不滅&魔法世界。

しかし現状、それぞれの世界の目的は世界政府に集約されている。
つまり逆を言えば

ミ,,"Д゚彡「目の前の問題が片付けば……今度は私達が争う可能性がある、と?」

(`・ω・´)「世界交差を進めるための勢力と、阻止せんとするための勢力か。
      まるで振り出しに戻る、だな」

<_;プー゚)フ「おいおい……話し合いで何とかならねぇのか?
         俺は嫌だぜ、お前らと戦うなんて」

( ・∀・)「だ、そうだが?」

[゚д゚]「残念だが退くわけにいかん……俺達に残されたチャンスはこれが最初で最後だろうからな。
    世界交差は、この世界で実行する」



58: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:12:08.20 ID:fjRVA6UF0
从・∀・ノ!リ「世界交差とやらを、別の世界で行うわけにはいかんのか?」

[゚д゚]「それが可能だとして……しかし、他世界に行くのにどれだけの準備と力が必要か理解出来るか?
    異獣が機械世界に留まってる今がチャンスなんだ。
    もしこの世界を諦められたりして、遠くの世界へ行かれたら……もう打つ手はなくなる」

言葉は一つの意味を示唆する。
機械世界のような滅びを受ける世界が更に出てしまうのだ、と。

生まれた沈黙の中、しかしそこでミルナが手を上げた。

( ゚д゚ )「……おそらくだが、異獣はこの世界を諦めるつもりはないはずだ」

(,,゚Д゚)「何故、それが言える?」

( ゚д゚ )「奴らは既にこの世界に侵入している」

(´<_`;)「なっ」

(;`・ω・´)「何だと……?」



60: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:13:55.73 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「kwsk」

( ゚д゚ )「FC本社が強襲を受けた時の話……つまり一ヶ月も前になるが、俺はその戦闘でヒートと出会うことが出来た」

<_プー゚)フ「ヒートって確か、お前の好きな女だったよな。
        今は病室で寝てるって話は聞いてるぞ」

( ゚д゚ )「問題はそこじゃない。
     ヒートと出会った同時、二人の男女が俺の目の前に現れたんだ」

( ´_ゝ`)「二人の……?」

(`・ω・´)「あの時、お前を呼んだ声の主か」

( ゚д゚ )「そうだ。
     赤髪の男と青髪の女……ヒートはそいつらに怒りを向けていた」

( ・∀・)「聞いた話だと、そのヒートという女性は異獣に捕えられて行方不明だったらしいが……なるほど。
     それが本当ならば、異獣はこの世界に侵入している可能性があるね」

[;゚д゚]「馬鹿な!」

デフラグが、額に汗を浮かべて立ち上がる。

[;゚д゚]「奴らが秩序を超えてまでこの世界に侵入してきたのか!? ありえん!」



63: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:16:17.21 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「では聞くが……機械世界や他世界にも秩序があるのだろう?
     だとすれば、そこへの侵入も不可能のはずだが」

[;゚д゚]「シャキン達が戦った英雄も言っていたらしいが、この世界の秩序は本当に特別なんだ。
    『滅び』の要因となる要素を全て弾き、消去する強力な干渉力を持ってるんだからな」

(,,゚Д゚)「何やらよく解らんが……本来ならば、異獣はこの世界に侵入出来るはずがないのか」

[;゚д゚]「ミルナ、お前の勘違いじゃねぇのか?」

( ゚д゚ )「俺に聞かれても何とも言えん。
     本人であるヒートに聞けば何か解るかもしれんが……意識が戻っていない以上、な」

( ・∀・)「ならば保留だね。 話を戻そう。 四世界の目的の相異という点についてだが」

皆の注目が、再びモララーに注がれる。

( ・∀・)「ここで問い、そして帰ってきた答え……それは四世界の一部の意見だと私は思う。
     例えば機械世界の住人で、世界交差を望んでいない者もいるかもしれない。
     だからここで私は提案しよう」

目を細め

( ・∀・)「これからの戦闘準備に当てる一週間。 それぞれの世界の住人は意見をまとめておいてくれ。
     足並みを揃えるという意味でも、是非にやってほしい」



66: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:17:46.53 ID:fjRVA6UF0
そんなことがあったものだから、それぞれの世界の住人同士で集まる時間は必然と多くなる。
生まれるのは無意識下での『心の壁』であり、自然と世界同士の交流も減っていく結果となった。

