( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 53: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 17:59:27.99 ID:te3tLM6t0
- |゚ノ#^∀^)「やめて……」
lw´‐ _‐ノv「また、誰かにすがって生きていくの?」
|゚ノ#^∀^)「やめろって言ってるでしょ!?」
(#)∀`)「げふぁ!? やっぱり僕かチクショー!」
振るった拳がモナーに直撃する。
頬を穿たれた彼は、ヨロヨロとよろけて床に倒れた。
ハ(リメ -゚ノリ(自分からシューを庇っておいてよく言うね……面白い人だ)
lw´‐ _‐ノv「ミツキ、私が時間を稼いでくる」
ハ(リメ -゚ノリ「うん、頼むよ」
(#)´∀`)「ちょ、ちょっと待つモナ!
あんなデカイのを彼女が相手するって言うモナ!?
確かにシューは強いかもしれないけど、あんなのと戦うなんて無理だモナ!」
あの巨大な拳や足が、シューの身体を容易く砕くシーンしか想像出来ない。
それほどまでに、あの赤いEMAが与えてくる威圧感は強かった。
- 56: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:01:51.23 ID:te3tLM6t0
- 悲痛な言葉に、ミツキはゆっくりと首を振った。
ハ(リメ -゚ノリ「落ち着いて、モナーさん。
ここは確かに貴方の常識が適用される世界かもしれないけど、これから行われるのは――」
lw´‐ _‐ノv「私達の常識内での戦い」
止める暇もなく、シューが跳躍した。
開かれた窓から飛び出し、赤いEMAへと一直線に向かっていく。
(#);´∀`)「シュー!」
ハ(リメ -゚ノリ「モナーさん、貴方はこの家から出ないように……レモナは彼を護ってあげてくれ」
|゚ノ#^∀^)「……ふン、勝手に飛び出したら知らないフリするわよ」
ハ(リメ -゚ノリ「それでいいから、頼む」
ミツキも玄関から外へ出て行った。
未だ怪我は完治していないのだというのに、何をしに行ったのだろうか。
いや、それよりも
(#);´∀`)「シューが危ないモナ!」
|゚ノ ^∀^)「アンタ死にたいの?」
(#);´∀`)「!?」
走り出そうとしたモナーの背中に、冷たい言葉が突き刺さった。
- 58: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:03:17.15 ID:te3tLM6t0
- たった一言。
――死にたいのか。
本来は現実味のない、笑い飛ばせるはずの一言がモナーの足を止めた。
(#);´∀`)「…………」
現実なのだ。
死が、現実まで這い寄っているのだ。
モナーは、無意識にそれを恐れているのである。
小さく膝が震えるのを自覚した。
|゚ノ ^∀^)「アンタが今出て行っても邪魔になるだけよ。
だったらせめて、この窓から見える景色を一部始終、記憶に刻んでおきなさい」
頭を掴まれ、無理矢理に外を見せられる。
そこに展開していたのは――
- 60: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:04:48.78 ID:te3tLM6t0
- 月明かりが照らす住宅街。
人気がない道路の上に、一体の赤い鉄の巨人。
そして対峙するように立つのは、一振りの刀を腰に吊った少女。
『お前もここに来ていたのか』
ノイズが混じった声が聞こえた。
lw´‐ _‐ノv「ここで暴れるつもり?」
『奴が……ミツキが、ここで戦いたいと言うのであれば暴れよう。
私個人としては、もっと人気の無さそうな場所で戦いたいものだが』
lw´‐ _‐ノv「だったら、ミカヅキがそういう場所に身を移して」
『そうもいかん。
