( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

5: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:07:46.04 ID:M+g40HNH0
活動グループ別現状一覧

( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
(`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚] ( ゚д゚ ) ノハ#゚  ゚) 
从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^) lw´‐ _‐ノv ハ(リメ -゚ノリ
所属:四世界
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:強襲開始

( <●><●>) |(●),  、(●)、| / ゚、。 /
( ̄ー ̄) ( ^Д^) (゜3゜) ,(・)(・), ┗(^o^ )┓ \(^o^)/ |  ^o^ |
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) ('、`*川 爪゚ -゚) 从'ー'从 川д川 ( ´∀`)
所属:世界運営政府
位置:オーストラリア・世界政府本部
状況:迎撃開始

(メ _) キオル
所属:魔法世界
位置:不明
状況:???

メ(リ゚ ー゚ノリ ル(i|゚ ー゚ノリ
所属:???
位置:???
状況:???



7: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:10:05.30 ID:M+g40HNH0
第三十四話 『不協和音』

景色が高速で流れ、光が目前を掠めていく。
今いる場所が戦場であることを忘れさせるかのような、そんな美しささえ見出せる光景が次々に展開された。
それは大空を飛ぶ中での、戦闘という生死を彷徨う行為の副産物に等しい。

しかし、一撃だ。

ただの一撃でも喰らってしまえば、おそらく己の命は断たれてしまうだろう。

死人に口無し。
戦場を支配する唯一のルールから逃れる術はなく。
だからこそ、戦う兵達は本気を以って敵と相対する。

(`・ω・´)「邪魔だ……!」

歯噛みし、両サイドのスロットルレバーを突き出す。
見える景色が角度を変え、急展開したことを示した。
親指に引っかけられたスイッチを押し、翼に付けられた機関銃を咆哮させる。

下部に展開されているのは魔力を用いた砲台の群。
それらに囲われ、守られているのは教会のような形をした巨大建造物――世界政府本部。

山岳から森へと入り、本部の背後から襲撃するのはモララー達だ。
その進撃を阻むかのように構えている砲台を破壊するため、シャキンは単独での突撃を買って出たのである。



9: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:12:47.92 ID:M+g40HNH0
光が飛び交う。
シャキンの駈る漆黒のGIFを落さんとするため、数々の砲台が火を噴いているのだ。

しかし無駄だと判断する。
何故ならば、この機体は重力からの解放を命ぜられた戦闘機であり――

(`・ω・´)「不墜の存在だ……!」

何せ、風鷲との戦闘に打ち勝った機体と自分だ。
半端な魔力知識で作った砲台に負けることなどありえない。
このような状況で敗北してしまえば、逝った兄に笑われてしまうだろう。

だから、負けない。

再度の決意に視線を鋭くした時、通信が入ったことに気付く。
それはフサギコの声で

『世界政府の航空戦力が接近中です――その数、三十五』

(`・ω・´)「やはりそれなりの戦力は保有していたか」

『一人で大丈夫ですか?』

(`・ω・´)「問題ない……それに、援軍が来る」

『援軍? そんな話は――』

(`・ω・´)「厳密に言えば敵だが、どちらせによ必ず来る存在があるから問題はない」



12: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:15:29.10 ID:M+g40HNH0
レーダーに反応。
南東の方角から、魔力を持った何かが高速で接近してくる。
それは躊躇することなく、砲撃の嵐となっている空域へと飛び込んできた。

当然のように通信が入る。

『――お久しぶりですね』

(`・ω・´)「キオル、だったか」

『「Kill Alternative System」――殺しの代替です』

憶えているのはミカヅキの部下だということ。
そして、おそらくは人間ではないこと。
しかし

(`・ω・´)「そういうふざけた名乗りをする理由など、今は興味が無い。
      ただ聞きたいのは何をしに来たのか、だ」

『ミカヅキ様の目的を果たすための御手伝いを。
 そのためにも、この眼下に居座る世界政府とやらが邪魔なのです』

(`・ω・´)「そのミカヅキは高見の見物か?」

『我々が駈るEMAは人を殺すための兵器ではありません。
 が、しかし……時として人を殺さなければならない時もありましょう。
 そのためのシステムが私なのです』



13: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:17:26.32 ID:M+g40HNH0
音が聞こえる。
飛翔音に被さる爆音は、眼下の砲台を破壊する音で

『争いましょう』

凛とした声が響いた。

(`・ω・´)「俺とお前でか?」

『はい。 ただし直接の戦闘は避けたいと思っております。
 目的同一という要素から、敵機を墜とした数で競いましょう』

生意気だな、と思う。
しかし悪くはない、とも思えた。

(`・ω・´)「……良い度胸だな」

『では――』

(`・ω・´)「勝負……!」



16: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:19:04.41 ID:M+g40HNH0
lw´‐ _‐ノv「あれは――」

ざざ、と草木を掻き分けながら進軍している最中、シューが空を見上げて呟いた。

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ、キオルだ。 ということはミカヅキも近くにいるだろうな」

lw´‐ _‐ノv「大丈夫?」

ハ(リメ -゚ノリ「何とも。 EMAを奪還出来るか否かで決まるよ」

|゚ノ ^∀^)「…………」

魔法世界部隊は疾走していた。
最もこの世界に遅れてやって来た彼らは、まだ十分な数を揃えていない。
他部隊が四百名前後を誇っているのに対し、魔法世界の部隊は二百名いるかいないかだ。

しかし、その身軽さを以って戦場へと切り込んでいる。

前方からは銃声が響いていた。
世界政府本部から出てきた兵が、防衛線を敷いているのだろう。
それを砕くため、レインが前線へと飛び出して吠えた。

从・∀・ノ!リ「行けぃ!!」

号令と共に、トリガーの付属した武器を持った兵が走る。
同時に引き込み、青白い光を纏わせながら突撃。

鉄の打楽器を打ち鳴らすような、甲高い音が連鎖した。



19: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:20:43.88 ID:M+g40HNH0
ぶつかっている。
飛び交う銃弾を掻い潜り、その持ち得る最高の攻撃力をぶつけている。

( ><)「最前線、突破成功なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽぽっぽ!」

从・∀・ノ!リ「油断はするな! まだ半分も行っとらんぞ!」

lw´‐ _‐ノv「……でも敵の数が、思ったよりも少ない?」

静かな呟きに対し

ハ(リメ -゚ノリ「世界政府は、表向きには政治的に世界をまとめる組織だと聞いている。
      そこに圧倒的な武力を持ってしまっては、他国にとってはただの脅しにしか見えないだろう。
      だからこそ、『ラウンジ』などという裏で暗躍する部隊を抱えてるんだと思う」

lw´‐ _‐ノv「つまり、世界政府自体はそれほど強くない……?」

ハ(リメ -゚ノリ「あぁ。 彼らは武力ではなく権力で統治することを主眼に置いているからね。
      ただし数が少ないからと言っても、厄介な奴は必ずいるから注意して――」

lw´‐ _‐ノv「?」

悲鳴。
先を走っていた兵の何人かが、その足を止めた。



21: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:22:17.63 ID:M+g40HNH0
音が聞こえる。

