( ^ω^)ブーンがハンドボールを始めるようです

246: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:20:05.07 ID:YOUztvcF0
  
第十三話 不安と焦燥

ブーンが居なくなった後、部室は静まり返っていた。

(´・ω・`)「確かに僕らは間違ってるのかもしれないね・・」

ショボンはそれきり何も発言しなくなる。ずっと何かを考えてる様子だった。

貞治。あいつが何を考えてるのか、ここに居る部員には少なくとも分からないだろう。

皆は本格的に路頭に迷ってしまったみたいだ。



247: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:23:09.08 ID:YOUztvcF0
  
(;^∀^)「・・・・」

俺は、家には帰らず、近くの公園で考え事にふけっていた。

(;^∀^)「なんで・・なんで?あいつらの事が気になるんだ・・
俺はもう辞めるつもりで居たのに・・」

・・ブーンのあの言葉。
ハンドは・・七人揃って初めてチームだお!
・・一人でも欠けたらチームじゃなくなるんだお・・。
貞治は大切な仲間なんだお!!皆そう思ってるお!!
だから・・だから辞めないでお!!

こいつが俺の決心をどこか鈍らせてる・・

俺には・・他にやりたいことがあるはずなのに・・



248: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:28:59.74 ID:YOUztvcF0
  
俺はハンド部に誘われた事を思い出していた。

確か・・あれは、五月の中頃・・

たまたま入学式で友達になった、他クラスのジョルジュに誘われたんだっけ・・

(゚∀゚)「なあ!貞治!お前まだ部活入ってないんだろ?
だったらハンド部入れよ!!結構楽しいぞ!!」

(^∀^)「・・うん。見学してから決めるよ」

俺はこのとき、サッカー部に入りたいと思ってた。

でもなかなか決心がつかずに、躊躇してたんだよな。

そんな時に、ジョルジュの誘い・・別に見るだけならいいかなって思ったから

その放課後、見学に行ってみたんだ。



250: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:32:38.68 ID:YOUztvcF0
  
(^∀^)「ふ〜ん・・これがハンドボールか」
(゚∀゚)「なっ!興味でただろ?入ってくれよ!」

正直、断りにくかった。俺の嫌いな部類のスポーツではなかったけど、

未経験という事もあってか不安だった。

上手くなれるのか・・それに俺は自分からそんなに話しかけないから友達も出来るか不安だった。

(^∀^)「もう少し待ってもらっていい?」

ジョルジュにはそう説明するのが精一杯だった。



251: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:35:43.56 ID:YOUztvcF0
  
俺は、サッカーかハンド、どちらに入ろうか悩んでたんだ。

一週間悩み続けた。どちらも未経験のスポーツ・・体力には自信があったからどちらもついてはいけるはず・・

サッカー部には友達はいないに等しい。ハンド部にはジョルジュが居る・・

俺はそんな考えだけでハンド部に入部をきめたんだ。

今となっては、軟弱な意志と自分の本気さがどれだけ足りなかったのかと

思い出すだけで後悔する。



252: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:41:06.00 ID:YOUztvcF0
  
(^∀^)「ジョルジュ、俺ハンド部にはいるからさ。
今まで以上にヨロシク頼むよ」

(゚∀゚)「ホントかッ!!嬉しいよ!!
今まで以上に仲良くしような!」

・・ちょっと後悔した。なんでホントにしたいことをしなかったのか。

いや、サッカーもホントにやりたいなんて思っていたのか・・?

どちらも中途半端な気持ちだったんじゃないか・・?

