〜〜〜〜〜〜のようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:29:17.23 ID:B7F6hwbrO







            〜〜〜〜〜〜のようです






                 ※ 閲 覧 注 意



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:32:47.56 ID:B7F6hwbrO
・・・・・ ・・・・・


ああ、お早うございます

気分は如何ですか? ……え?

どうして縛られているのかって?

それはこれからわかると思いますよ、ええ。すぐに。
目隠しを外せ? それはいけません、後で外しますので、今は我慢してくださいね

ところで、私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?
ふふ、そんなに怒鳴らないで下さい

まぁダメと言われてもするんですけどね、何、ほんの短い時間ですよ、すぐにショーが始まるので
暇つぶし程度に聞いてください

ああ、そんなに暴れないで、貴方を傷つけなければいけなくなってしまうでしょう
私としてもそれは心苦しい

……そうそう、大人しくしていただければ、私もこんなナイフで貴方を傷つけようなんて思いません
だからそんなに震えないで下さいね



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:34:34.58 ID:B7F6hwbrO

○○さん、私はね、常々人間とは素晴らしい生き物だと思っているのです
貴方もそう思いませんか?
だって人間とは神秘に溢れているのですから

こんな話を知っていますか?
物心がつき始めた時子供は、まだ母親のお腹の中に居たときのことを覚えているらしいのです

あるところに一人の女が居りまして、その女は中々子宝に恵まれなかったそうです
しかし神様が粋な心意気を見せたのでしょうね、間も無く女は妊娠しました

順調に子供は生まれ、ある日女は気まぐれで、生まれてきた子供に聞いてみたそうです
「ママのお腹の中はどんな気分だった?」とね

すると子供はにっこり笑ってこう答えたそうですよ

「くらくて、きもちよかったよ、ずっとあそこにいたかったの、だけどあと2人でてくるからがまんしたの」

その言葉を母親は冗談と受け取って笑い流したそうです
何せその女は妊娠しづらい体質だったそうですからね

しかし、数年後、女はまた子供を授かったそうです
そうして、生まれてきた子供は言いました

「わたしはまんなかなの、まだあとおとうとがでてきてないから、おなかのなかにいるのがまんしたよ
 もうすぐでてくるの」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:36:24.37 ID:B7F6hwbrO

女は驚きましたが、それすらも偶然だと思いました
しかし、女がまた一人子供を授かるのに、時間はかからなかったそうです



……ねぇ、○○さん、貴方はこの話を聞いてどう思いますか?
ただの偶然だと思いますか?
しかし、こういった事例はいくつもあるのですよ
実に神秘的、実に不思議だと思いませんか?

そこで私は思いついたのです、何をって?それはこれから貴方に体験していただきますよ


――ああ、丁度準備が整ったようだ


○○さん、口を開けてください
そんなに怯えないで、大丈夫ですよ


周りの喧騒が気になりますか? ただの観客ですので、あまりお気になさらず、さぁ口を開けてください
そうやって首を振らずに
ほら、早く、そうじゃなければ永遠に終わりませんし、貴方も後悔することになりますよ

……どういう意味かって? 

それは貴方が確かめることですね



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:38:20.16 ID:B7F6hwbrO

さぁ口を開けて、ええ、いい子ですよ
じゃあ、これをちゃんと噛んで、飲み込んでください

吐いてはいけませんよ、……ほら、もっと、もっと噛むんです
噛んで
もっと噛んで
ほらほら、もっと!

噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで
噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで
噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで

……はは、いいですよ、噛んだら飲み込んでくださいね
吐き出すことは許しません


……………………。


…………ふふ、きちんと飲み込めたようですね
偉いですよ、○○さん

では、目隠しを外しましょうか

・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・・
・・ ・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・・・



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:40:17.58 ID:B7F6hwbrO

蝉が鳴いている。
季節はもう8月の上旬で、茹だるような暑さがオフィス内をしめていた。
最近うちの課のクーラーが壊れたらしく、修理に2週間ほどかかるそうだ
まったく、運が悪い。

俺は滴る汗を拭いながらキーボードをがむしゃらに打ち込んでいた。

ふと、同僚の長岡が上司の前だというのに、気にもせず団扇で扇いでいるの気づいた
俺は内心毒づきながらも、軽く注意する。


('A`)「おい、あんまりサボるなよ」
  _
( ゚∀゚)「だって暑いじゃないッスかー、俺こういうの苦手なんスよー」

('A`)「暑いのは皆同じだ」
  _
( ゚∀゚)「えー でも経理のとこはクーラー壊れてないし」

('A`)「経理は経理、営業は営業だ」
  _
( ゚3゚)「ちぇー」

今年の新入社員は、頭は良くても礼儀が全然なっていない
俺が入社した時、こんなことやってたらそりゃあ凄い勢いで怒られたもんだけどな。

まぁ、こういう奴こそ、社会に出て色々学んでいくんだろう



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:41:56.50 ID:B7F6hwbrO

(;'A`)(暑い……)

俺は窓の外に目をやって、軽くうんざりした。陽炎がゆらゆらと揺れていて、景色が歪む
まるでマジックミラーを覗き込んでるみたいだ

今日の昼飯は外に行かず、食堂で冷たいザルソバにでもしよう。

そんなことをぼんやりと考えていると、長岡が机から身を乗り出して尋ねてきた。

  _
( ゚∀゚)「そういや先輩、お子さんいつ生まれるんですか?」

('A`)「ああ、来週末には生まれるみたいだよ」
  _
( ゚∀゚)「そうなんスか〜〜、いいなあ、子供ー」

('A`)「なら、お前も結婚したら?」
  _
( ゚∀゚)「いや、俺はまだ遊びたいんでwww結婚はいつでもできますしwww」

('A`)「あ、そう……」

若さってのはいいな。
いや、これはただ単に顔の問題なのかもしれないけれど。
俺は妻であるクーを落とすのに偉く苦労したもんだ、そんな俺も、もうすぐパパになるってんだから
世の中捨てたもんじゃない



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:43:37.32 ID:B7F6hwbrO

こんなクーラーの壊れたクソ暑い中で頑張って仕事ができるのも、嫁であるクーと、もうすぐ産まれるであろう娘がいるからだ
その時、俺の背後がすっと暗くなった、目の前に居る長岡がしまったというように顔を歪める

( ・∀・)「おや、君たち、上司がいる前で雑談とはいい度胸ですね」
  _
(;゚∀゚)「あ……」

(;'A`)「課長……」

背後には、無表情の課長が立っていた

( ・∀・)「暑いからって、あまり怠けるのはいけませんよ」
  _
(;゚∀゚)「ハイ!すみませんでした!」

(;'A`)「……すみませでした」

( ・∀・)「よろしい、ところで欝ノ宮くん、この間の件ですけど……」

('A`)「はい、その件でしたら―――……」

まったく、運が悪い



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:44:48.88 ID:B7F6hwbrO
* * * * *



仕事が終わり、昼休みの時間になると、皆が一斉にオフィスから出ていった
こんな暑いところにいつまでも留まっていたくないのだろう
俺も例に漏れず、財布をポケットに仕舞うと席を立つ

妻のクーは入院中だから、弁当はない。

  _
( ゚∀゚)「先輩、外食いに行くんですか?」

('A`)「いや、今日は暑いから中で食うよ」
  _
( ゚∀゚)「んじゃあ俺も、お供しまーす!」

('A`)「奢らないぞ」
  _
( ゚∀゚)「またまたwwww」

(;'A`)「あのなあ…………」
  _
( ゚∀゚)「じゃっ、いきましょっか!」

('A`)「ったく……」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:46:53.92 ID:B7F6hwbrO
つくづく調子のいい男だ



食堂につくと、結構賑わっていて、空いた席を探しながら、考えることは皆同じだな、と自嘲気味に笑った。
番号札を貰い、適当にあいてる席に腰掛けると、扉の方から見知った顔がやってくる

( ^ω^)ノシ「おーい、ドクオー」

('A`)「ああ、内藤さん」
  _
( ゚∀゚)「ぅお疲れース」

( ^ω^)「前いいかお?」

('A`)「どうぞどうぞ」

経理の内藤さんが、人の良さそうな顔で笑った。
この人、前は俺と同じ営業の先輩だったのだが、どんな理由があったのか、突然経理の方に移動になったのだ。

内藤さんは俺らが座っている席の向かいに冷やし中華を置くと、汗をハンカチで拭いながら席に着いた

( ^ω^)「いやー、今日はあっついおねー、書類に汗が落ちるんだお」

('A`)「そっちはクーラーが利いてるからまだいいじゃないですか、こっちゃあクーラー壊れて地獄ですよ」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:48:20.88 ID:B7F6hwbrO
  _
( ゚∀゚)「そーッスよ! 俺らなんてただでさえ営業でこんなクソ暑い中外出なきゃいけないのに!」