軽い小さな金属を擦り合わせる音だ。
それは連鎖し、不断の音色で戦場を疾っている。

从・∀・ノ!リ「アレが、お前の言う厄介な奴かの?」

その音と気配は速い。
危険を感じ取ったのか、レインも腰に吊ってある魔法銃器に手を伸ばしていた。

ハ(リメ -゚ノリ「厄介は厄介だが……!」

ミツキが身を引いた。
直後、戦場を走っていた金属音が飛び込んでくる。
地面を抉り、尚も頭をうねらせるそれは、身を灰色に染めた鎖だった。

从・∀・ノ!リ「鎖? いや、これはただの鎖では――」

(;><)「ほ、報告するんです!」

状況を把握したビロードが慌てた声で


(;><)「鎖と、紫色の槍を持った二人の少年が行く手を阻んでるらしいんです!」



24: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:23:54.21 ID:M+g40HNH0
<_;プー゚)フ「えぇぇぇ……!?」

機械世界部隊も、同じく足を止めていた。
軍神を先頭にアッサリと敵の前線を崩した彼らは、しかし少し進んだ場所で停止してしまう。

進めない理由が出来てしまったからだ。

緑色のトマホークである13th−W『ラクハーツ』を片手に、エクストは目の前で展開される光景に絶句する。

(#゚;;-゚)「ッ!」

纏った布をはためかせ、軍神が森の中を走る。
その後を、一つの影が追っていた。

時折ぶつかり合い、木々に足を引っかけて跳躍。
その隙に他の兵が進もうとすると、影はすぐさま出鼻を挫きにやってくる。
どうやら『彼女』の狙いは、機械世界部隊全体の足止めらしい。

しかし、問題はそこではない。

『彼女』が軍神と互角に戦えている、という事実こそが最大の問題だ。

(#゚;;-゚)「はン……一度手合わせしたいとは思っとったけど、こういうカタチで叶うとは」

皮肉やな、と呟いて鼻を鳴らす。
彼女の目の前に降り立った人物こそが、機械世界全体を一人で相手しようという無謀な女。

('、`*川「ま、私も意外っちゃー意外だけどね」

『二極』『竜殺し』の名を持つ、英雄のペニサスだった。



25: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:25:48.08 ID:M+g40HNH0
(;゚д゚ )「馬鹿な……何故、お前が!?」

英雄世界部隊を率いて森の中を走っていたミルナは、目の前に現れた人物に驚きを隠せない。

川 ゚ -゚)「……悪いな」

立っているのはクー。
相変わらずの黒コートに、透明色の刀。
軽く掲げた切っ先を、ミルナの方へと向けている。

(;゚д゚ )「何をしている……? 俺達はお前らを助けに来たんだ!」

川 ゚ -゚)「あぁ……知っているし、ありがたいとも思っている。
     しかし駄目なんだ」

(;゚д゚ )「駄目、とは? どういうことだ!?」

問い掛けに対し、クーは顔を俯かせ

川 ゚ -゚)「……すまん」

(;゚д゚ )「くっ!」

放たれた刀身から逃れるように、身を捻る。
そのままバックステップで距離をとり、しかし反撃には移らない。

現状が不明な今、安易にクーを打ち倒すのは得策ではないからだ。



27: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:27:20.92 ID:M+g40HNH0
(;゚д゚ )(どういうことだ……洗脳されているようには見えないが)

むしろ、自分の意志で動いているようにも見受けられる。
目は意識を保ちながらも、その表情は苦悩に歪んでいた。

( ゚д゚ )(これは、まさか――)

川 ゚ -゚)「ッ!」

クーの姿が掻き消える。
その場で風となったかと見間違う錯覚は、直後に背後から撃ち破られた。

( ゚д゚ )「音速の靴か!」

川 ゚ -゚)「遅い!」

(;゚д゚ )「なっ――」

背後へ振り向いた瞬間、クーは既に真上へと跳躍していた。
その両手に持っているのはクリアカラーの巨剣。
引力を操るそれは重力加速度と相成り、全てを両断する断層と化し――


激音が響いた。



30: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:29:35.77 ID:M+g40HNH0
それは鼓膜を痺れさせるほどの高音。
音が場を支配し、周囲は沈黙に包まれる。

(;゚д゚ )「……?」

しかし、それだけだった。
痛みも衝撃もない事実に、ミルナは何事かと目を開く。

そして気付いた。
何かが決定的に異なる、と。
一つ知覚出来るのは、己とクーの他に気配が増えたという――

( ゚д゚ )「!?」

見る。
ミルナとクーの間に割って入った人影を。

川;゚ -゚)「お、お前は――!?」

ノハ#゚  ゚)「…………」

居たのは赤茶色の長髪を持つ女性。
仮面に遮られた表情は判別出来るわけもなく。

しかし彼女は、確かにミルナを護るようにして立ち塞がっていた。



31: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:31:27.99 ID:M+g40HNH0
(;゚д゚ )「ヒ、ヒート……!?」

まず、ありえない、という答えが先に来た。

彼女は未だベッドの中で眠っているはず。
神経や骨肉に多大な負担が掛かっていたため、しばらくは目を覚まさないだろう、とまで言われていたはず。

だが、居る。

その腰には、脇差のような黒い小刀。
その背には、英雄譲りの槍に、銀の色を放つ弓。
その手には、柄尻に鎖を巻いた巨大な包丁刀。

これほどまでの重装備でありながら、しかし女性らしさを失わない存在をミルナは一人しか知らない。

(;゚д゚ )「ヒート……お前、どうして……」

ノハ#゚  ゚)「――呼んでるから」

(;゚д゚ )「え?」

ノハ#゚  ゚)「ごめん。 詳しい話は後。
     今は一刻も早く、あれを押さえなきゃならない」

指差す先は、木々の挟間から見える建物。
ミルナ達も目指す世界政府本部。



34: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:33:07.33 ID:M+g40HNH0
不気味な雰囲気を醸し出すヒートに不安を覚えたが、しかし目的は同じであることに安堵する。

( ゚д゚ )「……信じていいんだな?」

ノハ#゚  ゚)「ちょっと変わったね、ミルナ」

こちらに顔だけ振り向かせ

ノハ#゚  ゚)「私は、ミルナを信じてるよ」

( ゚д゚ )「!」

そうだ。
そうだった。
自分達の関係は、その一言だけで充分だったはず。

信じて良いか、ではない。
信じている、だ。

( ゚д゚ )「……お前は変わってないんだな、ヒート」

ノハ#゚  ゚)「変わってるよ。 見て解らない?」

苦笑。
仮面に遮られて見えないが、確かに彼女は苦笑した。
それは内面的なことを言っているのか、それとも外見的なことを言っているのか。
解らないが、しかし――

( ゚д゚ )(アイツはヒートだ……間違いなく、絶対に……!)



