( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

80: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:35:52.09 ID:7MWIIgEv0
(;´∀`)「あ、あのー」

そろそろ日が落ちるかと思われる時間帯。
モナーは、前を歩くシューに追従する形で歩いていた。
周囲は見慣れた町並みから、段々と木々が生い茂る山の中へと変わっている。

(;´∀`)「一体何処へ行くんですかモナー?」

モナーの方が年上なはずなのだが、有無を言わさないシューの迫力に気圧され敬語を使う。
言葉に対し

lw´- _-ノv「……EMAがあるから」

と、意味不明なことを言うシュー。

簡単な夕飯を食べさせた後、彼女は突如として外へ飛び出した。
この時間帯に一人で出歩かせるためにもいかないため、慌ててモナーは彼女の後を追う。
それから一時間が経過している。

延々と歩き続けた結果、とうとう街の外へ出てしまったのだ。



83: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:37:03.58 ID:7MWIIgEv0
(;´∀`)「シュー? もうここからは危険モナよ?」

山の中は当然、明かりなどない。
唯一あるのは月の光だが、それも申し訳程度に照らすのみ。
故に夜の山を歩くほど危険な行為はないのだ。

それを知識として知っているモナーは、尚も歩き続けるシューが心配でならない。

(;´∀`)「そろそろ帰ろうモナー……って、まさか君の家って山の中に……!?」

lw´- _-ノv「まさか」

奇妙な切り返しは来なかった。
今まで見せていた雰囲気は一蹴され、妙にシリアスな空気を纏わせているシュー。
疲れなど見せない歩調で、どんどん山の中を進んでいく。

既に息を切らしかけているモナーは、その様子を見て

(;´∀`)(……もしかしなくても、かなり鍛えられてる?)

山道を歩くのは意外と重労働である。
安定しない地面を足場とするため、体力的にも精神的にも非常に疲れるのだ。

そんな道をすいすい歩いていくシューがいる。
相当な体力と足腰を持っていなければ出来ない芸当だろう。



84: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:38:40.79 ID:7MWIIgEv0
モナーの視線は自然と、彼女の腰に据えられた奇妙な刀へ移る。
彼女が武術を嗜んでいるのならば納得出来るからだ。
現役で空手をやっているモナーでさえもこの状況なのだから、彼女はもっと上のレベルにいることになるが。

と、彼女がふと足を止めた。
それに倣うようにモナーも身体を止める。

lw´‐ _‐ノv「……やっぱり」

そう呟くシューの視線の先には

(;´∀`)「な、何だモナ……!?」

鬱蒼と茂っているはずの木々が薙ぎ倒されていた。
真っ二つになっているものもあれば、根元から引き抜かれているものもある。
一つだけ同じなのは、全てが同一の方角に倒れているということだ。

まるで大きな物体が空から落ちてきたかのような光景。
そして、その予想は当たることとなる。

(;´∀`)「!」

薙ぎ倒された木々を視線で追い、その終点に辿り着いたと同時に目を見開いた。

(;´∀`)「あれは……!?」

まだ墜落して間もないのだろうか。
砂煙を撒き散らしている先に、巨大な青の色が存在しているのだ。



85: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:40:13.32 ID:7MWIIgEv0
lw´‐ _‐ノv「……!」

(;´∀`)「シュー!?」

同じタイミングで見つけたのか、シューは直後に身を飛ばした。
ほとんど見えない足場を、一度も躓くことなく走っていく。
慌てて追うが、すぐに引き離されてしまった。

(;´∀`)「何がどうなってるんだモナ……!」

彼女の行動からして、この巨大な青い物体の正体を知っている節がある。
むしろアレを目的として山の中に入ったのかもしれない。

(;´∀`)「そ、それにしても速いモナ!」

既にシューの身体は闇の中へと紛れてしまっている。
彼女が行ったと思われる方向へ、とにかく走っていった。

急に視界が開ける。
木々の狭間から飛び出した先は、例の青い物体が横たわる現場だ。
薙ぎ倒された大木らが無残にも転がるこの場所は、一種の広場にも見える。

そして、彼女もそこにいた。

(;´∀`)「シュー、走ったら危ないモナ」

青い物体――よくよく近くで見ると、それは金属で出来ているのだと解った――の傍に跪くシューの姿がある。



87: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:41:36.36 ID:7MWIIgEv0
(;´∀`)「これは一体何なんだモナ……!?」

