( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです

269: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:18:54.93 ID:nvDwzRG50
  
第十四話『黄信号』


夜、辺りが暗くなり外灯が点きだした頃にショボンは討伐隊の拠点に帰ってきた。

(´・ω・`)「ふぅ、雨に降られて大変だったよ……」

(;゚∀゚)「ショボンさん、遅かったじゃないですか!
   町じゃ大変ですよ、また一人魔女が死んだって!」

(´・ω・`)「うん、偶然出会ってね。逃がしてくれなかったんだ」

しれっと言うショボンに、ジョルジュは頭痛を覚えた。
この人は本当に……どうしてこうも緊張感が無いのか?

(;゚∀゚)「その話題で各テレビも持ちきりですよ!」

(´・ω・`)「うん、まぁいいじゃないか。
   それよりもツン君のところに案内してもらえるかい?」

自分がどれだけすごい事をしでかしたのか自覚はあるのだろうか?
そんな事を思いながら、ジョルジュはツンとクーの部屋にショボンを案内した。
二人揃ってそこにいると考えていたが、ドアを開けても二人はいない。

「?」マークを浮かべて、とりあえずブーンとドクオの部屋にツンの居場所を聞きに行く事にした。



271: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:21:00.78 ID:nvDwzRG50
  


クーはその頃、射撃練習場で銃を撃っていた。

自分の悔しさをぶつけるように。

発砲した銃弾は全て的の中心近くを貫通する。
どんな体勢になろうとも的を外さない。
感覚だ、狙いを丁寧に定めずにも的を打ち抜くことが出来る。

正に自分の体と銃が一体化しているとでも言おうか、的確に狙い撃った。

完璧だった。

川 ゚ -゚)「……」

銃の腕だけはずっと誰にも負けなかった。
それがクーのプライドであり、自我だった。

時間を置かずに次々に出てくる標的、クーは即座に銃を構え、廃弾を捨て、そして的目掛けて打った。

クーは常に銃の腕だけずば抜けていた。
他が悪かったわけでは無い、ただ他は他人に自慢できるほど卓抜したものではなかった。

銃の腕だけは秀でていたのだ。



272: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:22:59.07 ID:nvDwzRG50
  
川;゚ -゚)「く……ッ!」

体勢を崩した、それでも撃てば銃弾は的に吸い込まれていく。

体勢を戻して、再び撃つ。


銃の天才と謳われたクーだが、今まで一度も勝てなかった人がいる。
それがジョルジュだった。
唯一と言ってもいい、彼女が心から尊敬できる人間だった。


川 ゚ -゚)「……ふぅ」

口から息を吐くがまったく落ち着く暇は無い、銃は絶え間なく発砲声を鳴り響かす。
右手に持つ銃弾が6発を打ち切った、すぐに廃弾を捨てると同時、左腕に持つ銃で標的を狙い続ける。


両手持ちに変えたのも彼に出会ってからだった。
ジョルジュが両手で銃を構えているから……だから自分も両手撃ちにした、無駄なところだけ女らしい。

彼に少しでも追いつこうと勉学から自己鍛錬に至るまで日々没頭し、ジョルジュの後を追うように自分も出世していった。
銃の腕ではクーとジョルジュの隣に並べる者はいない程だった。

そしてジョルジュという人間についても分かってきた。
クーが不真面目を倦厭するのは、頑張ってきた自分への冒涜行為が許せないだけでない。
そう、人がいいジョルジュは嫌に思っていても絶対に怒らないから、だから代わりに彼女が怒りを露にするのだ。



