( ^ω^)奇人達は二十一グラムの旅をしますようです

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:55:32.86 ID:zCzmOdzU0
―2― 同日 午前十時 ビップ

モナー邸の庭で、ブーンはビーグルが気に入っている玩具を入れた袋を、モナーから手渡された。
カラーボールに骨を模した玩具。それらは使い込まれている。充分に臭いが染み付いているだろう。
犬の玩具など触りたくはないが、捜査が進まない。彼は一つを手に握って、飼い犬の鼻の先に遣った。

(U^ω^) わんわんお。 (きったねえ)

クドリャフカは姐御肌という無駄な設定がある。だが、どうでも良い。嫌々、彼女は臭いを嗅いだ。
主人を喜ばせる為に尻尾を振ってみると、彼女の思惑通り、ブーンはしたりしたりと笑顔になった。

( ^ω^)「おっおっお。我が家の美犬は、ビーグルの臭いを嗅ぎ取ったようだお!」

(U^ω^) わんわんお。 (なんて扱い易い人間)

( ´∀`)「恐縮ですが、よろしくお願いしますモナー。ささやかなお礼も致しますゆえ」

( ^ω^)「なあに。モナーからの依頼ならば、何もいらないお。吉報を待っていたまえ」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:57:32.17 ID:zCzmOdzU0
ブーンとデレはモナー邸を出た。ツンはモナーの車に乗り込み、道路の遠くへと去って行った。
買い物。今晩の夕食を期待しておこう。ブーンはリードを持って、クドリャフカの動きに任せて歩く。
二人は街の広場へと続く大通りを往く。春のうららかな陽気に押されてか、行き交う人々の数は多い。

この街のどこかに、佐藤と渡辺が居るはずである。二月のミセリの事件から二ヶ月が経っている。
その間ブーン達は、街の人々に二人の少女が写った写真を見せるなど、積極的に調査をして来た。
未だに何一つ情報が得られていないが、諦めるわけにはいかない。佐藤達は邪心を胸に抱いている。

以前にデレは、少女達は現在と過去を混ぜようしている可能性があると言った。現在と過去の融合。
現実に起こればどうなるか。想像が難しい。ただ漠然とはしているが、極めて危険な事に違いない。

ζ(゚ー゚*ζ「今日は暖かいですの。ついつい、歌を口ずさみたくなりますの」

ブーンと肩を並べているデレが言った。四月一日の今日は、太陽の光と風が丁度良い具合である。
長く寂しい冬が終わり、生命の息吹を感じさせる春が訪れた。花壇のチュウリップが謳っている。
昨晩降った雨で出来た水溜りが、光線を反射させて白く輝いている。いたって平和な光景だ。

( ^ω^)「デレは、客の前ではあまり喋らないね。僕の妻なのだからもっと喋っても良いのだお」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 10:59:20.96 ID:zCzmOdzU0
デレはモナーの前では無言になっていた。これは彼女が、空気を読みすぎるきらいがある所以である。
ツンと会話をしているときも、彼女は慎重に言葉を選んでいる。場合によっては、気が小さくなる。

ζ(>、<*ζ「大事なお客さまの前では粗相をしてはなりませんの!
        ほら。あたしって、落ち着きがないでしょう」

( ^ω^)「まあ、別に構わないのだけどね。デレの好きなようにやってくれお」

ζ(゚、゚*ζ「ううう、気を付けるようにしますの」

二人は広場に到着する。時計塔の大時計を見れば、十時半になろうとしていた。もうすぐ正午である。
犬探しは長引きそうなので、早めに昼食を摂ろうか。ブーンは考えながら赤茶けた煉瓦を踏みしめる。
やがて、二人が時計塔の前まで来る。クドリャフカは道に鼻先をつけて、懸命に臭いを嗅いでいる。

ζ(゚ー゚*ζ「あ! ヒートさんですの」

デレが声を上げた。ブーンが彼女の視線を追うと、ベンチの上で寝そべっているヒートの姿があった。
お気楽に熟睡中のヒートは、キャスケットで顔全体を覆い隠して、分厚い書物を枕代わりにしている。
赤いチェーン付きのパンツにブラウスの裾を入れている。パンツにはサスペンダーを装着している。
とても個性的かつ攻撃的な服装。ブーンが遠くから見ても、彼女のファッションは異常だと分かった。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:00:53.45 ID:zCzmOdzU0
あのやかましい声を聞きたくないので起こすまいと彼は思ったが、デレがヒートへと寄ってしまった。
彼女がヒートの肩を揺する。すると、ヒートはキャスケットを取り去ってゆっくりと身体を起こした。

