( ^ω^)ブにも奇妙な物語のようです
- 60: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:04:45 ID:PPw1Q34Q0
- 春の心地の良い風の中、よくあるような屋台のおでん屋で一人の客が店主に話す。
- 夜のおでんの屋台はいかにも愚痴をこぼしやすく、たった一人の客は顔を赤らめている割には、
- その表情は酒に酔わされているようには見えなかった。
- (´・_ゝ・`)「なぁ、最近俺の息子がおかしいんだ」
- ( ´ー`) 「下ネタ言うんじゃネーヨ」
- (´・_ゝ・`)「違う違う。俺の子ども、せがれの事だよ。気がくるってると思うほどなんだ」
- ( ´ー`) 「お前のような目の濁ったような、息子なんだから仕方ないんじゃネーノ? 血筋なんダーヨ」
- (´・_ゝ・`)「俺の目は濁ってなどいないさ。少し聞いてくれないか」
- ( ´ー`)「……わかったんダーヨ」
- 店主はホロ酔いになった人間の愚痴など聞きたくはなかった。
- だが憎まれ口を叩きながらも、結局は彼の解決しようのない悩みを聞く。
- いつも聞き側に回る店主にとって、一番誰かに言いたい愚痴というのはそこだった。
- 61: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:07:54 ID:PPw1Q34Q0
- (´・_ゝ・`)ブタを壊すようです
- 62: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:09:27 ID:PPw1Q34Q0
- 私の家で飼うブタの寿命は短い。
- 今年だけでも軽く三十体は死んでいるだろうか。
- 殺すのは私の息子。殺害方法は鈍器で背中を叩くだけ。
- 出てくるのは、七百円もしないほどの小銭だけだ。
- ほぼ一年前の事であった。
- 息子の小学生の入学と一緒に飼ってあげたブタの貯金箱。
- 息子にお金をためることを教えようと飼ったのだが、
- 壊さないとお金が取り出せないようにしたのが間違いだった。
- 息子は私の思い通りに、お金を貯め出した。
- ゲームセンターのあるデパートへお金を渡して連れて行っても、
- 全部は使わずちゃんとためるようになった。
- お金でつるのもあれだが、百円で肩叩きをしてくれるようにもなった。
- ブタの寿命は二ヵ月と持つことは無かった。
- 中身が見たくなるのはしょうがないこと。
- どうでもいいことかもしれないが、飼ったブタの中でこのブタが一番体重が重かった。
- これからは壊さなくても済むような物を飼おうと、思ってそのブタを撲殺することにした。
- 63: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:10:26 ID:PPw1Q34Q0
- (´・_ゝ・`)「本当にいいんだな? 壊すぞ」
- ( ><)「お願いするんです」
- (´・_ゝ・`)「危ないから少し離れててな」
- ( ><)「わかったんです」
- 使いもしなかった日曜大工セットの中の金槌をふりあげた。
- そして、鈍い音とともに私の一撃でそのブタは壊れた。
- 呆気なく壊れたブタの中には、たくさんの小銭。
- よく貯めたものだな、と言おうとして私は息子の顔を見た。
- ( <●><●>) 「……」
- その時の顔に私は寒気がした。
- どう見ても、たくさんのお金に対して見せた顔ではなかった。
- 明らかにその顔は、ブタに向けられていたのだ。
- 私の息子が唐突に怖くなった。
- 64: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:12:11 ID:PPw1Q34Q0
- (´・_ゝ・`)「それからの事は、言わなくてもわかるだろう」
- ( ´ー`)「いや、どうなったんダーヨ」
- 店主は、いつも聞くような愚痴とは違う特異な話に興味を持った。
- 客の顔は、赤いままではあるが話せば話すほどその赤色が悪くなっていく。
- 自ら話しているのだが、無理強いされて話している様に店主は思えてきた。
- (´・_ゝ・`)「前のと同じブタの貯金箱を飼ってと催促されたよ」
- ( ´ー`)「それで、どうしたんダーヨ」
- (´・_ゝ・`)「飼えるわけが無い。あんなものを見てしまったら」
- ( ´ー`)「そりゃそうダーヨ」
- (´・_ゝ・`)「でも催促の仕方は本当に子供だったんだ」
- ( ´ー`)「それじゃ……」
- (´・_ゝ・`)「それを見たら大丈夫だと思ってしまった。それがバカだったよ」
- ( ´ー`)「……」
- (´・_ゝ・`)「だが、駄目だった」
- 65: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:15:43 ID:PPw1Q34Q0
- 少し経って、私の息子をデパートへ連れて行った。
- いつものように、ゲームセンターで遊ぶお金をあげた。
- その金は貯めることは無く全部使われた。
- 新しいブタを飼うために。
- デパートで目を離せばいつの間にかブタを飼っている。
- 自分が連れていかなければ妻が連れていく。