私はもう我慢が利かないのでな……こうして、貴様と喋っているのも煩わしいくらいだ』
鉄を軋ませ、赤いEMAは右腕を動かす。
握り拳の形を作り上げたそれは、シューへと向けられた。
それは最上級の威圧を発し
『ミツキを出せ』
lw´‐ _‐ノv「だが断る」
『ならば、引っ張り出すまでだ』
- 63: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:06:10.48 ID:te3tLM6t0
- 空気が変わった。
夜特有の湿ったものから、殺気の籠る乾いたものへと。
敏感に感じ取ったシューが腰を落とした次の瞬間
lw´‐ _‐ノv「――!!」
バックステップ。
追うように、巨大な右拳が打ち込まれる。
激音。
容易くアスファルトを砕いた赤き巨人は、しかし標的を潰せなかったことを手応えで理解する。
動きを止めることなく、次の動作へと移行。
lw´‐ _‐ノv「赤きEMA……青きEMAと対を為す名は『ウルグルフ』。
敵として、不足無し」
向かってくるEMAを睨み、シューが刀を抜いた。
涼しい音が夜に響く。
引き金を付属させた特殊な刀が、飢えを発するかのように月光を反射させた。
前へ。
左足で蹴込み、迫る巨人へと跳躍。
『敢えて飛び込むか!』
しかし、そのタイミングを見極めたかのような動きで拳が打ち出される。
大気の壁を破壊し、小さな彼女の身体を容易く砕くであろう鉄の塊が迫った。
- 64: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:07:10.61 ID:te3tLM6t0
- lw´‐ _‐ノv「ッ!」
息を詰め、トリガーを引き込み、一瞬だけ振動した刃を拳へと向ける。
直後、シューの身体が赤色に呑まれた。
- 66: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:08:27.14 ID:te3tLM6t0
- その光景を、モナーは自宅の窓から見ていた。
(;´∀`)「シュー!?」
どう見ても直撃である。
シューの身体がその場から消えたのを、証拠として視認した。
鉄拳の威力は、おそらく高速で走る電車の激突以上の破壊力を持つだろう。
四肢が千切れ、首が飛び、衣服は塵のように霧散するはずだ。
そのような想像が、モナーの頭を過ぎる。
生きていられるはずがない、と。
しかし
|゚ノ ^∀^)「よく見なさい」
レモナの声を合図とし、モナーは弾かれるかのように顔を上げた。
さまよう視線はある一点で停止する。
ここから少し離れた一軒家の屋根の上に、無傷のシューがいるのを確認し
(;´∀`)「な、何で……」
|゚ノ ^∀^)「言ったでしょう?」
信じられないといった表情のモナーを面白そうに見やり
|゚ノ ^∀^)「これから起こるのは、私達の常識内での戦いだって」
- 67: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:09:43.25 ID:te3tLM6t0
- 月下。
住宅街の一角を戦場とする赤いEMAは、未だ命を保ち続けるシューを見ていた。
聞こえる声は満足そうな色で
『流石だ。
伊達にレインの護衛を務めているわけではないな』
lw´‐ _‐ノv「手加減したくせに」
『ハ、貴様に加減をするほどの余裕はない。
このような人が集まっている場所での戦闘など、長い間出来るものではないからな。
私としては、さっさとミツキを引っ張り出したいのだが』
周囲は当初よりも騒がしくなっている。
見たこともない、赤い巨人が暴れているので当然だ。
その様子を、赤色の人口瞳が見渡し
『この世界は恵まれ、そして平和なのだな。
このような鉄の巨人が戦闘を始めても、逃げもせずに物珍しそうに見るだけとは』
lw´‐ _‐ノv「手を出したら駄目」
『私を誰だと知る?