( ^ω^)「おっおっ、まぁ頑張れおww」
  _
( ゚∀゚)「くそー!いーなー、経理いいなー! 可愛い子多いんですよねー、俺あの子お気に入りなんですよ、ツンちゃん!もう超可愛くって!」

( ^ω^)「…………」

('A`)「…………」
  _
( ゚∀゚)「え、何で黙るんですか?」

('A`)「長岡、残念だったな」
  _
( ゚∀゚)「え?」

( ^ω^)「ツンは僕のマイハニーだお」
  _
(;゚∀゚)「えええええ!? っていうかマイハニーって言い方古っ!」

( ^ω^)「うるせーお」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:49:52.96 ID:B7F6hwbrO
  _
( ゚∀゚)「いやー、ないですわー、俺のが絶対カッコイイのに」

( ^ω^)「ドクオ、お前の後輩殴っていいかお」

('A`)「2、3発お願いします、できるだけ強く」
  _
(;゚∀゚)「ちょwwwひでぇwwww」

そんな雑談をしているうちに、俺たちの頼んだものが出来上がったらしく、食堂内で番号札の呼び出しがかかった
俺と長岡はザルソバとカレーライスを取りに向かう
っていうかカレーライスってお前

('A`)「お前……暑いのによくそんなもの食えるな」
  _
( ゚∀゚)「いや、逆にいけるかと思ってwww」

こいつの考えることはつくづくわからん
見てるこっちの方が暑くなる。

列に並び、あと少しというところで、長岡が後方を見て、声をあげた

  _
( ゚∀゚)「あれ、先輩先輩」

('A`)「んー?」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:51:38.49 ID:B7F6hwbrO
  _
( ゚∀゚)「見てくださいよあれ、課長がいる、珍しくないっすか?」

('A`)「え?」


( ・∀・)


長岡の指差す方に視線を向けると、そこには暑いのにそれを感じさせないような出で立ちで
きっちりとスーツを着込んだ課長が列の中に立っていた
へぇ……普段は弁当なのに、珍しいこともあるもんだ


('A`)「本当だ……珍しいな」
  _
( ゚∀゚)「知ってますかー? 先輩、課長って、ずっと付き合ってた彼女がいたらしいんですけど
     自分の母親に反対されたから別れたらしいッスよ、マジマザコンじゃないッスか? 彼女かわいそー」

(;'A`)「お前……そういう情報、一体どこから仕入れてくるわけ?」
  _
( ゚∀゚)「情報網は色々あるんですよ!まっ、情報通長岡って呼んで下さいww」

('A`)「呼ばんわアホ」

お前は噂好きの女の子か



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:54:22.86 ID:B7F6hwbrO

おばちゃんからザルソバを受け取って席に戻ると、内藤さんはもうあらかた食べ終わっているようだった。
俺はカレーライスを持ってる長岡からちょっと距離をとって、ザルソバに手をつける。

( ^ω^)「おー、長岡それ熱くないのかお?」
  _
( ゚∀゚)「ぶっちゃけ失敗でした、先輩、これ交換しません?」

('A`)「断る」
  _
( ゚∀゚)「えぇーいいじゃないっすかー」

('A`)「よくねえよ、暑いよ、ていうかお前の存在が暑苦しいよ」
  _
( ゚∀゚)「えー、ひでぇー」

( ^ω^)「そういやドクオ、クーちゃん、いつ産まれるんだお?」

('A`)「来週末ですね」

( ^ω^)「ドクオが親だなんて、世も末だお」

(;'A`)「いや、それどういう意味ですか」

俺はが絶対いい親になりますよ!と力んで言うと、内藤さんは冗談だお、と笑った



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:56:29.71 ID:B7F6hwbrO

たわいも無い話をしながら、食事は進む
ザルソバがつるりと喉を落ちていき、ほんの少しだけ暑さが和らいだ気もするが、窓の外に目を向けて
また暑さが蘇る

内藤さんと長岡が、今日妻を見に来てもいいかと、提案した
正直出産前なのでどうかとも思ったが、暑さが俺の思考回路を麻痺させたのだろうか
気がつけば頷いていた


……ああ、それにしても今日は本当に暑い

窓の外で、蝉がジィジィと鳴いていた


・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・・・・・



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 21:58:06.32 ID:B7F6hwbrO

…………?

……………………。

…………………………ん?

……………………あれ?
ここはどこだ?

前が見えない、身動きすら取れない、四肢がすべて縛られているようで、指一本動かせない
視界も暗く、目隠しのようなものをさせられていることに、気づいた

どうして? しばらく体をモゾモゾ動かしていると、聞き慣れない声が、目の前で響く

 「お早うございます、気分はいかがですか?」

不思議なことに、その声は、どこかで聞いたことがあるような気もした
ただ、そんなことを考える余裕、今はない

誰だ、お前は?
一体俺をどうする気だ?なんで動けないんだ? おい!!離せ!!この縄を解け!
この目隠しも今すぐとるんだ!!

しかし声はそんな俺を嘲笑うかのようにして勇めた

 「私の話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」

うるさい!



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:01:21.65 ID:B7F6hwbrO

やめろ、お前の話なんて聞きたくもなんともないんだよ!
なんなんだこれは!? 悪い冗談か?

いいから離せよ! ふざけるのも大概にしろ!!警察に訴えるぞ!!
何が目的だ?金か!?

 「ああ、そんなに暴れないで下さい」

ひたり、と首元に冷たい感触が当てられた
背筋に怖気が走り、息を飲み体を硬直させると、声は満足したように笑う

 「そうそう、大人しくしていただければ、私もこんなナイフで貴方を傷つけようなんて思いません」

どくんどくんどくんどくん
心臓が早鐘を打ったように鳴り止まない、このまま破裂してしまいそうだ

なんだ?今俺に何が起こってるんだ?
どうしてこんなことになっている?

俺は今日、会社に行くため、いつものように家を出たはずだ
手を振る妻に笑顔でキスをして、……そうだ、妻は、あいつは無事なのか?
くそっ、どうすればいいんだ!? どうなっているんだ!?

 「こんな話をしっていますか?」

俺の混乱を他所に、声は冷静に語り出す
下手に何か言うと殺されそうで、俺は何も言えなかった



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:04:20.72 ID:B7F6hwbrO

 「物心がつき始めた時子供は、まだ母親のお腹の中に居たときのことを覚えているらしいのです」

それから声は、よくわからない話をし出した
正直俺にはどうでもいい話だ
子供がどうの、女がどうのって

生命の神秘も不思議にも興味はない
今あるのはこの異常な空間に対する恐怖だけだというのに

なのに声は楽しそうで仕方なかった



……話が終わると、声は強引に俺の口を開かせようと話しかけてくる
俺は勿論拒否した、当たり前だ!

毒でも飲ませられたらどうする?
やめろ、嫌だ!!

俺は頑なに首を振って口を閉ざしたが、それでも声は口を開かせようとする

開かなければ終われない
そんな空気を作って、声が笑う
周りから良くわからない野次が飛んでいた
俺が今どんな状況にあるのかはまったくわからないが、声は全て笑っているように聞こえた



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:06:42.28 ID:B7F6hwbrO

楽しくて楽しくてたまらない、そんな目の前にいる声と同じような叫び声が
いくつもいくつも周りから飛び交ってくる
嬌声、奇声、ああ、ゾッとする、怖い、怖い怖い怖い!!

突然、口の中に、何かが詰め込まれた

…………っ!!
油断した、ソレは俺の口の中にどんどん詰め込まれていって
ぐにゃりとした、ゴムのような食感が、口の中一杯に広がる

どろりとした何かが、口の中ではじけた
なんともいえない奇妙な味と、食感、それと同時に、むっとした鉄の臭いが鼻につく

うあ、あ、あああ!
やめろ!気持ち悪い!吐く!吐かせてくれ!
うあぁえおえぇっあぎゃ、ああああああああああああ!!

吐こうとしても押し込まれる
口の中にソレが押し込まれてくる!!
気持ち悪い!嫌だ!嫌だ!助けて!!

