( ゚∀゚)人はその男を『決闘』と呼ぶようです

87: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 00:59:13 ID:kK9V/Zl60
第二章:月夜の奇襲と街に踊る海賊達



    「船長!!この船ですか!?」



(    )「ああ、徹底的に破壊しろ」


     「イエッサー!!」


(    )「金品は残らず奪うある!!食料もだ!!」


     「イエッサー!!」


( Фω )「……………」


( Фω )「………『決闘』か………面白い」



88: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 00:59:53 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀ )「………ん」

翌朝、俺は目覚めると
  _
( ゚∀゚)「……どこだ?」

馬小屋に寝ていた。
  _
( ゚∀゚)「…………………」
  _
( ゚∀゚)「……だめだ。まったく思い出せねえ」

昨日の記憶がまったく無い。
モッシャモシャ草を喰ってる馬の隣で俺は何で寝ているんだ?
ゆっくりと記憶を振り返り、そして嫌なことまで思い出し、そしてまた泣いた。
あ、まずい。思い出したらなぜか吐き気が突然襲ってきた。

('A`;)「キャプテン!!」

その時、ドクオが馬小屋に入って来た。
それがきっかけとなり、俺の口からアルコールが混じった液体が飛び出す。
  _
( ; ∀ )「ドクおろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ」

('A`;)「うわああああああああああああああああああああああ!!」



90: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:00:21 ID:kK9V/Zl60
  _
( ;゚∀゚)「すまねえ……やっとすっきりした」

('A`;)「ちょっと大丈夫ですかキャプテン…」

背中を摩られながら馬小屋を後にする。
話によれば昨日俺は酔っ払いながら酒場の外を掛け回り、全力疾走でどこかへと去っていたそうだ。
そしてクルーが探し周り、用水路に仰向けになって浮いていた俺を発見し、なんとか釣りあげたそうだ。
濡れた俺を一々乾かすのも面倒だから馬小屋の藁で寝かせ、服が渇くのを待っていたという。
そりゃあ知らん訳だ。
  _
( ;゚∀゚)「それで…どうしたんだ?あんなに慌てて……」

('A`;)「あっ!そうだ!キャプテ…!!」
  _
( ゚∀゚)「悪い。頭に響くからもう少しボリューム落として」

('A`;)「あっはい、すいません…」
  _
( ゚∀゚)「で、なんだって?」

('A`;)「あ…あの、実は……」


('A`;)「船が……壊されていました」



92: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:01:34 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「………………なんだって?」

頭がガンガンする。
ドクオの言っている意味がよくわからない。

('A`;)「ですから、船がぶっ壊れてたんですよ!」
  _
( ゚∀゚)「壊れてんのはお前の頭じゃねえのか?」

('A`;)「ちょ…本気で目を醒まして下さいよ!今本当にヤバいんですって!」
  _
( ゚∀゚)「そんな簡単に船が壊れる訳ねえだろ」

('A`#)「だから……ああもう!じゃあ見て下さいよ!壊れてますから!」

ドクオはカンカンになって怒鳴って来た。
その声に合わせて俺の頭がリズムを刻んでいるようだ。
  _
( ;゚∀゚)「ああ、わかったわかった!わかったから叫ぶのをやめろ!」

俺はしぶしぶとドクオの後について行くことにした。



93: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:01:59 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「……沈んでるな」

('A`)「……そう言ったじゃないですか」

( ><)「……沈んでるんです」

/ ,' 3「…………」

/;゚、。 /「……………あ、えっと…食料やお金も全部無くなってました」
  _
( ゚∀゚)「…………………」

  _
( ゚∀゚)

  _
( ;゚∀゚)「沈んでるじゃねえか!!」

( ;><)「沈んでるんです!」



94: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:02:23 ID:kK9V/Zl60
ドクオに連れられて来たのは、昨日俺達が停泊した港だった。
本来俺達の船がいた場所にあったのは海から飛び出ている2本のマスト。それだけ。
海賊旗は破り取られ、木片はあちこちに浮いている。

/;゚、。 /「あっ一応、船自体はサルベージ出来ます…」
  _
( ;゚∀゚)「ドクオ!なんでさっき言わなかった!!」

('A`;)「お約束ボケなんか言ってる場合じゃ無いでしょう!どうするんですか!」

どうなっているんだ?
間違いなく人為的な攻撃だ。
俺達が留守にしている間に何が起こった?
  _
( ;゚∀゚)「おい!誰がこんなことをやったんだ!?」

( ;><)「し、知らないんです!!」

('A`;)「昨日はみんな酒場に行ってたから…」

どういう事だ…?
この島で俺達の旗を見て手を出そうと考える奴はそうそういない。
『金欠』かと考えたがすぐにその可能性は消えた。



95: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:03:01 ID:kK9V/Zl60
あいつは俺の存在を知らないようだった。
俺の船がどれかなど単細胞そうなアイツには分からないだろう。
それに奴が生きていたとしてもあいつは深手を負っているじゃないか。
  _
( ;゚∀゚)「スカルチノフ…この船…直せるか?」

/ ,' 3「……?」

と、聞いても伝わらないだろうから身振り手振りで説明する。
俺の誠意が伝わったのかしばらくしてスカルチノフは首を縦に振った。
コイツには近々念入りに言語を教えなければ。

スカルチノフのおかげで何とか船は直せそうだ。
じっくりと船を眺めていると、だんだん怒りが込み上げてきた。
  _
( #゚∀゚)「糞っ…!何としてでもやった奴を探すぞ!」

( ;><)「はい!なんです!」
  _
( #゚∀゚)「誰だ…こんなゲスな真似をしやがって…」




「そいつは『海底』の仕業だお」



96: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:03:26 ID:kK9V/Zl60
その時、背後から声が聞こえた。
俺達はその声に反応してサッと振り向く。
  _
( #゚∀゚)「……誰だお前」

そこにはチョッキを一枚を羽織り、膝までの短パンを履いただけの小肥りな男が立っていた。
両手には何本もの酒の瓶を抱えており、その酒をがぶがぶと飲み干す。
口元から紫色の液体がダラダラとこぼれているが、この男はその事を気にも止めていないようだ。

二日酔いの俺にとっては酷く気持ちの悪い図だ。

( ^ω^)「慌てるなお『決闘』。僕は確かに海賊だけどもこれをやったのは僕じゃないお」

笑いながらその男は近づいてきた。

( ^ω^)「いやあ昨日は良いもんを見せてもらったもんだお」
  _
( ゚∀゚)「昨日……?ああ、あれか」

もはや俺の中で昨日の一戦は無かった事になりつつあった。
酒場の連中意外にも見ていた奴がいたとは。

( ^ω^)「『決闘』対『金欠』!今日この島の話題は昨日出没した『暗闇』のことよりも騒がれるお」
  _
( #゚∀゚)「勝手にしやがれ。昨日の事なんざどうでもいいんだ俺は」



97: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:03:56 ID:kK9V/Zl60
( ^ω^)「まあまあ怒るなお『決闘』。今のは軽い世間話だお」

/;゚、。 /「船長…こいつ…誰ですか?」
  _
( ゚∀゚)「デブだ」

( ^ω^)「否定はしないお」

デブは空き瓶を海に放り投げた。
エチケットがなってない野郎だ。

( ^ω^)「僕の名前はブーン。巷では『酒樽』なんて呼ばれてるお」

『酒樽』……聞いたことがあるな。
たしかモララーが挙げていた海賊の名前の一人じゃ無かったか?

( ^ω^)「街の情報は全て僕の元に集まるお昨日の事も、これからのことも」

何が言いたいんだこいつは…?
こいつは俺に何の用があるんだ。
  _
( ゚∀゚)「話はそれだけか?お兄さんはちょっと忙しいんだけども」

( ^ω^)「お前…『メデューサの瞳』を狙ってんだお?



98: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:04:33 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「!!」

その言葉に俺はピクリと反応する。
まさかこいつからその単語が出てくるとは。
  _
( ゚∀゚)「狙ってたぜ。…昨日まではな」

( ^ω^)「…?そうなのかお?」
  _
(  ∀ )「ああ。あんな宝石、興味も湧かねえや」

もうツンの為に秘宝を探すのも終わりだ。
バカらしくてやってられるか。

( ^ω^)「そうかお…。まあどっちにしろ僕にはプラスだからいいお。」
  _
( ゚∀゚)「…何の話だ?」

『酒樽』は一口酒を飲むと手の甲で口元を拭き、ニヤリと笑った。

( ^ω^)「昨晩、その船を襲ったのは『海底』って海賊だお」



99: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:05:04 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「…知ってるのか?」

( ^ω^)「僕は何でも知れるお」

そう言うと『酒樽』は静かに語りはじめた。

( ^ω^)「『海底』ロマネスク。海賊を専門に強盗を犯す海賊だお」
  _
( ゚∀゚)「海賊狙い?なんで海賊なんだ?」

訳がわからない。
金が欲しいのならば貴族や貨物船を狙った方が段違いに効率がいいだろう。

( ^ω^)「奴が海賊を狙う理由はいろいろ噂があるお。」

( ^ω^)「けどどれも確かなものは無いから、結局は本人のみぞ知るってとこだお」
  _
( ゚∀゚)「ふうん…まあどうでもいいんだけどな」

聞いた俺が言うのもあれだが、その情報はどうでもいい。
問題は『海底』って奴の素性だ。

( ^ω^)「『海底』ロマネスクは主に停泊した海賊船を狙うお。見張りを殺し、金品や食料を全て奪った後船を沈める」

( ^ω^)「一時はこの界隈の海に潜む海獣の仕業とも言われていたので、海底に潜む者のことから『海底』」

船を海底に沈める事からの由来もあると『酒樽』は付け足した。



100: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:05:30 ID:kK9V/Zl60
なるほど。
確かにこれはそいつの仕業だろう。
決まりだ。
『海底』って奴を見つけ次第、すぐに殺してやる。
  _
( ゚∀゚)「それで、そいつはどこにいるんだ?」

( ^ω^)「奴はこの島を拠点にしているわけじゃないお。だから決まった場所に居座ることはほとんどないお」
  _
( ゚∀゚)「んだよ。知らないこともあるんだな」

( ^ω^)「知っているとは言ってないお。知るのも時間の問題だお」

『酒樽』の話によると、現在この島中をそいつの部下が隈なく探し回っているらしい。
大丈夫か?
この島はかなり大きい。
裏町だけでも政府の目が届かなくなるというのに。

( ^ω^)「大丈夫だお。うちのクルーは優秀だから」

頭のこいつがこんなに胡散臭いのに信じられるか。



101: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:06:22 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「一つ聞いても良いか?」

( ^ω^)「なんだお?」
  _
( ゚∀゚)「何故俺に手を貸す」

最終的に俺がこいつの話を信じるかどうかはこの質問にかかっている。
ただでさえ初対面の人間だ。
それに加えコイツは海賊(らしい)。
信じられるのは聖者かよっぽどの馬鹿だ。

( ^ω^)「まあ、そうだおね。あんたには話しても問題なさそうだお」
  _
( ゚∀゚)「?」

( ^ω^)「さっき僕はあんたに『メデューサの瞳』を狙っているかと聞いたおね」
  _
( ゚∀゚)「ああ、まあ狙っていないがな」

それが関係している、と『酒樽』は言った。
一体何に関係しているというんだ?



