( ^ω^)奇人達は二十一グラムの旅をしますようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:45:00.79 ID:zCzmOdzU0





         私が、ほんの少しの間だけ、人間だった頃の、話である。            





4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:45:58.07 ID:zCzmOdzU0
―1― 四月一日 午前五時 内藤邸

ζ(/////ζ「あうあう! ブーンさっん・・・・・・」

午前五時ごろ。ブーンとデレの二人は、窓から薄らと朝陽が差し込む中、セックスをしている。
完全にアウトだ。ベッドが激しく軋んでいて、真上の部屋のツンに聞こえているかもしれない。
ことの始まりは、二人が珍しく早くに起きて、夜明けのコーヒーを楽しんでいたときである。

たわいない会話をしている中途で、彼が猫のような仕草で寝ぼけ眼を擦るデレに欲情したのだ。
そうして始まったのは、どう見てもセックスです。本当にありがとうございました。・・・危ない!

「うっ」と微かなうめき声を盛らして、ブーンはデレの身体の中へと、大量の子種を注ぎ込んだ。
しばしの間、彼は呆然となって硬直してから、両腕をゆっくりとデレの身体に回して抱き締めた。
二人は目を瞑って、呼吸を整える。落ち着いてきたところで、ブーンは怒張したそれを引き抜いた。

栓をしていたそれが引き抜かれたというからには、デレの膣口から白い液体が漏れ出すのである。
ブーンがティッシュを二枚ほど取り、その溢れる液体を拭き取ると、デレは口に手を当てて震えた。
清潔に拭き終えてから、ブーンはベッドに横になって彼女を抱き寄せた。二人は汗にまみれている。

( ^ω^)「ふう・・・・・・。朝から求めて、すまなかったお。君が美しいのがいけないのだお」

気障(きざ)に前髪をかき上げて、ブーンが笑う。デレは彼の厚い胸板を、つつっと指先でなぞる。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:48:25.18 ID:zCzmOdzU0
ζ(゚ー゚*ζ「もうっ! ダメって言ってますのに!」

これは、本音ではない。潜在的に、ブーンがサディストであるのに対し、デレはマゾヒストなのだ。
彼女はブーンに身体を求められると、まず「だあめ」と断る。その方が、興奮が高まるのである。
無意識に、“襲われる自分”を演じているのだ。ブーンも反抗されると、一層性交を求めたくなる。
だから、身体の相性は良い。夫婦が、または恋人同士が仲良くしていく上で、大切なことである。

( ^ω^)「それにしても、早く起きてしまったね!」

目覚まし時計のベルの音よりも早く起きるのは久しぶりだ。時計の針は、午前五時半を指している。
その上の方に掛けられているカレンダーで、ブーンは日付を確かめる。今日は四月一日である。
エイプリルフールだ。彼の国では、正午までなら人をからかうような害のない嘘を吐いても良い。

だがしかし、彼はイベントにはあまり興味を示さない人間なので、すっかりと忘れてしまっている。
彼にとって、行事などどうでも良いものなのだ。妹の誕生日と、結婚記念日さえ覚えていれば良い。
デレの頭を腕の上に乗せて、ブーンは天井を仰いだ。ツンに、情事の物音を聞かれていないだろうか。

(;^ω^)「ツンの部屋はこの真上だお。僕達の声を聞かれていないか、いつも気になるのだお。
      そろそろ別な部屋に移ろうかね。ここよりも広い部屋なら、他にあるし」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:50:51.58 ID:zCzmOdzU0
ζ(゚ー゚;ζ「そうですね。この前、ツンさんの手伝いで隣の部屋を掃除していたのですけど、
        ブーンさん、こちらの部屋でコップを割ったでしょう? 聞こえていましたの」

( ^ω^)「ふうむ」

内藤邸の外観は豪奢な佇まいだが、邸内は茂良邸のように防音性は高くないのかもしれない。
本当に部屋を引っ越そうか。でも、作業が面倒だなあ。ブーンは唸りながら、上半身を起こした。
デレが名残惜しそうに彼の腕を眺める。ブーンの腕が動き、目覚まし時計のスイッチを押した。

( ^ω^)「ククク・・・。今日は目覚まし時計に勝ったお。圧勝だ。ざまあみろ!」

カタカタと壊れたゼンマイ仕掛けの人形のごとく、ブーンが何度もスイッチを押す。オンオフ。
茂良時計製作社が造った精巧な目覚まし時計に、勝ったのだ。彼は二度目の絶頂に達しそうになる。

(*^ω^)「フヒ、フヒヒ! 気分が良すぎて、身体中から力がみなぎって来るお!
       僕はもう起きて、先に食堂に行っているお。デレはもう少し眠っていると良い」

