( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 4: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:05:31.39 ID:vB90+Vhe0
- 活動グループ別現状一覧
( ^ω^) 川 ゚ -゚) ( ・∀・) (,,゚Д゚) (*゚ー゚) ミ,,"Д゚彡 ( ´_ゝ`) (´<_` )
('A`) (´・ω・`) ( ゚∀゚) (`・ω・´) <_プー゚)フ (#゚;;-゚) [゚д゚]
( ゚д゚ ) ノハ#゚ ゚) ('、`*川 从・∀・ノ!リ ( ><) (*‘ω‘ *) |゚ノ ^∀^)
lw´‐ _‐ノv ( ´∀`) 川 -川 <ヽ`∀´> *(‘‘)*
所属:四世界
位置:古城アジト
状況:休息中
ル(i|゚ ー゚ノリ メ(リ゚ ー゚ノリ 从ξ゚ -゚ノリ 〈/i(iφ-゚ノii
所属:異獣
位置:世界政府本部
状況:???
从 ゚∀从
所属:不滅世界
位置:???
状況:???
- 5: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:09:33.72 ID:vB90+Vhe0
- 異獣編
第四十二話 『鬼哭啾啾』
( ・∀・)「さて、どうしたものか……」
人の気配が少ない会議室。
開口一番、モララーはそんなことを呟く。
世界政府本部での戦闘から丸二日。
何とか離脱したモララー達は、アジトである古城に戻って休憩を取っていた。
怪我をした者がおり、死んだ者もいる。
未だ行方不明な者もいれば、大破してしまった物も在る。
しかし、まず必要なのは休むことだと言っておいたのだが――
( ・∀・)「で、君らはわざわざ労働志願を?」
[゚д゚]「っつーか、俺ら本陣待機だったしなぁ……」
ミ,,"Д゚彡「動ける人は動いた方がいいと思います。
GIFやEMAの修理なんかは、時間が必要ですしね」
というように、全体の三割ほどは活動を続けているのが現状だった。
戦闘に参加しなかったデフラグやフサギコも、その一部である。
- 7: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:11:37.95 ID:vB90+Vhe0
- [゚д゚]「んでよ、今世界はどうなってんだ?」
( ・∀・)「ポリフェノール君が情報を集めている。
あと二時間もすれば皆が揃うだろうから、そこで報告分析するよ。
それまでは自由だから、君達も休んだ方がいいのでは?」
[゚д゚]「いーや、俺は軍神を看なきゃならねぇからな。
時間が来たら勝手に集合するぜ」
軽い欠伸をしつつ、デフラグは部屋を出て行った。
それに倣うように、まだ元気が余っている部下達もそれぞれの仕事に出る。
会議室には、モララーとフサギコが残されることとなった。
ミ,,"Д゚彡「では、私も――」
( ・∀・)「待ちたまえ」
ミ,,"Д゚彡「はい?」
( ・∀・)「……少し話をしよう。 そこの椅子を使ってくれ」
有無を言わさぬ空気に、フサギコは疑問を浮かべつつも椅子に座る。
会議室用の長机を隔てて正面にモララーが座った。
- 9: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:13:28.18 ID:vB90+Vhe0
- しばらくの沈黙。
耐え切れないないのか、フサギコが身を擦り
ミ,,"Д゚彡「あの、話とは?」
( ・∀・)「む、いや、そのだね……非常にあれなのだが、うむ……」
これは珍しい、と失礼ながらもフサギコは思ってしまった。
あのモララーが言い淀んでいる。
言うべきことは堂々と言う彼が、言い難そうに視線を部屋中に這わせる光景は不可思議だ。
ミ,,"Д゚彡(それほど、私に伝え難いことということですか)
自分に関係することで、口にすることがはばかられる話題など数える程しかない。
やがて意を決したようにモララーは頷き
( ・∀・)「……ツン君のことだ」
ミ,,"Д゚彡「…………」
予想内であり予想外だった。
あり得なくはないが、あり得てほしくなかった話題。
自然と身が固まるのを自覚する。
- 11: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:15:34.97 ID:vB90+Vhe0
- ミ,,"Д゚彡「まさか、死亡を撤回するということですか?」
( ・∀・)「その判断は君に委ねたいと思っている。
ともかく、これを見てほしい」
懐から取り出されたのは一枚の写真だった。
ミ,,"Д゚彡「これは――」
映っているのは女と思わしき人影。
無理な状況で撮ったのか、ブレている上にピントもいまいち合っていない。
ただ解るのは、その女の髪の色と持っている武器だけだった。
銀髪の中に、一筋の金色。
そして黒色の大鎌。
ミ,,"Д゚彡「…………」
( ・∀・)「色々と見難いのは、兄者君が盗撮したからだ」
ミ,,"Д゚彡「は?」
放たれた言葉の意味を理解するのに数秒。
そしてもう一度、
ミ;,,"Д゚彡「……は?」
- 14: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:17:25.86 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「ダイオードと彼女の戦闘中にね。
私も後でそれを知ったわけだが、流石に背筋を冷たいモノが走ったよ。
もし彼女に気付かれていたら私を含めて何人かは、ここに帰ってきていなかったかもしれない」
ミ;,,"Д゚彡「流石兄者さん……あ、何か本名になっちゃいました」
( ・∀・)「名に違わないから性質が悪い。
それで、だ」
一息。
( ・∀・)「……その写真に写っているものについて、君の見解を聞かせてほしい」
ある程度の予想がついていての要望なのだろう。
でなければフサギコに問う意味がない。
それを踏まえて、フサギコは写真を再度凝視した。
ミ,,"Д゚彡「二つほど確実に言える点があります」
( ・∀・)「言ってくれ」
ミ,,"Д゚彡「まずはこの武器……形こそ歪になっていますが、これは確かにウィレフェルです」
3rd−W『ウィレフェル』。
元々はフサギコが所持者だった大鎌型のウェポンだ。
それは渡辺達アギルト連合軍が分裂した直後、ツンと共にロマネスクに奪われたはずだった。
- 16: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:19:09.98 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「都市ニューソクの一件後、我々は地下アジトを調査した。
しかし3rd−Wもツン君も見つかることはなかった」
故にモララー達はツンを死亡、3rd−Wは消滅したものだと判断した。
あのロマネスクが、3rd−Wを用いなかったのは合点がいかなかったが、
ミ,,"Д゚彡「……おそらく、騒ぎに乗じた異獣によって回収されていたのでしょうね」
( ・∀・)「では、二つ目とやらはやはり――」
ミ,,"Д゚彡「はい。 この女性はツン=アストクフル様です」
響いた言葉に震えはなかった。
覚悟していたのか、はたまた彼の心が何よりも堅いのか。
( ・∀・)「やはりか。
私のロステックに反応があった辺り、そうではないかと思っていたのだよ」
ミ,,"Д゚彡「…………」
( ・∀・)「ならば話は早いと言うべきか。
私達よりも異獣に詳しい者達に話を聞かねばなるまい」
- 19: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:21:48.50 ID:vB90+Vhe0
- と、その時、会議室のドアがノックされた。
モララーが返事をし、そして中へと入ってきたのは男と女。
ミ,,"Д゚彡「貴方達は、ニダーさんとヘリカルさん……でしたっけ?」
<ヽ`∀´>「…………」
*(‘‘)*「まさかアンタらに協力することになるとは、です。
世の中何が起こるか解んないですね」
( ・∀・)「まぁまぁ、私が最も優秀だったということで一つ。
椅子に座りたまえ」
半目で睨むヘリカルとニダーは、しかし素直に腰を下ろす。
どうやら、既に協力者としての話はついているらしい。
( ・∀・)「君達を呼んだのは他でもない。
我々の中で、最も異獣に関しての知識があるのは君達だろう?