荒れる息を落ち着かせて問い掛ける。
彼女はこちらを一瞥もせず

lw´‐ _‐ノv「EMA……」

と、名称のようなモノを呟いた。

( ´∀`)(えま?)

そういえば、この山に入る時にも同じ単語を言っていた気がする。
やはり彼女はこれを目当てにしていたのだろうか。

そこまで考えた時、空気が抜ける音と共に軋むような金属音が響く。
シューとモナーの視線の先、青い巨大な物体の一部が割れるようにして開いたのだ。

これに似た光景を、モナーは見たことがあった。

(;´∀`)「エ、エイリアンかモナ!!」

地球に落ちてきたUFO。
何も知らずに近付く地球人。

映画ではここで襲われてしまい、怪事件となるニュースが翌日に流れるはずだ。



91: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:43:06.85 ID:7MWIIgEv0
恐怖に震えるモナーは、しかし内部から聞こえてきた声に驚くこととなる。

「う……」

男の声。
しかも苦しそうな声色だ。

lw´‐ _‐ノv「ミツキ」

シューが声に反応し、青い物体の内部を覗き込む。
興味本位でモナーも覗き、そしてまた驚く。

(;´∀`)「に、人間……?」

男がいた。
内部の機械に囲まれるように、そして頭部から血を流してうな垂れている。

シューは、この満身創痍の男を助けようとしているらしい。
しかし一人の少女の腕力では難しいようで

(;´∀`)「……ぼ、僕も手伝うモナ」

事情は解らないが、目の前の女の子が困っているのを見過ごせるはずもなく。
二人の力を合わせて男の身体を引っ張り上げた。



93: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:44:43.05 ID:7MWIIgEv0
ハ(リメ -゚ノリ「……シュー、か?」

男は息絶え絶えに問い掛ける。
その顔や服は多量の血液で塗れていた。

lw´- _-ノv「私だ」

自分の存在を伝えるかのように、シューは男の手を握る。

ハ(リメー゚ノリ「良かっ、た……君は無事、なんだね」

lw´- _-ノv「うん」

ハ(リメ -゚ノリ「レイン、様は……?」

lw´- _-ノv「ごめん、ここにはいない」

ハ(リメ -゚ノリ「……そう、か」

意識さえも飛びそうなのか、男は苦しそうに言葉を区切りつつ言葉を吐いていく。



94: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:46:31.85 ID:7MWIIgEv0
ハ(リメ -゚ノリ「シュー……EMAを頼むよ」

lw´- _-ノv「うん」

ハ(リメ -゚ノリ「……僕は少し疲れた」

lw´- _-ノv「うん」

ハ(リメ -゚ノリ「もしもの時は……君がミカヅキを、止めるんだよ……」

lw´- _-ノv「うん」

ハ(リメー゚ノリ「……良い、子だ」

lw´- _-ノv「……うん」

その声は果たして届いたのか。
気付けば、その男の意識は既になかった。
死んだかとも思ったのだが、胸が浅く上下していることから気絶しているだけらしい。

(;´∀`)「シュー、この人……?」

lw´- _-ノv「かつての私の恩人」

目の前で人が血塗れで気絶しているのだというのに、シューに動じた様子はない。
ただ淡々と起きた現実を見つめているようだった。



95: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:47:41.49 ID:7MWIIgEv0
と、そこでシューが腰を上げた。
そのまま青い物体に足を掛け、血塗れになった内部へと滑るように飛び込んだ。