37: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:34:30.35 ID:M+g40HNH0
確信した途端、心の奥底から懐かしさが溢れ出てくるのを自覚した。
一年前までの肩を並べて戦ってきた記憶が蘇り、それが現状と合致する。

川 ゚ -゚)「お前がミルナの言っていた『蜘蛛姫』ヒートか……。
     だが、ここは通さない」

ノハ#゚  ゚)「なら力尽くで通るだけ」

ガシャ、と金属を打ち鳴らしながら装備を手に取る。
右手には巨大包丁刀『夜鴉』、左手には逆手に持った刃の無い中脇差『飛燕』。

(;゚д゚ )「待て、ヒート! アイツは俺達の味方なんだ!」

ノハ#゚  ゚)「……どういうこと? だったら何で向こうにいるの?」

( ゚д゚ )「それは俺にも解らん。
    だが、心から敵対しているわけではないらしい」

ノハ#゚  ゚)「面倒だけど、まぁいいや。 とにかく通らせてもらうね」

宣言と共に腕を振るう。
放たれたのは包丁刀で、鎖をうねらせながら一直線にクーの顔面へと走った。



39: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:36:40.46 ID:M+g40HNH0
川 ゚ -゚)「ッ!」

それを間一髪で避けるも、出来あがった僅かな隙をヒートは逃さない。

ノハ#゚  ゚)「さよなら」

一陣の突風――いや、ヒートだ。
赤茶色の長髪と鎖を靡かせ、クーが避けた空間を疾走する。
つまり、戦わずに突破を試みたのだが

ノハ#゚  ゚)「!」

駆けた先に、一瞬という時を以って掻き現れるクー。

彼女の足に纏われている疑似6th−W『ギルミルキル』は
オリジナルには及ばないものの、それでも音速に近い速度で移動することが可能である。
一呼吸くらいの隙を突かれても、充分に取り戻せる速度を誇っていた。

川 ゚ -゚)「言ったはずだ。 通さない、と」

ノハ#゚  ゚)「…………」

( ゚д゚ )「……クー、そこまでする理由は何だ? この一ヶ月の間に何があった?」

問いに対し、クーは微かに顔を俯かせ

川 ゚ -゚)「それは――」



43: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:38:12.31 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「君達を制動している原因……それは何かね?」

(;^ω^)「…………」

(;'A`)「…………」

FCを中心とした部隊は、ブーンとドクオによって進軍を阻まれていた。
突如として姿を見せた二人に兵達がうろたえるものの、すぐさまモララーが対応に入ったため動揺は少ない。
そして今、ギコ達を背後に置いたモララーが情報を引き出そうと画策していた。

( ・∀・)「それにしても久々に会えたと思えば、敵対関係になっていたとは。
     一ヶ月の間に何があった?」

(;^ω^)「…………」

(,,゚Д゚)「おい、返事くらい出来るだろう?」

( ・∀・)「どうやら返事が『出来ない』ではなく、『したくない』らしい」

( ´_ゝ`)「どゆこと?」

( ・∀・)「少し確認を取るから待ちたまえ」

モララーは数歩下がり、懐から優雅に通信機を取り出した。



46: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:39:36.31 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「私だ。 状況を知らせてくれ」

『レインじゃ。 何やら鎖と槍を持った妙な少年二人と戦っておる。
 しかし敵には見えんのだが――』

( ・∀・)「彼らは私達の仲間だよ。 殺さずに頼む」

『……ふむ、気絶させれば良いのか?』

( ・∀・)「いや、それも待ってほしい。 気になることがある」

『気になること? 何やそれ』

今度は軍神の声が割り込んでくる。
戦闘中なのか、その声には微かな荒れが聞いてとれた。
というか、戦いの最中に通信するなど余裕の極みである。

( ・∀・)「そっちにもいるはずだね? 誰だ?」

『英雄のペニサス……どうにも加減されとるようで気に入らん』

( ・∀・)「ミルナ君は?」

『こっちにはクーだ。
 どうなってるんだ? 洗脳された様子は見受けられんが……』

( ・∀・)「総員、少し状況を維持しておいてくれ。 思考する」

三人分の『了解』を耳に入れ、モララーはブーン達の方へと向き直る。



49: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:41:44.41 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「聞いたところ、この森林の戦場にいるのは内藤君、ドクオ君、ジョルジュ君、ショボン君、クー君、ペニサス君だ。
     そして確認出来ないのは、ハインリッヒ君、ジェイル君、渡辺君、貞子君となる。
     ハインリッヒ君はともかく、他の戦力を投下していない理由は何だと思う?」

(´<_` )「まさかコイツら、人質を取られてるのか……?」

( ・∀・)「その可能性が高いだろうね。
     表情や態度を見れば、こちらに仕掛けるのが不本意だと解る。
     問題は、その強制力の強さなのだが――」

『何? 人質取られとるん?
 なら、さっさと気絶させてウチらが人質奪還すりゃえぇやんか』

( ・∀・)「待ちたまえ」

『?』

( ・∀・)「それだけでは、彼らが黙ってこちらの邪魔をする理由に少し足りない。
     あの必死さは別のところから来ていると見ていいだろう」

『別の……? どこからだ?』

ミルナの問いに、モララーは頷き

( ・∀・)「おそらく、彼らはこういうような事を言われている。
     『もし君達が敵に負けてしまった場合、人質の命の保証はしない』と」

(;,,゚Д゚)「なっ……」

(;^ω^)「……!」



50: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:43:18.32 ID:M+g40HNH0
『ほぅ、確かにそれならば彼らの行動にも納得がいく。
 そしてそれは、我らにも大きな影響を与えてくるのぅ』

( ・∀・)「あぁ、人質の件は我々に知られるように仕組んでいるだろうからね。
     これは面白い……一度で二度効く何とやら、だ」

『ワケが解らん。
 アンタだけ解っとっても意味ないから、はよ説明しぃ』

( ・∀・)「いいかね? 内藤君達は『敗北すれば人質が死ぬ』という脅迫によって動いている。
     逆に言えば、『私達が内藤君を倒してしまったら、人質が死んでしまう』ことに繋がる」

