( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです
- 6: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:49:49.19 ID:ByRXHuAL0
- 第十一話『信義則』
銃弾が響いた後のまた少しの平穏。
この平穏がまた神経を刻み続けた。
動きの無い静かな空間は、時の流れが遅すぎたのだ。
ξ;゚听)ξ(よし、なんとかまた無駄に発砲させれたわ……
残りは何発か……銃弾のなくなった振りには気をつけないと)
ツンも若干の疲れを見せてきていた。
相手ほどでないにしろ、集中しなくてはならないのは同じなのだ。
銃が当たれば魔女だって死ぬし、魔女の力も無尽蔵なわけでは無い、限界がある。
もともと衝撃の増強などを得意としないツンにとっても、この戦いは辛いものだった。
ξ;゚听)ξ(そろそろ、銃弾も限界でしょう……)
それは希望か推測か。
祈るようにツンは考えた。
そんな彼女の鼻を、不自然な香りが突く。
ξ゚听)ξ(……何この臭い?)
- 7: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:51:35.22 ID:ByRXHuAL0
- 少し開いている入り口から指す光が、濁り淀んだ空気を照らす。
よく見ると辺り一帯に、僅かに赤い光が灯っている。
弾けるようなパチパチとした音も響き渡った。
ξ;゚听)ξ(もしかしてコイツら……!)
(;゚∀゚)(よし、ナイスだドクオ!)
作戦が成功した事を確認すると、ジョルジュは声を出した。
(;゚∀゚)「何が起きているかは……分かるな?
この場でオマエはどうするつもりだ?」
ξ;゚听)ξ「へぇー、随分なめたマネしてくれるじゃない」
話している間にも、倉庫周りの火の手は一瞬で燃え上がる。
ガソリンをまいての放火、加えてぼろくなった倉庫は一瞬で燃え上がった。
白い煙が辺りを包み、薄い木製の壁はすぐにも剥がれ落ちる。
既に互いが互いの位置を把握できるまでにその場は明るく燃え囲まれていた。
- 8: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:53:18.19 ID:ByRXHuAL0
- ドクオの考えた作戦、それは魔女が増強しか出来ない部分を利用した。
魔女は炎を消す事は出来ないのだ。
彼らに出来るのは、炎の勢いや気温・温度をさらに上げる事と……逃げることのみ。
ジョルジュとクーはツンの位置を把握すると、その両脇に別れる。
(;゚∀゚)「さて、魔女さん……どう出る?」
白い煙がたちこめ、視界は随分とアバウトになった。
出入り口からの光は分かるも、それ以外の眩しさは炎なのか光なのか分かりはしない。
川;゚ -゚)「……?」
と、クーが違和感に気付く。
相手が……震えている?
自分たちなんて見ていない、その辺り一体を埋め尽くす炎にガタガタと震えきっていた。
ξ;゚听))ξ「あ……あああ……ああっ!」
止めてくれ止めてくれ、脳裏に再びフラッシュバックする昔の記憶。
家の無くなるその瞬間、燃え上がる炎。
- 9: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:54:52.20 ID:ByRXHuAL0
燃え上がる、炎。
ξ;゚听)ξ「きゃああぁぁぁ!!」
衝撃を増幅したのか、一気に倉庫の出入り口へと駆けたツン。
僅かに開いた扉の間をするりと抜け、その炎と煙の空間から逃げ出した瞬間……彼女の目に巨大なバールが写った。
ξ;゚听)ξ「あ――」
素早く倉庫を出たツンにドクオはバールを振った。
ツンは自分で生み出したその勢いで、ドクオの振ったバールに勢い良く突っ込んだ。
ゴゥンッ!
咄嗟に自分の額を堅くしたのだろうか、その音は鈍い音だった。
- 10: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:56:26.66 ID:ByRXHuAL0
ツンの頭は上にガクンと曲がる。
視界一面の空……今日は雲が多かった。
続けて体全体が上を向くが、勢いは止まらない。
目の前が一瞬で黒く染まると、頭を地面にぶつけた衝撃が全身を駆け抜ける。
そのまま体に引き摺られて数メートル飛んだ。
(;'A`)「つぁっ!」
怒涛の衝撃に、ドクオはバールを放り投げて思わず叫び上がる。
そして振動は腕から肩に、そして頭にまで響き渡った。
後頭部への強烈な痛み、しゃがみこんだ。
一方ツンは額から血を流し、倒れたまま動かない。
生きているのだろうか?
