( ^ω^)ブーンと川 ゚ -゚)クーは抗い護るようです

4: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 21:57:03.57 ID:S4eItPZ50
第五十四話 『決意の言詞』


少女が落ちる。


機械仕掛けの巨人を隣に従え、躊躇なく落ちていく。
格好は、着地のことをまったく考えていないかのように真っ直ぐだった。
そしてその一組の参戦者は、遠目から解るほどの鮮やかな単一色を纏っていた。

少女は白。
巨人は黒。

天から落ちるは純白の天使か、それとも漆黒の堕天か。
どちらにせよ、人と獣の争いに介入する時点で只者ではない。
事実、落下というネガティヴな状況にいながら、見る者に微塵の絶望をも与えることはなかった。

从#゚∀从「ぁぁぁ――!」

それもそのはず。
突如として舞い降りた白き少女は、今戦闘中最高の力を携えていたのだから。


この少女の名を『ハインリッヒ』といった。



7: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 21:58:18.70 ID:S4eItPZ50
人ではない。
しかし人外と呼ぶには、あまりに人に近過ぎる存在。

ある男が発案し、ある女達の知識を用い、また別のある男が完成を目指した『最強』。
滅びかけた世界の大願――異獣を倒すための願いを具現化した『兵器』。
過去一度散ってしまった要素が再び合致し、約十年の空白を経て起動した『希望』。

それがハインリッヒだ。

機械ではなく人間という形をとることによって
無限に成長する可能性を持つ、まさに人の手に余る存在だった。

从#゚∀从「――ぁぁぁぁぁあああああっ!!」

壊れかけた結界へ一直線に落ちながら、ハインは咆哮と共に発動させる。


――対異獣用決戦兵器としての能力を。


その力を表現するのは、隣を落ちる黒色の人型兵器。
魔法世界のEMAに似て、しかし鋭角的かつ機能的に洗練されたフォルムは
人が乗ることを完全に放棄した設計の究極形だった。

そう、これは人が乗って操るタイプの兵器ではない。

ハインリッヒという、人でありながら人を超えるスペックを最大限に発揮させるのに必要なのは
その身体能力の延長といえる人型兵器ではなく、武装による攻撃力なのだ。



10: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 21:59:15.31 ID:S4eItPZ50
だから、ハインリッヒは呼ぶ。

己の力を解放するキーの名を。
傍にいる、コードネーム『鉄機人』の名を。
かつて彼女の身に与えられたものとは異なる、本当の15th−Wの名を。


从#゚∀从「『アゲンストガード』――!!」


それは、『抗い』と『護り』の二つ名を刻まれた彼女専用の武装。

持ち得る力は人知を超えている。
ひとたび動き始めれば破壊を撒き散らし、しかし担い手によって表情を変える兵器だ。

从#゚∀从「今この時、目の前に立ち塞がる何もかもを壊すために……!!」

放たれるは決意の言詞。
人知れず全てを知った少女の、懸命な宣言だ。

从#゚∀从「僕は君に、僕の存在理由を掲げて命ず! 『刃となれ』!!」



13: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:01:44.14 ID:S4eItPZ50
応じる動きがあった。
隣を降下する鉄機人――15th−W『アゲンストガード』だ。
ハインの声を聞き届けた鉄の巨人が、その身を動かす。

まず装甲がスライドした。
同時に循環するエネルギーが一時固定される。
そうすることでフレームが露出され、可変型のそれは変形していった。

一旦離れた接続が再度、音を立てて合致。

既に人型ではない。
パーツと装甲、フレームを正中線上にまとめ上げた姿は、元の身長を数メートルも伸ばしている。
形を大きく変えた鉄機人は、そのまま浮遊してハインの右腕の先に固定される。

物理法則を裏切る現象の末に完成したのは、巨大なブレードだった。
黒色を基調として、銀の色が微かに彩る全長十メートルクラスの巨剣だ。
ハインの右手先に――しかし接触はしない程度の距離を開けて――浮遊している。

从#゚∀从「重ねて命ず! 『光となれ』!!」

同時、ブレードが光を噴く。
根元から煌く光の粒子は刀身の全てを覆い
遠くからでもはっきり解るほどの存在感を生み出した。

一条の光が天から落ちる。

从#゚∀从「おぉぉぉぉ――!!」

彼女らしくない咆哮の直後、重力加速を得た大斬撃が炸裂した。



16: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:02:28.10 ID:S4eItPZ50
ブーン達は見ていた。
空から降下してきたハインリッヒが、巨大過ぎる剣を手に結界内へ落ちていくのを。