その場にいた味方勢が目を見開いた。
モララーの言わんとしていることを理解したのだ。

( ・∀・)「それはつまり、我々が内藤君達を倒してはならない状況になっているということ。
     事が終わるまで誰かが相手をするとして……その分だけ、世界政府本部へ攻め込む戦力を削られることになる。
     人質一つで、内藤君達という戦力を我が物にし、我々の足止めを図り、戦力の一部を釘付けにする。
     ……一石三鳥だというわけだ、これが」

『……ちっ、それやと渡辺も人質の一人やろな。
 ホントめんどいことしてくれるわ』



52: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:45:23.33 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「ここは乗るしかあるまい。
     各部隊、誰かを内藤君達の相手に当てろ。 出来るだけ長期戦を得意とする者が望ましい。
     残った者は世界政府本部へ突撃し、早急にこの戦闘を終わらせるぞ」

(,,゚Д゚)「それしかないな。 だったら、俺達がその役を引き受けよう」

グラニードを肩に担いだギコが言う。
その隣でしぃが頷き、二人でブーンとドクオの相手をすることを示した。

( ´_ゝ`)「ギコさんの突撃力は惜しいんだけどなぁ」

(,,゚Д゚)「だったら代わるか?」

( ´_ゝ`)「いえ、遠慮しておきます! 生まれてきてすみませんでした!」

( ・∀・)「ならば私達は先を目指そう。
     この森での戦闘指揮は、本陣に控えているフサギコ君に任せることにする。 いいね?」

言葉に頷きが返り、了承の声が来る。
同時、モララーを先頭として疾走の動きが始まる。

それらはブーンとドクオが守ろうとしている防衛線の突破を示し

(;^ω^)「通すわけには……ッ!?」

通過していくモララーや兄者達へと振り向きかけ、そしてすぐさま迎撃に入った。



55: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:47:21.82 ID:M+g40HNH0
しかし響く金属音。
見れば、構えられた白い右腕に青い刃がぶつかっている。

(,,゚Д゚)「悪いな。 事が済むまで俺の相手をしてもらうぞ」

( ^ω^)「……すみませんお」

その言葉が、モララーの推測の正しさを証明していた。
彼の頭の回転の速さに呆れつつ、ギコは微かに口元に笑みを浮かべ

(,,゚Д゚)「気にするな。 それにお前達が無事で良かった。
    戦いながら、これまでの一ヶ月間に何があったか聞かせてもらおうか」

(;^ω^)「わ、解りましたお」

頷き、加減の入った戦闘が開始される。
そこから数十メートル離れた位置でも、同じような構図で二人の人間が睨み合っていた。

(*゚ー゚)「ドクオ君、もう大丈夫だよ」

('A`)「……はい」

そう言うドクオの顔色は悪い。
目に隈が出来、表情は憔悴している。

(*゚ー゚)「何が……あったの?」

羽ばたき一つで上空へ飛び、ドクオの射線から逃れるように飛ぶ。
問い掛けに対し、ドクオは震える唇を動かした。



57: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:48:32.91 ID:M+g40HNH0
('A`)「一ヶ月の間、俺達は何もされてないッス……。
   渡辺さんと貞子は連れて行かれてどうなったか解らないけど、俺達は地下施設で比較的自由に過ごせてたッス」

(*゚ー゚)「自由に……?」

('A`)「食事も与えられたし、施設内の移動に制限はなかったッス。 ただやることがなくて。
   だから俺達は暇潰しも兼ねて、ブーン達と特訓してたッス」

剣撃の音が響く。
刃と拳がぶつかり、離れ、再度またぶつかる音。
その先へと銃口を向けて、ドクオは静かに言い放った。

(;'A`)「だからなのか、もう俺にはブーンがどう動いているのか何となく解っちゃって」

同時、トリガーを引いた。
マズルフラッシュと共に放たれたのは拳大の光弾。

それはしぃを狙わず、木々の挟間を突き抜けていった。



61: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:50:09.19 ID:M+g40HNH0
気付けたのは僥倖だった。

拳を振り上げていたブーンが、突如として身を意外な方向へと動かしたのを見て違和感を受け
ギコの思考が疑念へと移行した瞬間。

(,,゚Д゚)「!?」

思わぬ方角から、光弾が突っ込んできたのだ。
咄嗟に出した巨剣に衝撃が走り、しかしギコの身を穿たなかったことを感覚で知る。

(;^ω^)「……とまぁ、こういうようなことが出来るようになっちゃったんですお」

(;,,゚Д゚)「…………」

頷けなくはない。
あの二人は元から友人同士だったし、ある程度の癖や呼吸も無意識ながらに把握していたはずだ。

(,,゚Д゚)(いや、それよりも――)

ドクオは7th−W、ブーンは8th−Wの使い手。
ナンバーが近ければ、それだけ武器同士の相性も良いと考えるのが普通だ。

指輪は繋がっている。
1stは2ndと、2ndは3rdと――理屈は解らないが、確かに繋がっている。
ならば7thと8thのドクオとブーンが、あのようにして連携行動をとれるのは頷ける話だ。
判断し、ギコは思う。

(,,゚Д゚)「面白い」

(;^ω^)「……は?」



63: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:51:31.66 ID:M+g40HNH0
(,,゚Д゚)「内藤。 一度だけ俺と戦ったことがあることを覚えているか?」

問われ、ブーンは頷いた。

あれは一年半前。
クーと出会い、初めて指輪を使ってジョルジュを撃退した翌日。
突如として現れたのがギコとしぃであり、そして彼らはブーン達に襲いかかった。

( ^ω^)「覚えてますお。 ウェポンの特性を教えてもらったりしましたお」

(,,゚Д゚)「あれから一年半だな」

( ^ω^)「はいですお」

(,,゚Д゚)「……俺はな、実を言うと少し嬉しいんだ」

( ^ω^)「?」

(,,゚Д゚)「あの時お前は、本気ではなかったにしろ俺の攻撃を捌いた。
    それからというもの、お前はメキメキとは言えないが……着実に力を伸ばしていった」

8thの能力である『身体強化』に支えられていた部分もあるだろう。
しかしそれだけではあの戦いを生き残れるわけもなく、確かにブーンの素質も理由として挙げられる。

(,,゚Д゚)「だが、俺は心配だった。
    お前やドクオには明確な『芯』が無いように思えたからな」

( ^ω^)「芯……」



64: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:53:33.89 ID:M+g40HNH0
おそらく昔なら解らなかった言葉だろう。
しかし、今なら理解出来る。

ギコにとってのしぃであり、フサギコにとってのツンであり、兄者にとってのアレであり、クーにとってのハインリッヒだ。
更に言えば、シャキンにとってのGIF『レイドール』であり、ミルナにとっての英雄であり、軍神にとっての異獣。

