(*゚ー゚)恋われたいようです( ´_ゝ`)

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:03:19.65 ID:8xQCoy5K0

坂眉ショボンと音信不通になり、2週間が経った。



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:06:36.41 ID:8xQCoy5K0



家族 /5/



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:10:17.43 ID:8xQCoy5K0
−ブーン−


ショボンは、引き篭もるような奴ではない。
学生ニート生活を謳歌するような奴でもない。

( ^ω^)「なんかあったのかお…」

メールをしても返って来ない。電話をしても出てくれない。
メールが出来ないから電話に出れないのか、電話に出れないからメールしないのか。どうでもいい。
こんな状況になって初めて、僕は彼の家が何処にあるのか知らない事に気付いた。

( ^ω^)「どうするかお…」

教授に相談。アウト。事務へショボンの住所を尋ねる。理由はどうする。

( ^ω^)「誰か知ってる人…」

ショボンの知人を思い浮かべる。
ぼるじょあ、しぃ、留学生のフィレンクト。OBのモララー先輩。
同サークル内で親しいのは僕、兄者、会計のマニー、部長のタカラ。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:13:50.36 ID:8xQCoy5K0
フィレンクトとモララー先輩は連絡を取るのが難しい。
ぼるじょあは最近親しくなったばかりだから家は知らないだろう。知ってたら何か悲しい。
一番連絡を取りやすいのは兄者、しぃ。まずは兄者。

そうと決まれば携帯を開く、発信履歴、一番上にかける。
ワンコールで出た。

『もしもし、流石です』

( ^ω^)「兄者、今時間あるお?」

『おお内藤、どうした。また相談事か?』

( ^ω^)「…そうだお」

それじゃ、いつもの場所でと言って電話を切られた。
僕は足早に図書館へ向かう。



115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:18:49.07 ID:8xQCoy5K0
( ´_ゝ`)「それで何があったんだ?」

( ^ω^)「実は、」

手短に説明する。


( ´_ゝ`)「着信拒否とかではなく?」

( ^ω^)「着信拒否された事ないから判らないお、兄者も試しにショボンに掛けてみてくれお」

もしそうだとしたらかなり傷つく。
会って一発ぶん殴ってやらねば気が済まない。

( ´_ゝ`)「……」

兄者は無言で携帯を開き、何らかの操作をする。
兄者から電話が来たのは数える程しかないけど、彼の発信履歴はどうなっているのだろう。



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:23:14.08 ID:8xQCoy5K0
兄者が携帯を耳の近くに持っていく。

( ´_ゝ`)「…」

( ^ω^)「…」

沈黙。けれど、これは僕が破っていいものではない。

( ^ω^)「……」

兄者が耳から携帯を離す。

( ´_ゝ`)「駄目だ、繋がらない」

( ^ω^)「そう、かお」

それを聞いた時、着拒ではなかった安心以上に気分が沈む自分自身にびっくりした。
無意識の内に、彼ならばという期待でも持っていたのだろうか。



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:27:44.22 ID:8xQCoy5K0
いつまでも兄者に頼り切る自分にも嫌気が差して、はぁと吐く溜息と共に頭を下げる。

( ´_ゝ`)「なぁ、内藤」

( ´ω`)「…お?」

顔をあげたら、彼には珍しく人の様子を窺うような視線とぶつかった。
呼んだにも関わらず、いつまで経っても喋らない。

いい加減気まずくなり、僕が口を開いた。

( ´ω`)「何かお?」

兄者はふむ、と顎に右手をあて、左手で右の肘の内側を掴む。
何かを確信した時の彼の癖だ。

( ´_ゝ`)「内藤は、ショボンと西川を重ねているんだな」

( ´ω`)「おお?」

友達と、兄を?



119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:31:05.92 ID:8xQCoy5K0
( ´ω`)「それはないお、僕はただ単純に心配なんだお」

( ´_ゝ`)「認めたくないなら気にしなくていいさ」

こんな時は彼は思わせぶりな事しか言わない。

( ´_ゝ`)「てゆーかさ」

( ´ω`)「お?」

( ´_ゝ`)「ショボンにシャキンって兄がいたろ、OBの
      聞けば何か教えてくれるんじゃないか?」

( ;^ω^)「そうだったお」

すっかり忘れていた。

( ^ω^)「あ、でも」



121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 06:34:31.41 ID:8xQCoy5K0
( ^ω^)「お兄さんの番号もメルアドも知らないお、やっぱり無理だお」

( ´_ゝ`)「それくらい昔の名簿見れば書いてるだろ、合唱部に在籍してたみたいだから、今の部長に聞けば」

( ^ω^)「合唱部の部長とは面識がないお」

( ´_ゝ`)「あんだけ遊びに行くのにか…」

幾分呆れが混じった視線を向けられる。

( ´_ゝ`)「事情を話せばそれくらい大丈夫だろ、見せて貰えるって」

( ;^ω^)「でも知らない人と話すのは気まずいお、怖いお」

( ´_ゝ`)「お前なぁ」

( ;^ω^)「ごめんだお、ごめんだお」



128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:25:30.11 ID:8xQCoy5K0
今でこそ、色々と大丈夫だけれど。まだ、


( ´_ゝ`)「…俺が合唱部長に聞いてやるから、お前がショボンの家に行けよ」

( ^ω^)「ありがとうだお、兄者は着いて来てくれないのかお?」

( ´_ゝ`)「俺はショボンとそこまで親しくない」

そうなのか?

