( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 2: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:10:56.04 ID:dSvlIMCK0
- 第十一話 『兄弟喧嘩』
列車の速度が落ちる。
シナーの手が、アクセルレバーから離れたからだ。
彼のこめかみに拳を突きつけているのは
(#゚;;-゚)「ええ子や。
強者に従うんが、弱者に出来る唯一のことやからな」
( ;`ハ´)「ひぃぃ、殺さないでほしいアル!」
(#゚;;-゚)「抵抗せんのやったら殺さん。
とりあえず止めてくれれば、後は何もせんことは約束したる」
速度が揺るみ、ついには止まる。
キ、という甲高いブレーキ音を耳に入れながら、軍神は窓から見える上空を見上げた。
灰と黒の色が高速で動いているのが見える。
青緑光を後部から吐き出しながら、赤光を前部からバラ撒きながら。
- 3: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:12:20.76 ID:dSvlIMCK0
- (#゚;;-゚)「……結局、ウチには一度も言ってくれんかったなぁ」
軍神は目を細め
(#゚;;-゚)「アンタは先に行くつもりで……そしてそこで止まることを望んだ。
他人の中で生き続けることによって。
記憶という止まった時間の中に、その中で氷漬けになることによって」
眉尻を下げる。
その表情は、悲しみを押さえつけた笑み。
(#゚;;-゚)「忘れんよ、絶対に」
- 5: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:14:16.07 ID:dSvlIMCK0
- *(#‘‘)*「チッ! もう始まりやがりましたか!」
舌打ちしながら空を見上げる。
その視線の先には、戦闘機を用いた兄弟喧嘩が展開されている。
从メ゚∀从「まだ僕達は終わってませんよ!」
グラニードを構え、しかしボロボロの様相でハインリッヒが言う。
*(#‘‘)*「今回の目的はGDFの回収!
それも終わり掛けている今、テメェを相手にするメリットなんかねーんですよ!」
从メ゚∀从「負けるのが怖いんですか!?」
*(#‘‘)*「!?」
从メ゚∀从「僕に負けるのが怖いんですか!?」
*(#‘‘)*「このガキ……!
ちょっと戦えるようになったからって、世の中ナメてんじゃねぇですよ!」
「やめなよ、ヘリカルちゃん」
突如、声が響いた。
それは女性の声であり、そして二人にとって聞き覚えのある声。
从'ー'从「ここで本気喧嘩しても良いことないから」
- 6: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:15:40.68 ID:dSvlIMCK0
- *(‘‘)*「……渡辺ちゃん、いつの間に?」
从'ー'从「列車が止まったからね。
夜空の演舞会を見るには、やっぱり少しでも高い場所じゃなきゃ」
と、その目は空ではなくハインリッヒへ向けられた。
視線を受けた彼女は反射的にグラニードを構える。
从メ゚∀从「……!」
从'ー'从「大丈夫、貴女を襲ったりするつもりはないよ」
从メ゚∀从「……信じられるわけがないです」
从'ー'从「やっぱりそうなるよねぇ。
でも私は貴女が小さい頃から見ている、いわば親みたいなものなんだよ?」
从メ゚∀从「貴女は親なんかじゃない……クーさんと内藤さんが僕の親だ!」
从'ー'从「つれないね」
少しだけ眉尻を下げる。
悲しいというよりも寂しいというような表情。
- 7: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:16:51.61 ID:dSvlIMCK0
- 从'ー'从「まぁいいや。
私達と過ごすのが嫌なら、クーちゃんのトコに行った方が良いよ」
その言葉に、ハインリッヒは背後へ目を向ける。
少し遠くでクーが倒れているのが見えた。
从メ゚∀从「クーさん!!」
慌てて駆け出したハインリッヒを、少しの笑みを浮かばせて見つめる渡辺。
*(‘‘)*「残念でしたね、渡辺ちゃん」
从'ー'从「ううん、いいんだよ。
私は親を名乗る資格なんか、本当はないんだから」
夜空を見上げ、彼女は少しだけ眉尻を下げて言う。
得体の知れない感情が捉えた視界では、兄弟喧嘩の決着がつこうとしていた。
- 10: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:18:33.35 ID:dSvlIMCK0
- (`・ω・´)(おかしい……!)
