(´<_` )おかしな話たちのようです
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:22:21.63 ID:ZarKiK1m0
──05.─────────────────
\ミセ*-o-)リ/「ふわ〜」
その日の朝は、珍しく快適な目覚めだった。
まあ、既に二桁に到達した時間を朝というのかはさておいて、平日にこんなのんびり起きれるのは、ルーチンワークに嵌め込まれた
社会人に取っては至福な事なんじゃないかと思う。
ミセ*゚ー゚)リ「さてと……」
折角取った有給だ。
有意義な事に使いたい。
まずは……
ミセ*゚ー゚)リ「……」
ミセ;゚ー゚)リ「部屋の掃除かなぁ……」
ハードワーカにとっての自宅が単なる寝床と化するのはある意味仕方がないだろう。
仕事の出来るOLの辛い所だ。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:25:23.90 ID:ZarKiK1m0
とは言え流石にこれは少しまずいか。
うら若き乙女の部屋に、ゴミ袋から溢れんばかりのカップ麺の容器が垣間見えるのは如何なものだろう。
せめてマンションの1階のゴミ捨て場に置いてくるぐらいはしたい。
ミセ*-へ-)リヾ「まあ、普段通勤の時にやっとけっちゅー話ですよね……」
OLの朝は戦争だ。
着替えにメイクに朝御飯、鮨詰めの満員電車を乗り切るためには朝から妥協は許されない。
ゴミなんかに構っている時間はないのだ。
ミセ*-へ-)リヾ「まあ、その分早起きせいっちゅー話ですよね……」
過ぎたるは及ばざるが如し。
後悔は先に立たず、役にも立たないもんだ。
後悔だけならなんとやら、役に立つのは反省だ。
ミセ;゚ー゚)リ「……ゴミの日だけは10分早起きしよう」
大量のゴミ袋を抱えて階段を往復しながら、私は心に固く誓う。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:28:36.77 ID:ZarKiK1m0
部屋に戻り、掃除機を掛け食器を洗う。
汗を吸い、少し汚れたジャージを洗濯かごに放り込み、シャワーを浴びる。
洗濯だけは小まめにやってたりはする。
流石に着て行く服がないという事態は避けたい。
ミセ*゚ー゚)リ「ふぃー、サッパリした」
バスタオルだけを巻いたままソファーにダイブ。
暖房すらつけていない2月の室温はかなり冷え込むが、シャワーで火照った身体には心地良い。
まあ、風邪引くと嫌なんですぐ何か着るけど。
ミセ*゚ー゚)リ「……」
先程よりは片付いて綺麗な部屋を見回す。
うん、これなら誰かの突然の来訪があっても大丈夫だ。
なんってたって今日は2月14日。
誰かが推し掛けて来て……何て展開はあっても不思議じゃない。
何てたって、こちとらうら若きピチピチの乙女だ。
職場では出来る女だし、密かに憧れられてても何の不思議もない。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:31:48.94 ID:ZarKiK1m0
ミセ*゚−゚)リ
まあ、不思議ではないけど、時々そんな不思議が起る事も無きにしも非ず。
現実はそんなにnotスイーツ。
日々企業戦士として闘い続けるキャリアウーマンには恋に恋する時間すらないわけで。
ミセ*゚−゚)リ「鳴らない電話にチャイムと……」
うん、想定の範囲内だけどね。
鳴ってたらもっと早く起きてるね。
それ以前に予定があったら自分でちゃんと起きてるし?
ないから寝てたんだし?