『それ』が無ければ戦えない――いや、立っていることすら出来ない、という支柱。

(,,゚Д゚)「お前は芯を見出せたか?」

( ^ω^)「…………」

少し言葉にするのを躊躇し、しかし

( ^ω^)「曖昧な形かもしれないけど、持つことが出来ましたお……たぶん」

言うことが出来た。
森の中に響いた声を聞いたギコは、口の端を吊り上げる。

(,,゚Д゚)「なら、俺に見せてくれ。 そして見せてやろう。
    俺も少し変わった――いや、戻ったということを」

ず、という轟音を奏でてグラニードの切っ先が地面へと落ちる。

それを見たブーンは、ギコの思うところを何となく感じ取った。
拳を構え

( ^ω^)「解りましたお……いきます!」



67: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:55:04.52 ID:M+g40HNH0
三つの音が響いている。
鎖の這う音、槍が空間を超える音、そして剣が空気を切り裂く音。
森の中を戦場としたそこには、三つの人影が駆け回っていた。

( ゚∀゚)「いっくぜぇぇえりゃぁぁぁ!!」

lw´‐ _‐ノv「っ」

(´・ω・`)「…………」

ジョルジュが鎖を投げ飛ばし、シューが弾き、ショボンがその間に位置取りを終える。

三人以外は誰もいない。
レインやミツキ、レモナは既にこの場から先に進んでいる。
阻むジョルジュとショボンの相手として選ばれたのは、シューだった。

lw´‐ _‐ノv「……それが噂のウェポン」

興味はその一言に尽きる。
FCへと参加し、ウェポンの説明は受けていたが、実際の使い手を見るのは初めてだ。
己の持つ刀とよく似た性質を持つ武器に、シューは自分の心が躍り始めたことを意識する。

( ゚∀゚)「今だぜ、ショボン!
     俺の作ってやった隙を土下座しながら感謝して褒め称えつつもありがたく泣きながら使え!!」

(;´・ω・`)「言われなくても解っ……りたくないなぁ」

放たれた槍の一撃は空間を無視し、前方を跳ぶシュー目掛けて一直線。
後にはジョルジュが派手に動き、その隙にショボンは『突き』の回収を行う。



71: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:57:18.22 ID:M+g40HNH0
一連の流れを見て、シューは感嘆の息を吐いた。

lw´‐ _‐ノv「……動きが良い」

( ゚∀゚)「お?」

lw´‐ _‐ノv「いや、動きじゃないか……むしろこれは連携。
      一人が動き、その間に一人が事を済ませる……ふむ」

ブツブツと呟く。
それが気に入らなかったのか、『あ?』とジョルジュの口元が歪んだ。

( ゚∀゚)「おい、なんかイライラすんぞこの女」

(´・ω・`)「っていうか誰だろう……見たことない人だけど」

lw´‐ _‐ノv「私はシュー。 シュークリームのシューって実はキャベツという意味だけど、私はキャベツじゃない」

(;゚∀゚)「な、何ぃ……?」

自己紹介に、ジョルジュは何故か腕を組んで考え込み

( ゚∀゚)「俺はシュークリームの方が好きだぞ!」

(´・ω・`)「ジョルジュ、意味が解ってないんなら喋らない方がいい」

半目で、しかし反論出来ないジョルジュは後方へと下げられた。



73: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 20:59:21.53 ID:M+g40HNH0
(´・ω・`)「で、君は誰? というより……この戦闘は何なんだい?」

lw´‐ _‐ノv「知らない……?」

(´・ω・`)「僕らはしばらくの間、外で何があったのかを知らないんだ。
      ある理由でこの戦闘に参加はしているけど、君達が何者なのかは知らない」

( ゚∀゚)「っつーか、その武器は何だよ?」

lw´‐ _‐ノv(説明が面倒くさい)

問いに対して素直にそう思う辺り、彼女の性格が知れるというもの。
ともあれどうしたものかと考え、そして一つの解決策を見つけた。

lw´‐ _‐ノv「……私は魔法世界の人間だよ」

(;´・ω・`)「!」

(;゚∀゚)「おい、それってつまり――」

(´・ω・`)「待つんだジョルジュ。 まだそうと決まったわけじゃない。
      シューさんと言ったね? 君の上にいる人の名前を教えてくれるかな?」



74: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:00:51.31 ID:M+g40HNH0
lw´‐ _‐ノv「モララー。 あまり喋ったことはないけど、たぶん変態」

( ゚∀゚)「おぉ! やっぱりコイツ変態の仲間じゃねぇか!!」

(´・ω・`)「一ヶ月の間で、すっかりモララーさんへの恐怖というか尊敬が無くなってるね。
      助かったら助かったで、たっぷりと思い出すことになるんだろうけど。
      ところでシューさん、実は僕らもモララーさんの仲間なんだけど……信じてくれるかな?」

lw´‐ _‐ノv「うん。 っていうかさっきモララーから事情は聞いた。
      人質を取られてて、寝返るわけも負けるわけにもいかないんでしょ?」

(´・ω・`)「すぐ解るように監視されてるから下手なことは出来ない。
      悪いけど、しばらく僕達に付き合ってほしい」

申し訳なさそうな言葉に、シューは頷いた。
右手に持った刀で空を斬り、ゆっくりと構えながら

lw´‐ _‐ノv「うん、いいよ。
      そのウェポンっていうEW……興味あるから」

と、微かな笑みを浮かべて言い放った。



75: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:02:35.63 ID:M+g40HNH0
ノハ#゚  ゚)「ミルナ、貴方が行って」

事情を説明しようとした矢先、ヒートはそう言い放った。
しかしミルナは首を振り

( ゚д゚ )「あの世界政府本部に何かあるんじゃないのか」

お前が行くべきだ、と暗に言う。

ノハ#゚  ゚)「私は本調子じゃないし、近付き過ぎると『憑かれて』しまうから。
      奴らを消滅させるのは次の機会に回して、今は勘を取り戻すことに専念したい」

( ゚д゚ )「憑かれて……?
     ヒート、お前は何を知っている?」

ノハ#゚  ゚)「話は後って言ったよ」

( ゚д゚ )「…………」

問答無用の気配だ。
もはや何を言おうとも彼女の意思は曲がらないだろう。
少しだけ呆れるが、それがヒートらしいのだということを思い出す。

( ゚д゚ )「解った。 俺が行く」

諦めたかのように吐息し、しかし力強く頷いた。



78: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:04:41.43 ID:M+g40HNH0
それを背中で受け取ったヒートは武器を構えつつ

ノハ#゚  ゚)「……この戦いが終わったら、色々話そうね」

( ゚д゚ )「……そうだな」

走り出す。
前方にいるクーを避け、迂回するようなルートだ。

川 ゚ -゚)「行かせない!」

逸早く行動に気付いたクーがミルナの進撃を阻むために動くも、一瞥もくれることなく走った。

( ゚д゚ )(頼むぞ、ヒート!)