男が俺にソレを噛むように支持してきた

あ、おぇ、えぐぁ、げほっ……うぇっ
も、もう勘弁してくれ!俺が一体何をしたって言うんだ!?
助けあぎゅぎぐぐ……はっ、はぁっはぁっ……あっ



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:09:22.48 ID:B7F6hwbrO

「そう、もっと噛んで」

もう嫌だ!噛みたくないないんだっ
助けて、気持ち悪ぐぎゅうがが

「噛んで」

誰か、た、すけぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぎちゅり

「噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで噛んで」

あ、あああああああああああああああああああああ!!!!


口の中で細かな塊となったそれを、無理やり飲み込むと、胃が逆流したかのように吐き気がこみ上げてくる
しかし吐くことは許されず、そのまま口を手で塞がれた

そうして声は満足したように俺の目隠しを取る

視界が開け、広がっていた光景に俺は絶望した
出来ることなら、このまま舌を噛み切ってしまいたい


・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・
・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:11:09.94 ID:B7F6hwbrO


ああ、退屈だ

しかしこの退屈が私に幸福を感じさせてくれるのだから、こんなに嬉しいことは無い
白く消毒液の臭いが僅かに残る病室の中、もうすぐ産まれる我が子に対して笑みを浮かべながら
私は己の腹をさすった

周りではもう産まれた母親も居るらしく、乳児に対してお乳を上げたり、家族が見に来たりして
和気藹々といった空気がこの空間を包んでいた

川 ゚ -゚)(皆嬉しそうだな……)

今は仕事中であろう夫のことを考えながら、私は育児についての本を読みふけっていた
数年前まではバリバリのキャリアウーマンで、結婚なんてすることなんて考えてもいなかった私とは思えない

川 ゚ー゚)(丸くなったものだな、私も……)

小さく笑いながら、また腹を擦る
とくんとくんと波打つそれは、後少しで産まれる、もう臨月に入っているのだから

名前ももう考えてあるのだ
男の子なら、女の子なら、と両方バージョンで考えていたが
もう娘であるということは医師に知らされているで解っていた

夫は、ドクオは目じりを下げながら女の子かぁ、とにやけてるので、私は苦笑しながらからかったものだ



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:13:55.99 ID:B7F6hwbrO

川 ゚ -゚)(あいつは絶対将来親バカになるな)

線の細い、言ってしまえば貧相な夫が、成長した娘に門限のことで怒る姿を想像して、また口元に笑みが零れる
するとタイミングを見計らったように、病室の外から夫が現れた

('A`)ノ「ようクー、調子はどうだ?」

川 ゚ -゚)「ドクオ、まぁ、上々だな」

('∀`)「……暇で暇で仕方ないって顔してるぞw」

川*゚ -゚)「フ、フン……ところでそちらの方は?」

ドクオの後ろには見知らぬ男が2人
一人は、柔和な顔つきをした恰幅のいい男と、もう一人は、今時の若者を絵にしたような、軽そうな男
二人はドクオの後ろから笑顔で出てきた

('A`)「ああ、俺の後輩と……内藤さんのことは話したことあったっけ? 先輩だよ
    二人とも、見たいって利かないもんだからさ」

( ^ω^)「どうもですおー! 内藤と言いますお」
  _
( ゚∀゚)「長岡です!いや〜〜しかし先輩にこんな美人な奥さんがいるなんて!世の中絶対間違ってますよ!」

('A`)「お前は俺に喧嘩を売りに来たのか?」
  _
( ゚∀゚)「やだな、冗談ですよ〜」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:15:55.70 ID:B7F6hwbrO

川 ゚ -゚)「……来るなら、言ってくれればよかったのに」

('A`)「スマン、どうしてもって言うから」

この腹だと、動くのが億劫で、風呂に入ったのは一昨日だし、オマケにスッピン
髪だけは洗っているけれど、あまり見られた姿ではない

こんな姿、あまり人に晒したくないのに、相変わらず女心のわからない奴だ
内心毒づきながら近くにある椅子を勧めた

( ^ω^)「おっ、お構いなくですおー」
  _
( ゚∀゚)「それじゃ遠慮なく!」

(;'A`)「お前は少し遠慮を覚えろ……」

川 ゚ -゚)「それにしても、産まれた後じゃなくて、産まれる前を見に来るなんて、変わってるな」

(*^ω^)「いや〜、後学のために見学しておきたかったんですお」

なんの後学なのかサッパリわからないが、もしかしたら彼ももうすぐ子供が産まれるのかもしれない

川 ゚ -゚)「へぇ、まぁ、いいよ。あまり面白いものではないけど」

私は大きく膨らんだ腹を彼らの前に晒した



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:18:16.04 ID:B7F6hwbrO

川 ゚ -゚)「もう結構動きがわかるんだ」
  _
( ゚∀゚)=3「さ、触ってみてもいいですか!?」

('A`)「鼻息を荒くするな」

川 ゚ -゚)「ああ、いいぞ」
  _
(*゚∀゚)「失礼します!」

(*^ω^)「ぼ、僕も!」

(;'A`)「頬を赤らめるな」

そうして彼らは私の腹へと手を置いた。
中で我が子が動く度に、おお、とか、わぁ、とか驚いたような声をあげる
その反応が可愛らしくて、ついつい笑ってしまうと、長岡くんと内藤さんは、羨ましそうにドクオを見ていた

川 ゚ -゚)「満足したか?」
  _
( ゚∀゚)「ハイ!ありがとうございました!」

( ^ω^)「すごい大きな動きで、結構びっくりしましたお!」

('A`)「悪かったな、出産前なのに、騒がしくしちゃって」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:19:50.67 ID:B7F6hwbrO

川 ゚ -゚)「いいさ、正直、結構退屈だったからな」
  _
( ゚∀゚)「それにしても、いいな〜先輩〜、やっぱ俺も結婚しよっかな」

( ^ω^)「相手はいるのかお?」
  _
( ゚∀゚)「ハイ!2、3人!今は経理の子がイチオシです!」

('A`)「お前いつか女に刺されて死にそうだな」
  _
( ゚∀゚)「またまたwww」

川 ゚ー゚)「ははっ……」

それから彼らは、ジョークを交えながら、最近社内であった噂、嫌いな上司、最近のお気に入りの場所
出産したらやりたいことなどを私に聞いたりして
しばし楽しい時間を貰った

あと少し、あと少しで夫との二人きりの時間はなくなるが
この新しい命が私の傍にいてくれるのなら、それほど嬉しいことはないと、私は思う

早く出ておいで、パパもママも、君の事を待っているよ、ハイン



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:21:25.51 ID:B7F6hwbrO
・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・
・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・



ああ、美しい
美しい、この光景が私の脳神経を麻痺させていく、実に素晴らしい!

そうは思いませんか?○○さん

おや、聞こえていないようですね
何を泣きます? 何を悲しみ、何を嘆くんですか?

貴方は今喜ぶべきなのです、愛しい我が子と一つになれた喜びに咽び泣くべきなのです
おっと、もしかしてその涙は喜びなのですか?
ならば私も納得です

おやおや、そんなに暴れてどうしたんですか、大丈夫、奥様は無事ですよ
ただし切り取ってしまったのでもう二度と■■■■ことはないと思いますが

ああ、そんなに暴れないで、あまり暴れると…………ほら、倒れた
まったく、ここにおいておくとロクに話もできませんね、仕方ないなぁ



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:23:21.63 ID:B7F6hwbrO

おい……、連れて行け


さぁ、これで漸く話が……って、わめかないで下さいよ、安全なところに連れて行くだけですから、ふふ
ただし貴方次第で安全じゃなくなるかもしれませんけどね
ねえ○○さん、痛いですか?
つらいですか?
でも私にはそんなことどーうでもいいんです

ただ、あなたに聞きたいことがあるんですよ

答えてくれます?
ねぇ、お願いしますよぉ


………………

・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・
・・・・・・・ ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:25:59.36 ID:B7F6hwbrO

私の可愛い息子は、私の愛しい息子は、私の息子は、私だけの息子は
とても優しくて、とても素敵で、とても格好よくて
世界一最高の息子なの

愛してるわ

何よりも何よりも愛してる
貴方が居れば、お母さん何もいらないの






( ・∀・)「ただいま帰りました、お母様」

从'ー'从「あらおかえりなさい、……今日は遅かったのね」

( ・∀・)「……はい、会議が長引きまして」

重い木製のドアを開けて、息子が帰ってきた
私は持ちえる全てをかけた満面の笑みで、彼を迎えると、パタパタと駆けつけ、抱きついた
年齢の割に張りのある肌、端正な顔立ち、溢れる男の臭いを嗅いに、私の頭が揺れ
その唇に、そっと口付けをした