ノハっ-)「・・・んあ? 誰だよ。人が陽気な気分に酔いしれて、気持ち良く眠っていたのに!」

赤い眼に、見知った男女と不細工な犬が映る。もう会いたくないと思っていた人物だったので、
ヒートは露骨に嫌そうな表情を浮かべた。彼女は赫焉(かくえん)たる髪をかき上げて、顔を上げる。

ノパ听)「いつかの馬鹿夫婦か。何の用だ? 仮に用があったとしても、取り合わんがな!」

ぷい、とヒートはそっぽを向いた。相手にしないと言われたところで、ブーン達は彼女に用事はない。
ブーンがデレの手を強引に引っ張ってこの場を去ろうとすると、ヒートは顔を戻して呼び止めた。

ノハ;゚听)「おおい! 何もないのかよ! 本当は何かあるんだろう!? 言ってみなよ!」

つまり、ヒートは話し相手が欲しいのだった。一日中、広場で一人で居るのだから仕方がない。
ブーンが足を止めるがしかし、彼女に話すべき事がない。無理矢理に話題を捻り出さないとならない。
このまま放っておいても良いが、ヒートが会話をしたそうにこちらを見ている。会話をしますか?
[>はい。 いいえ。 ブーンは再び彼女の側へと戻り、現在調査をしている依頼の話を切り出した。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:02:18.10 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「僕達は犬を探しているのだけれど、ヒートは見なかったかお?」

ノパ听)「犬? どんな?」

( ^ω^)「ああ。写真を借りれば良かったかな。ビーグル犬だお」

ノパ听)「ビーグル。多分、さっき見かけたやつかなあ!」

ζ(゚ー゚*ζ「知っているのですの?」

ノパ听)「リードを地面に引き摺りながら歩いていたから、何だかおかしいなと思ったんだよ。
      あの犬ならあっちへ行ったぞ。三十分ほど前の事だから、追いかければ間に合うかもね」

ヒートは指を差した。その示す方向は、海辺へと続く道へと向けられている。思わぬ収穫であった。
よくよく考えれば、ビーグルはリードを付けたままだ。目立って、他の人間も見ているかもしれない。
早くに発見が出来そうだ。意気衝天として、ブーンはヒートの隣に座った。彼女の横顔は美形である。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:03:44.43 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「素晴らしい! ヒートは特別に、僕とお近付きになることを許してやるお」

ノパ听)(変な奴!)

気持ちの悪い青年に隣へと座られてヒートは、身体を引き気味にした。何が「許してやるお」だ。
ヒートが書物の表紙をピアノの鍵盤を弾くように両手の指で叩いていると、ブーンが腰を上げた。

( ^ω^)「もう少し君と話してても良いのだけれどね。僕達にはやるべきことがある」

ノパ听)ノ~~「そうかい。そうかい。じゃあ、さっさと行ってくれ。アタシは小説を書くから」

ひらひらと、ヒートは手を振った。ブーンは手を上げて立ち去ろうとするが、彼はふと振り向いた。

( ^ω^)「君が以前に言っていた親子の影。最近、その二人を見かけなかったかお?」

ノパ听)「見てないね! 出会ったら、この懐中時計を返すつもりなんだけど。いらないし」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:05:20.41 ID:zCzmOdzU0
ヒートは胸の辺りで輝く懐中時計を握り締めた。人間の活動を止めてしまう、恐ろしい代物である。

( ^ω^)「邪念がなければ、それはただの懐中時計だお。返却せずに使っておくと良い」

ブーンは片手を上げて、再び足を動かせる。しかし、彼はしつこい事に、もう一度振り返った。

( ^ω^)「ねえ」

ノハ;゚听)「さっさと犬を探しに行けよ! しつこいなあ! ・・・・・・何だ?」

( ^ω^)「君の、いつかの私小説は進んでいるかお?」

ヒートは私小説を書いている。それを満足に書ききるまで、彼女は現世を去らないつもりである。
その小説は、一度ブーンにとんでもない加筆をされており、続きの執筆が極めて困難になっている。
訊ねられたヒートは一瞬間だけ微笑み、それから握り拳を作って書物を叩き付けた。彼女は叫ぶ。

ノハ#゚听)「死ね!!」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:06:56.67 ID:zCzmOdzU0
二人は海岸沿いまでやって来た。海の緩急は穏やかで、海鳥が群を成して潮風に揺られている。
今日はクーが釣りをしていそうだ。前に彼女が釣りをしていた地点まで来て確認すると、やはり居た。
クーがガダバウトチェアに腰を下ろして釣り糸を垂らしている。ヒートに続き、彼女の服装も凄い。
赤と白のゴシックドレスである。側頭部の黒々とした髪には、赤色の紐が長いリボンが結われている。

