( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

85: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:18:37.61 ID:qL8ulUZH0
第二十九話 『終わる仇討ち (裏)』

南アメリカの熱帯雨林。
湿った雰囲気が支配し、しかし澄んだ空気が流れる場所だ。
そんな、本来は静かなはずの森の中が、騒々しい音に包まれていた。

走る音。
草木を掻き分ける音。
そして金属音や爆音。

その先端にいる人物は、少女のような様相をしていた。

从・∀・ノ!リ「しかしまぁ、しつこいのぅ」

額にいくつかの汗を浮かばせ、深い森の中を疾走する。
そのすぐ背後を二人の人間が追従していた。

(;><)「よっぽど僕らが珍しいんです! きっと捕まったら食べられちゃうんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽっぽ!」

从・∀・ノ!リ「小型化されたEWを扱う野蛮人など聞いたこともない」

はぁ、と露骨な溜息を吐き

从・∀・ノ!リ「変なこと考えておる暇があるのなら、さっさと攻撃せんか。
       あの男、きっと痛い目見らんと手を引かんぞ」

( ><)「了解なんです!」



86: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:20:47.99 ID:qL8ulUZH0
肩に引っ掛けているバッグに手を突っ込む。
取り出したのは試験管のような物体で、内部には青色の丸い玉が詰められている。
栓を外し、五粒ほどを背後へ放り投げた。

「――!」

爆発する。
いや、爆音と共に放たれたのは物理法則を捻じ曲げる力だ。
破裂した玉を中心として、周囲の地面や石、草木が砕け散った。

しかし追跡の疾走音は潰えない。
爆発前と変わらず、猛獣のような迫力で追ってくる。
少女は、走りながら背後へと問い掛けた。

从・∀・ノ!リ「何で我らを狙ってくれるんじゃー?」

( ^Д^)「お前達が異世界の人間だと知っているからな。
      我々世界政府の戦力増強のため、一緒に来てもらう……!」

木々の狭間から見える表情は、能面のような笑顔。
右手に剣を持ち、左手に鞘を構え、草木を切り裂きながら迫るプギャーがいた。



88: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:23:21.58 ID:qL8ulUZH0
(:><)「ひぃ! あの人、追いかけながら笑ってるんです!
      きっとこの追走劇が楽しくて仕方ないんです! 捕まったらバラバラにされるんです!」

从・∀・ノ!リ「……あれは本当に笑み、なのかの?」

(*‘ω‘ *)「ぽ?」

从・∀・ノ!リ「いや、何でもない。 それよりもどうするか。
       やはり言葉で御すことの出来る相手ではないぞ、あれは」

うーん、と唸るように考え

从・∀・ノ!リ「痛い目を見せるしかないのかのぅ……。
       しかしその手段は限られるし、そもそも勿体無い」

( ><)「そんなこと言ってる場合じゃないんです!
     明日は今日があるからやってくるんです!」

从・∀・ノ!リ「お前良いことを言うなぁ。
      今日を確立させねば明日など到底望めん、か……仕方あるまい」

懐に手を入れる。
取り出されたのはナイフのような金属片。

从・∀・ノ!リ「ビロード、チン。
      時間を稼いでやるから、我のEWを組み立てておけ……一撃で決めるぞ」

(;><)「は、はいなんです!」



89: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:25:29.18 ID:qL8ulUZH0
両脇の二人が速度を上げる。
少女を追い抜き、背負ったバッグを胸の前へと持ってきた。

( ><)「ちんぽっぽちゃん!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽっぽ!」

同じように胸の前に持ってきたバッグから、パーツのような金属を取り出す。

从・∀・ノ!リ「さぁて――」

その様子を途中まで眺め、少女は身体ごと背後へと振り向いた。
接近してくる笑顔の男に

从・∀・ノ!リ「少しの間、我と遊んでもらうぞ」

五指の間に挟んだ金属片を投擲。
合計六枚のそれは、三枚ずつ左右に広がるようにして飛んでいき

( ^Д^)「!」

プギャーに追い抜かれた瞬間、宙でその動きを止めた。
この世界ではありえない超常現象を、男は微かに少女から視線を逸らして確認する。

从・∀・ノ!リ「そこ!」

その動きが仇となった。
空いた手で投擲された小さな物体。
それは男の胸部に当たった瞬間に割れ爆ぜ、少量の液体で服を塗らした。



91: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:27:00.66 ID:qL8ulUZH0
( ^Д^)「これは……?」