是非とも意見を聞かせて欲しい」
*(‘‘)*「……へぇ、随分と殊勝な態度ですね」
( ・∀・)「なりふり構っている状況でもないのでね。
手に入る情報なら、余すことなく全て手に入れる所存だよ」
ニヤリと笑うモララーに対し、ヘリカルは歪んだ笑みで返す。
何だかんだ言って、この二人は意外と相性が良いような気がしたフサギコであった。
- 21: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:24:41.39 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「さて、まずは確認された人型の異獣に関してだが」
モララー達が確認したのは三体。
ミルナが見たと言っていた青髪の女を合わせれば、最低でも四体いることになる。
( ・∀・)「異獣の形状は白狼だと聞いていたのだが……では、アレは何なのかね?」
*(‘‘)*「さぁ」
( ・∀・)「……まさか、知らないのかね?」
*(‘‘)*「機械世界で相手をしていたのは全て白狼だったです。
ハッキリ言わせてもらえば、人型タイプを見るのはあれが初めてですよ」
ちなみに、と付け足し
*(‘‘)*「一応、護国院に残ってた昔の資料に、それらしき記述を見たことがあるです。
影を視認した、という眉唾ものの情報でしたけど」
( ・∀・)「成程……逆を言えば、それほどの存在が出るくらい事態は悪い方に向かっているわけか」
何やら考え込むモララーに対し、黙っていたニダーが口を開いた。
<ヽ`∀´>「本当のところは何を知りたいニカ?
今の情報は、他の者が揃ってから吟味すべき情報ニダ」
( ・∀・)「ん? あぁ、そうだね……」
言いつつ、モララーはフサギコを見る。
視線は『許可の有無』を求めていたため、フサギコはしっかりと頷いて見せた。
- 25: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:27:14.12 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「ならば単刀直入にいこうか。
私達の知り合いが行方不明になっていたのだがね。
何がどうなったのかという経緯は想像出来ないが、異獣として現れたのだよ」
<ヽ`∀´>「――!」
言葉に大きな反応があった。
ニダーはその細い目を片方だけ見開き、ヘリカルは居心地悪そうに視線を逸らす。
( ・∀・)「……何やら心当たりがあるようだが?」
<ヽ`∀´>「ロマネスクという男を知っているニカ?」
ミ,,"Д゚彡「機械世界のアギルト連合軍に所属していた軍人、ですよね。
この世界に来て、渡辺さんから指揮権を奪った強行派だと聞いています。
そして都市ニューソクでの一件で死亡した、と」
*(‘‘)*「実を言えば、死亡したかどうかは解らなかったのですよ。
何せ死体が消えたんですから」
( ・∀・)「死体が、消えた……?」
<ヽ`∀´>「そして世界政府本部での戦いの時、奴は別人となって現れたニダ。
異獣の一員として」
ミ,,"Д゚彡「!」
似ている。
ツンとロマネスクの経緯が非常に似通っている。
両者とも死体が確認されず、後に異獣として現れた、という点が。
- 29: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:29:13.24 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「同じ手口と見て良いようだ。
で、それは助かるのかね?」
<ヽ`∀´>「……確実なことは知識が無いウリには言えんニダ。
しかしウリが見たロマネスクは、もうロマネスクじゃなかったニダ。
あれはロマネスクに異獣を混ぜ、要らぬ部分を除けて出来た存在だと思うニダ」
つまり
<ヽ`∀´>「奇跡でも起きて彼らをこちらの手に落とせても
もう元に戻すことは出来ないと……そう、ウリは判断したニダ」
しばらくの時が経ち、会議室が静けさを取り戻す。
既にニダーとヘリカルは退室し、与えられた部屋へと戻っただろう。
残っているのは窓の外を見ているモララーと、俯くようにして座っているフサギコだ。
( ・∀・)「……どうするかね?」
ミ,,"Д゚彡「…………」
( ・∀・)「いや、それは君が決めるべきことか。
ならばもう一つ問おう」
こちらを見もしないフサギコに
( ・∀・)「この件を皆に公表するかね?」
- 31: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:30:38.08 ID:vB90+Vhe0
- ミ,,"Д゚彡「…………」
( ・∀・)「ちなみに私はどちらでも構わないと思っている。
何にせよ、ニダー君の言ったことが本当ならば倒すしかないのだからね」
ミ,,"Д゚彡「……少し、考えさせて下さい」
( ・∀・)「解った。 ただ、この後の会議には出席してくれたまえよ。
答えを出すのは、その後でも構わないから」
ミ,,"Д゚彡「ありがとうございます」
力無く席を立ち、そのまま危ない足取りで会議室を出る。
その気配を背中で感じ取りつつ、モララーは人知れず吐息した。
深く、そして長い息。
( ・∀・)「……厄介なものだな。 まったく苛々させてくれる」
- 35: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:32:39.99 ID:vB90+Vhe0
- それから更に二時間の時が経った。
泥のように眠っていた仲間達が目を覚まし、会議室へと集まってくる。
スッキリしたような顔をしている者がいれば、まだ眠そうに目を擦る者もいた。
( -∀゚)「……眠いぞ。
俺様は育つ子だからまだ寝たいんだぜ」
(´・ω・`)「どうせ会議中は役立たないんだから寝てればいいと思うよ」
( ´_ゝ`)「だが我慢s……Zzz」
( ゚д゚ )「ヒート、身体は問題ないか? 無理はしてないな?」
ノハ#゚ ゚)「うん、大丈夫だよ」
lw´‐ _‐ノv「米」
( ´∀`)「はいモナ」
先ほどとは打って変わって、談笑の声が重なっている。
比較的広めな室内には三十近くもの人影。
四世界の主戦力メンバーであり、そしてまた代表者も混じっていた。
- 39: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:35:15.97 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「全員集まったかね」
鶴の一声とはこのことか。
会議室は、一瞬で水を打ったように静寂を生む。