273: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:24:47.03 ID:nvDwzRG50
  
川 ゚ -゚)「……」

それで二人は討伐隊の代表となった。
二人で戦って……頑張って勝とうと思った。
平穏を取り戻そうと思った。


銃では無理なんだ。
感慨無量なほど無力感を味わった。


川;゚ -゚)「……くそ、くそッ!!」


雑念が入ると、狙いは次第に外れだした。
弾痕がマトの中に残る事は無くなる。

  カチッ カチッ

気付いたら銃弾がなくなっていた。
こんな事にも気付かないなんて……まったく集中力を欠ききっていた。

銃を足元にぶつけた。



274: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:26:28.33 ID:nvDwzRG50
  
ダメなんだ、銃なんかじゃ魔女には何の意味も持たないんだ。

当然のように避けられてしまうのだ。


悔しさで震え上がった。

自分の存在を否定される相手と彼女はずっと戦っていたのだ。
彼女のアイデンティティとも言える、銃を諸共しない相手と。

川;゚ -゚)「く……」

肩で息をした。
この悔しさ、情けなさ、自分の小ささ。

ジョルジュのように銃無しで魔女と戦えたりもしない。
彼女には銃しかないというのに……。


ξ゚听)ξ「あ、クーさん見っけ」

川 ゚ -゚)「……ツンか。どうした?」

射撃場の入り口からクーを見つけると、ツンは笑顔でトテトテと歩いてくる。
すぐにいつもの彼女に戻してツンに対応した。



276: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:28:21.68 ID:nvDwzRG50
  
ξ゚听)ξ「気付いたらいないから、どこに行ったか探してたの」

川 ゚ -゚)「スマンな、迷惑をかけてしまったようだな」

ξ゚听)ξ「ううん、いいよ」

そう言いながらツンの頭を撫でてやった。

川 ゚ -゚)「ブーン達の所へ行けばよかったのに」

ξ゚听)ξ「私あのドクオってヤツ嫌い」

川 ゚ -゚)「そうか……」

相当嫌われたもんだなとクーは皮肉で笑みを浮かべた。
それにしても自分こそどうしてこんなに好まれているのやら。

川 ゚ -゚)「……」

そうか、ツンがいるじゃないか。



278: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:30:23.22 ID:nvDwzRG50
  
川 ゚ -゚)「ツン、お願いがある」

ξ゚听)ξ「お願い?」

川 ゚ -゚)「銃の、火薬の爆発の衝撃を強めてもらえないか?」

ξ゚听)ξ「……私なんて大した事無いよ? それでもいいなら」

ツンの返事を聞くや否や、クーは改めて銃を準備して今度はしっかりと標的に構えた。
狙いをつける、集中する。

ξ゚听)ξ「……いいよ、いつでも」

川 ゚ -゚)「合図は人差し指を二回、トリガーに当てる。
   三回目で引き金を引く……いくぞ?」

クーは狙いを定めて引き金に構えた指に力を入れる。
汗が出た、未だかつて無いほど緊張していた。

失敗すれば銃が暴発する、ジョルジュのそのシーンを見た。
でも……暴発するかしないか、その限界の力で弾を放てれば……。

人差し指で合図を出した。
……トン、……トン、――



279: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:32:08.51 ID:nvDwzRG50
  
   バンッ

銃が手から離れた。
恐ろしい衝撃、しびれた手は銃を持った形のまま固まった。

銃が地面に落ちる。


そして銃弾は……見事マトの中心を打ち抜いていた。


川 ゚ー゚)「……これなら」

この衝撃は恐ろしい、一発撃ったらしばらく銃は握れなくなるかもしれない。
それでも……きっとこれなら魔女に対応できるはずだ。

川 ゚ー゚)「ありがとうツン、これなら私も……きっと戦える」

ξ゚听)ξ「戦えるって……魔女に?」

そう言われてハッとした。
そうだ、ツンは魔女なのに……魔女同士戦えと言うのか?
今更ながら自分の傲慢さがに気付くなど、とても愚かだ。

川 ゚ -゚)「悪いな、ツン」

ξ゚听)ξ「……ううん」

言いながらツンは泣きそうな表情を見せた。



280: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:34:51.08 ID:nvDwzRG50
  
そう、彼女は既に戻る所を失ったのだ。
今は人間側に世話をして貰ってるとはいえ、そこにいる自身に対しての嫌悪感と、人間側への感謝が葛藤していた。
自分がどういう行動をとればいいのか、宙ぶらりんな状態だったのだ。

ξ;凵G)ξ「クーさん」

川 ゚ -゚)「……なんだ?」

ξ;凵G)ξ「私はまだ悔しいのに……でも、人間が分からない……。
   どうなんだろう、魔女と人間が分かり合えることって出来るのかな?
   ううん、昔を思いだすとやっぱり分かり合えるなんて絶対無理だなんて思う……」

自分の矛盾した心に踏ん切りがつけられないまま、ツンは慎重に話した。

ξ;凵G)ξ「だって、無理よ絶対私は許せない、言葉の上でも人間を許すなんて誓いたくもない。
   許したくも無いわよ私を滅茶苦茶にして……なのに私を助けたり何がしたいのか分からないよ。
   本当に辛い、信じられずに助けてくれたブーンにありがとうも言えずにでも殺そうとしたのも人間で……」

次から次に生まれてくる言葉を、繋がりもなくツンはひたすらに吐き出していた。

ξ;凵G)ξ「魔女にも戻れなくて……私、何が……もう……」

川 ゚ -゚)「ツン、我慢しなくてもいい、憎いなら憎いと思え。
   人間全体を信じる必要は無い、自分の昔を押さえつけて耐える必要もどこにも無い。
   ただ……都合いいかもしれないが、私たちだけは信じて欲しい。
   私はオマエを守るから、絶対に」

クーがギュッと強く抱きしめると、ツンは頷いた。
そして大きな声をあげて泣いた。



289: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 21:59:12.51 ID:nvDwzRG50
  


