(*゚ー゚)恋われたいようです( ´_ゝ`)

30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:05:50.38 ID:kRUudhOM0


坂眉ショボン、心筋梗塞にて──

                    ──享年19歳。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:09:29.74 ID:kRUudhOM0



狂 ./7/



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:12:38.77 ID:kRUudhOM0
−ブーン−


ショボンが死んでから2週間が経った。
人生で初めて警察に事情聴取とか言うのを受けた。
僕が将来受けるのは職務質問だけだと思っていたが、人生そうでもないようだ。

ショボンは元々高血圧で、ストレスでそれが加速し心筋梗塞を起こしたとの事。
中の底辺寄りのこの大学が、こうもマスメディアに取り上げられるとは思ってなかった。

それは一重に、ショボンの家柄だろう。
それなりに大きい会社の社長をやっているショボンの父親が、ストレスの原因は大学にあるのでは?
と漏らしたらしい。

そんな事あるもんか、と胸を張って言えないのが辛い。

僕はこの1ヵ月で、色々と疲れた。
目立つのが嫌いなのに、ショボンの友人だからと言った理由で大学でマスゴミに追われる羽目になった。
流石に絶対の静寂が暗黙の了解である図書室では騒ぎはすまい、と思っていたが、
あのゴミめら、図書室まであの糞重たい機材を担いで押し入って来やがった。

てめぇら対人恐怖症をなめるんじゃねぇ、俺のゲロでもくらえ。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:16:04.32 ID:kRUudhOM0

ショボンの書いた楽譜は、作った曲は、マスメディアで盛大に報道された。
咲かなかった才能だとか、誰にも気付かれなかった天才だとか、踏まれた花だとか。
よくもまぁ、そんなに思いつくものだと僕は呆れた。

そしてその曲が勝手に評価され、一部では貶され、評論家が何かを言い。
プライバシーとか人権って何処にあるんだろうと、改めて思った。

死人に口なし。
まさにその通り。

ちなみに、そのショボンの作った曲を使った僕らの演劇は、大盛況で終わった。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:19:43.06 ID:kRUudhOM0
演劇が終わって、マスゴミの追撃も少しだけなりを潜めた頃に、教授に声をかけられた。
ああ、休み過ぎて単位ヤバイとか、そんなんかな、と思いながら足を運んだ。

こんこん

( ´ω`)「失礼しますお」

『ああ、どうぞどうぞ』

微妙にぬるいドアノブを握って開ける。
研究室にはいつもの4年生はおらず、兄者とぃょぅ教授が見えた。

( ´_ゝ`)ノ「先に来てたぞー」

(=゚ω゚)ノ「内藤君、そこの椅子にでも掛けてくれょぅ」

クラスターマシンのごおおと言う音で、この部屋での会話はいつもしにくい。
二人は慣れてるんだろうか、この騒音に。

(=゚ω゚)ノ「紅茶あるょぅ、そこのコーヒーメーカーに入ってるから飲めょぅ」

( ´ω`)「ありがとうございますお」

何故この人はコーヒーメーカーで紅茶を作るんだろう。
その事を教授に尋ねたらコーヒーメーカーでやると紅茶の葉がいい感じに蒸されてうんたらと語られた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:23:26.94 ID:kRUudhOM0
教授に切り出される前に、と僕は先に口を開く。

( ´ω`)「やっぱり、単位ですかお?」

(=゚ω゚)ノ「そうだったんだけれど…」

兄者を一瞥する。
彼は単位が危ないとかそういったのは耳にした事がないけど。

(=゚ω゚)ノ「…ここ最近、色々あったろぅ?」

ああ、なんだその事か。

( ´ω`)「すみませんお、もうちょっと強くなりますお」

甘えは許さない人だったはず。

(=゚ω゚)ノ「いや、ぃぃょぅ。休めょぅ」

はずなんだけど。



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:26:43.45 ID:kRUudhOM0
(=゚ω゚)ノ「出席については、大目に見てもらえるようこの辺の先生方には言っておいたょぅ
     みんな、同意してくれたょぅ。内藤君も流石君も、真面目な方に入るしね」