彼女の背後にはドクオが立っている。
ドクオは、まるで彼女のたわわに実った乳房を揉まんとして、両手をわきわきとさせている。危ない。

(;^ω^)「おいおいおいおいおい! ドクオ! 貴様、何をしようとしているのだお!?」

慌ててブーンが防波堤越しに叫ぶと、ドクオは手を引っ込めて、クーが振り向く前にシートに座った。
無味乾燥な顔付きをしている癖に恐ろしい男だ。思うブーンに先んじて、デレが防波堤を乗り越えた。

ζ(゚ー゚*ζ「クーさん。お久しぶりですのー」

川 ゚ -゚)「お前達は、あれか。どうしても静かな登場をしたくないらしいな。魚が逃げるだろう。
     良いか。今後、私に近付く時は足音を立てずに来たまえ。それでも、私は気付くから」

と仰られるクーだが、魚を釣った事は一度もない。海の端っこで泳ぐ酔狂な魚は、稀有な存在である。
極小の釣り針にかかるほど成長をした魚は、大海を知ったものだけだ。どこか、社会にも似ている。
ありとあらゆる美味しい話には注意をしましょう。デレはクーの横に立って、澄んだ海面を覗いた。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:08:43.93 ID:zCzmOdzU0
ζ(゚ー゚*ζ「わあ! 綺麗! あたしの顔がはっきりと映っていますの!」

海面には自分とクーの姿が映っている。・・・彼女は、ドクオが胸を狙っていた事を知っていたはずだ。
ぎりぎりで止める気だったのだろうか。それとも、沈黙したまま彼に身を任せる気だったのだろうか。
他人の恋にお節介を焼きたがるデレは、後者の脳内の意見に勝手に納得をして、その場で屈み込んだ。

ζ(゚ー゚*ζ「クーさんは、ドクオさんと仲良くしていますの?」

間に敷かれた一線を越えようとする恋! なんて素晴らしいのでしょう! デレの胸が暖かくなる。
ついでに首より上の部分もあたたかい。クーは彼女には一瞥もくれずに、その特有の冷淡な声を出す。

川 ゚ -゚)「・・・仲良く? どうして、ただの下僕と手を取り合ってはしゃがねばならないのだ。
     ドクオは単なる便利屋だよ。私の為に齷齪(あくせく)と働き、永久の生を消費すれば良い」

('A`)「その通りです。俺は、クー様の意のままに扱われれば良いのです。ロボットなのです」

川 ゚ -゚)「よく分かっているね。いやはや。私に仕えられる君は、他には類を見ない幸せ者だよ」

クーのこういうところがブーンと似ている。二人が付き合えば、お似合いなのだろうが無理な話だ。
デレの存在がたまに疎ましくなる彼女は、気色ばみ行く感情を隠すように、口の中で歯を噛み締めた。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:10:21.49 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「クーは、いつも偉そうだね。その内、周りの人間が離れて行ってしまいかねないお」

川 ゚ -゚)「お前が云うな」

('A`)「お前が言うな」

( ^ω^)「・・・・・・ドクオは黙れお」

('A`) ナンノモンダイデスカ?

デレは三人の楽しそうなやり取りに嫣然となって、腰を上げた。そして、クーとドクオへと訊ねる。

ζ(゚ー゚*ζ「お二人はリードが繋がったままのビーグル犬を見かけませんでしたか?
      あたし達は、そのわんちゃんの行方を探しているのです。探偵のお仕事ですの」

クーがドクオに、ちらりと目線を合わせて小さく頷いた。そうして、顔を戻すと彼女はほくそ笑んだ。

川 ゚ -゚)「くくく。内藤の探偵事務所は大した事件を追っているみたいだな。迷い犬探し、とはね。
     ビーグル犬。先程、私が菓子をくれてやった所だ。港の方向へとぼとぼと歩いて行ったぞ」

('A`)「そんなに時間は経っていない。十五分程だ。今すぐ行けば、必ずや追い付くだろう」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:11:37.12 ID:zCzmOdzU0
貴重な情報だった。クドリャフカの足跡は正しかったのである。ブーンとデレは顔を見合わせる。
現在から十五分前にここに来たのならば、ビーグルは遠くへは行っていない。ブーンが礼を述べる。