( ;^ω^)「お願いだお、そこをなんとか」

( ´_ゝ`)「いや本当無理、講義の日数的に考えて」

( ^ω^)「僕が代わりに出席カード出しておくから」

( ´_ゝ`)「なんというチート」

これで俺も不良の仲間入り? と言う。
いや、出席カード他人に出させただけで不良はないんじゃないかな。
確かに不良っちゃ不良だけど。



130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:32:10.30 ID:8xQCoy5K0
( ^ω^)「学食奢るお」

( ´_ゝ`)「物で人を釣るな」

( ´ω`)「おっおー」

どうすればいいんだお。

( ´_ゝ`)「…今日明日は無理だけど、明後日なら時間があるから着いて行ってやるよ」

( ^ω^)「ほ、本当かお!」

( ´_ゝ`)「但し、俺は家の中には入らない」

そんな。

( ^ω^)「なんでだお、それじゃ意味ないお」

( ´_ゝ`)「ショボンに会うまで、家の外で待っといてやるから」

( ;^ω^)「どうして入らないんだお?」

( ´_ゝ`)「ショボンと俺は、そこまで親しくない」

またそれか。
…仕方ない。兄者は自分がこうと決めたら中々動かないから。

( ;^ω^)「絶対に居てくれお、ショボンが居なかったら僕はパニクる自信があるお」



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:37:01.32 ID:8xQCoy5K0
( ´_ゝ`)「そんな自信無くせ」

( ^ω^)「…そうだおね」

( ´_ゝ`)「そんな人事のように」

これが他人事ならどんなにいいか。

( ´_ゝ`)「俺とかショボンなら、大丈夫なのになぁ。何々だろうな、本当」

( ^ω^)「…だおね」

本当に。

( ´_ゝ`)「…」

( ^ω^)「…」

( ´_ゝ`)「明日までに…調べとくから、道案内は俺がしてやるよ」

( ^ω^)「ありがとうだお」



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:40:48.80 ID:8xQCoy5K0
一応しぃにも連絡入れとくから、と言う言葉に焦り制止する。
けど兄者はそれに憤慨した様子もなく、彼女ならいい感じにそれを広めてくれるだろうしと応えた。

確かに彼女は口が軽いが、あまり悪い事は聞かない。
彼女が一番手にそのままの真実を話して、周りが尾ヒレを付けていく。
言いふらした彼女が原因だから、彼女が悪なのだろうか。
難しい事を考えるのは苦手だ。


僕はそれから明後日まで、悶々と過ごした。



134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:44:51.12 ID:8xQCoy5K0








目の前に立ち塞がる木製の扉。なんか京都とかにありそうなやつ。
札には『坂眉』とあるが、いやいや、たまたま名字が同じなのかもしれない。

僕は今一度確認する為に、斜め後ろに立つ兄者を振り返った。

( ^ω^)「ここが本当にショボンの家かお?」

( ´_ゝ`)「そ」

一言ではなく一文字で返された。

ここがショボンの家かよ畜生、まさか坊ちゃんだったなんて。

( ^ω^)「金持ちを知られたくなくて家を教えない展開…どっかで読んだ事あるお」



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:51:04.46 ID:8xQCoy5K0
はは、と乾いた笑いを漏らす。
早く行けよと兄者が急かす、言われなくても。

( ^ω^)「誰か居ませんかおー?」

叫ぶ。無反応。
こんこんと門を叩く。反応なし。
どんどんと門を叩く。反応なし。

( ^ω^)「無人?」

ここはいっそ体当たりかと身構えると、はぁと溜息が聞こえた。

( ´_ゝ`)「内藤、横、インターホン」

兄者の指差す先を見れば、和風には似つかわしくない最新の電子機器。
しかもテレビ電話機能付きの。これリモコンで遠隔操作可能とかCMにあったような。

( ´_ゝ`)「押せよ」

( ^ω^)「…僕一人だと怖いから、兄者もカメラに映る位置に来てくれお」

やれやれと言って、兄者は僕の真後ろに並んだ。
確かに映るけど、そこじゃねぇ。顔を移せ。



136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:54:52.11 ID:8xQCoy5K0
ピンポーン

