(*゚ー゚)恋われたいようです( ´_ゝ`)
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:08:58.36 ID:S/o8LsEd0
朴念仁は殴っても蹴っても不死身らしい。
それとも、私の鍛え方が足りないのか。そうなのか。
太鼓を打つ某仮面ライダーの言葉でも体現しているつもりか。
取りあえず、これから帰ったらスクワット30回でもしてみよう。
- 96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:11:56.62 ID:S/o8LsEd0
しぃ家の怪/1/0
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:15:50.90 ID:S/o8LsEd0
- −しぃ−
(;゚ー゚)「ぬぐぐ…思ったよりきっついわねスクワットって」
まさか立ってしゃがむだけの行為がこんなに辛いとは思わなかった。
目標の30回をなんとか越えた私はベッドにその身を投げ出す。
(*゚ー゚)「これくらいでダウンするとか…やっぱ体力がないんだろうな」
ああ基本的な体力が女子よりもある男子が羨ましい。
中学や高校の時に、バドミントンでスパーンと言う音を出す男子を何度羨ましく思った事か。
ボール投げでうん十mを飛ばす男子の腕力をどれだけ羨ましく思った事か。握力測定でetc.
(#゚ー゚)「くそぅ…今に見てなさい腹筋を割ってやるわ」
言って己の腹を撫でる。ぶにぶに。
柔らかさしか無ぇ。堅さが骨の堅さしか感じられない。
骨が柔らかかったらそれこそ危ないが。
(*゚ー゚)「筋肉女ってのもいいなぁ」
まずは専門の場所へ行って鍛え方を指導してもらおうと妄想する。
変に鍛えて変な場所に腹筋の瘤が出来たら嫌だ。
まず割れるかどうかそれが問題だが後回しで。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:23:09.18 ID:S/o8LsEd0
- カーテンは開けているが窓は閉めているからか、汗が凄まじい。
運動後と言う事もあり、いい加減息苦しくなってきたので窓を開ける。
少しだけ開けるとひゅうと音がして、それから何も聞こえなくなった。
(*゚ー゚)「おー涼しい涼しい」
こんな時間だからかとても静かだ。
近くに病院がある為、よく救急車の音が聞こえるのだが今夜はそれもない。
網戸が無いので、空気が十分に入れ替わったと感じたらすぐに窓を閉めよう。そう決める。
と、チャイコフスキーのスラブ行進曲が響く。
(*゚ー゚)「お? ちゃんと電話してきたわね」
これは私の携帯の兄者専用の着信音だ。ちなみに一番盛り上がる個所を選択してある。
内藤が選曲を渋いとか言っていたが、別にそんな事ないと思う。
ドラクエのセーブデータが消えた時の効果音をメール着信音にしてる奴に、そんな事を言われたくはない。
ついでに兄者は携帯の着信音全てを初期設定から変えていない。
お前は何処の老人だ。
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:28:55.37 ID:S/o8LsEd0
- 放置する気はないのですぐに出る。
(*゚ー゚)「やっほー兄者」
『言われた通り電話したけど』
(*゚ー゚)「…それで始めるなんてあなた本当に駄目男ね」
『いや本当何話したらいいかわからないから』
滅多に電話を掛けない兄者が私に電話を寄越したのは、私がそうしろと言ったからだ。
ちょっとは恋人らしい事をしてみたいと思った私が色々言って、色々あって、
兄者から電話を掛けてくるようになった。最近はそれが続いている。
その事を別に疎ましく思っていたりはしない。寧ろ、私が望んだ事だ。
電話代だって全部向こう持ちだから何も気にしなくていい。
- 101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 08:34:35.50 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ヮ゚)「だからね、私はメールとかでそういう事をやってみたいのよ
彼女からのメールにすぐ返信しなくちゃ駄目だよなーと思いつつも
面倒くさくなって結局そのまま寝て次の日『なんで返信しないのっ!』
ってリアルで言われて慌てふためくような事やってみたいのよ」
『それって俺の立場なんじゃ…』
(*゚ー゚)「あなただから慌てふためくなんて有り得ないだろうし、
なんでもいいから何かメール送れって言われて、
空メールを送ってくるような人にそんな事を期待したりしないわ」
一応その件については既に腹を落ち着かせている。
内藤とショボンにその件で愚痴を言ったら、
『そんな経験ないから』『それは仕方ない、童貞だから』『女の子とか二次元存在だから』
『自分ならエロ広告業者のスパムメールを送ってる』『俺ならメンヘラうぜぇと思って寝る』