じゃあ、何でこんな日に休みを取ったのかと言えば、有給の消費期限が迫ってただけ。
掃除が終わった時点で、綺麗さっぱりやる事もなくなったわけで。
ミセ*゚−゚)リ「もっかい寝るかな……」
【】< PiPiPi♪
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:35:06.37 ID:ZarKiK1m0
ミセ*゚д゚)リ「うおっと!?」
突然想定外に鳴る電話。
いや、これはある意味当然。
こんな日に私に誰からも誘いがかからないなんてあるわけがなく──
ミセ*゚−゚)リ「……こいつか」
つ】
ディスプレイに映る文字列を見てため息1つ。
電話の主は残念ながら同性。
高校以来の悪友からだ。
ミセ*-へ-)リ】「はい、ミセリです。ただいま電話に出ることが出来ませんP−という音の後に思う存分ミセリちゃんを褒め称えてください」
【<「基本、絡みにくいですね。後は高校の時、下駄箱に入ってた手紙を散々自慢して開けてみたら隣の──」
ミセ#゚д゚)リ】「褒め称えろよ! 他人様の黒歴史を吹聴すんなよ! つーか絡みにくいって何だよ!? 地味に傷付くわ!」
【<「他には更衣室で──」
ミセ#゚д゚)リ】「だーまーれー!!! 用事ないなら切るぞ!?」
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:39:21.25 ID:ZarKiK1m0
【<「用事はありますよ。会社に電話したら休みと聞きましたので」
ミセ*゚ー゚)リ】「休みって言っても有給だよ? まあ、バレンタインだし? 予定満載で休んでもおかしくなくない?」
【<「……寝起きですか?」
ミセ;゚д゚)リ】「ね、寝起きちゃうわ! ちゃんと掃除したさ!」
【<「予定はどうされましたか?」
ミセ;゚д゚)リ】「ひ、人が来るから片付けたんだよ」
【<「そうですか。では、その来る方の氏名、年齢、貴女との間柄等はどういったものでしょう?」
ミセ;゚−゚)リ】「そ、それは他人に話す必要はないんじゃないかなー?」
【<「……ミセリ?」
ミセ;゚−゚)リ】「な、何だよ……?」
【<「いえ、残念な事に私も本日は暇な物で、折角だから食事ぐらいは豪華にと思い、昨日から色々と仕込んでいたのですが……」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:42:21.61 ID:ZarKiK1m0
ミセ;゚−゚)リ】「うん……」
【<「少々作り過ぎてしまいまして、良かったらそちらで一緒に食べようかと思ったのですが……まあ、予定があるなら仕方ないですね」
ミセ;゚−゚)リ】「え……料理? 作ったの?」
【<「ええ、軽くパーティー気分で作りました」
ミセ;゚−゚)リ】「豪華なの?」
【<「色々と新機軸にチャレンジしましたので、豪華かは自信がありませんが、新作は多数です」
ミセ;゚−゚)リ】「ない」
【<「はい?」
ミセ;゚−゚)リ】「予定ない。もう終わった。うん、お客さん帰ったから、この後の予定はないです」
【<「……そうですか、では──」
・・・・
・・・
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:45:12.23 ID:ZarKiK1m0
(゚、゚トソン「どうも、お久しぶりです」
ミセ*゚ー゚)リ「いらっしゃい、ご馳走」
(゚、゚;トソン「その呼び方はどうかと……」
それから1時間後ぐらいに電話の主、トソンは私のマンションにやってきた。
トソンは高校の同級生で、今は売り出し中の料理研究家ってとこだ。
当然、料理は上手い。半端なく美味い。
私がこんな日に女だけで過ごす事に踏み切っても、致し方ないというものだ。
ミセ*゚ー゚)リ「まあまあ、ほれ、荷物」
トソンはクーラーバッグやらバスケットやら色々とぶら下げて来た。
何て言うか本格的。すごく期待できる出で立ちだ。
どっちかと言えば、私が出向いた方が効率は良いのだが、トソンは基本在宅なので、こうやって出歩きたがる事もある。
(゚、゚トソン「早速キッチン借りますよ? 意外と綺麗にしてますね。感心感心」
ミセ*゚д゚)リ「意外は失礼だな。ちゃんと掃除してるさ」
時々は。
掃除したの、丁度今日で良かったと思う。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:47:51.41 ID:ZarKiK1m0
