( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです

84: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:07:13.11 ID:LtT0gyy20
  
第十六話『閑古鳥』



風呂敷からこぼれる、ドクオの……彼の母親の頭。

暗い部屋が、それを一層不気味に照らしていた。


( ´_ゝ`)「プッ、はははは!」


(´<_` )「どうした、感動の再会だろ?」


('A`)「……」


笑ってみせる流石兄弟に、怒りを感じたのはもちろんドクオ以外だ。

クーとジョルジュは銃を構え、ツンとブーンは今にも殴りかかりそうな勢いだ。


( ´_ゝ`)「母子家庭だってな、これでオマエ一人だけになったわけだ」


(´<_` )「どうだ、今の気持ちはどんな気持ちだ?」


('A`)「……それで?」


(;´_ゝ`)「は?」


ドクオは表情をやはり変えない。

それどころか相手に尋ねる始末だ。



86: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:09:15.00 ID:LtT0gyy20
  
('A`)「それで……何がしたいんだ?」


(;´_ゝ`)「あ、いや……悲しむとか……」


('A`)「悲しんだ所でカーチャンは帰ってくるのか?

   そもそも何を悲しむ必要があるのか分からない、死人が悲しんでいるなんて誰が決めた?

   悲しんでさも自分がいい人間だと言いたいのか?」


(;´_ゝ`)「オマエは……オマエは悔しく無いのか?

   親だろ、女手一つでオマエをずっと育ててきてくれた母親だろう!」


('A`)「勝手なことして勝手に悔しがれ悲しがれ……うるさいな。

   お前に殺されたか、老衰したか、結果は同じ『死』だ。

   ニュースで報道される女の死もカーチャンの死も同じだろ、おまえはニュースで人が死ぬたび悔しくて叫ぶのか?」


(#゚∀゚)「ドクオ!」


   パシッ


そんなドクオをジョルジュが殴った。

あまりに勝手であまりに冷め切った男に。


ドクオの考えは間違っているとは言えない、それでもそのように『本気で』思える男に、ジョルジュは我慢ならなかった。

口先だけでない、実際の親の死を目前に平気で持論をつらつらと振りかざす男に。



87: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:11:22.02 ID:LtT0gyy20
  
(#゚∀゚)「……今はいい、ただこの戦いが終わったらちょっと話し付き合え」


('A`)「……別にいいですよ」


ドクオは不貞腐れたように返事する。

とりあえず今はそれどころじゃない、二人は落ち着くと相手に向かった。




(´<_` )「兄者も時に落ち着け」


(;´_ゝ`)「そうだな、すまん」


ツンが討伐隊に居ようと心乱さなかった魔女だが、相当納得がいかなかったのだろうか、ドクオに対して心を乱した。

せっかくの演出が無駄になったが、いずれ殺すのだ、そこにこだわる必要なんてまったく無い。


(´・ω・`)「それじゃ、僕たちもはじめようか」


(´<_` )「希代の裏切り者さん、お手柔らかに頼むよ」


( ´_ゝ`)「ああ、そうだいずれ殺すんだ……それでは自分はちゃんとコイツらを相手しておこうか」


ショボンと弟者が互いに戦いの構えをした。

兄者もそれに合わせて残る五人の前に、パソコン片手に構えた。



89: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:13:32.87 ID:LtT0gyy20
  

弟者は自分の肉体や精神面を強化すると、すぐにもショボンに向かっていく。


(´<_` )「まずは……肩慣らしだぜ?」


正面から向かってくる拳。

正直すぎる攻撃だ、相手の狙いは何だろうと、ショボンの脳裏に色々な考えが過る。



単調な攻撃で自分の油断を狙うのか、それとも避けた直後が狙いか?

はたまたこうやって考えて、集中力が散漫になったところが狙いかも知れない。



手を正面でクロスすると、ショボンは弟者の攻撃をブロックした。


(´・ω・`)「……っ、これはキツイな……!!」


そこにぶつかる拳、その衝撃に体全体が痺れる。

地面は当然のアスファルトだが、踏ん張る足が埋まりそうになるほど強烈な衝撃。


魔女の戦いらしくない、スローな世界だったがその規模は類を見ないほどだった。

この一撃で、互いの魔女としての技量が良く分かる。


双方とも、かなりの使い手だ。



91: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:15:55.36 ID:LtT0gyy20
  
(´<_` )「ほう、流石だな」


(´・ω・`)「そちらこそ正直な攻撃だね、逆に不意を突かれたよ」


(´<_` )「いやいや、これからが本領だぜ?」


弟者が今度は左手を構えた。


(´・ω・`)(左利きか?)


