( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです

43: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:01:27.84 ID:NmNm5LDm0
  
第九話『畜生塚』


ツンは池底に足を着きながら、ブーンを確りと掴んでいた。
抵抗しなくなったとはいえ油断できない、既に目が虚ろな彼を、絶対に逃がさまいと掴んでいた。


月の光は思った以上に弱い、池の底まで届く光などたかだか知れていた。
公園にある外灯の方がきつく照らしてくれているくらいだ。

公園とはいえ所詮は池か、底にもなると汚く色々な物が沈んでいる。
ブレスレットや指輪といった高級そうなものから、三輪車のような大きな物も伺えた。

藻が生えていてとても拾い上げる気になどならないが。


ただ、それらと一緒に沈んでいるというのも中々に不快である。

ξ;゚听)ξ(汚いわね本当……もっと水もちゃんと浄化しなさいよ……)

などと悪態をつきつつも、ツンは改めてブーンを殺す算段に入った。



46: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:03:15.03 ID:NmNm5LDm0
  
ξ゚听)ξ(とりあえずあと十数分だけここにいればいいかな?
   意外に心配機能が停止しても人って蘇生できるみたいだし……
   でもそれだともっと長い時間かけて確実に――)

( 'ω`)(チン……)


考えるツンの頬にブーンの手が伸びた。

何が起きるのだろうか、そう考える暇はなかった。


そのままブーンは……ツンの唇に自分の唇を重ねた。



ξ 凵@)ξ(…………ッ!!!!111)



48: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:05:02.26 ID:NmNm5LDm0
  

ブーンは何も考えていなかった。
その朦朧とした世界で感情もなくやった行為の一つだった。


そして唇を合わせたまま……彼は一気に息を吸い込んだ。



ξ 凵@)ξ(――――











53: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:06:44.91 ID:NmNm5LDm0
  
ξ;゚听)ξ(――――ッ!!)


一瞬世界が真っ暗になった。
意識が瞬間飛んだのだ。
それもそうだろう、一気に体の中の酸素がなくなったのだから。

意識が戻ると同時、激しい頭痛と苦渋が襲い掛かる。

ξ;゚听)ξ『酸素の肥大』

とりあえず自分がこのままだと死ぬ。
慌てて残った酸素の量を増やした。


(;゚ω゚)(むふっ、むふっ……ッ!!)


ブーンは何とか空気を手に入れて意識を取り戻したか、相変わらず辛そうにはしていたが、先ほどまでの様に朦朧とはいしていない。

それ以前に彼はくっつけた唇を離さない。
肘でしっかりとツンの頭を捕まえて、唇を合わせたままでいるのだ。



59: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:08:49.68 ID:NmNm5LDm0
  
ξ;゚听)ξ(キメェ、頭はなせバカヤロウッ!!)

首を振るも相手は完璧にツンの頭を捕まえている。
ツンが首を動かせば、ブーンは体ごと同じ方向へと動いた。

ξ;゚听)ξ『酸素の肥大』

焦りながら相手を引き離そうとするが、がっちりと固められた腕はまったく離れようとしない。


止めてくれ、止めてくれ、止めてくれ。


嫌な思い出がフラッシュバックする。

ξ;゚听)ξ(この変態が、離れろッ!!)

目の前というにも近すぎる位置にある相手の頭にツンは拳をぶつけた。

ξ#゚听)ξ『衝撃の増強』

水中で思うような大きな衝撃は与えられないも、増強する事でそれなりの攻撃にはなる。
相手の頭は大きく横方向にふっ飛ばされ、体が大きく曲がった。



64: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:10:36.33 ID:NmNm5LDm0
  
……が、依然ブーンはツンの頭を離そうとしない。
ずっとその手で抱き締め続け、ツンの頭ごと横へと動いた。
そして唇はずっと重なったままだ。

ξ#゚听)ξ(しつこい、しつこい、もう殺す死ねッ!!)
   『衝撃の増強』

そしてツンがブーンの腹に拳を突き立てた。


(;゚ω゚)(モルスァぁぁッ!!!)


腹部への鈍痛に驚き、体内の二酸化炭素を全て吐くブーン。
唇を合わせるツンは一気に大量の二酸化炭素を体に入れられ……一瞬で意識が飛んだ。









65: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:12:34.91 ID:NmNm5LDm0
  


(;゚ω゚)「ぶわっはぁあっ!!」

静かな公園の池からブーンは顔を出すと、一気に空気を吸った。
同時にひどい頭痛を感じるが、こんな所で卒倒しては再び池の中だ、少女を担ぎながら何とか必死の思いで岸へと泳いだ。

そしてツンを岸に上げると、自分も続いて岸に上がってそのまま倒れ込んだ。

(;゚ω゚)「はふぅ、ふぅ、ふぅぅ……はっ、はふぅ……」

頭が痛い、呼吸が安定しない。
吸っても吸っても、まるで肺が呼吸を拒むかのように息ばかりが外に出ようとする。
激しい嘔吐の気もある。

気持ち悪い……もう、寝たい。
眠ればきっとこの苦痛からも解放されるのだろう。

(;-ω-)「はぅ……ふぅ……」

頭がやっぱり痛い、それが気になって眠れない。
そんな事を思っているとすぐにも睡眠につけた……。








69: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:14:21.36 ID:NmNm5LDm0
  


ξ;゚听)ξ「!!」

起きると真ん丸い月が自分たちを照らしていた。
自分たちとは、自分と……となりにいるこの青年。
ピザ、キモメン、オタク、色白、短足、荒い鼻息……そんな青年。

ξ;゚听)ξ「……本当に私を助けた……の?」

( -ω-)

