( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです
- 107: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:06:12.97 ID:vB90+Vhe0
- 从・∀・ノ!リ「しかし奴らが絶対の自信を持っておるというのならば、どちらも同じ結果に終わると思っておろう。
『時間が掛かるか否か』という理由だけではちと足らんな。
となれば、奴らは純正ルイルと手間の他に――」
レインの言葉にモララーは、あぁ、と頷いた。
少しだけ黙り込み、皆の注目を集めてから
( ・∀・)「……おそらくは戦いたがっているのかもしれない。
我々と、食うか食われるかの関係でね」
と、重々しい口調で言い放った。
(;゚д゚ )「戦いたがってる、だと?」
(`・ω・´)「……確かにその理屈でいくなら、それくらいの馬鹿げた理由があってもおかしくはない。
そしてそれは同時に、まだチャンスは失われていないということに繋がる、か」
(#゚;;-゚)「理屈が合ってれば、ウチらが攻めるまでは律儀に待つはず。
もちろん時間の限度はあるやろうが、あの数で一気に攻められるよりはマシやね」
<_#プー゚)フ「ふざけやがって……完全に余裕かましてやがるな」
( ・∀・)「苛立ちは解るが、これは千載一遇のチャンスだよ。
時間が許す限りは戦力を強化し、たった一度の戦闘に全てを出し切る、というね」
- 111: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:08:31.89 ID:vB90+Vhe0
- (,,゚Д゚)「勝てば生き残れて、負ければ世界滅亡か……大層な賭けになりそうだな」
<_プー゚)フ「言われなくとも勝つ方に全賭けしてやらぁ!
やってやんぜ!」
( ・∀・)「士気も上がってきたところで、今後について二つほど。
まず君達は戦力強化について全力で当たってくれ。
私はこれから不滅世界の純正ルイルの回収を行ってくる。
既に極大な魔力反応を観測していてね。 一日ほどで戻ってこれるとは思う」
(#゚;;-゚)「そんならウチもついて行こか?」
( ・∀・)「いや、もし先の理屈が間違いであった場合、死ぬ者は少ない方がいい。
万が一私が戻ってこなければ……悪いが、君達は私抜きで何とかしてもらうよ」
(;´_ゝ`)「……むぅ、いればいるでウザいんだが、いなければいないで心細いな」
『お前が言うな』と全員からの突っ込みが入る。
部屋の隅、体育座りの姿勢で泣き始めた兄者は無視され、
( ・∀・)「で、純正ルイルを持ち帰った後は、すぐさま先ほどの戦力強化計画を実行に移す。
それが終わり次第、もう一度だけ最終確認の意味も含めて作戦会議を行う。
後は――」
( ^ω^)「全力を以ってぶつかるのみ、かお」
( ・∀・)「予定している期間は一週間だ。 それまでに間に合わなかった強化は諦めてもらうよ。
無論、異獣の動きに左右されるだろうから、それも心に留めておいてくれ」
- 114: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:10:17.98 ID:vB90+Vhe0
- 全員が強く頷いたのを確認し
( ・∀・)「以上で会議終了、一時解散。
私はあと一時間ほどで出発するため、何か聞きたいことがあれば早めに頼む」
こうして慌しい会議は終了した。
いくつかの事項を確認し合ったメンバーは、一層引き締めた感情を持って会議室を出ていく。
純正ルイルが無くとも出来る強化はある、と誰かが言い、それぞれが出来ることをするためだ。
モララーも、この後こそが大変だろう、と密かに心を引き締める。
|;;;|:: (へ) ,(へ)|シ「では社長。 私はまた情報を集めてまいります」
( ・∀・)「君には助けられてばかりだね。 頼んだ。
何か判明したらすぐに知らせてくれ」
嬉しそうな笑みを浮かべたポリフェノールが、機材を抱えて退室する。
会議室に残ったのはモララー一人で――
いや、
( ・∀・)「……もう誰もいないよ、出てきたまえ」
- 120: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:11:39.30 ID:vB90+Vhe0
- 言葉を皮切りに、気配が一つ増えた。
広い室内の隅、濃い影から音も無く出て来たのは
川 -川「…………」
かつて渡辺を護っていた機械人形――貞子だ。
あまり調子が良くないのか、身体の所々で軋みの音を発する。
そのまま静かにモララーの近くまで寄った。
川 -川「私は、マスターを失いました」
( ・∀・)「あぁ、聞いている」
レインの報告にあった。
渡辺は世界政府本部で発生した地震によって逃げ場を失い、そのまま帰らぬ人となった、と。
川 -川「そして貴方も大切な部下を失った」
( ・∀・)「……そうだね」
川 -川「単刀直入に言いましょう。
モララー様、私を貴方の――」
( ・∀・)「断る」
何を言わんとするのか既に理解していたようだ。
モララーは挙げた右手で拒絶すると、その鋭い視線を貞子へと向けた。
- 125: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:13:04.19 ID:vB90+Vhe0