ζ(>、<*ζ「あたしも一緒に行きますの。一人にしないでください!」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:54:34.76 ID:zCzmOdzU0
ブーンはベッドから下りて、着慣れたスーツに着替える。シワが一切ない、上質なブランド物である。
彼は仕事をしていないが、見栄のためにスーツを着ているのだ。私服は滅多に身に纏うことがない。

デレもスカートとドレスシャツを着て、ブレードが幅広の、チェーンの垂れた赤いワイドタイを結う。
スカートの右足部分には、一輪のアネモネがプリントされている。彼女にしては攻撃的な服装である。
アネモネはアドニスの生まれ変わりという。“君を愛す”。デレは花言葉で、選んだのかもしれない。

着替え終わった二人は、朝の挨拶代わりの軽い接吻を交わして、廊下に出たのだった。

(;^ω^)「う」

ζ(゚、゚*ζ「・・・・・・」

廊下では、誰にでも分かる肉が焼かれる匂いが漂っていた。ツンが肉を使った朝食を作っている。
何の料理を作っているのだ。運動をしたばかりのブーンは、げんなりして食堂に入ったのだった。

( ^ω^)ノ「グーテンモルゲン! 前世でも血を分けていた妹よ!」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:56:05.79 ID:zCzmOdzU0
手を振り上げて、ブーンは快活に挨拶をする。挨拶をしたからには、返事がないといけないのだが、
言葉は返って来なかった。何故なら、ツンが食堂に居なかったからである。彼女はキッチンに居る。
ブーンが奥にある扉を開くと、ツンがエプロンをして、フライパンを振るって調理をしていた。

( ^ω^)「おはよう。・・・何を作っているのだお」

ξ゚听)ξ「おはようございます。ステーキですわ」

(^ω^)

恐る恐るブーンが訊ねれば、ツンはそう答えたのだった。ステーキ。確かに肉を使った料理ではある。
もっと工夫を凝らした食べ物と思っていたのだが、“ザ・肉”といった具合である。彼は目を細める。

(;^ω^)「ツン。前から言いたかったのだけれど・・・」

ξ゚听)ξ「何ですか?」

( ^ω^)「いや」

ξ゚听)ξ「? 油が跳ねますので、お兄様は離れていた方が良いですよ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 09:59:22.84 ID:zCzmOdzU0
ブーンには、妹を注意する事など出来なかった。ツンは好意で料理をしてくれているのである。
「やれやれ」。いつもの調子で、ブーンが肩を竦めていると、デレがキッチンへと入って来た。
彼女はツンと挨拶を交わし、フライパンに乗っている肉塊を見、何とも表現のし難い顔をして、
キッチンの片隅に保存してあったダークラムの瓶を取った。この酒好きの娘は朝から飲む気である。

( ^ω^)「君も変わっているね。最近、体調が悪いのだろう。アルコールは控えたまえお」

今日は調子が良さそうだが、デレはこのところ不調のようで、しきりに身体をだるそうにしている。
関節痛も伴っているようで、動き辛くもしている。彼女はツンの隣で、ラム酒をグラスに注いだ。

ζ(゚ー゚*ζ「これ一杯だけー。ねえ、良いでしょう?」

許しを乞うデレだがしかし、返答を待たずに、ラム酒を水で割って飲み干したのであった。
呆れて言葉を失う。ブーンは口を一文字に結び、隣でやり取りを聞いていたツンはため息を漏らした。

ξ--)ξ「はいはい。気が散るので、お二人さんは食堂なりで待っていて下さいな」

ブーンとデレは、ツンの圧力にキッチンから追い出された。食堂にて料理の完成を待つことにする。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:02:35.33 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「いやあ。今日は清々しい天気だね。小鳥が歌っているようだお」

ブーンは窓を全開にして、椅子についた。早朝の冷たい微風が、食堂内を満たして行く。

ζ(゚ー゚*ζ「そうですの! 今日も街で聞き込み調査ですの!」

ミセリの事件のあと、ブーン達は佐藤と渡辺の写った写真を持って、街で本格的な調査をしている。
影には妙齢の女性と幼女に見えるのだろうけれど、一般人には二人の少女の姿に見えるのである。
誰かが二人を見ているはず。まだ情報は得られていないがしかし、ブーン達は諦めてはいない。