- 金槌を隠しても使う用具がかわるだけ。
- 自分の中に芽生えた感情には誰も気づいてくれない。
- 息子はそのブタを飼ってすぐ、殺した。
- もう、息子はブタを飼う以外にお金を使わなくなってしまった。
- もう中毒になっていたように見えて、止めようとしたって無駄な気がした。
- ブタを殺す時の息子の目は、とても輝いている。
- (´・_ゝ・`)「なあ。そんなことして楽しいか?」
- ( <●><●>) 「とっても楽しいんです」
- (´・_ゝ・`)「そんなことをするのは、お前だけだ。もう止めろ」
- ( <●><●>) 「いやなんです」
- (´・_ゝ・`)「……」
- もう何も言えなかった。
- 66: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:17:20 ID:PPw1Q34Q0
- ( ´ー`) 「そりゃネーヨ。父親なら止めるのが筋ってもんじゃネーノ」
- (´・_ゝ・`)「そうだけれど、それが出来ないんだよ」
- ( ´ー`)「どうしてダーヨ」
- 多分答えてはくれないだろうとわかっていても聞いた。
- 案の定、目線はカップに逸らされる。
- (´・_ゝ・`)「貰ったお年玉も全部それに使っちゃってね。ハハ……」
- 店主はあきれていた。父親がこれなら息子の将来なんてわかりきったものだからだ。
- 客はずっと酒を飲んでいるが、嬉しそうな顔なんて一切しない。
- 皿に盛ったおでんには、一切手をつけないでいるからもう冷めている。
- (´・_ゝ・`)「もう帰るよ。愚痴を聞いてくれてありがとう」
- ( ´ー`)「……どうなってもシラネーヨ……」
- 67: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:19:25 ID:PPw1Q34Q0
- ε ⌒ヘ⌒ヽフ
- ( ¥ ( ・ω・) ブー
- しー し─J
- (´・_ゝ・`)「ただいま」
- 家の中はやけに静かになっている。
- ふらつきもせずに、妻がいるはずのリビングへ向かう。
- 妻も息子の奇妙な行動を知っているが、特に重くは考えていなく、たまに注意する。
- 昔の自分の話を教えてでも、今日はちゃんと話し合わなければならないと思った。
- (´・_ゝ・`)「おい。なんてところで寝てるんだ」
- 妻がカーペットの上でうつ伏せになって寝ている。
- 起こしてあげようと、妻の腕を持つと、異変を感じた。
- 持った腕には骨があるようには考えられず、その部分だけ持ち上げる。
- 見えた顔は、潰れて血で真っ赤になっており、もう人の顔ではなかった。
- 68: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:22:24 ID:PPw1Q34Q0
- (´・_ゝ・`)「……死んでるのか?」
- ( <●><●>) 「もう、壊れちゃってるんです」
- 息子が真っ赤な金槌を持って後ろに立っていた。
- (´・_ゝ・`)「お前がやったのか?」
- ( <●><●>) 「そうなんです」
- (´・_ゝ・`)「どうして……」
- ( <●><●>) 「壊したくて壊したくてたまらなかったんです。なのにじゃまされたんです」
- (´・_ゝ・`) 「そうか……」
- やはり血筋だったのだ。
- 昔、どうしても壊したくなってしまって邪魔をした母を壊してしまった。
- 69: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:23:55 ID:PPw1Q34Q0
- あの時の事は今でも覚えている。一番邪魔してきた相手を標的にした。
- そうやって邪魔をしてくる人が粋がっているように見えて。
- 自分が標的にはなりたくない。だから、息子を止めることなんてできなかった。
- 妻にもなってほしくはなかったのだが、いまさら仕方ない。
- 息子を見るのが怖かった。
- 昔の自分自身を見ているようで。
- 無駄に粋がっていたやつがブタにしか見えなくなって。
- そのブタを金槌で叩いてしまったあの時のこと。
- 今思えば粋がっていたのは自分自身だったのだ。
- (´・_ゝ・`) 「あの時からお前がブタにしか見えなくなってしまったんだ」
- 帰宅の途中で買った、金槌をバックから取り出す。
- 抑えきれらねないのだ。
- もう使うことは無い新品の金槌をふりあげた。
- (´ _ゝ `) 「許してくれ」
- そして、鈍い音とともに私の一撃でそのブタは壊れた。
- 呆気なく壊れたブタの中には、たくさんの血。
- よくここまで育てれたものだな、と独り言を言おうとして私はブタの顔を見た。
- ブタの目はまだ輝いていた。
- そして確かに見えた。
- 輝くブタの眼に映る、私のもっと輝いた眼を――――
- 70: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:24:52 ID:PPw1Q34Q0
- ε ⌒ヘ⌒ヽフ
- ( ¥ ( ω )
- しー し─J
- (´・_ゝ・`)ブタを壊すようです 終
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