オークス騎士団を統括する騎士長代理を担うからには、その刃の向け先など敵軍のみ。
民を守るが我が使命であり、その命を無為に奪うことなどしない……異世界と言えどもな』
lw´‐ _‐ノv「まだ代理を名乗る?」
- 68: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:11:16.65 ID:te3tLM6t0
- シューは無表情だ。
しかし、その声の調子は強い。
lw´‐ _‐ノv「あの人はもう死んだ。 それだけなのに」
『だが、まだ終わってはいない。
あの方を、レモナの父を――騎士長を殺したミツキを放っておくことは出来ん。
しかもあろうことか、機密兵器であるEMAを持ち出して敵国へ亡命するとは……もはや与えるべき罰は死のみ。
レモナもそれを望んでいるからこそ、私にその役を託してくれたのだ』
lw´‐ _‐ノv「退くことなど出来ない、と?」
『一度向けた刃を下げるなど、騎士の誇りが許さない。
逆を言えば刃を向けるという行為が、騎士にとってどれだけの覚悟を要するのかを――』
赤いEMAは突進の構えを作り出し
『推して知れ!』
鉄の圧壁が、シューに再度の牙を剥いた。
- 69: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:12:36.39 ID:te3tLM6t0
- 迫るは、まず圧迫感。
『退かねば死ぬ』などといった脅迫感を、無理矢理に押し付けられる。
続いて威圧感が檻として周囲を包みこみ、そして感覚を証明するかのように、鉄の身を持つ赤き巨人が雪崩れ込むのだ。
この三段にもなる恐怖を弾き飛ばせる者は少ない。
大概の戦士は、そこで全力を以って退避するだろう。
果たしてシューは
lw´‐ _‐ノv「――!」
その少ない者の内に入っていた。
足を敢えて地に張り付かせ、深く腰を落とす。
握った刀を後方へ構え、引き金を素早く絞り込んだのだ。
風が来る。
いや、『死』そのものが来る。
『死』を運ぶ赤き巨人が跳躍し、眼前にまで迫ってきた。
『逃げぬか!』
lw´‐ _‐ノv「逃げる自分に価値なんてない」
咆哮と共に落ちる鉄拳。
己克と共に振り上げる刀。
絶望的なまでの質量差を持つ二つの武器が、激突した。
- 70: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:13:56.97 ID:te3tLM6t0
- さて、ここまではこの世界の常識に当てはまる光景と言えよう。
しかしこれよりは、異世界の常識が戦場を支配する。
lw´‐ _‐ノv「……!」
本来ならば圧倒的質量差で潰れるはずのシューが、何故か立っているのだ。
白色の光が花火のように散らばり、周囲が昼間のように明るく照らされた。
それらは、そのまま威力の程を語っている。
握る刀身が細かく振動し、悲鳴のような甲高い音を立てる。
悲鳴というからにはやはり力が足りないらしく、シューは二、三回ほど更にトリガーを引く。
応じるように青白い湯気のような光が立ち上り、肉迫している拳の盾となった。
それは、想像出来ても現実にはありえない光景だった。
自分の身よりを巨大な鉄の塊を、少女が刀一本で支えているのだから。
『貴様という、その気概を含めた技術……是非にも我が騎士団に欲しかったな……!』
lw´‐ _‐ノv「私は別に特別なんかじゃない。
こんな心の奥から出る力なんて、誰でも持ってるから」
『しかし、それを自在に引き出せる者は多くあるまい……!』
lw´‐ _‐ノv「引き出せるから強いんじゃない。
引き出せるようにと願い行動するのが、結果的に強さを生み出す」
- 72: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:15:07.59 ID:te3tLM6t0
- そして、と言い、シューは腰を深く落とした。
lw´‐ _‐ノv「私はただ『護りたい』と願っただけ」
押し返す。
全身のバネを利用した伸びは、数百倍の重量を持つであろう鉄拳を弾き飛ばした。
『ッ!』
バランスを崩したEMAは踏鞴を踏み、一歩二歩と後退した。
その度にアスファルトが砕け、巨人の足跡が残されていく。
lw´‐ _‐ノv「私はね、ミカヅキ」
姿勢を戻したシューが刀を振った。
同時に柄尻からマジックカートリッジが排莢され、瓦屋根の上で跳ね回る。
刀身からは、まるで飛沫ように光が舞い散った。
その背後では大きな三日月が輝き、後光のように彼女を照らす。
lw´‐ _‐ノv「私は、ミカヅキやレモナみたいな『何かを無くす』ような動機で剣を振りたくない。
そんな思いで戦えば、いずれ怨恨の鎖が地獄へ引きずり込もうとするから」
『何かを無くさなければ、何かを得ることなど出来ないだろう!』
lw´‐ _‐ノv「ミカヅキは何を得たいの? ミツキを殺して得られるモノって何なの?」
『それは――』
- 73: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:16:33.92 ID:te3tLM6t0
- lw´‐ _‐ノv「誇り? 自信? 誰かの感情? それとも達成感?