皆が、これからの事柄に関して関心を寄せている証拠だ。
その全ての視線を受けつつ、モララーは平然と言い放つ。
もはや慣れたもので、だからこそ皆もある程度安心して任せられるというものだ。
( ・∀・)「さて、皆に集まってもらったのは言うまでもない。
総括と今後について話をしよう」
( ^ω^)「そういえば皆で集まって話すって展開多いよNE――へぷぁ!?」
強烈な勢いで飛んだマジックペンが、ブーンの額を直撃する。
『GYAAAAA!』と転げ回る彼を、皆は半目で溜息を吐きつつもスルー。
川;゚ -゚)「……大丈夫か?」
(;^ω^)(あれ、僕ってこんなポジションだったっけ……?)
( ・∀・)「まず……世界政府での戦いにて色々あったわけだが。
人によっては、思い出したくもない話があるかもしれない。
だが今後のためにも必要な情報は全て引き出して、整理しておきたい」
(´<_` )(言うなぁ……自分もかなり辛いくせに)
- 44: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:37:04.78 ID:vB90+Vhe0
- 川 ゚ -゚)(やはりジェイルが破壊されたという話は本当だったのか)
('、`*川(あの子、良い子だったんだけどねぇ……。
機械だからこその最期というか、せめて戦いの最中で果てたかったろうに)
(´・ω・`)(あれ? でもモララーさんが帰って来た時――)
( ・∀・)「そこ、御喋り時間は後で作ってあげるから、今は聞くことに集中したまえ」
む、とバツの悪そうな表情を作って沈黙する数名。
ヘリカル、エクスト辺りが嫌らしい笑みを浮かべ、ニダーとシャキンに睨まれる。
(,,゚Д゚)「……しかし、何から話せばいいのかイマイチ解らんな。
とりあえず現状が知りたい、というのが皆の総意だろうか」
( ・∀・)「というわけで、ちょっと頭の可哀想なギコ君のためにも現状説明かな」
真顔のギコが椅子を蹴飛ばして立ち上がり、傍にいたミルナとしぃが慌てて止めに入る。
それをケラケラと笑うジョルジュ、そして傍観に徹しているレモナと軍神が露骨な溜息を吐いた。
次々に連鎖していく感情を見て、モララーは心の中で安堵する。
( ・∀・)(……思ったよりもダメージは少ないようだね。
あれだけ騒げれば問題あるまい)
この会議は最悪、通夜のような雰囲気になるだろうと予想していた。
世界が交わり、空が真っ赤に染まった今、異常を感じ取れないわけがない。
加えて異獣の強さを目の当たりにした彼らが、意気消沈してしまっても仕方ないと思っていたのだが――
- 47: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:39:09.65 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「ふむ」
ギャーギャーと騒ぐ仲間を見て、杞憂だったか、とモララーは聞こえないよう呟く。
しかし、何かが違った。
それぞれ騒ぐ皆を見れば解るのだが、僅かな軋みが見て取れる。
高度から客観視することが出来るモララーでなければ解らない程の、小さな小さな軋みだ。
歪んでいる。
地中の断層のように。
何かが決定的にズレている。
( ・∀・)(皆、戦いが終わってすぐに就寝……そして先ほど起きたばかり)
となれば
( ・∀・)(この後か。 感情が激化するのは)
今起きている騒ぎなど、いわゆる嵐の前の静けさのようなものだろう。
ならば早めに終わらせなければな、とモララーは心に決めた。
そして軽く手を叩き
( ・∀・)「注目したまえ。
これから、あの後で何が起きたのかを説明する……ポリフェノール君」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「はい、社長」
モララーと入れ替わるように、大柄な中年の男が前へ出る。
傍にあったPCを操作し、正面のボードに映像を映した。
- 50: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:41:24.12 ID:vB90+Vhe0
- lw´‐ _‐ノv「……っていうか誰?」
( ・∀・)「FCの都市観察課に所属していた私の部下だよ。
世界政府本部襲撃時はこの古城に待機してもらって、情報を集めさせていた。
異獣が現れてからたった数日で、集めた情報を報告出来るまでにまとめたのは彼の手腕さ」
自信満々に言うからには、かなり信頼しているのだろう。
ポリフェノールは笑顔で頷き、口を開く。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「まず知っているとは思いますが、ある時刻を境に空が赤く染まっています。
詳しいことは解りません……ですが一つ確認出来たのは、昼も夜も色が変わることがないという事実です」
(´・ω・`)「その『ある時刻』……って、やっぱり世界交差?」
从・∀・ノ!リ「だろうな。
そして疑問は、やはり赤い空に尽きる」
レインはニダー達を見た。
元々世界交差を企んでいた組織の一員であるが故に、理由を求めたのだろう。
しかし、彼は首を振る。
<ヽ`∀´>「……正直言ってウリは知らんニダ。
確かに世界交差の概要は渡辺本人から聞いていたが、空が赤くなるなんてことは言ってなかったニダ」
*(‘‘)*「私もニダーと同じ意見です。
ただ、彼女が本当のことを言っていたのだとしたら、の話ですがね」
( ・∀・)「軍神君は? 何か知らないかね?」
(#゚;;-゚)「赤い空、か。 そんな記述をどっかで見た――ような気ィするなぁ」
- 57: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:43:44.85 ID:vB90+Vhe0
- うーん、と腕を組んで考え込む軍神。
ニダー達は心当たりがないのか、視線を合わせて首をかしげた。
(#゚;;-゚)「……あー、そやそや。 思い出したわ」
( ゚∀゚)「お?」
(#゚;;-゚)「確かに、ウチがまだ機械世界におった時に見たことある。
二百年以上も続いとった異獣との戦いの情報を載せた資料を、ちらーっとな。
そこに『赤い空』っていう記述が確かにあったわ」
(*゚ー゚)「それはどういう……?」
(#゚;;-゚)「戦いが始まって間もない――いや、それこそ初期中の初期やったな。
異獣が姿を見せ始めた頃、一時的に空が真っ赤に染まったって書いてあったわ」
( ゚д゚ )「やはり異獣が現れる前兆のようなものなのか」
(#゚;;-゚)「前兆っていうか初期現象やね。
空が赤くなったから異獣が来たんやなくて、異獣が来たから空が赤くなった感じ」