戦い始めて数分。
合計五回の攻防を経て、いよいよシャキンは疑問を確証とする。
妙だ、と。
高速で展開される視界の中、下方を飛ぶのは兄が駆るGDF。
GIFよりも高性能であり、更には自分よりも技量を持つはずの男が乗る機体。
しかし
(`・ω・´)(弱い……いや、ぎこちない……?)
よくは解らないが、予想よりも手応えを感じない。
言うなれば、肩透かし。
表すなれば、手加減を受けているような感覚。
思わず通信機のスイッチを入れて怒鳴る。
(`・ω・´)「加減か、ラミュタス!
俺にはその程度の力で充分だと言いたいのか!」
- 12: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:20:03.39 ID:dSvlIMCK0
- 『……兄とは呼んでくれないのだな。
昔のお前は「兄さん」と言っていたものだが』
(`・ω・´)「御託はいい……本気を出せ!」
『既に出している』
(`・ω・´)「嘘を吐くな!」
『気づけよ愚弟。
お前が俺を超えている証拠だということに』
(;`・ω・´)「……嘘だ!!」
スロットルレバーを操作し、機首をGDFへ向ける。
突撃、加速。
先端から白い衝撃波が舞い散り、大気の壁を貫くように飛翔する。
対して、ラミュタスの対応は遅かった。
まるでわざと攻撃を受けるような軌道で飛ぶ。
- 13: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:21:41.37 ID:dSvlIMCK0
- (`・ω・´)「アンタは――アンタは!!」
――強いはずなんだ。
信じられなかった。
自分が兄を超えているなど、信じられるわけがなかった。
目標としてきたのだ。
目標とし、超えるとまで誓ったのだ。
こんな呆気ない戦いで、超えたと言える訳がない。
(`・ω・´)「本気を出せ! 死にたいのか!!」
吠えながら機銃を吐く。
無秩序に連続で飛んだそれは、ラミュタスの機体を掠めた。
『……そうだな』
激情といえるシャキンの吠えに対し、ラミュタスは冷静に言葉を返す。
『俺は、もう終わりたいんだろう』
(;`・ω・´)「――!?」
『もう疲れたんだ。
逃げ続けるのも、追い続けるのも……知り続けるのも』
- 15: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:23:21.73 ID:dSvlIMCK0
- (;`・ω・´)「何を――」
そこでシャキンは思い出す。
過去、この世界に来る前に聞いた情報。
――『風鷲』はもう飛ぶことはない。
(`・ω・´)「まさかアンタ……」
『あぁ、もう一年以上も飛んでいない』
(`・ω・´)「何故だ!?」
『惚れた女がな……地に這いつくばってまで戦っていたんだ。
そんな姿を見て悠々と空を飛べるような男じゃなかったってことだよ、俺は……!』
突如、ラミュタス機が加速した。
低空飛行で地面を吹き飛ばし、シャキンから離れるように。
追いつつ
(`・ω・´)「その女とは……軍神か!?」
『会っていたか』
- 18: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:24:49.19 ID:dSvlIMCK0
- 距離は離れるばかりだ。
しかし追う。
ここで追わねば、一生追いつけはしない。
ラミュタス機が上昇を始めたのを視認。
右ペダルを踏み込み、軌道をなぞるようにして追撃。
急激がGが身体を襲った。
(`・ω・´)「強い――ッ女だった! アンタには勿体、無い――!」
『あぁ……ッそれは自分でも解っている!
