( ^ω^)ブーンが魔女を狩るようです
- 35: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:30:33.96 ID:jmhlAyFy0
- 第二十四話『土性骨』
これから話す物語は『人間』と、『魔女』と呼ばれる人々の話。
魔女で無い人を『人間』、この世界の人達はそう呼んでいる。
今からそう遠くも無い昔、人間と魔女は共存していた。
現在からは想像できないだろうが、互いに生きるために協力していたんだ。
魔女の類稀なる力は人間にとっては素晴らしい力だった。
この世を発展させていくのに欠かせなかった。
魔女にとっての人間は人数が多いだけ、下層階級と捉えられていた。
そう思うのも仕方が無いが、人間がいなければ食物や文化は成り立っていかない。
食物連鎖は土台があってこそ成り立つのだから。
さて、ピラミッドは土台が無くては上は存在しえないが、上がなくても土台は存在しえることに気付いただろうか?
上からの圧迫無く、より伸びやかに土台がいられることに。
- 36: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:32:43.83 ID:jmhlAyFy0
- 別に魔女がその力で人間を押さえつけていたなんてことは無い、むしろ協力的だった。
ある種のナルシストとでも言おうか、彼らは自身の力を自任していたし、
だからこそそれが人間に必要な事も分かっていて積極的に協力をしていた。
人間が自分たち魔女の力を最大限に引き出し利用してくれる、それを分かっていたのだろう。
ある意味では文系と理系の関係に似ている。
さて、魔女は積極的に人間達に協力していたと言ったが、それは人間達がいるからこそ自分たちが成り立っていることを知っていたからだ。
魔女は人間がいなければこの世が成り立たないとも理解していたし、
だからこそ一魔女が暴動を起こしても、人間と協力してそれらを止め、裁いてきた。
それが『秩序』だった。
これだけ聞くと、魔女はいいヤツだと思うだろう。
そう、魔女はいいヤツで何も悪くなんて無かったのさ。
- 39: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:35:38.99 ID:jmhlAyFy0
- 恐怖するのは当然土台の方、常に押さえつけられている方だ。
人間は常に魔女という存在を危惧していた。
そう、裏切られてはどうしようもなかったから。
魔女に裏切られては自分たちは死ぬ。
魔女が裏切らない保証がどこにある。
優しい人間を『偽善者』と称するが、称する側が偽善者だからこそ他人の善意が偽善に見えるのだ。
偽善者から見れば全ての善は偽善なのだ。
そして国の上に立つ人間というのはえてして偽善者になりやすい。
魔女の善意が偽善に見えたらそれは恐怖に決まっている。
- 42: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:37:42.05 ID:jmhlAyFy0
- 始めは純粋に協力していた人間も、次第に疑心を覚えだす。
どうしてこうも自分たちに協力をするのだろうか?
一体何の利益を求めてこうも共存してくれるのだろうか?
そして結果、守りに徹するのだ。
魔女が裏切ったら自分たちは死んでしまい、これまでの発展は意味を成さなくなる。
だが一方で、魔女が死んでもそれまでの発展は残るのだ。
彼らは恐怖と発展を天秤にかけた結果、恐怖に負けたのだ。
このまま恐怖に脅えて発展し続けるくらいなら、今の発展で満足し恐怖を取り除こうと言うのだ。
弱いからこそ裏切られるのを恐れ、人間は魔女を根絶やしに、駆逐したのだ。
この選択は当然だろう、彼らを責める理由がどこにある。
軽蔑はするが。
- 44: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:40:09.91 ID:jmhlAyFy0
- 魔女の徴兵令とでもいおうか、力持つ魔女は一所に集められ、一斉に殺された。
会合を開き、出席した魔女は一度に毒殺した。
食事に薬を入れればそれはもう簡単に、人間と同じように死んでいく。
すし詰めの部屋にガスを撒けば、あっという間に意識を失う。
面白いくらい一度にそれらは殺された。
残りは簡単だ、力の弱い僅かな魔女に力の無い魔女。
人間側に魔女が一人でもいれば、簡単に殲滅させれた。
銃殺なり爆殺なり、普段の魔女は結局人間同様なのだ、力さえ強めなければ所詮人間なのだ。
特に炎や電撃は魔女が止めようも無い、最高の武器になる。
魔女狩りは、とうとう行われた。
- 46: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:42:24.27 ID:jmhlAyFy0
- 魔女の力の開花は精通と同時に発生する。
丁度10歳あたりになると自然に備わるんだ。
力の弱い魔女は薬を注射され、右も左も分からない朦朧とした状態で執刀される。
子供においては女は性奴隷とし(妊娠しないから余計に適していた事は言うまでもないだろう)、男は人体実験に。
魔女自体は沢山いたが、それでも子供で男というと限られてくる。
ああ、子供を執刀できる医師はなんと幸せなことか。
たった7日で、1000近い数を誇っていた魔女は殲滅させられた。
人間どもの手によって、完全に駆逐されたのだ。
さて、それではどうして今その生き残りがいるのだろうか?
- 49: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:44:34.06 ID:jmhlAyFy0
- 答えは簡単だ、それらは少し特異だっただけだ。
魔女と人間のハーフは、極稀に後天的に魔女の力を手にする。
通常であれば魔女の力は純血にしか与えられず(だからこそ魔女は少ないのだが)、ハーフは普通の人間となんら変わり無い。
それが折りしも例外として開花した者が生き残っているのだ。
もっとも、魔女側にもツンをはじめ純血な魔女に数人が該当する。
何よりも魔女の家庭で育っていたハーフは、魔女と同様に狩られている。
『魔女と人間のハーフ』であり、かつ『孤児』だったからこそ例外として生き残れたのだ。
純血の魔女は力が開花しなくとも魔女と判別できる。
魔女が魔女を見るとオーラのようなものが見えるのはもう知っているだろう?
