( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです
- 113: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:47:43.23 ID:ckO98Afy0
- 第四話『再会劇』
ブーンは夜になると、自分の部屋で苦悩していた。
逃げたいし、今すぐにでも逃げようと思う。
ただ……実行に移せなかった。
もし見つかったら殺されるんじゃないか。
そう思うと今ひとつ踏ん切りがつかなかったのだ。
コンクリートに囲まれたその部屋が囚人であるかのような錯覚を呼び、余計に決心を鈍らせた。
('A`)「逃げれないならそれもいいじゃないか、結局それ程度の気持ちだったってことだろ。
目先の死と不確定の死、そのどっちに脅えるかだ」
( ^ω^)「……不確定っていうのは、次魔女に会う時って事かお?」
('A`)「そう、それはいつになるか分からない……対してここから逃げようとしたら見つかった瞬間に殺されるだろうからな」
( ^ω^)「……」
- 114: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:48:54.79 ID:ckO98Afy0
- 結局、恐怖とかそういうこと関係なしに人間は目先ばかりしか見ていないんだ。
目先のもので一喜一憂するんだ、改めて感じた。
ピーッ ピーッ ピーッ......
(;^ω^)「!!」
突然のその無機質な電子音に、ブーンは過剰に反応してみせた。
不自然なほど一気に汗が吹き出る。
('A`)「これは……不確定の方が早く来たもんだ」
(;^ω^)「ああ、僕はどうすればいいんだお、もう死ぬしかないのかお……」
ドクオは体を持ち上げると、ゆっくりと部屋の出口に向かって歩き出した。
この音は魔女が出現した時の合図、まずは指定場所へ召集すると約束を交わしたのだ。
('A`)「ブーン……隠れとけ」
(;^ω^)「え……ドクオは……?」
('A`)「何とかうまくやってやるよ、とりあえず隠れとけ」
そう言ってドクオは部屋から出て行った。
- 116: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:50:35.71 ID:ckO98Afy0
- (´・ω・`)「二連続か……やっぱり相手も一人殺されたことで焦っているように見えるね」
川 ゚ -゚)「しかし連戦とは……精神的に辛いですね」
( ゚∀゚)「昼と場所が同じだ、もしかすると同じ奴かもしれんな」
すでに集まった隊員は、各々準備していた。
銃に煙幕弾、銃は予備も何丁か用意していく。
どこまで役に立つか分からないが、備えをしてし過ぎる事もないだろう。
そこに悠長にドクオが歩いてきた。
( ゚∀゚)「おうドクオ、遅いぞ……片割れは?」
('A`)「気づいたらいませんでした、逃げたかもしれないが分からないです」
川 ゚ -゚)「逃げたって……ちょっと待っていろ」
クーは準備も途中で投げ出し、ドクオとブーンの部屋に行く。
部屋にはそれぞれの小さな荷物と布団が置いてあるだけだ、隠れれる所など無い。
大きく重いドアを、大袈裟なほど音を立てて押し開けた。
- 118: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:52:04.22 ID:ckO98Afy0
- その部屋にはそれぞれの小さな荷物と、布団が置いてあるだけでもぬけの殻だった。
川#゚ -゚)「あいつ……どこまで不真面目な……」
('A`)「逃げたもんはしゃーないっしょ、俺を欺くなんてたいしたもんっすよ」
川#゚ -゚)「オマエがなおざりにしなければ済んだ話だ……」
( ゚∀゚)「落ち着けよクー、実際逃げられたものは仕方ないだろう。
そんな事よりも早く魔女の所に向かうべきだろ」
川 ゚ -゚)「……。……そうだな、すまなかった」
( ゚∀゚)「クーは相変わらず真面目だな、そういうところが……」
川 ゚ -゚)「もう落ち着いたから変なことは言わなくても大丈夫だ」
( ゚∀゚)「あーあー、本気なのになー」
そう言いながらも口だけでなくちゃんと手も動かして、改めて二人は相手と交わる準備を整えた。
ドクオは一人それをボケーっと見ていた。
やはり作業は手早く、数分すればあっという間に準備を整え終えた。
- 120: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:53:43.16 ID:ckO98Afy0
- ( ゚∀゚)「とりあえず行ってくるわ」
川 ゚ -゚)「それでは」
いつ今生の別れになるかもしれないというのに、軽い挨拶を告げる。
当然かもしれない、出撃するたびに遺言を残すなどバカバカしい。
それでもまるで朝出勤するかのような挨拶はとても不自然だったが。
('A`)「……ん? ショボンさんは行かないのか?」
と、挨拶をされるショボンに対しドクオは聞いた。
(´・ω・`)「そうだね、いつもながらに僕はここに残るんだ」
( ゚∀゚)「大丈夫、いざとなったらこの人はちゃんと助けにきてくれるよ」
(´・ω・`)「らしいよ?」
('A`)(そういえば前回もそうだったな。これは誤算だ、ブーン大丈夫だろうか……)
そしてショボンをその場に残して、3人は昼と同じ場所へと向かっていった。
- 123: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:56:37.59 ID:ckO98Afy0
- ( ^Д^)「昼の奴らがくるまで……悪いけど遊んでもらうぜ?」
『風力の増強、硬さの強固、衝撃の増強』
突如強くなる風、プギャーはあわせるように砂を上に投げると砂吹雪が起こった。
荒れ狂う砂は無差別にその場の人間を襲う。
砂の一粒一粒が重い、鉛球の様だ。