102: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:06:45 ID:kK9V/Zl60
( ^ω^)「この街には、今現在フィレンクトが発見した『メデューサの瞳』を狙っている奴がごろごろいるお」
  _
( ゚∀゚)「へぇ、そうなのかい」

( ^ω^)「『海底』もそのうちの一人だお」
  _
( ゚∀゚)「何?」

海底は海賊以外にも対象を向けるのか。
なんて一貫性のない野郎だ。

( ^ω^)「フィレンクトはまだ『メデューサの瞳』を手にしていないお。ただ場所を突き止めただけ」

( ^ω^)「近々奴はその秘宝を手にするためにカルベの海に出るお」
  _
( ゚∀゚)「つまりお前らはその時を狙って奪うわけだな」

( ^ω^)「その通りだお」

なんてハイエナ根性だ。
まあそれでこそ海賊は海賊でいられるのだが。



103: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:07:10 ID:kK9V/Zl60
( ^ω^)「お前が本当に『メデューサの瞳』を諦めたのかは分からないお…けど」

( ^ω^)「『決闘』、『海底』の恐ろしさはこの島の人間ならだれもが知ってる周知の事実だお」

なるほど。
やっとこいつの目的が分かった。
ようは俺と『海底』で殺しあわせ、一人でも多くライバルを減らそうって魂胆だ。

( ^ω^)「君達のどちらかが消えるだけで、僕らはグッと目標に近づけるお」
  _
( ゚∀゚)「お前…見た目の割にはかなりの下種野郎だな」

( ^ω^)「おっおっおっ。よく言われるお」

俺と『酒樽』は高らかに笑いあった。
下種は下種同士通じるものがある。
  _
( ゚∀゚)「いいぜ。あんたの話信じてやるよ」

( ^ω^)「そう言ってくれると教えた甲斐があるってもんだお」
  _
( ゚∀゚)「ただ…あんたの言う優秀なクルーってのは信用できねえ」



104: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:07:32 ID:kK9V/Zl60
( ^ω^)「?どういうことだお」
  _
( ゚∀゚)「『海底』は俺が探す。お前の報告を一々まってられるか」

( ^ω^)「……………」

これは俺達の問題だ。
いくらこいつらに目的があろうと、そこまで干渉される筋合いはない。

( ^ω^)「…わかったお。好きにすると良いお」

そう言うと『酒樽』は3本の瓶を海に放り投げ、1本を俺に投げつけた。
そしてスタスタと帰って行った。

( ^ω^)「それは戦勝祈願だお」

最後に一言だけ残して。
結局いまいち掴みどころが分からない奴だった。
俺は振り向き、船員を呼んだ。
  _
( ゚∀゚)「おい。お前らはここで船の修理をしてろ」

('A`;)「え、でもキャプテンは…」
  _
( ゚∀゚)「こんな糞野郎は俺一人で十分だ。」



107: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:11:51 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「さて………」

威勢よく決めたはいいが、どこから探せばいいか検討も付かない。
むやみやたらに探せばそれこそ日が暮れてしまう。
とりあえずと、俺は港の傍に住んでいる住人達に片っ端から聞いて回る事にした。

自分が派手な身なりをしていることは自覚している。
俺がノックをし、中から扉が開くと、中にいた住人は青ざめた顔で扉を閉める。
この島に住んでいる住人には基本的に略奪行為をしないのがこの島を拠点とする海賊の掟だ。
逆に住民を守らなければならない義務もある。

俺の場合は可愛い娘限定だが。
しかし俺に限ってはどうも住民の信頼を得られていないようで、赤いコートを見ただけで土下座をされてしまった。
  _
( ;゚∀゚)「ああお願い!!話だけでも聞いてくれ!!」

扉を閉める気が満々な住人に対しては、俺も隙間に靴を挟んで応戦する。
必死に宥める事で、やっと話を聞くことが出来た。
港付近の民家、32棟中29棟はそのように応対した。

その努力が功を成したのか、住人達から貴重な話を聞くことができた。



108: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:12:23 ID:kK9V/Zl60
まず、奴が俺らの船を襲ったのは昨晩の真夜中だ。
多くの人間は眠り町は静まり返る暗闇の中、奴らは俺達の船を破壊した。
港に住んでいるほとんどの住人が俺の船に群がる多くの人間を目撃している。

そしてもう一つ。

これが一番重要な事だ。
現場には沢山の人間がいた(らしい)のだが、それらを全て統括している男がいたそうだ。
その男は猫目で背の高く、身の丈以上の大きな鉈のような刃物を振り回していたそうだ。
  _
( ゚∀゚)「鉈………」

背の高いという特徴で『巨人』が真っ先に思い浮かんだが、すぐにそれは否定した。
奴は猫目というよりも鳥目だ。
それにあれだけ町の風景と化している奴を一々背の高いなどと表現を濁すだろうか。
  _
( ゚∀゚)「手に入る情報はこれくらいか…」

結局、奴の居場所は分からなかった。
だが、去って行った方向は目撃した奴がいたのでその方面を探すことにする。
  _
( ゚∀゚)「海賊が行きそうな場所…場所…」



109: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:12:54 ID:kK9V/Zl60
これでもこの島で生まれ育った男だ。
町の地理くらいは十分に把握している。
しかし、奴が隠れ家として使う場所など到底思い付く事が出来なかった。
  _
( ゚∀゚)「………………」
  _
( ゚∀゚)「とりあえず………酒場かな」

俺は港を後にし、町中の酒場調べるために歩き出した。
  _
( ゚∀゚)「ん………………」

ζ(゚ー゚*ζ「あ……………………」

その時、一人の女性と目があった。
瞬間的には誰だか分らなかったが、ハッと昨日の襲われていた女性だと思いだす。
  _
( ゚∀゚)「おお、君は昨日の…」

ζ(゚ー゚*;ζ「あっ…あ、あの昨日は…ありがとうございました…」



110: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:13:20 ID:kK9V/Zl60
  _
( ゚∀゚)「ああ…別に気にしなくて良い。町の掃除は海賊の務めだ」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、そんな…………………あ」
  _
( ゚∀゚)「?」

ζ(゚ー゚*;ζ「あ、…あなたもしかして…『決闘』…ですか?」

しまった。
また逃げられる。
もしかしたらこの子が『海底』を知ってるかも知れないのに。
  _
( ゚∀゚)「ま、まあそうだけどよ!別に俺は無理やり…」

ζ(゚ー゚*;ζ「す、すいません!失礼します!」
  _
( ;゚∀゚)「ちょっ……………!」

危惧してからたった数秒で逃げられた。
もう、このコート脱ごうかな。
いや…これは俺の…………うん。



111: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:13:59 ID:kK9V/Zl60
(‘_L’)「それで…『メデューサの瞳』はどこにあったんだ?」

「カルベ海の中心にある孤島です。帆船で向かえばそうは掛からないでしょう」

(‘_L’)「驚いたな…。そんな近くに孤島などあったのか。」

「満潮になっている時間が多く、普通の渡航では発見することが出来ませんでしたよ」

「たった数分間、小さな岩場が生まれるのですが…何とそこには小さな洞窟が」

(‘_L’)「ハッハッハ…確かにそれは見つからないな…」

(‘_L’)「それよりも…だ」

「ええ」

(‘_L’)「まだ誰もその秘宝に触れた奴はいないな?」

「もちろん。貴方様が第一に触れるべき代物です」

(‘_L’)「フフフ……それならいいんだがな」



112: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:14:26 ID:kK9V/Zl60
「それよりも…この島にどんどん海賊が集結しているようです」

(‘_L’)「海賊が?」

「ええ。どこからか情報が漏れたのかと」

(‘_L’)「…お前じゃないよな」

「御冗談を。私が私の仕事を増やしたというのですか」

(‘_L’)「ハッハッハ。そうだな。海賊の始末は全てお前が受け持つからな」

「念の為に出港するまで残りの2日間、外来の船を入港禁止にしてはいかがでしょう」

(‘_L’)「ああそうだな。そうしよう」

「ではすぐにでも手配を」

(‘_L’)「海賊で思い出したが……アイツはこの島に来たのか?」

「アイツ…?ああ、『決闘』のことですか?」

(‘_L’)「ああ。お前の報告だとそろそろ戻ってくると言っていたが」



113: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:15:10 ID:kK9V/Zl60
「ええ、つい昨日、この島に戻ってきました」

(‘_L’)「そうか。ならばしばらく奴の見張りを頼む」

「はい。…………フィレンクト卿」

(‘_L’)「なんだ?」

「彼を捉える判断は私が一任しても?」

(‘_L’)「構わん。ただし決して殺すなよ」

「ええ。承知しております」

(‘_L’)「任せたぞ。お前とクックルだけが頼りだ」




(‘_L’)「なあ…『駆除』よ」



114: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:15:32 ID:kK9V/Zl60
ミ;,,゚Д゚彡「おっ?ジョルジュ!!大丈夫だったのか?」

ξ;゚听)ξ「心配したじゃない!!『金欠』にやられたのかと思ったんだから!!」
  _
( ゚∀゚)「ああ悪い。昨日はいろいろあってよ」

パッと思い付いた酒場がここだった。
海賊がよく行く場所=酒場というのはあながち間違いではない。
海賊達は酒をよく好み、帰ってきた記念に乾杯、戦った記念に乾杯、負けた悔しさに乾杯と、何かと記念にこじつけて酒を飲む。
俺には全く理解できないが。

当然、海賊が酒を飲めば酒場は儲かる。
そうすれば必然的に酒場の需要が増し、酒場も増える。
気がつけば裏町はありとあらゆる場所に酒場が立った。
これだけの量を一人で全て回るのだから相当時間もかかるわけで。

思い付く酒場から順に当たることにした場合、一番最初に来るのはここだった。

ミ;,,゚Д゚彡「怪我は?無事だったのか?」
  _
( ゚∀゚)「まあ…一応な」

ミ;,,゚Д゚彡「そうか…俺も死んだのかと思って心配したんだぞ」

親父の背後に『二つの意味で』という言葉が一瞬見えた。
もう一つの意味など言われなくともわかっている。
ツンの事だ。



115: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:15:54 ID:kK9V/Zl60
ξ゚听)ξ「もう…いっつもそうなんだから…」
  _
( ;゚∀゚)「お、おう…」

親父は俺がツンの事を好きな事を前から知っていた。
正確にいえば10年くらい前から。
ああ俺の愛する人間をまともに見ることができない。

畜生…なんであんなキザ男なんだ。
何で貴族なんだ。
何でモララーなんだ。
  _
( ゚∀゚)「………………」

ξ゚听)ξ「?」
  _
( ;∀;)

ξ;゚听)ξ「!?」

彼女の顔を見ているといろんな感情が沸き起こり涙が溢れてきた。

ξ;゚听)ξ「ちょっ…ちょっとどうしたのよ!やっぱりまだどっか痛いの!?」

世間知らずのこの処女の優しさが更に痛む。
いっそ殺してくれ 。

ミ;,,゚Д゚彡「………………」



116: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:16:14 ID:kK9V/Zl60
ミ,,゚Д゚彡「『海底』…?聞いたことは無いな…」
  _
( ゚∀゚)「そいつに船を壊されたんだ。ただじゃおかねえ」