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:28:46.82 ID:B7F6hwbrO

( ・∀・)「…………」

从'ー'从「うふふ……疲れたでしょう? いつもお仕事頑張ってるのね、偉いわ」

( ・∀・)「当然のことをしてるだけですよ」

从'ー'从「でも凄いわ、流石は私の息子ね、今日はお弁当作らないでごめんなさいね
     ちゃんと食べた?」

( ・∀・)「はい」

从'ー'从「誰かに貰ったわけじゃないわよね?」

( ・∀・)「ええ、食堂で一人で食べました」

从'ー'从「そう、ならいいの、ご飯もう出来てるから、先にお風呂入っていらっしゃい」

( ・∀・)「はい、そうさせてもらいます」

部屋を出て行く息子を見送り、私は出来た料理をテーブルの上へと並べていった
どれもこれも、息子に食べてもらうために丹精込めて作ったものばかりだ

鼻歌まじりに次々とテーブルへと並べていくが
しかし、料理を並べていく最中、自分の手が目に映って、私は思わず息を呑んだ

从;'ー'从「あっ……!」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:30:21.55 ID:B7F6hwbrO

慌てて手を覆い隠すけれど、もう遅い
目に映った映像は消しきれない、網膜に焼き付いて離れてくれない

从 − 从「あっ……あぁ……!」

水分の抜け、皺が刻まれた肌、醜い染みの後
ファンデーションで覆い隠そうにも隠し切れない
若い頃の瑞々しさはとうに消えうせ、目に映ったのは年老いた自分の

从;д 从「あ、あぁぁぁあああああああ!!」

テーブルの上に並べた料理を、全て下に叩き落した
破壊音と共に、料理は嫌な音を立てて崩れていく

私はその場で顔を覆って泣いた

ああだめ、こんなことしたらまた私の中の水分が消えていってしまう!また老いてしまう!
これ以上こんな、こんな年老いた自分は見たくないわ!!

いやよいやいや、いやいやいやいやいやいやいや!!
私はもっとずっと綺麗で、美しくいたいのよ!!

:从 д 从:「いやぁああああ!!いやぁああああ!!」

(;・∀・)「お、お母様!どうしたんですか!?」

私の声を聞いたモララーが駆けつけてきた
半狂乱になって暴れる私を力ずくで抑え、抱きしめる



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:33:54.96 ID:B7F6hwbrO

:从;皿 从:「いや!いやよ!こんな手、こんな肌、こんなの私のものじゃないの!!」

顔に刻まれた無数の皺
醜く垂れ下がった頬
鶏がらのように輝きを失った手足
違うわ、こんなの私じゃない、私じゃないのよ!

本当の私はもっと美しくて、綺麗で、息子が誇れる母親なのよ!!

(;・∀・)「お母様!落ち着いてください!」

从# д 从「モララー!貴方もそう思っているんでしょう!? だからあんな若い小娘に走ったのね!
      私が老いて醜いから!この母を蔑んで!ふっふざけるんじゃないわよっ!!」

頭の中がどろどろとした何かに染められていく
思い切りモララーの手に噛み付くと、じんわり赤い血が滲んで、私の口内を濡らした

( ・∀・)「…………落ち着いてください、お母様、お母様は他のどんな女性よりも美しいですよ」

:从# 皿 从:「嘘おっしゃい! じゃあなんであんな小娘と! 私が、私がモララーを誰よりも愛しているのに
       あんな小娘に、小娘に小娘に小娘に!私の、私の息子を!!あああああああああ!!」

( ・∀・)「もう彼女となら別れました、私の目にはもうお母様しか映っていません、だから落ち着いてください」

モララーの手が、優しく私の頭を撫でる
とくん、とくん、という心臓の音が聞こえてきて、私の視界はモララーしか移らなくなった
可愛い息子
優しい息子
その息子が微笑んでいる、私の頭を撫でて微笑んでいる



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:36:44.75 ID:B7F6hwbrO

从;'ー'从「う…………」

( ・∀・)「愛してますよ、お母様」

从;ー;从「モララー……ごめんなさいね、私、私…………」

( ・∀・)「大丈夫、さあ、立って、夕食は私が作りますから」

从うー;从「そうね、ごめんなさいね、モララー……貴方を疑うなんて、私どうかしてたわ」

( ・∀・)「いいですよ、さあ、お母様、食事にしましょう」

从'ー'从「ええ、そうね、モララー……うふふふ……」

なんて可愛い私の息子
私の息子、私だけの息子
モララー、貴方がいれば、お母さん他に何もいらないわ

広い背中に抱きついて、彼のネクタイをそっと外した



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:38:34.20 ID:B7F6hwbrO
・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・


嘘だ

嘘だ嘘だ

正気じゃない、これは夢だ
悪夢だ!
誰が信じれる?この状況を、これは悪い夢なんだよ、誰かそうだと言ってくれ!


俺の目の前には、腹を真っ赤に染めた妻が倒れている
苦しそうな顔で、俺の名前を呼んでいる
手を伸ばして!顔を涙と血で濡らして!俺を呼んでいるんだ!!

引き裂かれた妻の腹から伸びた臍の尾が、俺の目の前まで続き、そして口へと続いている
俺は自分がさっき食べさせられたものは



   我が子なのだと 知った



…………ひっ



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:40:43.78 ID:B7F6hwbrO

あ、あ、ああ?
あ あ、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああーーーーああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

思い切り暴れて、椅子ごとぶっ倒れた

 「ほら、倒れた」

にちゃりとした、食感が口の中に蘇る
ゴムのようなあの感触、割れた中から出てきた液体! むっとした血の臭いが、俺を犯す
俺は何した? 何をしたんだ!? 噛み砕いた! 飲み込んだ!俺が!!
何をかって? そりゃあ俺の子供をだよ!あははははあははは!!

妻の後ろに、観客らしき奴らが沢山居た
皆笑ってる、口笛を鳴らしている奴も居た
皆みんな、笑ってる目に光を湛えないで笑ってるんだ!じゃあ俺も笑うしかないだろう!!ははっ……はっ……はぁっ……はぁっ……

あぁ、おい待て!お前妻を何処に連れて行く気だ!?
ふざけるなよ!!ははっ、お前はこれ以上俺から何を奪う気だ?
おい、なぁ、答えろよ!!
俺が何をした!!?

クソが!笑ってんじゃねーよ!てめぇら!何がおかしい!?



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:43:07.40 ID:B7F6hwbrO

お前ら全員狂ってんだよ!おい、聞いてんのかっ!?

声が、突然俺の頭を撫でてきた、子供をあやすようなゆったりとした動作で
聞きたい事があるんだとさ
は、ははは……、何いってんだこいつは?

そこで初めて、俺は俺の目の前にいるやつのことを認識した
認識して、目に焼き付けて、殺してやろうと思った

……そいつは、俺を見てにんまり笑う


…………ははっ


なぁんだ、お前かよ


・・・・・ ・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:46:15.31 ID:B7F6hwbrO

プロポーズの言葉はなんだったかしら
あの時は舞い上がってて覚えてないの

喜んでるのを悟られるのが、なんだか恥ずかしくて、つい怒っちゃったりしたけど
本当は、すごく嬉しかったの

ねぇ、大好きだよ、ブーン




化粧室で雑談、これ即ち女の鉄則

ζ(゚ー゚*ζ「ねーツンー、今年の夏、どうする? 二人で海とか行かない?ナンパされにいこうよー!」

同僚のデレが、綺麗に巻いた髪をくるくるいじりながら、化粧室で聞いてきた
前までは控えめだった化粧が、最近派手になりつつある
もしかしたら好きな人の影響なのかもしれない

ξ゚听)ξ「アンタ、最近本命の彼が出来たって言ってたじゃない、そっちはどーすんのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、彼は本気だけど他は遊び! ねー行こうよーツンなら絶対いい男釣れるって!」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:48:46.03 ID:B7F6hwbrO

デレの発言に、私はまたか、と呆れつつやんわりと首を振った
彼女は常に「彼氏欲しい」病だ
今はしっかり恋人がいるくせにも関わらず、いつも愛されていたいのかもしれない