魔女の力が目覚める前と後とで色の違いはあるものの、それにより純血な魔女は簡単に見分けがつくのだ。
ただ、ハーフは魔女の力が開花しない限りそれにすら該当しないのだ。
力が一生開花しなければオーラが芽生えることはない、それにもかかわらず魔女狩りの対象にされたわけだが。
そうだ、幾重にも重なった偶然こそが、今の魔女たちをこの世界で生還させた。
- 52: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:46:49.57 ID:jmhlAyFy0
- 魔女を一斉排除した人間の理由は「魔女が裏切ったので対抗した」だそうだ。
何も知らない一般人風情は「よくやった」と言っていればいいだろう。
魔女は強いのだ、にも拘らず使われていたのだからいつ裏切りが発生しても何の不思議も無い。
「我々人間を守るために裏切った魔女を殺した」、そう『人間に』言われれば考える必要も無く納得してしまうだろう。
その間も水面下で自分たち生き残りは仲間を集め、復讐の道を辿りだしていた。
魔女の生き残りである自分たちが復讐に走ったのは人間にとって追い風だったようだ。
無差別に復讐の念を晴らしていく自分たちに対し、やはり一般人は「本当に魔女は最悪な奴等だ」と否定すればいいのだから。
人間と魔女の間に蔓延る互いの反発。
それは必然だったのだろう。
- 54: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:49:02.46 ID:jmhlAyFy0
雨が降りしきるうるさい最中で、ギコはその過去をすべて吐き出した。
人間が隠し、魔女を悪者としたその今までの経過を。
(,,゚Д゚)「それが、魔女と人間の因果だ」
川;゚ -゚)「……」
(,,゚Д゚)「もっとも、それすら知らずにオレ達と戦ってきたオマエ達を否定する気は無い、哀れには思うが。
ある意味では仕方ない事だったと思える、オマエ達こそ人間の我が侭の犠牲者とも言えるしな」
ギコはここで笑って見せるが、その他はとても笑える気分になどなれなかった。
理不尽に殺された魔女、その復讐に奔る相手を、自分たちは敵にしていたのだ。
どうしてその真実を表に現してくれなかったのか。
当然だ、表に現そうと人間が一方的にもみ消すに決まっている。
そもそも彼らが人間を信じれるわけが無い、同様に人間が彼らの言い分を信じるわけが無い。
(#^ω^)「そんなの……そんなの悲しすぎるお!」
ξ;゚听)ξ「ブーン!?」
(,,゚Д゚)「!!」
- 59: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:51:05.93 ID:jmhlAyFy0
- 黙り込んでいたブーンだったが、納得いかずに思わず叫んだ。
納得のいかない事に逆らう、ドクオに教えられた心得。
(#^ω^)「今、僕たちがその真実を分かったお!
だから一緒に主張するお、こんな形で復讐を続けるなんて悲しすぎるお!」
(,,゚Д゚)「……悪いが、その主張はただの命乞いにしか見えないな。
一緒に主張する? 自分の命が大事なだけだろう。
『一緒に主張するから命を助けて下さい』……違うか?」
どうして分かり合えないのか、どうして通じ合えないのか。
ブーン自身こんなにも先人達の身勝手が許せずに憎いというのに。
(#^ω^)「自分も人間の身勝手が憎いんだお、だから考えを改めさせ知り渡らせたいんだお!」
(,,゚Д゚)「人間の身勝手が憎いか……ならば死ね、人間が。
そうやって主張をするだけのオマエの方がよっぽど身勝手だ」
(#^ω^)「それはもっともだお、でも……やっぱり、そんなのは悲しすぎるお……」
(,,゚Д゚)「オレを哀れむか、勝手にするがいいさ」
分かりあえないのだ。
どれだけ言葉をぶつけようと、分かり合えないのだ。
- 62: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:53:12.14 ID:jmhlAyFy0
そして次の瞬間――
(;゚Д゚)「が……ッ!!」
目を疑った。
( ^ω^)「!!」
- 68: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:55:16.35 ID:jmhlAyFy0
ショボンの手が、ギコの横腹を抉り取った。
痛みに喘ぎ、腰を丸めながら倒れこむギコ。
いつもの表情で、ショボンは眼球だけを倒れるギコに向ける。
その冷たい目線――
ギコはどれだけ悲壮な顔をしていたか。
裏切られた、夢半ばで途絶えた彼は――
孤独に倒れ込んだ。
- 76: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:57:22.13 ID:jmhlAyFy0
- ξ;゚听)ξ「ギコ……!!」
(;^ω^)('A`)川;゚ -゚)「……!!」
誰もがその目を疑い、何が起きたかを理解できなかった。
自分たちを裏切ったショボンが、更に相手を裏切った。
倒れこむギコはまるで人形のように、抵抗の術もなく。
ばたんと。
倒れた。
(;゚Д゚)「ショボ……!!」
(´・ω・`)「悪いねギコ、僕は復讐だとかそんな事に興味は無いんだ」
(;゚Д゚)「結局……オマエも、か……」
- 81: ◆7at37OTfY6 :2006/12/01(金) 22:59:25.80 ID:jmhlAyFy0
- ギコの頭に幾つもの考えが過った。
ショボンはどこまで本当に敵なのか。
ショボンがどれだけ自分たちの同胞を殺したのか。
弟者は本当に裏切ったのか。
全ての真相は闇の中、これから死ぬ自分には関係の無い、知る由も無いこと。
(,,゚Д゚)「……フッ」
自己卑下に鼻で笑うと、ギコはその目をショボンに向けた。
死を覚悟した、力ない目つきで。
(,,゚Д゚)「オマエも死ね」
彼はその手に持つスイッチを押した。
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