そう思った瞬間、弟者の左腕の筋肉は膨張し、キュッと絞れた。


直後の激しいスピードのパンチが、ショボンのクロスした腕に放たれた。


そのままショボンの腕を押しのけ、むりやり腹へと鉄槌を加える。


(;´・ω・`)「がはっ……!」


(´<_` )「言い忘れたが、オレは自分の強化が得意で兄者は物体の強化が得意だ。

   裏切り者の魔女さん、アンタが相手しているのは俺だが、俺一人だと思っちゃ大間違いだぜ?」


倒れるショボンの頭に向かって、弟者は肘を落とした。


ショボンの頭蓋は地面に激突してアスファルトを砕く。

下半身は力なく飛び跳ねた。



94: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:18:04.32 ID:LtT0gyy20
  
(´<_` )「兄者の強化とオレの強化、そしてオレは無敵なんだ」


威風堂々と仁王立ちし、公言する弟者。


倒れるショボンの頭を鷲掴みすると、自分の正面に持ち上げる。

だらんと力無く垂れる体がそのダメージを物語っていた。


(´<_` )「ちゃんと頭の堅さを強化したよな?

   これで終わりなんてことは無いよな?」


(;´・ω・`)「……まったく、滅茶苦茶な相手だね」


そう言いながらショボンは相手の顔面に向かって拳を突き立てたが、弟者の体が少し揺れただけだった。

兀然として引き下がる事も無い。


堅いなんてものではない。

一般人が鎧を纏った相手に攻撃するようなものだ、衝撃はあっても相手へのダメージは皆無だ。


(´<_` )「満足か?」


ショボンの頭を掴んだまま弟者は振りかぶると、壁に向かって投げつけた。


(´<_` )「兄者!」


( ´_ゝ`)(´<_` )『衝撃の増強』×2



95: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:20:27.95 ID:LtT0gyy20
  
ショボンが壁に激突すると、まるで花火のようにそのコンクリート壁が爆発した。

無数にあたりかまわず飛び散る幾破片、その場は一気に騒然となった。


そこここで鳴り響く万雷の衝撃音が作り出す恐怖。

ワケが分からない。

まるでこの世界が現実で無いような、地に足が着いていないような衝撃に駆られた。


ショボンが、あの他の魔女を諸共せずに打ち倒してきたショボンがこうも弄ばれている。

大きな欠片が直撃せず無傷で済んだブーンだが、たかが人間に何が出来るのかと自問しながら只管に脅えた。



破片が散り終わると、そこにはごっそりと抉れた、洞穴のような衝撃跡が残った。

洞穴にショボンはいない。


(´<_` )「!!」


(´・ω・`)「まったく、はちゃめちゃだね」


散乱された破片と供にその場からショボンは移動し、天井に吸い付くように着地していた。

そのまま天井を蹴って加速し、弟者にカカト落としを直撃させる。


鉛同士が激突したような鈍い音、振動する空気、弟者の足元のコンクリートが一気に砕けた。


魔女同士の戦いはそうだ、攻撃までは見えないような速さで展開されるために、攻撃の直後は世界がスローに動くような錯覚に陥る。

コンクリートに亀裂が入り、地面から自然に離れて宙に浮く。

幻想的で否現実的なその世界、その世界に一般人は入り込めない。



96: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:22:37.75 ID:LtT0gyy20
  
カカト落としが直撃したのを確認すると、ショボンは一度距離を空ける。

弟者は自分の額に手を当てた。


(´<_` )「……血が出たか、そこまで痛くは無かったのだがな。

   ただ脳にずしりと来る攻撃だ」


そう言いながら笑いを一つも入れずにショボンに向いた。

ピリッと空気が変わった、重い。


(;´・ω・`)(これは本格的にまずいかもね……)


ショボンは両手を体の前で構えた。

どこから攻撃されても守れるよう、防御の体制に入った。


攻撃は……捨てた。



98: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:24:27.32 ID:LtT0gyy20
  


( ´_ゝ`)「さて、そろそろ俺らも始めようか。

   正直あちらの邪魔はしたくない、俺たちは俺たちでやるのが希望だが」


兄者は5人に向いた。

少なくともツンという魔女がいるのだと、兄者は油断せずに神経を張り詰めた。


来る。


誰もがそう感じた。


ξ;゚听)ξ「!!」


瞬間的にツンの前に表れた兄者。

やはり警戒しているのはツンだろうか、持っていたパソコンでその顔面目掛けて叩きにかかる。



ここでも大きな鈍い音が響いた。

兄者の攻撃を堂々と顔面で受けるツン、そのままパソコンにしがみ付いた。

痛そうにしながらも、大きなダメージではないようだ。


ξ#゚听)ξ「この……!!」


ツンは拳を相手の胴にぶつけたが、兄者は何食わぬ顔でフッと笑った。



102: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:26:38.77 ID:LtT0gyy20
  
( ´_ゝ`)「痒いわ」


ξ゚听)ξ「生意気ね」


ツンは両足を兄者の胴に置くと、衝撃をアップして蹴り飛ばした。

「蹴る」というよりは「押した」と言った方がいいのだろうか。


兄者は「おっと」と言って少しぐらついた程度の反応だ。

ツンは大きく距離をとった。


   パンッ


そこに響く乾いた銃声。


川 ゚ -゚)(捉えた……!)