(,,゚Д゚)「あのエクストですら姿を見なくなったからな……奴は奴で思うところがあるのだろうか」

(´<_` )「しかし、それにしてもモララーさんの考えが解らん。
     確かに足並みを揃える必要はあるかもしれんが……あの言い方だと『各自勝手にやれ』って言っているようなものだ」

(,,゚Д゚)「あぁ、下手すれば空中分解……いや、同志討ちで自滅か?」

(´<_` )「特に機械世界には強硬派が多いと聞くしな。
     後で敵となるのならば、今の内に潰しておこうなんて言い出しかねんぞ」

(,,゚Д゚)「上手く軍神辺りが抑えてくれるのを祈るしかない。
    せめて、世界政府との決着がつくまでは協力状態でいたいものだが……」

と、そこで会議室の扉が開かれた。
入ってきた人物に、ギコ達は一瞬だけ訝しげな視線を向ける。
見慣れない人間だったからだ。

ハ(リメ -゚ノリ「ここにモララーさんがいると聞いたのですが」

(,,゚Д゚)「お前は……」

ハ(リメ -゚ノリ「ミツキといいます。 ここへ到着した時の自己紹介以来ですね」



69: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:21:04.54 ID:fjRVA6UF0
(,,゚Д゚)「……あぁ、俺はギコだ。 よろしく頼む」

ハ(リメ -゚ノリ「えぇ」

柔らかい声でありながら、その顔に笑みはない。
こちらを信じてはいない証拠だ。
とはいえ、まだ出会ってから数日なのだから仕方ないだろう。



|゚ノ ^∀^)「ん……あれは……?」

会議室の外。
冷たい空気に満ちた廊下で、レモナはある気配に気付く。

|゚ノ ^∀^)「ミツキ?」

薄く開いた扉の奥にミツキの後姿が見えている。

|゚ノ;^∀^)「…………」

僅かな逡巡。
ここへ来てから、彼女はミツキの声どころか顔さえも見ていない。

父親の仇なのだから、避けて当然ではあるが。



71: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:22:50.34 ID:fjRVA6UF0
しかしレモナは迷っていた。
あの夜、ヘリの中で軍神が言った言葉。

――アンタは恨む相手を間違えとる。
   レモナの父親を殺したんは、その男やない――

ずっと心に引っかかっていた。

父親を殺したのはミツキではなくダイオード。
突然そう言われても、今までミツキを犯人だと思い込んでいたレモナには信じられない話である。

しかしここへ来てから、そのことについて冷静に考えてみたのも事実。

掘り出すのは古い記憶。
突如として鳴り響いた城の警報音は、未だ鮮明に記憶の中に刻まれている。



『――!』

警報という甲高い音が、記憶の始まりを示した。

数年前の当時、彼女は城内の庭で剣の稽古をしていた。
警報を聞いた時、『泥棒か何かが侵入したのだ』と直感したのを憶えている。



73: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:24:05.69 ID:fjRVA6UF0
汗も拭わず、剣を持って現場へと走った。
今思えば非常に無謀な行動ではあるが、当時の彼女は父親に認めてもらいたい一心だったのである。

侵入者を討ち取れば、きっと父は褒めてくれる。
一人前だと言ってくれる。

もはや妄想に似たレベルの未来を思い浮かべ、彼女は意気揚々と足を動かした。

途中で一人の兵を捕まえ、現場の位置を知る。
地下研究格納庫だった。
開発中のEMAや魔法兵器を開発している、レモナにはまったく縁の無い場所。

慣れないそこへ足を向けた時点では、もう既に父親の命は奪われていたのだと思う。

|゚ノ ^∀^)『……え?』

その声のトーンや、沈黙の間隔さえも鮮明に憶えていた。
更に記憶に焼きついたのは、格納庫の中心近くに赤い色。

見たことも無い量に驚き、それが血だと理解するまで数秒を必要とした。

|゚ノ ^∀^)『……え?』

二度目の疑問の声。
それはぶち撒かれた血液ではなく、その上に立っている人物へと向けられていた。



78: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:25:54.56 ID:fjRVA6UF0
ハ(リメ -゚ノリ『…………』