周りの建物はガラスが割られ、家の壁には大きな音がして無数の穴が空いた。
静寂となったその場には、無数の緑色の痣に骨格を歪めながら倒れるいくつもの人間の死体が残る。
( ^Д^)「ひーふーみーよー……まだ8人か」
そう言いながら周りに注意しつつ、一人一人の腕を逆に曲げていった。
そこには無残な死体だけがポツポツと残された。
その時、パンッ――と突然乾いた銃声が響き渡った。
( ^Д^)「!!」
- 127: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 22:57:58.96 ID:ckO98Afy0
- 突如の発砲音に驚いてすぐに飛びのいた。
常に反射神経と聴覚、第六感だけは増強している。
大抵本能だけで銃は避ける事が出来るのだ。
川 ゚ -゚)「ずいぶん悪趣味な死体が好きなようだな」
( ゚∀゚)「人間は人形じゃないぜ?」
そして3人はその場に姿をあらわすと、待っていましたとばかりにプギャーはにやけた。
この相手の間接を逆に曲げることが出来る、考えただけでうれしさに頬が緩んだ。
( ^Д^)「俺にしてみれば、どっちも大差ないが……もう一人は?」
( ゚∀゚)「逃げたよ」
( ^Д^)「……くく、賢明だな」
残念そうだが緩む頬は止まらない、笑いを一層毒つかせた。
と、そこにドクオが声を出す。
('A`)「そういえば、そいつからオマエ宛に預かったもんがあるぜ?」
( ^Д^)( ゚∀゚)川 ゚ -゚)「!!」
そう言いながらドクオはブーンから預かったCD-ROMをポケットから出した。
- 130: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 23:00:28.31 ID:ckO98Afy0
(;^ω^)「……もうさすがに行ったお?」
ブーンは、ドクオ達が魔女討伐へ向かってからもずっと躊躇していた。
きっともうとっくに魔女の退治に行ったはずだ、絶対とも言い切れたのだが……たった数パーセントの疑心が彼を足止めしていた。
そもそもクーがこの部屋にブーンを探しに来たのは10分以上前になる。
この布団しかない質素な部屋に人が隠れているならば、見つけられないはずは無いのだ。
隠れる場所はないと思ったのだろう、逃げた後だと思ったのだろう。
押し開けたドアの裏側にいるとも知らずに。
まさかそんな隠れ方でうまく相手を欺けるとは、ブーン本人でさえ思ってもいなかった。
(;^ω^)(そうだお、あそこで見つかっていたらその時点で……)
ドクオが作ってくれた最初にして最後だろうチャンスなんだ、ブーンは意を決して扉をあけた。
そして逃げるべく、出口への道を一歩一歩静かに歩いていった……。
- 132: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 23:03:28.49 ID:ckO98Afy0
- カツン、カツンと足音が響くだけで今にも銃口を向けられそうな恐怖に陥る。
足音を小さくしようと努めるも、思うようにいかない。
音がしても何も反応がないということは、心配が不要という事でもあるのだが。
(;^ω^)「……!!」
人の声が聞こえ、足を止めると同時すぐに引き返そうとした。
体が震える、口が一気に渇いた。
呼吸する音でさえ、辺り一帯に響いている錯覚に陥った。
声をかけられない、つまりまだ見つかっていない、このまま引き返すのか……それとも……。
「……、……。……」
(;^ω^)(これは……ショボンさん?)
何故ここに残っているのか、どうして魔女狩りに向かっていないのか?
いやしかし一番安全な人かもしれない、クーとかいう女性なら殺されてもおかしくない状況だ。
何よりのんびりとしていそうな人だから……きっと気付かれないと信じたい。
そもそも戻るという選択肢など端からないと気付く。
先の見えない暗い道を再び前に歩く。
部屋からは僅かな光が漏れており、そこからショボンが覗けた。
- 136: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 23:06:34.95 ID:ckO98Afy0
- (´・ω・`)「……うん、うん。そうか、いよいよか……」
どうやら電話しているようだ。
ブーンは耳をすませて電話の内容を聞き取ろうと試みる、内容が分かればショボンがここに居座るかどうかを確認できるから。
今すぐ現地に向かおうなどと言い出して鉢合わせになったら最悪のパターンだ。
(´・ω・`)「そうだね、その話を聞く以上このまま放置はまずいと思うよ」
ずっと耳を済ませる。
話し相手は誰か、もしかしてクーやジョルジュといった他の討伐隊メンバーかもしれない。
(´・ω・`)「そうか……それじゃ、僕が久しぶりに出ようかな」
誰だ、誰とどんな会話をしているんだ……。
(´・ω・`)「うん、ギコこそちゃんと僕との繋がりがばれないようにね。
とりあえずプギャーは僕が始末しておくから」
(;^ω^)「……!」
人の名前が出た、ギコとプギャー。
しかし残念ながら二人とも知らない人物だった。
(;^ω^)(……プギャー?)
しかしブーンは若干の違和感を抱く名前だった、どこかで聞いた気もした。
そもそも他の人が戦いに出ているというのに……本当にこの人は残って何をしているのか?
- 140: ◆7at37OTfY6 :2006/11/15(水) 23:08:35.19 ID:ckO98Afy0
――瞬間。
一瞬大きな音、揺れる空気――その部屋には既に誰もいなかった。
(;^ω^)「……お?」
さっきまでショボンがいたはずだ、絶対に夢じゃない。
電話していて、そしてブーンが目を離した隙に一瞬で消えて……さっきの音は一体何なのだろうか。
突如消えたショボンに恐怖しつつも、ブーンは覚悟を決め、一歩一歩今まで以上に慎重に出口へと進んでいった。
戻る/第五話