( ^ω^)ブにも奇妙な物語のようです

71: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:25:58 ID:PPw1Q34Q0
短編小説で私のような職業はよくとり扱われていた。
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「やっていただけますかな?」

从 ゚∀从「はぁ……わかりました」

実際にはありえないだろうと思っていたもののこうやって目の前で言われたのなら仕方ない。
こういうことがあるとフィクションだが予備知識を持っていた私は、気の抜けた返事をしか出来なかった。



73: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:28:23 ID:PPw1Q34Q0



从 ゚∀从ハインリッヒ高岡のようです



74: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:30:24 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「こんにちは」

(・∀ ・)「こんちはー」

从 ゚∀从「初めまして。私高岡です。よろしく」

(・∀ ・)「お初でーす」

从 ゚∀从「今日はどうしてここに?」

(・∀ ・)「どうしてって、君らの国の大臣に連れて来られたのさ」

从 ゚∀从「大臣ですか。ああいますね、この国に大臣が」

(・∀ ・)「ああ。その大臣に観光の一つといって連れて来られたんだ」

从 ゚∀从「観光といえばヨーロッパとか行ってみたいですよねー」

(・∀ ・)「ん? ヨーロッパにはもう話はつけてあるんだよ」

从 ゚∀从「……そう、ですか」

妄想辟に対しては、その妄想に対して否定はしないようにし、話をずらす。
普通ならこれぐらいでいいはずなのだ。
しかし、どうだろう。彼の言うことはすべて正しいのだ。嘘偽りない真。



75: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:31:29 ID:PPw1Q34Q0
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「これは君たちのような精神科医にしか出来ないことなんだ」

从 ゚∀从「何でしょう」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「この男が話す事実を全て妄想だと思わせたい」

从 ゚∀从「……」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「よく小説のネタであるだろう。それをやっていただきたいのだ」

从 ゚∀从「その人の妄想というのは?」
  _、_
( ,_ノ` )y━・~「これは話が早い。自分が宇宙人だと妄言を吐くほら吹き野郎だ」

国のお偉いさまから引き受けた内容はあまりにも現実離れしたものだった。
この病院でなく私一人に頼まれたもの。成功報酬も現実離れしたものだ。
失敗しても特にお咎めもなく、一度はやってみたかったものと心の奥底で思っていたせいか、
気がつくと引き受けてしまう形となっていた。



76: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:32:47 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「ところで、あなたの惑星とはどういうようなものなんですか?」

(・∀ ・)「この惑星は頭脳も語彙も無いから言葉で説明するのは難しいな」

本来聞くべきではないが、興味本位でいくつも聞いてしまった。

从 ゚∀从「どうしてこの惑星へ?」

(・∀ ・)「資源が豊富なんだ。特に水。それと奴隷になる人かな」

从 ゚∀从「いつ、この惑星に来られたんですか?」

(・∀ ・)「二年前さ。初めてこの惑星に来たやつは十年前」

从 ゚∀从「どうやってバレずに過ごしているんです?」

(・∀ ・)「変態だよ。昔は人を殺してそいつに、今は国に戸籍を作ってもらう」

从 ゚∀从「今この惑星にいる人数はどれくらいなんですか」

(・∀ ・)「二万人くらいかな? そんなに多くないでしょ? しかも、大半は観光」

从 ゚∀从「観光?」

(・∀ ・)「珍しいからね。こういう惑星は。俺らの惑星がまだ潤ってたら、保護区にしてただろうね」

从 ゚∀从「本格的な活動というのはいつごろから?」

(・∀ ・)「まだ始まってすらいないよ。今は偵察を含め準備段階」



77: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:33:48 ID:PPw1Q34Q0
質問には全て答えてくれた。
返ってくる答えは、あまりにも現実離れしたものではあったが、
どこか信じてしまいそうな重みというものがあった。

从 ゚∀从「それじゃあ――」

もう一つ質問しようとした時、彼が手をパンと叩きあわせ、音を出した。
質問しすぎと言わんばかりに。

(・∀ ・)「そうだね、面倒だから言えることぐらいは全て話すよ」

从 ゚∀从「ありがとうございます」

(・∀ ・)「のっとるにしても準備ってのがあるからね」

妙に委縮してしまうような面持ちがだった。

(・∀ ・)「オレらの仕事は商売なんだ」

从 ゚∀从「商売?」

(・∀ ・)「ん? ああそうだ。貿易商っていうの」

从 ゚∀从「ああ、それですか」



78: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:34:48 ID:PPw1Q34Q0
(・∀ ・)「なら、話が早いよね。この国の歴史はちょっとかじってるから、わかりやすく言うね」