□⊂(゚、゚トソン「あ、そうそう、これを」
ミセ*゚ー゚)リつ□「ん? 何これ?」
(゚、゚トソン「こういう日ですので、一応」
そう言って渡された箱の包装紙を剥がし、蓋を開けてみる。
中身は……
ミセ*゚ヮ゚)リ「おー、チョコレートじゃん!」
(゚、゚トソン「断っておきますが、義理ですらありません。試食をお願いしたくて」
ミセ;゚ー゚)リ「そこは義理でいいじゃん。感想はちゃんと言うからさ」
だったら包装いらないじゃん、なんて言うのは野暮だ。
こいつはそういうとこ折り目正しいくせに、何て言うか素直じゃない。
照れ屋なんだとは思うけど、意地の張り所が時々理解出来なかったりする。
ミセ*゚∀゚)リ「うめー。流石料理研究家。何これ、すっごいまろやか」
(゚、゚*トソン「そ、そうですか? 狙った味は出せてる様ですね」
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:51:03.97 ID:ZarKiK1m0
ミセ*゚∀゚)リ「美味い美味い、これなら何個でも入るよ」
(゚、゚トソン「料理もあるんですから、ほどほどでお願いしますよ」
ミセ*゚ー゚)リ「はいはい、残りは後にします」
こうやって褒めておけば、また色々差し入れしてくれる……なんて意地汚い考えを持つまでもなく、滅茶苦茶美味いし、時々料理の腕を振舞ってくれる。
私にとっては口さがない悪友で、掛け替えのない親友だ。
(゚、゚トソン「で?」
ミセ*゚ー゚)リ「で?」
(゚、゚トソン「いえ、こういう日ですので、貴女からは何かないんですか?」
ミセ*゚−゚)リ「私……から……?」
寄越さなくてもいいから、誰かに渡した話とかしてくれればいいと申されますよ、この悪友。
ああ、もう、皆まで言わすな。何も用意してねえよ。
義理すら用意してねえ。渡すの面倒臭いから有給取ったんだよ。
これでおk?
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:53:01.36 ID:ZarKiK1m0
しかし、出来る女はそんな事は口に出さないのであった。
ミセ*゚ー゚)リ「今日の料理に合いそうなのって、どんなワイン?」
(゚、゚トソン「ワインですか? えっと、基本的にはどれも大丈夫だと思いますが、赤なら無難かな?」
ミセ*゚ー゚)リ「オッケー、じゃあ買って来るからさ、お返しはそれね?」
(゚、゚;トソン「お酒は貴女の方が飲むでしょうに……」
私はトソンのぼやきを無視しして、テーブルの上に置いていた財布を引っ掴み、外に飛び出した。
歩いて数分のとこにディスカウントの酒屋がある。
ミセ*゚ー゚)リ「さて、ワインも買ったし、お腹も空いたし──」
lw´‐ _‐ノv
ミセ*゚д゚)リ「お?」
lw´‐ _‐ノv「ん?」
ミセ*゚∀゚)リ「シューじゃん! 久しぶりー!」
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:55:12.29 ID:ZarKiK1m0
lw´‐ _‐ノv「おお、そういう君は──誰だっけ?」
ミセ;゚д゚)リ「ミセリだよ、ミセリ! 高校の時、同じクラスだったでしょうが?」
lw´‐ _‐ノv「おー、ミセリ、ミセリ、そうそう、その顔、ミセリじゃないか、あの暗黒委員長の下僕の」
ミセ;゚д゚)リ「誰が下僕だ!」
酒屋からマンションの帰り道、偶然にも高校の時の同級生に会った。
名前はシュー。
ミス・マイペースで知られる、自他共に認める変わったやつだ。
lw´‐ _‐ノv「こんなとこで何を?」
ミセ*゚ー゚)リ「ん、これ」
そう言って私は、買ったばかりのワインの入った袋を見せる。
家がこの近所だと言い添えて。
lw´‐ _‐ノv「自棄酒?」
ミセ;゚д゚)リ「何でだよ! 自棄酒なら日本酒とか選ぶわ!」
うん、突っ込み所はそこじゃないけども。
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:58:05.96 ID:ZarKiK1m0
独特のペースに翻弄されつつも、この後の予定がないというシューも折角だから誘ってみた。
懐かしい顔もいるからと、ちょっとした同窓会気分で。
lw´‐ _‐ノv「ほほう、ここが君の部屋か。割と良い所に住んでるんだな」
ミセ*゚ー゚)リ「ささ、遠慮なく上がってくれたまえ。たっだいまー」
