( ^ω^)('A`)( ,,゚Д゚)ξ゚听)ξ(*゚ー゚)川 ゚ -゚)

  
110: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 22:54:18.57 ID:cXcgb1Uh0
  
(;´・ω・`) 「……」

彼女の家、確かにあったはずだ。
道は間違えていない、確かにこの場所だ。

(;´・ω・`) 「どこだ……どこだ!!」

(;´・ω・`)「あ、ははwww そうかwww 隠れているんだね!」

(;´・ω・`) 「僕を驚かそうと、こんな大掛かりな……」

(;´・ω・`) 「もうそろそろ……出てきてくれないかな」

(;´・ω・`) 「ねぇ……」


僕の声は、ただ、薄暗い雲の広がる空へ、消えていった。



  
111: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 22:55:46.66 ID:cXcgb1Uh0
  
もう一度、家を見た。
空家という文字が、確かに書かれている。

(;´・ω・`) 「……」

僕は


1、彼女の携帯に電話をかけた
2、彼女を必死に探した
3、家の中に入った


>>115
  
115: 愛のVIP戦士 :2007/02/20(火) 22:58:45.13 ID:yXmQdLAS0
  
3



  
117: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:01:54.55 ID:cXcgb1Uh0
  
僕は何を思ったのだろうか、その空き家と書かれた家のドアノブを握った。
ゆっくり、回す。

何にも引っかからず、それは僕を招き入れるかのように開いた。

(;´・ω・`) 「……」

逆に、何事もなかったかのように開いたドアが不気味だった。
その不気味さに、僕は少しだけ冷静さを取り戻す。

入っていいのだろうか。
入らないほうがいいのだろうか。

ノブを握った状態のまま、僕の頭の中で葛藤が起こる。
辿りついた答えは───

(;´・ω・`) 「お邪魔します……」



  
118: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:06:58.03 ID:cXcgb1Uh0
  
家の中に入るが、僕はそれを確認するのに時間がかかった。

そう、何もないんだ。
テレビも、テーブルも、電球も、人も。
全てがなくなった家の中、本当にここは言えなのかと、自問自答した。

土足のまま家の中に入る。
本当に、何もなかった。
どれだけ周りを見回しても、人の気配すら感じられない。

(´・ω・`) 「……」

焦りを通り過ぎて、僕は放心状態に辿りついた。
焦点を合わせることのできない眼を動かさずに、感触で歩いた。
奥に、奥に進んでいく。

(´・ω・`) 「いたっ」

突然焦点が合って、僕は前を向いた。
壁、行き止まりだった。

(´・ω・`) 「……何も……ないのかな」



  
119: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:12:16.92 ID:cXcgb1Uh0
  
『ガチャ』

僕の背後から聞こえる、鈍い金属音。
急いで振り向いて、その音の素を見つけようとした。

僕が見た、玄関のドア。
それはゆっくりと開いて、薄暗い部屋に光をもたらした。

(´・ω・`) 「………やぁ」

「………ショボン……君……?」

声だけで、匂いだけで、感じだけで、彼女だと分かった。
二人の距離は一定を保ちながら、彼女が言葉を続けた。

「何でここにいるの……?」
(´・ω・`) 「僕は不法侵入で捕まるかな」
「何で……」
(´・ω・`) 「すまない。君に会いたかったんだ」
「……」

慌てて、だけどゆっくりと言葉を付け加えた。

(´・ω・`) 「どうしても、君に会いたかったんだ」



  
122: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:15:59.06 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「行きなり空家になってるんだもん。驚いたよ」
「……ごめんね」

(´・ω・`) 「それに加えて鍵は開いたまんま。驚いたよ」
「……ごめんね」

(´・ω・`) 「それに、突然の別れ。驚いたよ」
「……ごめんね、ごめんね……」

(´・ω・`) 「そして……また、突然の再会。驚いたよ」
「……私も、驚いた」

薄暗い部屋の中、黒く光る彼女の瞳を僕は見た。
やさしく、僕を包み込んでくれる光。

(´・ω・`) 「……どうしてか……説明してくれないかな?」
「………うん……」



  
124: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:21:22.29 ID:cXcgb1Uh0
  
「父の会社が……倒産、しそうになったのよ」
(´・ω・`) 「しそうに、かい?」
「うん。今は私の話を聞いて」

彼女は僕の目を一度だけ見て、また視線を下げた。
この時の言葉は、もう一生忘れないと思う。
現実に、僕はこの先人生で、この言葉を幾度も使うことになるのだが。

「そこにね……お金を融資してくれるっていう人が、現れたの……」

お金を融資してくれる?
僕はそんな話は聞いていない、一度も。

「……金額は、会社を立ち直らせるだけの額だった……」
「当然、その金額の融資には条件があった」

考えたくないことも、僕の脳は自然と考えてしまった。
そして、それは高い確率で正解だろう。

「……政略結婚よ」



  
127: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:27:08.97 ID:cXcgb1Uh0
  
「一度だけ会った。次の日に、告白された」
「もちろん、断ろうと思った……断ろうと思った」

「……でもね……親が……親がね……」

彼女の言葉に震えが入り、ゆっくりと瞼に手を当てた。
僕は、ただその光景を眺めていたんだ。

「……来月には……式を……」

式を……。
式を……あげるんだね。

「……ごめんなさい……ごめんなさい……」

一定に保たれていた二人の距離を、僕はゆっくり近づけていく。
そして、必死に考えて、必死に考えて。
この状況に、ふさわしい言葉を捜した。

(´・ω・`) 「君が謝る事じゃない。その選択は、正しいことだ」

ふさわしい言葉を、捜した。

(´・ω・`) 「僕との出会いは、たった1年だ。君と親の出会いはいつからだい?」

探して、探して、それを口に出した。



  
128: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:30:10.29 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「君が生まれたときから、ご両親にはお世話になっているよね」