そこがまず疑問に上がるくらいの衝撃だった。
- 12: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 22:58:16.04 ID:ByRXHuAL0
- (;゚∀゚)「ドクオ、やったか!?」
そこへジョルジュとクーが駆け寄ってくる。
ジョルジュはすぐにドクオへと駆けて、クーはツンに向かって銃を構えた。
川;゚ -゚)「よくやった、ドクオ」
(;'A`)「ったく……尋常でない堅さだな……」
ドクオの作戦というのは魔女が炎を消せないこと、そしてこの倉庫が火の回りの早い古びた木造だったこと。
さらには相手を追い込んだ状態で、ジョルジュとクーが『わざと』出入り口前を無防備にすることで相手をそこから飛び出すように誘導した。
視界の悪い煙の充満した状況では、ドクオが待ち構えていることに気付く事もできない。
唯一意外だったのは、ツンが異状なまでに炎に怯え、早々に脱出したことだ。
本来ならもっとぎりぎりまでジョルジュとクーが引き付け、一歩間違えれば二人もただでは済まない程の危険をはらんでいた作戦でもあった。
- 14: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:00:11.57 ID:ByRXHuAL0
- 未だピクリとも動かない少女。
おそらく死んだ、誰もがそう思った瞬間……僅かに声が漏れた。
ξ 凵@)ξ「ぅん……」
川 ゚ -゚)( ゚∀゚)('A`)「!!」
咄嗟にツンへ向かって銃を構える三人。
その前で、ツンは上半身を持ち上げた。
ξ>凵)ξ「う……つっ!!」
目を開けた先にはこちらに銃を構える三人。
頭が痛くグラグラする、目を開くのすら正直辛い。
こんな状況でこの三人を相手にするのは……無謀というものだ。
しかし彼女に後はない、このまま逃げ帰っても魔女としての居場所も無い。
ツンは不敵に微笑んだ。
ξ;゚ー゚)ξ(とりあえず、ここをどうにか切り抜けないと……難しそうね)
痛む頭、一先ずこの状況で戦うのは賢いやり方ではない。
一旦休戦を求めるのが賢いやり方だろう。
体調さえ取り戻せば相手が三人がかりだろうと、倒すことはそう難しくはないだろう。
- 15: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:02:00.31 ID:ByRXHuAL0
- ( ゚∀゚)「さて……年貢の納め時だぜ?」
川 ゚ -゚)「最後に言い残す事はないか?」
ξ゚听)ξ「……」
『同情の増強』
ツンが相手の同情心の増強をすると同時、ジョルジュとクーの表情に変化が見えた。
ここでツンが少し辛そうな、悲しそうな表情を見せるとなお二人の顔が歪んだ。
耐え切れない、そんな様子だ。
あまりに心痛くて、このまま銃を構え続ける事ができないのだろう。
『ジョルジュとクー』は。
パンッ
響く銃声。
ツンのすぐ横を銃弾は通った。
('A`)「あー、やっぱ手が痺れてるといけねーな。すごい衝撃だ……」
- 18: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:03:39.19 ID:ByRXHuAL0
- ξ;゚听)ξ「……え、なんで……」
口がパクパクと開くばかりで言葉が出てこない。
何故同情しないの?
なぜそう考えもなしに銃を撃てるの?
何故、何故、何故?
(;゚∀゚)「オマエ……もしかしてオレらの同情心でも高めたか?」
ジョルジュが気付いて言うと、ツンはバツの悪そうな顔を返した。
同情が増幅されているのだと分かれば話は早い、ジョルジュもクーも改めて銃を構えた。
自分の同情心を自分で疑ってかかれば、さほど大きな障害ではない。
ある程度は吹っ切れる。
そして残るは引き金を引く、一瞬の勇気だけだ。
ξ;゚听)ξ「あ……ああ……」
- 20: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:05:21.63 ID:ByRXHuAL0
- 改めて銃を構える三人、対して逃げ道を失ったツンは恐怖に体を強張らせた。
('A`)「悪いな、感情なんてしようと思っても出来ないんだ」
ツンは恐怖と困惑に苛まれた。
なぜだ、普通は逆じゃないのか?
隠そうと思っても感情は現れてしまうものだというのに……コイツは逆なのか?
感情なんて勝手に湧き出るものだろう、自分の意志でどうにかできるものではないだろう?
('A`)「こちとら異端児でね」
ξ;゚听)ξ「ひっ……!!」
怖がるツンに少なからずジョルジュとクーは迷いが生じる。
殺さなくてもいいんじゃないのか?
本当に殺してしまうのか?