無防備な、体勢を整えようとした兄者に、ツンが衝撃を増強したクーの銃弾が向かった。

これは避けられないだろう、万一無茶に避けようものならその隙を銃で追撃出来る。



103: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:28:51.52 ID:LtT0gyy20
  
兄者はそこでも焦る事無く、冷静に片手に持つパソコンを正面に掲げた。


   ガッ


銃弾はそのパソコンに当たると、明後日の方向へ飛んでいく。


そして兄者は体制をしっかりと持ち直すと、やれやれといった様子でパンパンとパソコンを払う素振りを見せた。

ゆっくりと、感情を表さない目でクーを見る。


川;゚ -゚)「!!」


クーは驚き、恐怖に陥った。

増強したはずの銃弾が、こうも簡単に避けられたのだ。

『どうにかなる』と見出した希望が、いとも簡単に砕かれたのだから。


目に見えて震えるクーに、兄者は不敵な笑みを浮かべた。


( ´_ゝ`)「恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強、恐怖の増強」


川;゚ -゚)「うわあああああ!!」


(;゚∀゚)「クー!」


急いでジョルジュが寄るが、クーは座り込んでじりじりと兄者から後退するばかりだ。

口も、まぶたも、体全体が震えきっていた。

息のリズムもおかしい、喘息でも起こしたようなその表情に体。



105: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:30:53.14 ID:LtT0gyy20
  
( ゚∀゚)「いいぜ、兄者って言ったか、オレが相手してやる。

   ちなみに初めの魔女をやったのは俺だ、不足は無いだろう?」


ジョルジュは銃を2丁取り出すと、それぞれを両手に、トンファーのように逆手で構えた。

ジョルジュのその体制を見ると、兄者はフッと笑う。

その笑いは一般人が魔女に挑む事に対してだろうか?


( ゚∀゚)「ツン、補助頼むぜ?」


ξ;゚听)ξ「あ、うん……」


ツンもまさか一般人で魔女に挑むなどとは……唖然としているがそれ所ではない、すぐにジョルジュの反射神経や銃の硬度などを高める。

しかし……大丈夫なのか、相手は魔女界でも名を轟かせたほどの手練だというのに。


ξ;゚听)ξ「私よりも相手の方が全然上だから、無茶しないでね」


( ゚∀゚)「おk」


ジョルジュはそう言って、眉毛をぴくぴくと動かした。

そしてツンを見る。


ξ;゚听)ξ(ああ、衝撃をアップする合図ね、はあk――)


そんなジョルジュに一瞬で詰め寄る兄者、ジョルジュは対応して銃を撃つ。

人間の動く速さには限度がある、兄者との差は銃を撃つことで上手く牽制するしかないのだ。



106: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:33:13.13 ID:LtT0gyy20
  
兄者は銃弾を避け、ジョルジュの懐にもぐりこんでアッパーを仕掛ける。

ジョルジュは両腕を重ねて銃身でそれを受けるが、そのまま押される。


(;゚∀゚)「うおおぉ!?」


そして宙に投げられた。

あまりに無防備なジョルジュに、兄者はにやりと笑った。


ジャンプして蹴りをくらわす兄者、ジョルジュはそれを受けるが踏ん張るものは無い。

そのまま勢いに任せて壁へぶつかるかと思ったその時。



( ゚∀゚)「死ね」



ジョルジュは攻撃をされながらも、兄者へ肘を突き出す。

逆手に構えた銃の口が、兄者に向いた。


(;´_ゝ`)「!!」


兄者も今は空中、身動きの取れない状況だ。

そしてジョルジュは器用にも小指でトリガーを引いた。



108: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:35:18.75 ID:LtT0gyy20
  

   パンッ



響く発砲音。

銃口から飛び出す銃弾。

全てがスローの世界だ、兄者は咄嗟に片手に持ったパソコンを盾にしようとする。


ジョルジュの狙いは的確だった。
心臓を突いてきている、攻撃をされて吹っ飛んでいる最中の発砲だというのにだ。


バカな、魔女がただの人間に殺されるというのか?