ミツキ。
父親の直属の部下にして、オークス王国のツインエースと呼ばれた二人の内の一人。
レモナがまだ幼かった頃の記憶から存在している、いつも笑顔で優しかった男。

視線は自然と下へ向かい、そこでやっと気付いた。
己の父親が、無惨な骸を晒していることに。

|゚ノ;^∀^)『何……これ……?』

解っていた。
誰かに答えられなくても、解っていた。

ミツキがこちらを見る。
表情からは笑顔が消え失せており、眉のハの字に曲げていた。
とても哀しそうで、しかしレモナからすれば違和感を受ける顔だ。

ハ(リメ -゚ノリ『ごめん』

その言葉で、レモナは瞬時に理解する。

|゚ノ;^∀^)『ミ、ミツキ……貴方……?』

ハ(リメ -゚ノリ『……ごめん』



82: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:27:32.06 ID:fjRVA6UF0
それは肯定だったのか謝罪だったのか。
今にしてみれば疑問を持ってもおかしくない発言であったが
当時のレモナには、そんな思考の猶予など残されていなかった。



|゚ノ;^∀^)「――――」

そこで記憶が途切れている。
いや、途切れているというよりも閉じ込めたかのような感覚。
思い出そうとすれば思い出せるはずなのだが、意識がそれを拒んでいるような。

|゚ノ;^∀^)「何……なの?」

今までこんなことはなかったはずなのに。
記憶が途切れている、などということさえも思ったことがなかったのだが。

鍵が必要だ、と直感的に思った。
何かしらの理由で封印された記憶を思い出すにはキーが必要だ、と。

|゚ノ;^∀^)「……っ」

頭の中を探ると、頭痛がする。
気分が悪い。
何かを忘れているのは解っているのに、それを思い出せない苛立ち。



85: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:29:02.51 ID:fjRVA6UF0
額に汗を浮かべ、ここから離れようかと思った時。

(´<_` )「アンタは確か魔法世界の人間だったよな。
     世界政府に回収された青いEMAを取り戻したいんだっけ?」

弟者の質問の声が聞こえる。
それはミツキへと向けられており、レモナの興味を引くには充分であった。

思わず扉の傍へ。
聞き逃すまいと、会議室内へ神経を集中する。

ハ(リメ -゚ノリ「それもありますが……僕はモナーさんを助けたいですね」

|゚ノ;^∀^)(え……)

ハ(リメ -゚ノリ「一晩とはいえ、モナーさんには良くしてもらいました。
       それにシューの言うことを信じてくれた数少ない人ですから」

シューとは、あの細目の女剣士である。
イルド国の王女であるレインの護衛を務める実力者だ。
ほとんど同い年のレモナは、彼女を一方的にライバルとして見ている。



89: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:30:56.17 ID:fjRVA6UF0
ハ(リメ -゚ノリ「珍しいんですよ。
       シューが他人に懐くなんて」

(,,゚Д゚)「そうなのか」

(;*゚ー゚)「えっと、私は懐かれなかったような……ちょっとショックかも」

ハ(リメ -゚ノリ「落ち込むことはありません。 それが普通ですよ」

何やらよく解らないフォローに、しぃが苦笑する。
他愛のない世間話に移行したらしい。

途中、モララーが弟者に近付いて耳打ちするのが見えた。
何やら仕事を任されたらしく、弟者は真剣な顔で強く頷いている。
どうやら雰囲気的に解散の流れになったようだ。

レモナは、無意識に諦めの息を吐く。
しかし

(´<_` )「で、ミツキさん……アンタ、あのレモナって子に恨まれてるって聞いたけど」

などと弟者が核心を突く発現をかましたので、レモナは驚きに目を見開くこととなった。



94: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:32:45.03 ID:fjRVA6UF0
ハ(リメ -゚ノリ「どこでそんなことを?」