ミ,,゚Д゚彡「昨日はいろいろと災難だったんだな…」

親父が憐れみの目で俺を見つめる。
全身の体毛が全て抜けてしまえばいいのに。

ミ,,゚Д゚彡「ここには来てないぞ。そんなに特徴のある奴なら俺が覚えているはずだ」
  _
( ゚∀゚)「まあ…そうだよなあ…」

店内を見渡しても、今いる客は数えるばかりしかいない。
昨日の騒動があったのは夕刻頃。
そこから数時間後には閉店する。
そしてその後開店するのが今からほんの少し前だ。

ミ,,゚Д゚彡「他の店を当たるしか無いな」
  _
( ゚∀゚)「ああ、そうするよ。またな」

俺は椅子から立ち上がり、店を出る。



117: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:16:37 ID:kK9V/Zl60
ξ゚听)ξ「もう出るの?何か食べていけばいいのに…」
  _
( ゚∀゚)「まあな……………」

店を出ると、酒場の前を掃除していたツンがいた。

ξ゚听)ξ「どうしたのよ…昨日と違ってえらくテンションが低いじゃない」

お前のせいだよ…とは言えないので黙秘を貫く。
  _
( ゚∀゚)「モララーはどうしたんだ?」

ξ゚听)ξ「モララー様は忙しいお方なの。今日と明日は、ライチ国へ遠征に行ってるんだから」

様という言葉を聞くだけでここまで蕁麻疹が出るとは思わなかった。
ということは、あいつとの勝負は3日後になるのか。

ξ゚听)ξ「それよりも…なんで昨日モララー様と決闘なんかしようとしたの?」
  _
( ゚∀゚)「お前には関係ねーからいいんだよ」

ξ゚听)ξ「関係ないこと無いわよ!私はあの人の妻になるのよ!?」



118: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:17:08 ID:kK9V/Zl60
また心が割れる。
だいたい何でモララーはあんな位の高い男なのに、こんな町娘なんかと結婚するんだ?
いや、まあ可愛いのは分かる。
しかし、身分や周囲がそれを許さないだろう。
  _
( ゚∀゚)「なぁツン…」

ξ゚听)ξ「?なあに?」
  _
( ゚∀゚)「お前…アイツのどこが良いんだ?」

ξ*゚听)ξ「な、何よ急に!!」
  _
( ゚∀゚)「相手は貴族だぜ?」

ξ*゚听)ξ「願ったり叶ったりじゃない!貴族なんて夢のようよ!」

ツンは目を輝かせながら溌剌と喋った。
彼女の一挙一動が俺の心に深く刺さる。

ξ*゚ー゚)ξ「モララー様は優しくてかっこよくて誠実で貴族で…」

ツンの唇が奴の特徴を上げるごとに震える。
モララーの話をしている時のツンはそれはもう活き活きとしていた。



119: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:17:30 ID:kK9V/Zl60
ξ*゚ー゚)ξ「モララー様になら…私のヴァージンも…上げられる…」
  _
(  ∀ )「ああ…そう…」

一番聞きたくなかった。
そして今すぐ死にたくなった。

ξ゚听)ξ「それよりもジョルジュ…聞いたわよ。『海底』を探してるんですって?」

ツンの質問に俺はああ、とだけ答えた。
俺の機嫌の落差にツンは驚いていたが、しばらくして話を続けた。

ξ゚听)ξ「ねえ…あと何人の人を殺せば気が済むの?」
  _
( ゚∀゚)「……そんなの知るかよ。俺は戦いたいから戦うんだ」

ξ#゚听)ξ「!!……あのねえ」

ツンはイラついた表情を顔に出しながら俺に詰め寄る。

ξ#゚听)ξ「こっちはあんたのことが心配だから言ってるのよ!?」
  _
( ゚∀゚)「はあ?俺がいつ負けたよ」

ξ#゚听)ξ「いつか仇打ちにあっても知らないんだから!!」
  _
( ゚∀゚)「だったらそれもうち返せばいいだけだ」



120: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:17:56 ID:kK9V/Zl60
ツンは俺に話が通じないと判断したのか、これ以上文句を続けることをやめた。
しかし、彼女は言葉を止めずに会話を続けた。
俺の左手を強く握った。

ξ゚听)ξ「もう…あんたが傷つくのは見たくないのよ…」

そのセリフは…婚約を控えている女性が口に出すものじゃない。
言われた方は…希望を持ってしまうだろ。
「もう」という言葉に俺は心当たりがあった。
忘れもしない、幼少の頃の思い出。
  _
( ゚∀゚)「あの頃の俺には力が無かった。だが今は…」

ξ#゚听)ξ「そういう意味で言ったんじゃない!!ふざけるのもいい加減にしてよ!!」
  _
( ゚∀゚)「こっちにもいろいろあるんだ。女が口出すな」

ξ#゚听)ξ「は、はあ!?ば馬鹿にしないでよ!!」
  _
( ゚∀゚)「じゃあな。当分はここには戻らねえわ」

ξ;゚听)ξ「え?ちょ、ちょっと…え?」

俺はひらひらと手を振り店を後にする。
もういろんな事が雪崩のように振りかかりすぎて何もかもがめんどくさくなってくる。
とにかく、『海底』を倒すという目的だけは見失わぬように意識を保つ。

ξ;゚听)ξ「もう……なんなのよ……」



121: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:18:25 ID:kK9V/Zl60
その後、数十件の酒場を回ったが一向に『海底』に関する情報は得られなかった。
もしかすると奴は酒が飲めないのではと思ったりもした。
出会いが違えば語り合える仲になれたのかも知れない。
まあ、そんな確証は何処にも無いので酒場巡りを続ける。
  _
( ゚∀゚)「そうか…わかった。ありがとよ」

俺は今まで一度も入った事の無い酒場で話を聞き、何も分からなかったのでその場を去る。
情報提供の代わりに金をせびろうものなら斬り殺しているが、今のところそういった人間とは会わない。
店のドアを開け外に出る。

爪'ー`)土-「やあ『決闘』。あんたは今までに何人殺してきた?」

突然掛けられた声にハッと振り向いた。

爪'ー`)唐-「この島に『決闘』がいると聞いた時は感激したよ。昨日は大活躍したんだって?」
  _
( ゚∀゚)「……誰だ」

猫目…ではない。
背の高いスラッとした男が店から出て来た。
手にはヴァイオリンが握られている。

真っ白なシャツに黒いベストを重ね、足にピッタリとはまるズボンをはいていた。
赤い髪の毛はサラっと流れ、だらし無いようにも思えた。
さっきまでこいつは店内にいたようだ。



122: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:18:51 ID:kK9V/Zl60
爪'ー`)土-「俺は『楽譜』。しがないソリストさ」
  _
( ゚∀゚)「『楽譜』……?」 今日はよく異名を聞かせた奴が現れる。

『海底』に『酒樽』、そしてこいつは『楽譜』。
もういっそ街中の人間に名前付けちゃえよ。
  _
( ゚∀゚)「お前も海賊か。悪いが…」

爪'ー`)土-「おっとまあ落ち着けよ『決闘』」

話を食われた。
何なんだこの男は。
男はヴァイオリンを腰に掛けたケースにしまうと、もう一度話しかけてきた。

爪'ー`)「俺は陸地では決して喧嘩を吹っ掛けるような真似はしない」
  _
( ゚∀゚)「だったら何の用だ」

爪'ー`)「さっき酒場で聞いたぜ。『海底』を探しているんだって?手伝うぜ」
  _
( ゚∀゚)「何…?」



123: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:19:57 ID:wcccuYUc0
どうやら海賊達は俺らが潰し合うのを見るのがお好きらしい。
趣味の悪さに下吐が出る。
  _
( ゚∀゚)「お前も『メデューサの瞳』を狙ってんのか?」

爪'ー`)「狙ってはいるが、別にライバルを潰し合わせようって魂胆じゃない」

爪'ー`)「単純にあんたのファンなのさ」
  _
( ゚∀゚)「ならサインやるから家に帰ってエチュードでも弾いてろ」

俺は奴を突っぱねて歩きだす。
しかし『楽譜』は諦めることなくついて来た。

爪'ー`)「おいおい素っ気ねえな〜。別に漁夫の利を得ようってんじゃ無いんだぜ?」

爪'ー`)「あんたを討つのは海上で、だ」
  _
( ゚∀゚)「やっぱりやるんじゃねえか」

爪'ー`)「あまり不公平なやり方は好きじゃないんでね」

また掴めない奴が来た。
この島は変な奴ばかり集まるのか、
それとも海賊が変な奴なのか…悩み所だ。



124: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:20:26 ID:wcccuYUc0
爪'ー`)「俺…『海底』についての話、いくつか知ってるぜ」
  _
( ゚∀゚)「……?何だよ」

爪'ー`)「ああ…この前アイツが海賊船を襲撃している所を見かけてな…」
  _
( ゚∀゚)「『海底』の特徴なら知ってるぞ」

爪'ー`)「そうか。じゃあ…奴が使う武器は…」
  _
( ゚∀゚)「鉈だろ」

爪'ー`)「なら奴が海賊だけを狙う理由は…」
  _
( ゚∀゚)「ただの噂だろ?」

爪'ー`)「……………………」

爪;'ー`)「えーっと…ちょっと待ってな」

何だこいつ。
全然使えないじゃないか。
情報も、ろくなもんが無い。



125: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:20:52 ID:wcccuYUc0
爪'ー`)「わかった!あれだ。俺が見たことを分かりやすく話すよ!」
  _
( ゚∀゚)「いいか?俺はな………」

爪;'ー`)「!!」

その瞬間、目の前に一本の矢が飛んできた。
俺と『楽譜』が立っている間の僅かな隙間を通り抜け、矢は地面に突き刺さった。
  _
( ;゚∀゚)「なっ…………は!?」

爪;'ー`)「糞……っ!!狙いは俺らか!!」

何だ。
何が起きた。
誰がどこから狙っている?