兄者は腕を、パソコンを自分の目の前に持ってくる。
空中は踏ん張りが利かず、自分の動きが遅い。


間に合え、間に合え、間に合え。


速く、速く、速く。



110: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:37:35.96 ID:LtT0gyy20
  
紙一重、兄者のパソコンは銃弾を止めた。


ただ守る事だけに躍起になった兄者は空中で体制を崩し、無茶苦茶な体勢で地面に落ちた。

ジョルジュも変な体制で壁に激突したが、ツンが体の堅さを強化してくれたお陰かそこまで大きく痛む事は無い。
すぐさま立ち上がると落ちたばかりの兄者に銃を向けた。
4発一気に打ち込む。

(;´_ゝ`)(く!)

体制を整えてもいない兄者は、ジョルジュの方を確認する暇が無い、銃弾がどこに飛んでくるのかわからない。
衝撃を強化してその場を去ろうとしたが、寸前に一発が足を貫通した。

(;´_ゝ`)(……んッ!!)

思わぬ痛みだったが何とか一気に移動をする。
しかし貫通した足のせいで踏ん張りが利かずに転げた。

その隙を逃さない、ジョルジュはさらに2発銃を放った。

兄者はまた慌ててそこから移動した、今度はしっかりと銃弾を避けた。
血が噴き出し痛む足に活を入れ、無理矢理踏ん張りを利かせてしっかりとジョルジュの方を向いてストップした。



114: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:40:06.96 ID:LtT0gyy20
  

(;´_ゝ`)「オマエ……」

( ゚∀゚)「どうしました、魔女さん?」

そう言って再びジョルジュは兄者に銃を向けた。
足を貫通させれたのは良かった、これで相手は大きな移動をするたび足に激痛が走るはずだ。
少なくとも無謀な衝撃増強からの素早い動きを制止できた筈だ。

魔女の何が厄介かというと、その移動力の高さが最も大きな点と言える。
攻守から牽制に至るまで、あらゆる場面で有効に使え人間との劇的な差を演出する。
それをある程度抑制できたジョルジュの功労は大きい。


( ´_ゝ`)「……なるほどな、オマエにだったらモナーがやられたのも納得がいく。
   ただ俺とモナーを同一視してもらっては困るがな。
   オマエはここで殺しておくべき存在だ、悪いが本気でいかせてもらう」

( ゚∀゚)「ああ、相手が魔女じゃないからって油断したら死ぬぜ?」

そう言いながらジョルジュは内心『死んだ』と思った。

今までの彼の二回の発砲は、あくまで相手の意標を付いた銃撃だったからこそどうにかなっただけだ。
正面から撃てば以前のように銃が暴発させられて終わりに決まっている。

『ジョルジュ自身』が見られていないような、『銃を撃つ動作』を見られていないようなそんな隙が必要なんだ。
先も小指で撃つという相手にとって意外な動作だから増強されずに済んだだけだ。
こうも警戒された状況ではもう望めない。



117: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:42:19.61 ID:LtT0gyy20
  
ジョルジュはチラとクーの方を向いた。

( ゚∀゚)「……」

クーは若干恐怖をなぎ払っていた。
ジョルジュの頑張りに感化されたのだろう、そんな彼女に軽い笑いをしておいた。
彼女は何か言いたそうにしていたが、すぐにも顔を正面の兄者に戻した。


兄者は少しづつジョルジュに歩み寄る。
その圧迫感はただならない、ジョルジュは背中を伝う汗、頬を流れる汗にむず痒さを覚えた。

抵抗できない、抗えないもどかしさ。

同時にどこか爽々とした感があった、バカらしい。

兄者はゆっくりと歩いてジョルジュの正面に来た。
互いに何もしない、何も言わない。
手を伸ばせば届く、そんな近くでようやく兄者は口を開いた。

( ´_ゝ`)「どうした? 何もしないのか?」

(;゚∀゚)「油断の無い魔女相手に……何をしても無駄だろ?」


無力なんだ、そう。
彼は一人で魔女に抗うことなど到底できないことをよく知っていた。



118: ◆7at37OTfY6 :2006/11/26(日) 22:44:03.94 ID:LtT0gyy20
  
次の瞬間、兄者の手がジョルジュを貫いた。


短いジョルジュの悲鳴、直後に兄者のチョップがジョルジュの喉仏に強烈な一撃を与えた。


大きく開いた口、流れる血、ぐりんと黒い眼球は反転して白目を剥く。
ジョルジュはその場に倒れこんだ。


大量の血が流れた。
小さな灯りが照らす、生々しい血。


ジョルジュはピクピクと脈動し、そして……動かなくなった。


川;゚ -゚)「ジョ――」

唖然とその状況を見ることしかできなかった。
その誰よりも早く、誰よりも大きい声で彼女は叫んだ。

川;゚ -゚)「ジョルジューッ!!」

そんな彼女の最後の叫びは、彼の耳には届いていなかっただろう。



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