( ^ω^)「サンクスだお。僕達は港へと向かうことにする。ああ。君達にも訊いておこう」

ブーンが、クーとドクオにも佐藤と渡辺の行方を尋ねたが、二人は同様に「知らない」と答えた。
本当に、彼女らはビップに居るのだろうか。悄然とした気持ちになりつつも、ブーンは再度礼を言う。
別れ際。クーは釣竿を地面に置いて、鹿爪らしい顔で彼を見上げ、淡々とした口調で言葉を紡いだ。

川 ゚ -゚)「近頃、街の様子が奇妙だ。何が奇妙かは知られないが、間違いなく変調をきたしている。
     君達が追っている影共の仕業かもしれない。重々、気を付けて慎重に調査をする事だ」

「何事も命在っての物種」。クーは言い終えて、ドクオに鞄から弁当箱を出させ、昼食を摂り始めた。
ブーンとデレは、二人と別れた。港へと足を運ぶ。港は、ここから凡そ二十分歩いたところにある。
歩道を往く二人と一匹の側を、一台の軽トラックが駆け抜けた。デレは排気ガスに巻かれて咳き込む。

ζ(>、<*ζ「けほけほ。車通りが増えて来ましたの。きっと、港が近いのです」

( ^ω^)「大丈夫かお。あと数分だお。以前、僕はフェリーに乗ったことがあるから覚えている」



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:12:36.58 ID:zCzmOdzU0
やがて、ブーン達は港に到着する。連絡船で別な街に旅行するのではない。付近に居る犬を探すのだ。
綺麗に舗装された地面にブーンが立った。大きな建物の向こう側に、塗装が剥げた輸送船が見える。
ビップの住人は閉鎖的ゆえ、船に乗る事はほとんどない。なので、港は工業地帯として機能している。

少し離れた場所に、倉庫などが建ち並んでいる。見事に景観を汚しているが、港は必要不可欠である。
ビップの人々が生活する為の必需品が、他都市から運ばれて来るのだから。綺麗事は言っていられない。
全てが流麗に整った街なんて存在しない。ブーンは青空を仰いで、深呼吸をした。仄かに煙臭かった。

( ^ω^)「ここら一帯は空気が汚れているね。まあ、仕方のないことだけれど」

ζ(゚ー゚*ζ「ですの。汚れた風景の中で、美しさを見出すのもまたまた乙なのです」

(U^ω^) わんわんお。

不意にクドリャフカが前足をじたばたとさせて空を掻き、ブーンのリードを握っている手を引っ張った。
もしかして、ビーグルを見付けたのか。ブーンは飼い犬の好きなようにさせて、その場から移動した。
港の駐車場を出て、また歩道を進む。道路を走るのはトラックばかりで、人間は彼ら以外には居ない。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:13:43.76 ID:zCzmOdzU0
(U^ω^) わんわんお。

クドリャフカは、とある会社の前で足を止めた。固く閉ざされた門の向こうには、瓦礫の山が窺える。
潔癖症なブーンは、思わず「うっ」と眉をひそめたがしかし、足を踏み入れないわけにはいかない。
門柱からは看板が外されていて、作業員の姿がない。どうやら、この会社は閉鎖をしているようだ。

ζ(゚、゚*ζ「あれは」

( ^ω^)「お。柵に穴が開いているお」

敷地を囲っている柵に破れた箇所がある。それは大人一人が潜り抜けられるくらいの大きさである。
ここからビーグルは侵入したのか。彼が意を決して穴に通ろうとすると、土埃が付着してしまった。
南無三宝! 敷地内に入ったブーンが神経質にスーツを掃っていると、遅れてデレもやって来た。

ζ(゚、゚*ζ「あらら。ブーンさんのお気に入りのスーツなのに」

(;´ω`)「もう最悪。このスーツはクリーニングに出すとするお。捨てても良いけれど・・・」

気落ちしているブーンの背中を、デレが優しく撫でる。そうしていると、遠くから鐘の音が鳴り響いた。
正午になり、時計塔が鐘を鳴らせたのだ。さっさとビーグルを捕まえて、街に昼食を食べに行こう。
気持ちを切り替え、ブーンは瓦礫の山を見回す。ここだけ崩壊した未来の地球の光景のようである。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:14:55.53 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「よしよし。我が家の天才犬クドリャフカ(仮)。もう少しだから、頑張るのだお」

(U^ω^) わんわんお。 (土煙が酷くて、私にはもう区別がつかんよ)