まるで流星だ。
流れる星の如く一直線に落下する。
速度と力強さは、天からの落雷に近いものがあった。

轟音一つ。

叩かれた地面が震えを起こし、震動の津波となって周囲に散る。
少し離れた位置にある北軍勢にまで地響きが届いた。

川;゚ -゚)「ハイン!?」

(;^ω^)「ど、どうなったお……?」

ハインを子のように思うクー達が慌てるのも無理はない。
しかし、それらを抑える声がある。

*(‘‘)*「大丈夫ですよ。 慌てる必要はこれっぽっちもありません」

(;^ω^)「え?」

<ヽ`∀´>「あれは、あの程度でどうこうなるような代物じゃないニダ」



22: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:06:00.73 ID:S4eItPZ50
川;゚ -゚)「お前達は……やはり、アレが何なのか知っているのだな?」

*(‘‘)*「当然。
    ハインリッヒという『本体』を作ったのはアンタ達の世界ですが
    彼女の武器という『外装』を作り上げたのは私達の世界ですよ?」

ヘリカルは自慢げに言ったその時、一際大きな音が結界の方角から響いた。

見れば、結界の中腹辺りから光の刃が頭を覗かせていた。
突入したハインリッヒが、内部から結界を突き破ったのだ。

刃が動く。
徐々に、そして勢いを増しながら。
響くのは、ガラスを無理矢理に切り裂くような高音だ。

耐えるように撓む結界だが、一瞬の抵抗の末に表面から崩れていく。
刻まれた傷跡から、みるみる内にヒビが増えていく。

「す、っげぇ! アグレッシブだ!」
「何つー無茶苦茶な……」

lw´‐ _‐ノv「震動が折れた肋骨に響く……!」

川;゚ -゚)「内側から切り裂いているのか、あの結界を……!?
     だが、そんな力がどこに――」

*(‘‘)*「――純正ルイル」

川 ゚ -゚)「何……?」



24: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:07:24.04 ID:S4eItPZ50
*(‘‘)*「世界の核とすら言える高純度魔力の結晶。
    それはどんな世界にも必ず一つ存在し、その世界の文化すら変えてしまう力を持つ」

(;^ω^)「まさか、それがあの黒いロボットに……?」

川 ゚ -゚)「待て。 理屈に合わない。
     機械世界の純正ルイルは、とうの昔に消失していたのではないのか?」

少なくとも、クーはそう認識していた。
FC本社で渡辺から詳しい話を聞いた時だ。
確か彼女は、『機械世界の純正ルイルは既に無い』と言ったはずだった。

*(‘‘)*「フェイクですよ。 『在る』と解れば利用したくなるのが生物の常。
    だから鉄機人を作る技術者達と、一部の人間だけにしか真実が伝えられていないんです。
    おそらく機械世界から来たほとんどの兵は驚きに口を開いてるはず」

lw´‐ _‐ノv「なん……だと……」

<ヽ`∀´>「全ては、今この時のため。
      ウリ達が本気で攻め込み、喉元に肉薄したその瞬間。
      確実に噛みついて食い千切るための、切り札中の切り札。
      それが、ウリ達が教わった『ハインリッヒ』ニダ」

だから、この二人はハインリッヒが行方不明となっても動じなかったのだ。
鉄機人の正体を理解し、そして後の戦いで何が起こるか知っていたから。



27: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:09:37.16 ID:S4eItPZ50
川 ゚ -゚)「だが、何故教えてくれなかった?
     お前達が教えてくれていたのなら、私達もこれほど心配することは――」

*(‘‘)*「――本気で戦えましたか?」

(;^ω^)「お?」

*(‘‘)*「戦いの途中で最強の援軍が来ると解っていて、それまで本気で戦えましたか?」

川 ゚ -゚)「それは……私達の意志を馬鹿にするつもりか?」

*(‘‘)*「そんなつもりは毛頭ありませんよ。
     ただ、知ればきっと無意識に頼ったでしょうから」

理屈は解る。
ハインリッヒが来ることと、それによって帳尻を合わせられると知っていたのなら
もしかしたら、今のような状況まで走り切ることは出来なかったかもしれない。