(´<_` )「モララーさんがレインさんから聞き出したらしい。
     仲間となる人間の事情は知っておくべきだ、って言い訳してたけど」

ハ(リメ -゚ノリ「……仲間とはいえ、個人の過去を探って言いふらすのはどうかと思いますが」

(;*゚ー゚)「べ、別に悪気があったわけじゃないわ、きっと、多分。
     モララーさん、ほら、あの、その、ひ、控えめに言って犯罪的っていうか――」

控えめで犯罪的となれば、控えなければ何になるのだろうか。
頭の隅、好奇心と共に生まれた問いは、しかし頭を振ることで霧散させる。

ハ(リメ -゚ノリ「でもまぁ……全て終わる前に誰かに話しておきたかったので、構いませんよ」

あくまで柔らかい声で応対するミツキ。

(´<_` )「で、概要は聞いてあるんだが……レモナの父親を殺したのは、本当にアンタなのか?」

ストレートな問い――直線的であるが故に回避不能。
はぐらかすことなど出来ない。
ミツキは少し俯き

ハ(リメ -゚ノリ「正確に言えば、殺したのは僕ではありません」



99: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:34:37.40 ID:fjRVA6UF0
|゚ノ;^∀^)「……!!」

(,,゚Д゚)「ではやはり……他に殺した誰かがいたのか?」

ハ(リメ -゚ノリ「はい、僕はその瞬間も見ていました」

カチリ、と記憶が分離していく。
二分されたその間に、消えていた記憶が割り込んでくるような感覚。

(´<_` )「なら何故、それをレモナやミカヅキに言わない?
     ちゃんと事情説明をすれば、ここまで恨まれることもなかったと思うのだが」

ハ(リメ -゚ノリ「……これは傲慢な考えですが」

前置きし

ハ(リメ -゚ノリ「僕は彼らを護りたいんです」

(*゚ー゚)「どういう……」

ハ(リメ -゚ノリ「僕の見た犯人は、軍神が言っていた通りダイオードという女性騎士でした。
       しかしただの騎士ではなく――そして、人ではありません」



101: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:36:04.73 ID:fjRVA6UF0
|゚ノ;^∀^)「ッ!」

言葉に反応するように、失われていた何かが合致した。
あの、父親を殺された場面に新たな記憶がはめ込まれる。

それは背景。

地下研究格納庫で行われた殺害の場面に、地下研究格納庫としての背景が色を見せる。
頭の中に組み上がった記憶という映像を再生し、レモナは新たな事実に目を見開く。

|゚ノ;^∀^)(これ、は……?)

それは、想像していたまともな光景ではなかった。

鋼鉄で構成された壁や床に無事な部分が無かったのだ。
全てに斬線が入り、焼け焦げ、そして溶かされている。

それは一つの真実を示唆していた。

ここで、人ではない何かが暴れたのだ、と。

もはや人のすることでは――いや、人の出来ることではない。
人以外の、もしくは人を超越した何かが行った悪魔のような所業。

その中に父親が血塗れで伏せており、傍らに哀しそうな表情をするミツキがいた。



104: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:38:10.00 ID:fjRVA6UF0
ハ(リメ -゚ノリ「あれは挑んではいけない存在……そして、戦ってはいけない存在です。
       挑めば殺され、戦えばこの世の地獄を見るでしょう」

ミツキの声が引き締まっている。
あれは真剣だとかそういう感情ではなく、純粋な恐怖に縛られている声だ。

ハ(リメ -゚ノリ「だから僕は犯人となった。
       ミカヅキ達がダイオードへと目を向けないためにも、彼女以外の人間が犯人とならなければならなかった」

(,,゚Д゚)「……確かに傲慢だな」

ハ(リメ -゚ノリ「それでも良いんです。
       下手にダイオードを追いかけ、そのまま地獄を見て死なれるよりは」

|゚ノ;^∀^)「……ミツキ」

彼の顔には優しい表情があった。
眉尻を少しだけ曲げた、苦笑に近い顔にレモナは何かを感じる。

从・∀・ノ!リ「ふむ」

|゚ノ;^∀^)「っ!?」

背後からの声に、レモナはびくりと肩を震わせる。
慌てて振り向けば、そこにはレイン達が神妙な顔で立っていた。



108: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:39:51.24 ID:fjRVA6UF0
从・∀・ノ!リ「何か事情があるとは思っておったが、成程な」

