(*゚ー゚)恋われたいようです( ´_ゝ`)

57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:23:53.44 ID:S/o8LsEd0



このお話は内藤がフルボッコされて意識を失い、
目覚めかかった所から始まります。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:24:57.60 ID:S/o8LsEd0



ある音楽家と/8/



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:27:12.19 ID:S/o8LsEd0
−ブーン−



「……さか…う……なん…」

…。

「お……ら…あや……………けよ」

……。

「どうしよう…捕まりたくないよ……」

……。

「息してるしまだ生きてるだろ。でも脳死したら面倒な事になるから埋めるか?」

やっべすげぇ頭痛ぇ。あと心も痛い。
じんじんと響くようなこの痛みは尋常じゃない。
これぞ陣痛。なんつって。あ、寒い。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:28:13.85 ID:S/o8LsEd0

( -ω^)「んぐぁ」

( ´_ゝ`)「お、起きたか内藤。おめでとう」

(´;ω;`)「死んでないんだね、よかった…埋めようかどうかちょっと本気で考えちゃったよ」

(;^ω^)「お前ら」


額に乗せてある濡れたゲロ雑巾を払いのけて起き上がろうとした瞬間、
背骨がぎしりと音をたてて激痛を呼んだ。

ちょ、なんだこれ洒落にならん。起き上がれん。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:30:21.27 ID:S/o8LsEd0
(;´・ω・`)「痛い? 大丈夫? 平気? 死んじゃう? 埋める? 殺す? どうする?」

( ´_ゝ`)「落ち着けショボン、会話を聞かれたらマズイ」

( ^ω^)「お前ら…」


ショボンの耳が所在無さ気に垂れ下がっている事から、少なからず僕を殴打した事を反省しているんだと思う。
自分の将来を案じて挙動不審になっているのだとしたら、僕は今すぐにでもこいつを片玉にする。鼻も。


( ´_ゝ`)「大丈夫だ内藤、俺が責任持って埋葬してやるよ」

( ^ω^)「何処に遺棄する気だお」


一方こちら何の反省の色も見られない。どころか楽しんでいる。
慰めるように肩に置かれた手には、ぽんではなくぺそっとでも擬音をつけられそうなくらい馬鹿にしている。
畜生め、僕が触れただけで相手を緑色に腐らせる能力を持っていたら。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:31:22.51 ID:S/o8LsEd0

( ´_ゝ`)「音響係ダウン、今日の練習はナシで」

( ^ω^)「ちょま」








と、その夜。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:33:27.26 ID:S/o8LsEd0
珍しくガ板で貰ったzipの中身が、殆ど僕が持っている画像と同じ画像が入っていた時。
見当外れの僕の怒りは有頂天になった。

(#^ω^)「ぬぁー! 兄者めぇ!」

苛立ち紛れに殴った液晶ディスプレイに大きな水溜りが出来る。
歪な波紋を広げながら、水溜りは画面に広がっていく。
ああそんなつもりじゃなかったんだ。ごめんよスイプレディ。
不甲斐ない僕を許しておくれ。頼むから君の全てを見せておくれ。

そんな僕の切実な思いとは裏腹に、Windows2000はその生涯を閉じた。

( ^ω^)「ぬぅ…」


僕は、サークルが楽しみで大学に行っているのだ。
部活を楽しむ中学生のように。
それなのにあいつらは、



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:35:39.08 ID:S/o8LsEd0
−ショボン−


(´・ω・`)「はぁ…」


家が近い僕は車の免許を取っても徒歩通学だ。
すっかり暗くなってしまった道は見知っていても恐ろしい。

頭上から聞こえる鴉の鳴き声は、あほうと言う響きの通り。
まるで僕を軽蔑しているようだ。

俯きながら歩く僕の背にあほうあほうと音が当たる。


(´・ω・`)「はぁ…」


一人でいると、溜息が多くなる。



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:41:39.25 ID:S/o8LsEd0
サークルが好きなブーンには酷い事をしたと思う。
ブーンの怪我は予想外だけど、僕の行動も兄者の行動も全ては僕のエゴだ。

いや待て、兄者には軽くブーンの背中を押してくれと頼んだ。
決して、ブーンの背骨に全力で肘鉄を叩き込んでくれなんて言っていない。
こんな言い訳を考え連ねるのも、逃避か。僕の利己か。