毒の類か、と思い、そしてすぐに否定する。
先ほどの金属片の説明がつかないからだ。

そして次の瞬間、直感という悪寒が背筋を這い登った。

(;^Д^)「ッ!?」

身を飛ばす。
それも思い切り前方に、だ。
着地姿勢さえも考えずに飛び出し、湿った地面の上で一回転する。

カ、という堅い音が背後で響いた。
一瞬だけ視線を向けて見れば、先ほど投げられた金属片が地面に突き刺さっている光景。
今の音は、地面に落ちている石を砕いた音なのだろう。

从・∀・ノ!リ「チッ」

( ^Д^)「自動遊撃の武器……か?」

厄介だ、と直感的に思う。
しかし思うだけで対策はまったく思い浮かばない。



94: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:29:02.09 ID:qL8ulUZH0
心の内で舌打ちし、剣の握りを確かめる。

次の瞬間、風を切る気配を感じた。
地面に刺さった六枚の金属片が、再び男を貫くために飛翔したのだ。

( ^Д^)「ッ!」

初撃でタイミングは理解している。
後は、それに合わせて剣と鞘を振れば

从・∀・ノ!リ「お?」

少女の驚きの声。
声が出た理由を証明するように、六枚の金属片が弾かれた。
それぞれが四方八方に散り、そして木々の狭間で見えなくなる。

( ^Д^)「……まだまだだな」

男は自分に言う。
あの程度の攻撃の質を見極められず、勘と経験による迎撃だけで対処したことに苛立ったのだ。
これくらいの力では、あのモララーに地獄を突き付けることなど出来ない、と。

从#・∀・ノ!リ「我が、まだまだだと……?」

( ^Д^)「む?」

しかしその呟きは、勘違いとして受け止められてしまった。



95: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:31:04.42 ID:qL8ulUZH0
从#・∀・ノ!リ「こ、この無礼者!
        ビロード! チン! さっさと組み上げぃ!
        あの馬鹿に一泡吹かせてやるわ!」

(;><)「りょ、了解なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽぽぽっぽ!」

金属同士が接続されていく音。
段々と重みを帯びていくそれに、男は眉をひそめた。

( ^Д^)「何を――」

( ><)b「完成なんです!」

从#・∀・ノ!リ「寄越せ!」

二人掛かりで持っていたそれを、少女はいとも容易く肩に担いだ。

ブレーキ。
走り続けていた慣性を受け、足が地面を削っていく。
身体が完全に止まる前に、少女は肩に担った巨大な金属の塊を振り回した。

それは『砲』だ。

決して銃ではない。
大型バズーカを更に大きくしたような、大口径の鉄筒だった。



96: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:33:08.28 ID:qL8ulUZH0
彼女の身体が遂に止まる。
その砲口は、既に男の方を睨んでいた。

从#・∀・ノ!リ「これでも喰らえぃッ!」

(;^Д^)「ッ――!?」

全身が総毛立つ。
アレは駄目だと、受けては駄目だと本能が叫んだ。
タイミングだとか、着地位置の優位性だとかを考慮している暇は無かった。

ただ全力を用いて、その場から飛び退く。

直後。
雷のような光が直線状に走り、一瞬遅れて轟音が追う。
まるで隕石が墜落したかのような衝撃が、退避した男の身体をぶん殴った。

(;^Д^)「がぁっ!?」

不可視の拳に吹き飛ばされる。
背中から大木に激突し、沈みかけていた意識が驚いて目を覚ました。

(;メ^Д^)「うっ……ぉ?」

全身に波打つかのような痛みがあるが、骨などは折れてはいないようだ。
未だ衝撃に震える右手を見て、男は安堵の息を漏らさずにはいられなかった。



100: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:35:06.91 ID:qL8ulUZH0
(;メ^Д^)(死んだかと、思った……)