何せ力関係で言えば……ッ、俺が護られる立場だからな!』
小さな笑い声が聞こえる。
しかし、その色は薄い。
(`・ω・´)「どうした!? 死にそうな声じゃないか!」
『死にそう、じゃなくて死にたいんだよ――!』
瞬間的に増大したGが牙を剥く。
全身の血液が下半身へ集まったかのような感覚。
目の前が黒に染まり、冷たい何かがシャキンの背筋を走った。
しかし
(`・ω・´)「冗談に――してはつまらん――ッ!!」
- 20: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:26:28.62 ID:dSvlIMCK0
- 意識さえ飛びそうな状況においてシャキンは遂に耐え切った。
Gキャンセラーが発動し、ブラックアウトしていた視界が元に戻り始める。
血を失っていた上半身にそれが戻り、何処かむず痒い感覚に襲われる。
いつ経験しても慣れない感覚だ。
『はは……お前は昔から真面目だったよな!』
突如、ラミュタス機が百八十度反転。
機首をこちらに向けて機銃を吐き出した。
咄嗟にかわし
(`・ω・´)「アンタも! 飄々としていて――随分とイライラさせられた!」
『それは悪かったな!』
口調が昔に戻っているように感じられた。
今のような厳格な口調ではなく、のれんに腕を通すような柔軟性のある口調。
過去に浸り始めたことを感じながら二人の戦闘は続く。
対空対ホーミングミサイル。
数は十五。
螺旋軌道を描きながらも、それらはシャキンに向かって襲い掛かる。
(;`・ω・´)「チィッ!!」
体重を左へ。
スロットルレバーの右を突き出す。
視界が左へ向かって倒れて回転を始めた。
際どいタイミングでミサイル群が掠める。
- 22: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:27:50.84 ID:dSvlIMCK0
- 『機械壁が――見たいと思って出掛けた俺に――!
必死こいてついて来たのを、覚えてるか!?』
(`・ω・´)「――あれは死ぬかと思った!」
抜けた。
前方。
方向転換して、更に加速するGDFの姿を視認。
『それはそうだ!
Gチャンの助けが――無ければ吸収されていただろうな!』
Gチャンとは、ラミュタスとシャキンの祖父のような男だ。
元オーベウス軍兵だと豪語していたが、今は何をしているのやら。
ちなみに渾名などではなく本名である。
『Gチャンはまだ生きているのか!?』
(`・ω・´)「あの老兵が生きていなければ――今の俺はいないだろうよ!」
エリゴリズムを切り替える。
セミランダムの回避インジェーターを、フルマニュアルに変更。
機体が更に自由となり、そして更に兄を追う。
- 24: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:29:27.23 ID:dSvlIMCK0
- 『……そうか、老兵だと知ったか!』
(`・ω・´)「『解った』もしくは『感じた』が正しい!
本当のことは――知らず仕舞いだ!」
GDFの腹部が展開。
更に背撃用の空爆雷がバラ撒かれた。
『彼はオーベウス軍兵だった!
そして! 「機械天井壁」に挑んだ初めての男――それだけだ!』
(`・ω・´)(だから小型ルイルを持っていたのか!?
そしてその技術に精通しているのも……なるほどな……!)
『あれはあれで――再度のチャンスを狙っていたらしいぞ!
あの老体で! まだ諦めずにッ虎視眈々と――再び挑もうとしていたんだ!』
はは、と軽い笑いが聞こえる。
『笑えるな! だが俺も、ああいう男になりたかった!』
(`・ω・´)「まだ遅くはない!
人生、やり直そうと思えばいくらでも――」
- 27: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:30:58.19 ID:dSvlIMCK0
- 来る。
ラミュタス機が突如、右方向へ軌道を変更した。
追うように体重を右へ。
しかし向こうが速い。
すぐさま機首先をこちらに向け
『だがな……記憶というものは、どうしてもやり直しが利かないだろう?