<ヽ`∀´>「騙すことになったのは悪いと思うニダ。
      しかし、その結果が今ニダ」

川 ゚ -゚)「結果オーライというわけか……ふン、まぁいい。 酷く気に入らんが」

理屈と結果が繋がっているだけに、
クーは納得のいかない表情を見せながらも、それ以上噛みつくことはなかった。
それよりもハインの方が気になるのか、戦場の中央へ視線を戻す。



29: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:11:28.77 ID:S4eItPZ50
「「――!!」」

同時、結界が粉砕した。
突入したハインがブレードを走らせ、内部から蹂躙したのだ。

大きな音が連鎖した。
破片が大きく弾け、赤い雪のように周囲へ散っていく。
散々苦労した結界が破壊されていく光景に、おぉ、と兵達が声を漏らした。

完全に砕け散った赤色の中、二つの影が飛び出す。

大きな方は、人型に戻った15th−W『アゲンストガード』。
小さな方は、その肩に乗るような姿勢のハインリッヒだ。

(;^ω^)「す、すごいお……! 圧倒的だお!」

*(‘‘)*「そりゃあ切り札ですからね。
     ……まぁ、まさか単独で結界をぶっ壊す程だとは思いませんでしたが。
     いくら『神の裁き』で半壊していたとはいえ、予想以上です」

呆れるように放たれた言葉を受けながら、クー達の眼前にハインが降り立つ。

砂煙を舞い上げながら
巨人と共に着地する様子は、さながら御伽話のような光景だった。



30: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:13:15.11 ID:S4eItPZ50
从 ゚∀从「…………」

川 ゚ -゚)「ハイン……」

生まれたのは微かな沈黙。
ハインは目を軽く伏せており、対面するクーとブーンは咄嗟に言葉を見失う。
これまで必死に戦いから守ろうとしていただけあって、彼女の突然の変化に戸惑ったのだ。

特にクーにとってのハインはか弱い存在だっただけに尚更で
突然に大きくなった我が子に複雑な感情を抱くのもまた、当然だった。
更に周囲の緊張感もあってか、沈黙は長くぎこちなく続くと思われたが、

从 ゚∀从「……御久しぶりです、内藤さん、クーさん。 そして皆さんも」

という、ハインの凛とした声に途切れることとなる。

( ^ω^)「おっおっ、無事で良かったお」

第一に応えたのはブーンだ。
ハインの変わり様と鉄機人――いや、『アゲンストガード』に気圧されていたものの
彼女の本質に変わりはないと判断するや否や、普段の笑みを浮かべて迎えた。

それを嬉しそうな明るい表情で受けたハインは、しかし目を伏せ

从 -∀从「あと、ごめんなさい」

深く頭を下げた。



34: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:14:42.09 ID:S4eItPZ50
川 ゚ -゚)「む……?」

从 -∀从「勝手にいなくなってごめんなさい。 心配をかけてごめんなさい。
      そして――」

一息。
下げていた頭を上げれば、そこには確かな意思が宿った瞳がある。
それは反省や謝罪というよりも宣言の色に等しい。

从 ゚∀从「――そして、僕のことを大切に思っている気持ちを知っていながら、
      これから戦うことを決意して……ごめんなさい」

川 ゚ -゚)「ハイン、それは――」

从 ゚∀从「僕は普通の人間として生きていきたい。
      けれどそれは、与えられた使命を果たしてからじゃないと駄目だと思うんです」

何かを願うのであれば、相応の行動で示すのが人間だ。
与えられた義務を為さずして権利を求めるなど愚者がすること。

ハインリッヒの使命は『異獣の滅び』。
生まれた時から――いや、それ以前から定められていた運命だ。
始めこそは嫌っていたその存在理由を、しかし今のハインは必死に受け入れようとしていた。

从 ゚∀从「だから僕は果たします。 そして全てが終わってから望みます。
      兵器としての過去を捨てて、人間としての未来を手に入れるために」



36: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:17:13.98 ID:S4eItPZ50
拳を握っての言葉は強い。
周囲にいる誰もが口を挿まずハインの言葉に耳を傾けていた。
この地獄のような戦場に遅れて参じた、最後の仲間の言葉に。

川 ゚ -゚)「…………」

( ^ω^)「…………」

「「…………」」

誰もが口を閉ざした。
こんな年端もいかない少女の言葉に、一体何と応えれば良いのか。
ただ単に賛成すれば良いのか、逆に否定すれば良いのか。
ハインが必死になって示す覚悟と決意に、安易な言葉を投げかけることは出来ない。