「やれやれ」。クドリャフカが主人の肩を竦める仕草を真似ようとするが、彼女は犬なので無理だった。
出鱈目にやってしまえ。犬の気持ちを覚れないブーンはリードを離し、飼い犬のあとについて行く。
液晶が粉々に割れたテレビや錆びた自転車など、沢山の廃棄物が積まれた敷地内をブーン達が進む。

( ^ω^)(早くここから出たいお・・・。このような場所は、清楚な僕が来るところではない)

街に下りる機会が増え、体力がつき始めたブーンだが、やはり自身が汚れる事は嫌いなのだった。
嫌々、ブーンはゴミに視線を向けて注意深くビーグルを探している。その時、ガタリと音が聞こえた。
ブーンとデレが立ち止まる。今しがた物音がした方向に顔を遣ると、何者かの気配を感じ取った。

瓦礫の角から影が伸びている。四肢を地面につけた、小さな影。きっとビーグルだ。ブーンは走った。
左に折れて、彼は両手を広げた。数メートル先に驚いた様子の、茶色の毛並みを持つ小型犬が居る。
ブーンがじりじりと、犬との距離を詰めていく。あと少し。彼はビーグルの両脇へと両手を伸ばした。

( ^ω^)「え」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:16:25.31 ID:zCzmOdzU0
一刹那。

ブーンには自分を襲った事態が把握出来なかった。目の前に白光を放つ拳大の球が浮かんでいる。
緩やかな丸みがある光球。二十一グラムを、身体に宿している人間から零れ落ちるという記憶の欠片。
何故、ここに。影と対峙していないではないか。それは彼の眼球を焼かんとする眩い光を放った。
後続のデレとクドリャフカも巻き込まれる。一同の意識が遠くなる。――――心の旅をするのである。




▼・ェ・▼ きゃんきゃん!

 渡辺が、小さな犬を抱き上げている。彼女の側には、紫色の布に包んだ日本刀を持つ佐藤が居る。
 場所はブーン達が訪れている残骸が山となった敷地内である。時間はブーン達が来る十分ほど前だ。

从'ー'从『ほら。首輪がある。君には、家族が居るんだね。早く、帰った方が良いよ』

 言葉を詰まらせながら言って、渡辺はビーグルを地面に下ろした。だが、お座りをして動かない。
 彼女は可愛らしい所作で頬を掻いて、佐藤へと視線を遣り、『んんんん』と低い唸り声を出した。

从'ー'从『困ったねえ。私は、こんな可愛い犬まで、手をかけなければならない』

リl|゚ -゚ノlリ『・・・・・・やめる?』



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:17:31.91 ID:zCzmOdzU0
 佐藤が尋ねると、渡辺は首を横に振った。否定をしたのだ。渡辺は両腕を開き、徐に口を開く。

从'ー'从『意志は変わらないよ。私は、この街を起点にして、全世界の時間を、滅茶苦茶にする。
      現在と過去の、融合。過去に死んだ大犯罪者が蘇る。戦争が起こる。爆弾が落とされる。
      ・・・著しい環境の変化に、人間はついていけなくなる。そして、ゆくゆくは死滅する』

リl|゚ -゚ノlリ『それから、渡辺はどうするの?』

从'ー'从『私は・・・・・・』

 乱れきった世界に佇む自らを想像して、渡辺は黙った。彼女はずきずきと頭痛のする頭を押さえる。

从'−'从『分かんないよ。そんな事。やめて。訊かないで。私は考えると、頭が痛くなるの』

 激しい頭痛を感じた渡辺は、片方の手も頭へと遣って、とうとうその場に座り込んでしまった。
 ぎりぎりと上下の歯を噛み締めて、異常者のそれに似た表情をしている。彼女の精神は劫火にある。
 不様にも透明な涎を地面へと垂らす渡辺の側で、佐藤が両膝を曲げて屈み、彼女の肩に手を置いた。

リl|゚ -゚ノlリ『行こう。いつかの青年が来たみたい。』

从 − 从『・・・・・・うん。もうすぐ、私の呪縛は、その波紋を広げる』”



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:18:37.68 ID:zCzmOdzU0
意識が水面へと浮かび上がり、ブーン達は目を開けた。佐藤か渡辺、どちらかの記憶を見たのである。
数分前まで少女達は、ここに居た。ブーンとデレは驚きを隠せない。緊張した面持ちで、デレが言う。

ζ(゚、゚*ζ「彼女達は、やはり時間を弄くるつもりです。これは特級に憂慮すべき事態ですの。
       もしも現在と過去がごちゃ混ぜになれば、渡辺さんの言う通り滅茶苦茶になります」