( ^ω^)「九時になったらね。それまでは、本でも読んでのんびりとしておこう」

ζ(゚ー゚*ζ「お部屋を移さないのですの? あたしがブーンさんのお手伝いをしますの!」

( ^ω^)「うう、ん・・・」

部屋を移動するには、多くの荷物を運ばねばならない。面倒な事が嫌いなブーンは、逡巡する。
テレビ、ベッド、書物、デスク、オーディオなどなど。きっと、一日では終わらないに違いない。
「その内にね」とブーンは言い、テーブルの上にある新聞紙を開いた。ツンが置いたものである。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:05:12.23 ID:zCzmOdzU0
大した事案は載っていない。政界の問題や、どこどこの街で殺傷事件が起こった程度の事柄だ。
ブーンは新聞紙を畳み、テーブルに放り投げて、デレとの会話で暇を潰していると扉が開いた。
ツンがトレイを持って食堂に入ってくる。勿論、トレイの上にはステーキを載せた食器がある。

食欲を湧かせる香りがする。だが、夕食時であればの話である。ブーンは思わず、口に手を当てた。
ブーン達の眼前に、油が溢れた危険物が置かれる。御丁寧にポテトやパセリが添えられている。
これを朝から食べなくてはならないの!? 彼はテーブルに両肘をついて、顔面を両手で覆った。

ξ゚听)ξ「あら? お兄様、どうしたのですの? 調子でもお悪いのですか?」

頗る調子は良い。しかし、ステーキを食せば胃の調子を崩すだろう。ブーンは無理矢理に笑った。

( ^ω^)「何でもないお。食べようではないかお。・・・食べてやろうではないかお!
       主、願わくはわれらを祝し云々」

なおざりに神に祈り、ブーンは破れかぶれにナイフでステーキを切り込んで、フォークを刺した。
ミディアムに焼かれた若干の赤みのある肉から、汁がぽたりと滴り落ちた。ブーンは畏怖嫌厭とする。
そうして、徐に口の中に入れる。一度だけ噛むと、朝からは重過ぎる味が口内に広がったのだった。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:06:42.67 ID:zCzmOdzU0
ξ゚听)ξ「お味は如何でしょうか。ビーフステーキなんて、久しぶりに作ったもので」

( ^ω^)「おいしいお」

乾いた声で、ブーンは嘘を吐いた。でも、大丈夫。彼は忘れているが、今日は四月一日なのだから。
隣で様子を眺めていたデレも、ステーキを食べる。・・・夕食だったら、お酒と合うんだけどなあ。

ζ(゚ー゚*ζ「おいしいですの」

ξ*゚听)ξ「そう! それは良かったわ。またいつか、作るわね」

ツンは手を合わせて喜び、朝食を摂り始めた。胃の構造が違うのか、彼女は平然と食べている。
何とか半分ほどを胃に収めたブーンは、ナイフとフォークを皿に置いて、紙ナプキンで口を拭いた。

( ^ω^)「部屋を移そうと考えているのだけれど、一階の隅の部屋は使えるかお?」

ξ゚听)ξ「お兄様、お部屋をお変えになるのですか? どうして」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:09:10.82 ID:zCzmOdzU0
少し驚いた様子でツンが問う。さすがに「自分達のセックスの音が聞こえているかもしれないから」、
とは言えまい。そのような理由は冷笑ものである。ブーンは腕を組み、極めてまともな理由を考える。

( ^ω^)「うううん。・・・今の部屋に飽いてしまってね。気分転換をしたいのだお」

ξ゚听)ξ「・・・ふうん。そうですか」

ツンは何やら複雑そうな表情で小首を傾いだ。そして、彼女は思い出したかのように顔を上げる。

ξ゚听)ξ「隅の部屋、お父様の私室ですわね。一応、毎日掃除はしてあるので使えますよ。
       ただ、邪魔になった物を少々置かせて貰っていて、運び出さなければなりませんが」

( ^ω^)「あそこは日当たりが良い部屋だお。クソ親父には勿体ない。僕が使うのだお」

ξ゚听)ξ「では、私が小物類を他の部屋へと移しておきましょう。一日で済むと思います」

( ^ω^)「いいや。全部、僕がやるお。ツンに任せるわけにはいかない」



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:11:57.07 ID:zCzmOdzU0
ブーンが断ると、ツンは唇を尖らせてつまらなさそうにした。ブーンは過保護が行き過ぎている。
まるで兄の玩具のよう。そう心の底から感じたツンは、フォークを握る手を休めて言い返した。

ξ゚听)ξ「いいえ。私がやります。子供ではないのですから、私の自由にさせてちょうだい
       お兄様はするべき事があるのでしょう? どうか、そちらに集中して下さいな」

(;^ω^)「・・・・・・」

有無を言わせないツンの口調に、ブーンは言いよどむ。内藤邸の頂点は結局のところ、妹である。
ツンに逆らえば、料理を作ってくれなくなるかもしれない。それどころか邸から放り出されるかも。
ブーンはぞっとして、寒天下で凍えている子犬の如く肩を震わせて、食事を再開したのであった。