今までの彼女を見てきた者なら尚更だ。
一番ハインが戻ってくるのを望んでいたクーでさえ、言葉にならない言葉に悪戦苦闘していた。
しかし、

( ^ω^)「……把握したお」

从 ゚∀从「内藤さん……」

沈黙を裂いたのはブーンだった。
彼は満足そうに、そして腕を組んでうんうんと頷く。



39: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:19:28.14 ID:S4eItPZ50
( ^ω^)「ハインが自分で決めたことなら良いお。
     君には願いを求める権利があって、それを支えるのが僕の役目だお。
     だから君が決めたことなら何であろうと、僕は応援するお」

理由など、どうでもいい。
正しいか、間違っているかなど、更にどうでもいい。
ハインの正体が何であろうかなど、かなりどうでもいい。

ただ彼女が望むのであれば、それを応援するのが親というもの。
それが、ブーンの応じた答えだった。

川 ゚ -゚)(内藤……君は……)

賛成ではなく否定でもなく、応援。
ブーンはハインを、兵器や戦力、生い立ちなどという観点で見ていなかった。
ただ、『自分の知るハイン』という枠組みの中で見てきた彼女に対しての、本心からの答えだった。

この何でもない言葉に、どれだけ救われたか。
まったく予想外で、しかし無意識に期待していた答え。
振り返ってからこそ理解出来る言葉に、ハインは嬉しそうな笑みを浮かべた。

从 ゚∀从「内藤さ――」

しかし何かを言う前に、新たな言葉と気配が来る。

「――何にせよ、異獣を何とかせねば未来はない。 だろう?」



41: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:21:35.17 ID:S4eItPZ50
(,,゚Д゚)「しぃと一緒に未来に生きるためだ。 俺も出来る限り手を貸そう」

从;゚∀从「っ!?」

(*゚ー゚)「私もギコ君と一緒に……未来に生きるために」

|゚ノ ^∀^)「生きるって誓っちゃったもんね。
      最後までやり通さなきゃ、彼らに笑われちゃうわ」

こちらを見る兵を掻き分けながらやって来たのはギコとしぃ、レモナだ。
更に少し遅れて、

( ゚∀゚)「おい、ハインがいンのか!?」

从;゚∀从「え? あ、はい!?」

(#゚∀゚)「テメェ今までどこ行ってた!? 遅刻なんてしてんじゃねーよ!
     解ったらさっさと異獣ぶっ殺しに行くぞ!」

何やらハイテンションな様子のジョルジュに気圧されるハイン。
その半泣きの目は『これは一体どういうことですか?』と問うていた。
答えは、真逆の方向から来る。

('、`*川「簡単よ。 これから大一番の獣狩りってのにバラけてちゃ駄目でしょ?
     だから『神の裁き』が発動した時点で、私達は北側に移動を開始してたのよ」

( ´_ゝ`)「そういうこと。
     もしラスボスが現れた場合、真っ先に狙われるのは本陣辺りだろうしな。
     あそこには奴らが欲しがる大きな餌がある」



45: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:23:26.14 ID:S4eItPZ50
川 ゚ -゚)「どうやら間に合ったようだな」

(´<_` )「俺達先発隊は、な。
     まだ後続が移動中だが……まぁ、何とかなるだろう」

从;゚∀从「あ、あの……」

('、`*川「久しぶり、ハイン。 元気してた?」

軽く手を振ってみせたペニサスは、
ハインの背後に膝をつく15th−W『アゲンストガード』を見上げた。

('、`*川「これが貴女の本当の力なのね。
     与えられたモノじゃなく、貴女自身が望んだ……共に戦えるのを光栄に思うわ」

(*´_ゝ`)「ハインちゃん、結界をぶっ壊すの見てたぞ! 頼もしいったらありゃしない!」

(´<_`;)「作業手伝わずに何してたのかと思えば……」

呆れるように肩を落とした弟者に、皆が軽い笑みを浮かべた。

と、その時だ。

後方の空から高い音が響き、近付いてくる。
何事かと見上げてみれば、二機の戦闘機がこちらに向かってきていた。



49: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:25:35.72 ID:S4eItPZ50
そのまま着地する黒と灰色の戦闘機。
片方の風防が開けば、見知った顔が頭を出し、

