(`・ω・´)シャキンは『空』を目指すようです
- 107:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:39:55.53 ID:krtyDMp00
- 詳細を聞かされ、シャキンの表情が青ざめた。
(;`・ω・´)「……正気か?」
(´レヽ`)「元々は理論上で可能とされておったからなぁ。
まぁ、ワシからのプレゼントと思っておけ」
(;`・ω・´)「理論上って……」
前々から感じていた疑問の欠片をぶつける。
Gチャンは快活に笑い
(´レヽ`)「ま、気にするな。
元はお前と同じ目的を持っていた馬鹿の一人でなぁ」
(`・ω・´)「目的……」
言い掛けた言葉を打ち消すようにGチャンが叫ぶ。
(´レヽ`)「さぁ、行け!
お前が背には、お前が思うよりも多くの願いが載っておるぞ!」
- 108:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:41:00.63 ID:krtyDMp00
- まったく意識せずに右ペダルを押し込んだ。
呼応するように機体が吠え、視界が上がり始める。
引力制御による垂直上昇だ。
(`・ω・´)「一つだけ聞いていいか!?」
(´レヽ`)「何じゃ!?」
轟音と轟音の中、シャキンは問いかけた。
(`・ω・´)「アンタ一体、何者だ!?」
(´レヽ`)「――ただの老いぼれじゃよ!」
キィン、という甲高い音が響き、一気に景色が背後へと流れたのは直後だった。
- 109:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:42:11.70 ID:krtyDMp00
- <_;プー゚)フ「くはぁぁ……こ、の――雑魚がぁぁ!」
体重を前へ。
スロットルレバーを限界まで突き出して加速。
Gキャンセラーでさえ処理し切れないGを感じつつ、そのまま急上昇。
反転する視界で見えたのは、掻き乱されて一箇所に固まった複数の敵機。
叫ぶ。
<_;プー゚)フ「獲っ――たぁぁぁ!!」
機体腹部が開く。
展開された内部にマイクロミサイルが積まれている。
それは雨霰のように落下し
「――!」
急激な加速を持って標的破壊に掛かる。
白い尾が幾重にも重なり、しかし規則的に並びながら宙を走り
爆発。
連続で起きたそれは、周囲の空間ごと食い荒らした。
- 110:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:43:34.09 ID:krtyDMp00
- <_プー゚)フ「よし、残りは――」
ゾクリ、と何かが背中を撫でた。
それは俗に言う殺気であり、悪寒であり、そして死神の視線。
感じるや否や機体を強引に傾ける。
衝撃。
震動がエクストの身体を震わせる。
<_;プー゚)フ「ちっ……!」
損傷箇所を確認。
まだ飛べる。
まだ戦える。
どす黒い煙の尾を引きながらも、エクストは抵抗を選んだ。
しかし
『その程度か!』
通信機から、強制的に声が送られてくる。
- 112:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:44:44.36 ID:krtyDMp00
- <_#プー゚)フ「うるせぇんだよ! 黙ってやられろ!」
『ラミュタスが悲しむぞ! 後継者がその程度の実力なのかとな!』
知っている。
奴はラミュタスを知っている。
事実が胸に刺さり、吐き気がこみ上げる。
それは憎しみであり、恐怖であり、そして歓喜の表れであった。
<_;プー゚)フ「――言ってやるさ!」
もはや敵機はこちらを捉えている。
逃げ道は無い。
周囲にも部下と思われる数機が飛び回り、退路を削っていく。
絶望的とも思える状態にて、エクストは力の限り叫んだ。
<_#プー゚)フ「俺は、俺は情けねぇ後継者だがなぁ!!」
『――!?』
<_#プー゚)フ「ラミュタス隊長を超えるって馬鹿が、こっちにはいるんだよ!!」
爆音。
突如として閃光が視界を塞いた。
- 113:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:46:11.36 ID:krtyDMp00
- ――あぁ、終わった。
エクストは敗北――いや、死を悟る。
力が抜け、頭が空となり
そして、声が聞こえた。
『――まだだ』
<_;プー゚)フ「……え?」
やられてはいない。
生きている。
両手はスロットルレバーを握り、足はペダルへ。
身体はしっかりとシートに固定されている。
では、誰がやられた。
確認しようとコンソールに視線を向けた時、風防の先を高速で何かが通過していった。
天を目指す鳥の如く。
それは『天飛鳥』と呼ばれる希少種のような神々しさがあった。
<_;プー゚)フ「……戻ってきやがったか馬鹿野郎!」
視線の先。
そこには、復活したGIF『レイドール』の姿。
- 115:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:47:25.68 ID:krtyDMp00
- 『遅くなった』
<_;プー゚)フ「遅ぇよ! 死ぬかと思ったじゃねぇか!