でもね、物事には必ず表があるからこそ裏があるんだよ」
再度、刀を構える。
lw´‐ _‐ノv「ミツキを殺したら、少なくとも私が許さない。
その時は私がミカヅキになり、ミカヅキがミツキになることになる。
でも、私はそういう道を歩むのは嫌」
『……怨恨の連鎖か』
lw´‐ _‐ノv「人は、誰かのためにしか動けないから」
でも、と言い
lw´‐ _‐ノv「私は、自分のために動いてみたいから」
跳躍する。
硬い音を立てながら夜空へ飛んだシューは、身体を捻らせ一回転。
その勢いは落下速度にプラスされ、更に更にと鋭くなる。
まるで、自身を刃に見立てたかのように。
『――!』
赤いEMAが迎撃の姿勢を作る。
重い駆動音を響かせ、右腕を盾とするように、だ。
それを、高い位置から冷静に見つつ
lw´‐ _‐ノv「そのために、私は――」
- 75: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:17:40.65 ID:te3tLM6t0
- lw´‐ _‐ノv「ミカヅキの屈服を望む」
落下のインパクトと同時、刀を叩きつけるかのように振り抜いた。
交差する。
巨躯の鉄腕と、少女の白刃が、一瞬の光を撒き散らした。
続いて着地する音が響き
lw´‐ _‐ノv「だから、私はそれを為してくれるミツキやレインを護るんだ」
未だ衝撃に打ち震える刀を抑えるかのように、ゆっくりと納刀した。
『貴様……』
ミカヅキの声色には微かな震えが混じっていた。
それは怒りか感嘆か。
原因として、彼の操るEMAの右腕。
盾とした装甲表面に、抉られたかのような一文字の傷が入っている。
lw´‐ _‐ノv「私の意志は形として刻み、証明した。
あとは、ミツキに任せる」
声と同時、高音が周囲一体を包んだ。
ひ、という音を伸ばし続けるそれは、鼓膜を特に刺激する。
北東の方角から、青い何かが来ることを示すかのように。
- 76: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:19:20.33 ID:te3tLM6t0
- (;´∀`)「あれは……!」
満身創痍のミツキが操縦していたと思われる、青いEMAだ。
無人のはずのそれが、何故か低空を飛びつつこちらに向かってきている。
|゚ノ ^∀^)「決着、つくのかな……」
(;´∀`)「……レモナ?」
|゚ノ ^∀^)「…………」
望んでいるはずだろうに、何故かレモナの声色が沈んで聞こえた気がした。
窓の外へ視線を向ける。
赤いEMAとシューが対峙し、しかし両者の視線は北東へ向けられている。
待ち望んだ何かを迎えるかのような雰囲気だ。
そして、それは事実なのだろう。
音が段々と大きくなり、そして最高位に達し
(;´∀`)「!!」
大きな音が響いた。
微かに床が振動し、降り立った物体の重量を証明する。
そしてアパートの玄関から、ミツキが飛び出したのを見た。
彼は建物の陰に着陸したEMAへ近付こうとしている。
やはり、あの赤いEMAを倒すためなのだろう。
前屈姿勢気味の青い機体に足を掛け、手慣れた動作でコックピットを目指し始める。
- 77: ◆BYUt189CYA :2007/07/26(木) 18:20:36.15 ID:te3tLM6t0
- と、そこで異変が起きた。
(;´∀`)「ミツキさん……!?」
動きが止まったのだ。
いや、正確にはミツキが苦しそうに喘息しているのが見える。
やはり怪我が完治していないのが理由なのだろうか。
|゚ノ;^∀^)「ちょ、ちょっとどうしたのよ……?」
レモナが、モナーを半分押しのけるかのように身を乗り出した。
そこで気付く。
ここからではミツキの様子が見えるが、おそらく赤いEMAからは見えないはずだ、と。
幸か不幸か、そういう位置に青い機体が降りてしまっている。
敵がなかなか動かないことを知れば、あの赤いEMAはどうするだろうか?
(;´∀`)「――!」
嫌な予感が背筋を撫でた。
このままでは危ない、と脳内に警鐘が鳴り響く。
(;´∀`)「ミ、ミツキさん!」
|゚ノ;^∀^)「あ、ちょっと!!」
もはや身体が止まっていてくれなかった。
レモナの制止の声を振り切るかのように、モナーは玄関から外へ飛び出した。
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