(´<_` )おかしな話たちのようです

2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 21:58:02.49 ID:ZarKiK1m0

──01.─────────────────


( ^ω^)「ポテチ開けるお」

('A`)「ん? ああ、構わんぜ」

(´・ω・`)「……ポテチって、1袋に何枚ぐらい入ってるんだろうね」

また始まった。
このしょんぼり面、ショボンはいつもよくわからん事に妙に興味を示す。
そんなのどうでもいいだろと、俺のみならず、普通の人間なら大抵一蹴する様な事にこだわり始める。

何と言うか、神経質、言い過ぎれば偏屈だ。
偏屈なのは俺も同じだが、こいつはこいつで俺とは違う方向に捻じ曲がっている。

普段は温厚で善良なんだけどな、俺と違って。

( ^ω^)「そんなんわからんお。いいから食べるお」

('A`)「ああ、食え食え。だが、1人で全部食うなよ? 誰が買って来たかわかってるよな?」

対照的にこっちのニヤケ面、ブーンは素直で単純な男だ。
こちらを言い過ぎればバカだが、こいつはまあ、裏表なく善良なバカだ。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 21:59:35.44 ID:ZarKiK1m0

(´・ω・`)「僕だけどね、買って来たの」

( ^ω^)「コンソメうめぇwww」

('A`)「聞いちゃいねぇ……」

(´・ω・`)「で、さっきの話だけど」

('A`)「さあねえ……数えてみればわかるんじゃね?」

俺は興味なさ気に視線を読みかけの文庫本に戻す。
そんな俺を言い過ぎれば、人付き合いが悪く、捻くれていて偏屈だ。

(´・ω・`)「それも1つの手だね。でも……」

('A`)「でも?」

顔を上げずに言葉だけを返す。
長くなる前に切りたい所だが、既に遅いかもしれない。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:01:20.12 ID:ZarKiK1m0

(´・ω・`)「袋ごとに多分枚数はバラバラだよね」

('A`)「そりゃそうだろうな。大きさも1枚1枚まちまちだろうし」

( ^ω^)「うお、デケぇのあったwww」

('A`)「……全部食うなよ?」

わかってると返すブーンだが、その手と口は止まる事はない。
せめてしゃべってる時は食うな。破片が飛ぶ。

……後でこいつに掃除させるか。

(´・ω・`)「そうだよね。こういうのって、グラム売りだもんね」

('A`)「そういう言い方をするかはわからんが、内容量で統一されてるな」

(´・ω・`)「じゃあ、こういうのを皆で食べる時って、どうやったら均等に分けられるのかな?」

('A`)「……計ればいいんじゃね?」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:03:10.97 ID:ZarKiK1m0

やはり遅かったようで、話はどんどん広がって行く。
何で計れば良いか、どんな計り方をすれば良いか、果ては、秤がなかった場合、どうやって計るか等々。

矢継ぎ早に問いかけてくるショボンに、俺は文庫文を諦め、栞を挟んで閉じた。

(´・ω・`)「秤なんてそうそう手元にないよね」

('A`)「台所のある家ならだいたいあるんじゃね?」

(´・ω・`)「こういうのってさ、こう人が集まった場所でわいわいやるもんだし、そんなとこで秤出して計ったりしたら興醒めしないかな?」

('A`)「ドン引きするな」

それが答えだ。
この疑問に意味は無く、答えは何でもいい。
そんな事に延々とこだわるショボン。

性質と言えばそれで済まされるのかもしれないが、ひょっとしたらただの議論好きなだけかもしれない。
こういう無駄な事に熱くなっている時のショボンが、一番生き生きとして見える。
まあ、付き合わされる方はほとほとうんざりするのだが。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:05:15.27 ID:ZarKiK1m0

('A`)「実際は計る機会も来ない。だから、考えてもしょうがないんだ」

俺はそう言い切り、ポテチの袋に手を伸ばす。
アルミについた油と、小さなクズが指先についた。

('A`)「……おい、ブーン?」

(;^ω^)「な、何だお?」

(#'A`)「てめえ、全部食うなと言ったじゃねーか! 何、1人で食っちまってんだよ!」

(;^ω^)「お、ごめんお。気付いたらなくなってたお」

(#'A`)「気付いたら、じゃねーよ! 食えばなくなるのは当たり前だろうが!」

(´・ω・`)「あらら……僕もまだ食べてなかったんだけどな……」

(;^ω^)「ごめんおー」

(#'A`)「全く……誰が買って来たと思ってんだ……」

(´・ω・`)「うん、僕だけどね」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:08:08.66 ID:ZarKiK1m0