ピッ

从'ー'从『はいはい、どなたですか?』

暗かった画面に、着物を着た可愛らしい女の人が映った。
TV画面は想像していたものと違って、魚眼レンズから覗いたように歪んでいる。
この女の人は誰だろう。母親だろうか、にしては似てないな。
似てない姉とか。従姉妹とか。それとも小間使いとか。

( ´_ゝ`)「坂眉ショボンさんの友達なのですが」

( ;^ω^)「っお」

固まっていた僕に代わって兄者が代弁する。

从'ー'从『…わかりました。お入り下さい』

意外とすんなりと中に入る事が了承された。
なんだろう、もっと突っ掛かるかと思ったのに、釈然としない。



137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 07:59:16.42 ID:8xQCoy5K0
( ´_ゝ`)「それじゃ、俺はここで待ってるから」

( ^ω^)「ここまで来たからには一緒に入ってくれお」

( ´_ゝ`)「約束と違うじゃないか」

いやいやいや、こんな場所に一人でとか無理だ。
予想と違い過ぎる。

( ;^ω^)「折角だから入ろうお」

( ´_ゝ`)「だから、俺はショボンとは」

画面の向こう側から兄者の言葉が遮られた。

从'ー'从『そちらの方も、ご一緒に』

( ´_ゝ`)「…」

よし。
これで兄者も逃げられまい。旅は道連れ世は情け。

軋む音も無く、門は開いた。



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 08:02:26.51 ID:8xQCoy5K0
無駄に長い廊下を歩かされ、縁側を通り、これまた無駄に広い大部屋に通された。
座布団を敷かれ、その上に座らされる。
渡辺と名乗った女の人は、お茶を持って来ますからと去ってしまった。

日本家屋の匂いがする。畳みの香り?

( ^ω^)「ショボンはどうしてると思うお?」

( ´_ゝ`)「さぁな」

( ^ω^)「さぁなって…つか、正座はできるのかお」

( ´_ゝ`)「胡坐はかけないと言ったが、正座を出来ないと言った覚えはないな」

渡辺さんが来るまで、雑談をして時間を潰す。
渡辺さん、流石に名字だよな。て事は、やっぱり小間使いでいいんだろか。



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 08:06:14.88 ID:8xQCoy5K0
『あれれぇ〜? 和菓子がないよ〜?』そんな言葉が奥から聞こえて少し不安になる。
とてとてと言う足音が僕らの近くで止まり、彰子が開いた。


从'ー'从「お待たせしました」

( ^ω^)「おうふ」

なんという玉露。
ほうじ茶が来ると思っていた僕は浅はかだった。

( ^ω^)「いただきますお」

ううむ、高級品は味が違う。
どの辺が違うのかよくわからないがとにかく違う。
隣の兄者は茶を飲まず、先に菓子に手をつけている。

( ^ω^)「…飲まないのかお?」

( ´_ゝ`)「猫舌」

そういやそうだっけ。



140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 08:07:41.45 ID:8xQCoy5K0
从'ー'从「…」

( ;^ω^)「…」

物を食ってるのをじっと見られるのは、何だか羞恥心がある。
じゃなくて、

( ^ω^)「あ、あの」

从'ー'从「はい」

( ;^ω^)「しっショボン君に会いに来たのですが」

声が裏返ってしまった。

从'ー'从「…こちらへどうぞ」

すっと渡辺さんが立ち上がる。
僕もつられて、玉露を手に持ったまま立ち上がってしまった。
慌てて盆の上に置く。



141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 08:10:44.27 ID:8xQCoy5K0

( ´_ゝ`)「俺はここで待ってるから」

( ;^ω^)「えっ」

立ち上がらない兄者に怪訝な瞳を向けていると、そんな言葉で返された。
ここまで来たのになんで。

( ´_ゝ`)「二人だと、何かと話しにくいだろ。お前のほうがショボンと仲いいし
      俺はここで待ってるから、内藤一人で行って来い。頼んだぞ」

( ;^ω^)「そんな、兄者も」

从'ー'从「それでは内藤さん、こちらへ」

僕の言葉が遮られた。
渡辺さんが敵にまわる。昨日の友は今日の敵。
そんなバカな。



142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/01(月) 08:14:01.17 ID:8xQCoy5K0



恋われたいようです ./1/
足して十になる物理/2/
夢の泡沫に添えて./3/
一定の連続存在 /4/
覚えておいて花 /5/
パン屋の邂逅 ./6/
謎の意味合い/7/
ある音楽家と/8/
魔法使いに./9/
しぃ家の怪/1/0

ぜろぶんのいち
『1』について

胡蝶の夢/1/
どんまい/2/
お部屋 /3/
消える/4/

家族 /5/        END.



戻る/6/