lw´‐ _‐ノv「……つまり」
川 ゚ -゚)「やはり、もうこの世界に異獣が現れているということか」
言葉に、全員が息を呑んだ。
それぞれが顔を見合せ、そしてポリフェノールへと視線が集中する。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「なら、次は世界の現状の報告へ参りましょうか」
- 61: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:45:20.82 ID:vB90+Vhe0
- かち、という音と共に画面が切り替わる。
表示されたのは世界地図だ。
次々と画像を出しつつ、ポリフェノールは説明を開始する。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「これを御覧下さい」
一際大きく映し出されたのは、どこかの都市のような光景だった。
しかし大きな違和感がある。
(`・ω・´)「何だ、周囲にある真っ白なモノは……? 雪でも積もっているのか?」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「その全てが異獣ですよ」
(;´_ゝ`)「なっ――」
<_;プー゚)フ「うっそぉぉぉぉぉ!!?」
(;><)「気持ち悪いんです!!」
幾名かが驚きの表情で立ち上がった。
無理もない。
都市の大きさから考えれば、囲っている異獣の数など想像も出来ないほど多いということが解る。
今更ながら、彼らは敵の規模の大きさに驚いていた。
- 64: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:46:55.40 ID:vB90+Vhe0
- |;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「この都市だけではありません。
世界各国の都市や街の周囲に、このような異獣の群れが確認されています。
ただ不可解なのは、囲うだけでほとんど何処も襲われていないという点ですね」
ノハ#゚ ゚)「……見張ってるだけ?」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「という見方が有力ですな。
しかし、ほとんどの場所が襲われていないと言いましたが
もちろん襲撃されている場所も存在します」
それは、と言いながら新たな画像を表示。
煙と炎を撒き散らす施設だ。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「いわゆる軍事施設ですね。
襲撃というよりは『内部にいた人間を追い払った』に近いという情報もあります。
これが何を意味するか解りますか?」
(;^ω^)「抵抗出来ないよう、武力を奪ってるってことかお?」
(´・ω・`)「そして街や都市の人間を外部へ逃がさないよう、囲って見張る。
このままじゃ物資の流通までストップしちゃうね」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「まだ一部の海路と空路、そして地下が使えますが……限界は目に見えているでしょう」
- 68: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:48:47.30 ID:vB90+Vhe0
- (;><)「でもそうだとしたら、その異獣の目的は何なんですか?
それだけの数と力があるんなら、すぐにでも世界征服出来ちゃいそうなんです」
あぁそうか、と皆が頷く。
強者が弱者を生かす理由など、利用価値があるからに他ならない。
敢えて生かす理由を挙げるとすれば――
( ゚∀゚)「ワッカンネ」
<_プー゚)フ「んー……あんまり言いたかねーが、手足をもがれてる感じがするぞ。
抵抗する手段を潰して、後でじっくりゆっくり食われるような、そんな気味悪さだぜ」
从・∀・ノ!リ「我らの世界にある蜘蛛がおってな。
そいつは、獲物の羽や足を生きたまま食い千切ってから食事に入るという。
おそらくそれと似たようなものじゃろうな」
( ゚д゚ )「比べるべくもなく桁違いの規模なわけだが。
どちらにせよ、出来るだけ急がねばならんらしい」
(`・ω・´)「……とは言え、何をどう急げば良いのやら」
( ・∀・)「指標ならあるさ。 ポリフェノール君、例の画像を」
頷いたポリフェノールがPCを操作する。
いくつかのファイルを開き、何やら極秘っぽい画像を画面に表示させた。
- 72: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:50:55.81 ID:vB90+Vhe0
- (*゚ー゚)「これは――」
('、`*川「ボール?」
ペニサスの呆けた言葉通り、白いボールが茶色の地面に置いてあるような画像だった。
しかし当然、そんなわけもなく
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「元々は世界政府本部が在った場所を、高度から撮ったモノです」
(;,,゚Д゚)「本部って……まさか、俺達が戦った所か?」
<_;プー゚)フ「これまたうっそぉぉぉぉぉぉ!? 森とかあったじゃん! 何処行った!?」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「消えた、としか言いようがないですな。
詳しい理由は不明なのですが、とにかく言えるのは周囲が荒れ地になっている、と。
そしてあの白い巨大な円は全て異獣で、中心地は世界政府本部があった位置と一致しています」
(;^ω^)「あれも全部僕らの敵なのかお……」
(;゚д゚ )「他の地域にいる奴らも合わせて、一体どれほどの数がいるんだ……」
( ・∀・)「さて、指標と言ったからにはあの地点が重要でね。
あそこから超高濃度の魔粒子が検知されている。
どうやら周囲の異獣は、あの中心地を守ろうとして固まっているらしい」
- 76: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:52:29.33 ID:vB90+Vhe0
- 単純に考えて『守る』ということは、そこを突かれるとまずいということだ。
lw´‐ _‐ノv「……世界交差が発動した地点。
もしかしたら、そこが異獣達にとって扉的な意味を持っているのかもしれない」
(;^ω^)「ってことは、そのドアを閉じれば――」
世界に異獣が溢れている現状、その全てを相手にて勝つのは不可能。
つまり、この事態を打開するには
( ゚∀゚)「おいおい、んじゃ簡単じゃね?