少し頭を悩ませるようにしてから、彼は続けて言った。

(・∀ ・)「ハリスやペリーがいつかやってくるのさ。今の僕らは種子島に来た武器商人」

何とも分かりやすかった。歴史は繰り返すのか、とすぐに脳にしみ込む。

(・∀ ・)「あと宗教的なものもいつかやってくるよ。キリスト教だっけ?」

从 ゚∀从「あなたの惑星にも宗教が?」

(・∀ ・)「んー、有象無象でいいんだよ。洗脳て骨抜きにするために来るだけなんだから」

从 ゚∀从「そんな……」

(・∀ ・)「全然おかしくないでしょ? 今君たちがオレにやろうとしてることと同じだから」

从 ゚∀从「……」

(・∀ ・)「だよね?」

そう言って、もう一度パンと拍をした。

(・∀ ・)「こんな感じかな?」



79: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:36:16 ID:PPw1Q34Q0
事実のことを妄想だと思わせるなんてことを人間相手ですらしたことが無いのに、
異星人で成功するのかどうか、あやしくなってきた。
なお且つ、相手は今からやろうとしていることが理解しているのだ。
こんなことなら、私ではなく催眠術師にでも任せればいいだろうに。

(・∀ ・)「ちなみにね。今暗号を送ったんだ」

从 ゚∀从「暗号?」

(・∀ ・)「うん。『その女は安全だ』ってね」

从 ゚∀从「もう一つ、あなたの惑星の名はなんですか?」

(・∀ ・)「あれ? 興味ない? まあ、いいや。レモナ星って言うんだ」

从 ゚∀从「レモナ星……」

(・∀ ・)「それより興味ないの? 結構面白いんだよ今の暗号」

どうしよう。頭が混乱してきた。本当なのだろうか。本当に本当なのだろうか。

(・∀ ・)「どうしたの? ねぇねぇ?」

从 ∀从「ハハハ……」



80: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:38:03 ID:PPw1Q34Q0
(・∀ ・)「聞いてよ。ねぇ?」

从#゚∀从「聞くわけねーだろ!」

(・∀ ・)「え?」

从#゚∀从「ここまで呆れるレヴェルのデンパ野郎は久しぶりだよ!」

(・∀ ・;)「どうしちゃったの? 大丈夫? おかしくなっちゃった?」

从#゚∀从「おかしいのはお前だろうが!」

(・∀ ・;)「ちょっ、ねぇ? とりあえず落ちつこうよ」

从#゚∀从「お前に話を合わす国も大臣もいねーよ! 全部妄想だ!」

そうだ。こいつは人じゃないんだ。なら、完全否定してもいいはずだ。お咎めは無い。
それよりも本当のはずがない。そうに決まってる。

从#゚∀从「変態っつったよな! やってみろよ!」

(・∀ ・)「……いいの?」

从 ゚∀从「やれよ」

顔が変形していく。いや、姿も。何かナメクジのように見える。
でも多分変わってないはずだ。本当に変わるわけなんてないんだから。



81: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:38:46 ID:PPw1Q34Q0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「どうだ! 気高き我らの真の姿だ!」

从#゚∀从「どこがだよ! 変わってねぇよ! 鏡見てこい!」

変わるなんてありえないから。きっと相手の妄想につきあったせいでそう見えるだけだ。

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「え?」

从#゚∀从「今までの全てがお前の妄想だよ!」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「違う! 何を言ってる! オレの正体はレモナ星から……」

从 ∀从「それはアイドルから土地を買ったとか、そんな話だろ」

ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「そんなんじゃない!」

もういい。どうなろうが知らないし知ったことではない。
でも、このデンパな妄想だけは止めさせよう――――

从 ゚∀从「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな」

ィ'ト―-イ、
以`;益;以「あああああああ!」



82: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:40:22 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「はぁ……」

('、`*川「どうしたの。いつもより深いため息をして?」

それから数日後のことである。あまりに様子がおかしかっただろう。同僚にご飯を誘われた。

从 ゚∀从「一体、いや一人おかしな患者がいてさ。別の星から来たとかなんとか」

('、`*川「そんなのいつものことじゃない」

从 ゚∀从「そうだけど」

何が言えようか。どう伝えればいいだろうか。
どうせ何を言ったって全否定されるだけとわかっているのに。

('、`*川「そういえば、私のところにもおかしな患者がいたわ」

从 ゚∀从「へぇ。どんな?」



83: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:41:50 ID:PPw1Q34Q0
('、`*川「自分のことをこの国のお偉いさまだって信じてて、私に変な依頼をしてくるの」

