( ^ω^)ブにも奇妙な物語のようです

2: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:38:08 ID:PPw1Q34Q0
ξ゚听)ξ「完成したわ!」

永遠の美を求めすぎた女がいた。
その女は千年の寿命を求め、ある悪魔を召喚した。

( ゚∋゚)「ワタシを呼んだのはあなたね?」

ξ゚听)ξ「ええ。そうよ千年の寿命とやらを与えて頂戴」



3: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:39:06 ID:PPw1Q34Q0



ξ゚听)ξ千年の寿命のようです



4: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:40:02 ID:PPw1Q34Q0
( ゚∋゚)「もちろん、与えてあげるわ」

ξ゚听)ξ「やった! これで寿命が千年になったわ!」

( ゚∋゚)「これであなたは千年の間老けることも死ぬこともないわ」

悪魔は笑いながら続けて言った。

( ゚∋゚)「なんて大馬鹿者でしょう。人類は数十年後に滅亡するというのに」

ξ゚听)ξ「あら、そうなの」

( ゚∋゚)「あなたはほぼ九百年、孤独に苛まれながら生きていくのよ」

ξ゚听)ξ「そうね。それは、よかったわ」

( ゚∋゚)「永遠の美を求めすぎた女の哀れな永い末路よ!」

ξ゚听)ξ「ええ本当、その通りだわ」

( ゚∋゚)「……」

悪魔は何とも腑に落ちない感じでいるが、実際に千年の寿命を与えた。
おかしいところは何もないと思いながらも、歯がゆいままに消えていった。



5: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:41:57 ID:PPw1Q34Q0
残った女は心から喜ぶ。

ξ゚听)ξ「何と嬉しいことか。永遠の命が千年になったわ」

女は科学者で自ら不老不死を手に入れていた。
しかし、無限の命で死ぬことが出来ないのは窮地と思い、数十年程度使って悪魔を呼んだ。

ξ゚听)ξ「一生死ねないのと千年後に死ねるのとでは大きな差だわ」

悪魔が彼女の喜びの理由を知る由など無かった。




ξ゚听)ξ 千年の寿命のようです 終



6: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:42:43 ID:PPw1Q34Q0
ζ(゚ー゚*ζ

彼女が乗った、列車が行った。
いつもの駅でいつも会う。あの彼女はとても素敵だった。

特に出かける用なんてないのに、彼女を見るために駅前へ毎朝向かう。

( ・3・)「世界中の人間の顔が同じだったらいいのに。そしたら中身で判断されるのに」

今は見守っているだけだけど、いつか付きあいたい。
けれど告白しようたってこの顔だ。出来るはずが無い。

( ・3・)「せめて彼女好みの顔にでもならないかな?」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

(;・3・)「うわ! だれだ!」



7: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:43:42 ID:PPw1Q34Q0



( ・3・)望みの顔のようです



8: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:44:49 ID:PPw1Q34Q0
('(゚∀゚∩「僕は今君が願ったことを叶えにきたんだよ!」

(;・3・)「あなたはだれだ!」

('(゚∀゚∩「君は今顔のことについて願ったね。僕は願いを叶えにきた者なんだよ!」

(;・3・)「いや、だから……頭おかしいんじゃないか?」

('(゚∀゚∩「大丈夫だよ! 僕は他の人には見えないから、おかしく見えるのは君なんだよ!」

(;・3・)「それじゃダメだろ!」

('(゚∀゚∩「ちょっと時間はかかるけど、君の願いを叶えるよ! それじゃ!」

(;・3・)「って…………えー……」

一瞬で姿が消えてくれるならまだしも、その変人は走って去って行った。



9: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:45:36 ID:PPw1Q34Q0
さてそれからのことである。結局一日ずっとその言葉が引っかかっていた。
いつもは見向きもしない鏡を今日は何度も見る。
自分の顔に変化は無いかと気にしてしまう。
いつになったら彼女好みの顔になってれるのだろうか。

( ・3・)「もしかして、今の顔が彼女の好きな顔だったり……」

一日たっても変わらない顔。あらぬ期待をかけてみた。
でも、それはないだろう。僕でさえ気持ち悪いと思うのに。
その前に彼は本当に願いを叶えてくれるような者なのだろうか。
いや、違うのだろう。ただ僕は変な奴に遊ばれただけなのだ。

( ;3;)「……チクショウ」


僕は一晩中泣いた。



10: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:46:25 ID:PPw1Q34Q0
(゜3゜)「……」

そのせいだろう。目が腫れて充血した。
治りそうもないその顔に、また僕はいら立ちを覚えた。

(゜3゜)「クソ……クソ……」


どうしてこんな目に遭っているんだろう。




( ゜゜ω)「……」


たったの二日で、顔立ちが完全に変わってしまった。
もう、何が何だかわからない。
そうだ。これが彼女の好きな顔なのかもしれない。そうに決まってる。



11: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:47:31 ID:PPw1Q34Q0
いつものように、僕は駅前に向かった。

( ゚д゚ )「……」

( ゜゜ω)「?」

(゚д゚ )「……」

誰も目を合わせようとしない。
ただ、僕を少し見ては皆目をそらすのだ。
仕方ない。理解してるさ。こんな顔だもの。


ζ(゚ー゚*ζ

ああ、彼女が現れた。天使のような彼女だ。
きっとこんな僕のことを、彼女はきっと慰めてくれるはずだ。

目が合った。いや、合うように動いた。
僕は彼女から目線が話せない。



12: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:48:15 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)「あの……」

周りから奇怪な光景に不審な目で見られる。
誰かは、警察や駅員を呼ぶ準備をしているだろうか。
そんなことはどうでもいいのだ。

ζ(゚ー゚*ζ「素敵な顔ですね」

( ゜゜ω)「え……」

ζ(^ー^*ζ「私もなってみたいです」

これは夢だろうか。いや、現実でこの声も幻聴などではない。
初めて耳にした天使のような声。
何も聞いてないのに素敵な顔だと彼女は言った。
彼女は僕の顔が醜いというのがわかっているのだ。

( ゜゜ω)「あの、貴女の顔とかそういうのじゃなくて、人としての中身が大好きです」

僕はついに言ってしまった。
だってそうだろう。
こんな素晴らしい人間がいたものか。
お世辞にも面と向かって目も逸らさないでこんな事が言えるものか。

ζ(゚ー゚*ζ「え……」



13: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:49:32 ID:PPw1Q34Q0
彼女がそう言って、顔を歪ませた。その一瞬のことだった。
顔を歪ませたというよりは、歪んでいったの方が正しいのかもしれない。

ζ゜゜ωζ「うそ……」

彼女の顔が変わってしまった。僕と似たような醜い顔になってしまった。
声はそのまま。けれど天使の声には聞こえない。

( ゜゜ω)「……」

一瞬何が起きたか理解できなかった。
ただ、彼女への気持ちが一気に絶えてしまいそうになった。
だがどうだろう。彼女の中身を好きだと言った矢先、それを否定できるものか。

( ゜゜ω)「それでも好きです!」



僕は一体どこで間違ったのだろう――――



14: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:50:08 ID:PPw1Q34Q0
私はいつものように駅へ向かった。
最近は痴漢に遭ったり、ナンパされたりして、いいことが全くない。
今日の朝も憂鬱なものだった。

( ゜゜ω)

なんだろう、あれは。今まで見たことが無い顔だ。
まるでひょっとこの面をそのまま顔面にくっつけた様なひどい顔。
そんな顔が私を見つめてくる。
今日もいいことが無いどころか気味が悪い。

( ゜゜ω)「あの……」

話しかけられてしまった。こういうのは穏便に済ませないといけない。
とりあえず、場を取り繕っておけば大丈夫なはずだ。

ζ(゚ー゚*ζ「素敵な顔ですね」

( ゜゜ω)「え……」

ζ(^ー^*ζ「私もなってみたいです」

いつも通り、上手くあしらって終わるはずだった。



15: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:50:56 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)「あの、貴女の顔とかそういうのじゃなくて、人としての中身が大好きです」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

一瞬何が起こったのか分からなかった。
私とその異形の変人との間に割って入ってくる人が現れた。

('(゚∀゚∩「君は今顔のことについて願ったね。僕は叶えにきた者なんだよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「え……」