あの化物が守ってるっつー場所に、核ミサイルでも何でもブチ込めばいいじゃねぇか」
(´・ω・`)「まさか君が正論を言うとは」
うへへ、と妙な笑みを浮かべるジョルジュ。
しかしレインが首を振る。
从・∀・ノ!リ「確かに常套手段であるが……異獣という存在が、今までどれだけの世界を渡って来たか知っておるか?
そんな単純な手段で駄目になるのならば、この世界に来るまでに滅ぼされておるよ」
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「そういうことですね。 やはり一筋縄ではいかないようで。
異獣が守っている地点、つまり世界政府本部があった場所には結界のような何かが張られています」
<_;プー゚)フ「結界だぁ? どこのファンタジーだよ」
(`・ω・´)「……コイツは無視していいから先を頼む」
- 83: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:54:35.82 ID:vB90+Vhe0
- |;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「観測した限りでは、超濃密な魔力ドームといったところですか。
弟者さんの12th−W『ジゴミル』の限界突破を、規格外に強化したイメージで良いでしょう。
生身はもちろん、並の対魔力装備でも弾かれる以前に消滅してしまうかもしれません」
ノハ#゚ ゚)「その結界を解かない限りは、近付けもしないわけか。
やはり重要な場所であることは確実だね。
魔力には魔力だけど……何か手はあるの?」
( ・∀・)「一応考えてはいるが、成功させるのはいくつかの段階を踏まねばならない。
君達に直接動いてもらう必要がある」
( ゚∀゚)「んで、その後に核ミサイルちゅどーんってか」
( ・∀・)「いや……それはあまり確実とは言えない方法だと思うよ」
(,,゚Д゚)「何故だ?」
<ヽ`∀´>「相手は膨大な魔力を持ち、操れるニダ。
ミサイルなんかいくらでも無効化可能だと、ここ最近で魔力に触れたアンタ達なら解ると思うニダ」
<_;プー゚)フ「んじゃあ、どうすりゃいいんd――」
川 ゚ -゚)「――直接叩くしかあるまい」
- 86: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:56:11.69 ID:vB90+Vhe0
- 凛とした、騒がしい会議室によく通る声。
『ほぅ』とモララーが吐息する中、クーは静かに皆を見渡す。
その視線を自分に集めたのを確認し、ゆっくりと口を開いた。
川 ゚ -゚)「……状況から解る通り、長期戦及び物量戦に持ち込むのは圧倒的に不利だ。
ならば、持ち得る全戦力を以って敵の中枢に突撃し、モララーの策とやらで結界を破壊する。
続いてそのまま迅速に根源を断つのが、出来る限りの正しい戦い方になるだろう」
( ・∀・)「というわけだね」
その声を起因として、会議室が沈黙に包まれた。
が、それも一瞬のことで
(;゚∀゚)「ねーよwwwwwwwww数が違い過ぎるwwwwwww」
<_;プー゚)フ「死にに行くようなもんだろwwwwwwwww」
(;´_ゝ`)「あばばばばばばwwwwwwwwww」
(*‘ω‘ *)「ぽぽぽぽぽぽぽぽ!!」
(;><)「チンちゃんは真似しなくていいんです!」
<ヽ`∀´>「……いつもこんな感じニカ?」
(´<_` )「……悔しいが否定出来ん」
- 90: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:58:15.13 ID:vB90+Vhe0
- ざわつくもの当然だ。
まず数が違い過ぎる。
そして彼らは二機のEMAが撃墜される様を見ていた。
戦力も数も劣っている現状、この慌てようは当然である。
しかし何人かが、クーの意見に賛同した。
(#゚;;-゚)「うーん、そない言うほど悪くないって思うんやけどなぁ」
ノハ#゚ ゚)「確かに全てを相手にするというのなら、それこそ勝ち目がないと思う。
でも中枢だけを狙って攻め込むんなら……」
lw´‐ _‐ノv「世界に散った異獣を相手にしなくて済む分、数での不利は軽減される。
後はこっちの戦力をどこまで高められるか、どういう戦略をとるかで勝てるかも? かも?」
( ・∀・)「確かに、そのやり方が唯一希望が見えるだろうね。
希望といっても限りなく小さいわけだが。
他国の軍が封じられつつある現状、戦えるのは私達だけになりそうだしね」
从・∀・ノ!リ「何にせよ、このままジリ貧になるのが一番まずい。
時間を掛ければ掛けるほど、補給面などの状況が悪くなる一方じゃからな」
|゚ノ ^∀^)「どうせ負けても放置しても世界が終わるんでしょ?
だったら例え勝率が低くても戦わなくちゃ、死ぬだけじゃない」
(;^ω^)(……女の人の方が強いお)
(;゚д゚ )(……あぁ、少し情けないな)
- 94: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 20:59:59.00 ID:vB90+Vhe0
- (´・ω・`)「で、モララーさん。
敵の中枢を指標として提示したってことは、この作戦でいくつもりだったんでしょう?