(;´∀`)「ちょ……!?」

止める暇も無い。
まさに一瞬で姿を消したシューは、すぐさま行動を開始した。

まず響いたのは鼓動。
鈍重な衝撃が、青い物体の周囲を走った。
そして甲高い音が幾つか鳴り、続いて被さるように駆動音が響く。

シューが、その青い巨大物体を動かそうとしているのだ。

(;´∀`)「シュ、シュー!? 危ないモナ!」

慌てて叫ぶが聞こえている様子はない。
鉄の軋む音が邪魔して、思うように声が通らないのだ。

モナーの目の前で、その青い物体が立ち上がっていく。

(;´∀`)「これは……」

全容を見て、ようやく気付いた。

その機械の外観は『人』の姿をしていた。
青色の鎧を着込んだかのようにも見えるそれは、人の形をした兵器にも見受けられる。

それは、漫画やアニメで見るような『人型機動兵器』そのものだった。



96: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:49:07.49 ID:7MWIIgEv0
『動かないで』

その迫力に気圧されて動けるものでもなかったが、シューはそう警告した。
青い巨体が動き、無骨な腕がこちらに伸びる。

(;´∀`)「うわわわ!?」

大きな指が器用に動き、男とモナーを拾い上げた。
それを手の平に乗せると

『ちょっと我慢してて』

声と共に機体が動く。
次の瞬間、身体に強烈な重圧が掛かった。

(;´∀`)「……ッ!?」

それも一瞬のこと。
思わず瞑った目を開くと、周囲の景色が大きく変化していた。

見えたのは一面の夜空だった。
あったはずの木々が消え失せ、代わりに強風が吹き荒れる。
と、そこまで肌で感じ取って気付いた。

(;´∀`)「と、飛んでるモナ!?」

シューの操る青い機体が、たった一足で大跳躍をしているのだ。
轟、という耳の中で暴れる冷えた空気が、その高さと速度を表している。



98: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:50:59.41 ID:7MWIIgEv0
そして上空へと跳んだということは、当然――

( ´∀`)「――モナ?」

放物線の頂点に辿り着いた次の瞬間、モナーの身を総毛立つような浮遊感が襲った。

(;´∀`)「うぉふぁ!? ふぉぉぉぉ!?」

それは段々と加速し、最終的には変な声が出るほどの不快感へと変化する。
間抜けな叫び声を残し、青い機体は再度、森の中へと落ちていった。

(;´∀`)「ッ!?」

激音。
巨大な物質が地面へと降り立つ音は、それよりも衝撃としてモナーの身を襲った。
身体全てが揺れに揺れ、天地の方向さえも解らなくなる。

『……大丈夫?』

無表情な声で心配してくるシュー。
堪えた様子がないところを見るに、どうやら機体の中に衝撃を吸収する機構が組み込まれているらしい。
世の中の理不尽さを感じつつ

(;´∀`)b「お、お、おkだモナ」

フラフラと上半身を揺らしながら返事をした。



101: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:52:26.62 ID:7MWIIgEv0
『良かった』

先ほどと同じように青い機体の上部が割れる。
ひょっこりとシューが顔を出したが、その髪や服に血が付着してしまっていた。
気絶した男の血液が散らされていたので仕方ないとはいえ、その様相は痛々しい。

しかし本人に気にする素振りはなく

lw´- _-ノv「じゃあ、これから隠す」

( ´∀`)「え? 何を?」

lw´- _-ノv「EMA」

( ´∀`)「えま……って、これのことモナ?」

先ほどまで手の平に乗せられていた青い機体を指差す。
シューは頷き

lw´- _-ノv「あれを狙う人がいるから。
       だから、時が来るまで見つからないようにする」

( ´∀`)「時……?」

時限式の何かがあるのだろうか。
それとも、何かを待たなければならないのだろうか。
ただ彼女の態度からして、普通の時間ではないだろう、と無意識的に思えた。



103: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:53:49.35 ID:7MWIIgEv0
思いつつ、周囲を見渡す。
やはり鬱蒼と茂った木々があり、しかし先ほどと異なるのは『道』がないという点である。
つまり、この場所には人がまったく来ないということだ。