('(゚∀゚∩「これぐらいの願いだから、すぐに叶えたよ! それじゃ!」

ζ゜゜ωζ「うそ……」

顔がグニャグニャと変形していくのがわかった。
そして、今頃どんな顔になっているのかも。

( ゜゜ω)「それでも好きです!」

あの男がでっかく叫ぶ。なんてことだ。
だがどうだろう。素敵な顔だと言った矢先、それを否定できるものか。
それに、こんな醜い顔になった以上、彼以外に誰が相手してくれるものか。

ζ゜゜ωζ「よ、よろこんで……」



16: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:51:20 ID:PPw1Q34Q0
( ゜゜ω)

ζ゜゜ωζ


⌒*リ´・-・リ「ママー見て見て、変な顔が二人もいるよー」

从'ー'从「そんなこと言っちゃいけないよ」

⌒*リ´・-・リ「でも……変だよ?」

从'ー'从「あれは、とても素晴らしい顔なんだよ。ママ達家族も皆出来るものならなりたいくらい」

⌒*リ´・-・リ「本当に?」

从'ー'从「本当だよ」

⌒*リ´・-・リ「なら、私もなりたいな」

('(゚∀゚∩「望みを叶えにやってきたよ!」

从'ー'从「え?」



17: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:51:59 ID:PPw1Q34Q0
今この世界に蠢くのは滑稽な思いやりの精神だ。
言ってしまった以上引くに引けない。そんな思いやりの精神。
その滑稽さは顔に表れる。悔むとすれば、自分の言葉。
けど悔むべきはその言葉でなくその精神のはずだ。


最近、様々なところで顔がかわる事件が起きている。
家族単位、クラス単位、さらには街単位で。
賛同したものは皆、同じ望んだ顔になる。


全ては一人のため。皆は一人のため。


( ・3・)「世界中の人間の顔が同じだったらいいのに。そしたら中身で判断されるのに」

一人の願いを叶えるため

望みの顔はやってくる――――




( ・3・)望みの顔のようです 終



18: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:52:40 ID:PPw1Q34Q0
今日も一日疲れるなと思いながら朝食を食べていると、耳に俺の星座が聞こえた。
十二位。最下位。不幸でしょう。つらいでしょうが頑張りましょう。
全世界の十二分の一がそんな日を送るわけが無いと、いつもいつも思ってはいるものの、
やはり少しは調子が落ち込むものである。

('A`)「……嫌だなー。こんなのもうこんな占い止めればいいのに……」

約十二日に一度は起きることだと思い直し、さっさと食べ終わり片づけた。
仕事に行くのにはまだ急ぐ必要もないが、遅刻しそうな気がしたからすぐに身支度を済ませる。
特に滞りもなく、スムーズに準備が出来たて、いざ出発。そんな時に……

('A`)「靴ヒモが切れた……不吉な……」



19: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:53:11 ID:PPw1Q34Q0



('A`)不吉な予兆のようです



20: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:54:11 ID:PPw1Q34Q0
今日は何かが起きる。何が起きるかわからないけれど不吉なことだ。
今まで靴のひもなど切れたことが無いから、一体どれだけ不吉なことが起こるのか分からない。

('A`)「クビとか宣告されたらどうしよう……」

そう考えていると、仕事へ向かう先々でカラスをよく見る。
いや、いつも目につかないだけで今日は特別目にとまるというわけではないだろうか。
だが、あまりにも多い何十羽といったカラスの群れがいく先々で現れる。

('A`)「不吉だ……よくわからんけど怖い」

(,,゚Д゚)「ニャー」

俺の前で猫が横切る。
まるで元気づけてくれるかのように癒される特有の声を出してくれている。

('A`)「猫だ可愛いな。やっぱりいいことだって起きるんだ。不幸じゃない」

(,,゚Д゚)「ニャー」

(;'A`)「あれ? でもクロネコに横切られると不吉なことが起こるって……」

ああ、不吉だ。



21: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:54:43 ID:PPw1Q34Q0
(;'A`)「怖い」

途中から駅の階段の段数を数えてみると十三段になってしまった。

(;'A`)「やばい」

傘とガムを一緒に買ったら値段がちょうど四百四十四円。

(;'A`)「不吉だ……」


空がやけにどんよりとしている。
今日は絶対何かが起きるだろう。



22: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:55:16 ID:PPw1Q34Q0
('A`)「……というわけなんだ」

(`・ω・´)「そうか」

昼、同僚に今日の不吉な予兆の事をすべて話した。

('A`)「絶対何か起きるぞ……」

(`・ω・´)「信じがたいな」

俺自身がそう思う。
しかし、実際に起ってるんだから仕方ない。

(`・ω・´)「でも、面白そうだな」

('A`)「どこがだよ」

(`・ω・´)「コーヒーはブラックの方が好きなんだけどな」

('A`)「どうした? 飲めばいいのか?」

マグカップに入った暖かいコーヒーとミルクを渡される。



23: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:55:44 ID:PPw1Q34Q0
(`・ω・´)「大丈夫。俺が飲むんだけど、ミルクを垂らしてくれないか?」

コーヒーをデスクの上に置き、ミルクを入れた。

('A`)「これでいいか? 何をしたいんだ?」

(`・ω・´)「コーヒー占いというものがあってさ、ちょっと確かめてみたかったんだ」

('A`)「好きな人のイニシャルとかが見えるとか」

量も多く無造作に入れたはずのミルクだったが、おかしな溶け方をし始めて、どう見ても文字に見えてしまうようになった。
『呪』と、確かにそう書いてあるように見えるのだ。

('A`)「不吉だ……」

(`・ω・´)「さっき言ってたことは信じることにしたけど……飲みづらいな」

('A`)「やっぱり俺が飲むよ」

渋々コーヒーを一気飲みした。
底に残ったコーヒーが今度は『死』の字に見えるような形をしている。
飲ませた張本人は、自分には関係のないことと思っているみたいだが。
どうしてさっきからこんなに不吉なんだ。



24: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:56:26 ID:PPw1Q34Q0
外回りの最中。

('A`)「お、雨」

降るな降るな、と思っていたら降りだした。
幸いにも傘を持っていたのだが、雷が落ちてきそうで怖い。
何が起きるかわからない、そんな不思議な天候だな。
そう思っていると、今度はいきなり晴れてくる。

すると今度は、変な奴に話しかけられる。
雨のなか雨宿りもしなかったのか、上から下までビチャビチャになっている。

(^q^)「あうあうあー」

一言で言うなら不気味だった。
よくわからないが、これも不吉の予兆の一つと考えよう。

すぐに晴れた空は、太陽に丸い虹が出来ていた。
もしかすると、これは自分の不幸が去ったことを意味してると思いたい。

(゜д゜@「まぁ、いきなり降りだしたと思ったらすぐ晴れたわ。太陽に虹が出来てる」
 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「知らないの? あれは、縁起が悪いのよ」

(゜д゜@「あらやだ」


('A`)「……不吉だ……」



25: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:57:42 ID:PPw1Q34Q0
そして、恐ろしいことがいつ起きるのかとずっとびくびく過ごしていたが、
それ以外はいつも通り、なんら変わったことは起きなかった。
ただ、よくよく縁起の悪いことが起きるのだ。
だから今日は早く退社して、家路につこうと考えた。

(`・ω・´)「なぁ、昼間の事で少し話したいことがあるんだが、いいか?」

返しに困っていると続けて話してきた。

(`・ω・´)「ここで済むような話なんだけど。ただ今日どんな不吉なことが起きたかだけ」

それなら、ということで簡単に今日の起きたことを全部話した。
床の染みが怖い顔に見えて不吉なんて些細なことも全部。
すると返事がこうだった。

(`・ω・´)「あくまでも仮定だけれど、もしかしたら君に不幸なことは起きないんじゃないかな」

('A`)「どうしてだ?」

(`・ω・´)「不吉な予兆が起きているだけで、今まで君には実害が起きていないだろう?」

そういえば、そうだ。結局クビを宣告されたわけでもないし、この会社が倒産することは無い。
周りの女性から煙たがれるのは、いつものこと。
怪我をしたり、身内に何かあったということも聞いてはいない。



26: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:58:16 ID:PPw1Q34Q0
(`・ω・´)「もしかすると、『不吉なこと』というのは次に『不吉な予兆が起こること』だけなのかもしれない」