( ´_ゝ`)「ありがとうございます」

(=゚ω゚)ノ「いいんだょぅ。その代わり、レポートとか増えるけど、流石君に教えてもらうといいょぅ
     この週末に実家にでも帰って家族とゆっくり…」

言いかけて、教授はしまったと言う顔をした。
家族、家族か。

(=;゚ω゚)ノ「…ごめんだょぅ」

( ´ω`)「いいんですお」

立場が逆転した。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:29:47.58 ID:kRUudhOM0

(ヽ´ω`)

布団に潜って惰眠を貪る。出掛ける気にはなれない。
他人の視線とか、教授の言葉とか、見知らぬ人の気遣いとか、なんか疲れた。

寝過ぎて頭痛がするのを我慢して、もう一度夢の世界に行こうとした時だった。

(ヽ´ω`)「ん?」

携帯が光っている。正しくは、携帯のランプが点滅している。
僕はあの日から電話をサイレントモードにしている。
何処から調べたのか判らないが、マスゴミが執拗に電話を掛けて来たのだ。

最近はそれも落ち着き、教授からの電話とか、世話になってる病院からの電話とかが増えた。
僕は携帯を開いて見えた名前を確認すると、ほっと安心してそれに出た。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:32:59.35 ID:kRUudhOM0
『内藤さんですか?』

おいおい。

(;ヽ´ω`)「僕だってわかってるのに、それはないと思うお…」

『間違ってたら恥ずかしいじゃないか』

いつも通りの彼で安心した。
ネガティブ思考に陥った時、自分でショボンとはそんなに親しくないとか言っていたくせにと、
友人として恥ずべき事を考えたのを心の中で謝っておく。

『ブーン、今からそっちに行ってもいいか?』

(ヽ´ω`)「い、今から?」

部屋を見回す。
汚い。なんという不快の、腐海の森。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:36:29.18 ID:kRUudhOM0
今は駄目だ。今は。

(;ヽ´ω`)「今って、何処にいるんだお」

せめて片付ける時間が欲しい。
家を出ていないのなら、出発を遅らせれないかと考える。

『私メリーさん、今玄関にいるの』

僕は寝間着姿のまま玄関に走って向かう。
郵便受けを開けて、その向こうに見えた足を傘でどついた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:39:34.57 ID:kRUudhOM0

( ´_ゝ`)「酷い」

(ヽ^ω^)「やり過ぎたお」

玄関の前で脛を抱えて悶絶する彼を引き摺って、腐海の真ん中に放り捨てた。
兄者は部屋を見回して、これは酷いと呟く。

( ´_ゝ`)「臭い、汚い、気持ち悪いの3Kだな」

(ヽ^ω^)「反論の余地もないお」

それからカーテンを開けて窓を開けて換気をして、散らかったゴミをまとめて捨てた。
掃除機やはたきをかけている間、兄者は僕の代わりに布団の上に横になって惰眠を貪る。
兄者も、やっぱり疲れているんだろう。

あまり甘えてはいられないな、と思った。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:42:53.68 ID:kRUudhOM0
掃除も一段落して、二人で床に横になる。
久しぶりに日の光を見た気がする。

( ´_ゝ`)「お前、やつれたなー」

(ヽ^ω^)「そうかお?」

( ´_ゝ`)つ「酷いぞ、この辺なんか思いっ切り窪んで…おお伸びる」

つ<ヽ^ω^)「痛いお」


抓られたお返しに、僕は兄者にネックハンキングツリーからのネックハンキングボムで応えた。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:44:13.49 ID:kRUudhOM0
ネックハンキングツリー[Neck Hanging Tree]

首を両手で掴んで吊り上げる拷問技。

相手の正面から仕掛ける。
相手の首回りを自分の両手で鷲掴みにし、そのまま高々と吊り上げる。

パワーファイターが主に得意としている技。「人間絞首刑台」とも言われる。

ニコル・ボルコフがニック・ボックウィンクルと組み、
ジャイアント馬場&ジャンボ鶴田組のインターナショナルタッグ選手権に挑戦した試合では、
ボルコフが鶴田を片手で吊り上げるという荒業をみせ、観客を驚かせた。