記憶喪失になるか死なない限り、記憶というのはどうやってもリセットされない』
撃たない。
撃たずに、そのまま前方加速。
シャキンから見て左方向へ飛翔した。
(`・ω・´)「記憶……?」
『シャキン』
突如、彼の声が静かに、しかし力強くなる。
問答無用の響きに、シャキンは開きかけていた口を閉じた。
『シャキン。
お前は、俺との戦いが終わればどうするつもりだ?』
(`・ω・´)「どういうことだ?」
- 29: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:32:24.07 ID:dSvlIMCK0
- 『渡辺側へ行くのか、それとも後継者側に行くのか……そういうことだ』
(`・ω・´)「俺は……」
少し考え
(`・ω・´)「俺はエクストがいる側に行こうと思っている。
世情に疎い俺とは違うアイツについて行けば、きっと何とかなるだろうからな」
『そうか』
そして兄は更に言葉を紡ぐ。
『だが、一つだけ言っておく。
全ては同じなのだと』
(`・ω・´)「同じ……?」
- 30: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:34:03.63 ID:dSvlIMCK0
- ラミュタスは背後を飛ぶシャキンの機体へ目を向ける。
黒と青の翼を持つそれは、夜空の中にも関わらずハッキリと浮いて見えた。
既に、互いの攻撃の手は止んでいる。
右肩から来る痛みに耐えながら
(`・д・')「……いいか、同じなんだ。
渡辺側につこうが、後継者側につこうが同じなんだ」
『どういう――?』
(`・д・')「知らないだろうし、今言っても解らないだろう
だが、知らぬことを良しとするな……望めば得られる立場にいることを忘れるな」
時間が経っているために出血が激しい。
右腕は冷たくなり、感覚も薄くなっていく。
霞みつつある視界を必死に開こうとするも、しかし失血の効果は容赦を知らない。
- 32: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:35:25.21 ID:dSvlIMCK0
- 自分はおそらく、死ぬ。
伝えねばならないことがある。
しかし、全てをそのまま教えることに意味はない。
だから
(`・д・')「俺は知った」
『何を』
(`・д・')「全て、とは言わないが……知るべきところまで」
『…………』
(`・д・')「だから疲れたんだ。
知ったことによる重圧……しかし、逃げを知らぬ性格故に」
『アンタは……』
(`・д・')「俺のようにはなるなよ、シャキン。
そして俺を殺して上に行け」
機体を傾ける。
シャキン機から離れるように身を動かし、上昇していく。
- 34: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:36:56.47 ID:dSvlIMCK0
- 『……兄を殺したいなどと思う弟はいない』
(`・д・')「だがケジメというやつだな。
俺にとっても、お前にとっても。
そして最後に一つだけ伝えておこう……これを誰かに言うかはお前に任せる」
『何だ?』
(`・д・')「本当に警戒すべきは渡辺達じゃない。
その陰と……そして、剣先にいる奴らこそが滅びの担い手だ」
『……一つ聞かせてくれ。
渡辺側と後継者側が争っているらしいが、何故それを言わない?
事情次第だが、協力し合うことだって出来るんじゃないか?』
(`・д・')「お前が思っている以上に、この件は複雑だ。
渡辺が後継者を敵視する理由として、後継者の背後に厄介な勢力が見え隠れしている。
後は理解出来んだろうから言わないぞ」
『知りたければ己の目と耳で、か。
確かに『教えられた真実』に意味は無いな』
(`・д・')「わざわざお前に話した意味を考えろ……期待している」
『…………』
- 37: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:38:45.37 ID:dSvlIMCK0
- ノイズに混じって弟の呼吸音が聞こえる。
迷っているのか、悩んでいるのか。
『……ありがとう、兄さん』
(`・д・')「礼を言われるなど何年振りか」
少し笑みを浮かべ
(`・д・')「さよならだ。
いいか……俺を超えたければ全力で俺を殺せ。
そしてそれでも尚、先を見るというのなら俺の想いも持っていけ」
- 39: 短大生(大分県) :2007/04/02(月) 15:40:05.25 ID:dSvlIMCK0
- 殺せ。
兄の口から聞いた殺害命令。
シャキンは少しだけ顔を伏せる。
見える視界では、兄の駆るGDFが離れていっていた。
顔を上げる。
だが、シャキンの表情には哀しみなど映っていなかった。
(`・ω・´)「殺したくなんか、ない」
『超えたいんだろう?』
スロットルレバーを前方へ。
右ペダルを踏み込んで、機体を上昇させる。
(`・ω・´)「アンタは過去と決別すべきだ」
『だから死にたいと言っている』
(`・ω・´)「生きろよ……だからこそ生きるんだ……!」
急上昇のGに耐えつつ、更に上を目指す。
やみ世の中で、灰色の鉄翼が前方を飛ぶのが見えた。
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