爪;'ー`)「空ばかり見るな!!足元にも注意しろ!!」
  _
( ;゚∀゚)「は?どういう……」カチッ

爪;'ー`)「!!そこから離れろ!!」



126: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:21:58 ID:wcccuYUc0
その時、足から小さな金属の鳴る音が聞こえた。
『楽譜』の怒鳴り声に反応し、素早く跳び上がり後ろに下がる。
途端に地面から焦げた臭いと煙りが立ち込め、一挙に爆発を起こした。
  _
( ;゚∀゚)「なっ…なんだ!?」

俺がついさっきまで立っていた場所は焼け焦げ、砂埃を散らしていた。
何が起こったのかわからないまま俺は呆然と立ち尽くす。

爪;'ー`)「逃げるぞ『決闘』!!相手が悪い!」

突然、『楽譜』が俺の肩を掴み引っ張った。
  _
( ゚∀゚)「相手?誰だそいつは…!!」

爪;'ー`)「知らないのか?『駆除』だよ!!」
  _
( ゚∀゚)「『駆除』……?……………あ」

『駆除』。
親父が言っていたフィレンクトの手先か。
どいつだ?どこから狙ってやがる。
俺は辺りを見渡すが、武器を構えたような人間はいない。



127: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 01:22:28 ID:wcccuYUc0
爪;'ー`)「探したって無駄だ!奴は見つからない!!」
  _
( ;゚∀゚)「なんでお前がそういう事を言うんだよ!!」

爪;'ー`)「『駆除』の仕事は罠を張るだけだ!直接奴が手を下すことは無いんだ」
  _
( ;゚∀゚)「それはどういう…」

その時、無数の発砲音が聞こえてきた。
顔の横を何か小さなものが通り過ぎる。
もちろんそれらは銃声と銃弾だ。

爪;'ー`)「とりあえずここから逃げようか。続きは走りながら話す」

その意見に俺は賛成した。
俺達は一目散に駆け出し、安全と言い切れるまで走り続けることにした。

爪;'ー`)「どういう原理かは分からないが、『駆除』は罠の遠隔操作ができる」

矢、投石、銃弾が飛び交い、地面に仕掛けられた爆弾が作動する。
止まっている暇もない。

爪;'ー`)「海賊やフィレンクト卿に反する者だけが罠に掛ると作動するんだ」



131: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:08:07 ID:wcccuYUc0
爪;'ー`)「探したって無駄だ!奴は見つからない!!」
  _
( ;゚∀゚)「なんでお前がそういう事を言うんだよ!!」

爪;'ー`)「『駆除』の仕事は罠を張るだけだ!直接奴が手を下すことは無いんだ」
  _
( ;゚∀゚)「それはどういう…」

その時、無数の発砲音が聞こえてきた。
顔の横を何か小さなものが通り過ぎる。
もちろんそれらは銃声と銃弾だ。

爪;'ー`)「とりあえずここから逃げようか。続きは走りながら話す」

その意見に俺は賛成した。
俺達は一目散に駆け出し、安全と言い切れるまで走り続けることにした。

爪;'ー`)「どういう原理かは分からないが、『駆除』は罠の遠隔操作ができる」

矢、投石、銃弾が飛び交い、地面に仕掛けられた爆弾が作動する。
止まっている暇もない。

爪;'ー`)「海賊やフィレンクト卿に反する者だけが罠に掛ると作動するんだ」



132: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:08:37 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「なんだそりゃ。そんなことがあり得るのか?」

爪;'ー`)「実際に体験したじゃないか。あれで何とか納得してくれ」

ここまで来ると受け入れるしかない。
『駆除』は魔法使いのような力を持っているのか。

爪;'ー`)「おそらくだが、『駆除』は複数いる。そうでなきゃ街中で海賊を嵌めれるわけがない」
  _
( ;゚∀゚)「へっ…一般人に紛れて高みの見物ってか…。良い身分だな」

確かに俺たちでは相手にできない。
探すことは愚か逃げることもままならないのだ。

蹴った地面の感触が怪しかったので素早く距離を置く。
案の定、爆発に続き様々な仕掛けを引いてしまったようだ。

前から矢が飛んできたかと思えば、背後の仕掛けを踏んだ。
まるで一連の流れがあるように次から次へと罠が発動する。
俺達が逃げれる方向は次第に限られてきた。

爪;'ー`)「まずいな…しばらくは罠も収まりそうにない」
  _
( ;゚∀゚)「……だがもう逃げることさえ難しくなってきたぞ」

爪;'ー`)「…?どういうことだ?」

流石は『駆除』。
フィレンクトが雇うだけのことはある。



133: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:09:38 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「上手く誘導されたんだよ…俺達は…」
  _
( ;゚∀゚)「この先は…行き止まりだ」

この街で育った俺だからこそ言える。
この先に道はない。
あるのはペッタリと聳え立つ3mの壁。
だが罠は一向に止む気配がなかった。

爪;'ー`)「おいおい…これが噂のあれか?絶対絶命って奴か?」
  _
( ;゚∀゚)「まあ……………あ」

爪;'ー`)「?どうした?」
  _
( ゚∀゚)「ってか…俺はこの壁を越えられるんだった」

爪'ー`)「……は?」

俺はコートのボタンを外し、鉤爪ロープを取り出す。
ロープを振り、壁に投げつけた。
鉤爪は壁にうまく引っかかり、しっかりと固定された。



134: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:09:59 ID:wcccuYUc0
爪;'ー`)「お、おいちょっと待てよ」
  _
( ゚∀゚)「なんだよ」

爪;'ー`)「俺はどうなるんだ?」
  _
( ゚∀゚)「何で俺が初対面のお前の心配をしなきゃならないんだよ」

爪;'ー`)「やっぱあんたは海賊の鑑だよ」

俺が壁をよじ登ろうとすると、『楽譜』がしがみついてきやがった。
  _
( ;゚∀゚)「おわっ!何やってんだ!」

爪;'ー`)「選択肢は二つに一つだ。俺も連れて行くか、ここに残るか」
  _
( ;゚∀゚)「喧嘩は売らない主義じゃなかったの……」

その時飛んできた一本の矢がロープに命中し、ブッツリと切れた。
俺達は地面に倒れこみ、背中を打った。
『楽譜』の腹がクッションになり大した怪我にはならなかった。



135: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:10:47 ID:wcccuYUc0
  _
( #゚∀゚)「お前ふざけんなよ!!これ直すのに時間がかかるんだぞ!?」

爪;'ー`)「ああ、悪い。後で修理は手伝うよ…後でな」カチッ
  _
( ゚∀゚)

爪'ー`)

その時、『楽譜』の尻の下から嫌な音が聞こえた。
俺らはとっさに飛び上がり、その場を離れる。
轟々とした音と粉塵、火花が飛び散る。

間一髪で爆発から避けることができたが、依然として銃弾や投石は続いている。
このまま逃げていても体力が奪われるだけだ。
俺は逃げることを諦め、鉤爪ロープの切れ端をコートにしまう。
そして、その下にある細長い立方体の物体を取り出した。

爪;'ー`)「おい!そっちに矢が行ったぞ!!」

立方体はスライスされたベーコンのようにバラバラになり、やがて1枚の大きな板になった。
どうやら奴がいる場所からは煙が邪魔をして俺の様子が見えないらしい。
矢は、固い金属音を鳴らし、地面に落ちた。


】海賊の七ツ道具その二:組み立て式鉄盾【



136: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:11:09 ID:wcccuYUc0
俺は左手で漆黒に塗られた正方形の盾を握る。
この盾はもとは9枚の小さな板だった。
それを自動で1枚の盾に変形できるように改良したものだ。

素材は金属の中で最も固いものを使用した。
大砲以外のものは大概は防ぐことができるだろう。
  _
( ゚∀゚)「お前はお前の心配をしろ。俺は『海底』を倒すまで死なねえからよ」

爪;'ー`)「なるほど…窮地にさらされているのは俺だけか」

そう言うと、『楽譜』は腰に差した2丁の拳銃を取り出した。

爪;'ー`)「足を引っ張って悪かったな。自分の身は自分で守らせてもらうとするよ」

そう言うと、『楽譜』は引き金を引いた。
銃弾は見事に仕掛けに当たり、次々と破壊されていく。
命中力が高く、ほぼ確実にターゲットを仕留めている。
  _
( ゚∀゚)「なんだよ…やればできるじゃねえか」

爪'ー`)y=-「あまりうちの手は見せたくなかったんだがな。できればあんたの力だけで生き延びたかったよ」
  _
( ゚∀゚)「言うじゃねえか下種野郎」

爪'ー`)y=-「このぐらいの図太さがなきゃ船長は務まらないのよホント」



137: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:11:30 ID:wcccuYUc0
俺は剣を構え、防戦態勢に入る。
盾を構え、『楽譜』と打ち合わせる。
  _
( ゚∀゚)「いいか?いくら仕掛けが完璧でも、仕掛けた罠だ。限りはある」

爪'ー`)y=-「そこまで耐えきればいいわけだな。了解」
  _
( ゚∀゚)「わかってるなら最初からやれよ」

俺達はこの場に残るという選択をとった。
そうすれば少なくとも地面に仕掛けられた爆弾からは避けられよう。

奴は拳銃を構え、焦る様子も無く淡々と標的を破壊していった。
銃弾を良く見分けてかわし、その先を狙い銃口を向ける。
射撃のセンスがある。
驚いた。こいつは本物だ。

爪'ー`)y=-「あんまり見ないでくれよ。罠が嫉妬しちまう」

たしかにアイツを見てるわけにもいかない。
俺は俺の身を守らねば。
銃弾や矢が四方八方から飛び交ってくる。
俺達はお互いに背を向け、防戦する。
俺が攻撃を守り、『楽譜』がその元を叩く。



138: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:11:52 ID:wcccuYUc0
爪'ー`)y=-「精巧なトラップを壊しちまってすまんね!」

『楽譜』は自分の身など気にせず撃ち続ける。
馬鹿が。それじゃ意味がないだろう。
俺は奴の前に屈み、銃弾が来たらその位置に盾を向けた。
  _
( ゚∀゚)「結局お前の命まで俺が守ってるじゃねえか」

爪'ー`)y=-「その分あんたのゴミまで俺が処理してんだ。おあいこだろ?」

出会ってほんの数十分。
まさかここまで息の合う連携が取れるとは思わなかった。
弾き、撃ち、斬り、狙う。
弾数は着々と少なくなり、やがて、相手をするのは銃弾のみとなった。

爪'ー`)y=-「もう少しだ。追い込むぞ」
  _
( ゚∀゚)「お前が言うなお前が」

それから応戦すること数分。
気付けば辺りは静かになっていた。
  _
( ゚∀゚)「……終わったのか?」

爪'ー`)「そうみたいだな…」

俺達はそれぞれの武器をしまい、服に付いた汚れを払った。



139: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:12:18 ID:wcccuYUc0
爪'ー`)「それで…まだ探すのかい?」
  _
( ゚∀゚)「当たり前だ」

爪'ー`)「そうか。じゃあ俺も手伝うとしよう」

何を言い出すかと思えば何だ?
明らかにコイツが傍にいると面倒くさい。
  _
( ゚∀゚)「俺が思うにだ」

爪'ー`)「ああ」
  _
( ゚∀゚)「俺とおまえはどうも一緒にいない方が良い気がする」

爪'ー`)「そんなことないさ」
  _,
( ゚∀゚)


その後俺は2時間にも及ぶ説得を繰り返したが、結局奴には何も伝わらなかった。



140: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:13:17 ID:wcccuYUc0
その後も『楽譜』と共に何十軒と店を渡り歩いたが、『海底』に関する情報は得られなかった。
夕日は沈みかけ、辺りは真っ赤に染まる。

爪'ー`)土-「気にするなよ、明日があるさ」

と『楽譜』がヴァイオリンのメロディーに乗せて歌って来たのが癪に障り、鳩尾に拳をめり込ませた。
結局こいつは何がしたかったのだろうか。

爪;'ー`)「じ、冗談が通じないところも決まってるな…」
  _
( ゚∀゚)「次口開けたらてめぇのヴァイオリンの突っ込むからな」

爪;'ー`)「ああ、これはだめだ。エガルサ王国の王室で使われていた幻の楽器で…」
  _
( ゚∀゚)「なら質屋にぶち込むわ」

爪;'ー`)「気の切り替えがずいぶんお速いこと…それも血なのか?」

ピタッと俺の動きが止まる。



141: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:14:41 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)「お前…俺の父のことを知ってるのか?」