('A`)「そう、かもしれないな」

(`・ω・´)「一気に不幸なことが起きてしまうような可能性もあるけれどそう思っていた方が得だろ」

('A`)「うん。そうだな」

(`・ω・´)「まぁ今日は精神的に疲れているだろうから、早く帰って明日に備えた方がいいだろ」

とても長く感じられた不吉な予兆が起きる日が終わりを迎えている。
帰路はとても安穏として帰れることだろう。
そういえば、さっきからもう不吉な予兆となることは起きてはいない。
もう大丈夫なんだ。

(`・ω・´)「ところで血液型はB型だよな?」

('A`)「なんで知ってるんだ?」

(`・ω・´)「いや、最下位がBだったから多分そうだと思って」

('A`)「……」



27: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:59:10 ID:PPw1Q34Q0
目の前の電柱にとまるカラスもそこまで恐ろしくなかった。

('A`)「今考えてみると、勝手に不吉な予兆の象徴とされてかわいそうだな」

カラスはただ生きているだけだ。
好きに鳴き、好きに飛び、自由にゴミをあさり、そして自由に糞を落とす。
そう、俺の頭の上にも。

(;'A`)「きたなっ…………って、不幸なことが起きた」

もう一度同僚の言葉が思い出される。

(`・ω・´)『もしかすると、不吉なことというのは次に不吉な予兆が起こることだけなのかもしれない』

あいつの言ってたことが間違っていたじゃないか。

(`・ω・´)『一気に不幸なことが起きてしまうような可能性もあるけれどそう思っていた方が得だろ』

(;'A`)「……」

もしかすると、今から一気に不幸なことが起きるのだろうか。
今までの予兆を足し合わせた分の。

(;'A`)「怖い……」

嫌だ。どうして。嫌だ。なぜ。何が起きるんだ。嫌だ。怖い。嫌だ。
これからずっとなのか。うそだろ。嫌だ。これから凄い不幸なことが起きるのか。
嫌だ。
嫌だ。



28: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 10:59:44 ID:PPw1Q34Q0
(゚A゚)「イヤだ―! 死にたくない! イヤだ! やだ! やだー!」 

(゜д゜@「あらやだ。目を合わせないようにしないと」
 @@@
@#_、_@ 
 (  ノ`)「気分を損ねるわ」

(゜д゜@「なんか不気味ね。不吉なことでも起きてしまいそうだわ」




('A`) 不吉な予兆のようです 終



29: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:02:13 ID:PPw1Q34Q0
(´・ω・`)「トイレ行きたいな……」

( ^ω^)「漏らされたら困るお。我慢できないならこの料理店に入ってしてくるしかないお」

(´・ω・`)「悪いけどそうするか……」

(´ーヽ`ξ「あなたはゼロ」

( ^ω^)「お?」

(´ーヽ`ξ「あなたはヒャクゴ」

(´・ω・`)「ん?」

( ^ω^)「まぁ、いいお。さっさとこの店に入るお」

(´・ω・`)「そうだね」



30: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:03:10 ID:PPw1Q34Q0



( ^ω^)人数のようです



31: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:05:20 ID:PPw1Q34Q0
カランカラン

lw´‐ _‐ノv「いらっしゃーい。禁煙? 喫煙?」

( ^ω^)「お? すまないけど、トイレを貸してほしいんだお」

lw´‐ _‐ノv「キセルね。米だけでも食べる?」

(;^ω^)「いや、遠慮しておくお」

lw´‐ _‐ノv「君は一」

( ^ω^)「お?」

lw´‐ _‐ノv「君は二百三十九」

(´・ω・`)「……」

( ^ω^)「またかお? なんだお、その数字」

(´・ω・`)「それよりトイレはどこ?」

lw´‐ _‐ノv「あっち」

(´・ω・`)「ありがと。僕の腹が感謝の音を奏でているよ」

(;^ω^)「早く行けお」



32: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:06:07 ID:PPw1Q34Q0
( ^ω^)「で、前にいるバーチャンといい、君といい何を言っているんだお?」

lw´‐ _‐ノv「私の名はシューだ」

( ^ω^)「そうかお。で、さっきから何を言ってるんだお?」

lw´‐ _‐ノv「前にいるのは、私の曾バアチャンだ」

(#^ω^)「そうかお! それで」

lw´‐ _‐ノv「あそこに座っている女性は六」

(;^ω^)「だから」

lw´‐ _‐ノv「店の前で立っている女は二」

( ^ω^)「……」

lw´‐ _‐ノv「それで、私は一だ」

( ^ω^)「……それは一体何の数なんだお?」



33: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:07:24 ID:PPw1Q34Q0
lw´‐ _‐ノv「これか? これは、生涯で性交する男性の人数だ」

( ^ω^)「お?」

lw´‐ _‐ノv「なぜかわかってしまうんだ。産まれたばかりの赤ちゃんから、よぼよぼの爺さんまで」

( ^ω^)「そうだったのかお」

lw´‐ _‐ノv「あそこの幼女は九。隣の母親らしきのが二」

(;^ω^)「ビッチに成長するのかお……」

lw´‐ _‐ノv「今店の前を歩いているあの女は三百ちょうどだ」


(;^ω^)「いかにも清純そうなのにおかしいお……」

lw´‐ _‐ノv「あそこで米を食べている男性は零」

( ^ω^)「お? これはいかにもそんな感じだお。童貞臭が染みでてるお」

lw´‐ _‐ノv「そうなのか? そういった臭いはわからないが君はそんな能力を持つのか」

( ^ω^)「そういう意味じゃないお」



34: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:08:48 ID:PPw1Q34Q0
o川*゚ー゚)o「あら、ごめんなさい。うちのシューが」

( ^ω^)「お?」

o川*゚ー゚)o「ごめんなさいね。迷惑でしょう」

( ^ω^)「そんなことないですお」

o川*゚ー゚)o「今メニューを持ってきますから、どうぞ好きなとこお座りになって」

( ^ω^)「ただトイレ借りに来ただけなんだお。すまんお」

o川*゚ー゚)o「そうでしたの。お気になさらずに。その娘も邪魔だったらそう言ってくださいね。それでは」

( ^ω^)「大丈夫ですお。本当に感謝しますお」

lw´‐ _‐ノv「特に邪魔になるようなことはしてないが……」

( ^ω^)「若くていいお母さんだお……」

lw´‐ _‐ノv「ちなみにあれは八だ」

( ^ω^)「……何故その事を言うんだお……」



35: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:09:54 ID:PPw1Q34Q0
lw´‐ _‐ノv「しかし、知らない人にこんな事ばかり言ってしまうのもなんだな」

( ^ω^)「いつも言いふらしているわけじゃないのかお」

lw´‐ _‐ノv「話したところでメリットは無いからな。だが君の連れがあまりにも多すぎたから、つい」

( ^ω^)「確かに長年連れ添っていたけど二百三人もいるとは思わなかったお」

lw´‐ _‐ノv「まぁ、遅咲きのかもしれないからな」

(*^ω^)「その点ブーンは一人だけだから純愛だお」

lw´‐ _‐ノv「相手はどうか知らんがな」

(;^ω^)「それは言うなお……」

lw´‐ _‐ノv「君はまだなのか。まぁ私もまだだが」

(*^ω^)「もしかすると、ブーンの一人は君かもしれないお」

lw´‐ _‐ノv「それはない。絶対にありえないからな」

(;^ω^)「そんな、考えもせず……」



36: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:11:14 ID:PPw1Q34Q0
lw´‐ _‐ノv「君は私の曾バアチャンに何と言われた?」

( ^ω^)「お? そう言えば君と違ってゼロと言われたお」

lw´‐ _‐ノv「……やはり、私はそういった臭いがわからないらしいな……」

( ^ω^)「何を言ってるんだお?」


lw´‐ _‐ノv「だって君は童貞なのだろう? 私の曾バアチャンは女性との性交人数がわかるんだ」


( ^ω^)「お? さっき君は一だって言ったお? それはどうなるんだお? 性交人数……」


lw´‐ _‐ノv「男性とのな」


( ^ω^)「え……」



37: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:12:57 ID:PPw1Q34Q0
(´・ω・`)「ふー。スッキリした」


(^ω^ )「……」


(´・ω・`)「どうしたの?」



( ^ω^ )「マジ勘弁」




( ^ω^)人数のようです 終



38: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:16:43 ID:PPw1Q34Q0
記憶の障害を持った人がいた。
しかし、その人はとても素晴らしい偉人であった。
そしてその人は、自分が偉人であることに今日も気づいてはいない――――