|゚ノ;^∀^)「レ、レイン……」

从・∀・ノ!リ「いや、残念ながら我も知らなかったのだ。
       青いEMAを持って亡命してきた時は何事かと思ったが、そういう理由があったとは……」

納得したかのように頷くレインの横で

( ><)「つまりミツキさんは、レモナさんやミカヅキさんに倒されるために?」

从・∀・ノ!リ「手っ取り早く敵となるには他国へ亡命すれば良い、と考えたのだろう。
       EMAを持ってきたのは、おそらくその敵意を更に確固たるものにするためじゃな」

|゚ノ;^∀^)「…………」

考えたことを、レインが言い当てる。

从・∀・ノ!リ「レモナ、どうする?」

|゚ノ;^∀^)「え……」

从・∀・ノ!リ「軍神の言ったこととミツキの証言から、あの話は限りなく真実に近いはず。
       しかし、嘘だと言ってしまえば通ってしまうような、そんな脆さも兼ね備えている」



111: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:41:37.24 ID:fjRVA6UF0
選べ、ということなのだろう。
ミツキや軍神の言うことを信じず、彼を仇として見るか。
それとも彼らの言うことを信じて、仇を諦めるのか。

|゚ノ;^∀^)「…………」

从・∀・ノ!リ「やはりすぐには答えは出ぬよのぅ。
       まだ出撃まで三日あるから……よく考えておけ」

レモナの頭を撫で、立ち上がる。

从・∀・ノ!リ「ちなみに我はどちらを選んでも構わないと思っておる。
       信じないのであればミツキの思惑通りだろうし、信じるのであれば真実を心に刻むことが出来る。
       どちらが正しいのかなど誰にも解らぬ……おぬしの好きなようにするといい」

護衛であるチンとビロードを引き連れ、去ろうとするレイン。
その後姿に、レモナは先ほど思った疑問をぶつけてみる。

|゚ノ;^∀^)「あの、どうしてここへ?」

从・∀・ノ!リ「……少し気になる顔がおってな。
       雰囲気的に話を聞けるような状況ではなさそうなので、出直すよ」



113: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:43:20.06 ID:fjRVA6UF0
|゚ノ;^∀^)「気になる顔……?」

从・∀・ノ!リ「別に悪いことを企んどるわけじゃないから言っておくか。
       あの双子、流石兄弟とやらが気になるのだ……死んだ兄によく似ておってなぁ」

はは、と笑い、彼女はそのまま誰もいない通路を歩いていった。

気になるのは理解出来る。
しかし、レインには解っているはずだ。
あの流石兄弟が、レインの兄とはまったく関係の無いことを。

|゚ノ ^∀^)「……それでも」

偽者だと知っておきながらも話を聞こうとするレイン。
それはやはり、記憶の中の兄を投影しているからなのだろうか。

|゚ノ ^∀^)「どちらが正しいのかなんて、誰にも解らない……」

レインが残した言葉を呟く。
心の中で反芻し、覚悟を決めて渦巻く疑問や混乱に対峙した。


解らないのならば、せめて――



116: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:44:58.47 ID:fjRVA6UF0
三日後。

オーストラリア西部。
首都であるキャンベラの郊外に、世界運営政府の本部があった。

白色を基調とした教会のような神秘さを持つ巨大な建物。

しかし、華やかなのは外見だけだった。

今や内部は、武装した兵士が普通にうろつく物騒な空間と化している。
何か強大な存在に警戒するかのような空気が、建物全体を満たしていた。

( ̄ー ̄)「……このピリピリした空気、慣れませんねぇ」

最上階に位置するこの部屋にも、その雰囲気は伝染していた。

広く天井が高い室内の中心にあるのは、一組の巨大な機械群。
かつては都市ニューソク地下に設置されていた、世界を繋げるための装置である。

周囲には様々なカプセルのような物体があり、中には輝かしい色を放つ宝石のような石が収められている。



120: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:46:27.29 ID:fjRVA6UF0
イクヨリは、そんな光景を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
白い丸テーブルと椅子に腰掛け、午後のティータイムを堪能するかのような姿勢である。
そして彼には客が存在した。