从 ゚∀从「……」

('、`*川「あ、すみませーん! 注文したいんですけど」

店員にメニューを指差しながら頼むのを見て、閉口するしかなかった。

从 ゚∀从「あ、私も同じので」

(#゚;;-゚)「はい、わかりました。ではご注文のほう確認させていただきます」

繰り返される料理の名をおぼろげに聞いた。

(#゚;;-゚)「ご注文のほう、間違いありませんね。では」

出された料理は、私を元気付けるのにぴったりな料理ばっかりだった。



84: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:44:10 ID:PPw1Q34Q0
帰路、彼女を引率するように先に歩いた。

('、`*川「明日からは元気になってよね? こんな職業だから仕方が無いけど」

从 ゚∀从「うん。わかってる」

いつもは歩かないような路地裏に彼女を引き込む。

从 ゚∀从「ねぇ、ペニちゃん」

('、`*川「どうしたの?」

从 ゚∀从「レモナ星って知ってるよね?」

('、`*川「レモナ星? 何それ?」

从 ゚∀从「とぼけるのはやめてくれない? 今日飲みに誘ったのもそれ関連でしょ?」

('、`*川「どうしたの? 大丈夫?」



85: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:48:24 ID:PPw1Q34Q0
从 ゚∀从「連絡が取れなくなったから動いたんでしょ?」

('、`*川「何を言ってるの?」

从 ゚∀从「……それならそれでいいけど」

かばんの中から、銃を取り出す。といっても見た目は子供が遊ぶおもちゃのような銃だ。

从 ゚∀从y=ー「もう一度聞く。レモナ星って知らない?」

('、`*川「ど、どうしたの? やっぱりさっきからおかしいよ」

从 ゚∀从y=ー「そんなこと言ってると、トリガー引いちゃうよ?」

('、`*川「……」

从 ゚∀从y=ー「……」

('、`*川「どうして、気づいたの?」

从 ゚∀从y=ー「まずは、持ってる武器を渡してちょうだい」

どこから出したのだろうか。右手にヨーヨーの様なものを握っていた。

从 ゚∀从y=ー「そのまま、下において」

用心深くその置いたものを手に取った。



86: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:50:48 ID:PPw1Q34Q0
('、`*川「ねぇ、どうして気づいたの」

从 ゚∀从y=ー「お前が言った件のお偉いさまからは前金としてちゃんといくらか貰っていてね」

('、`*川「……」

从 ゚∀从y=ー「あと、おかしな患者からたくさんの妄想話を聞いててさ。たまには信じたくなるもんさ」

('、`*川「その武器も貰ったのね」

从 ゚∀从y=ー「暗号もな。いつか私を消すつもりだったんだろう。多分あのお偉いさまは消されてるだろうし」

メニューの品の頭文字。全部を繋げると『コレは消す』となっていた。
なんとも低レベルだが、暗号は本物のようだ。

('、`*川「そんなわけないわ」

从 ゚∀从y=ー「どちらでもいいさ。それより今だした武器の使い方、教えてくれない?」

('、`*川「……今もってる方を逆手にしてそのつまみを引っ張るだけよ」

从 ∀从y=ー「……精神科医だよ? そんな嘘に気づかないと思う? まぁ別にあいつに聞けばいいか。さよなら」

('、`;川「待って! ちゃんと話すから! だから殺さないで!」



87: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:52:27 ID:PPw1Q34Q0
必死になってこの武器の説明をしてくる。

('、`*川「向きは逆です! その銃と違って、死にはしないけど気絶するほどの威力なの!」

从 ゚∀从y=ー「ふぅん。じゃあこの銃は死ぬほどの威力なんだ」

('、`*川「……え?」

从 ゚∀从y=ー「あの男は、もう自分のことを日本人だと思ってこの銃のことまで教えてくれなかったんだ」

('、`*川「それって」

从 ゚∀从「うん。この銃の撃ち方知らないんだ。次はこの銃の使い方も教えて欲しいな」



今まで味わったことも無いこの感覚。
なんて清清しい気分なんだ。



88: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:56:26 ID:PPw1Q34Q0
从 ∀从「あの店員もレモナ星のやつか……」


金も武器もこれで十分にある。
まだまだたくさんの侵略者がこの地球にいる。
皆気づいていない。私だけだ。地球の運命は私にかかってるんだ。


从 ∀从「アハハハハ。地球は私が守る」




これが、地球を救った英雄の始まりだった。
彼女の偉大さは後世に名を残した。
この後の活躍についてはここでは割愛させてもらう。

もちろん当時は誰も信じなかった。
傍から見ればデンパな妄想者だ。



89: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/03/10(木) 21:58:00 ID:PPw1Q34Q0
そんな彼女には本名以外の名があった。

デンパとしてしか見られなかったために出来た二つ名。

電波を発見したハインリッヒ・ヘルツからとった名。



『ハインリッヒ高岡』

从 ゚∀从「アーッハッハッハッハ!」




从 ゚∀从ハインリッヒ高岡のようです 終



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