それがベストだと僕も思うんですが……戦力はどうするんですか?」
<_;プー゚)フ「え、マジで最初からこのつもりだったの?」
(`・ω・´)「お前は少し黙ってろ」
( ・∀・)「戦力増強案はある。 これを見たまえ」
指を弾く。
合図として、ポリフェノールがPCコンソールを叩いた。
画面に表示されていた全ての情報が格納され、新たな情報が花火のように連続して開く。
それを見た全員の目が、みるみる内に見開いていった。
(;,,゚Д゚)「これ、は――」
<_;プー゚)フ「おいおいおいおい、マジかよ……!?」
(#゚;;-゚)「へぇ」
それは全戦力を底上げするための具体的なプランであった。
具体的、と言っても複雑なものではない。
( ゚д゚ )「全武装、全装甲に使用される魔力を四倍〜五倍にまで高める……そんなこと出来るのか?」
- 96: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:01:27.13 ID:vB90+Vhe0
- ( ´_ゝ`)「人工魔力だけじゃ量も純度も足りないぞ。
強化は大賛成だが、どうやって魔力を調達するんだ?」
( ・∀・)「君達は異獣が現れたことにしか目が行っていないようだね。
その副産物をすっかり忘れている」
(;><)「副産物ですか?」
从・∀・ノ!リ「成程……『純正ルイル』か」
(`・ω・´)「そうか……!
秩序が破壊されたことにより、この世界の純正ルイルが見つかるようになった。
それを手に入れれば、全装備強化など容易いというわけか」
(´<_` )「しかし、だとしたらノンビリしてて良いのか? 条件は俺達も異獣も同じだぞ。
もし奴らに先に奪われでもしたら、それこそ勝ち目なんか無くなる」
( ・∀・)「……非常に勝手な意見ではあるが、それはないと私は思っている」
ノハ#゚ ゚)「うん、私もそう思う」
( ゚∀゚)「じゃあ俺も!」
(*‘ω‘ *)「ぽぽぽ!」
( ゚∀゚)「あ? 何だって?」
从・∀・ノ!リ「聞いたらたぶん泣くだろうから言わん」
(;´・ω・`)(あんな可愛い顔して何を言ったんだろう……)
- 104: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:03:53.59 ID:vB90+Vhe0
- ( ゚д゚ )「ヒート、どういうことだ?」
ノハ#゚ ゚)「上手く言葉に出来ないんだけど、奴らはきっと私達の行動に手を出すことはしない。
何て言えばいいのかな……多分、待ってるんだと思う」
( ・∀・)「だね。 先ほどの疑問の通り、異獣は力と数を持ちながらも何故か本格的な活動に出ない。
強者が弱者を食らわない理由など一つ。 利用価値が残っているからだ。
その価値が無ければ生かしておく道理などなく、とっくの昔にこの世界など破壊されているよ」
ミ,,"Д゚彡「利用……価値、ですか」
<_;プー゚)フ「嫌な響きだな、おい」
( ・∀・)「世界中の軍事施設が制圧されているというのに、我々だけ何もされていない点。
奴らの狙いは純正ルイルにも関わらず、それを探そうとする動きを見せていない点。
二点を繋げる理由は、そう多くないはずだ」
む、と唸り声を上げつつ、皆は各々考えを巡らせる。
( ・∀・)「まぁ、単純に考えて――我々が純正ルイルを持って攻めてくるのを待っている、だろうね」
(;^ω^)「待ってる? 何でそんなことを……?」
( ・∀・)「こちらにはEMA二機に搭載された魔法世界の純正ルイルもある。
いちいち不滅世界の純正ルイルを探し出し、それからこちらを攻めるよりも
我々がどちらも手に入れて戦いに赴く方が、異獣からすれば正に『鴨が葱を背負ってくる』状態だ」
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:06:12.97 ID:vB90+Vhe0
- 从・∀・ノ!リ「しかし奴らが絶対の自信を持っておるというのならば、どちらも同じ結果に終わると思っておろう。
『時間が掛かるか否か』という理由だけではちと足らんな。
となれば、奴らは純正ルイルと手間の他に――」
レインの言葉にモララーは、あぁ、と頷いた。
少しだけ黙り込み、皆の注目を集めてから
( ・∀・)「……おそらくは戦いたがっているのかもしれない。
我々と、食うか食われるかの関係でね」
と、重々しい口調で言い放った。
(;゚д゚ )「戦いたがってる、だと?」
(`・ω・´)「……確かにその理屈でいくなら、それくらいの馬鹿げた理由があってもおかしくはない。
そしてそれは同時に、まだチャンスは失われていないということに繋がる、か」
(#゚;;-゚)「理屈が合ってれば、ウチらが攻めるまでは律儀に待つはず。
もちろん時間の限度はあるやろうが、あの数で一気に攻められるよりはマシやね」
<_#プー゚)フ「ふざけやがって……完全に余裕かましてやがるな」
( ・∀・)「苛立ちは解るが、これは千載一遇のチャンスだよ。
時間が許す限りは戦力を強化し、たった一度の戦闘に全てを出し切る、というね」
- 111: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:08:31.89 ID:vB90+Vhe0
- (,,゚Д゚)「勝てば生き残れて、負ければ世界滅亡か……大層な賭けになりそうだな」
<_プー゚)フ「言われなくとも勝つ方に全賭けしてやらぁ!