ζ(゚、゚*ζ「ううん。ちょっと、お腹いっぱいですの」

不意にデレが呟いた。彼女はナイフとフォークを置いて、皿に載った料理と睨めっこをしている。
まあ、ツン以外の女性には、この料理は随分と厳しいだろう。腹を押さえるデレを、ツンが見遣る。

ξ゚听)ξ「朝からお酒なんて呑むからよ。・・・仕様が無いわね。貴女の分も、私が食べるわ」

(;^ω^)「えええ!?」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:14:14.09 ID:zCzmOdzU0
ツンの胃の中にはブラックホールがあって、別な場所へと内容物を放り出しているのではないか。
そう思えるくらい、彼女はほっそりとしていている。肥えているブーンは、羨ましくて堪らない。

ζ(゚、゚*ζ「ううう、ごめんなさいですの。この償いはいつかしますの」

ξ;゚听)ξ「大げさな。デレはシャワーでも浴びてきなさい」

ζ(>、<*ζ「そうしますの! 本当にごめんなさいですの!」

頭を何度も下げて、デレが自分の分のフォークとナイフ、コップを片付けて浴室へと去って行った。
何ヶ月振りかの、兄妹だけの食事風景となる。カチカチ、とフォーク類が食器に擦れる音が響く。
十数分後、ブーンは何とか凶悪な食べ物を平らげ、ぐったりとしながら膨らんだ腹を押さえる。

(;^ω^)「ふいい。肉は当分食べたくないお。今日の晩御飯は軽いものにしてくれお」

ξ゚听)ξ「まただらしのない格好をして。・・・・・・そう言えば、お兄様」

( ^ω^)「お」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:16:50.15 ID:zCzmOdzU0
ツンが身を乗り出した。誰も居ないのに、小声で話さなければいけない事柄があるみたいだ。
  _,
ξ゚听)ξ「デレに、お兄様の子供が出来たのではないでしょうか」

( ^ω^)「なんだって?」

突拍子もない言葉に、ブーンは背もたれに深く背中を埋めた。ツンの言葉が真実なら嬉しいのだが、
デレには妊娠している兆候がない。つわりをしていないし、柑橘類を欲しがっている様子もない。
ブーンがじろじろと訝しげな眼差しを送っていると、ツンは身体を引いて、弁舌さわやかに語る。

ξ゚听)ξ「お兄様。妊娠の兆候は、つわりや食の嗜好が変わるだけではないのです。
       自分の身体の中に新しい命が芽生えるのですから、当然様々な症状が現われます。
       精神が不安定になったり、一日中眠気があったり、頭痛、関節痛などなど・・・。
       最近、彼女は気だるそうにしている事が多いですね。もしかしたら、と思いまして」

( ^ω^)「ふうむ」

ブーンは腕を組む。確かに、ここのところの彼女は、日がな一日、憂鬱そうにしている事がある。
ツンの言う通り、妊娠している可能性はある。しかしそうなら、一つだけ重大な問題が発生する。
デレは、既にこの世を去っているというややこしい存在なので、病院へと通わせられないのだ。
人種の壁を超越して結婚したものの、大問題である。彼は、鹿爪らしい顔をして舌打ちをした。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:19:50.25 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「・・・もし君の言葉通りだとして、病院はどうすれば良いのかねえ」

ξ゚听)ξ「お兄様」

( ^ω^)「はい」

ツンが両手をテーブルにつけて腰を上げた。衝撃で食器類が揺れる。彼女は左手の人差し指を立てる。

ξ゚听)ξb「この世界には、約七十億人もの人間が住んでいるのです。分かりますか?」

ツンは腕を下ろし、くるりと横に回って椅子から離れ、テーブルの周囲をテクテクと歩き始めた。

ξ--)ξ「という事はですね。影も相当な数が居るわけです。彼らは人間によって作られた・・・」

ブーンの席の後ろまで来ると、ツンは天井の片隅へと、カメラが在るものと仮定して指を差した。

ξ゚听)ξ9m「アナタが通勤の途中、いつも電車で見かける人間は、本当に人間なのでしょうか?
         街中の雑踏で、アナタとすれ違う人間は、真実に人間なのでしょうか!?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:23:45.53 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)(誰に言ってるのだお。ツンはたまにおかしくなる・・・)