川;゚ -゚)「5th−W『ミスt――!?」

適切な武器を選択し、発現しようとした動きが遮られる。
その一瞬の隙を好機として、ミルナは全速力で駆け抜けていった。

川 ゚ -゚)「お前……」

クーの眼前には槍が一本。
それは傍にある樹木を半分ほど貫き、身を細かく揺らしていた。

ノハ#゚  ゚)「ミルナの邪魔はさせない。 貴女の相手は私だ」

川 ゚ -゚)「……そうか」



80: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:06:02.98 ID:M+g40HNH0
ノハ#゚  ゚)「…………」

川 ゚ -゚)「四種の武器を使いこなす英雄……話には聞いていたが、やはり強いな」

ノハ#゚  ゚)「その武器は何?」

川 ゚ -゚)「ウェポンと呼ばれる魔法武器だ。
     私のは少し特別でな……他のウェポンの能力を全て有している」

構え

川 ゚ -゚)「その数は十四。
     能力こそオリジナルに劣るが、手数においては負けん」

ノハ#゚  ゚)「十四……」

呟く。
そして握った包丁大刀を持ち上げ

ノハ#゚  ゚)「面白そうだね。
     その十四もの武具、全て引き出してあげるよ」

川 ゚ -゚)「やれるものならやってみろ」

睨み合う女性二人。
各々の武器を掲げ、今にも飛びかからんと腰を落とす。

性格的に対称である彼女らは、しかし旧知の仲のような雰囲気を纏わせていた。



81: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:08:17.88 ID:M+g40HNH0
モララー達はコンクリートの上を走っていた。
既に森を越え、世界政府本部の周りへと。
その先にある塔にも教会にも思える巨大施設へと向かっているのだ。

進む数は少ない。

モララーを先頭とし、サイドを流石兄弟が護る形。
そしてその後方を十名ほどの兵が付き従っているのみだ。
他の戦力は全て森の中や、本陣の守りとして置いてきている。

( ´_ゝ`)「それにしても、もう敵の姿が見えんな」

元々の数が少なかったのか、それともここまで手が回らないほど他が大暴れしているのか。
どちらにせよ、彼らにとっては都合の良い状況であることは確かだ。

(´<_` )「っと……着いたか?」

( ・∀・)「いや、まだだ」

前方に現れたのは真っ白な壁。
城壁とも言えるそれは、世界政府本部を囲うようにして立ちはだかっている。
その高さは優に五十メートルを超えていた。

( ・∀・)「世界政府本部は見た通り、この壁によって地上からの外敵侵入を防いでいる。
     ここからぐるりと半周して、正面入口へ行かねば入ることは不可能だ」

現在モララー達は、世界政府本部を中心として北西側の壁の前にいる。
入口は市街地のある方向――つまり南側だ。



83: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:09:45.78 ID:M+g40HNH0
(´<_` )「モララーさんの2nd−Wで壁をぶっ壊せないのか?」

( ・∀・)「無駄だろう。 敵もそこまで馬鹿ではないはずだ。
     それに奴らには秩序守護者がついている……この程度の行動など予測済みだろう」

( ´_ゝ`)「正面玄関から御邪魔するしかないってことか」

( ・∀・)「それに別方向からの侵入は他がやってくれるさ。
     我々はそちらへの注意を引く意味でも、正面から仕掛けてた方がいい」

(´<_` )「何だかんだ言っても信用してるよな。 戦闘開始時はメチャクチャ不機嫌だった癖に……」

( ・∀・)「あれだけ足並みが揃っていなければ、まとめる者として不満が出るのは仕方あるまいよ。
     しかし、私は認識を誤っていた。
     彼らは一度戦闘に入れば、信用――いや、信頼に足る者達だと、ね」

(´<_`;)「いや、足並みを崩した原因はアンタだよ、アンタ」

モララーが強かな笑みを浮かべる。
何やら企んでいるらしいが、弟者にはそれが何なのか解らなかった。

( ・∀・)「ともかく進むぞ。 森と空が混乱している間に行けるところまで行く」

走り出し、兄者は背後を見た。
銃声や金属音が響くそこは、未だ大規模な戦いが続いていることを証明している。
四世界のそれぞれが誇る戦力が、囮の意味も含めて派手に暴れていた。

弟者は空を見た。
二機の戦闘機が、数十もの航空戦力相手に爆炎を以って戦っている。
その光景はまさに一騎当千だ。



84: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:11:39.38 ID:M+g40HNH0
(´<_` )(頼むぞ、皆……)

一心不乱に駆ける。
自分達が中枢を叩かなければ、この戦いは終わらない。

いや、それよりも早く終わらせねば、他戦力がここへ集結してくるかもしれない。
そうなれば勝ち目はまったく無くなるだろう。
だから、走る。

しばらく緩いカーブが続き、その風景に飽き飽きしてきた頃。
道の先に柵が見え、そして市街地のような光景が目に飛び込んできた。

( ´_ゝ`)「あれは――」

( ・∀・)「キャンベラ郊外区だ。
     となると、正面入口はすぐそこだね」

聞く前に答えられ、更に走る。
人の気配がしない市街地を横目に、モララー達は更に移動した


そして遂に視界に収める。

(´<_` )「ここが正面入口か」

巨大な門だ。
問答無用で威圧感を与えてくる大きさ、配色は見事としか言えない。
脇に侵入者をチェックする警備小屋があるが、門の大きさと比較すれば小さすぎる程に映る。



87: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:13:40.92 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「む……?」

黒色の門が微かに開いていた。
というより、力任せにぶち抜かれていた、と言った方が正しいか。
頑強を誇ったであろう門は、しかし何者かによってアッサリと破壊されていた。

追随してきた十名ほどの兵に門周囲の警戒を頼み、モララー達は世界政府本部敷地内へと足を踏み入れる。

「――待ちくたびれたわ」

声が響いたのは直後。
弾かれるように向けられた視線の先、そこにいたのは二人分の人影。

( ゚д゚ )「そちらも無事だったか」

(#゚;;-゚)「んじゃ、揃ったところで行きましょか」

( ・∀・)「待っていてくれたのかね?」

(#゚;;-゚)「ウチは一人で構わん言うたんやけどね。
    騎士王さんが駄目駄目言うから」

( ゚д゚ )「ここからは敵の本拠地。 バラけて行くよりも一丸となって攻めた方が生存率は高いだろう。
    それに――」

( ・∀・)「あぁ……敵の大部分が姿を見せていない」

英雄であるクン三兄弟、英雄神、プギャー、秩序守護者――そして異獣。

上記の敵がまだ残っていることを考えれば、ここでの戦力分散は致命的だろう。



88: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:15:53.36 ID:M+g40HNH0
(#゚;;-゚)「はン。 別にええけど邪魔はせんといてな」