やってやんぜ!」
( ・∀・)「士気も上がってきたところで、今後について二つほど。
まず君達は戦力強化について全力で当たってくれ。
私はこれから不滅世界の純正ルイルの回収を行ってくる。
既に極大な魔力反応を観測していてね。 一日ほどで戻ってこれるとは思う」
(#゚;;-゚)「そんならウチもついて行こか?」
( ・∀・)「いや、もし先の理屈が間違いであった場合、死ぬ者は少ない方がいい。
万が一私が戻ってこなければ……悪いが、君達は私抜きで何とかしてもらうよ」
(;´_ゝ`)「……むぅ、いればいるでウザいんだが、いなければいないで心細いな」
『お前が言うな』と全員からの突っ込みが入る。
部屋の隅、体育座りの姿勢で泣き始めた兄者は無視され、
( ・∀・)「で、純正ルイルを持ち帰った後は、すぐさま先ほどの戦力強化計画を実行に移す。
それが終わり次第、もう一度だけ最終確認の意味も含めて作戦会議を行う。
後は――」
( ^ω^)「全力を以ってぶつかるのみ、かお」
( ・∀・)「予定している期間は一週間だ。 それまでに間に合わなかった強化は諦めてもらうよ。
無論、異獣の動きに左右されるだろうから、それも心に留めておいてくれ」
- 114: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:10:17.98 ID:vB90+Vhe0
- 全員が強く頷いたのを確認し
( ・∀・)「以上で会議終了、一時解散。
私はあと一時間ほどで出発するため、何か聞きたいことがあれば早めに頼む」
こうして慌しい会議は終了した。
いくつかの事項を確認し合ったメンバーは、一層引き締めた感情を持って会議室を出ていく。
純正ルイルが無くとも出来る強化はある、と誰かが言い、それぞれが出来ることをするためだ。
モララーも、この後こそが大変だろう、と密かに心を引き締める。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「では社長。 私はまた情報を集めてまいります」
( ・∀・)「君には助けられてばかりだね。 頼んだ。
何か判明したらすぐに知らせてくれ」
嬉しそうな笑みを浮かべたポリフェノールが、機材を抱えて退室する。
会議室に残ったのはモララー一人で――
いや、
( ・∀・)「……もう誰もいないよ、出てきたまえ」
- 120: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:11:39.30 ID:vB90+Vhe0
- 言葉を皮切りに、気配が一つ増えた。
広い室内の隅、濃い影から音も無く出て来たのは
川 -川「…………」
かつて渡辺を護っていた機械人形――貞子だ。
あまり調子が良くないのか、身体の所々で軋みの音を発する。
そのまま静かにモララーの近くまで寄った。
川 -川「私は、マスターを失いました」
( ・∀・)「あぁ、聞いている」
レインの報告にあった。
渡辺は世界政府本部で発生した地震によって逃げ場を失い、そのまま帰らぬ人となった、と。
川 -川「そして貴方も大切な部下を失った」
( ・∀・)「……そうだね」
川 -川「単刀直入に言いましょう。
モララー様、私を貴方の――」
( ・∀・)「断る」
何を言わんとするのか既に理解していたようだ。
モララーは挙げた右手で拒絶すると、その鋭い視線を貞子へと向けた。
- 125: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:13:04.19 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「私のサポートはジェイル君にしか出来ないし、私個人の感情として彼女以外の者に任せたくない。
悪いが、君の要望を許可することは出来ない」
川 -川「…………」
( ・∀・)「私はこう見えても感傷派でね。
君の申し出は確かにありがたいが、それを心が許容しないんだ」
川 -川「貴方は強いのですね」
( ・∀・)「?」
川 -川「大切なモノを失っておきながら、まだ尚立っていられる」
( ・∀・)「……あぁ、そういうことか」
軽い溜息。
視線を貞子から外し、小さな窓から見える風景へと向ける。
その目は遠くを見るように細められていた。
( ・∀・)「私はね、貞子君。 大切なモノを失ったからここまで来れたのだよ」
川 -川「…………」
( ・∀・)「二度目だ。 既にもう慣れている」
話すことはない、と背を向ける。
意図を読み取ったのか、貞子は微かに俯いてその場を離れていった。
- 128: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:14:25.09 ID:vB90+Vhe0
- 扉が静かに閉まる音。
それを確認し、モララーは口元に笑みを浮かべる。
( ・∀・)「いや、モテ過ぎるというのも考えものかな?」
返事はない。
会議室にはモララーしかいないのだから当然だ。
しかし彼は、不思議そうに周囲を見渡し
( ・∀・)「……やはり寂しいものだね」
と、確認するように小さく呟いた。
やはり、返事はない。
生まれたのは沈黙で、下手をすれば耳鳴りさえ聞こえそうだった。
久しく感じたことの無かった虚無感。
それを慈しむようにして胸の内に取り入れる。
ようやく、モララーはジェイルを失ったという現実を受け入れた。
( ・∀・)「ジェイル君……しかし君は、まだ――」
紡がれた言葉は、最後まで声になることはなかった。
- 132: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:15:57.92 ID:vB90+Vhe0
- 心地よい風が吹いていた。
陸で感じるクリアなものとは違い、微かな潮の匂いが混じった風だ。
前髪を撫でる感覚に、我慢出来ないくすぐったさを覚える。
从 -∀从「……んぅ、それはあかんですよ奥さん」
果たしてどんな夢を見ているのか。
耳元で組んだ腕に頬擦りし、幸せそうな表情で寝言を言うのはハインリッヒ。
しかし、流石に岩肌の上で熟睡するのは不可能であったのか、
从 ゚∀从「――ふにゃ?」
ぱっちり、という擬音が聞こえてきそうなほど勢い良く瞼を開く。
寝起きに強いのか、彼女はそのまま迷うことなく身体を起こした。
从 ゚∀从「……あれ? ここは?」
周囲は、見慣れぬ景色に囲まれていた。
正面や左右の光景だけを言葉にするならば、そこは格納庫のような広さを持つ鉄の箱庭と言えた。
しかし足元は地肌一面で、天井も大きな電灯がある以外は岩に覆われている。
洞窟の中に作られた中途半端な半自然の格納庫。
パッと見、そんなチグハグな印象を受ける場所だった。
- 140: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:18:03.38 ID:vB90+Vhe0
- 从;゚∀从「はて、僕は何故……ッ!?」
と、その時。
突如、脳に鋭い痛みが走る。
無理に閉じようとしていた記憶が呼び覚まされたのだ。
从;゚∀从「っつ……あ――」
思い出した。
思い出してしまった。
炎と瓦礫と震動に包まれた中、助けたかった人を助けられなかった記憶を。