見て取れる彼らの戸惑い、そしてドクオの異常性。
眉一つ動かす事無く、彼は引き金に改めて手を掛けた。
じりじりと引き金を引いていく。
('A`)「じゃあな」
ξ;゚听)ξ「いや……ッ!」
- 22: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:07:00.97 ID:ByRXHuAL0
- (;^ω^)「止めるお!!」
突如響いたブーンの声。
間一髪、ドクオは引き金を引ききらなかった。
が、その指を戻す事もせずにドクオはブーンに顔を向ける。
ブーンは間に合った、ギリギリで。
呼吸を乱しながら無表情なドクオを睨み返す。
('A`)「それで……どういうつもりだ?」
(;^ω^)「どういうつもりと言っても……とりあえずダメだお、絶対に引き金を引いちゃいけないお!」
('A`)「何故?」
(;^ω^)「それは……!!」
皆が固唾を呑んでその場面を見守った。
無感情のドクオに対してブーンの言った言葉は、あまりに自分勝手な言葉だった。
( ^ω^)「僕が……ツンを、好きだから」
- 23: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:08:47.90 ID:ByRXHuAL0
- その言葉にどう反応すれば良いか分からずに皆唖然とした。
しかしドクオは驚いた様子も呆れた様子も無く、ブーンに言葉を返す。
('A`)「その愛情っていうのは……多分、コイツに植え付けられたものだぞ? それは分かるな?」
(;^ω^)「それは根拠がないお……」
('A`)「仮定の確定の話だ。どちらも証明出来ることじゃないからこそ……聞いてるんだ。
なのにオマエは自分勝手でこの魔女を殺すタイミングを……逃させるのか?」
(;^ω^)「構わないお、ツンを殺したら……」
ブーンはここで息を吸い込むと、大きく叫んだ。
(;^ω^)「ツンを殺したら、僕がオマエを殺すお!」
全霊の叫びが、その場に轟いた。
- 26: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:11:14.13 ID:ByRXHuAL0
- ツンは……どうしてブーンをこんな事にしてしまったのだろうかと泣いていた。
事実なんだ、この男が自分を好きなのは魔女の力によるものなのだ。
裏切られて殺されろなんて思った。
自分を助けたこの男を、自分の手で殺す気になんてなれなかったんだ。
なのに……どうしてまた自分を助けようとするんだ。
どうして……どうして自分の事を考えないんだ。
他人のことばっかり……私のことばっかり……。
ξ;凵G)ξ「バカ、バカ……何やってるのよ、バカ……」
力無いツンの声、ブーンはその声に応えるように力強い眼でドクオを睨んだ。
ドクオは意志の無い目でツンを見る、互いの目線が交錯した。
('A`)「オマエ、ツンっていうのか?」
ξ;凵G)ξ「そうよ、だから何!?」
- 28: ◆7at37OTfY6 :2006/11/20(月) 23:13:01.22 ID:ByRXHuAL0
- ('A`)「オレは感情なんてない、オマエを殺すことには何も思わない。
ただ……友人の言葉を裏切ることだけはしたくないんだ、運がよかったな」
そしてドクオも銃を下げた。
ξ;凵G)ξ「えっ……」
( ^ω^)「ツン!」
それを確認するとすぐにツンの元へ駆け寄るブーン。
ツンはもう抗う力なんて無かった。
ξ;凵G)ξ「バカ、バカ……そいつの言うとおりよ、私の力であなたが私に好意を抱くようにして……分かる?
私はアナタを騙して……そしてこうやって助けてもらっているのよ?
ムカついた? 怒った? 殺したいと思った?」
(#^ω^)「いい加減にするおッ!」
ξ;凵G)ξ「……ッ!」
(#^ω^)「僕はツンが好きなんだお! 魔女とかそんな事どうでもいいお、好きなんだお!!」
ブーンはツンを無理矢理抱きしめた。
そして……この戦いは幕を下ろした。
- 74: ◆7at37OTfY6 :2006/11/21(火) 21:50:06.31 ID:0/B2jX8b0
そんなブーン達を遠くから見る影があった。
(´・ω・`)「やれやれ、どうやら僕の出番はなかったようだね……」
遠く、建物の上に立ち眺めるその者は、ショボン。
一部始終を見ていたが、こうも見事に魔女を倒すとは思ってもいなかった。
(´・ω・`)「それにしても、魔女を殺さずにすむとは……こればかりは誤算だね。
まったく、こっちの身にもなってもらいたいものだよ」
ヤレヤレと肩をすくめると、地面を大きく蹴ってショボンは姿を眩ませた。
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