ジャンボ鶴田も一時得意とし、菊地らを吊り上げる様は豪快無比であった。

“ハンギング”とは「吊り上げる」といった意味。“ツリー”は「木」。形に見立てている。


ネックハンギングボム[Neck Hanging Bomb]

ネックハンギングツリーで持ち上げ、開脚ジャンプして叩きつける。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:48:10.90 ID:kRUudhOM0

(ヽ^ω^)「そう言えば、しぃはいないのかお?」

僕はてっきり、二人して押し掛けて来たものだと思っていた。

( ´_ゝ`)「いや、いないよ。何で?」

(ヽ^ω^)「だって…」

兄者があんな悪戯思いつくとは思わない、と説明した。
しぃの入れ知恵だと兄者が言った。
畜生、いないからって油断するべきじゃないな。ここは。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:52:05.60 ID:kRUudhOM0
(ヽ^ω^)「それで、何の用事だお? 」

まさか、ただ掃除しに来たわけじゃあるまい。

( ´_ゝ`)「その事についてなんだが、朗報だ。お前の兄は生きてるぞ」

僕はその言葉に耳を疑った。

(ヽ^ω^)「兄者さん、いくら落ち込んでる僕を励まそうったって、そんな嘘はいけませんよ」

その逆なら、嘘でも死ぬ程落ち込めるが。

( ´_ゝ`)「いや、嘘じゃない。ここ最近連絡なかったのは、それを調べてたからなんだ」

しぃがいない理由はそれなんだ、と彼は続ける。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 02:57:26.19 ID:kRUudhOM0
(ヽ^ω^)「それで、それで」

兄ちゃん、生きてたんだ、兄ちゃん。

(ヽ^ω^)「何処にいるんだお?」

知らず知らずの内に、声が強くなってしまった。
ああ、ごめんなさい。でも、でも。

( ´_ゝ`)「その事なんだが…今は、ちょっと」

(ヽ^ω^)「ちょっと?」

( ´_ゝ`)「その、言えない。ごめんなブーン」

(;ヽ^ω^)「な」

期待させといて、それはないお。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:02:28.24 ID:kRUudhOM0
( ´_ゝ`)「ごめん、やっぱり早かった。早過ぎた。謝罪する。早計だった。
      お前が落ち込んでる所に、新しい情報が入ったから、せめてもと思って知らせたんだ」

(ヽ^ω^)「お、おお」

あまり聞かない兄者の早口に、少しだけ気圧される。

(ヽ^ω^)「…わかったお、それはわかったお。それで、いつ会えるんだお?」

生きてるのかわかったと言うのに、ずっと会えないのは嫌だ。
兄者は少し考えるようなそぶりを見せてから、話し出した。

( ´_ゝ`)「正直、これは伝えるかどうか迷ったんだけど…」

(ヽ^ω^)「いいお、話してくれお」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:08:24.23 ID:kRUudhOM0

お前の兄ちゃんは、孤児院で引き取られてから、海沿いの町に住んでたんだ。
あそこだよ、中学の時に社会見学で行った場所。伊須磨町。いすまちょう。

(ヽ^ω^)「思い出したお、確か兄者がうっかり海に落ちて…」

それは思い出さなくていい。
そこで、西川が引き取られた家ってのは漁師の家だったんだ。
いい家族だけど子供が出来なくてな、それで孤児院から子供を引き取ったらしい。
ちゃんと、自分の子供として育ててくれたそうだ。

(ヽ^ω^)「……」

今のお前くらいの日に、漁に連れて行ったんだとさ。
…その日、イージス艦と民間船の衝突事故があった。

(;ヽ^ω^)「え」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:12:50.28 ID:kRUudhOM0
(;ヽ^ω^)「それって、まさか」