ξ゚听)ξ「ん、今年はいいや、色々予定あるし」

ζ(゚ー゚*ζ「えー、何々? もしかして彼氏でも出来たの?」

ξ*゚听)ξ「……まっ、そんなところ」

ζ(゚ー゚;ζ「うっそ、マジでぇ!? 誰誰!? あの鉄壁の女ツンが!」

ξ;゚听)ξ「何よその鉄壁の女って……」

ζ(>ー<*ζ「言い寄る男をバッタバッタとなぎ倒し! 歩いた後には死屍累々! 経理では男殺しのツンという異名も……!」

ξ;゚听)ξ「しらんがな」

一人で大げさにはしゃぎ盛り上がるデレにチョップして、私は持っていたポーチのチャックを閉めた
デレはまだ信じられないといった様子で、興味深そうにニヤニヤ笑いながら、私を覗き込んでくる

ζ(゚ー゚*ζ「……で?相手は?」

ξ゚听)ξ「……誰にも言うんじゃないわよ」

ζ(>ー<*ζ「もちっ!」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:51:51.13 ID:B7F6hwbrO

ξ゚听)ξ「…………耳、貸して」

私が彼、内藤と付き合い始めてから、もう2年になる
最初はまったく眼中になかったけど、一緒にいるうちに、自分でも不思議な程に惹かれていった
騒がれるのが好きじゃない私たちは、会社ではあまり知られていない関係だけど、正直、ラブラブ

本当は、誰にも言わないでおこうと思っていたのだ
デレに言うなと言ったところで口に戸はかけられない

ましてや彼女はお喋りとして有名
そんな彼女に話すということは、もはやバラすことと同意義だ

だけど、それでも話してしまった私は、正直舞い上がっていたんだろう
誰かに自慢したくて、仕方なかったのだ

ξ゚听)ξ「同じ課の、内藤」

ζ(゚△゚*ζ「えーー!?」

ξ;゚听)ξ「ちょっ、バカッ、声でかい!」

ζ(゚ー゚;ζ「なんで!? なんであいつ!? もっといいのうちの会社結構いるじゃん!」

ξ#゚听)ξ「なっ、ブーンはかっこいいわよ!」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:54:08.73 ID:B7F6hwbrO

ζ(ノд-*ζ「あーもー、ブーンとか愛称で呼んでるし!! マジ信じられない……あのツンがメタボ内藤となんて……」

ξ#゚听)ξ「あいつはメタボじゃなくてポッチャリ系なのよ!」

やっぱり彼女に喋ったのは失敗だったかもしれない
彼女にとって、男の価値とは「顔、金、出世」の三つだからだ
そして、その中のどれも、今の内藤は持っていない

だけど、それでも話さずにはいられなかった
嬉しくて、嬉しくて、自慢したくて

ζ(゚ー゚*ζ「で?急に話した、そのワケとは!?」

デレが拳をマイクに見立てて、私の口元へ持ってきた
気分はリポーターと言ったところか

ξ゚听)ξ「ワケって……?」

ζ(゚ー゚*ζ「またあ、今まで黙ってたんだから、急に話す気になったワケがあるんでしょ!?言え、コノヤロ!」

彼女は、私が思っていた程バカじゃなかったようだ
でも、今はそんなデレに感謝する



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:55:55.93 ID:B7F6hwbrO


私はその拳マイクを退け、デレの耳元へ口を寄せた

そして、小さく呟く

ζ(゚ー゚*ζ「……えっ……?」

ξ*゚ー゚)ξ「へへっ…………内緒よっ」


驚くデレに背を向けながら、私はゆっくりと手をあてた



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 22:57:15.23 ID:B7F6hwbrO
・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・・


……どうしたんですか、○○さん

思わぬ知り合いで、びっくりしました?
まぁ、私はそんなこと、どうでもいいんですけどね

ところで最初の話に戻るのですが
ええ、生まれてから物心がつき始めた子供は、母親の胎内にいる時のことを覚えているっていうあの話ですよ

私はね、それを聞いてこう思ったんです

産まれる前の子供を取り込んだら、その親は子供の記憶を有することが出来るかもしれない、とねぇ

ふふふ、おかしいと思いますか?
狂ってると思いますか?

でも、それが間違っているとどうして証明できるんです
人間とは不思議な生き物なんですよ
世の中では我々凡人の常識を覆すような出来事がいくつもあるんです

そうですね、例えば、移植された人間が、元持ち主記憶を見てしまう、とかね
面白いでしょう?
だから、貴方が自分の子供を食らって、母親の胎内に居るときのことを思い出すことに、なんら不思議はないんです




83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:01:13.43 ID:B7F6hwbrO

で、どうです? 何か変化はありましたか?

出来るなら私がやってみたかったんですけどねえ

それで、どうですか
ああ、さっき貴方が食べた部分は悩にあたる部分なんですけども
柔らかくてわかりませんでした?

やはりホラ、記憶は能に蓄積されるかと思いまして

どうですか?
何か思い出します?
暗くてあったかかったときの記憶、思い出せます?
ねぇ?どうですか?
○○さん!

聞いてますかぁ?
ほら、答えてくださいよ!!
貴方は!



母親の胎内に戻りたいと思ったことがないんですかぁ?


・・ ・・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:03:27.16 ID:B7F6hwbrO


年老いた母は私のことを愛していると抱きしめる
年老いた母は私のことを抱いて欲しいと口付ける
年老いた母は私の気持ちなど、実は考えていない



( ・∀・)「…………ふぅ」

仕事を終え、机の上の書類を鞄に仕舞うと、外はもう薄暗い闇が広がっていた
部下は皆仕事を終えたらしく、もう誰も残っていない

私は帰りの支度をしながら、気づかぬ内に重いため息を吐いていた
それは、家に帰りたくないという圧力が、そうさせているのか

まるで虐待を受けた子供のようじゃないか
しかしその答えがあながち間違ってもいないので、私は苦笑せざるを得なかった


( ・∀・)「お母様……」

母は、美しかった
少なくとも、子供の頃はそう思っていた

小学校の頃、授業参観の日は誇らしくてしかたなかった
誰よりも美しい母が私の姿を見に来てくれている、その事実に私は大声で歌いだしてしまいたいほどだった



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:06:06.96 ID:B7F6hwbrO

後ろに並んでいる他の母親がジャガイモに見えた
母が世界の全てだと、母が自分の世界なのだと信じていた

しかし時とは残酷なもので、年月を重ねるごとに母は老い、そして美しさを失っていった

( ・∀・)「…………」

写真の中ではいつでも美しい母が微笑んでいるが、家にいるのは輝きを失った、醜い母親
私は段々彼女を妬ましく思うようになった
彼女のせいで、美しい私の恋人は去っていった
母のように美しかった私の恋人は!

いっそのこと、母の胎内に居る頃まで遡れたらいいのに

そう思うようすらなってきた

( ・∀・)(……帰るか)

しかし頭に浮かんだその答えを振り払い、私は鞄を持ってオフィスを出る
いくらなんでもバカげた考えだ
扉の方まで向かうと、そこで部下の一人と鉢合わせた

  _
( ゚∀゚)「あれっ、課長、まだ残ってたんですか?」

私の部下の長岡だ
彼は相変わらずひょうきんな笑顔で、私に話しかけてくる



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:08:50.65 ID:B7F6hwbrO

( ・∀・)「君こそ、何かあったのですか? もう帰ったものと思ってたのですがねえ」
  _
( ゚∀゚)「いやぁ、ちょっと忘れ物しちゃって……! そういや、俺さっき欝ノ宮先輩の奥さんの所に言ってたんですよ」

すると、聞いてもいないのに長岡は勝手に語り始めた
彼は人の話を聞かない癖がある、社会人としてそれはどうかと思うが、その話題に私の思考はたしかに止まった
  _
( ゚∀゚)「知ってます? 課長、先輩の奥さん、もうすぐ赤ちゃん生まれるんですよ」

( ・∀・)「……ああ、聞いていますよ、来週末、有給の届出ももらってますしね」
  _
( ゚∀゚)「いーですよねー赤ちゃん、俺、お腹見てきたんですけどすげえんですよ! しかも結構バタバタ動いてて……
     あ、課長は結婚とかしないんですか?」