从 ゚∀从「ぁ……」
再度、か細い声を出す。
それは段々と震え、嗚咽が混じり、遂には涙声となる。
从 ;∀从「ぁう……ぼ、僕が……」
助けたかった。
救い出したかった。
一緒に逃げ出して、落ち着いた頃に言葉と心交わし合いたかった。
しかし、そう心の底から思えたのは、既に取り返しのつかない状況下で
从 ;∀从「っふぇ――」
- 146: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:19:41.34 ID:vB90+Vhe0
- 何故、あの時まで言えなかったのだろう。
自分の存在意義を考えれば、渡辺の考え方こそが自分の親に相応しかったというのに。
たとえ違う世界の人間だとしても、たとえ異なる方の親と意見が対立していたとしても
ハインリッヒの親だということには変わりなかったのだというのに。
後悔の念が押し寄せる。
それは涙と嗚咽として表現された。
从 ;∀从「うぅ……ふぇぇぇぇん」
声が岩壁に反射し、この洞窟内に作られた格納庫に大きく響いた。
結局、泣き声は五分ほど続いた。
喉を酷使したせいで焼け付くような痛みに気付き、ようやくハインリッヒは声を止めることとなる。
溜まった涙を拭き取り、軽く俯くような姿勢で
从 -∀从「…………」
それは黙祷だったのか、それとも決意を固める沈黙だったのか。
果たしてハインリッヒは立ち上がる。
口をしっかりと閉じ、両頬を叩いて気合を注入した。
从 ゚∀从「……いい加減、泣くのは終わりです。
渡辺さんが目指した果てを、今度は僕がこの目で見るんだ」
- 150: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:20:59.06 ID:vB90+Vhe0
- そのためにも自分は強くならなければならない。
泣いている暇はなく、そして泣くのはこれが最後にしようと決める。
まず始めたのは周囲を改めて見直し、自分が置かれている現状の把握に務めることだ。
あの時、ハインリッヒは黒色の人型兵器に捕まった。
どちらかと言えば救助に近い形なのだろう。
渡辺が機体の正体を知っている節があったことから、あれは味方なのだと思える。
从 ゚∀从(いや、もしかしたら――)
渡辺が放った言葉を思い出す。
――あれこそが、貴女の力。
あれ、とは言うまでもなく黒色の人型兵器のことだろう。
つまりハインリッヒと黒の機体が、かなり密接な関係にあることが解る。
从 ゚∀从「あ……」
見つけた。
格納庫に見える鉄壁の一部に光が灯っているのを。
そしてそこには、黒色の機体が直立不動の姿勢で立っていた。
- 153: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:22:44.61 ID:vB90+Vhe0
- 『――――』
从;゚∀从「わわっ」
近付くと、アイカメラと思しき赤い光がこちらを見た。
搭乗者がこちらを見ているのか、もしくはどうやら意識のようなものがあるらしい。
全長は七メートル程か。
全体的なイメージとしては、たまに銀の線が入っている他は真っ黒な人型兵器である。
背部スラスターには、空気抵抗の関係からか鋭利な金属片が四本伸びていた。
両腕両足も漆黒に染められているが
肘と膝部に付属している、小さなブレードのような銀刃が印象的だった。
从;゚∀从「あ、あのー、こんにちわー?」
呼びかけるが返事は無い。
ただ目のような赤い光が、こちらを追うようにして見つめるのみ。
言葉を発することが出来ないのか、それとも
从 ゚∀从(待っている……?)
と、漠然と思えた。
確信ではないが何故か、そうなのだ、と断言出来るような不思議な直感。
――この機体は、ハインリッヒについての何かを待っているのだ。
- 159: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:24:52.49 ID:vB90+Vhe0
- 从 ゚∀从「……ともあれ何かアクションを起こさないといけないようですね」
あの機体は何も教えてくれそうにない。
不親切であるような気もしないこともないが、しかしそれは一つの事実を示唆している。
从 ゚∀从(教えないということは教える必要がないということ。
つまり、この施設の中にヒントが隠されているのですね。
そしてあのロボットは、僕がそれを見つけるのを待っている……のかも?)
半ば思い込みの勢いで結論した彼女は、更に周囲を見渡す。
扉が一つあったが、上のプレートには『食料庫』と書かれているので探索の意味は薄いだろう。
更に視線を走らせると、ある物を発見することが出来た。
从 ゚∀从「あれは――」
ゲームセンターにあるような黒色の筐体が一台。
モニターとコンソールが僅かな光を発し、生きていることをこちらに伝えてくる。
自然と足が動き、気付けばコンソールを目の前にしていた。
- 164: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:26:31.83 ID:vB90+Vhe0
- 从;゚∀从(…………)
観察してみるも、自分の理解の範疇を超えていることしか解らない。
となれば、やるべきことは限られてくるだろう。
从 ゚∀从「とりあえず適当に操作してみるべきですよね……!」
育った周囲環境の影響からか、ハインリッヒは半ば楽しそうに両手を伸ばす。
適当なキーを一つ押した瞬間、
从;゚∀从「うわわっ!?」
まるで待っていたかのように、モニター内の情報が動き始めた。
自動的に次々とウインドウを展開し、様々なグラフのような図や表を生み出していく。
画面右下にはゲージが一本。
赤い文字で『18%』と表示されていた。
その数字は徐々に加算されていき、遂には『100%』に到達する。
从;゚∀从「――!」
画面が切り替わったのは直後だ。
新たに生まれたウインドウには、図面のようなデータが映し出される。
何だこれは、と言おうとした時。
从;゚∀从「こ、れは――まさか……!?」
ハインリッヒは、黒色の機体――鉄機人――の正体を知ることとなる。
それは渡辺とクルト博士が目指した、異獣に対する兵器としての一つの『理想』だった。
- 170: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:30:14.77 ID:vB90+Vhe0
- 時を同じくして、アジトである古城に『モララーが純正ルイルを入手した』との情報が入る。
ブーン達は奇しくもまったく同時刻に、異獣に対する切り札を得ることとなった。
魔力武装『ウェポン』。
超巨大EW『龍砲』。
人型魔法機動兵器『EMA』。
重力解放戦闘機『GIF』。
人造神『軍神』。
対異獣戦闘人種『英雄』。
そして、対異獣用決戦兵器『最強:ハインリッヒ』。
目指す先は、四世界の全ての力を合わせる最終決戦での勝利だ。
一人一人の力は微小かもしれない。
異獣の持つ力は強大かもしれない。
しかし、逃げることは許されないだろう。
――彼らが生き残る道こそが、異獣に勝利しなければ開かれないのだから。
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