爪'ー`)「あんたの父親はここらじゃ有名だからな」

俺は『楽譜』の顔を睨む。
奴はそれを気にしていないようだ。

爪'ー`)「あの人は天才だよ。死してもなお人を惹き付ける魅力がある」

爪'ー`)「世界で一番有名な船乗りさ」

俺は奴の前まで寄り胸倉を掴む。

爪;'ー`)「お、お?な、なんだ!?」
  _
( ゚∀゚)「もう一つ父について有名な話を教えてやるよ」
  _
( ゚∀゚)「俺の前であの人の話をすると酷い目にあうぜ」

爪;'ー`)「わ、分かった分かった!悪かったから手を放してくれ」



142: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:15:06 ID:wcccuYUc0
( ^ω^)「………………お?」

俺が『楽譜』の胸倉を掴んでいる所につい最近見掛けた事のあるデブが通り掛かった。
手にはしっかりと酒瓶が握られている。

( ^ω^)「なんで『決闘』がこんなとこに…それにお前は『楽譜』かお?」

爪'ー`)「誰だあんた」

こいつ…本当に俺しか知らなかったのか。

( ^ω^)「僕はブーン。『酒樽』だお」

爪'ー`)「ああ、確かに樽みたいな体してんな」

( ^ω^)「まあ、名前を付けられた由来にはその説もあるお」

コイツらが並ぶと俺がまともに見えるな。

( ^ω^)「ところでなんでお前がこんなとこにいるんだお」
  _
( ゚∀゚)「『海底』を探してるんだよ。朝そう言っただろうが」



143: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:15:42 ID:wcccuYUc0
( ^ω^)「………?『海底』はもう見つけたんじゃないのかお?」

何を勝手に話を進めているんだ?
まあ噂好きの奴は大抵人の話をよく聞かないからな。
  _
( ゚∀゚)「まあ心配いらねーよ。すぐに見つけてぶっ殺してやるから」

俺は肩に固まったコリを落とす為に両腕を真上に伸ばし、筋肉を伸ばす。
じわっと染み込む痛みが気持ちいい。
『酒樽』は眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔をした。

( ^ω^)「ん?じゃあ今港で『海底』があんたの船を襲っているのは知らないのかお?」



  _
( ゚∀゚)


  _
( ゚∀゚)「は?」



伸ばした腕が固まる。



144: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:16:05 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「どういうことだ…?」

( ^ω^)「だから今『海底』は港にいるお。あんたの船を狙って」

思考がうまく働かない。
今こいつは何て言ったんだ?
  _
( ゚∀゚)「あ……アイツが港にいるのか!?」

( ^ω^)「さっきからそう言ってるお。僕はてっきりあんたもいるもんだと…」

『海底』は港に来ているのか?
探した苦労を恨むことはなかった。
それよりも先に嫌な予感が全身を襲ったからだ。
  _
( ;゚∀゚)「くそっ!!」

俺は港に向かって直ぐに駆け出した。

爪;'ー`)「おい!どこ行くんだよ!!」

『楽譜』も追いかけてきたが、気にしない。
走りながら様々な思考が頭を巡る。
俺のクルー全員で4人だぞ?
何故『酒樽』は俺がいると思ったんだ?



145: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:16:36 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「まさか……!」

そこからは一つの結論にたどり着く。
『海底』は…恐らく一人ではない。
複数人…それこそ俺がいるのかすらわからないほどの人数で。
奴は自分の部下を引き連れて俺の船を襲撃したのだ。
あいつらがそんな大人数を相手に勝てるはずが無い。

―『海底』は見張りを殺し、船を破壊する。―

『酒樽』の話が蘇る。
クルーの命が危ない。
俺は1秒が1分に感じるほどの遠い距離を駆け抜ける。
鼓動が高鳴るのを感じた。
  _
( ;゚∀゚)「頼む…無事でいてくれ……!!」

その時だけはツンのことも『海底』のことも全て忘れ去っていた。
ただただ船員の無事だけを祈りながら走り続ける。



146: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:16:59 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)


爪;'ー`)「………………」


(;;#;;#;;;)


『海底』は既に引き上げたようだ。
港はざわついた人々の野次で溢れ返っていた。

/#; 、;;#/


朝立っていた2本のマストはボロボロに砕けて海に浮かんでいた。
木材は海一面に敷き詰められ、船に乗せていたカーテンやシーツが波にゆらゆらと揺れている。


/ ;;# 3


そして港には夥しい血痕の数々と、体を真っ赤に染めたクルーが倒れていた。


(;;#A(#)



147: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:17:22 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「ビロード!!ダイオード!!スカルチノフ!!ドクオ!!」

俺が強く名前を叫ぶが、返事はこなかった。
一番近くに倒れていたドクオを抱え上げ、懸命に体を揺する。
腹に大きな切り傷が開いており、そこから絶え間無く血が溢れていた。

顔面はパンパンに膨れ上がり何箇所も痣ができている。
  _
( ;゚∀゚)「しっかりしろ!!おい!!」

ガクガクと何度も首を振る。
しばらくすると、ドクオは咳込むように口から血を吐き出した。
やがて、ゆっくりと腫れ上がった瞼を開いた。
しかし、その目は白いままだった。
  _
( ;゚∀゚)「!!」

(;;A (#)「キャプ…テン……す、すいません…こんな…」
  _
( ;゚∀゚)「誰がお前を責めるかよ!!しっかりしろ!!」

(;;A (#)「すい…ま…せん……すいませ…ん……ガフッ!!」
  _
( ;゚∀゚)「今、医者を呼ぶからな!それまで堪えろ!!」

(;;A;(#)「………すい…ませ……」



148: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:18:02 ID:wcccuYUc0
ドクオは嗚咽や血を何度も吐きながら謝り続けた。
何度も何度も。
しばらくして声がだんだんと弱まり、気絶した。
  _
(  ∀ )「……………」

他の船員の元へと寄る。
幸いにも全員微かに息があり、処置次第では治る可能性があった。
船は……もう使い物にならないだろう。
  _
(  ∀ )「『楽譜』……こいつらを…手当してくれるか?」

爪;'ー`)「あ、ああ…うちの優秀な船医を呼ぼう」
  _
(  ∀ )「すまねえな…」

仲間達の血に染まった拳を固く握り締めた。
心の奥底で沸々と煮えたぎるものを感じた。
それと反して俺の思考は驚くほど冷静になっていた。
  _
(  ∀ )「『海底』……」

爪'ー`)「……奴がこの場に部下を引き連れていなかったとしても……恐らくはこうなっていただろうな」
  _
(  ∀ )「なんだそりゃ。俺に警告してんのか?」

爪'ー`)「まさか。純粋に思ったことを述べたまでだ」

爪'ー`)「素晴らしいショーを期待してるよ…『決闘』」



149: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:18:27 ID:wcccuYUc0
<;ヽ`∀´>「た、大変ニダ!!」

( `ハ´)「どうした?また娼婦に性病をうつされたアルか?」

( `ー´)「馬鹿じゃネーノwwwww」

<;ヽ`∀´>「話を聞け!!ジョルジュが…ヤバいニダ!!」

ξ゚听)ξ「……!!」

( `ハ´)「ジョルジュ?アイツがヤバいのはいつもの事アルネ」

<;ヽ`∀´>「いいからこれを読むニダ!!」

( `ー´)「なんだこれ…………『果たし状』?」

<;ヽ`∀´>「ジョルジュが街中…いや島中にこれをばら撒いてるニダ」

( `ー´)「『今夜9時にてクイングル港にて待つ』…完璧にジョルジュの文字じゃネーノwwwww」



150: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:18:52 ID:wcccuYUc0
( `ハ´)「またアイツの決闘癖が始まったアルww」

( `ー´)「今度はどこの阿保だ?もしかして『銀貨』兄弟じゃネーノ?」

<;ヽ`∀´>「『海底』……ニダ」



( `ハ´)




( `ー´)




( `ハ´)「えっ」



151: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:19:17 ID:wcccuYUc0
ミ;,,゚Д゚彡「…………」

( ;`ー´)「ちょ…ちょっと酔ってるのかな?海賊と海底を聞き間違えちまった…」

(;`ハ´)「そ、そうアルよ!『海底』って言やあたった一人で7隻もの海賊艦隊を壊滅させるほどの…」

( ;`ー´)「そうそう!一度も体に傷を付けたことが無いとか…」

(;`ハ´)「街を一つ壊滅させたとか…」

( ;`ー´)「………」

(;`ハ´)「………」

<ヽ`∀´>「ちなみに艦隊は7じゃなくて8ニダ…」


ξ;゚听)ξ「………………」



152: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:19:44 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)「………」

すっかり辺りは闇に覆われ、海が映し出したのは空に輝く三日月。
俺は左手に灯りの燈したランプを持ち、静かな波の音を聞く。
先程まで誰もいなかった港は俺が撒いた果たし状を見て駆け付けた野次で溢れ返っていた。
連中は面白半分で見に来たかもしれないが、それ以上にこの港の安否を確認しに来た者の方が多いのかもしれない。

もう間もなくして、指定した9時になる。

爪'ー`)「よう…調子はどうだい?」

昼間、共に過ごした男が港に戻ってきた。
手にはなぜかトランペットが握られている。
  _
( ゚∀゚)「あいつらは…どうだ?」

爪'ー`)「うちの船医によると、一命は取り留めたようだ」
  _
( ゚∀゚)「………そうか」

俺はホッと胸を撫で下ろす。
あいつらの生命力には確信があったが、それでもあの傷を見てしまったのでどうしても不安を取り除く事はできなかった。
  _
( ゚∀゚)「ありがとよ。いろいろ世話になったな」

爪'ー`)「今宵の決闘を特等席で見れるんだ。このくらい訳無いさ」



153: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:20:07 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)「それ…………どうするんだ?」

俺は顎で奴の手に握られていたトランペットを指す。

爪'ー`)「ああこれか。もちろん鳴らすんだよ」
  _
( ゚∀゚)「決闘でか」

爪'ー`)「当たり前だろ?本当は角笛がよかったんだけどな」
  _
( ゚∀゚)「………」

まあいい。
こいつには一応は恩がある訳だ。
好きにやらせておこう。

時刻は9時に差し掛かろうとしていた。
あと一回針が動けば約束時刻になってしまう。
しかし俺は来ないかもしれないという心配はしない。

奴は必ず来る。

時計台の秒針が9を越える。
もう間もなくだ。
野次の雑踏も次第に消えて行き、
やがて波と潮風の音しか聞こえなくなった。

秒針が11を越えた、その瞬間だった。



154: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:20:31 ID:wcccuYUc0
俺の目の前に一本の剣がまっすぐに落下してきた。
剣は地面に綺麗に刺さり空を斬る。
辺りは再びざわめき、全員が空を見上げる。
  _
( ゚∀゚)「やっと来たか……」