( ・∀・)「……生憎と、お相手が見つからなくてね」
  _
( ゚∀゚)「またまたwww課長なら相手に困らないでしょう!」

( ・∀・)「買い被りすぎですよ、それより、忘れ物を取りにきたんじゃないんですか?」
  _
( ゚∀゚)「あー、そうそう! 俺の嫁〜ん」

そういって、彼は自分のデスクを漁り始めた
大方恋人に関する何かなのだろう
彼は恋多き男と、以前部下が話しているのを聞いたことがある



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:11:18.53 ID:B7F6hwbrO
  _
( ゚∀゚)「お、あった! それじゃあ課長、お先に失礼しまッスwww」

( ・∀・)「ああ、明日遅刻しないようにね」
  _
( ゚∀゚)「サーセンwwそんじゃ、おつかれっしたー」

そういって、彼はオフィスを出て行く
最後まで騒がしい男だった

( ・∀・)(赤ん坊……か……)

羨ましい、と思ったのは誰に対してなのだろう

( ・∀・)「……ん?」

そのときふと、私は長岡のデスクであるものを見つけた



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:13:47.83 ID:B7F6hwbrO
・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・


そいつは、狂ったように俺に話しかけてくる
ああ、わかってるさ

お前はとっくに狂っているんだろうよ

じゃなきゃそんな可笑しな発想が出てくるわけがない
どうしようもなくイカレてるな、お前

そんでもって、俺もイカレてる
こんなことになってるのに、笑いが止まらないんだ

あはははははあは

子供の記憶?
わかるわけねーだろそんなもん、お前はどこのメルヘンチストだ
俺の腹筋を崩壊させる気か

胎内に戻りたい?
俺は今までの人生、ダメでもグズでも頑張って生きてきたんだよ
それなのに戻りたいわけねーだろ



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:16:37.75 ID:B7F6hwbrO

ふざけるな、ふざけるな

ふざけるな、ふざけるなよクソが
本当にふざははははけっんなよなはは、アハハハハハバカヤロウハはアハハハ
ははははハハお前なんかはあはははははははははははあははあははははははは
あははははあはははあっはあはははははははははははははあははははははあは
はははあはははあっはははあはははははははははははあ




殺してやる



・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・
・・・・ ・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:19:03.62 ID:B7F6hwbrO

病室の扉が開くと、そこには見知らぬ男が立っていた
40代前半、と言ったところだろうか?
高級そうなスーツに身を包んだその男は、中々の男前で、私の姿を捉えるとにこやかに微笑んだ

私にこんな知り合いはいなかったと思うが………誰だ?
考えている間に、男は真っ直ぐ私に向かってくる


( ・∀・)「欝ノ宮クーさんですね?」

川 ゚ -゚)「そうですけど……貴方は?」

( ・∀・)「申し遅れました、私、欝ノ宮の上司の毛羅と申します」

上司
そういえば、あいつ嫌な上司がいるとか言っていたっけ
いや、ドクオじゃなくて長岡くんの方だったか
その上司とやらがどうしてここに来るんだろう?

生憎今他のママさんたちは出払っていて、病室には私しかいない

川 ゚ -゚)「私に、何か御用ですか?」

( ・∀・)「ええ、ちょっとお話したいことがございまして……」

川 ゚ -゚)「話?」

明らかに接点はないだろうに、何を話すというのか



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:21:36.72 ID:B7F6hwbrO

もしかしたら彼は自分が悪口を言われていることを知っているのかもしれない
それで私に相談をしに? 部下の妻である私に、どうすればいいか?

……そこまで考えて私は吹き出した
そんな上司、いたら確かに嫌だよな、と

川 ゚ -゚)「まぁ、立ち話もなんですから、椅子でもどうぞ」

( ・∀・)「おや、これはありがとうございます」

すすめた椅子に腰掛けると、彼はにっこり微笑んだ



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:23:25.26 ID:B7F6hwbrO
・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・
・・ ・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・


狂っていると、貴方は仰いますが、本当にそう思っているのですか?

私は思うのです、狂っているのは世界だと

人類は産まれるるべきではなかったんですよ
人類が産まれても、何も得られはしないのですから
存在自体が罪ですよ

だから、皆還るべきなのです
偉大なる母の、胎内にね


……一つ、私の話をしてもよろしいですか?
ええ、まあダメといわれてもするんですけれど、ふふふ、そんなに睨まないで


私は三人兄弟の一番末っ子として生まれました……おや、先ほどの話を思い出しましたか?
あれはただの例え話ですよ

私は兄弟の中でも出来があまり良くなくてね
力もなく、頭も悪いということで、上によく苛められたんです
ねぇ、ひどい話だと思いませんか? 家族なのに、親のいないところで良く殴られました

……えぇ?
苛められないように、努力しない私が悪い?
果たしてそうでしょうか、本当に



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:47:13.13 ID:B7F6hwbrO

それはいじめる側の言い訳に過ぎないと思いませんか?

いじめられる方が悪い
言動が気持ち悪い
頭が悪いから
トロくて鈍いから、だからいじめられるんだ
苛められたくなかったら、努力して努力して努力してそんな自分を変えるべきだ

変える努力もしないで何がいじめられるだ、お前が悪いんだろう……って

まるですべてこっちが悪いような言い方をする!
一体何様なんでしょうかね! 貴方はそんなに偉いのですか?

自分には苛める権利があるとでも思っているのでしょうか!?
自分だって変わらない愚図のくせにね!!

人間には個人差があります、だから、生まれつき頭も悪い子もいれば、生まれつき優秀な遺伝子を持っている子供だって存在するでしょう
しかし彼らはなんの努力もせず、ただひたすら他者へ変わる努力でもしろとバカにする

まったく愚かですね
貴方もそう思いませんか?そういう者たちは、一度同じ目にあってみればいい、と


…………ああ、話が逸れてしまって申し訳有りません
今はそんな話どうでもいいのですよ



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:51:27.04 ID:B7F6hwbrO

何、イジメなんて子供にはよくあることですから、ああ子供だけに限らず、ね

問題は、心の拠り所があるかどうかです
それがあれば、立ち直る者もいます
潰れていく者もいます

私にとっての拠り所とは、母でした

母は美しい人でしたよ、そりゃあもう、綺麗だったんです
優しい微笑みはまるで聖母のようで、いつも私の頭を撫でてくれました
他の兄弟がいないとき、彼女と二人きりの時、それはまるで夢のような時間を過ごしていたのです

柔らかな乳房に顔を埋めて、心臓の音を聞きながら眠るのが、私は何よりも好きでした
ずっとそうしたいと思っていたのです

しかし、そんなこと出来るわけもない
他の兄弟はすぐに邪魔してきますし、父親……ああ、私の父親は、そりゃあ絵に描いたようなロクデナシだったんですがね
子供だけには優しかったんですよ
優秀な子供にね

だから父親も他兄弟の味方でした
私の味方は母だけで、母がいればそれでよかったのです
そして、ふと思い出すんですよ、母親の胎内にいたことを



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:55:12.82 ID:B7F6hwbrO

幻想だと思います?勘違いだと、気のせいだと
貴方は私を狂っていると思いますか?思っているのでしょうね

それでも私は戻りたい、母の胎内に
温かく、全てから守られていたあの場所へ


ねぇ、私の夢を叶えてくださいよ、○○さん


・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・
・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・
・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/13(土) 23:59:24.70 ID:B7F6hwbrO

貴方のためなら、なんだってするよ、大好き

大好き


だぁあいすき
だから私、色んなことを聞いて伝えるの

ねぇ、喜んでくれる?
ねぇ、愛してくれる?

ねぇ、こっち見て
どうして私を見てくれないの?
こっちを見て

見て、見て、見て

………………何見てるの?


ζ( ー *ζ「どうして私を見てくれないの?」

見てくれないなら、いなくていいよ



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:02:02.99 ID:/ofP0qpeO
・・ ・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・
・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・


お前は何を言ってるんだ?

さっきからワケのわからないことをごちゃごちゃごちゃごちゃと
最初に言ったけど、こっちは別にお前の話に興味なんてないんだよ

イジメに関して、お前がつらい目にあったのも
お前が実はマザコンだったことも
こっちにとってはどうっでもいい話だ

そんなもんは家でお人形相手にでも話してろ
他人を巻き込むな

それとも可哀相ね、とでも言って欲しかったの?
つらかったんだね、頑張ったねとでも言って欲しかったの?
アホか、努力するしない以前に、お前みたいな奴は大嫌いだ


答えることなんて何もない
こっちがお前に言いたいことは、一つだけだ



116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:04:35.37 ID:/ofP0qpeO


俺の全てを、生きる希望を、子供を、妻を……


…………ツンを返せお


   長岡!!