だから気にすんな、と無茶苦茶なフォローが兄者にだされた。
当の本人はそれを聞いているのかいないのかよくわからない格好で、
それでもそれを聞いていた。
喪男ならば仕方ない。童貞だもの。
しかし空メールは流石にないと思う。
せめて『こんばんは』くらいは打て。
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 09:01:13.34 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ー゚)「彼女からのメールうぜーってなって、それが溜まって、限界越えて
ちょっとメールうざいから的な事を遠回しに言って、それを彼女が敏感に察知して
『私の事が嫌いになったの?!』『あなた浮気でもしてるの?!』『ハァ?』
それで別れ話まで発展するような勘違いバカ女的展開テンプレを小一時間(ry」
『それを俺がやるの? やられるの?』
(*゚ー゚)「どっちもないわ」
『……』
(*゚ー゚)「要するにねー恋人からのメールをうざく思う気持ちを味わってみたいのよ
あなたからのメールって殆ど用件しか書いてないし、そもそも箇条書きって何よ
集合場所:VIP公園中央
集合時間:16時
移動場所:映画館
これ何処の修学旅行のしおりよ、スケジュール表よ、予定表よ
せめて句読点を使って区切れ、コロンは時間に使え
メールで今北産業とか言うオチじゃねぇぞオイ」
- 107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 09:06:00.95 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ー゚)「あーごめん脱線した。
端的に言うと、ちょっと私がうざく思うまでちょっと毎日メールしなさい
間違っても私がうざく思うメールじゃないわよ、勘違いしないでね」
『わかった』
「言っとくけどメボムはなしよ」
オイ今舌打ちしなかったか。
(*゚ー゚)「ん?」
何だか隣の部屋が騒がしい。
『どうした?』
笑い声、今の流行りの歌やそれを囃し立てる声が聞こえる。
集まって宴会でもしているのだろうか。
(*゚ー゚)「何でもないわ。メールで話す話題がないならねー…
そうだ。日記書きなさいよ、日記。交換日記ならぬ交換メール」
『日記?』
- 108 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [ミスった] 投稿日: 2009/05/29(金) 09:12:07.32 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ー゚)「あーごめん脱線した。
端的に言うと、ちょっと私がうざく思うまでちょっと毎日メールしなさい
間違っても私がうざく思うメールじゃないわよ、勘違いしないでね」
『わかった』
(*゚ー゚)「言っとくけどメボムはなしよ」
オイ今舌打ちしなかったか。
(*゚ー゚)「ん?」
何だか隣の部屋が騒がしい。
『どうした?』
笑い声、今の流行りの歌やそれを囃し立てる声が聞こえる。
集まって宴会でもしているのだろうか。
(*゚ー゚)「何でもないわ。メールで話す話題がないならねー…
そうだ。日記書きなさいよ、日記。交換日記ならぬ交換メール」
『日記?』
- 109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 09:15:36.95 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ヮ゚)「そ、それならあなたも出来るでしょ?」
『わかった』
ブツリ
ツー…ツー…
(*゚ー゚)「…もう慣れたわ」
あの野郎。また勝手に切りやがって。
私も携帯電話を置いて、充電器を差し込む。
風呂でも入っていれば、メールはその間に来てるだろう。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 09:21:07.78 ID:S/o8LsEd0
- 件名:7月24日
本文:
6:00 起床
6:30 身支度
7:00 朝食の支度〜朝食
7:30 妹を学校に送り届ける
8:00 帰宅〜読書
9:15 大学へ移動
ここからは時間割通りなので割愛
18:30 サークルへ
19:30 研究室へ
20:20 帰宅
20:30 夜食
20:50 風呂
21:00 復習
22:00 娯楽
23:00 終身
(#゚ー゚)「うぉおおおおおい!!」
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 09:26:35.38 ID:S/o8LsEd0
着信履歴の一番上にあるアドレスにかける。
『もしもし?』
(#゚ー゚)「もしもしじゃないわよ! なんで疑問形なのよ!
それよりもこのメールは何よ! 中学生の夏休みのスケジュールか!
娯楽って何だそりゃ! しかも割愛とか使うな!