39: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:17:46 ID:PPw1Q34Q0



川 ゚ -゚)記憶の障害のようです



40: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:19:38 ID:PPw1Q34Q0
多分、朝の日差しのせいで目が覚めた。
私はいつの間にベッドの上で寝ていたのか。それよりもここはどこなのだろうか。
どう見ても夕方の日差ししか入らないピンクで固められていたような小さな部屋ではない。

ベッドの柔らかさというのも格段に違う。
でもそれに対して心地がいいと考えるような気力が無い。
知らない部屋にいる驚きよりも、もっと大きな不快感がある。頭痛と吐き気が他のすべての気持ちを打ち消していた。

川 ゚ -゚)「死にそうだ……」

思わず口から出た言葉がますます私を気持ち悪くさせた。
起き上がることも出来ない。
この頭痛はきっと二日酔いから来ているのだろう。
酒も飲めないのに友達のやけ酒につきあわせられた。そしてその友達の部屋でもないようだ。

ビール缶どころかゴミや塵が一切見つからない。
家具がアンティークで固められていてドラマのセットのように見える。
そんな空間の中に一枚、机の上に読んでくれと言わんばかりに紙が置いてあった。
もしかしたら、この部屋の持ち主が私に向けた置き手紙ではないかと思いおもむろに立ち上がり、千鳥足で向かった。

川;゚ -゚)「何だこれは……」

手紙には長々と今の状況について書かれていた。それは、私の頭痛も吐き気もすべて吹き飛ばすような内容だった。



41: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:20:34 ID:PPw1Q34Q0
 まず、驚かないで落ち着いてこの内容を読んでほしい。
 今の私には多分友と一緒に酒を飲んで酔った時の記憶までしかないだろう。
 今この時の私も覚えのないことだが、私は泥酔していて電柱にぶつかり頭に障害を残してしまったらしい。
 それからというもの、私の記憶は一日毎に消えてしまうようになってしまったらしいのだ。
 この時の私が言えるのは、今日の私がしたいことをしてくれればいい。それだけだ。



43: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:24:05 ID:PPw1Q34Q0
その後に続く私への文。驚いたには驚いたが、それは私が記憶障害になっていたらしかったことではなくて、
単にこれほどの格調高い文を書けていることに、だ。
長々と続くその文には、こうなった自分の、消え失せた自分の生々しい葛藤などがあらわに出ていた。
文学をたしなんでいる人には低い文章なのかもしれないが、私にとっては高すぎる。一種の興奮を覚えた。

いとも簡単に頭痛や吐き気が消えて興奮を感じられるようになったのか。
今までの頭痛がヒステリックからきたものに思えて何か恥ずかしい。
ともあれ、これで私は冷静に今の状況を考えられることになった。

だが、周りを見ても時計やカレンダーはない。時間がわかるものといえば太陽だけである。
一体どれだけの時間がたったのか。肌に皺が一本や二本はあったって不思議じゃない。
きっといきなり変わり果てた顔を見るのが嫌だから、いきなり過ぎ去った時間を知るのは残酷だから、
そういった意味で鏡やカレンダーが無いと推測してみた。
だが、どんなことをしたって結局この文以外に今の自分の状況をちゃんと知るすべは無かった。

少し経てば空腹も尿意も感じてくるだろう。
しかし、今は何も感じはしない。呆然と手持無沙汰でいるだけだ。
どうやって毎日を過ごしているのか。金銭面のこともそうだけど、私の時間が止まっているのだ。
ジェネレーションギャップだってあるだろう。やることが無いと不安が募る一方だ。



44: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:25:16 ID:PPw1Q34Q0
川 ゚ -゚)「……」

ふと、あの手紙のことを思い出した。したいことをしてくれればいい、と。
机の隣の本棚にはなにやら別の国の言語のタイトルがついた本がハンバーガーのように積み重ねられていて、
その一番上には白紙の用紙が何枚も、そしてペンが置かれていた。
頭を使えば昔の私もこれだけの文を書けていたのだ。ペンと紙を前にしたらないか思いつくことだろう。

頭の中でゆっくり数を数える。
素数を数えて落ち着く脳なんて持ち合わせていないからただ単に一、二、三と数字を数えていくだけ。
それだけでも私は何か思いつきそうな気がしてきた。随分とお気楽な脳だ。
二十も数えないうちのもうアイデアが生まれた。

川 ゚ -゚)「小説でも書いてみるか」

今の状況だ。記憶が消えてしまう主人公の話にでもしてみたらどうだろう。
早速気力がましてきた。この気持とこの記憶を失う前に今すぐに書き始めよう。

一週間分の自分の生活のために毎週日曜だけ、殺人も厭わない罪を犯している主人公なんてどうだろう。
ああ、そうだ。この話の主人公を自分と間違えないように主人公は男にしておかないといけない。
私はペンを持った。冒頭は、さっきの文をまねて始めればいいだろう。



45: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:26:46 ID:PPw1Q34Q0
川 ゚ -゚)「ふぅ。結構出来たな」

書き始めて数分、思った以上にペンが進む。私には作家の才能があったのかもしれない。
早速一ページ書きあげることが出来た。なかなかの出来栄えだと思う。
やればできるものだ。まぁ、大体はあの文を写しただけになるが。

何か体の中からわき出てくるものをそれとなく感じているとノックの音が聞こえた。
驚いてペンを一旦置いた。ドアの方に目をやると、老年の白髪が目立つ男性が立っていた。

/ ,' 3 「あ……」

川 ゚ ー゚)「どうも」

私に対して少しおびえているように見える。ドアが開かれるまで、私もそうであったが今では別だ。
害のあるような人には見えない。善人であるというようなオーラが纏われているように見える。
もしかすると、私の夫なのであろうか。それとも使用人か。出来れば後者であって欲しい。
前者であれば私がこの男と同様に年をとっていることになるから。

どちらの場合においてもこの男性が今怯えているのは、私に記憶障害になったこの現状を話すのがつらいからだろうか。
私は別に気にはしないのに、寧ろ気分がいい。



46: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:28:09 ID:PPw1Q34Q0
/ ,' 3 「すみません。あなたは誰なんですか?」

川;゚ -゚) 「は?」

訊かれた内容があまりにも予想と食い違っていたので腑抜けた声が出てしまった。
男性は私に右腕を見せつけてきた。マジックで何か書いてある。

/ ,' 3 「昨日私の家の前で泥酔したあなたが倒れていたらしく」

川;゚ -゚)「え?」

/ ,' 3 「危ないと思って私が家に入れたらしいのですが身に覚えが無いのです……」

男性の腕をよく見ると今言われた内容とほぼ同じことが簡単に書かれていた。
その内容を頭の中で反芻することで事実を理解することが出来た。

/ ,' 3 「あの、大丈夫ですか?」

川;゚ -゚)「あ……はい! 大丈夫です! もう結構です! ありがとうございました!」

何と言うことだ。私はとんだ勘違いをしていた。
別に記憶障害などではなく、皺なんてものは一切なく、特に高い文才も備わってはいなかった。
泥酔していたのは昨日のこと。記憶障害なのはこの男性だ。
何たる羞恥。恥ずかしくて仕方が無い。私は一目散にその部屋を出た。



47: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:31:16 ID:PPw1Q34Q0
/ ,' 3 「何なんだ一体……」

偉人は呟いた。わけもわからないことが連続して起きているからだ。
目が覚めると体は老いていて、知らない女性が自室にいたが記憶が無い。

しかし、こういったことは毎日のことであった。朝の日課なのである。
そして、いつもならここで彼は未来の自分宛てに書かれた手紙を読むのだ。
彼は学者であった。とても多くの発見をしているが、それは記憶障害を患ってからのことである。
さらの状態でたくさんの論文を読む。そのことが、彼に多くのことを発見させるのに起因するのだろう。

この二十数年間、いつもそうであった。
だが、今日だけは違っていた。彼が目にしたのは彼女の書いた駄文。
功績を称えられ得た金を使って生活する偉人ではなく、毎週日曜だけ罪を犯して生活している愚かな主人公。