ξ゚听)ξ9m「アナタの友人が影であったり、幽霊であったり、或いは宇宙人だったりするのです!」

腕をそっと下ろして、ツンは足を動かせる。彼女もブーンに似ているところがあり、奇人なのだ。
彼女は自身が話したかった事を粗方言い終えると、元の席についた。テーブルを一周したのである。
架空の人間を怖がらせたかったのだろうか。君は一体何が言いたいのか、とブーンは問いかける。

( ^ω^)「つまり、どういうことだお?」

ブーンの周りは、遠回しな物言いをする人間ばかりだ。「つまり」が、彼の口癖になりつつある。

ξ゚听)ξ「在世中に、医師をしていた影が居るかもしれないのです」

( ^ω^)「なるほど」

それならば、事情を察してくれそうだ。医療器具などは、上手くやれば整えられるかもしれない。
はたして、影が正直に手伝ってくれるかは疑問を覚えるが、ツンの言葉に頼る他ないのである。
令嬢、学生、奥方、使用人の影が居た。元医者の影の一人や二人、この世に居ても良いはずだ。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:26:15.13 ID:zCzmOdzU0
ξ--)ξ「まあ、影は人間の子供を宿さないと思いますけれどね。単なる素人目の予想ですよ」

( ^ω^)「しかし、頭に入れておくべきことだお。僕は女の子が欲しいなあ」

ξ゚听)ξ「名前は?」

( ^ω^)「ふっふ。秘密だお。僕とデレの子供だお。さぞや美人に育つだろうね!」

ξ゚听)ξ。o0(  ζ(^ω^*ζ  )

その後、ツンはほぼ二人前のステーキを食べ終え、洋服に着替えて件の部屋の整理を始めたのだった。
ブーンが手伝いを願い出たのだが、彼女は頑なに断った。もう、一人で何でも出来る年齢なのです。

二階の書斎にて、ブーンとデレの二人は椅子に座って、街に出かける時間になるまで暇を潰している。
書斎は他の部屋に比べて狭い。主に、兄妹の母親が読んでいた書物が、数架の書架に収められている。
ブーンが活字を追っていると、ふとデレの腹が視界に入った。その中には、胎児が居るかもしれない。

( ^ω^)「・・・デレ。今日は、気分が優れているかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「え? ええ。大丈夫ですの。流石に、朝食は無理でしたけれど」

( ^ω^)「ツンは一体、何を考えて朝食を作っているのだろうね!」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:28:41.51 ID:zCzmOdzU0
ξ゚听)ξ「私がどうかなさいましたか?」

(;^ω^)「!」

ζ(゚、゚;ζ「・・・・・・」

ツンが扉のところに立っていた。手には、本がぎゅうぎゅうに詰められた紙袋が握られている。
もしや、もしや、今の話を聞かれたのか・・・? ブーンの手から本が抜け落ちて、床へと落ちた。
彼女は紙袋を引き摺るように持ち、本棚の前で両膝を曲げて、空いている隙間に本を並べ始めた。

(;^ω^)「いや。君の美しさについて、デレに語っていたのだお」

ξ--)ξ「そうですか。またお兄様が、私の事を愚痴っているのかと思いました」

( ^ω^)「まっさかあ」

鋭い。女性の勘を舐めて掛かってはならない。ブーンは床に落ちた本を拾い上げて、埃を掃った。
そして、本をデスクの上に置いて、整理整頓をしているツンの姿を見遣る。妹はいつの日も可愛い。
灰色を基調としたロングスカートに純白のワイシャツ。胸には、赤いボヘミアンタイが結ばれている。
彼女は落ち着いたファッションをしている。裸眼では掃除に支障をきたすのか、眼鏡を掛けている。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:32:25.35 ID:zCzmOdzU0
ξ゚听)ξ「もう八時なのですね」

ツンは腰を右手でとんとんと叩きながら、掛け時計に顔を向けた。午前八時を少し過ぎたころである。
ついさっき、朝食を終えたばかりのように感じる。ツンは背筋を伸ばしてから、再び作業を始める。
そうしていると、インターホンの音が邸内に鳴り響いた。珍しく、内藤邸に客人が訪れたのだった。

ξ゚听)ξ「こんな時間に誰かしら。ちょっと見て来ますわね」

ツンが応対のために一階へと降りていった。ブーンとデレは顔を見合わせ、本を置いて彼女を追う。
父親が邸に居たころの内藤家は、仕事の関係者や親類がよく姿を見せていたが、現在は稀有である。
会社の跡継ぎならともかく、遊び呆けているただの道楽息子に、おべっかを使う人間など居ないのだ。

ツンを訪ねて来る人間も少ない。彼女の学生時代の友人達は皆、小さな街を離れて暮らしている。
よって、内藤邸を来訪する可能性がある人間は、ショボンくらいしか居ない。ブーンは彼だと思った。
ショボンとは諍いがあったものの、変わらずに付き合いを続けている。二人は親友同士なのだから。