lw´- _-ノv「魔力供給カット……マジックカートリッジ、セプテージロック。
       後は、こうやって木で隠すようにして……空から見つからないように」

( ´∀`)「あ、そこは危ないから僕がするモナ」

それからしばらく隠蔽作業を続けた。

一時間か二時間か。

時計がないので解らないが、割と長い間働いたような気がする。

lw´- _-ノv「……よし」

( ´∀`)「これで良いモナ?」

青い機体は多くの緑色によって隠されていった。

完璧、とまではいかないものの、これでかなり見難くなったはずだ。
空から探そうとしても、よほど低空飛行をしなければ見つからないだろう。



104: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:55:17.39 ID:7MWIIgEv0
lw´- _-ノv「ありがとう、モナー」

全ての作業が終わり、シューは礼を言う。
ストレートな言葉にモナーは頬を掻きつつ

(;´∀`)「いやぁ、何がどうなってるのか全然解んないけど頑張ったモナ。
     あと出来れば事情を教えてほしいなぁ、とか……」

lw´- _-ノv「ごめん、今は話せない」

( ´∀`)「……解ったモナ」

正直に言えば、物凄く気になる。
しかし彼女の口は相当に堅そうだ。
そもそも無理矢理に聞いて、自分の力でどうにかなるような事情には思えない。
そこまで判断したモナーはあっさりと身を引いた。

lw´- _-ノv「じゃあ、帰ろう」

( ´∀`)「シューはシューの家に帰るモナ?」

lw´- _-ノv「ううん」

小さく首を振り

lw´- _-ノv「安全が確認出来るまでは……モナーの家を借りたいと思っている所存」



105: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:56:29.34 ID:7MWIIgEv0
(;´∀`)「え?」

lw´- _-ノv「駄目?」

(;´∀`)「い、いや、何か事情があるんなら……うん、僕は大丈夫モナ。
     でも君は平気モナ?」

lw´- _-ノv「大丈夫、私は割と強いから」

と、腰に吊った刀を見せるように揺らした。

(;´∀`)(……なんか会話が噛み合っていないような)

ほのかな違和感を得つつ、モナーは歩き始めたシューの背中を追う。
すると彼女が口元に小さな笑みを浮かべて振り向いた。

lw´- _-ノv「それに、ここから一人で帰るのは無理だと思う。
       だから私がモナーを家まで送っていってあげる……という名目」

( ´∀`)「あ、ありがt……あれ? ここから歩いて帰るモナ?」

lw´- _-ノv「そう」

( ´∀`)「…………」

そういえば、ここまで来るのにエマとかいう青い機体を用いたのだった。
その機体を置いていくとなれば、帰りは必然的に徒歩となる。



107: ◆BYUt189CYA :2007/07/21(土) 20:58:26.16 ID:7MWIIgEv0
(;´∀`)「マジかモナ……」

今、自分がいる場所さえも解らない。
跳んだ時間を考えると、もしかしたら山の深い所にいるのかもしれない。
というか、頭の何処かで『そうなのだ』と警鐘が鳴り響いていた。

lw´- _-ノv「あとミツキはモナーが背負ってね。 男の子でしょ?」

(;´∀`)「……お強いんじゃないんですモナ?」

lw´- _-ノv「私、女の子だし」

女は時に物凄くズルい。
しかしだからと言って彼女に任せるわけにもいかず、モナーは渋々男を背に負った。
それを見つつ、シューは激励の言葉を投げかける。

lw´- _-ノv「頑張ろう。
       というか、頑張るしかないと思う」

(;´∀`)「……はいですモナ」

半ば諦め、半ば覚悟の色でモナーは返事をした。



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