ブーンに「やりたい部活がある」といったけど

正直嘘だ。一刻も早くここから抜け出たいと思っていたんだ。



254: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:44:40.88 ID:YOUztvcF0
  
なんでかって?・・それは俺にも良く分からない。

自分でも理解できない事・・そんな事が起きるのは初めてだ。

俺はハンド部に入ってからポストをずっとやっていた。

皆との差を少しでも埋めようと必死だった。

先輩が引退してから試合に出してもらった時。

このときからだろうか・・俺がここから逃げ出したい。と思いはじめたこと・・

かなりのプレッシャー、俺にかかる期待。とても耐えられるものではなかった。



255: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:48:31.09 ID:YOUztvcF0
  
こんな自分が情けない、甘い人間だと痛感させられる。

今までだって、しっかり物事を継続できた事は少なかった。

失敗する度に、親や皆に何か言われる度、いつも逃げ出したいと思った。

逃げれば楽になれる・・辛い現実にぶち当たっても逃げれば・・

俺は皆が思ってるほど強い人間ではないんだ。

ただの逃げるだけの人生を送ってきた弱い人間なのさ。

今回話を持ちかけたのも、ただ自分の為、自分が苦しまないように逃げただけさ・・



257: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:51:27.57 ID:YOUztvcF0
  
・・でも、今回だけは何故か後悔の念がある。

今まで逃げることに対して後悔なんかしなかったのに。

ブーン・・俺が帰る前に言った言葉。あいつは俺のこと仲間だって認めてくれてた。

・・こんな卑怯な俺を。

胸が痛くなる。涙が出そうになる。

俺は自分の為だけに彼らを裏切ったのだ。と思う度に。



258: ◆gk43jgqTBM :2006/11/24(金) 23:55:11.54 ID:YOUztvcF0
  
(つ∀;)「お、俺はどうすればいいんだ・・」

気が付くと俺は泣いている。なぜ悲しいのだろう。

・・いや、悲しい訳では無い。くやしいんだろう。

何に対してかは分からない。だけど・・悔しい。

でもあそこに戻ったら・・恐怖を味わう事になる・・

皆の視線、皆の期待、皆との信頼・・

俺にはそれを受け止める覚悟はない。

・・部屋に誰か来た。兄貴か?



260: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:13:10.03 ID:8KOeT3L+0
  
俺は急いで涙を拭き、兄貴を部屋にいれる。

( ・∀・)「よう、今日は早いじゃんかよ」

こいつは俺の兄貴、モララー。

俺とは対照的で、一度決めた事は絶対に最後までやり遂げる。

それがどんなに辛い事でもだ。

今は大学にいって、自分の夢に向かってどんどん進んでるみたいだ。

( ・∀・)「・・また逃げ出すのか?」



261: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:13:33.46 ID:8KOeT3L+0
  
(^∀^)「!!」

さすが兄貴・・全てお見通しのようだな。

( ・∀・)「お前・・なんでもかんでも逃げてりゃいいってもんじゃないぞ。
何故一つのことをやり遂げない?何が恐い?」

(^∀^)「・・・・・」

俺は何も言い返すことが出来ない。

( ・∀・)「ふぅ・・自分でも分からないってか。
まあいいけどな。だけどお前・・ここで逃げたら多分一生後悔するぞ。
これからどうするかはお前次第だけどな?
その性格が直らない限りお前は今だけでなく、人生ずっと困る事になるぞ。
いい加減・・なんとかするんだな」

そういうと兄貴は俺の部屋から出て行こうとする。

俺はそんな兄貴を呼び戻す。



262: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:14:12.04 ID:8KOeT3L+0
  
(^∀^)「俺の苦労も知らない癖に・・良く言うよ」

しまった。いってしまった。

( ・∀・)「・・・お前」

兄貴がさっきと違うオーラを出している。ヤバイ・・

( ・∀・)「お前の苦労なんてたかが知れてるさ。
俺の苦労にくらべりゃ月とスッポンだ。伊達に長生きしてるわけじゃないんだ。
お前だって知ってるだろ?俺の苦労を・・」

・・まあね。兄貴は三浪してようやく、国立大学に合格した。

浪人だった頃の兄貴は本当に苦労していた。

毎日弱音ばっかり吐いていた。だけど投げ出さなかった。



263: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:18:39.87 ID:8KOeT3L+0
  
それに比べてこの俺は・・部活を二ヶ月足らずでもうやめようかと考えてる。

情けない・・情けない。そんな事分かってる。

でもそれに反して俺の精神は逃げることを優先する。

何故兄弟で、こんなに違うのか・・?

理解しがたいな・・

( ・∀・)「まあ頑張れよ。今回こそは続けてくれる。
そう期待してるからな。いい報告待ってるよ」

そう言って兄貴は部屋から出て行った。

・・まだ考える時間は一週間ある。ゆっくり考えよう。



265: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:21:06.31 ID:8KOeT3L+0
  
俺はそれから一週間、普通に学校に行った。

部活はもちろん休んだ。どのツラ下げて出ればいいのか分からなかった。

何よりも、恐いから・・

毎日、窓からハンド部の練習を見ていた。

・・ポストの居ない練習。俺はなんだか切なくなった。

今頃・・普通に出る事なんて出来ないよ。



266: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:24:03.50 ID:8KOeT3L+0
  
土曜日も練習を休んだ。

早いな・・もう明日は県大会なんだな。

俺はこのまま行かないで辞めるつもりに考えは傾いていた。

きっと誰か、俺の代わりを見つけるさ・・

そう思っていた矢先だった。メールが届く。一つはジョルジュから。

もう一通はブーンからだ。



267: ◆gk43jgqTBM :2006/11/25(土) 00:27:55.74 ID:8KOeT3L+0
  
「君は僕らの仲間だお。明日の試合、必ず来るってしんじてるお」

ブーン・・

「お前が居ないと俺は楽しくないよ。必ず戻って来いよな」

ジョルジュ・・俺は胸が熱くなる。

俺を必要としてくれてるんだな・・

でも、まだ行くと決めた訳じゃない。

俺は・・俺はどうするべきなんだ?

その答えを自問自答したところで答えが出てくるはずもないのだった・

俺は・・

第十三話 不安と焦燥 完



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