ξ゚听)ξ「あら。モナーさんじゃないですか。お久しぶりです」

( ´∀`)「これはこれは、お嬢様。お久しぶりですモナー」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:35:58.95 ID:zCzmOdzU0
来訪者は老境に入った男性だった。男性の名前はモナーといって、内藤家に仕えていた人物である。
門の外に立っているモナーの体格は若干肥えてはいるが、がっしりとしている。老人には見えない。
ツンは門を開き、車に乗り込んだ彼を邸の庭へと誘導する。ガレージに停めると、モナーが出て来た。

彼は、ジーンズにシャツとカジュアルな服装をしている。歳を取ってもまだまだ現役といった気概だ。
彼には口調に多少の訛りがあって、語尾がおかしな発音になる。それは“モナ”という風に聞こえる。

( ^ω^)ノ「やあやあ。元気にしていたかね」

車の鍵を閉めるモナーに、ブーンが偉そうに挨拶をした。内藤家の気品を見せ付けているのである。
モナーは鍵をポケットに仕舞い、深々と頭を下げた。この邸で従事していた当時の癖が抜けていない。

( ´∀`)「お坊ちゃん。ご無沙汰しておりましたモナー」

ブーンがモナーと会うのは十年振りくらいである。再会の言葉を交わし、ブーンは邸に招き入れた。
そして玄関ホールに足を踏み入れたモナーは、懐旧の情にかられて、しばしその場に立ち尽くした。
ブーンはモナーの肩に右手を置いて、優しい口調で語りかける。彼はモナーを気に入っていたのだ。

( ^ω^)「懐かしいかお。今も昔とそんなに変わっていない。両親や使用人が居ないだけだお。
       おっと、二つだけ大きく変わったことがある。僕やツンが大人になったことと――」

( ´∀`)「・・・事と?」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:37:43.77 ID:zCzmOdzU0
モナーが問うと、ブーンは彼の肩から手を離して、傍ら立っているデレの背中に腕を回した。

( ^ω^)「結婚したのだお。こちらが僕の家内であるデレだお」

ζ(゚ー゚*ζ「初めましてですの!」

(;´∀`)「なん・・・・・・だと・・・・・・。この街は、もうすぐ壊滅してしまうのかもしれない!」

いつかのジョルジュと似たような反応を示し、モナーはポケットからハンカチーフを取り出して、
頬に伝う汗を拭う。彼は緊張すると発汗をする。優秀な使用人だったが、そこだけは欠点であった。
重要な取り引き先の人間の前で、ハンカチで汗を拭うモナーを、兄妹の父親が嗜める事がままあった。

(;´∀`)「いやあ。驚天動地ですモナ。探偵事務所を開かれたのは知っていましたが」

( ^ω^)「おや。街の広告を見てくれたのかお」

( ´∀`)「その通りです。その件もあって、お邸に来させて貰ったのですモナ」

( ^ω^)「お?」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:41:30.68 ID:zCzmOdzU0
内藤私立探偵事務所の広告にも関係して邸に寄らせて貰った、とはどういう了見なのだろうか。
ブーンが首を傾げていると、ツンがモナーの前に立ってカーテシー(スカートの裾を両手で摘まみ、
腰を曲げて頭を深々と下げる、女性のみが行う挨拶)をして、一階奥の応接間へと通そうとする。

ξ゚听)ξ「ここで立ち話も何ですので、応接間の方へどうぞ。ささ。こちらへ」

ブーン達はツンに先導されて、東側の廊下を歩く。モナーは懐かしげにきょろきょろと見回していた。
応接間に入ると、ブーンは部屋の奥の方のソファに座り、モナーは彼の前の肘掛け椅子に腰掛けた。
ツンはお茶菓子を用意しに、キッチンへと行った。デレは困った表情で、扉のところで佇んでいる。

( ^ω^)「デレ。僕の隣に座りたまえお」

手招きをされたデレはブーンに寄り、畏まってモナーに一礼してからソファに腰を下ろした。
モナーがデレを一瞥する。由緒のある家柄である内藤家に、嫁いだ娘はどのようなものなのか。
長い使用人歴で培われた眼光が、密かに鋭く光る。青い瞳の女性は、良家の出とはとても思えない。

( ^ω^)「相変わらず、良い眼をしているね! デレを品定めしているのだろう」

(;´∀`)「いえいえ。そのような筈は御座いませんモナー」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:43:43.39 ID:zCzmOdzU0
モナーのこめかみに一筋の汗が流れる。分かり易い男だ。息を漏らして、ブーンが紹介をする。