( <●><●>)「もうしばらくの辛抱ですよ」

対するように座っているのは黒衣の男。
目深にかぶったフードから、爛々と輝く一対の瞳が顔を覗かせている。
彼もまた、手元にあるコーヒーを幾度か口付けていた。

( <●><●>)「既に異獣はこの世界に存在しています。
        しかし数はたったの二人――最近は四人に増えたようですが。
        まぁ、それさえ消滅させることが出来れば、この世界の恒久平和は約束されます」

( ̄ー ̄)「たった四人で何が出来ると言うのでしょう」

( <●><●>)「流石の私にも解りませんよ」

( ̄ー ̄)「だからこその厳重警戒ですね?」

( <●><●>)「しかし御安心ください。
        ダディとダイオードが行方を探して消去するために動いていますし
        この施設は高名な英雄が守ってくれています」



122: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:48:02.82 ID:fjRVA6UF0
( ̄ー ̄)「……しかし、何か懸念することがあるのでしょう?
      あまり長い付き合いとは言えませんが、今の貴方には落ち着きというものが微かに欠けています」

言葉に、黒衣の男は少し俯く。

( <●><●>)「状況的に出来過ぎている感があるからですかね。
        それに未だ見つからない厄介な組織もあります」

( ̄ー ̄)「FCですか……情報を得ようにも、捕らえた兵は口が異常に固いですし困ったものです。
      まぁ、もしもの時のための策がいくつかありますがね」

( <●><●>)「策ですか?」

( ̄ー ̄)「指輪という強力な戦力を持て余すわけにもいきませんからねぇ……彼らに少し働いてもらいますよ」

イクヨリの口端が吊り上る。
今まで見せていた柔和な笑みではなく、それは狡猾な笑みだった。



125: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:49:36.36 ID:fjRVA6UF0
世界政府本部の建物。
その一室に、タマネギ――英雄神がいる。

,(・)(・),「んー」

そして眼前に、跪く格好で頭を下げている英雄が三人。
身長がまるで異なる三人は、しかし同じ姿勢で同じ表情をしていた。

┗(^o^ )┓「英雄神様、御用でしょうか」

\(^o^)/「我らクン三兄弟、どのような願いでも叶えてみせましょう」

|  ^o^ |「それが例え、世界の破滅だろうと」

,(・)(・),「いや、そんな仰々しく構えんでも良いナリだす。
     君らに一つ大切な話があるだけナリだすよ」

ぱたぱたと小さな手を振り、タマネギは楽な姿勢でクン三兄弟を迎えている。

┗(^o^ )┓「大切な話、とは?」

,(・)(・),「この後のことナリだす」

\(^o^)/「というと?」



129: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:50:52.84 ID:fjRVA6UF0
,(・)(・),「今、この施設に現存する純正ルイルは英雄世界のモノだけナリだすな。
     そしてその純正ルイルにはおいどん自体が入っているわけナリだす。
     つまりおいどんが消滅することがあれば、それは世界交差の成功を示すナリだす」

|  ^o^ |「それをさせぬために我々がいるのですが」

心底不思議そうに首を傾げる三人。
完璧主義で、それを為すことの出来る実力を持つが故に『万が一』を考えないからだ。

,(・)(・),「物事にはイレギュラーが存在するナリだす。
     おいどんも今回は一応、割と本気で動いたりするナリだすが
     もし、おいどんが消えて無くなってしまったら……主らはどうするつもりナリだすか?」

┗(^o^ )┓「ありえませんね」

,(・)(・),「いや、だから――」

\(^o^)/「我々がここにいる限りはイレギュラーなど起きません」

,(・)(・),「強気なのはいいけど――」

|  ^o^ |「英雄神様は私達の実力に何か不満があるとでも?」

,(・)(・),「ないナリだすがなぁ――」



132: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:52:46.17 ID:fjRVA6UF0
為らば良し。
そう呟き、クン三兄弟が身体を立ち上げた。
腰に差したそれぞれの武器が揺れ、硬い音を奏でる。