しかし、それはさらの頭の中に綺麗に入ってしまった。これは、自分のことだと。
そうなった彼に先の彼女とその慌てようはどのように見えるだろうか。自分の生活のための被害者である。
このまま放っておけばどうなるか。自分が警察に掴まるのは一目瞭然だ。

早く探し出して、彼女を逃がさないようにしないといけない。
今までの自分がやってきたことと同じことだ。臆することは無い、と。



48: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:35:08 ID:PPw1Q34Q0
彼が物音をたてずその部屋を出ると、彼女が目の前にいた。とても焦り、顔を真っ赤にした彼女が。

川;゚ -゚)「あの、昨日一緒に持っていたはずのバッグってどこにありますか? 探しても見つからないんですけど……」

それを見た彼の笑みは紛う方無き悪そのものだった。
彼の姿には善人のオーラなど一欠片もなく、数分後彼女の書いた主人公は彼になった――――



記憶の障害を持った人がいた。
しかし、その人はとても素晴らしい偉人であった。
そしてその人は、自分が偉人であったことに今日も気づいてはいない――――




川 ゚ -゚)記憶の障害のようです 終



50: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:40:32 ID:PPw1Q34Q0
平日の昼間。スーパーはやけに静かである。
これからはいつもの時間をずらしてこの時間に来るようにしようか。
やけににぎやかで混雑しているのはあまり好きではない。
まだ値引きのシールが貼られていない精肉コーナーの前を歩いていると、二人の子どもがいた。

(・< ・)

(・ゝ・)

ミセ*゚ー゚)リ「……」

どうやら双子のようだ。
よくわからないが何か不気味な気がした。



51: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:41:37 ID:PPw1Q34Q0



ミセ*゚ー゚)リしゃべらないようです



52: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:43:19 ID:PPw1Q34Q0
じっとこちらを見つめてくる。いや、これくらいの子どもならよくあることだろう。

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたの、君たち迷子になったの?」

しゃがんで顔を見合わせるように言った。

(・< ・)

(・ゝ・)

この二人は何も喋らない。何も言わない。
いや、正確に言うと口は動いている。しかし、何も言わないのだ。
恐怖が襲う。

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫なの?」

(・< ・)

(・ゝ・)

向き合って話し合う。しかし何も言ってないのだ。
双子だからか同時にこちらの方を向く。



53: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:44:41 ID:PPw1Q34Q0
ミセ*゚ー゚)リ「何を言ってるの?」

(・< ・)

(・ゝ・)

無言。何も喋らない。

ミセ;゚ー゚)リ「……」

(・< ・)

(・ゝ・)

どうしたものか。怖くてたまらない。
私はまだ買い物は終わってはいないがすぐに外に出たくなった。

ミセ;゚ー゚)リ「じゃあね」

(・< ・)

(・ゝ・)

自分にも聞こえないほどの声で言った。
そそくさと、レジに向かう。
一度振り向いたが、あの双子はまた口だけを動かしていた――――



54: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:47:08 ID:PPw1Q34Q0
さっきはぐれた弟たちを見つけ出した。
いつも必ず迷子になる。失敗すれば買い物よりも探すのに時間がかかる。

∬´_ゝ`) 「何してたの?」

(・< ・)「ん。あのお姉ちゃんと話してたの」

∬´_ゝ`)「何を」

(・ゝ・)「何だろ? 何を言っても一人で話しかけてくるだけなんだ」

∬´_ゝ`)「そういうのは、自分の声が小さいからだよ」

(・< ・)「そーかな」

(・ゝ・)「そーかも」

(・< ・)「もう一度しゃべってこようかな」

(・ゝ・)「いや、しゃべらないでいいでしょ」

(・< ・)「さすがにいいか」

(・ゝ・)「さすがにいいよ」



55: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 11:48:42 ID:PPw1Q34Q0
何があったのかわからないが面白そうだ。
こんな小さい子は毎日が面白いことの塊なのだろうか。

∬´_ゝ`)「そういえば、母者が今日はお肉料理にするって」

ひとつパックをとって、弟たちに言う。

(・< ・)「おー」

(・ゝ・)「やったー」

∬´_ゝ`)「ただし、迷子になったりはぐれたりしたら食べさしてもらえないよ」

さっきから流れている曲を音痴にだけど楽しそうに二人で歌い出す。
やたら上機嫌で話を聞いてやいない。
きっと話してた相手にもこんな感じだったのだろう。申し訳ないことをした。

今日の晩御飯も楽しそうだと思いながら、
彼らを逃がさないようにと目を光らせ買い物の続きをした。




ミセ*゚ー゚)リしゃべらないようです 終



60: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:04:45 ID:PPw1Q34Q0
春の心地の良い風の中、よくあるような屋台のおでん屋で一人の客が店主に話す。
夜のおでんの屋台はいかにも愚痴をこぼしやすく、たった一人の客は顔を赤らめている割には、
その表情は酒に酔わされているようには見えなかった。

(´・_ゝ・`)「なぁ、最近俺の息子がおかしいんだ」

( ´ー`) 「下ネタ言うんじゃネーヨ」

(´・_ゝ・`)「違う違う。俺の子ども、せがれの事だよ。気がくるってると思うほどなんだ」

( ´ー`) 「お前のような目の濁ったような、息子なんだから仕方ないんじゃネーノ? 血筋なんダーヨ」

(´・_ゝ・`)「俺の目は濁ってなどいないさ。少し聞いてくれないか」

( ´ー`)「……わかったんダーヨ」

店主はホロ酔いになった人間の愚痴など聞きたくはなかった。
だが憎まれ口を叩きながらも、結局は彼の解決しようのない悩みを聞く。
いつも聞き側に回る店主にとって、一番誰かに言いたい愚痴というのはそこだった。



61: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:07:54 ID:PPw1Q34Q0



(´・_ゝ・`)ブタを壊すようです



62: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:09:27 ID:PPw1Q34Q0
私の家で飼うブタの寿命は短い。
今年だけでも軽く三十体は死んでいるだろうか。
殺すのは私の息子。殺害方法は鈍器で背中を叩くだけ。
出てくるのは、七百円もしないほどの小銭だけだ。

ほぼ一年前の事であった。
息子の小学生の入学と一緒に飼ってあげたブタの貯金箱。
息子にお金をためることを教えようと飼ったのだが、
壊さないとお金が取り出せないようにしたのが間違いだった。

息子は私の思い通りに、お金を貯め出した。
ゲームセンターのあるデパートへお金を渡して連れて行っても、
全部は使わずちゃんとためるようになった。
お金でつるのもあれだが、百円で肩叩きをしてくれるようにもなった。

ブタの寿命は二ヵ月と持つことは無かった。
中身が見たくなるのはしょうがないこと。
どうでもいいことかもしれないが、飼ったブタの中でこのブタが一番体重が重かった。
これからは壊さなくても済むような物を飼おうと、思ってそのブタを撲殺することにした。



63: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:10:26 ID:PPw1Q34Q0
(´・_ゝ・`)「本当にいいんだな? 壊すぞ」

( ><)「お願いするんです」

(´・_ゝ・`)「危ないから少し離れててな」

( ><)「わかったんです」

使いもしなかった日曜大工セットの中の金槌をふりあげた。
そして、鈍い音とともに私の一撃でそのブタは壊れた。
呆気なく壊れたブタの中には、たくさんの小銭。
よく貯めたものだな、と言おうとして私は息子の顔を見た。

( <●><●>) 「……」

その時の顔に私は寒気がした。
どう見ても、たくさんのお金に対して見せた顔ではなかった。
明らかにその顔は、ブタに向けられていたのだ。
私の息子が唐突に怖くなった。



64: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:12:11 ID:PPw1Q34Q0
(´・_ゝ・`)「それからの事は、言わなくてもわかるだろう」

( ´ー`)「いや、どうなったんダーヨ」

店主は、いつも聞くような愚痴とは違う特異な話に興味を持った。
客の顔は、赤いままではあるが話せば話すほどその赤色が悪くなっていく。
自ら話しているのだが、無理強いされて話している様に店主は思えてきた。