( ^ω^)「確かに、デレは良家の出身ではないけれど、気配りの出来る優美な人間だお。
       ・・・モナーには分かると思うが、僕と彼女が結婚したことを父親に報告していない。
       絶対に反対するからね。僕は直隠しにしながら、彼女とやって行こうと思うのだお」

( ´∀`)「僕は密告したりしませんモナ。お坊ちゃんの人生には口出ししませんモナー。
       デレさん――いいや。奥様。失礼な考えを働かせて申し訳御座いませんモナ」

ζ(>、<;ζ「とんでもありませんの! これからよろしくお願いいたしますの!」

腰を浮かせて非礼を詫びようとするとモナーを、デレが慌てて両手を伸ばして制した。
物分りが良く、情のある老人だ。ブーンは彼のそういうところが、昔からいたく気に入っていた。
場が和んで来ると、ツンが応接間に姿を見せた。コーヒーとクッキーを載せたトレイを持っている。
ブーン達の前に配ると、ツンはモナーの隣に座った。仕事の話ではないので、この形で良いだろう。

ξ゚听)ξ「本当にお久しぶりですわね。モレナちゃん。もう大きくなったのではないですか?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:45:18.70 ID:zCzmOdzU0
モレナとはモナーの孫である。訊ねられたモナーは、口元を綻ばせてツンに顔を向ける。

( ´∀`)「十歳ですモナー。そろそろ邪魔者扱いされるようになって来ましたモナ」

「ははは」、とモナーが苦笑いをする。成長をするにつれ、孫が自分の側から離れて行くのである。
性格によっては違うかもしれないが、まあ当然の事だ。それを熟知しているブーンは偉そうにする。

( ^ω^)「ふん。子供というものは、親元を離れるものだお。そうして、成長していくのだ」

ξ゚听)ξ(どの口が言うのだか)

それから、談笑が始まった。現在の状況、過去の思い出などを語ったのだった。時間が過ぎて行く。
午前十時半。妻がいかに賢いかを語っていると、ふとブーンは思い返した。モナーの用事である。
自身の探偵業に関係して邸に来たと行っていた。彼は言葉を一旦止めて、ソファに深く腰を埋める。

( ^ω^)「そう言えば、モナー。君は僕の探偵事務所に興味があるようだったね」

( ´∀`)「おっと。僕がここに寄らせて頂いたのは、お二人の顔を見たかったのは勿論ですが、
       お坊ちゃんに頼みたい事があったのですモナ。率直に申し上げれば依頼ですモナー」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:47:00.92 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「お!」

ζ(゚ー゚*ζ「御依頼ですの」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

ブーンとデレは揃って両手を合わせた。ツンは、何か言いたそうな顔付きでモナーの横顔を見ている。
モナーは、探偵を始めたブーンの成功と成長を、影ながら願っているのである。だから、依頼をした。
街で張り紙を見て考え付いたのだろう。もしかすると、彼が依頼する用件は作り物なのかもしれない。
長い間、自身の面倒を見てくれていて、彼の純粋な心意気を知っているツンは、依頼を断ろうとする。

ξ゚听)ξ「モナーさん」

( ´∀`)「まあまあ。この街は長閑が過ぎるモナ。探偵は、お坊ちゃん以外には居ないのです」

呼びかけるツンをやんわりとなだめて、モナーは話を続けた。ブーンは嬉しくなって、身を乗り出す。

( ^ω^)「いいね! 素晴らしい! 僕が解決してやる。申してみたまえお」

( ´∀`)「はいモナー。実は、孫が可愛がっている犬が、居なくなってしまったのですモナ」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:48:27.82 ID:zCzmOdzU0
ξ゚听)ξ(・・・・・・)

「あ。兄は憤慨するな」、とツンは思った。行方不明の犬探しだなんて、兄の誇りが許さないだろう。
賢士なモナーにしては練られていない考えだ。兄が身体を引いた。そうそう。そうして、怒るのだ。

( ^ω^)「その犬を探せと言うのだね。いいお。僕が見付け出してやろう」

ξ゚听)ξ「・・・・・・お兄様?」

意外にも、ブーンはすんなりと依頼を受け入れた。肩透かしを喰らった気分で、ツンは目を丸くした。
ブーンは彼女の気持ちを察して、人差し指を立てる。不遜な兄貴なりに、言いたい事があるのです。

( ^ω^)b「そう驚くものではないお。モナーは、邸の使用人として立派に働いていてくれた。
       恩返しをするのだお。僕は彼の頼みを断ってしまうほど、狭量ではないのだお」