廃墟となったビルの一室を勝手に陣取ると、三人の男が向き合っていた。
白熱灯の明かりの中、カタカタとパソコンを操る音が響く。

( ´_ゝ`)「しぃが帰ってこないとは……不慮の事態だな」

パソコン上には、たて続け魔女を捕縛したというニュース画面がいくつものブラウザで開かれていた。
どこもかしこも魔女に対する醜聞ばかりが飛び交っていた。


『討伐隊 魔女四人を連続して倒す』

『もう魔女は怖くない 討伐隊の軌跡』

『飛んで火に入る夏の虫か 魔女を返り討ち』


(´<_`)「モナー、プギャー、ツン、しぃ……なるほど四人だな」

( ´_ゝ`)「格下ばかりとはいえ、これはそろそろ放っておけない事態だな」

最近町では宗教団体がうごめいているらしい。
ここ数日で魔女の大半が崩れた……それに何らかの理由つけて売り込んでいるのだ。

くだらない。



291: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 22:01:08.08 ID:nvDwzRG50
  
( ´_ゝ`)「しかし弟者の懸念も真実味を帯びてきたな、魔女が相手にいるという」

(´<_`)「どれ程の使い手か分からないが、とりあえずプギャーやしぃよりも強いとなると少なからず厄介だな」

(,,゚Д゚)「……」

ギコは固まっていた。

誰がしぃを殺したのか?

すぐに浮かんだのはショボンだったが、彼がこんな事をする理由は何も無い。
打ち消すと別の候補を考えてみる。

つまりは相手に魔女を……
モナーとツンとしぃ(プギャーはショボンが殺したのでノーカウント)を倒せるだけの力を持つ人間がいるという事か。
既にショボンを足して魔女は残り四人と半壊した、これ以上犠牲は払えない。

(,,゚Д゚)「……オレが行って、やつらを潰すかゴルァ」

そう言ってギコはとうとう重い腰を上げた。
こうなれば自分が直々に制裁を下そうと立ち上がった。



294 名前: ◆7at37OTfY6 [支援ありがとうございます] 投稿日: 2006/11/23(木) 22:02:57.25 ID:nvDwzRG50
  
しかしそのギコを兄者が止める。

( ´_ゝ`)「まあまあ、落ち着けギコ。次はオレらが出るよ」

そう言いながらカタカタとパソコンをいじる。
パソコンの動作やいやに快適だ。
画面は一面暗く、流れるように白字が打ち込まれていく。

そしてエンターを押すと、そのまま勝手に文字が羅列されていく。

(´<_`)「何をしているんだ兄者?」

そして文字の羅列が止まると、次は四角いバーが出現した。
『受信率』と書かれたそれは、次第にパーセンテージを上げていく。
5%……10%……15%……。

( ´_ゝ`)「ああ、討伐隊の戦力は四人、そのうちの一人の情報をハックしているところだ」

80%まで到達すると残りの受信を一気に完了させ、ブラウザが一つ開いた。
フォルダ名、『ジョルジュ』『クー』『ドクオ』『ブーン』。
全てのデータを受信し終えた。

(´<_`)「流石兄者、してそのデータをどうするつもりだ?」



296: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 22:04:41.61 ID:nvDwzRG50
  
( ´_ゝ`)「目には目を、既に討伐隊の拠点は把握している。
   手土産に身内の死体の一つでももって行ってやろうとな」

(´<_`)「流石だな、なんとも悪どい」

そうして取得したフォルダを見ると、個人情報で溢れ返っていた。
元ニートの二人とは『ドクオ』『ブーン』という名の男のことだろう、その内一人を適当に決めて、ファイルを開いた。
住所、家族構成、略歴……全てが書かれていた。

( ´_ゝ`)「母子家庭か、これは丁度良いな、母親が殺された相手は一体どう思うか……」

(,,゚Д゚)「流石兄弟」

( ´_ゝ`)(´<_`)「ん?」

(,,゚Д゚)「オマエ達二人が組めば俺なんかでも到底歯が立たない。
   だからこそ心配はないと思うが……負けるなよ?」

(´<_`)「オレらが組めば無敵さ」

( ´_ゝ`)「当然だ」



298: ◆7at37OTfY6 :2006/11/23(木) 22:05:17.31 ID:nvDwzRG50
  
兄者はパソコンの電源を落とすと、先ほど取得した住所に向かおうと弟者を促した。

(´<_`)「……そういえば、その討伐隊の人間の名前は何て言うんだ?」

( ´_ゝ`)「ん、確か……ドクオとかいったな。
   コイツがどんな悲壮な顔をするのか……考えただけでたまらないな」

夜は更けていた。
雨は止む気配が無い、黒い雲が空を覆いつくしていた。



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