親友のピンチの時くらいは颯爽と現われやがれ!」
『……いつ、俺達はそのような仲になった?』
<_プー゚)フ「馬鹿野郎が……同じ目標を目指してたんじゃねぇのかよ?」
『……言ったろう、俺はその更に上を目指すと』
<_プー゚)フ「同じようなモンじゃね? 上を目指すという点においては」
『…………』
ノイズの混じった沈黙。
そして
『そうだな』
- 116:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:48:34.87 ID:krtyDMp00
- シャキンは飛んでいた。
高速で、風を切り裂きながら。
視線の先には、先ほど撃墜した敵機の爆炎。
その数は三。
『馬鹿な――』
敵側のリーダーの声。
明らかに焦りが混じっていた。
『たった一瞬でに三機だと……?』
(`・ω・´)「悪かったか?」
『貴様は何者だ』
(`・ω・´)「……シャキン」
『面白い……面白くなってきたぞ』
(`・ω・´)「正論だな。 戦いは楽しんでからこそ真価が見える」
『貴様、何故その言葉を――』
(`・ω・´)「兄譲りだ」
- 117:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:49:52.11 ID:krtyDMp00
- その言葉を発した途端、リーダー機の動きに異変が起きる。
揺れ始めたのだ。
ガクガクと、機体が上下左右に揺れているのだ。
『何だぁ? ぶっ壊れたか?』
エクストの声が聞こえ、更に
『は、はははは! はははははははは!』
笑い声。
篭っていることから、どうやら口部に何かを被せているらしい。
その笑いから起きる身体痙攣を、機体は忠実に表現した。
『お前がラミュタスの弟か! 』
(`・ω・´)「そう言うお前は?」
『ラミュタスを崇拝している、ただの馬鹿さ!』
(;`・ω・´)「あの兄は……どこまで人の人生を狂わせれば気が済むんだ……」
小さな呟きは聞こえなかったらしい。
というよりも、相手は歓喜でそれどころではないのだろう。
- 120:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:51:00.55 ID:krtyDMp00
- 『その動き! 技術! 速度! 全て見覚えがあるぞ!』
(`・ω・´)「だからどうした」
『勝つんだよ、私がな!』
(`・ω・´)「残念だが……お前は負けるよ」
ペダルを踏み込む。
機体が加速し、旋回軌道から外れた。
戦闘開始だ。
スロットルレバーを微妙に操作しながら体重を僅かに傾ける。
機首が微調整され、その先端が敵機へと向けられた。
3400を表示していたエミリングゲージを、3000までに引き下げる。
レバーを軽く引きつつ、ペダルを踏み込めば
『来るか!』
先ほどよりも少しだけの加速。
メインブースターの光が大きくなるが故に、敵は攻撃挙動の始まりに見えるだろう。
- 121:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:52:14.00 ID:krtyDMp00
- ギュン、という音が聞こえてきそうな錯覚。
共に敵機の機首が上がり、そのままロケットのように上空へ飛翔。
追う。
しかし、追いつけない。
『先ほどのダメージが効いているようだな!』
(`・ω・´)「お陰様でな」
『では死ね!』
上空。
真上から雨のようにミサイルが降ってくる。
放射線状に広がったかと思えば、すぐさまGIF『レイドール』という目標を見つけ
その存在を無にするために直進してくる。
(`・ω・´)(誘導性の高いタイプ……まいったな)
『ジャスク』のような対ミサイル装備は無い。
レイドールは、基本的に速度で翻弄する戦術に向いている。
だからこそ速度を落としていたのだが
(`・ω・´)(仕切り直しか)
- 123:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:53:27.52 ID:krtyDMp00
- 設定を戻すためにメインコンソールへと手が伸び掛けた時。
『諦めるのは早いんじゃねぇかぁ!?』
自機の真上――つまり、シャキンとミサイル群にエクスト機が割り込む。
そのまま天を向き
『とっつげきぃぃぃ!!』
全開で加速しながらミサイル群へと突っ込んでいった。
(;`・ω・´)「馬鹿か!?」
『馬鹿さ!』
だがなぁ、と続け
『お前の方がもっと馬鹿だろうが!!』
直後、連続した爆発音が響く。
天から降るミサイルを、エクストが片っ端から撃ち落としているのだ。
機首を上下左右に振り回して小威力の弾丸をバラ撒く。
- 124:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:54:47.22 ID:krtyDMp00
- (`・ω・´)「――すまない!」
礼を言い、ミサイル軌道から逃れるように加速。
そのまま半円を描くように上昇し、視界に収めたのは
『ここがお前の墓場だ!』
(`・ω・´)「その台詞、そのまま返す!」
右手がレバーから外れ、正面コンソールを叩く。
メインウインドウに現われた文字は『Force Attack』。
直後、機首に変化があった。