「それと」。呟き、ブーンは指を下ろして、モナーを意志の強固な眼差しで真っ直ぐに見据えた。

( ^ω^)「彼の孫がかわいそうだろう。僕も犬を飼っているから、気持ちはよく分かる。
       だから、その依頼――イエスだね!」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:49:54.51 ID:zCzmOdzU0
ツンはごくりと唾を飲み込んだ。兄に幽霊でもとり憑いて、それが喋らせたのか。・・・だとすれば、
なんて素敵な幽霊なのでしょう! このまま憑いていてください。ツンは自分の耳を疑ったのだった。
モナーも同じように感じて、汗を流している。不思議な空気の中、モナーは汗をハンカチで拭った。

(;´∀`)「いやはや。お坊ちゃんは立派に成長されたモナ。不肖ながらモナーは感動しました」

( ^ω^)「お世辞はよせお。それよりも、どうして孫の犬が居なくなったのか説明したまえお」

( ´∀`)「はい。昨日、僕は孫を連れて、広場で犬の散歩をしていたのですモナー。
      途中で孫がリードを持ちたがりまして渡したのですモナー。それで」

( ^ω^)「手からリードがすり抜けてしまった、と」

( ´∀`)「そうです。一日経っても帰って来ませんでして。あちこちを一匹で歩けるような、
      度胸のある犬では無いのですけれどモナー。孫は心配していますモナー」

( ^ω^)「なるほど。ところで、犬の名前と犬種は何だお?」

( ´∀`)「名前はビーグルで、犬種はビーグルですモナ」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:51:00.33 ID:zCzmOdzU0
ビーグル犬にビーグルと名付けるとは面白い。身体が小さい犬種なので、遠くまで歩けるとは思えない。
一日しか経っていないのならば、まだ街に居る可能性が高い。ただ、元々が猟犬なので体力は計れない。
出来るだけ速やかに見付けなければならないだろう。ふとブーンは妙案が閃き、指を打ち鳴らした。

( ^ω^)「ビーグルが使っていた玩具などはあるかお。僕の飼い犬に臭いを辿らせよう」

( ´∀`)「ございます。ですが、僕の家まで行かなくてはなりませんモナー」

( ^ω^)「よし。早速行こう! ・・・と、その前に、僕は別件の調査をしているのだけれど」

( ´∀`)「モナ?」

ブーンはポケットから一枚の写真を取り出した。彼は、佐藤と渡辺の行方を追っているのである。
モナーにも訊いておくべきだ。ブーンが写真を差し出すと、モナーは小首を傾げて手に持った。

( ^ω^)「僕達はその少女らを探しているのだが、モナーは見覚えはないかお?」

( ´∀`)「さて。見かけた事はありませんモナー。しかし――」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:53:01.11 ID:zCzmOdzU0
区切って、モナーが写真を見つめる。彼の視線は無表情な少女、佐藤へと一点に注がれている。

( ´∀`)「この左側の少女は、お坊ちゃんのお母上のお若かった頃に、似ていますモナー」

( ^ω^)「お母さんに?」

写真を返して貰い、ブーンは佐藤を見る。確かに母親は、佐藤のように口数の少ない人間だったが・・・。
若かった時分の顔を知らない。アルバムでも残ってはいないものか、とブーンは眼球をツンに向けた。

( ^ω^)「ツン。お母さんの若いころの写真はないのかお?」

ξ゚听)ξ「さあ。私は知りませんわ。邸中を探してみればあるかもしれませんが」

( ^ω^)「ふうむ」

気になるがしかし、佐藤が母親なはずはない。彼女はブーンに過酷な日々を送るきっかけを与えた。
母親は優しかった。自分を罠にかけるような真似はしない。気持ちを切り替えて、彼は立ち上がる。



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:53:54.47 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「まあ、犬探しを優先しよう。ツン。僕とデレは、これから街へと下りるお」

ξ゚听)ξ「お待ち下さい。私も中途まで行きますわ。食材が尽きかけております」

( ^ω^)「じゃあ、僕達が犬を探している間、モナーに車を運転させて手伝って貰うと良い」

( ´∀`)「畏まりましたモナー。久しぶりに使用人の仕事ですモナー」

ξ;゚听)ξ「すみません。モナーさん。相変わらず、浅はかな思考のみは働く兄でして」

( ^ω^)「僕は浅はかではない。実に思慮が深く、誰よりも学のある人間なのだお」

ξ゚听)ξ アア、ソウデスカ

話がまとまった。廊下の日溜まりで眠っていたクドリャフカを抱き上げて、ブーンは車に乗り込んだ。
飼い犬の優れた嗅覚を頼りに、ビーグルを探すのである。聡い方法に、車内で彼は終始笑顔だった。



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