かなり大きく報道されてたからお前も見てたよな?
ぶつかったの、お前の兄ちゃんが乗ってた船なんだ。
ああ、そんな顔するなよブーン。ちゃんと話すから。

(ヽ^ω^)「…」

お前の兄ちゃんは死んじゃいないよ。言ったろ、生きてるって。
ただ、やっぱりかなりショックだったのか、今精神病院で療養してるんだとさ。

(ヽ^ω^)「精神病院…?」

一応言っておくけど、記憶喪失だとかそんなんじゃないぞ。
なんて言ったらいいのかわからないけど、言いにくいけど、おかしく…なっちゃってさ。
だからそんな顔するなって、お前の事もしっかり覚えてたってさ。

(ヽ^ω^)「おかしくって…どんな?」

そこまでは知らない。言えない。解らない。
ただ、生きてるって。それだけは安心してくれ。
いつか、会いに行けるようになったら、しぃと俺とお前と、三人で会いに行こう。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:16:47.54 ID:kRUudhOM0

(ヽ^ω^)「そうだおね」

兄者の言葉に同意しながら、僕は伊須磨町にどうやって行くかを考えていた。

( ´_ゝ`)「今日は、お前の星座は外出するといい事があるんだってさ
      準備しろよ、しぃも玄関でもう待ってるってさ」

『遅いぞブーン!』

玄関から響いた声に、頭の中にあった伊須磨町までのルートが掻き消される。

(;ヽ^ω^)「結局、しぃちゃん来るんじゃないかお」

( ´_ゝ`)「ぶっちゃけ、しぃは寝坊してたから置いて来た」

なんじゃそりゃ。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:22:01.34 ID:kRUudhOM0
(*゚ー゚)「あんた寝坊したから私を迎えに来なかったのね」

( ´_ゝ`)「……聞こえてた?」

(#゚ー゚)「当ったり前でしょ! 郵便受けからだだ漏れだったわ! それより!
     あたし前に『男は女を待つもの』って聞かせてやったわよねぇ?」

( ´_ゝ`)「しぃ、ヤバイ。鈍器は駄目だ。置きなさい」

(#゚ー゚)「せめてメールの1通か留守電くらい入れやがれマザーファッカー!」

( ´_ゝ`)「だったらしぃも電話くらいしたらいんぐぉ」

しぃの金的が炸裂した。
見てるこっちも痛くなる。

(;ヽ^ω^)「ご愁傷様…いや、ご臨終ですお」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:27:11.30 ID:kRUudhOM0
(*゚ー゚)「さぁ、行くわよ内藤」

ぐぃっと僕の手が引っ張られる。

(;ヽ^ω^)「え、あの、兄者は?」

(#゚ー゚)「あんなの知らないわ」


(;*゚ー゚)「てゆーか、あんたやつれたわねぇ…」

(ヽ^ω^)「兄者にも言われたお」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:28:35.63 ID:kRUudhOM0
しぃは、暫く考えるそぶりを見せる。
何気にこの仕草が兄者と一緒だ。

(*゚ー゚)「じゃあ、調度いい機会だから、あんたVIP通りにあるクレクレ飯店の
    大食いメニューに挑戦しなさいよ。きっと元に戻るわ」

どうせなら、頬の陥没が戻るだけにしてほしい。

(;ヽ^ω^)「あれ時間内に食べ終わったら5000円貰えるけど、失敗したら逆に5000円を…」

(*゚ー゚)「それくらい私が払ってあげるわよ」


さ、行きましょと言って、しぃは薄水色のワンピースを翻した。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/04(木) 03:30:52.71 ID:kRUudhOM0



恋われたいようです ./1/
足して十になる物理/2/
夢の泡沫に添えて./3/
一定の連続存在 /4/
覚えておいて花 /5/
パン屋の邂逅 ./6/
謎の意味合い/7/
ある音楽家と/8/
魔法使いに./9/
しぃ家の怪/1/0

ぜろぶんのいち
『1』について

胡蝶の夢/1/
どんまい/2/
お部屋 /3/
消える/4/
家族 /5/
君を/6/

狂 ./7/         END.



戻る/8/