正確に言えば『死んだか』ではなく、『死ななければおかしい』だろう。
死を覚悟などではなく、死が自然なのだと納得出来るほどの悪寒だった。

そして視線を上げ、更に戦慄することとなる。

(;メ^Д^)「な、んだ、これは……!?」

穴が開いていた。
木々にではなく、岩にでもなく、地面にでもなく。

まるで背景を直接に穿ったかのような巨大穴が在った。
景色が円状に切り取られている、という言い方も出来るだろう。

もしあれに当たってしまえば、その部分が掠め取られていたに違いない。
自分が受けた衝撃は、おそらく余波のようなモノなのだろう。

从・∀・ノ!リ「ちィ、かわされた」

大きな舌打ちが聞こえる。
見れば、煙を吐く砲を持った少女がこちらを見て笑っていた。

从・∀・ノ!リ「あれを回避したか。
       ははは、なかなか筋が良い」



103: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:37:23.12 ID:qL8ulUZH0
(;メ^Д^)「……今の、は?」

从・∀・ノ!リ「魔力というエネルギーじゃが……この世界にはないらしいのぅ。
       特にこれは、特別中の特別な仕様でな。
       ま、懲りたら追跡を止めることだ」

言われなくとも、その気は失せていた。
あんな化け物じみた攻撃力を持つ者を追いたがる馬鹿はいないだろう。

諦めたような吐息をする男を、少女は神妙な目つきで見つめる。

从・∀・ノ!リ「しかしおぬし……いや、まさかな」

(メ^Д^)「何だ……? 言いたいことがあるなら言ってくれ」

从・∀・ノ!リ「そうか、ならば言おう。
       おぬし……何か為さねばならぬことを心の内に抱えておるのか?」

問われた瞬間、二つの顔が脳裏を過ぎる。
モララーと、少女の顔だ。

(メ^Д^)「……何故、そうだと?」

从・∀・ノ!リ「たまにおるんだ、おぬしみたいな『異常者』が。
      『為さねばならぬ』という怨念じみた狂気で、その者の運命さえも変えてしまう、とな」

(メ^Д^)「運命を……?」



104: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:39:15.68 ID:qL8ulUZH0
从・∀・ノ!リ「もしかしたら、おぬしは今ここで死ぬはずだったのかもしれん。
       しかし、お前が望む『為さねばならぬ』という心が、未来を塗り替えた可能性がある」

それはある意味での不死ではないか、と言いかけるが

从・∀・ノ!リ「しかしそれは諸刃の剣だと心得よ。
       為すべきことが叶った瞬間、今まで塗り替えてきた分の死が襲い掛かってくるだろう。
       それはつまり、この世の地獄を体験することに等しい」

(メ^Д^)「…………」

从・∀・ノ!リ「では。
       おぬしのような男の顛末を見れぬのは残念だが、我にもすることがあるのでな」

言葉を残し、少女は走り去っていった。
足音が段々と遠ざかり、そして聞こえなくなる。



(メ^Д^)「……俺は」

誰もいなくなった森の中で、男は小さく呟いた。

死を塗り替えられるほどの狂気。

それを抱えている自覚はある。
今この顔に張り付いている不動の笑顔も、確かにその表れの一つだ。



106: ◆BYUt189CYA :2007/07/22(日) 18:40:30.47 ID:qL8ulUZH0
(メ^Д^)「はは」

自然と声が出た。

(メ^Д^)「ははは、ははははははははは――!」

――為すべきことを叶えた瞬間、今までの分の死が襲い掛かってくる?

(メ^Д^)「だからどうした……!」

それを叶えるために自分は生きている。
モララーという男を殺す、という為すべきことがある。

むしろ感謝の念を抱いた。
あの男を殺すまで自分は死ぬことがないのだ、と。
だとすれば――

(メ^Д^)「はは……これはまた面白い事実が解った。
      魔法世界の住人の捕縛は失敗したが、それに勝る収穫があったようだ」


男は笑う。

顔で笑い、心で泣き、情で憤る。

三様の色を持つ複雑な男は、為すべきことを果たす確信を得たがために笑い続けた。

全ては、殺すべきかつての親友のために。



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