<_プー゚)フ「よぉよぉ、時間無制限で狩り放題の獣狩り会場はここで良いのかい?」

と、阿呆が阿呆なことを言った。
すると同じように、隣の機体の風防が開き、

(`-ω-´)「すまない。 度重なる戦闘でエクストの頭がイカれてしまったらしい。
      特に空気を読む機能を司る部分が……もう、二度と……」

【最初から在ったのかすら疑わしいですが、プログラムである私には判断しかねます】

などと、フォローになっていないフォローが入った。

川 ゚ -゚)「無事だったn――いや、これは聞く必要はないか」

<_;プー゚)フ「ひっでぇ。 これでも三回くらい死に掛けたのに」

(`・ω・´)「大丈夫だ。 馬鹿は死なんことが今日判明したからな」

<_プー゚)フ「俺は寛大で大人だからスルーするぜ?
        にしても、アレが隠し玉か……でけぇな」

おー、とエクストは『アゲンストガード』を見る。
開戦当初に比べてだいぶ高く昇った太陽が、その黒い装甲を鈍く照らしていた。
人によって作られていながら、それは人の手に余るような空気を纏っているようにも思える。



54: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:27:47.61 ID:S4eItPZ50
<_プー゚)フ「EMAと大差ねぇように思えるが、あの結界を壊したのはそれなんだろ?
        いいねぇ……我らが姫君は巨人を従える戦女神ってか」

(`・ω・´)「随分と乱暴な姫だが、
      後ろで縮こまっているよりは俺達に相応しいかもな」

从;゚∀从「エクストさん、シャキンさん! お、御久し振りです……!」

<_プー゚)フ「それでいてこの可愛らしさ。 マジ嫁にしてぇ」

(`・ω・´)「お前が言うと問答無用で犯罪だ。 止めておけ。
      そして、よく戻って来てくれたな――『最強』」

その名で呼ばれ、ハインの表情が少し曇った。
だが、シャキンは敢えて言葉を続ける。

(`・ω・´)「ここへ舞い戻ったということは、自分の力を認めたということだろう?
      だったら胸を張ることだ。 そこに至るまで失ってきたモノに対してもな」

从 ゚∀从「あ……」

そして更に、彼らの背後から新たな声と気配が来る。

( ゚д゚ )「俺達が最後のようだな。 遅れてすまない」

( ^ω^)「ミルナさん! 無事でしたかお!」



60: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:29:32.83 ID:S4eItPZ50
( -д- )「あぁ、何とか……だがミラーは守り切れなかった。 すまん」

ノハ#゚  ゚)「謝ってばかりじゃ駄目だよ、ミルナ。
     それに懸念していた結界は完全に破壊されたんだから――彼女の活躍で、ね」

ミルナの横に肩を並べたヒートは、ハインを見る。

ノハ#゚  ゚)「初めましてハインリッヒ。 私はヒート。
      そして、私達を助けてくれてありがとう」

从;゚∀从「ど、どういたしまして!」

ノハ#゚  ゚)「うん。 じゃあ次は私が貴女に力を貸す番だから、覚悟しておいて」

从;゚∀从「は、はい……! よろしく御願いします!」

勢い良く頭を下げたハインを見て、ヒートは軽く苦笑。
同時に、初対面でありながら上手くやっていける、と確信した。

誰もが『そういう』空気を纏っているのだ。
途中から参戦したヒートは、特にそれを感じ取っていた。

組織や所属世界ではなく、もっと根源的な絆で結ばれているような、そんな雰囲気。

だから、無責任に思う。


――きっと大丈夫だ、と。



66: ◆BYUt189CYA :2008/05/20(火) 22:31:45.17 ID:S4eItPZ50
この流れをきっかけとして、更に声が来た。

連鎖するように重なる声援は名前さえ知らない兵達にも伝わっていく。
ざわめきが高まり、応援となり、そして吼声へと変化していった。
先ほどまでの疲労や絶望が、ここにきて一気に払拭されることとなる。

*(‘‘)*「まさに勝利の女神って感じですかね。
    こりゃ期待以上の働きを見せてくれそうです」

<ヽ`∀´>「敵を駆逐するだけでなく、味方の士気励起まで。
      これが先人達の望んだジョーカー……兵器に感情と命を与えた意味、確かに見たニダ」

ようやく叶った祈願の具現に、ニダーは軽く目を細める。
機械の世界が望み、一人の博士が力を貸し、一人の助手が紡ぎ、一人の科学者が編み上げた希望。
お、という雄叫びに似た声の中、希望であるハインは申し訳なさそうに四方八方へ頭を下げていた。

从;゚∀从「ありがとうございますっ!
      ど、どうも!! 応援ありがとうございます! 申し訳ありません!!」



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