,(・)(・),「君らホントに自信家ナリだすなぁ」

┗(^o^ )┓「自信ですか……それは違うと思いますよ」

\(^o^)/「確かに自覚はないですね」

|  ^o^ |「やれることをやるだけです。
      ただ私達の場合、そのやれることの範囲が狭く深いのですが」

そう言い残し、三人の英雄は部屋を出て行った。
敵が近いのを本能的に感じているのだろう。

見送った英雄神は、ちょんまげをポリポリと掻きつつ

,(・)(・),「……まぁ、やれることはやったナリだす。 後は最後まで見届けるだけナリだす」

その目は虚空を見つめ

,(・)(・),「しかしbQ0は、よくぞここまでの規模に成長することが出来たナリだすなぁ。
    ま、それももう終わりナリだす。
    おいどん――いや、英雄の遺伝子を継ぐヒーロー達が止めてみせるナリだすよ」



135: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:54:50.73 ID:fjRVA6UF0
世界政府本部の地下。
特殊部隊である『ラウンジ』は、来るかもしれない敵に備えて準備を進めていた。
部隊長を務めるプギャーも、皆が忙しそうに歩きまわる室内で指揮を執っている。

(゜3゜)「プギャーさん」

( ^Д^)「ん?」

呼び止められて振り返れば、少し懐かしさを感じる顔があった。
しかし名前までは思い出せず、プギャーは済まなそうに口を開く。

( ^Д^)「すまん、誰だったか」

(;゜3゜)「酷いですね……貴方の部下の田中です」

( ^Д^)「あぁ……思い出した。 しばらく中国の方へ行っていたと聞いているが」

(゜3゜)「そっちはもう片付きました。 にしても、随分と物騒になっているようで」

周囲を見渡す。
確かに以前と比べれば、存在する人の数も増えているように見えるだろう。
重要な任務に就いている兵以外は、全て呼び戻したのだから当然だ。

( ^Д^)「ダイオードから聞いた話では、異獣は何処から現れるか解らんらしいからな」



138: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:56:03.62 ID:fjRVA6UF0
(゜3゜)「怖いですねぇ」

( ^Д^)「で、何かあったのか?」

(゜3゜)「外周部に備え付けられた全ての魔砲の準備が完了しました。
    これで陸空海どこから来ても、砲撃の嵐を見舞うことが出来ます」

( ^Д^)「だと良いが、相手は化け物だ……人間の作った兵器で対抗出来るのだろうか。
     ダイオードの言によれば、思念体やゴーストの類ではないから叩けるらしいが」

(゜3゜)「何事もやってみなきゃ解らんですよ」

( ^Д^)「あぁ、そう――!?」

警報。

室内が一瞬赤く染まる。
プギャーの声に被さるように響いたそれは、世界政府本部すべてに行き渡った。



143: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:57:49.73 ID:fjRVA6UF0
(゜3゜)「まさか……!?」

( ^Д^)「さっそく来たということだ! おい、誰か情報を持ってこい!」

部下の一人が受話器を耳に当ててまま

「北東部山岳から敵襲! 多数です!!」

( ^Д^)「多数だと……? 何故気付かなかった!」

「そ、それが『突如として現れた』と!」

(;^Д^)「馬鹿な! 何者――」

言いかけ、そして気付く。
多数ということは異獣ではない。
部下の慌てようから見て、その敵は予想外の種類のはずだ。

( ^Д^)「奴らか……!!」



146: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 21:59:00.84 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「魔法の力とはなかなかに素晴らしいものじゃないか。
     子供の頃に夢見た透明人間を、まさかこの歳で実演出来るとは思わなかった」

モララーは岩の上に立っていた。
周囲にも似たような岩石が転がり、その挟間から灰の色が見え隠れてしている。

色の正体は人間だ。

灰色の装甲服を着込んだ兵達が、各々の武器を携えて立っている。
数にして約三百。

久々に感じる晴天の空気を喜ぶかのように、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。

(´<_` )「しかし流石に見つかってしまったようだな」

双眼鏡で、数km先にある世界運営政府本部を見ていた弟者が、ポツリと呟く。
やはりその身は装甲服に包まれ、その右手には黄金の盾が握られていた。

( ・∀・)「ここまで近付けただけで儲けものだよ」

(;´_ゝ`)「っつーかすげー……未だに信じられない俺がいるんだが」

兄者が見上げる先には、空が歪んでいる光景。
歪みはドームのようにモララー達を包みこんでいた。



151: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:00:47.86 ID:fjRVA6UF0
歪みの正体は魔力だ。