- ( ・∀・)「私のサポートはジェイル君にしか出来ないし、私個人の感情として彼女以外の者に任せたくない。
悪いが、君の要望を許可することは出来ない」
川 -川「…………」
( ・∀・)「私はこう見えても感傷派でね。
君の申し出は確かにありがたいが、それを心が許容しないんだ」
川 -川「貴方は強いのですね」
( ・∀・)「?」
川 -川「大切なモノを失っておきながら、まだ尚立っていられる」
( ・∀・)「……あぁ、そういうことか」
軽い溜息。
視線を貞子から外し、小さな窓から見える風景へと向ける。
その目は遠くを見るように細められていた。
( ・∀・)「私はね、貞子君。 大切なモノを失ったからここまで来れたのだよ」
川 -川「…………」
( ・∀・)「二度目だ。 既にもう慣れている」
話すことはない、と背を向ける。
意図を読み取ったのか、貞子は微かに俯いてその場を離れていった。
- 128: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:14:25.09 ID:vB90+Vhe0
- 扉が静かに閉まる音。
それを確認し、モララーは口元に笑みを浮かべる。
( ・∀・)「いや、モテ過ぎるというのも考えものかな?」
返事はない。
会議室にはモララーしかいないのだから当然だ。
しかし彼は、不思議そうに周囲を見渡し
( ・∀・)「……やはり寂しいものだね」
と、確認するように小さく呟いた。
やはり、返事はない。
生まれたのは沈黙で、下手をすれば耳鳴りさえ聞こえそうだった。
久しく感じたことの無かった虚無感。
それを慈しむようにして胸の内に取り入れる。
ようやく、モララーはジェイルを失ったという現実を受け入れた。
( ・∀・)「ジェイル君……しかし君は、まだ――」
紡がれた言葉は、最後まで声になることはなかった。
- 132: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:15:57.92 ID:vB90+Vhe0
- 心地よい風が吹いていた。
陸で感じるクリアなものとは違い、微かな潮の匂いが混じった風だ。
前髪を撫でる感覚に、我慢出来ないくすぐったさを覚える。
从 -∀从「……んぅ、それはあかんですよ奥さん」
果たしてどんな夢を見ているのか。
耳元で組んだ腕に頬擦りし、幸せそうな表情で寝言を言うのはハインリッヒ。
しかし、流石に岩肌の上で熟睡するのは不可能であったのか、
从 ゚∀从「――ふにゃ?」
ぱっちり、という擬音が聞こえてきそうなほど勢い良く瞼を開く。
寝起きに強いのか、彼女はそのまま迷うことなく身体を起こした。
从 ゚∀从「……あれ? ここは?」
周囲は、見慣れぬ景色に囲まれていた。
正面や左右の光景だけを言葉にするならば、そこは格納庫のような広さを持つ鉄の箱庭と言えた。
しかし足元は地肌一面で、天井も大きな電灯がある以外は岩に覆われている。
洞窟の中に作られた中途半端な半自然の格納庫。
パッと見、そんなチグハグな印象を受ける場所だった。
- 140: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:18:03.38 ID:vB90+Vhe0
- 从;゚∀从「はて、僕は何故……ッ!?」
と、その時。
突如、脳に鋭い痛みが走る。
無理に閉じようとしていた記憶が呼び覚まされたのだ。
从;゚∀从「っつ……あ――」
思い出した。
思い出してしまった。
炎と瓦礫と震動に包まれた中、助けたかった人を助けられなかった記憶を。
从 ゚∀从「ぁ……」
再度、か細い声を出す。
それは段々と震え、嗚咽が混じり、遂には涙声となる。
从 ;∀从「ぁう……ぼ、僕が……」
助けたかった。
救い出したかった。
一緒に逃げ出して、落ち着いた頃に言葉と心交わし合いたかった。
しかし、そう心の底から思えたのは、既に取り返しのつかない状況下で
从 ;∀从「っふぇ――」
- 146: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:19:41.34 ID:vB90+Vhe0
- 何故、あの時まで言えなかったのだろう。
自分の存在意義を考えれば、渡辺の考え方こそが自分の親に相応しかったというのに。
たとえ違う世界の人間だとしても、たとえ異なる方の親と意見が対立していたとしても
ハインリッヒの親だということには変わりなかったのだというのに。
後悔の念が押し寄せる。
それは涙と嗚咽として表現された。
从 ;∀从「うぅ……ふぇぇぇぇん」
声が岩壁に反射し、この洞窟内に作られた格納庫に大きく響いた。
結局、泣き声は五分ほど続いた。
喉を酷使したせいで焼け付くような痛みに気付き、ようやくハインリッヒは声を止めることとなる。
溜まった涙を拭き取り、軽く俯くような姿勢で
从 -∀从「…………」
それは黙祷だったのか、それとも決意を固める沈黙だったのか。
果たしてハインリッヒは立ち上がる。
口をしっかりと閉じ、両頬を叩いて気合を注入した。
从 ゚∀从「……いい加減、泣くのは終わりです。
渡辺さんが目指した果てを、今度は僕がこの目で見るんだ」
- 150: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:20:59.06 ID:vB90+Vhe0