尚もブーンを責める俺を、ショボンはいつもの事じゃないかと取り成す。
確かにいつもの事だが、そうやってショボンが甘やかすからこいつは一向に懲りないんじゃないかと思う。

(;^ω^)「以後気を付けるお」

('A`)「お前、毎回それ言ってねーか?」

(´・ω・`)「まあまあ、また買ってくればいいさ」

(;^ω^)「申し訳ない。でも、代わりにさっきのショボンの疑問の答えがわかったお」

突然意味不明なことを言い出したブーンに、ショボンは即座に食い付いた。
折角終わりかけてた話題を蒸し返さないで欲しかったが、もう遅い。
それ以前に、ずっと食ってたブーンが俺達の話を聞いてた事の方が驚いた。

(´・ω・`)「答えって? ポテチの分け方?」

( ^ω^)「そうだお。秤がなくても分ける方法だお」

('A`)「ほう……そんな方法あるんなら、是非俺も聞きたいね?」

どうせくだらない答えだろうと高をくくり、ブーンに続きを促す。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:10:22.05 ID:ZarKiK1m0

( ^ω^)「みんなが満足すればいいんだお!」

('A`)

(´・ω・`)

( ^ω^)「お?」

('A`)「あのな……」

( ^ω^)「おー? 何かおかしかったかお?」

('A`)「おかしかったかお? じゃねーだろ。何だよ、そのアバウトな線引きは?」

ある意味期待通りだったが、答になってない答えに、俺はそれ以上何も言う気は起こらなかった。

(´・ω・`)「なるほど……一理あるね」

(;'A`)「おいおい、ショボン、どういうつもりだ?」

あまりにバカバカしいブーンの答えを、事もあろうか理屈人間のショボンが肯定する。
今の答えのどこにショボンが納得する要素があったのか、俺には全くわからなかった。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:12:27.97 ID:ZarKiK1m0

(´・ω・`)「まあ、確かにね、漠然とし過ぎているよね」

(´・ω・`)「でもさ、結局さ、均等に分けても不満は出るんだよね」

計った所で、ミリグラム単位以下まで統一するのは難しいとショボンは言う。

('A`)「しかし、平等に分ける以外、不満が出ない方法なんてないだろ?」

(´・ω・`)「そうかな? ブーンが言う様に、皆が満足、納得すれば良いんじゃないかな?」

('A`)「そういうものか?」

(´・ω・`)「現に今、ブーンが食べたポテチについては僕たち皆が納得してるじゃないか?」

配分にして10:0:0、これでも僕らは納得してるとショボンは言う。
それは納得していると言うより、呆れて諦めていると言うべきだ。

('A`)「それはそうかもしれんが、俺らみたいなケースは稀だろ?」

(´・ω・`)「うん、そうだよね。でも、僕らはそれで納得出来るから、僕らにはブーンの答えが正解だよ」

('A`)「お前は……」

本当にお人好しだな。
だが、俺も心のどこかで納得してる部分がある。
ショボンがそういうやつで、ブーンがああいうやつ、そして俺が、こういうやつなんだと。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:15:23.36 ID:ZarKiK1m0

( ^ω^)「お! だお? それであってるおね」

(;'A`)「お前は……」

本当に馬鹿だよな。

でも、まあ、こいつが馬鹿なのも俺はよく知っている。
そして、俺みたいな捻くれ者にも分け隔てなく接してくれた愛すべき馬鹿だという事も。
こいつがいて、俺達は互いが互いの考えに納得出来る仲になれたのだから。

(´・ω・`)「うん、あってるよ、ブーン、ありがとう」

( ^ω^)「お安い御用だお」

(;'A`)「偉そうにすんなよ。答えを出そうがお前が1人でポテチ食っちまった事実は変わらねーんだ」

(;^ω^)「お……」

('A`)「さっさと買って来い。それで許してやる」

(*^ω^)「わかったお! ダッシュで行ってくるお!」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 22:17:04.25 ID:ZarKiK1m0

(´・ω・`)「……フフ」

('A`)「何だよ?」

(´・ω・`)「何でもないよ。ただね……」

('A`)「ただ?」

(´・ω・`)「やっぱりブーンの答えで正解かな、ってね」

('A`)「……ショボンはブーンに甘過ぎだ」

そして俺も甘い。
だが、ブーンの言葉通り、俺達はそれで納得してるんだ。
それが俺達の関係、友達ってものなのかねえ……。

(*^ω^)「のりしおうめぇwww」

(;'A`)「早! ってか、また1人で食うんじゃねーよ!」

(´・ω・`)「アハハハハ」


 ──01.ポテチ配分論における僕らの共通見解のようです 了──



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