厳密に言えば機首の目の前。
そこに薄紫の透明な膜のような、カーテンのような何かが張られる。
『何だそれは!?』
(`・ω・´)「……老兵の古ぼけた魂だ」
『シールドバリアか!? だが、その程度の膜で砲弾を抜けられると思うな!』
- 126:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:56:01.89 ID:krtyDMp00
- 敵機の両翼が開く。
内部から、砲撃用の口が迫り出した。
瞬間的に白い煙が散り、音速超過で一回り大きな弾が来る。
(`・ω・´)「ッ!!」
体重を思い切り左へ。
機体がその場でロールし、砲弾が右翼を掠めていった。
更に前へ。
回避
更に前へ。
回避
更に前へ。
回避
更に――
(`・ω・´)「前へ!」
エミリングゲージ設定を『6000』にまで引き上げ
(`・ω・´)「言おうか」
『何をだ? 命乞いか?』
- 127:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:57:24.48 ID:krtyDMp00
- 敵も馬鹿ではない。
流石にこの距離まで近付かれれば、警戒の念も増すだろう。
直進してくるシャキン機に対して、その軌道をズラし始めた。
その姿を目に焼き付けながら
(`・ω・´)「――戦闘機から『速度』をとったら、ただの的だと!!」
咆哮と共にスロットルレバーを全力で前に出す。
それは爆発的な加速だった。
Gキャンセラーの処理がまったく追いつかず、身体に異常な重圧が掛かる。
それでも、シャキンはレバーを前へ突き出し続けた。
右足の感覚が無くなれど精一杯踏み込んだ。
思い切り歯を噛み締めた結果、一筋の血が口端から流れ出た。
『なっ――』
声さえ間に合わない。
(`・ω・´)「おぉぉぉぉ!!」
劇的な加速力で直進したシャキン機は、そのまま敵機を貫いた。
まずコックピットが砕け散り、そのまま機体が真っ二つに折れる。
爆炎が噴き出したのは直後だ。
熱を、衝撃を、震動を纏いながらGIF『レイドール』は尚も直進した。
何処へ行くでもなく。
しかし、確実に何処かを目指しながら。
- 129:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:58:36.90 ID:krtyDMp00
- 『……で、どうすんだよ?』
エクストの声が聞こえてきたのは、それから数分後だった。
『もう東領地には帰れねぇしなぁ……。
任務失敗したし、何か東西戦争の引き金引いたっぽいし』
(`・ω・´)「やるじゃないか」
『お前ひどくね?』
戦闘を終えた二人は、そのまま逃げるように『亀裂』へと向かっていた。
あのまま残っていても、東領地と西領地の板挟みになるのが目に見えていたからだ。
ならば
『行くかぁ、もう戻れそうにねぇし』
(`・ω・´)「あぁ、そうだな」
『……連れ添う相棒が最悪で悪かったな』
(`・ω・´)「自虐か」
『はン』
- 130:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 15:59:48.25 ID:krtyDMp00
- 拗ねたような声。
しかし、シャキンは笑みを浮かべ
(`・ω・´)「案外、悪くない気がするが」
『あ?』
(`・ω・´)「別に何も」
二機は地上スレスレを直進する。
『亀裂』があるポイントが近付き、そろそろ上昇の準備に入るという時。
溜息と共にエクストが言う。
『さぁて……外の世界はどうなんでしょうねぇ、シャキンさん?』
(`・ω・´)「賭けるか?」
『よし、『この世の楽園ともいえる世界』だ』
(`・ω・´)「じゃあ、俺は『この世の地獄ともいえる世界』にする」
『勝ったな』
(`・ω・´)「俺がか」
『……まぁ、結果は見てのお楽しみってことで』
言葉を合図としたかのように、機首を真上へと向ける。
その先には『亀裂』。
- 132:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 16:01:18.54 ID:krtyDMp00
- スロットルレバーを全開まで突き出し、左ペダルを限界まで踏みつける。
加速。
加速。
加速。
見る見るうちに亀裂が近付き――
「――――!!?」
大きな衝撃が二人を襲った。
機械触手が機体を引き裂こうとうねる。
ガクガクと揺れに揺れ、あまりの恐怖にシャキンは硬く目を瞑った。
いつの間にか、音が聞こえなくなっていることにも気付かずに。
- 134:VIPからきますた(大分県) :2007/03/23(金) 16:02:31.02 ID:krtyDMp00
- どれほどの時間が経っただろうか。
耳元で誰かの叫ぶ声が聞こえる。
『――ン!』
それは相棒の声。
『――おい、シャキン!』
(`-ω・´)「……どう、なった?」
『自分の目で見ろよ……こりゃとんでもねぇぞ……!』
霞む視界が徐々にハッキリとしてくる。
頭を軽く振り、目を擦って、完全な状態で周囲の風景に目を移す。
(;`・ω・´)「え……?」
――そこにはある種、予想し得ない光景が広がっていた。
―終―
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