- そのためにも自分は強くならなければならない。
泣いている暇はなく、そして泣くのはこれが最後にしようと決める。
まず始めたのは周囲を改めて見直し、自分が置かれている現状の把握に務めることだ。
あの時、ハインリッヒは黒色の人型兵器に捕まった。
どちらかと言えば救助に近い形なのだろう。
渡辺が機体の正体を知っている節があったことから、あれは味方なのだと思える。
从 ゚∀从(いや、もしかしたら――)
渡辺が放った言葉を思い出す。
――あれこそが、貴女の力。
あれ、とは言うまでもなく黒色の人型兵器のことだろう。
つまりハインリッヒと黒の機体が、かなり密接な関係にあることが解る。
从 ゚∀从「あ……」
見つけた。
格納庫に見える鉄壁の一部に光が灯っているのを。
そしてそこには、黒色の機体が直立不動の姿勢で立っていた。
- 153: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:22:44.61 ID:vB90+Vhe0
- 『――――』
从;゚∀从「わわっ」
近付くと、アイカメラと思しき赤い光がこちらを見た。
搭乗者がこちらを見ているのか、もしくはどうやら意識のようなものがあるらしい。
全長は七メートル程か。
全体的なイメージとしては、たまに銀の線が入っている他は真っ黒な人型兵器である。
背部スラスターには、空気抵抗の関係からか鋭利な金属片が四本伸びていた。
両腕両足も漆黒に染められているが
肘と膝部に付属している、小さなブレードのような銀刃が印象的だった。
从;゚∀从「あ、あのー、こんにちわー?」
呼びかけるが返事は無い。
ただ目のような赤い光が、こちらを追うようにして見つめるのみ。
言葉を発することが出来ないのか、それとも
从 ゚∀从(待っている……?)
と、漠然と思えた。
確信ではないが何故か、そうなのだ、と断言出来るような不思議な直感。
――この機体は、ハインリッヒについての何かを待っているのだ。
- 159: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:24:52.49 ID:vB90+Vhe0
- 从 ゚∀从「……ともあれ何かアクションを起こさないといけないようですね」
あの機体は何も教えてくれそうにない。
不親切であるような気もしないこともないが、しかしそれは一つの事実を示唆している。
从 ゚∀从(教えないということは教える必要がないということ。
つまり、この施設の中にヒントが隠されているのですね。
そしてあのロボットは、僕がそれを見つけるのを待っている……のかも?)
半ば思い込みの勢いで結論した彼女は、更に周囲を見渡す。
扉が一つあったが、上のプレートには『食料庫』と書かれているので探索の意味は薄いだろう。
更に視線を走らせると、ある物を発見することが出来た。
从 ゚∀从「あれは――」
ゲームセンターにあるような黒色の筐体が一台。
モニターとコンソールが僅かな光を発し、生きていることをこちらに伝えてくる。
自然と足が動き、気付けばコンソールを目の前にしていた。
- 164: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:26:31.83 ID:vB90+Vhe0
- 从;゚∀从(…………)
観察してみるも、自分の理解の範疇を超えていることしか解らない。
となれば、やるべきことは限られてくるだろう。
从 ゚∀从「とりあえず適当に操作してみるべきですよね……!」
育った周囲環境の影響からか、ハインリッヒは半ば楽しそうに両手を伸ばす。
適当なキーを一つ押した瞬間、
从;゚∀从「うわわっ!?」
まるで待っていたかのように、モニター内の情報が動き始めた。
自動的に次々とウインドウを展開し、様々なグラフのような図や表を生み出していく。
画面右下にはゲージが一本。
赤い文字で『18%』と表示されていた。
その数字は徐々に加算されていき、遂には『100%』に到達する。
从;゚∀从「――!」
画面が切り替わったのは直後だ。
新たに生まれたウインドウには、図面のようなデータが映し出される。
何だこれは、と言おうとした時。
从;゚∀从「こ、れは――まさか……!?」
ハインリッヒは、黒色の機体――鉄機人――の正体を知ることとなる。
それは渡辺とクルト博士が目指した、異獣に対する兵器としての一つの『理想』だった。
- 170: ◆BYUt189CYA :2007/10/20(土) 21:30:14.77 ID:vB90+Vhe0
- 時を同じくして、アジトである古城に『モララーが純正ルイルを入手した』との情報が入る。
ブーン達は奇しくもまったく同時刻に、異獣に対する切り札を得ることとなった。
魔力武装『ウェポン』。
超巨大EW『龍砲』。
人型魔法機動兵器『EMA』。
重力解放戦闘機『GIF』。
人造神『軍神』。
対異獣戦闘人種『英雄』。
そして、対異獣用決戦兵器『最強:ハインリッヒ』。
目指す先は、四世界の全ての力を合わせる最終決戦での勝利だ。
一人一人の力は微小かもしれない。
異獣の持つ力は強大かもしれない。
しかし、逃げることは許されないだろう。
――彼らが生き残る道こそが、異獣に勝利しなければ開かれないのだから。
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