  _
( ゚∀゚)「……………………あはっ」



・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・



120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:08:30.15 ID:/ofP0qpeO

壇上で、狂ったように長岡が笑った
腹に手を乗せ、まるで壊れてしまったマリオネットのようにデタラメな動きをしながら

観客がざわざわとざわめき始める
しかし歓声は途絶えることがなく、ここに居る奴らは全員同じなのだと実感した

一頻り笑ったあと、彼は口角を引きつらせて、こっちを見る

  _
( ゚∀゚)「やぁっと名前を呼んでくれましたねぇー、内藤さん!」

( ^ω^)「ふざけるなお」
  _
( ゚∀゚)「そんなに怒らないでくださいよぉwwwへへっwww」

先ほどまでの紳士ぶったような喋り方を止めて、長岡は馴れ馴れしく近付いてきた
肩に手を置き、縛られた僕の目線に合わせ、しゃがみ込む、……近寄るな

( ^ω^)「この狂人が」
  _
( ゚∀゚)「ひどいなぁ、ただ単に、試してみたかっただけじゃないですか
     ぼかぁ傷つきやすいんですよおー」

( ^ω^)「………………」
  _
( ゚∀゚)「どうしたんですか、黙って、あぁ、もしかしてこの喋り方ですかぁ?
     ちょっと課長を参考にねっ、へへwwwwあの人には俺と同じ空気を感じたもんでwwww」



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:12:42.29 ID:/ofP0qpeO

照れたように、長岡が笑う

  _
( ゚∀゚)「ねぇ、内藤さん、そんなことより、どうでした? 味は?
     さっきから聞いても答えてくれないんですもん、教えてくれたっていいじゃないですか」

そんな、こと

(  ω )「………………」
  _
( ゚∀゚)「どんな味でしたか?ああいや、それよりも、まだ記憶は蘇りませんか?ねぇねぇ、教えてくださいよ」

(  ω )「そんな、ことって、どういう意味だお」
  _
( ゚∀゚)「はぁ?」

(  ω )「お前が何に興味あっても、関係ないし、どうでもいいお、ただ……なんで……」


( ゚ω゚)「なんでツンを狙ったんだおぉおおお!!!」


彼女の、ツンの笑顔が蘇る

付き合ってからも、怒ることが多かった彼女だけど、そんな彼女が好きだった
構わないと拗ねて膨れる顔も、ちょっとだけ照れたように笑う顔も、たまにくっついてくるその仕草も
表情が、匂いが、声が、存在が
愛してたのに、何よりも大切だったのに!



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:16:26.92 ID:/ofP0qpeO
結婚しようって言った時、ツンは怒った
ムードも何もない場所で何言ってるんだって、怒って
でもその後で顔を伏せて、真っ赤になって頷いたのを、今でも覚えている

その小さな存在がいとおしくて、幸せにするんだ
そう誓ったのに


(#゚ω゚)「ツンを返せ!!返せ、返せ返せ返せ!! 娘を、俺の娘を返せぇえええ!!」


子供が出来たのって、震える声で言ったツンを抱きしめた
震える体を抱きしめて、嬉しいと耳元に呟いた
二人で名前を考えては、幸せな気分に浸った

同じところで暮らし始めて、ツンはもうすぐ会社をやめるから、これからはずっと一緒だねって
布団の中で笑いあって

(# ω )「殺してやる!殺してやる殺してやる!!お前を絶対に殺してやる!」


"大好き"って

そう言ったのに


(#゚ω゚)「俺の人生すべてかけても絶対にお前を殺してやる!!
     ふざけるなぁあ! お前が、お前が壊したものがどれだけ大切だったか……!!」
  _
( ゚∀゚)「あーあー、そんなことどーうでもいいんですよぉ」



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:20:04.39 ID:/ofP0qpeO

(#゚ω゚)「あぁっ!?」
  _
( ゚∀゚)「ツンちゃんが妊娠してるってのはぁ、今付き合ってる彼女から聞いただけなんですよ
     で、まぁドクオ先輩でもよかったんですけどね、あんまり成長してると食べづらそうだし
     それに、俺ツンちゃんが好みだったしぃ」

こいつは、何を言ってるんだ
さっきから何を

  _
( ゚∀゚)「で、まぁ内藤さんにしたんですけど、っていうか、まぁその辺はどうでもいいんですよ
     俺の興味はアンタの……」

(  ω )「……黙れお」
  _
( ゚∀゚)「えー、それはなくないですか?独り占めなんてズルいですよう
     大体、ツンちゃんはまだ生きてますよ?まぁ子供はもう産めないと思うけど……」

黙れって言ってるんだ

(  ω )「お前は、それだけのためにツンの腹を裂いたのか?
      腹を引き裂いて、泣き叫ぶツンから子供奪って……俺に食わせたのか?」



131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:23:15.82 ID:/ofP0qpeO
  _
( ゚∀゚)「だぁから、最初からそうだって言ってるじゃないですか」

そうかよ









そうかよ



僕は、口元に笑みを湛えて長岡を見た
相変わらずクソみたいに下品な笑いを貼り付けていて、反吐が出るが、今はそれは気にしないことにしよう

( ^ω^)「……最低だな、お前みたいな奴は、苛められて当然だお
      母親の腹に還る? ハン、笑わせるな、母親だってお前みたいのを産んじゃって可哀相だお」
  _
( ゚∀゚)「……は? 今、なんていいました」

( ^ω^)「母親が可哀相だって言ったんだお、本当はお前みたいなの、産みたくなかっただろうに」
  _
( ゚∀゚)「何、言ってんですか、訂正してください」



134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:26:39.85 ID:/ofP0qpeO

( ^ω^)「客観的な事実を言ってるだけだお、しかも戻りたい?いい加減にしろマザコン野朗
      お前は自分のことしか考えられない最低な子供だお、母親だって、きっと戻れたとしてもお断りだろおよ」
  _
( ゚∀゚)「…………撤回、してくださいよ、その発言」

( ^ω^)「断るお、何度でも言う、お前は最低だ、最低で出来損ないの、劣等物だお
      他兄弟の気持ちが少しわかるね、お前みたいな奴と同じ血を分けて、気持ち悪かったんだろうよ
      ああ、可哀相、可哀相なお母さんだお」
  _
(#゚∀゚)「だ、黙れぇえ!!」

長岡の足が、俺の顎を蹴った
脳みそがぐらんと揺れる

  _
(#゚∀゚)「お前に何がわかる!? ママだけは僕を受け入れてくれてるんだ! ママだけは僕の味方だ!」
  _
(#゚∀゚)「ママは僕ので、僕はママのものなんだよ、誰にも介入なんてさせない!」
  _
(# ∀ )「僕のママを侮辱するな!僕を侮辱するな!……ねぇママ、こいつが僕を苛めるんだよぉ!!
     あいつらと同じように……殺しちゃおうか?殺してもいいよね、ママ?
     あいつらみたいに殺しちゃってもいいでしょ? 僕は出来損ないじゃないもんね
     あの男は僕をそう呼んだけど、ママは違うって言ってくれたもんね
     ねぇ、ママ、ママ、ママ………………」

( ^ω^)「…………黙れお、出来損ない」



137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:29:21.07 ID:/ofP0qpeO
  _
(  ∀ )「………………!!」


ジョルジュの腕が大きく振りかざされた
ツンの腹を引き裂いたであろうナイフを持って

来るであろう衝撃に備えて目を瞑る


瞼に浮かんだのは、君の顔
ああツン

愛してたよ


・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・
・・ ・・・・・ ・・・・ ・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・



138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:32:28.16 ID:/ofP0qpeO

取り押さえられる部下を見て、私はようやく安堵のため息を吐いた
長岡の机から、切り取られた胎児の写真を見たときは、体中に怖気が走ったよ

まるでコレクションでもするかのように、何枚も何枚も、別の角度から撮られた写真の数
その異常なコレクションに、私は恐怖と、そして恥ずかしながら僅かな興奮を覚えた

思うに、彼はわざとアレを私に見せたのだろう

好意的に解釈すれば、止めた貰いたかったとも思えるが
恐らく仲間を増やしたかっただけなのだろう

彼は、私にある種のシンパシーを感じたように思えたから
そして、私はあと少しで乗ってしまうところだったのだ

( ・∀・)「……大丈夫でしたか、内藤くん」

(;^ω^)「課長、ツン、ツンは……!」

( ・∀・)「津出さんなら、今保護されて病院ですよ、君も病院に行かなければいけないですね」

(;^ω^)「課長…………」

  _
(#゚∀゚)「ちくしょぉおお!なんでだよ!アンタは俺と同じだと思ったのに!だから見せてやったのに!!」

( ・∀・)「…………一緒にしないでくれませんか」



143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:36:50.18 ID:/ofP0qpeO
  _
(#゚∀゚)「知ってるぜ!? 俺、調べたからな!あんたのこと
     年老いた母親がアンタに異常な愛情を捧げてることも!母親がアンタの恋人を追い払ったことも!
     そんな母親に嫌気が差してたことも!
     アンタ、昔の母親が好きだったんだろ? また元に戻りたかったんだろ!?
     一緒じゃねぇか!」