大変な事だ。人類が死滅するまではいかないかもしれないが、大事件が起こるのには間違いがない。
渡辺を、無残にも朽ち果てた世界に立たせてはいけない。未来はとても輝かしいものであるべきだ。

( ^ω^)「・・・・・・うむ。速やかに彼女達を捕まえて、鎮まらせなければならないお」

ζ(゚、゚*ζ「それと一つ思ったのですが、少女達のどちらかは、個人ではない可能性が高いです。
      以前、言いましたが影には二種類あります。一つの思念のみで成り立っているものと、
      たくさんの思念が集まったもの。通常、前者が強力なのですが、異なる場合もあります」

( ^ω^)「と、言うと?」

ζ(゚、゚*ζ「たくさんの“強力な”思念が積み重なっている場合は、その定義に当てはまりません。
       ・・・病院にも記憶の欠片がありました。普通、影となったあとの記憶は零れないのです。
       イレギュラー。恐らく、制御が利かないほどの力を持ってしまっているのでしょう。
       そしてその力の持ち主は、憶測で言えば渡辺さんです。彼女は喋るのが困難なようです。
       数多の思念が集まっている所為で、精神に個人個人の住処がある。多重人格に類している」



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:21:40.49 ID:zCzmOdzU0
( ^ω^)「なるほど」

確かに、渡辺は言葉を出すのに苦労していた。心の欠片の中だけではなく、数ヶ月前の農業公園でも。
強力な影共が集まって出来た一つの影。渡辺を鎮まらすのは至難の業だろう。だが、ブーンは退かぬ。

( ^ω^)「・・・・・・ふん。どのような影だって、僕が本来に在るべき場所にきちんと帰してやるお。
       モナーにビーグルを届けたあと、邸で作戦会議をするお。彼女達は、確実に街に居る」

静かな口調で語って、ブーンは足元を見た。クドリャフカとビーグルが仲良くお座りをしている。
ブーンはビーグルのリードを、デレはクドリャフカのリードを握って、矮小な瓦礫の街をあとにした。

念の為、付近を探索したが、佐藤と渡辺の姿はなかった。ブーン達の存在に気付いていたようなので、
すぐさま行方をくらませたのだろう。今回の依頼を無事にこなした探偵は、ビップへと帰路についた。

( ´∀`)「おおおお坊ちゃま! ありがとう御座いますモナー。孫も、さぞや喜ぶ事でしょう」

ブーン達がモナー邸に着くと、モナーは大いに喜んだ。探偵として二度目の仕事が完了したのである。
ビーグルをモナーに渡すと、彼は二人を邸の中へと招きいれようとした。しかし、ブーンは断った。
これから、ブーン達は内藤邸にて仕事がある。モナーは存外しょげ返った様子で、車の扉を開けた。



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:22:50.68 ID:zCzmOdzU0
( ´∀`)「残念ですモナー。もっとお話をしたかったのですが」

( ^ω^)「すまないね。また来るお。・・・ツンは先に邸に帰ったのかお?」

( ´∀`)「はい。買い物をお済ましになられたあと、僕がお邸までお嬢様を送りしましたモナー」

( ^ω^)「気が利くね。ツンが街に下りる度、屑な男が近寄らないか心配で堪らないのだお」

ブーンとデレは黒塗りの高級車の後部座席に乗る。モナーが運転席に座って、鍵穴にキーを差し込む。
キーを回すとエンジンがかかる。ゆっくりと車が進み出す。因みに、書き手は車を運転した事がない。
飲酒運転をしていた車に轢き殺されかけたからである。飲酒運転をする奴らは消え去るが良い・・・!

( ´∀`)「今日は本当にありがとう御座いました。馬鹿な依頼だったと思いますモナー」

( ^ω^)「孫が大切にしている飼い犬なのだろう。まったく馬鹿なことではないお」

( ´∀`)「お坊ちゃん・・・・・・」

立派に成長したブーンにモナーは感動して、ハンドルの操作が疎かになりかけた。やべえ。やべえ。
ブーンは窓から街並を眺めている。淡い光が射す中を、それぞれ洋服を着た人々が行き交っている。
この平和な光景を、佐藤と渡辺は壊そうと言うのか。蛮行。ブーンは少女達を止める決意を固める。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:24:33.12 ID:zCzmOdzU0
( ´∀`)「そういえば、もうすぐ時計塔祭ですモナー」

前方の車の流れに注意を払いながら、モナーが言った。ブーンが顔を前に戻す。

( ^ω^)「時計塔祭?」

( ´∀`)「時計塔の建立を祝う記念日ですモナー。まあ言っても、別段何もしないのですが。
      ああ。そうそう。四月三日のその日だけは、深夜の零時にも鐘を響かせるのです」