そして頭上から大きな固まりが降ってきた。
それは固まり等ではなく、馬鹿でかい鉈を初めとした様々な刃物を何十と装備した人間だった。


( ФωФ)

  _
( ゚∀゚)「…随分とパフォーマンスが好きみたいだな」

( ФωФ)「……貴様が『決闘』か?」
  _
( ゚∀゚)「ああ……ラブレターは読んでくれたみたいだな『海底』」

猫目。高い背。
確かに話通りだ。
黒いシャツに茶色のボトムズ、そして剣を固定するための白い包帯を腰に巻き付けていた。
こいつが仲間を、船を砕いたのだ。



155: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:21:00 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「……下らん」
  _
( ゚∀゚)「ああ?」

( ФωФ)「自己防衛もできないような部下がやられて、その敵討ちか?」
  _
( ゚∀゚)「悪いな。ギブアンドテイク精神を遵守しているんだ」

『海底』は刺さった剣を引き抜き鞘に納めた。
左右の腰に数本ずつ、さらに背中には噂の鉈が背負われていた。
  _
( ゚∀゚)「俺の部下が世話になった分、てめえに返してやるよ」

( ФωФ)「運よく生き長らえた命を無駄にする愚者めが……」
  _
( ゚∀゚)「運の良し悪しは終わってから決めようじゃねえか」

( ФωФ)「『終わってから』?一体何を始めるつもりだ?」
  _
( ゚∀゚)「決まってんだろ」




  _
( ゚∀゚)「決闘だ」



156: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:21:26 ID:wcccuYUc0
俺はそっとランプを地に置いた。
そして胸ポケットから先程ばらまいた1枚の果たし状を取り出す。
  _
( ゚∀゚)「まさかとは思うが……この手紙を最後まで読んでないみたいだな」

( ФωФ)「我輩がここに来たのは貴様をなぶり殺す為だけである。決闘など以っての外だ」
  _
( ゚∀゚)「そうか。ならもう黙っとけ」

  _
( ゚∀゚)「お前の言葉じゃあもう俺の怒りは収まらねえからよ」


『楽譜』はハッとしたようにトランペットを口に構え、マウスピースに息を入れた。
カンカンとした金管楽器の音色が港中に響き渡る。



決闘の始まりだ。




俺は左手で剣を抜き、前へと駆け出す。
『海底』もそれに合わせ、左右の腰から2本のカトラスを取り出した。



157: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:21:58 ID:wcccuYUc0
鋭い金属の音がぶつかり合う。
3本の剣は互いの刃の動きを止め、微動だにしなかった。
  _
( ゚∀゚)「なんだよ。てっきり負けた時の言い訳をずっと吠えてるのかと思ったぜ」

( ФωФ)「残念だが貴様は我輩の前に対峙する資格は無い」

俺は剣を後退させ、またすぐに攻め込む。
『海底』も同様に休むことなく斬りかかる。

( ФωФ)「ふんっ!」

奴は鋭く剣を俺の胸を目掛けて突いてきた。
俺は上から下に剣で払い落とし、奴の攻撃を避ける。
その隙に二発目の突きが顔面に向かって来た。
とっさに首を横に傾け、剣の導線から頭部を回避させる。
  _
( ゚∀゚)「手元が空いてるぞ」

俺は瞬発的に剣を振る。
進路は奴の脇腹だ。

( ФωФ)「無問題である」

『海底』は剣を手放し、腰にかかった黒い柄を掴んで思い切り前に出す。
柄の先に伸びた刃が俺の剣の進行を止めた。



158: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:22:27 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)「見ねえ剣だな…特注か?」

( ФωФ)「こいつは黄金郷『ゼパンガ』で手に入れた刀という剣だ」

( ФωФ)「切れ味は今まで使ってきたどの剣よりも優れている」
  _
( ゚∀゚)「そうかい。わざわざ説明をありがとよ」

奴は2本の剣を捨て代わりに2本の刀を抜いた。
妖々とした不気味な雰囲気があの剣に漂っているようだ。
  _
( ゚∀゚)「まあ切れ味が如何に優等生でも、使い手に問題があるとな」

俺は剣を何度も振る。
それに対抗して奴も刀を振った。
港に響き渡る刃と刃が触れる音。
互いに一歩も引かず、ただ相手の首をはねるイメージのみで斬り付ける。
剣と刀が交わる瞬間、俺は右足を振り上げ奴の腹に蹴り付けた。

( ФωФ)「……!!」

奴は寸前で肘を降ろし、腕でガードする。
その隙を狙い、銃を構えて顔面に向けながら引き金を引く。



159: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:22:50 ID:wcccuYUc0
奴は間一髪、体を後ろに逸らし、銃弾を回避した。
そのまま『海底』は空中で後転し俺と距離を取った。
しかし奴はそのままでは終わらず、刀を一本投げつけてきた。
  _
( ゚∀゚)「ぐっ…!!」

俺も顔を逸らし剣の軌道を回避する。
確実に回避したと思っていた。しかしその刀の刃は感触を俺に知らせることなく頬に当たった。
頬から少量の血が流れる。
  _
( ゚∀゚)「……………」

( ФωФ)「……………」

沸き立っていた筈のギャラリーも気付けば一言も発していなかった。
それもそうだ。
今起こった一連の流れは、ものの数秒間の間に完了してしまったのだ。
半分以上の人間は何が起こったのかすらわからない。
  _
( ゚∀゚)「まだ背中のソイツは抜かないのか?」

( ФωФ)「抜かせるほどの実力があると思っているのか?」
  _
( ゚∀゚)「……後悔しないといいな」



160: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:23:20 ID:wcccuYUc0
その後、ひたすら剣と刀が触れる太刀音だけが響いた。
何度も何度も斬り掛かりそしてそれを防ぐ。
どちらも退く事はなく、ただひたすら剣を振る。


<;ヽ`∀´>「す、すげえ…」

(;`ハ´)「ジョルジュの奴、『海底』の野郎と対等に戦ってるアル…」

( ^ω^)「いや、『海底』は手を抜いているお」

<;ヽ`∀´>「!!……お、お前…誰ニダ?」

( ^ω^)「ところどころ力を抜いてるお。『海底』なら剣の一つや二つ弾き落としても……」

(;`ハ´)「ん?もしかして……お前『酒樽』アルか?」

( ;`ー´)「『酒樽』って……あの海賊戦略家じゃネーノ!!」

( ^ω^)「『決闘』がどこまで持つかが勝負の鍵だおね…」

<;ヽ`∀´>「何でこんな奴がここに…?」



161: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:23:47 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「どうした?我輩を殺すのではなかったのか!?」
  _
( ゚∀゚)「お前が最後の言葉を発したらやってやるよ」

たかだか東洋の剣ごときに苦戦するとは。
しかしあの刀って奴は厄介だ。
刃渡りに重みがあり、受け止める俺の剣が紙のように感じる。
だが奴にそれを使いこなそうという気はないらしい。
  _
( ゚∀゚)「いつまでこんな茶番劇を続けるつもりだ?」

( ФωФ)「何の話だ」
  _
( ゚∀゚)「いいから本気出せよ。こんなんじゃ俺は討てないぜ?」

( ФωФ)「……貴様は余程死に近付きたいようだな」
  _
( ゚∀゚)「人生は太く短くがモットーなもんで」

ここで初めて『海底』は俺の剣を振り払って後退し、距離を取った。
奴は握った2本の刀を鞘に戻し、やや中腰になった体勢を取る。
その意図が保身の為では無いことは誰の目で見ても明らかだった。

―『海底』が何かを仕掛ける―。

( ФωФ)「そんなに死にたいのなら……手を貸してやろう!」



162: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:24:43 ID:wcccuYUc0
『海底』は指と指の合間に柄を挟み一挙に引き抜く。
現れたのは両手合わせて8本になる刀。
剣は一本も無かった。

( ФωФ)「……今から見せる技は、ゼパンガで会得したものだ」
  _
( ゚∀゚)「なんだよ技って……KARATEでもやるつもりか?」

( ФωФ)「名を“遊技”と言う」

そう言うと『海底』は2本を残し、他の刀全て上空に高く放り投げた。
  _
( ;゚∀゚)「なっ…………!?」

その落下地点は間違いなく俺の頭上だった。
あれだけの数…避けられるのか?

( ФωФ)「阿呆のように口を開けて空を見るな」
  _
( ;゚∀゚)「……!!」

目線を戻すと 『海底』はすぐ目の前まで迫っていた。
俺はとっさに懐に剣を構えガードする。
体勢の悪さと突然の出来事に体が対応せず、バランスを崩した。

ここは退かざるをえないだろう。
俺は飛び上がり後退する。



163: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:25:14 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「まだだ!!」

しかし奴は距離を取ろうとはしなかった。
そのまま間合いを伸ばすことはせず、そのまま斬り掛かってきた。
  _
( ;゚∀゚)「糞っ……!!」

俺も剣を振り対抗する。
また先程のような斬り合いが始まると思っていた。

( ФωФ)「貴様……本気で我輩が貴様を仕留める為に刀を放り投げたと思ったか?」
  _
( ;゚∀゚)「…………は?」

その瞬間、奴は刀を投げつけてきた。
俺は跳び上がり回避する
  _
( ;゚∀゚)「うわっ!!……何だ……」

俺がその時見たのは『海底』の頭上に落ちる刀だった。
奴はその刀の柄を持ち、さらに投げつけてきた。
  _
( ;゚∀゚)「!!」

首を大きく振り飛んできた刀を避ける。
その体勢を狙ってさらにもう2本が飛んできた。



164: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:25:42 ID:wcccuYUc0
俺は右手を地に付け側転して刀から遠ざかった。
しかし奴の攻撃は止まらない。
振ってきた刀を次から次へと投げつけ、投げ終わったら今度は地に刺さった刀を抜き、また投げつける。
間合いを縮めれば刀を構え切り掛かり、離れれば投げつけて来る。

稀に刀の柄を叩き、その衝撃を推進力に変えてくるので規則性も生まれない。
作戦を練る暇さえ与えられなかった。
  _
( ;゚∀゚)「この野郎……!!」

俺は飛んできた刀を剣で払い飛ばしながら進む。
こうすれば一つ一つではあるが確実に本数を減らせる。
払った刀は全て俺の背後に捨てられるからだ。

これが残された唯一の対抗策だろう。
一本…また一本と刀は無造作に倒れていった。
どんどんとリーチは短くなっていく。

( ФωФ)「ふん……それで見切ったつもりか?」

俺が5本目の刀を払った瞬間、目の前にさらにもう1本の刀が迫っていた。
  _
( ;゚∀゚)「ぐっ………!!」

剣を手元に素早く引きとっさに身を守る。
刀は剣の腹に当たり、鋭い音を立てて弾き飛ぶ。
その直後だった。
腹に熱い痛みを感じた。



165: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:26:35 ID:wcccuYUc0
  _
( ;∀ )「がっ…………!!」