( ・∀・)「君の邪魔が出来る人間など、本当に極僅かだから心配しなくていい」

(´<_`;)「確かに」

(;´_ゝ`)「したくても出来ん」

( ゚д゚ )「話は決まったな。 行くぞ」

頷き、駆け出す。
庭園のような敷地には人影一つ見当たらない。
世界政府本部の入口まで、一直線に白い床があるのみだ。

( ゚д゚ )「ところで、魔法世界の連中はどうした?」

( ・∀・)「心配無用……先ほど連絡があってね。 別箇所から侵入を試みてくれるらしい。
     魔法に関しては彼らの方が数段上手だ……我々よりも良い攻め方をしてくれるはずだ。
     それよりも軍神君――」

(#゚;;-゚)「ん?」

( ・∀・)「君の前に現れたのはペニサス君だったはずだろう?
     彼女と対等に戦えるのは君だけだと思っていたのだが、どうしたのかね?」

(#゚;;-゚)「あぁ、途中でめんどくなったからエクストに任せてきたんよ」

(´<_`;)「……え?」



92: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:17:20.19 ID:M+g40HNH0
(#゚;;-゚)「任せることを伝えたら、何か涙目でこっち見て親指下に立ててたんやけど……あれは何のサイン?
    解らんかったから無視してもうたけど」

( ・∀・)「『俺のことは気にするな』だよ。
      エクスト君もなかなか憎いことをする」

(#゚;;-゚)「そやなぁ、英雄相手に戦闘機パイロットが立ち向かうなんぞ普通はせんよなぁ」

(;´_ゝ`)(エクストの奴、死んだな)

(´<_` )「む……?」

弟者が何かを見つけた。

それは前方。
仰々しいホール入り口前に、人影が立っている。
遠目からでも、それが女性の形をしているのだと解る。

( ゚д゚ )「あれは――」



爪゚ -゚)「…………」



97: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:19:08.01 ID:M+g40HNH0
( ・∀・)「ジェイル君?」

モララーの専属秘書兼護衛である機械人形。
女性用スーツに身を包んだ彼女が、腰前で手を組んで立っている。
まるで主人を迎えるようにだ。

(#゚;;-゚)「何であの子が……?」

( ・∀・)「別におかしいことではない。
     彼女も内藤君達と一緒にここへ連れて来られているはずだからね。
     しかし……」

FC襲撃時、秩序守護者によって都市ニューソクへと飛ばされてから行方不明になっていたはず。
掌を返した世界政府によって、内藤達と共に連れ去られたと考えられていたのだ。

それが今、目の前にいる。

( ゚д゚ )「あれは本物か? 罠だという可能性もあるぞ」

( ´_ゝ`)「クンクン……むむ、彼女の匂いは本物だぞ」

(´<_`;)「匂いなんてないだろ」

( ・∀・)「いや、確かにジェイル君の匂いがする……!」

(´<_` )「あぁそうだよな何かそんな反応がある気がしてたよチクショー」



99: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:20:44.43 ID:M+g40HNH0
(#゚;;-゚)「で、実際はどうなん?」

( ・∀・)「理由はともかく、限りなく本物の可能性が高い。
     問題は何故ここに現れたのか、だが――!?」

(´<_`;)「ッ!?」

(;´_ゝ`)「おわっ!?」

言葉が止まる。
いや、強制的に止められた。

場を一瞬にして包み込んだ、圧倒的な何か。
それが流石兄弟、更にはモララーやミルナにさえも重く圧し掛かった。

(;゚д゚ )「こ、れは……殺気か……!? 何という――!」

(#゚;;-゚)「…………」

景色が歪みそうな気の中、平然と突っ立っているのは軍神。
その双眸が睨む先、未だこちらに虚ろな視線を向けているジェイルの更に奥。

/ ゚、。 /「五人か」

内部の様子さえ解らない暗闇の中から、更に濃い黒色の人影が浮き出るように現れた。



102: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:22:53.43 ID:M+g40HNH0
ダイオード。
秩序守護者にして、英雄世界にも名を馳せる女性騎士。
背負った巨大な黒剣は、グラニードよりも大きく、そして禍々しい。

(#゚;;-゚)「まずはアンタが出よったか……久し振りやなぁ」

/ ゚、。 /「あぁ、そして嬉しいよ軍神」

笑みを浮かべ

/ ゚、。 /「『次』が来たのだから」

(#゚;;-゚)「……そやな」

(´<_`;)「な、何だアイツは……!?」

(((;´_ゝ`)))「やばい……絶対にやばい……俺もうダメかも解らんねあばばばばば」

(#゚;;-゚)(チッ、簡単に気圧されとる。
    あのダイオードが他の奴を狙うとは思えんが、それでも邪魔やな……)

(;゚д゚ )「ダイオード……!」

/ ゚、。 /「ん?」

戦慄の声。
英雄世界で同じ街にて過ごしていたはずの、しかし圧倒的な敵。
確認するように、ミルナはかつて尊敬していた女の名を言った。



104: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:24:34.60 ID:M+g40HNH0
/ ゚、。 /「あぁ……久しぶりだな、ミルナ。 もうワカッテマスと出会っているそうだが?」

(;゚д゚ )「やはりアンタも敵なのか……!?」

/ ゚、。 /「敵、と言えば敵になるな」

(;゚д゚ )「アンタ達がしようとしている事次第では、俺は……!」

/ ゚、。 /「随分と逞しくなったな。
      だが、お前の相手をするのは私ではない」

もはや興味を失ったかのように視線を逸らす。

/ ゚、。 /「始めようか、軍神。
      ここが決着の場だ。 どちらかが果てるための」

背負った巨剣の柄に手を。
振り回すようにして解放されたそれは、空気に断層を作り出すかのような鋭い軌道を描く。

(#゚;;-゚)「魔剣、といった名に相応しい剣やな」

/ ゚、。 /「そんな貧相なものでもない。
      この剣は呪われて――いや、『憑かれて』いる剣」

そして

/ ゚、。 /「そういった意味では、この剣も異獣と同じようなものさ」

(#゚;;-゚)「何……?」



107: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:26:02.45 ID:M+g40HNH0
放たれた言葉は、しかし疑問を生む結果に終わる。
追求するべきか否かを悩んだ時。