正真正銘のバカだ、こんなにバカな人間を見たことはない。

そして同時、唇を勝手に奪った相手に嫌気がさした。

ξ#゚听)ξ「こんなヤツに……私の過去が……」

一瞬にして生まれる殺意。
眠る青年の喉に両手を添える。

ξ#゚听)ξ「……」



72: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:16:03.44 ID:NmNm5LDm0
  
しかし両手を添えただけで力を入れることが出来ない。
悔しいのに、悔しくて……なのに、殺すことが出来ない。

   『……オマエは羨ましいんだろ?』

ξ#゚听)ξ「違う、違う!」

   『自由に動く俺が、人間を怖いと思わず殺せる俺が』

ξ#゚听)ξ「違う、私だって……違うっ!」

   『一族の復讐か何かに縛られているだけの自分が惨めに見えてくるのが嫌なだけだろう?』

ξ#゚听)ξ「違うッ!!」

その場で叫び続けたが、その手がブーンの首を締める事はとうとうなかった。


ξ#;凵G)ξ「くそぉ……なんで私なんて助けたのよ……くそ、くそっ!」


叫び続け、ひたすらに叫び続けた後に一時の静かな空間が生まれる。
そして次の瞬間、誤魔化したかのような笑い声が響いた。

ξ 凵@)ξ「ふふ……そうよ、何も私が殺す必要なんてなかったのよ……」



74: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:17:52.33 ID:NmNm5LDm0
  
気付いて立ち上がると、そんな彼女の目の前に一人の男が立っていた。
ジョルジュだ、さっきのツンの叫び声を耳にしてやって来たのだろう。

( ゚∀゚)「……こんばんは、そこで寝転がっているヤツはオレらの知り合いなんだが……返してもらえないかい?」

ξ゚ー゚)ξ「いいわよ、どうぞ勝手に取って行って」

( ゚∀゚)「……オマエは魔女だよな?」

ξ゚ー゚)ξ「魔女のツンよ。そいつによろしく言っておいて」
   『恋心の増強、衝撃の増強』

言葉を残すと、ツンは地面を強く蹴って一瞬でその場から離れた。

ξ゚听)ξ(いい気味よ、私に恋をして味方と対立して……裏切り者として仲間に殺されるといいわ!)

自分と行動を供にして、そしてキスをして少なからず生まれただろう、相手の自分に対する恋心。
それを利用した。


ツン自身が手を下すまでも無い、裏切り者として処罰されるがいい。



75: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:19:28.64 ID:NmNm5LDm0
  




( 'ω`)「う……うん……」

(´・ω・`)「起きたかい?」

ショボンが声をかけてもブーンの反応は無かった。
寝返りでもうっただけなのだろう。

(´・ω・`)「やれやれ……」

肩をすくめると、再びショボンはその隣で本に目を戻した。



76: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:20:59.04 ID:NmNm5LDm0
  




( ^ω^)「……ショボンさん」

(´・ω・`)「なんだ、起きていたのかい?」

( ^ω^)「どうして僕はここにいるんだお?」

ブーンは未だ自分の立場が分からずにいた。
敷かれた布団、辺りに漂う苔むした臭いは、間違いなく討伐隊の本拠地のものだ。
そもそもショボンがいるのだからそれは間違いないのだろうが。

逃げようとしたにも拘わらず、どうしてブーン自身が匿ってもらえているのか。

(´・ω・`)「うん、君は魔女に騙されて僕たちを裏切ったんだ」

( ^ω^)「……?」

(´・ω・`)「君は魔女に騙されていたんだ。
   だから裏切ったんじゃない、裏切らされたんだ」

言葉を淡々と語りながらショボンは本のページを捲った。

(´・ω・`)「……そうなっているよ」



79: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:22:43.40 ID:NmNm5LDm0
  
そうなっている。
この人はどこまで自分を疑ってどこまで自分を信じているのかと不思議になってくる。
ここから逃げようとした時も、実は自分に気付いていたんじゃないのか……そう考えてしまう。

( ^ω^)「……他の皆は?」

(´・ω・`)「魔女の基地とでも言おうか……集まっている場所が分かってね。
   そこに向かったよ、ドクオ君も含めて」

( ^ω^)「……そうですかお」

(´・ω・`)「ああ、それで伝言だよ。
   君と一緒にいた少女は……ツンと言う魔女だったよ」

(;^ω^)「!!」

ショボンが言うと、ブーンは驚きを露にして……同時に唇を噛んだ。
その時の感情を、彼はなんと表現すればいいのか分からなかったのだ。
恋という感情を。

そしてすぐにも決心した。

( ^ω^)「僕も……相手の基地ですか、行きたいお」



81: ◆7at37OTfY6 :2006/11/19(日) 22:24:25.83 ID:NmNm5LDm0
  
(´・ω・`)「VIP倉庫だよ、ここからだとちょっと距離があるかな?
   これを出したらタダでタクシーにも乗れるから使うといい。
   タクシーもここら辺までは魔女のせいで中々来てくれないけどね、電話で無理矢理呼びつけるといいよ」

手渡されたものは、自分の写真と『討伐隊証』と書いてあるカードだった。

でも違う、ブーンは何も魔女を討伐するために向かうのではない。
あの子にもう一度会うためだ。
そして、あの子を殺すことは……何としてでも止めないといけない。

あの子が……ツンが、好きだから。

( ^ω^)「ありがとうございますお、ショボンさん。
   それでは行ってきますお」

ブーンはすぐにも起き上がると、自分の体の好調を確かめて外に向かった。
目指すはVIP倉庫だ。
討伐を……何とかして止めないといけない。

(´・ω・`)「……さて」

ショボンはブーンが行ったのを確認すると、携帯電話を出して電話をかけた。

相手は当然ギコという魔女だ。



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