(゚、゚トソン「随分遅かったですね? もうすぐ出来ますよ? あら、そちらは……?」
lw´‐ _‐ノv
ミセ*゚ー゚)リ「そう、シューだよ。偶然そこで会ってさ、懐かしいでしょー。折角だから誘ったんだ。料理は十分あるよね?」
(゚、゚トソン「ええ、まあ、全然足りると思いますが。どうも、シューさんお久しぶりです」
lw´‐ _‐ノv「申し訳御座いませんでした」
ミセ;゚д゚)リ「何で土下座ー!?」
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/09(土) 23:59:08.93 ID:ZarKiK1m0
lw´‐ _‐ノv「まさか暗黒委──都村さんがこちらにお見えとは露知らず。おのれ、ミセリ、謀りおって……」
(゚、゚トソン「まあまあ、面を上げてくださいな。あれはもう、済んだ事じゃないですか」
ミセ;゚д゚)リ「お前らの間に何があったー!?」
いや、まあ、人間、知らない方がいい事もあるから、この件は深く追求せずに流しました。
うん、我ながら賢い選択だよね。
・・・・
・・・
(゚、゚トソン「さて、頂きましょうか」
lw´‐ _‐ノv「では、私奴がお酌を……」
ミセ;゚ー゚)リ「普通にやろうよ……」
ミス・マイペースどこいった。
(゚、゚トソン「では、えっと……何に乾杯します?」
lw´‐ _‐ノv「都村さ──」
ミセ;゚ー゚)リ「それはもういいから。えっと、女の友情とか?」
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/10(日) 00:00:08.03 ID:R4lo29wa0
(゚、゚トソン「バレンタインに女同士で集う喪女に?」
ミセ;゚д゚)リ「それは何か嫌だな……」
lw´‐ _‐ノv「彼氏いるしね」
ミセ*゚−゚)リ(゚、゚トソン
lw´‐ _‐ノv
lw´‐ _‐ノv「あれ、言ってなかったっけ? 今日彼氏が急に法事で田舎に帰ることになって急遽予定が──」
ミセ*゚ー゚)リ「隊長、ホシの荷物の中にチョコを発見しましたであります」
lw´‐ _‐ノv「おい、コラ、私の荷物に何を」
(゚ー゚トソン「よし、没収」
lw´‐ _‐ノv「ちょ、お許しくだせえ、お代官様」
ミセ*゚ー゚)リ「どうせ渡せないんなら、ここで食べちゃおうぜ?」
lw´‐ _‐ノv「いや、後で渡すんだ──」
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/10(日) 00:02:15.53 ID:R4lo29wa0
(゚、゚トソン「おや、クックル堂の新作ですか。これは中々……」
lw´‐ _‐ノv「開けやがった……」
ミセ*゚ー゚)リ「んー……、でも、これならさっきのトソンが作ったやつのほうが美味いなー」
lw´‐ _‐ノv「食いやがった……」
(゚、゚トソン「まあまあ、私が代わりを作ってあげますから」
ミセ*゚ー゚)リ「んじゃ、私にも作ってよー」
(゚、゚トソン「貴女にはさっき渡したじゃないですか?」
ミセ;゚ー゚)リヾ「いやさ、よく考えたらさ、当日休んでも次の日とかに義理持ってかなきゃまずそうじゃん? メンドくさいけど」
lw´‐ _‐ノv「確かに面倒だな、義理は」
(゚ー゚トソン「本命は面倒ではないと」
lw´;‐ _‐ノv「……いや、まあ、その」
ミセ*゚ー゚)リ「コラ、あんまシュー苛めんなよ」
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/10(日) 00:04:18.34 ID:R4lo29wa0
(゚、゚トソン「はいはい、まあ材料がないんで今すぐは無理ですが、食後に板チョコでも買って来て簡単な物でも作りますか」
ミセ*゚ー゚)リ「さっすが料理研究家」
(゚、゚トソン「それでは、改めて乾杯を」
lw´‐ _‐ノv「何にかな?」
ミセ*゚ー゚)リ「裏切り者に死を、乾杯」(゚、゚トソン
lw´;‐ _‐ノv「え……いやー……、乾杯?」
そんなこんなでバレンタインの夜は更けて行く。
出来る女に恋の花が咲く日が来るのは遠そうだけど、私は今日も元気です。
変わらぬ友情に、乾杯。
──05.バレンタイン・悪友チョコのようです 了──
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