( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 143: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:12:30.57 ID:zqCws+gV0
Case3: 社長と秘書
古城には、外見に反して様々な施設が存在する。
モララーの父が社長を務めていた『アルバード』という大企業の恩威だ。
城でありながら内部の様相は近代要塞と言える中、一つの特別処置室が在った。
人間用ではなく、精密機械用の密閉空間である。
ここに一人の人間が作業を続けていた。
向かう先は大きな長方形の台で、その上に乗せられているのも(厳密には異なるが)人間であった。
作業の音は硬質である。
カ行を基とした音の群れが、空間を彩る。
そんな薄緑に染められた部屋に、新たな人影が入って来た。
( ・∀・)「どうだね?」
言いながら姿を見せたのはモララーだ。
いつものスーツ姿で、ネクタイを緩める姿は疲労に塗れているようにも見える。
[゚д゚]「社長サンかい? おいおい……随分と疲れてるじゃねぇか。
休んだ方がいいんじゃねぇの?」
( ・∀・)「まだ大丈夫だ。 それより――」
[゚д゚]「解ったよ。 まぁ見た方が早ぇし納得出来るだろ」
- 147: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:14:12.92 ID:zqCws+gV0
- デフラグが身体を退かす。
作業台に乗せられていたのは、仰向けに身体を横えている女性だった。
かつてはモララーの護衛兼秘書として働いていた、女性型戦闘用機械人形――
( ・∀・)「……ジェイル君」
爪 - )「――――」
当然、意識も何もないので返事など無い。
何故彼女がここに在るのか、という問いに対する答えは簡単に想像がつくことだろう。
単純な話、モララー自身が持ち帰ったのだ。
世界交差が為され、空が赤く染まりつつあったあの時。
大地震かと錯覚するほどの揺れの中、彼は軍神達の制止を振り切ってジェイルを回収した。
上半身と下半身を両断され、右腕は完全に大破。
左腕と両足は間接が一つ二つ増えるという惨状ではあるが、奇跡的にも内部機構は健在だった。
その修理を、最も渡辺に近い技術と知識を持っているデフラグに頼んだというわけである。
- 150: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:15:46.26 ID:zqCws+gV0
- [゚д゚]「まだ身体の修理が終わっただけの状態だ。
これから内部の修理と調整に入るが……本当に良いのか?」
( ・∀・)「…………」
モララーはジェイルの力無い手を握り、丁寧に撫でる。
やれやれと肩をすくめたデフラグは、台の上にあったノートPCを引き寄せ
[゚д゚]「言わずもがなってか。
まぁ俺は別にどっちでも構わねぇが……もう一度だけ言っとく。
仮にジェイルが目覚めたとしても、もうアンタのことは覚えてねぇかんな。
んでもって戦闘用として蓄えられたプログラムも失ってるから、戦いなんか出来ねぇぞ」
( ・∀・)「あぁ、解っている」
[゚д゚]「それに、これは死んだ奴を生き返らせるようなもんだ。
神でもねぇと許されねぇ行為。 絶対にツケは回ってくンぞ。
お前か彼女のどちらか……いや、あるいはどちらにも、だ」
( ・∀・)「それでも構わない。
彼女がいなければ、せめて戦いが終わるまでいてくれなければ集中出来ないんだ」
[゚д゚]「……そりゃあ、心を持つ機械への侮辱かい?」
( ・∀・)「機械は機械だよ。 傍にいてくれればいい」
[゚д゚]「ハァ……矛盾言ってること気付いてねぇのか?
ま、アンタの強情は今に始まったわけじゃねぇからいいけどよ」
- 156: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:18:03.93 ID:zqCws+gV0
- 溜息一つでキーボードを叩き始める。
暗い画面に四つほどのウインドウが生まれ、それぞれが文字の羅列を下から上へと流していった。
室内に響いていた音に、更なる一音が加えられる。
それは機械の駆動を示していた。
[゚д゚]「まだ時間が掛かる。 アンタがここにいても役立たん」
暗に『出て行け』と言われたモララーは、僅かに迷いを見せて背を向け
一度だけ振り返り、そのまま部屋を出て行った。
[゚д゚]「……やれやれ、機械人形に恋をした奴なんか初めて見るぜ。
物好きって言葉は社長さんのためにあるようなもんか」
川 -川「デフラグ様」
[;゚д゚]「うぉぉ!? ビ、ビックリさせんな貞子! っていうかいつの間に!?」
川 -川「一つ御相談が」
[゚д゚]「? へぇ、お前が自分から望むなんて珍し――」
そこまで言いかけ、デフラグは気まずそうに視線を逸らす。
[゚д゚]「……そういやアイツは死んだんだったな。
今でも何か信じられねぇ自分がいてよ……悪かった」
川 -川「御気になさらず。 それよりも――」
- 161: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:20:15.79 ID:zqCws+gV0
- かしゅ、という軽い音が貞子の身体から鳴る。
右手が後ろ首へと回り、何かを引き抜いた。
川 -川「この解析を御願いしたいのです」
[゚д゚]「記憶用ディスクじゃねぇか。 何か気になるモンでもあるのか?」
川 -川「これを気になると言うのならば気になるのでしょうね。
二日前の世界政府本部襲撃時……私はマスターの最期の命令を聞くことが出来ませんでした。
そしてそれを、何としても知りたい自分がいます」
[゚д゚]「貞子、お前……」
川 -川「御願いします、デフラグ様。
私にマスターからの最期の命令を、教えて下さい」
懇願ともいえる言葉の響きに、デフラグは手を顎へ持っていく。
少しばかり貧乏揺すりしながら考え込み
[゚д゚]「……絶対、とは言えねぇ。
いくらお前の聴覚素子が優秀でも、聞いていない言葉を聞いたことにするのは不可能だ。
例えば何らかの音で掻き消されていたり、そもそも声が出ていなかったりすれば
その内容を知ることは出来ねぇからな」
川 -川「それでも良いです。
声として発せられていたか否かが解るだけでも充分です」
- 165: ◆BYUt189CYA :2007/10/29(月) 22:21:40.66 ID:zqCws+gV0
- [゚д゚]「そっか。 なら任せておけ。
今すぐってわけにもいかねぇが、作戦が始まる前には済ませておく」
川 -川「御願致します」
貞子が出ていったのを確認し、デフラグは深い溜息を吐く。
[゚д゚]「アイツも変わった――というか、主がいなくなったことによって自我か何かが目覚めたか。
これも渡辺の仕組んだプログラムだったら怖ぇよなぁ」
一人ごち、作業再開。
工具を引っ張り出しつつも、しかしその手はすぐに止まり
[゚д゚]「どうも軋んでやがるな、皆。
そろそろ限界が近ぇのかもしれねぇ……作戦が終わるまでもってくれればいいんだが」
と、やはり色々と思ってしまうデフラグであった。
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