(´・_ゝ・`)「前のと同じブタの貯金箱を飼ってと催促されたよ」

( ´ー`)「それで、どうしたんダーヨ」

(´・_ゝ・`)「飼えるわけが無い。あんなものを見てしまったら」

( ´ー`)「そりゃそうダーヨ」

(´・_ゝ・`)「でも催促の仕方は本当に子供だったんだ」

( ´ー`)「それじゃ……」

(´・_ゝ・`)「それを見たら大丈夫だと思ってしまった。それがバカだったよ」

( ´ー`)「……」

(´・_ゝ・`)「だが、駄目だった」



65: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:15:43 ID:PPw1Q34Q0
少し経って、私の息子をデパートへ連れて行った。
いつものように、ゲームセンターで遊ぶお金をあげた。
その金は貯めることは無く全部使われた。
新しいブタを飼うために。

デパートで目を離せばいつの間にかブタを飼っている。
自分が連れていかなければ妻が連れていく。
金槌を隠しても使う用具がかわるだけ。
自分の中に芽生えた感情には誰も気づいてくれない。

息子はそのブタを飼ってすぐ、殺した。
もう、息子はブタを飼う以外にお金を使わなくなってしまった。
もう中毒になっていたように見えて、止めようとしたって無駄な気がした。
ブタを殺す時の息子の目は、とても輝いている。

(´・_ゝ・`)「なあ。そんなことして楽しいか?」

( <●><●>) 「とっても楽しいんです」

(´・_ゝ・`)「そんなことをするのは、お前だけだ。もう止めろ」

( <●><●>) 「いやなんです」

(´・_ゝ・`)「……」

もう何も言えなかった。



66: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:17:20 ID:PPw1Q34Q0
( ´ー`) 「そりゃネーヨ。父親なら止めるのが筋ってもんじゃネーノ」

(´・_ゝ・`)「そうだけれど、それが出来ないんだよ」

( ´ー`)「どうしてダーヨ」

多分答えてはくれないだろうとわかっていても聞いた。
案の定、目線はカップに逸らされる。

(´・_ゝ・`)「貰ったお年玉も全部それに使っちゃってね。ハハ……」

店主はあきれていた。父親がこれなら息子の将来なんてわかりきったものだからだ。
客はずっと酒を飲んでいるが、嬉しそうな顔なんて一切しない。
皿に盛ったおでんには、一切手をつけないでいるからもう冷めている。

(´・_ゝ・`)「もう帰るよ。愚痴を聞いてくれてありがとう」

( ´ー`)「……どうなってもシラネーヨ……」



67: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:19:25 ID:PPw1Q34Q0
  ε ⌒ヘ⌒ヽフ
 ( ¥ (  ・ω・)  ブー
  しー し─J


(´・_ゝ・`)「ただいま」

家の中はやけに静かになっている。
ふらつきもせずに、妻がいるはずのリビングへ向かう。
妻も息子の奇妙な行動を知っているが、特に重くは考えていなく、たまに注意する。
昔の自分の話を教えてでも、今日はちゃんと話し合わなければならないと思った。

(´・_ゝ・`)「おい。なんてところで寝てるんだ」

妻がカーペットの上でうつ伏せになって寝ている。
起こしてあげようと、妻の腕を持つと、異変を感じた。
持った腕には骨があるようには考えられず、その部分だけ持ち上げる。
見えた顔は、潰れて血で真っ赤になっており、もう人の顔ではなかった。



68: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:22:24 ID:PPw1Q34Q0
(´・_ゝ・`)「……死んでるのか?」

( <●><●>) 「もう、壊れちゃってるんです」

息子が真っ赤な金槌を持って後ろに立っていた。

(´・_ゝ・`)「お前がやったのか?」

( <●><●>) 「そうなんです」

(´・_ゝ・`)「どうして……」

( <●><●>) 「壊したくて壊したくてたまらなかったんです。なのにじゃまされたんです」

(´・_ゝ・`) 「そうか……」

やはり血筋だったのだ。
昔、どうしても壊したくなってしまって邪魔をした母を壊してしまった。



69: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:23:55 ID:PPw1Q34Q0
あの時の事は今でも覚えている。一番邪魔してきた相手を標的にした。
そうやって邪魔をしてくる人が粋がっているように見えて。
自分が標的にはなりたくない。だから、息子を止めることなんてできなかった。
妻にもなってほしくはなかったのだが、いまさら仕方ない。

息子を見るのが怖かった。
昔の自分自身を見ているようで。
無駄に粋がっていたやつがブタにしか見えなくなって。
そのブタを金槌で叩いてしまったあの時のこと。

今思えば粋がっていたのは自分自身だったのだ。

(´・_ゝ・`) 「あの時からお前がブタにしか見えなくなってしまったんだ」

帰宅の途中で買った、金槌をバックから取り出す。
抑えきれらねないのだ。
もう使うことは無い新品の金槌をふりあげた。

(´ _ゝ `) 「許してくれ」

そして、鈍い音とともに私の一撃でそのブタは壊れた。
呆気なく壊れたブタの中には、たくさんの血。
よくここまで育てれたものだな、と独り言を言おうとして私はブタの顔を見た。

ブタの目はまだ輝いていた。
そして確かに見えた。
輝くブタの眼に映る、私のもっと輝いた眼を――――



70: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:24:52 ID:PPw1Q34Q0


  ε ⌒ヘ⌒ヽフ
 ( ¥ (   ω )
  しー し─J




(´・_ゝ・`)ブタを壊すようです 終



71: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:25:58 ID:PPw1Q34Q0
短編小説で私のような職業はよくとり扱われていた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「やっていただけますかな?」

从 ゚∀从「はぁ……わかりました」

実際にはありえないだろうと思っていたもののこうやって目の前で言われたのなら仕方ない。
こういうことがあるとフィクションだが予備知識を持っていた私は、気の抜けた返事をしか出来なかった。



73: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:28:23 ID:PPw1Q34Q0



从 ゚∀从ハインリッヒ高岡のようです



74: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:30:24 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「こんにちは」

(・∀ ・)「こんちはー」

从 ゚∀从「初めまして。私高岡です。よろしく」

(・∀ ・)「お初でーす」

从 ゚∀从「今日はどうしてここに?」

(・∀ ・)「どうしてって、君らの国の大臣に連れて来られたのさ」

从 ゚∀从「大臣ですか。ああいますね、この国に大臣が」

(・∀ ・)「ああ。その大臣に観光の一つといって連れて来られたんだ」

从 ゚∀从「観光といえばヨーロッパとか行ってみたいですよねー」

(・∀ ・)「ん? ヨーロッパにはもう話はつけてあるんだよ」

从 ゚∀从「……そう、ですか」

妄想辟に対しては、その妄想に対して否定はしないようにし、話をずらす。
普通ならこれぐらいでいいはずなのだ。
しかし、どうだろう。彼の言うことはすべて正しいのだ。嘘偽りない真。



75: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:31:29 ID:PPw1Q34Q0
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「これは君たちのような精神科医にしか出来ないことなんだ」

从 ゚∀从「何でしょう」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「この男が話す事実を全て妄想だと思わせたい」

从 ゚∀从「……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「よく小説のネタであるだろう。それをやっていただきたいのだ」

从 ゚∀从「その人の妄想というのは?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「これは話が早い。自分が宇宙人だと妄言を吐くほら吹き野郎だ」

国のお偉いさまから引き受けた内容はあまりにも現実離れしたものだった。
この病院でなく私一人に頼まれたもの。成功報酬も現実離れしたものだ。
失敗しても特にお咎めもなく、一度はやってみたかったものと心の奥底で思っていたせいか、
気がつくと引き受けてしまう形となっていた。



76: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:32:47 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「ところで、あなたの惑星とはどういうようなものなんですか?」

(・∀ ・)「この惑星は頭脳も語彙も無いから言葉で説明するのは難しいな」

本来聞くべきではないが、興味本位でいくつも聞いてしまった。

从 ゚∀从「どうしてこの惑星へ?」

(・∀ ・)「資源が豊富なんだ。特に水。それと奴隷になる人かな」

从 ゚∀从「いつ、この惑星に来られたんですか?」

(・∀ ・)「二年前さ。初めてこの惑星に来たやつは十年前」

从 ゚∀从「どうやってバレずに過ごしているんです?」

(・∀ ・)「変態だよ。昔は人を殺してそいつに、今は国に戸籍を作ってもらう」

从 ゚∀从「今この惑星にいる人数はどれくらいなんですか」

(・∀ ・)「二万人くらいかな? そんなに多くないでしょ? しかも、大半は観光」

从 ゚∀从「観光?」

(・∀ ・)「珍しいからね。こういう惑星は。俺らの惑星がまだ潤ってたら、保護区にしてただろうね」

从 ゚∀从「本格的な活動というのはいつごろから?」

(・∀ ・)「まだ始まってすらいないよ。今は偵察を含め準備段階」



77: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:33:48 ID:PPw1Q34Q0
質問には全て答えてくれた。
返ってくる答えは、あまりにも現実離れしたものではあったが、
どこか信じてしまいそうな重みというものがあった。