( ・∀・)「いいや、違う」
  _
(#゚∀゚)「あぁ!?」

( ・∀・)「戻ったところで、どうせまた同じ道を辿るだけだからね」
  _
( ゚∀゚)「…………!」

( ・∀・)「ならば、今を生きて、改善すべきだよ」


長岡は、何も言わなかった。警察が腕を掴み、彼を立たせる
周りにいた客達は、とっくに捕まっているようで、サイレンの音と共に何人も叫びながら連れて行かれる姿が見えた
異常なショーを好む、変態にはお似合いの終焉

「おい!連れて行け!」

長岡は俯き加減で、虚ろな視線をさ迷わせながら歩く
ブツブツと呟き、少しだけ泣きそうな顔で。
私はそれを見て、どこかで終わったのだと感じていた



146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:39:09.34 ID:/ofP0qpeO

この館内は黒いカーテンで覆われていて、途方もない闇のような世界だ
その中に差し込んだ光が、まるで物語の終わりを示唆しているように、感じていた

だが、それは間違いだったようで
ゆらりとした人影が、突如目の前に現れた

ζ( ー *ζ「なんで?なんでなのぉ?長岡くん……」

( ・∀・)「君は……?」

確か、経理の子、立っただろうか
彼女は俯き加減で長岡の前に立っている
…………なんだ?

ζ( ー *ζ「色んなこと、教えてあげたじゃない、なのになんで見てくれないの?
      ツンがそんなにいいの?見てよ、私を見て……」

どこか、違和感がある
そう、白いワンピースを纏った彼女の手には


ナイフ





(;・∀・)「まっ……!」



148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:42:10.74 ID:/ofP0qpeO

私は慌てて止めようとしたが、もう遅かった
彼女はその華奢な腕を振り回し、長岡へ突進していく、彼を捉えていた警察官は
あまりの迫力に長岡から距離をとった

ζ( ∀ *ζ「デレを見てくれないなら……もう、長岡君なんていらなぁあああい!!」
  _
(  ∀ )「ママ、ママママ…………」

  _
( ゚∀゚)「…………あ?」




目の前で、鮮血が噴出した


・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・
・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・
・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・
・・ ・・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・・・・・ ・・・・・



151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:45:00.74 ID:/ofP0qpeO

川 ゚ -゚)「来たか」

('A`)「おーう、調子はどうだ?」

川 ゚ -゚)「上々といったところだな」

('∀`)「……可愛くて可愛くて仕方ないって顔してるぞ」

川*゚ -゚)「フ、フン……」


あの、忌まわしい事件から数日が過ぎた
俺は、自分の会社の人間が、しかも知り合いが関わっていたというのに、自分だけ事件の蚊帳の外だったことに驚きを隠せない
妻のクーすら、関わっていたというのに
後に事件のことを聞かれる近隣の人ってのは、こんな気分なんだろうか
「まさかあの人があんなことをするだなんて……」ってな

川 ゚ -゚)「内藤さんは、どうなったんだ?」

('A`)「ああ、津出さんも一命を取り留めたみたいでね、今は一緒に入院してるよ
    内藤さんの方はすぐに退院できるだろうって」

川 ゚ -゚)「そうか」

('A`)「ただ、津出さんは、もう子供は産めないだろうって聞いた……」

川 ゚ -゚)「………………」



153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:48:24.98 ID:/ofP0qpeO
病院であった内藤さんは、見るのが辛いくらいに憔悴していた
しかし、それでも横たわる妻の手を握って、離れようとはしない、その姿が、また痛々しかった

川 ゚ -゚)「立ち直って、欲しいな……」

('A`)「あぁ……」

俺は、内藤さんが何をされたのかも、津出さんが何をされたのかも、報道されている程度しか知らない
しかしそれでも、内藤さんの精神を蝕むのには十分なものだっただろう
ベッドの傍らで妻の名前を呟く内藤さんを見て、なんと声をかければいいのかわからなかった


( ・∀・)「やぁ、調子はどうだい?欝ノ宮夫妻」

その時、病室のドアを開けて課長が入ってきた
前はどこか無表情な印象があったが、今は晴れ晴れとした笑顔で手を振っている

('A`)「あ、課長……」

( ・∀・)「産まれたんだろう?見せてくれよー」

うりうり、とわき腹を突付かれ、俺は苦笑した
……本当に変わったなあ、この人

('A`)「ちょっと待ってくださいね……」

噂によると、課長のお母さんは今、精神病棟にいるらしい
女子社員の噂なので、信憑性は確かじゃないが、今一人暮らしをしていると聞いたから、本当なのかもしれない
詳しいことは聞けないが、課長が明るくなったのは
お母さんがいなくなったからだろうか、そこまで考えて俺は自分を恥じた



155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:52:03.19 ID:/ofP0qpeO

やめよう、変に詮索するのは
大体、カーチャンってのは大抵偉大なもんなんだ

( ・∀・)「そういうえば、その節はありがとうね、クーさん」

川*゚ -゚)「いえ、私なんかでお役に立てれば……」

おい、妻よ、なぜ顔を赤らめる
そりゃあ課長はちょっと男前だがな、仮にも旦那と子供の居る前でお前!

( ・∀・)「おいおい欝ノ宮くん、そんなに怒らないでくれよ」

(#'A`)「別に怒ってませんが!」

川 ゚ー゚)「ふふ……」

ちなみに、その節というのは、長岡の居場所を教えたのがクーだったらしい
最初、課長は長岡のことに気がついたとき、クーが狙われているのではないかと考えたそうだ
何せクーの腹を見た帰りだったしな

それでクーのところに来たが、無事を確認してどうやら違うと判断したらしい

( ・∀・)「……今だから言うけどね、私がクーさんのお腹に宿る命をこの目で見なければ
     私も長岡と同じ道を歩んでいたかもしれないんだよ、……私と彼は、似ていたからね」

ということらしいが、結局課長は長岡と同じにはならなかった
そうしてクーは長岡のお気に入りの場所というのを、課長に教えたのだ
俺はまったくおぼえていなかったが、どうやらここに来た時、話してたらしい



157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:55:14.48 ID:/ofP0qpeO

( ・∀・)「それで、ハインちゃんは?」

川 ゚ -゚)「ああ、ほーら、ハイン……かちょうさんだぞー」

そう言った妻の、クーの胸元から、小さな娘が声をあげた
まだ生まれたばかりで心もとないが、しっかりと命は輝いている

从゚-从「あぅー」

('∀`)「可愛いでしょ!可愛いでしょ!」

( ・∀・)「君は親バカですねぇ」

課長は苦笑したが、俺にはどうでも良かった
だってそうだろう、せっかくこの世に生を受けた我が子だ、大切な、娘だ

この小さな命を全力で守ろう

そう思って、俺は愛しい我が子へ満面の笑顔を見せた



・・ ・・ ・・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・ ・・・・・・
・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・



160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:57:37.10 ID:/ofP0qpeO

あたし ハイン

ぱぱは どくおっていって ままはくーっていうの

あたしね ぱぱとまま がいて いま すごくうれしいよ

ぱぱは にっこりわらって わたしをなでて

ままは かわいいって ちゅうしてくれるの

みんなだいすき

でもね

あたし ままのおなかにいたときのこと おぼえてるよ

あったかくて くらくて きもちよくて


もっとずっといたかったなあ って

そう おもうの



かえりたいって

ねぇまま あたし           ……かえりたいなあ



162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/06/14(日) 00:59:33.92 ID:/ofP0qpeO
・・・・・・・ ・・・・
・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・

・・・・・・・ ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・







  ( ^ω^)〜〜〜〜〜〜のようです


                        終わり



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