渡辺がかつて作っていた『歪』の魔力。
その話を元としてレインが再現したモノにいくつかの魔力をブレンドして作った、いわば『不可視のカーテン』。
歪められた空間は周囲にある物体を隠し通し、向かい来る全ての物質を逸らす、といったものだ。

(,,゚Д゚)「もう少し近付きたかったところだがな……。
    森の中にさえ入れば、後は自力で行けた」

そう言うギコの視線の先には、一面の緑色がある。
岩肌を露出させた山岳と、世界政府本部を分け隔てるかのような森があるのだ。

( ・∀・)「各世界代表者、返答求む」

モララーが通信機に呼び掛けると

『こちら英雄世界、問題ない』

『魔法世界もばっちおっけーじゃ』

『機械世界……ウチらも位置についたよ』

それぞれの部隊から、ミルナ、レイン、軍神の順に返事が届いた。
車椅子に乗ったフサギコが、それを確認して吐息する。

ミ,,"Д゚彡「結局、四部隊の混成は出来ませんでしたね……」

( ・∀・)「それぞれ主張が異なるからね。
     だったら、最初から分けて行動させた方が効率がいい」



154: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:02:53.64 ID:fjRVA6UF0
(´<_` )(モララーさん、何か不機嫌だな……)

モララーの言葉通り、四世界に所属する兵は四つの部隊に分かれていた。

モララーが指揮するFC残党。
軍神が指揮する連合残党軍。
ミルナが指揮する英雄達。
レインが指揮する魔法使い達。

それぞれの現状目的は同一だが、その後の最終目的は二分されている。
後で敵対する可能性があるのならば、最初から離れていようという判断からだった。

(,,゚Д゚)「まぁ、向こうの奴らにも指揮を執る役がいることだしな。
    足を引っ張るような存在がいないのなら、こっちはこっちで好きにやらせてもらうさ」

装甲服の一部を纏い、その上から茶色のコートを羽織ったギコが言う。
右手を軽く振り、青い発光とともにグラニードを作り出した。

(,,゚Д゚)「モララー、そろそろ合図を」

( ・∀・)「あぁ」

頷き、通信機のスイッチを入れる。
袖を叩くように広げ、破裂に似た音を大きく立てる。

( ・∀・)「総員、これより戦闘を開始する」

答えはない。
が、通信機を隔てた向こうで耳を澄ましているのが解る。



158: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:04:12.18 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「各世界は自分の目的を果たすために勝手にやりたまえ。 どうせ最終目的は同じだ。
     しかし互いの邪魔をすることを禁止する。
     そして、無駄に敵を殺すことも禁止する……後で面倒だからね」

しかし、と言い

( ・∀・)「すぐにでも突撃したい気持ちは解るが先に説明したとおり、世界運営政府の持つ砲台群は厄介の一言だ。
     生身で挑めば、いくら魔法という技術を持っていても防ぎ難いだろう。
     故に――頼むよ、シャキン君」

『了解』

声が聞こえたと同時、大気を切り裂く甲高い音が山岳に木霊する。
直後、黒色の何かがモララー達の直上を通過していった。

( ・∀・)「彼がド派手な合図をしてくれる。
     各自、各々で判断して攻撃を開始してくれたまえ――以上」

言葉を切った瞬間、重々しい音が地面を揺らす。
見れば、世界政府本部の外周部から黒煙が勢いよく噴き出し始めていた。

あの黒色の鳥に似た何かを落とさんがために、無数の砲撃が牙を剥いているのだ。



160: ◆BYUt189CYA :2007/09/21(金) 22:05:35.02 ID:fjRVA6UF0
( ・∀・)「だが甘い。
     この世界程度の兵器で、あの機体を落とすことなど出来ん」

その姿は獰猛な鷲を連想させる姿を持っていた。

しかし生物に非ず。


名を『レイドール』。

駈る者の名を『シャキン』。

その身を走らせるのは『空』。


機械世界が誇る高速の鉄鳥が、切り込み隊長の役を担って戦場へと飛び込んでいった。



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