从 ゚∀从「それじゃあ――」

もう一つ質問しようとした時、彼が手をパンと叩きあわせ、音を出した。
質問しすぎと言わんばかりに。

(・∀ ・)「そうだね、面倒だから言えることぐらいは全て話すよ」

从 ゚∀从「ありがとうございます」

(・∀ ・)「のっとるにしても準備ってのがあるからね」

妙に委縮してしまうような面持ちがだった。

(・∀ ・)「オレらの仕事は商売なんだ」

从 ゚∀从「商売?」

(・∀ ・)「ん? ああそうだ。貿易商っていうの」

从 ゚∀从「ああ、それですか」



78: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:34:48 ID:PPw1Q34Q0
(・∀ ・)「なら、話が早いよね。この国の歴史はちょっとかじってるから、わかりやすく言うね」

少し頭を悩ませるようにしてから、彼は続けて言った。

(・∀ ・)「ハリスやペリーがいつかやってくるのさ。今の僕らは種子島に来た武器商人」

何とも分かりやすかった。歴史は繰り返すのか、とすぐに脳にしみ込む。

(・∀ ・)「あと宗教的なものもいつかやってくるよ。キリスト教だっけ?」

从 ゚∀从「あなたの惑星にも宗教が?」

(・∀ ・)「んー、有象無象でいいんだよ。洗脳て骨抜きにするために来るだけなんだから」

从 ゚∀从「そんな……」

(・∀ ・)「全然おかしくないでしょ? 今君たちがオレにやろうとしてることと同じだから」

从 ゚∀从「……」

(・∀ ・)「だよね?」

そう言って、もう一度パンと拍をした。

(・∀ ・)「こんな感じかな?」



79: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:36:16 ID:PPw1Q34Q0
事実のことを妄想だと思わせるなんてことを人間相手ですらしたことが無いのに、
異星人で成功するのかどうか、あやしくなってきた。
なお且つ、相手は今からやろうとしていることが理解しているのだ。
こんなことなら、私ではなく催眠術師にでも任せればいいだろうに。

(・∀ ・)「ちなみにね。今暗号を送ったんだ」

从 ゚∀从「暗号?」

(・∀ ・)「うん。『その女は安全だ』ってね」

从 ゚∀从「もう一つ、あなたの惑星の名はなんですか?」

(・∀ ・)「あれ? 興味ない? まあ、いいや。レモナ星って言うんだ」

从 ゚∀从「レモナ星……」

(・∀ ・)「それより興味ないの? 結構面白いんだよ今の暗号」

どうしよう。頭が混乱してきた。本当なのだろうか。本当に本当なのだろうか。

(・∀ ・)「どうしたの? ねぇねぇ?」

从 ∀从「ハハハ……」



80: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:38:03 ID:PPw1Q34Q0
(・∀ ・)「聞いてよ。ねぇ?」

从#゚∀从「聞くわけねーだろ!」

(・∀ ・)「え?」

从#゚∀从「ここまで呆れるレヴェルのデンパ野郎は久しぶりだよ!」

(・∀ ・;)「どうしちゃったの? 大丈夫? おかしくなっちゃった?」

从#゚∀从「おかしいのはお前だろうが!」

(・∀ ・;)「ちょっ、ねぇ? とりあえず落ちつこうよ」

从#゚∀从「お前に話を合わす国も大臣もいねーよ! 全部妄想だ!」

そうだ。こいつは人じゃないんだ。なら、完全否定してもいいはずだ。お咎めは無い。
それよりも本当のはずがない。そうに決まってる。

从#゚∀从「変態っつったよな! やってみろよ!」

(・∀ ・)「……いいの?」

从 ゚∀从「やれよ」

顔が変形していく。いや、姿も。何かナメクジのように見える。
でも多分変わってないはずだ。本当に変わるわけなんてないんだから。



81: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:38:46 ID:PPw1Q34Q0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「どうだ! 気高き我らの真の姿だ!」

从#゚∀从「どこがだよ! 変わってねぇよ! 鏡見てこい!」

変わるなんてありえないから。きっと相手の妄想につきあったせいでそう見えるだけだ。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「え?」

从#゚∀从「今までの全てがお前の妄想だよ!」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「違う! 何を言ってる! オレの正体はレモナ星から……」

从 ∀从「それはアイドルから土地を買ったとか、そんな話だろ」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「そんなんじゃない!」

もういい。どうなろうが知らないし知ったことではない。
でも、このデンパな妄想だけは止めさせよう――――

从 ゚∀从「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」

ィ'ト―-イ、
以`;益;以「あああああああ!」



82: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:40:22 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「はぁ……」

('、`*川「どうしたの。いつもより深いため息をして?」

それから数日後のことである。あまりに様子がおかしかっただろう。同僚にご飯を誘われた。

从 ゚∀从「一体、いや一人おかしな患者がいてさ。別の星から来たとかなんとか」

('、`*川「そんなのいつものことじゃない」

从 ゚∀从「そうだけど」

何が言えようか。どう伝えればいいだろうか。
どうせ何を言ったって全否定されるだけとわかっているのに。

('、`*川「そういえば、私のところにもおかしな患者がいたわ」

从 ゚∀从「へぇ。どんな?」



83: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:41:50 ID:PPw1Q34Q0
('、`*川「自分のことをこの国のお偉いさまだって信じてて、私に変な依頼をしてくるの」

从 ゚∀从「……」

('、`*川「あ、すみませーん! 注文したいんですけど」

店員にメニューを指差しながら頼むのを見て、閉口するしかなかった。

从 ゚∀从「あ、私も同じので」

(#゚;;-゚)「はい、わかりました。ではご注文のほう確認させていただきます」

繰り返される料理の名をおぼろげに聞いた。

(#゚;;-゚)「ご注文のほう、間違いありませんね。では」

出された料理は、私を元気付けるのにぴったりな料理ばっかりだった。



84: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:44:10 ID:PPw1Q34Q0
帰路、彼女を引率するように先に歩いた。

('、`*川「明日からは元気になってよね? こんな職業だから仕方が無いけど」

从 ゚∀从「うん。わかってる」

いつもは歩かないような路地裏に彼女を引き込む。

从 ゚∀从「ねぇ、ペニちゃん」

('、`*川「どうしたの?」

从 ゚∀从「レモナ星って知ってるよね?」

('、`*川「レモナ星? 何それ?」

从 ゚∀从「とぼけるのはやめてくれない? 今日飲みに誘ったのもそれ関連でしょ?」

('、`*川「どうしたの? 大丈夫?」



85: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:48:24 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「連絡が取れなくなったから動いたんでしょ?」

('、`*川「何を言ってるの?」

从 ゚∀从「……それならそれでいいけど」

かばんの中から、銃を取り出す。といっても見た目は子供が遊ぶおもちゃのような銃だ。

从 ゚∀从y=ー「もう一度聞く。レモナ星って知らない?」

('、`*川「ど、どうしたの? やっぱりさっきからおかしいよ」

从 ゚∀从y=ー「そんなこと言ってると、トリガー引いちゃうよ?」

('、`*川「……」

从 ゚∀从y=ー「……」

('、`*川「どうして、気づいたの?」

从 ゚∀从y=ー「まずは、持ってる武器を渡してちょうだい」

どこから出したのだろうか。右手にヨーヨーの様なものを握っていた。

从 ゚∀从y=ー「そのまま、下において」

用心深くその置いたものを手に取った。



86: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:50:48 ID:PPw1Q34Q0
('、`*川「ねぇ、どうして気づいたの」