( ^ω^)「迷惑なこと甚だしいね! 毎日の、正午の音だけでもうるさいというのに」

ζ(゚ー゚*ζ「えー。素敵じゃありませんか。ブーンさんは情緒や風情がありませんの」

( ´∀`)「・・・ブーン、さん?」

( ^ω^)「モナーは気にしないで良い。安全な運転だけを心がけてくれたまえお」

ブーンは自身のあだ名が大嫌いである。ブーンはモナーに運転の指図をして、腕を組んで目を閉じた。
春の風景を車が駆ける。ブーンは車の振動に身体を委ねて、内藤邸まで浅い睡眠に就いたのだった。



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:26:12.87 ID:zCzmOdzU0
ξ゚听)ξ「お兄様。お帰りなさい」

ブーンが玄関ホールに入ると、ツンが出迎えてくれた。彼女の手には掃除機の取っ手が握られている。
そういえば、父親の部屋を片付けているのだった。情緒纏綿の妹の頬に、ブーンが口付けようとする。

ξ;゚听)ξ「きゃあああああああああ!!」

しかし、鼓膜を突き破るような叫び声を上げて、ツンは逃げてしまった。何がいけなかったのか。
妹は、僕のことが大好きなはずだろう。ブーンが首を捻っていると、デレが横からたしなめる。

ζ(゚ー゚*ζ「ダメですよ。ツンさんは掃除中なのですから」

( ^ω^)「・・・そうか! ツンは掃除で汚れた身体を、兄に触らせたくないから逃げたのだお!」

自分勝手に都合の良い解釈をして、ブーンは食堂に入る。食事をしながら鳩首会議をするのである。
キッチンには、シワがなくサランラップがされたサンドイッチを載せた皿が、二枚置かれていた。
ブーンはその皿を食堂へと運び、デレはペーパードリップでコーヒーを淹れる。二人の昼食が始まる。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:28:20.01 ID:zCzmOdzU0
ζ(゚ー゚;ζ「ペーパードリップは難しくて。ちょっと薄くなっているかもしれません」

( ^ω^)「デレが淹れたものなら、何でも構わないお。それでは、頂くとするかね」

ブーンはコーヒーを少しだけ啜った。確かに、薄口ではあったが飲めないというほどではない。
次にサンドイッチを食べる。美味しい。舌鼓を打つブーンに、デレが早速に少女達の話題を振る。

ζ(゚、゚*ζ「渡辺さんの心の欠片のことですが、もしかすると、いつもと具合が違うかもしれません」

( ^ω^)「どういう風に違うのだお?」

ζ(゚、゚*ζ「彼女の魂は正気を失っています。尚且つ強い。だから、追憶があたし達を引き込むかも。
       その狂った記憶の世界に、あたし達は立つのです。とは言っても、きちんと出られます。
       記憶には変わりがないので、終わりがあります。あたし達に五感が存在するだけです」

( ^ω^)「ふうん。つまり、僕達は渡辺の記憶の中を歩けるのだね」

ζ(゚ー゚*ζ「そうですの。本人が覚えている限りの記憶ですので、範囲は狭いですけれどね」



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:30:01.18 ID:zCzmOdzU0
デレの話をまとめると、渡辺は強力で複数の影が居る為に、二十一グラムが零れ易い性質らしい。
その零れた記憶の世界では、一定範囲を移動が出来る。通常の視るだけの行為に他の感覚も備わる。

この世に完全というものはない。どこかで歯車が欠けていて、そこを代用品で取り繕っているだけだ。
その代用品が歯車の代わりをして世界を美しく見せてはいるが、若干の衝撃を加えれば壊れてしまう。
渡辺の場合、多重の人格がそれに相当するだろう。熾烈の空間の内部に、脆い弱点が隠されている。
一見強力で強烈に思えるが、付け入る隙は多分にある。

ζ(゚、゚*ζ「複数の思念を持つ影は、同じベクトルの恨みを抱く影が寄り添い、集まっています。
       つまるところ、あたし達が一つでも解を手に入れれば、退治は難しくはないのですの」

( ^ω^)「十把一絡げに出来るのだね」

いける。ブーンは思った。影達は安っぽく言えば最強ではあるが、簡単な方法で鎮まらせられる。
クーのときは自分自身が鍵だった。ヒートは私小説の中に弱さを表していた。そして後悔もしていた。
夢の世界に住んでいたトソンは、夫が書き残した手紙である。ミセリは、あれは気丈な少女だった。
自ら天国へと向かった。とにかく、頭脳を機敏に働かせれば勝ち目はある。ブーンは指を鳴らした。