3本目。

迂闊だった。
刀は見事に脇腹に深く刺さり、その穴からはとめどない血が刀を伝って滴り落ちる。

( ФωФ)「“遊技”はそんな安直な考えで打ち破れるような技では無い」

『海底』の目の前に一本の刀が落ちて来る。
奴脚を振りかざしその刀を思い切り蹴り飛ばした。
刀は俺の左胸に向かって飛んでくる。
それとほぼ同時に俺は膝をガクンと落とした。
  _
( ;Д )「ぐあっ!!」

刀は胸を逸れ、俺の左肩に刺さった。
刃は肩を貫通し、筋肉に深く刺さっている。
ドクドクと真っ赤な俺の血が流れ、服を伝う。

( ФωФ)「……心臓は免れたようだな。運の良い男め」

俺は力を振り絞り刺さった刀を抜く。
肉がズレる音が体に響いているのを感じた。



166: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:27:13 ID:wcccuYUc0
カランと音を立てて二本の刀は地に捨てられた。
足に力をうまく入れられない。
ついにはバランス感覚が不安定になり、重力に耐えられずその場に膝を着いた。
膝を着けば負け……という事は無いが、それによってギャラリーはどよめいた。
奴の勝ちを確信したのかもしれない。

( ФωФ)「一瞬の奇想で、死を招くこともある」
  _
( ;∀ )「…………………」

( ФωФ)「……つまりそういうことである」

すると『海底』は背負った鉈を掴みするすると鞘から取り出していく。
刃渡りが2mを超えかねない長さ。
威圧感のある曲線。
人の首を目掛けて振り下ろせば綺麗に落とすことができるだろう。

( ФωФ)「冥土の土産である。貴様はこいつで仕留めてやろう」

ロマネスクは俺の首に狙いを定める。
そしてゆっくりと振り上げ、鉈を頭上まで構える。
まるでギロチンじゃねえか。
  _
( ;∀ )「うっ………ぐっ!!」

死ねるか。
こんな所で……。



167: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:27:38 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「さらばだ」

そう言うと『海底』は大きな弧を描き、一挙に振り下ろした。
  _
( ;∀ )「う、ああああああああああああああああああああああああ!!」

奴が振り下ろし始めたのと、俺が奴の捨てた刀を俺が投げたのはほぼ同時だった。

( ;ФωФ)「むっ!?」

奴は俺の行動に気付き、避けようとしたが振り下ろされた鉈は止まらない。
『海底』はとっさに判断し、足に力を入れ体ごと横に跳んだ。
鉈は俺から少し離れた地に落ちる。
鉈は地面に深く潜り、その地は綺麗に割れていた。

( ;ФωФ)「まだ刀を投げる力が残っていたか……」

俺はフラフラと立ち上がり、しっかりと地を踏む。
口、肩、腹から血が垂れ、痛みは絶えず続くが、深呼吸をすることで和らげる事ができた。
耐えられるさ。
あいつらが受けた痛みはこんなんじゃない。
  _
( ;∀ )「悪かったな……どうやら間違っていたのは俺のほうだ」



168: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:28:20 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「……………?」
  _
(  ∀ )「確かにさっきまでの俺は…あんたを殺すつもりが無かったようだ」

( ФωФ)「……まるで我輩の全てを見切ったような言葉だな」
  _
(  ∀ )「見つけたのはお前じゃねえ」








  _
( ゚∀゚)「覚悟だ」






( ФωФ)「……………」

( ФωФ)「…………………面白い」



169: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:28:47 ID:wcccuYUc0
俺は剣を構え、腰を少し落とす。
次こそが勝負だ。
必ず奴を斬る。
『海底』も鉈を地面から抜き、構えた。

( ФωФ)「一つ言っておく。こいつをただの鉈だとは思わないほうがいい」
  _
( ゚∀゚)「ただのでかい鉈だろ?」

( ФωФ)「……………忠告は以上だ」

奴は鉈を振り上げ、俺に向かって振り下ろした。
俺は剣を構え、鉈の前に差し出す。剣と鉈は当たり、その接触部から火花が散った。
  _
( ;゚∀゚)「ぐっ……!!」

腕に強い衝撃が走る。
まるで氷山にぶつかった帆船のよう。
どんなに両手で力を入れても振り払う事はできず、重くのし掛かる。
俺は剣を左に引き、その推進力で体ごと横に転がる。

( ФωФ)「こいつはただの鉈ではない。刀のように素早く、鉄球のように重く振ることができる」
  _
( ;゚∀゚)「……なるほど」



170: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:29:12 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「こいつがいる限り、貴様は我輩に傷一つ付ける事はできん」

俺は大股で2、3歩だけ離れる。鉈の攻撃圏内から確実に外れた位置だ。
確かにまともに掛かれば攻略は不可能だろう。

まともにかかれば…な。

俺が剣を向けると同時に、『海底』は大きく振りかぶり、前に飛び出す。
これが最後の一振りだ。
一か八か、賭けに出る。

( ФωФ)「さあ次はどうする?」


  _
( ゚∀゚)「はっ」






  _
( ゚∀゚)「次は…ねえよ」



171: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:29:42 ID:wcccuYUc0
( ;ФωФ)「なっ……!!」

俺は両腕を広げ腹を前に出した。
その姿勢のまま後ろに一歩だけ退く。
剣は振り降ろされ、俺の腹を切り裂いた。

血が飛沫のように飛び、鉈に降り懸かる。
あまりの痛みに意識が飛びそうになったが、必死で堪える。
後ろに下がっていたおかげで傷は浅く済んだ。
  _
( ゚∀゚)「……ようやく会えるな。『海底』」

俺は鉈に沿って走り出し、剣を振り上げる。
もちろんその先には何も無い。

( ;ФωФ)「!!」
  _
( ゚∀゚)「これが…………痛みだ」



( ;ФωФ)「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

俺は力強く剣を振り奴の腹を切り付けた。



172: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:30:11 ID:wcccuYUc0
( ; ω )「がっ!!…………ガハッ!!」

剣の刃を余すことなく奴の体に食い込ませる。
ブチブチと肉を斬り、血が吹き出した。
奴の体を破り、剣先が全て通過する。
その光景はとてもスローに動いていた。
  _
( ゚∀゚)「………………」

( ; ω )「ぐっ!!……ハァ…ハァ………」

しかしロマネスクは倒れなかった。
重症にも関わらず、懸命に膝を上げ、鉈をしっかりと握った。

( ;Фω )「肉を切らせて骨を裁ったか……」

奴は額から汗を、口から血を流しながら笑った。
どうやら、奴はまだ戦う気のようだ。
  _
( ;゚∀゚)「形勢が逆転した……って訳ではねえな」

事実、俺も先程の攻撃のせいで足の震えが止まらない。
あまり長い戦いはできないだろう。

(#;ФωФ)「貴様は……必ず討つ!!」
  _
( ゚∀゚)「俺も同じ事を言おうと思っていたとこだ。許すつもりはさらさらねえよ」


俺は剣を仕舞い、右手でコートのボタンを外す。



173: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:30:35 ID:wcccuYUc0
( ;ФωФ)「……なんだそれは?」

俺が今握っているのはY字の小さな枝のような物だ。
枝と呼ぶにはやや太く、2股に別れた先にはゴム紐が括りつけられている。
  _
( ゚∀゚)「知らねえのか?パチンコって奴だ。ガキの間で流行ってるんだぜ?」

( ;ФωФ)「まさか…そんな玩具で我輩と戦うつもりなのか?」

玩具。
確かに玩具か。
俺は声を上げて笑い出した。
笑う意味はギャラリーにも『海底』にも分からないだろう。
  _
( ゚∀゚)「アッハハハハ………あー面白ぇ」

(#;ФωФ)「何がおかしい」
  _
( ゚∀゚)「一つ言っておく。こいつをただのパチンコだとは思わないほうがいい」

(# ФωФ)「…………………馬鹿にしおって……」

奴はもの凄い形相を作り、鉈を振り上げた。
もしかしたら『海底』には俺が瀕死の敵にはパチンコ程度で勝てると考えているように見えたのかもしれない。
参ったな。
俺は全くそんなつもりじゃないんだが。



174: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:31:02 ID:wcccuYUc0
(# ФωФ)「死に晒せ!!」

『海底』は鉈を勢い良く振り下ろした。
俺はそれを宙返りで避けた。

】海賊の七ツ道具その三:パチンコ【

俺はコートのポケットから小さな箱を取り出した。
この中に入っているのは俺お手製の3つの破裂玉だ。
パチンコで飛ばした速度で何か物体にぶつかると玉が破裂し、中身が出る。

あまり人に知られるのは好きじゃない。
だからここぞという時にしか出さない。
今がその時だ。
  _
( ゚∀゚)「まずは『煙玉』」

俺は真黒な球をゴム紐の中央に取り付けた革製の布にセットし、ゴムを限界まで引く。
狙いは『海底』ではない。
奴の足元だ。

俺は奴の足から3歩ほど前の地面に目掛けて玉を飛ばした。



175: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:31:22 ID:wcccuYUc0
( ФωФ)「…?」

奴は脅威だと感じなかったのか、微動だにせずただ玉を見送った。
そうしてられるのも今のうちだ。
玉は地面に着地した。
その瞬間玉が破裂し、中から港一体を覆うほどの煙がもくもくと立ち込めた。

( ;つωФ)「なっ!なんだこれは!?」

ギャラリーも驚いたようで、ざわめきや叫び声が飛び交った。
ちょうど良い。
奴らの声は俺の足音をかき消してくれる。
  _
  ∀゚ 「これが俺の戦い方だよ。『海底』…」

俺は煙に紛れて姿を消した。
もうこれで奴は視界に俺の姿を入れることはできないだろう。

( ;つωФ)「くっ…そういうことか…!!」

やっと奴も俺の作戦に気付いたようだ。
しかし時はあんたを待ってはくれないんだよ。



176: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:31:56 ID:wcccuYUc0
そっと剣を抜く。
俺は奴の背後に忍び寄り、剣を振り下ろす。

( ;ФωФ)「ぬ!!そこか!!」

間一髪で奴に気付かれ、俺は奴に剣を当てずにまた煙に隠れた。
白煙は3分ほど続く。
その間にこいつを倒す。

( ;ФωФ)「糞!!出てこい卑怯者!!」
  _
( ゚∀゚)「卑怯?何言ってんだアイツは」

視界は封じた。
次は俺の気配を封じなければならない。
  _
( ゚∀゚)「次は奴の耳。『爆玉』…いくか」

俺から奴の姿は見えなくてもかまわない。
奴のだいたいの居場所なら分かる。
俺は玉をセットし奴に向けてゴムを弾く。
玉は奴の体にクリーンヒットした。



177: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:32:43 ID:wcccuYUc0
( ;ФωФ)「ぐっ!!な、何だ!?」

奴の背中に当たった玉は破裂し、大きな破裂音を立てた。
至近距離の爆発音は相手の耳を防ぐのにちょうど良い。

( ;ФωФ)「ぐっ!!不覚である……!」
  _
( ゚∀゚)「言うのは勝手だが、自分の身ぐらい守ったらどうだ?」

俺は剣で奴の体を斬った。
体のどこを斬っているのかは俺にもよくわからない。

( ; ω )「ぐわっ!!がっ!!うっ!!」

場所さえ分かれば後は適当に斬り続けるだけだ。
突けば一撃の殺傷力は高いが、万が一に外れた場合、俺の場所を特定される可能性がある。
なので俺は斬ることしかできない。