从 ゚∀从y=ー「お前が言った件のお偉いさまからは前金としてちゃんといくらか貰っていてね」

('、`*川「……」

从 ゚∀从y=ー「あと、おかしな患者からたくさんの妄想話を聞いててさ。たまには信じたくなるもんさ」

('、`*川「その武器も貰ったのね」

从 ゚∀从y=ー「暗号もな。いつか私を消すつもりだったんだろう。多分あのお偉いさまは消されてるだろうし」

メニューの品の頭文字。全部を繋げると『コレは消す』となっていた。
なんとも低レベルだが、暗号は本物のようだ。

('、`*川「そんなわけないわ」

从 ゚∀从y=ー「どちらでもいいさ。それより今だした武器の使い方、教えてくれない?」

('、`*川「……今もってる方を逆手にしてそのつまみを引っ張るだけよ」

从 ∀从y=ー「……精神科医だよ? そんな嘘に気づかないと思う? まぁ別にあいつに聞けばいいか。さよなら」

('、`;川「待って! ちゃんと話すから! だから殺さないで!」



87: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:52:27 ID:PPw1Q34Q0
必死になってこの武器の説明をしてくる。

('、`*川「向きは逆です! その銃と違って、死にはしないけど気絶するほどの威力なの!」

从 ゚∀从y=ー「ふぅん。じゃあこの銃は死ぬほどの威力なんだ」

('、`*川「……え?」

从 ゚∀从y=ー「あの男は、もう自分のことを日本人だと思ってこの銃のことまで教えてくれなかったんだ」

('、`*川「それって」

从 ゚∀从「うん。この銃の撃ち方知らないんだ。次はこの銃の使い方も教えて欲しいな」



今まで味わったことも無いこの感覚。
なんて清清しい気分なんだ。



88: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:56:26 ID:PPw1Q34Q0
从 ∀从「あの店員もレモナ星のやつか……」


金も武器もこれで十分にある。
まだまだたくさんの侵略者がこの地球にいる。
皆気づいていない。私だけだ。地球の運命は私にかかってるんだ。


从 ∀从「アハハハハ。地球は私が守る」




これが、地球を救った英雄の始まりだった。
彼女の偉大さは後世に名を残した。
この後の活躍についてはここでは割愛させてもらう。

もちろん当時は誰も信じなかった。
傍から見ればデンパな妄想者だ。



89: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:58:00 ID:PPw1Q34Q0
そんな彼女には本名以外の名があった。

デンパとしてしか見られなかったために出来た二つ名。

電波を発見したハインリッヒ・ヘルツからとった名。



『ハインリッヒ高岡』

从 ゚∀从「アーッハッハッハッハ!」




从 ゚∀从ハインリッヒ高岡のようです 終



102: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:23:27 ID:nvnhbpZM0
十数年前の話です。子どもたちがきちんと外で遊ぶようなそんな時の話です。
空は真っ赤に燃えあがっていました。
かくれんぼの鬼をしていた女の子は神様を見つけました。

*(‘‘)*「見つけました」

( ・∀・)「見つかりました」

神様は別にかくれんぼに参加していたわけではありませんが、人から隠れていました。
神様を見つけれるのは、心が綺麗な人間のみだそうです。
一切の罪を行ったことも罪の意識に駆られることもない、綺麗な心を持った人間です。
ですので特別に何か願いを一つかなえてあげようと思いました。



103: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:24:08 ID:nvnhbpZM0



*(‘‘)*いかがわしいようです



104: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:25:28 ID:nvnhbpZM0
( ・∀・)「私は神様です」

*(‘‘)*「あなたがかみか」

( ・∀・)「そうです」

*(‘‘)*「しんじません」

( ・∀・)「……嘘をつきました。私は神様の手先です」

そう言って神様は手から四葉のクローバーを一つ、生み出して彼女に手渡しました。
子どもでも現実味がない話には到底ついていきません。現実性とそして餌をあげないと。

*(‘‘)*「しんじましょう」

( ・∀・)「ありがとうございます。では、見つかったので一つ願いをかなえましょう」

*(‘‘)*「なんでもいいのですか?」

( ・∀・)「不老不死や殺生、死者蘇生や願いの数を増やす事、気持ちや記憶、時間を変えるというのは如何わしいのです」

*(‘‘)*「よくいみがわかりません」



105: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:27:11 ID:nvnhbpZM0
夕方。月がもう昇っています。この日は立派な満月となるみたいです。
神様が意味を説明している間にも、まだ子供たちは隠れています。
そして、ようやく意味が伝わりました。
もう少しで日が暮れそうです。影法師はどんどん伸びます。

*(‘‘)*「では、むかしからいつもかなえたかったおろかな人がいないせかいへいわをねがいます」

( ・∀・)「いいでしょう」

*(‘‘)*「せかいのへいわはわたしが生きているうちに見たいのです」

( ・∀・)「わかりました」

*(‘‘)*「できればそのときにはちゃんと見れるようにけんこーでいたいのです」

影法師が消えたころ、こうして一人の女の子は一時的に不老不死を手に入れたのでした。
そして、もう隠れていた子は見つかりにくいところで死体となっていました。
仕方がないのです。彼女のような綺麗な心を持たない愚かな人なのですから。

( ・∀・)「やはり世界の大半の人々を亡くすには時間がかかりますね」

そう言うと、今まで死んでいた子供たちは蘇りました。



106: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:29:58 ID:nvnhbpZM0
( ・∀・)「すみませんが、他の願いに変えてくれませんか?」

*(‘‘)*「むりです」

神様は数秒悩んだ上で、もう一度お願いしました。

(  ∀ )「願いの回数を二つにしてあげます」

*(;‘‘)*「い、いやです」

神様は困り果てました。
この女の子からは、神様の顔は見えなくなりました。
するといきなり神様のことが怖くなったのです。

(  ∀ )「願いの回数を三つにしてあげましょう。いやですか?」

女の子はとても怯えました。
何故かあの神様が怖く思えるのです。物怖じしましたが勇気を出してもう一度言いました。

*(;‘‘)*「いやです」

神様はもうなす術がありません。
自分に対する気持ちを好奇心から恐怖に変えたのに女の子の願いに対する気持ちは変わりはしなかったからです。



107: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:32:00 ID:nvnhbpZM0
( ・∀・)「では、今までのことがなかったことにしましょう」

するとどうでしょう。さっきまで行っていた会話を女の子は忘れてしまいました。
そして女の子は驚きます。いきなり真っ暗になったように感じるわけですから。その上で月は怪しげに光ります。

*(‘‘)*「あれ? くらいや」

( ・∀・)「これでは駄目だ。時間を戻してあげないと」

すると時は少し戻って夕方に。月はひそかに照らします。
人から隠れていた神様はもう女の子の目の前から姿を見えないようにしています。
女の子は甦った子供たちを捜しに行きます。

ふと女の子の手の中に四つ葉のクローバーが握られていることに気づきました。
それを見て女の子はいつものように祈ります。でも、今日からは少し違います。

*(‘‘)*「いかがわしい人がいないへいわなせかいがおとずれますように」

如何わしい神様はそれを見て微笑み、また姿を隠しました。




*(‘‘)*いかがわしいようです 終



108: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/17(木) 18:35:47 ID:nvnhbpZM0
物語の数が九つとなりましたが、これにて終了にしたいと考えています。
実はもう一つの短編の内容を考慮した結果、現状では以降投下できないような話と判断しました。
安否情報のスレがありますが、あと一つの短編のために自分の名をそこに書き込むのも何かと考え、
自分一人の身を案じてくれている人はいないけれども、全体として一人でも多くの安否を知りたいという方はおられると思い、
安否のしるしとして不謹慎ながら投下に至りました。

さて、投下の最中にあった質問に少しお答えしたいと思います。
タイトルの『ブにも』の意味ですが一年半前に ( ^ω^)ブーン系にも奇妙な物語のようです なるものを投下しました。
一応まとめです http://vipmain.sakura.ne.jp/end/670-top.html
このタイトルは元である『世にも』から、ブーン系にも奇妙な話がありますよ。
そういった意味をこめてこのようなタイトルにしました。

その際、ブにも奇妙な物語のほうがゴロがいいという言葉をいただき、今回そのかたちをとらせていただきました。
またこの場をお借りして、前回まとめてくださったサイト様方に感謝の意を表します。

これ以降の投下についてですが、現時点ではないものとしています。
ネタ切れで、思い浮かぶコレといった話がないのです。
質問があれば今後も返答していき、頃合を見て過去ログへの申請をしたいと考えています。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
また、誰もがいち早く安穏とした生活が送れることを切に願っております。
では、乱文にて失礼いたします。



戻る