がんばって、がんばって、彼女にふさわしい言葉を捜した。

(´・ω・`) 「うん。君が選択した道は、間違っていない」

探せば探すほど出てくる言葉の数。
それからまた選び抜いて、言葉を続けた。

(´・ω・`) 「それと……質問、いいかな?」

彼女は黙ったまま動かなかった。
僕はそれを、了承のサインとして受け取る。

(´・ω・`) 「その相手の人は、いい人なんだよね?」

一秒……二秒の沈黙。

(´・ω・`) 「君にとって、いい人なんだよね」

そして、彼女はうなずいた。



  
129: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:32:44.69 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「うん、それならいいんだ」

距離が近づく。
彼女の顔が、もうすぐそこまで来ていた。

(´・ω・`) 「……それと、お願いがある」

「……うん……」

二人の距離は、もうほとんどない。
少しでも動けば、唇が触れてしまいそうなぐらい。

(´・ω・`) 「僕のお願いを聞く前に、この願いを絶対に聞けると約束してくれないかな」
「……分からない」
(´・ω・`) 「簡単なお願いだよ。君にとっても、僕にとっても。だから、約束してくれ」
「………」

(´・ω・`) 「僕のことは、もう、忘れてくれないかな」



  
131: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:36:56.62 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「もちろん、僕も君の事を忘れる」

僕は、精一杯彼女の瞳を見つめた。
明るく輝いているはずの瞳は、青色の液体を零している。
それをふき取って、僕は彼女に向かう。

(´・ω・`) 「簡単でしょ。約束してくれるよね」
「……いやだ……」
(´・ω・`) 「約束してくれ」
「嫌だよ……」
(´・ω・`) 「約束してくれよ!!!」

ゼロに近い距離で、僕は叫んだ。
震える彼女。涙と、僕の涙。

(´;ω;`) 「約束してくれ。僕の事を忘れると」
(´;ω;`) 「絶対に……忘れると」

彼女の肩に、両手を乗せた。
二人の距離を、少しずつ、離していく。

(´;ω;`) 「今、この瞬間。僕と君は他人になる。いいね」

涙が邪魔で、彼女の顔が見れなかった。
だけど、確かに伝わる振動。鼓動。心。



  
132: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:38:48.82 ID:cXcgb1Uh0
  
(´;ω;`) 「一……二……三……」

僕の腕が伸びる限り、二人の距離を離した。
そして、僕の腕が伸びきったとき、彼女の口が開く。

「……約束……します……」
(´;ω;`) 「ありがとう」


彼女と僕の言葉が重なったとき。
僕は両手でつかんだ彼女の肩を



離した────



  
134: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:42:47.42 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「……終わり」

もう夕焼けが見える頃になった教室。
僕と彼女は、顔を近づけて話していた。

「……先生……」

彼女の目には、涙こそ流れていないが、悲しみが伺える。

「……まだ……好きなんですか?その人の事」

(´・ω・`) 「……そういえば、大事なことを言い忘れていたよ」

「……?」

僕は、ひとつため息を吐く。
そして、口を開いていった。

(´・ω・`) 「ようこそ、バーボンハウスへ」



  
137: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:45:43.39 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
      うん、「また」なんだ。済まない。
      仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。」

「……え、え……」

(´・ω・`) 「でも、この話を聞いたとき、君は、きっと言葉では言い表せない
       「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
       殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい」

「せんせ……?」

(´・ω・`) 「そう思って、この話をしたんだ」

残るは一行。
僕は残したそれを言うために、口をあける。

「あたし未成年だからテキーラのめませーん」
(´・ω・`) 「…… じゃあ、注文を聞こうか。」



  
141: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:48:41.08 ID:cXcgb1Uh0
  
「先生、いまのって、全部嘘?」
(´・ω・`) 「バーボンだよ」
「……」

(´・ω・`) 「怒った?」
「全然……なんかスッキリした」

(´・ω・`) 「それなら良かったよ」
「センセ!これからもよろしくねー!!」

彼女はそういうと、椅子から立ち上がり、走って教室を後にした。
残された僕、机の上に腕を乗せる。



  
143: ◆sHNGWXTAUA :2007/02/20(火) 23:52:43.15 ID:cXcgb1Uh0
  
(´・ω・`) 「……ふぅ」

昔話をすると、疲れるものだ。
特に、一度忘れようとした事を話すと。

(´・ω・`) 「……どうやら、僕は忘れることはできないみたいだよ」

心の中で、彼女に謝った。
簡単だよね、って言った僕自身が、それを守れていないのだから。

(´・ω・`) 「……もうそろそろ、25年くらいかな……」

あの懐かしい日々から、もう25年がたとうとしている。
それでも、彼女の笑顔は忘れられない。

(´・ω・`) 「……はぁ……早く彼、卒業してくれないかな……」

彼を見るたびに、僕は彼女を思い出さなければいけない。
だけど、後半年もすれば、彼も卒業だ。

(´・ω・`) 「そういえば……彼女の旦那さん。宝くじで150万当たったらしいね」


〜〜(´・ω・`) 編 終〜〜



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