( ; ω )「ぐっ……!!お、おのれぇ……!」
  _
( ゚∀゚)「ふん…所詮俺達海賊は恨まれても仕方ないのさ」
  _
( ゚∀゚)「誰も同情なんかしてくれやしねえ。自分の恨みは自分で解決するしかねえんだ」



178: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:33:09 ID:wcccuYUc0
( ; ω )「ぐあっ!!」

斬り始めてから37回目の攻撃で、『海底』はついに鉈を手放した。
もうあれを握っていられる力など残されていないのだろう。
煙も大分薄まり始めた。
そろそろ頃合いか。

( ;Фωメ)「ハァ……ハァ……コロス…!!コロシテヤル…!!」

うっすらと漂う煙の隙間から見えた奴の姿はそれはそれは悲惨だった。
いたるところから血を流し、血が付着していない部分を探すのが難しいくらいだ。
地に落ちていた刀を拾い、それを杖代わりにして懸命に立つ。
まるで生まれたての馬を見ているような気分だ。
  _
( ゚∀゚)「…どうだ?一方的に痛めつけられる気分は」

( ;Фωメ)「ハァ……ハァ……」
  _
( ゚∀゚)「てめえがどんな信条を掲げていようと俺のクルーに手を出したんだ」
  _
( ゚∀゚)「普通に死ねると思うなよ」

俺は最後の玉を取り出し、パチンコを奴の顔面に向ける。



179: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:33:43 ID:wcccuYUc0
  _
( ゚∀゚)「そうだ。お前に一つだけ聞きたいんだが…」

( ;Фωメ)「……?」
  _
( ゚∀゚)「お前……酒は好きか?」

俺は革から手を離し、玉を飛ばす。
玉は奴の顔面に当たり、中から液体が飛び出した。

( ;Фωメ)「なんだ…これは……」
  _
( ゚∀゚)「『酒玉』だ」

あの玉の中に入っているのはアルコール。
ただそれだけ。
俺は奴の元までゆっくりと歩いて近づいた。
  _
( ゚∀゚)「あばよ。『海底』」

俺はパチンコをコートの中にしまう。

( ;Фωメ)「こんな…とこで…死ねるか……!」
  _
( ゚∀゚)「!!」

その隙を狙い、奴は最後の力を振り絞り、刀を俺の顔に目掛けて振った。



180: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:34:21 ID:wcccuYUc0
( ;Фωメ)「!!………な」
  _
( ゚∀゚)「………………」

俺はとっさに左腕で顔を守る。
刀は腕に当たり、進行を妨げられた。


しかし、刀は俺の腕に刺さることはなく固い金属音を鳴らして、弾き返された。

( ;Фωメ)「貴様…なんだその腕は……」

俺の腕を斬り落とせなかったのがそんなに不満か。
  _
( ゚∀゚)「………………野次には見えてねえみたいだな」

俺はそっと胸を撫で下ろした。
あまり知られたくない情報だ。下手に見せるわけにはいかない。

俺は奴の後頭部を右手で掴む。
背の高い奴もここまで瀕死になると必然と背が曲がるもんだ。
これで終わりにしよう。



181: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:34:56 ID:wcccuYUc0
( ;Фωメ)「なっ…何をする!!」

俺は奴の頭を思いっきり地に目掛けて落とす。
足を払い、奴の体は空に浮いた。

( ;Фωメ)「あっ………」

( ;Фωメ)「あ、あああああああああああああああ!!」

奴の頭部の落下地点に置いてあるのは










俺が持ってきたランプだった。



182: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:35:26 ID:wcccuYUc0
(;;;#ω#;;)「ぐああああああああああああああああああああああああ!!」

ランプはガラスが割れ、砕け散った。
ガラスは顔中に突き刺さり、装飾の角は奴の目を潰す。
そしてランプの中に入っていた蝋燭の灯が奴の顔についたアルコールに反応し燃え移る。
その叫びはおぞましく、また痛快だった。
  _
( ゚∀゚)「俺の…勝ちだ」

(;;;#ω#;;)「があああああああああああああああああああ!!」

俺は剣を抜き、奴の首に充てる。
俺はこいつを殺す為に決闘を申し込んだのだ。
こいつのプライドを殺す為じゃない。
  _
( ゚∀゚)「……お前は俺が今まで戦ってきた誰よりも強かったよ」
  _
( ゚∀゚)「来世ではこそこそとせずに胸を張って闘え」

俺は剣を振り上げ、奴の首に向かって振り下ろした。



183: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:35:51 ID:wcccuYUc0
<;ヽ`∀´>
  _
( ゚∀゚)

(;`ハ´)
  _
( ゚∀゚)

( ;`ー´)
  _
(  ∀ )

爪;'ー`)


( ^ω^)「……………終わったお」


決闘が、終わった。



184: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:36:17 ID:wcccuYUc0
『楽譜』はトランペットに口を着け一挙にファンファーレを鳴らした。
その瞬間、港は喝采の雨で覆われた。
しかし俺にとってそんなことは毛ほど興味がなかった。

爪'ー`)「流石だな!『決闘』!!まさか本当に勝っちまうなんてよ!!」
  _
( ゚∀゚)「……ああ」

爪'ー`)「なんだよ!せっかく勝ったんだ、もっと喜ぼうぜ」
  _
( ゚∀゚)「そんなことより、アイツらに会わせてくれ。心配だ」

爪;'ー`)「え?」
  _
( ゚∀゚)「何だよ」


爪'ー`)「いや…わかった」

後味が悪そうに『楽譜』は喜ぶのをやめた。
ギャラリーも『海底』の死を確認した直後は歓声や絶叫を飛ばしていたが、
俺の落ち着きぶりを見ているうちに静かになり、ぞろぞろと港を去って行った。

その時だった。



185: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:36:43 ID:wcccuYUc0
( ;^ω^)「お前ら逃げるお!!」

野次の中から誰かが大声で叫んだ。
声の主は『酒樽』だった。

爪'ー`)「なんだよ急に…」

( ;^ω^)「アイツが近くまで来てるお!!」
  _
( ゚∀゚)「アイツ?」

『酒樽』は酷く焦ったように叫ぶ。
いったい何故逃げる必要があるんだ?

( ;^ω^)「『巨人』が…そこまで来てるんだお!!」
  _
( ゚∀゚)「…………何…」


その時、『酒樽』後ろの家の隙間から大きな顔がひょっこりと出ていた。


( ゚∋゚)



186: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:37:08 ID:wcccuYUc0
爪;'ー`)「なっ……なんだありゃあ!!」
  _
( ;゚∀゚)「き…『巨人』…!!」

爪;'ー`)「なっ…あれが!?」

背丈6mを超える男。
昨日見た姿と全く変わらない姿でそこに聳え立っている。
やはりあれは夢ではなかったようだ。
しかし、今日は誰かを追いかけている様子はないようだ。

( ;^ω^)「逃げろお!!アイツはあんたを狙ってるお!」
  _
( ;゚∀゚)「はっ?…な、何!?」

( ;^ω^)「『巨人』は狙う敵しか見ないんだお!アイツの目線は確実にお前に向いているお!!」

俺はもう一度、あのデカブツを見る。
確かにその目は俺に向けられていた。
…というよりも目があった。

( ゚∋゚)



187: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:37:34 ID:wcccuYUc0
  _
( ;゚∀゚)「くっ…どういうことだよ!!」

俺は再度剣を構え、奴と対峙する。
しかし、『海底』との一戦の怪我や疲労が一気に襲いかかり、戦意が湧かない。
気付けばどう逃げるかだけを考えていた。

( ゚∋゚)
  _
( ;゚∀゚)「!!」

『巨人』は俺の姿を捉えると、一挙に攻め寄った。
そして、腕を大きく振り上げ、一直線に俺に目掛けて拳を叩きつける。
投石なんてレベルではない。
まるで巨大な氷塊が飛んできたかのように一瞬にして落下してきた。

受け止めるかどうか判断に迷ったが、あれを止めることは不可能だと悟り、避けに徹した。
俺はとっさに後方に高く飛び、奴の一撃を避ける。
拳は地面に落ち、激しい地鳴りが響いた。

爪;'ー`)「『決闘』!!」
  _
( ;゚∀゚)「俺は無事だ!!それよ………」

そこで俺は言葉を詰まらせた。
なぜなら、『巨人』の拳が落ちた場所は見事に粉砕しており、平らにされた石の床が隆起した。
これが「人間」の一撃なのか?



188: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:38:10 ID:wcccuYUc0
( ;^ω^)「悪いけど後は二人で頑張ってくれお。ここにいるのはごめんだお」

そう言うと、『酒樽』は瓶を担ぎあげ、デブとは思えない俊敏な動きで去って行った。
もとよりアイツには何も期待などしていないから構わないが。
  _
( ;゚∀゚)「なんだよこいつ…!!何で急に…」

爪;'ー`)「おい!!左だ!!」
      _
≡⊃ ( ;゚∀゚)「え?……な」

その瞬間、俺は体全体で強烈な衝撃を感じた。
うっかり油断した瞬間に意識が遠のきそうになるほどの威力だ。
少し目を離したばかりに奴の蹴りをもろにくらってしまった。

  _
( ;д )「グハッ……!!ゲホッゲホッ!!」

4、5回のバウンドを繰り返し、倉庫の壁に思い切り叩きつけられた。
口から大量の血が飛び出し、『海底』に付けられた傷もさらに開く。
そして俺はうつ伏せになり倒れ、そのまま動けなくなってしまった。
まずい……逃げなければ。



189: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:38:39 ID:wcccuYUc0
奴はのそのそと近づいてきた。
近距離でみるとまた壮観だ。
これは誰に任せようと『巨人』と命名するだろう。
  _
( ;д )「あ………ああ……」

もはや立ち上がる力すら残されていなかった。
奴が近付いてくるのをただじっと見つめるしかなった。
  _
( ;д )「糞……!!な、なんで…」

その瞬間、奴の強烈な蹴りが俺の腹を捉える。
倉庫の壁は砕け、俺の体はまた宙に浮く。
そこは闇に染まった海の上だった。

爪;'ー`)「おい!大丈夫か!?」

『楽譜』の声が届かない場所まで飛ばされ、やがて海に着水した。

爪;'ー`)「『決闘』!!………おい!!……あ」

( ゚∋゚)「キサマ モ アイツノ ミカタカ」

爪;'ー`)「あ…………………喋れるんだ」



190: 以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/02/19(土) 06:39:01 ID:wcccuYUc0
  _
( ;д )「ガボッ!」

体を上手く動かすことができない。
その上、俺の体には様々な道具が入っている為、見る見るうちに沈んでいく。
俺は一つ一つボタンを外そうと試みるが、手が思う様に動かない。
  _
( ;д )「グッ!!………」

しかし、時間は待ってくれない。
じわじわと苦しみは襲い、呼吸を欲するようになった。
体は動かない。
ついに限界が現れ、俺の手から力が抜けた。
  _
( ;д )「あ………あ……」

意識がだんだんと遠くなっていく。
く……そ……。



ツン……………。




第二章:END



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