( ^ω^)「いいね! 僕達が少女達を得仏させるのだお! だから、二人を見付けねばならん」

ζ(゚ー゚*ζ「はいですの! あたし達が力を合わせれば、どんなことだって出来ちゃいますの!
       明日はクーさんのお邸に行きましょう。少女達の記憶が残されているかもしれませんの」



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:32:30.63 ID:zCzmOdzU0
ブーンはサンドイッチを食べ終え、コーヒーを飲み干した。話が弾んだあとの食事は絶品である。
膨らんだ腹を彼が撫でていると、電話の呼び出し音がリビングから聞こえてきた。すぐに途切れる。
ツンが受話器を取ったのだ。きっと、ショボンだ。クーには先ほど会ったし、彼くらいしか居ない。

貸した本を早く返せ、と催促の電話を入れたのだ。ツンが食堂に入って来た。彼女はブーンに近寄り、
耳元で伝言をした。それは、ブーンにとっては予期していなかった言葉で、瞬時に顔を険しくさせた。

( ^ω^)「・・・親父が?」

ξ゚听)ξ「そうです。お兄様に替わるように、と」

ζ(゚、゚*ζ「?」

デレは絶対零度の凍てついた空気を感じ取った。ブーンが食堂から出て、リビングへと走って行った。
食堂に残されたツンとデレは、扉の方に顔を向けている。ゆっくりとデレが腰を上げて彼女に訊ねた。

ζ(゚、゚*ζ「ブーンさん。どうしたんですの?」

ξ゚听)ξ「貴女は知らなかったかしら。お兄様はお父様が嫌いなのよ」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:33:38.27 ID:zCzmOdzU0
ブーンが父親を嫌っているのは知っていたが、あのように険悪になるまで嫌いだとは思わなかった。
電話を終えたら意気消沈している事だろう。あたしが慰めてあげよう。デレが思うがツンは云う。

ξ゚听)ξ「デレは帰ってきたお兄様を慰めようとするのだろうけど、やめておいた方が良いわ。
       お父様と会話をしたあとのお兄様は恐いもの。私にでさえ、厳しくあたるんだから」

ζ(゚、゚*ζ「でもでも・・・」

ξ゚听)ξ「円滑な関係でいたいのなら、私の言う事を聞きなさい。明日になれば機嫌は直っているわ」

しばらくしてブーンが帰ってきた。彼は二人には視線を遣らずに、苛立った感じで椅子に座った。
ツンは忠告したが、やはりデレには妻としての務めがある。彼の隣に寄って、優しく肩を揺すった。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえねえ。ブーンさん。大丈夫ですの? あたしが相談に乗って差し上げますの!」

( ^ω^)「・・・・・・別にいらないお。デレはどこかに行っててくれお」

信じられない言葉だった。いつ如何なるときでも大切にしてくれていたのに、初めて突き放された。
自分はブーンの妻としての器がないのだろうか。デレは沈痛な面持ちで、食堂から去ってしまった。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/07/23(木) 11:35:01.53 ID:zCzmOdzU0
食堂に沈黙が流れる。且つ空気がピリピリとしている。ブーンの様子に、ツンはため息を漏らした。

ξ--)ξ「お兄様。酷いんじゃないですか。デレはお兄様の事を想っているのですよ」

( ^ω^)「うるさいお。ツンも掃除の続きをしていたまえお。一人にさせてくれお」

ξ゚听)ξ「いいえ。私はデレみたく退きませんわ。また跡継ぎの件を話されたのですね」

( ^ω^)(・・・・・・)

ブーンは、父親が経営する会社に後継者として誘われている。内藤家の長男にはその資格がある。
他に有能な人物は居て、同族経営を反対されているが、父親はやはり息子を役職に迎えたがっている。
何も知らない人間からすれば羨ましい境遇だが、彼は頑なに断っている。父親のようになりたくない。

家庭を顧みなかった父親がブーンは大嫌いである。そして、自分には会社を経営する素質などない。
不遜な性格をしているブーンではあるが、自身の能力くらいは把握をしている。使い物にならない。
父親には一生敵わないと思っている。彼は悔しさから、デレやツンにきつくあたってしまったのだ。

ξ--)ξ「はあ。良ろしいですわ。私は掃除をしています、頭が冷めたら、デレに謝って下さいね」

ブーンが無言になったので、ツンは掃除を再開した。太陽が雲に隠れて薄暗くなった、昼の事だった。



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