僕らの劇は、作曲担当の僕がいなければ始まらない。先に撮影する事も可能だろうが。
後から音楽と演技のズレがあったら修正がきかない。そもそもオリジナルなのだ。
ネット上でmp3で頼む、とか書き込んで変換する以前の問題だ。

最初は意気込んで承諾したものの、ほんの三日足らずでスランプに陥ってしまった。
今日は延ばしに延ばした曲をみんなに聴いてもらう集まりだったのに、それなのに。




冒頭の4章節からは白紙の楽譜に目を落として、僕はまた溜息を吐いた。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:44:00.69 ID:S/o8LsEd0
(`・ω・´)「おかえり、ショボン」

自室の襖を8時だよ全員集合のように開けると兄がいた。
部屋の中央で腕を組み、堂々と仁王立ちしている。

見ると、部屋にちらばっていたプリントやら雑誌やらが全て片付いてしまっている。
本棚には畳の下に隠してあったはずの成人向け雑誌までもがきっちりとおさまっていた。

(´・ω・`)「勝手に人の部屋に入らないでよ兄さん」

これではプライバシーも糞もない。

(`・ω・´)「今日はお前に話があって来たんだ」

どうやら人の話を聞く気はないらしい。
それに今日は、とは何だ。今日も、の間違いじゃないのか。
その手に持ってる音楽系雑誌を見る限り、今日もまたいつもと同じ説教だろうよ。

自業自得とはいえ、こんな気持ちの落ち込んでいる時に正座なんてしたくない。
八つ当たりにも等しい感情だけれど、今の僕には関わらないでほしい。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:45:21.49 ID:S/o8LsEd0
(´・ω・`)「もういいよ、兄さんの言いたい事はわかってるから」

(`・ω・´)「そういう問題じゃないんだ、ショボン」

(´・ω・`)「だからわかってるんだってば」

(`・ω・´)「これは大事な話なんだ」

(´・ω・`)「いいってば」

(`・ω・´)「これはお前の事を思って言ってやっているんだ」

(´・ω・`)「うるさいな」

(`・ω・´)「曲なんて流行り廃りが激しいものだ。今はまだいいが、
      誰もお前の曲に見向きしなくなったらどうやって生活していく気なんだ」

(´・ω・`)「これは趣味だよ。好きな事してお金を稼げるならそれでいいじゃないか」

(`・ω・´)「音楽で将来食べて行くなんて、声優を目指す事と同じくらい馬鹿らしいぞ」

(#´・ω・`)「そんな事一言も言ってないよ、ただ僕は…」

(`・ω・´)「――…―」

(#´・ω・`)「―!――!!」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:46:57.14 ID:S/o8LsEd0





歩幅をいつもより多めに取り、襖が外れるんじゃないかと思うくらいの勢いで扉を開ける。

(`・ω・´)「ともかく、もう一度よく考えてみるんだ」

そう言って襖をぴしゃんと閉めた。
どすどすと階下に降りる足音が響いて、それからは何も聞こえなくなった。

(´・ω・`)「はぁ…」

ああ、一人でいると溜息が多くなる。

ふっと視界に入った楽譜に、更に気分が沈んで行く。
少しでも気を紛らわせようと、煙草に火を付け、窓を開ける。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:48:50.50 ID:S/o8LsEd0
ひゅううと風が吹き込み、寒さに身を震わせた。
一緒に出す筈だったハイライトの煙も部屋の中に戻ってしまう。
流石に開けすぎたと思い、少し閉めた。


(´-ω-`)「……」


冷たい新鮮な空気を肺に取り込むと、少しだけさっきの息苦しさが無くなったような気がした。
煙草をもう一度だけ吸い、殆ど燃えていないそれを灰皿へ落とす。
僕は視界を閉じたまま、優しい音の奔流を待つ。

いつからか聞こえるようになったあの調べ。
幼い頃に聴いた祖母の子守唄のような、小さな頃に聴いたわらべ唄のような。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 01:50:10.69 ID:S/o8LsEd0



恋われたいようです ./1/
足して十になる物理/2/
夢の泡沫に添えて./3/
一定の連続存在 /4/
覚えておいて花 /5/
パン屋の邂逅 ./6/
謎の意味合い/7/

ある音楽家と/8/       END.



戻る/9/