もう突っ込みきれんわ! 最後に就寝の変換間違えてるわよ!」
『え、あ、ごめん』
(#゚ー゚)「一番の問題は、私日記を送れって言ったわよね?」
『うん』
(*゚ー゚)「これ、日記?」
『うん』
駄目だこりゃ。
- 115 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [再開] 投稿日: 2009/05/29(金) 10:06:43.51 ID:S/o8LsEd0
- (;*- 。-)「ああもういいわ…あなたに期待した私がバカだった」
『え、これ日記と違うの?』
(;*゚ー゚)「もういいわ…」
それからは私が話題を出して、それに兄者が応えてという形で会話が続いた。
なんだ、最初からこうすればよかったんじゃん。とは思ってやらない。
思ってやるもんか、私の努力を返せ。
(*゚ー゚)「ん?」
他愛もない事を話していると、いつの間にか部屋は藍色に染まっている。
もう夕方も過ぎたのか。結構な長電話だ。
と言うか、これ今までの人生の中で一番の長電話じゃなかろか。
それは勿論、向こうにとっても。
(*゚ー゚)「兄者、多分電話料金凄まじい事になってるわよ」
『…考えないようにしてたのに』
あらら、ごめんなさいね。
それでも電話を切ろうとしないのは彼のいい所なのだろうか。
- 116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:11:23.58 ID:S/o8LsEd0
それから私のほうも話題のネタが尽きてきて、そっちの状況を実況しろと言った。
暫くの沈黙が続き、いきなり心臓の筋収縮や呼吸や能のシナプスについて語り出す兄者にフリーズした。
確かにそれは実況だけどそういう意味で言ったのではない。
フリーズから回復した私は即座に怒鳴って、向こうが謝って、説法して、
それじゃあおやすみまた明日ね、で電話終了。
画面に表示された時間は3時間36分。なんだそれほどでもない。
そう思って、この電話の前に1回1時間くらいの電話をしていたのを思い出し、兄者に向けて合掌した。
〜♪
(*゚ー゚)「んう?」
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:15:07.56 ID:S/o8LsEd0
- 兄者との電話に集中していて気付かなかったが、隣の部屋の騒音が一段と増している。
酒でも飲んでヒートアップしたのだろうか、叫び声や絶叫までが加わっている。
(;゚ー゚)「うっさいわねー」
こんな時間に、と続けようとした所で壁がばんと叩かれた。
だんだんと床を踏み鳴らすような音も一緒に響いてくる。
(*゚ー゚)「おいおい」
そしてそれは鳴り止みそうにない。どころか音が増えている。
これはもう騒音公害の域だ。寝れねぇ。
時間は深夜2時55分。既に明日が今日になっている。
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:18:15.63 ID:S/o8LsEd0
- (#゚ー゚)「ちょっと…これは煩過ぎじゃないの?」
だからと言って壁を叩く気も直接隣の部屋に殴り込む勇気もない。
こっちから壁を叩いたら向こうが何かヒートアップしそうだし、
酒が入っているような連中が簡単に聞いてくれるとも思えない。
乗り込んで来られなんかしたらそれこそだ。
私はアドレス長から下宿の番号を選ぶと、それに電話をかけた。
『はい。○○○○の杉浦です』
(*゚ー゚)「ああ、夜分遅くすみません杉浦さん」
そして私は手っ取り早く用件を伝える。
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:21:33.21 ID:S/o8LsEd0
- (*゚ー゚)「それで、なんとかしてほしいのですが…」
隣の部屋はまだ煩い。
ああ畜生もうすぐ制裁が下るからなお前ら。
『……』
(*゚ー゚)「…杉浦さん?」
何故黙るのだろうか。
これで耳を塞いで一晩耐えろと言われたら終わりだ。
『その…大変言いにくいのですが』
(*゚ー゚)「はあ」
何故渋るのだろうか。
『その部屋は…空き部屋の、筈、なのです…が……』
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:23:53.55 ID:S/o8LsEd0
今なんて、だってこんなにもと言おうとした。
(*゚−゚)「えっ」
いつの間にか騒音は止んでいる。
いつから?
杉浦さんの声が酷く遠い。
ひゅっと背筋が凍り、二の腕に鳥肌がたった。
- 121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:25:26.22 ID:S/o8LsEd0
- 静寂が耳に痛い。
いつもなら聞こえる筈の車の走行音もない。
どうして。
何故か導かれるようにして窓を見る。
振り向きたくないのに、振り向いたら駄目なのに。
(* − )「う、あ………」
そこには無数の手跡が、
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/05/29(金) 10:26:27.21 ID:S/o8LsEd0
恋われたいようです ./1/
足して十になる物理/2/
夢の泡沫に添えて./3/
一定の連続存在 /4/
覚えておいて花 /5/
パン屋の邂逅 ./6/
謎の意味合い/7/
ある音楽家と/8/
魔法使いに./9/
しぃ家の怪/1/0 END.
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