( ・∀・)「一ついいかね?」

/ ゚、。 /「発言を許そう」

( ・∀・)「その慇懃無礼な態度は見逃してやるとして……ジェイル君に何をした」

爪゚ -゚)「…………」

未だ微かな反応もないジェイルを見やりながら言う。
主人が目の前にいるのだというのに、リアクションがないのが気に入らないらしい。

/ ゚、。 /「あぁ、そいつか」

興味無さげな視線。

/ ゚、。 /「私は深く関わってないので概要しか知らんが、その女は機械人形なのだろう?
      ならばシステムの書き換え次第では戦力となりえる。 それだけだ」

(´<_`;)「まさか……!」

状況には覚えがあり、そして同様だった。

一度目はリトガーとの決戦時。
二度目は半年前の騒動時。
そして

( ・∀・)「……三度目、か」



109: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:27:25.19 ID:M+g40HNH0
( ゚д゚ )「何がだ?」

(:´_ゝ`)「ジェイルたんは元々俺達の敵だったんだ。
     それを、気に入ったモララーさんが秘書としてたんだが……半年前に――」

/ ゚、。 /「半年前の話は聞いている。 世界の欠片とやらが引き起こした面白い事件だったそうじゃないか。
      その時もこの人形は暴走して敵となった……そう、自我を残したまま」

( ・∀・)「ま、さか――」

/ ゚、。 /「随分と辛かったのではないか? お前も彼女も。
      その分で言えば我々も鬼ではない」

(;´_ゝ`)「ど、どういうことだ?」

/ ゚、。 /「簡単なことさ。 下手に自我が残っているから苦悩する。
      ならばそんなもの、初めから残さなければいい」

示唆する事実は一つ。

/ ゚、。 /「消してやったよ、彼女の自我を」

(;゚д゚ )「な……っ!?」

(´<_`;)「そんな!?」

( ・∀・)「……ジェイル君?」

爪゚ -゚)「…………」



112: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:29:04.86 ID:M+g40HNH0
/ ゚、。 /「問い掛けには答えんさ。 既に彼女はお前の顔など忘れている。
      いや、初めから知らないことになっている、か。

声と同時、ジェイルが動いた。
涼しささえ感じさせる擦金音を奏で、その両手に銀の剣と銀の槍を携える。

/ ゚、。 /「彼女は戦闘用機械人形……その使命は戦うこと。
      感情などというしがらみは要らない。
      そこに在って良いのはプログラムされた闘争心と、学習した経験のみ」

笑う。
獰猛に。

/ ゚、。 /「それ故に美しいのだ」

それは今まで見せたことのない、心底可笑しそうな笑み。
くく、と喉を震わせてダイオードは笑った。

しかし

/ ゚、。 /「だがな。
      私がこの場に出た時点で、それ以上の戦力強化など必要ないのだよ」

(#゚;;-゚)「……何を」



115: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:30:28.16 ID:M+g40HNH0
/ ゚、。 /「解らんか?
      何故私が、わざわざ必要の無いモノをここへ持ってきたのか。
      何故私が、わざわざそれをお前達に喋っているのか」

風が動いた。
それはダイオードの腕が巨剣を持ち上げる音。
地面と水平に掲げられたそれは、まるで片腕でバットを構えるかのような格好。

/ ゚、。 /「戦力強化には使わん。 『これ』はな――」

爪゚ -゚)「――――」

/ ゚、。 /「お前達の生意気な心を潰すために持ってきたのだよ」

巨剣が振るわれる。
一瞬だ。
が、という硬い音を残して、一筋の黒い線が空間に残る。

そして数秒後、モララー達から見て右方――しかも遥か遠くから、
何かがひしゃげるような耳障りな音が響いた。

( ´_ゝ`)「……え?」

何事かと右を見て、すぐに正面に視線を戻すと違和感に気付く。

在ったモノが無くなっていた。
直前まで在ったはずの何かが、まるで初めからいなかったかのように消えている。


――ジェイルの姿が無くなっているのだ。



123: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:32:46.26 ID:M+g40HNH0
情報が連鎖する。
振るわれた剣、右方からの撃音、消えたジェイル。
それらが示唆する事実とは

( ・∀・)「ジェイル、君……?」

モララーが呟き、事実に気付いた兄者が悲痛な呻き声をあげる。

/ ゚、。 /「人は脆いな、軍神。
      心の拠り所を消し去るだけで、こうも簡単に崩れ落ちていく」

(#゚;;-゚)「ダイオード……!!」

/ ゚、。 /「ふン、感謝くらいはしてほしいものだ。
      あの利用され続けた戦闘人形を『終わらせて』やったのだから」

(;゚д゚ )「アンタは……!」

/ ゚、。 /「騎士王よ、その名は形だけらしいな。
      護れない騎士王は騎士王ではないぞ?」

(;゚д゚ )「――!」

/ ゚、。 /「さぁ、茶番は終わりだ。 異獣が来るまで遊んでやろう。
      中途半端な正義を振りかざすお前らに、望む未来など与えられぬことを教えてやる。
      我々の管理という牢獄で一生を過ごすという事実を――」

言葉が止まる。
視線はモララーを見ていた。



126: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:34:21.68 ID:M+g40HNH0
/ ゚、。 /「ふン……怒るくらいの感情は持ち合わせていたか」

( ・∀・)「…………」

挑発の言葉。
対し、モララーは数呼吸の間を経て口を開いた。

( ・∀・)「私は――」

天を仰いで言う。

( ・∀・)「私は、これまで様々な経験をしてきた」

/ ゚、。 /「ほぅ?」

( ・∀・)「両親に異常とも言える教育を受けさせられ、初恋の人が目の前で死に、それが原因で唯一の親友をも失った。
     決意と共に会社を立ち上げ、指輪を起点とする騒動に首を突っ込み、そして今は世界の真実を知りつつある」

ダイオードの方へと向き直り

( ・∀・)「しかしこのような苛立ちを受けたのは、実を言えば初めてでね。
     非常に不愉快だよ――ダイオード」

(´<_`;)(『君』が抜けた……?)



132: ◆BYUt189CYA :2007/09/23(日) 21:35:28.07 ID:M+g40HNH0
/ ゚、。 /「…………」

ダイオードの笑みが深くなる。
今まで飄々としていた男の気が、異常なまでに引き締まったのを感じ取ったのだ。

好奇の念を含めた視線の先。
スーツ姿の男は、その右手に黄色い発光を促す。

出現したのは黄色の大槌で、その切っ先をダイオードに向けて言い放った。



( ・∀・)「――楽に死ねると思うなよ、秩序守護者。
     ジェイル君が受けた痛みを万倍にして返してやろう……!」



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