( ^ω^)が競技運転士になったようです

144 : ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU [第2話 ツンとバトルとの出会い] :2006/11/01(水) 22:33:00 O
  
 ―――それは、高校1年の夏休みまで遡る。



雷堂「……では、これより秘術を執り行う。カラスより渡されし天津金木。しっかりと構えておくがよい。」
 昔の学生服に身を包んだ少年が、同じ姿をしたもう一人の自分に対し、なにかの儀式を始める旨を伝える。
雷堂「トホカミ エミタマ トホカミ エミタマ……。」
ξ゚听)ξ(wktk)
 呪文が進むにつれ、主人公の少年の足下に赤黒い泥のようなものが現れ、そこから無数の手が伸び、主人公の男の子を包み込んでいく。
雷堂「……ハラヘヤレ ハヤヘラレ」
ξ゚ヮ゚)ξ(wktkが止まらないッ……!)
 主人公の男の子が赤黒い泥のようなものの中に引きずり込まれると同時に泥は消え、呪文を唱えていたもう一人の主人公は、かすかに微笑んだかと思うと、そのまま倒れた。
ξ゚ヮ゚)ξ(どうなるの?これからどうなる!?)
 次の瞬間、エンディングテーマと一緒にスタッフロールが流れ始めた。ξ゚听)ξ「あ……終わっちゃった……。」
 私が今まで観ていたのは、大正20年という架空の時代を舞台にしたオカルティックホラーサスペンスアクションドラマ。
 長い夏休みを利用し、このシリーズを全部観ようとビデオ屋で借りてきたDVDビデオ。



145: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/01(水) 22:53:14 O
  
ξ゚听)ξ「う〜、続きが気になるなぁ……。」
 DVDプレーヤーからディスクを取り出し、ケースに戻し、今までのストーリーを回想する。
 主人公は由緒正しい悪魔召還士の名を継いだ少年で、帝都にはびこる悪魔が絡んだ事件を解決するために東奔西走する役目を帯びている。
 協力者である探偵の事務所で探偵見習いとして働いていた時、一本の電話で一連の事件が始まった。
 帝都のあちこちで奇怪な事件が起こり、それを裏で糸を引いているいるのが帝国陸軍だと突き止めたはいいけど、黒幕を追いつめた途端、罠にはまり異次元まで飛ばされた、というのがここまでの話。
 さっき見ていたシーンは、その次元の自分の協力を仰ぎ、元の世界に帰るシーンだ。
 ふと、部屋の壁に掛けてある丸時計に目をやる。
 1時34分。
 夕飯後からずっと観ていたから、午前1時というコトになる。
ξ゚听)ξ(どうしよう……?続き気になるし……。)
 まだ眠くはない。
 クラブに入ってないせいか、夏休みに入ってから結構だらけた生活してるので、最近昼夜が逆転している。
 少し小腹も空いていたし、ドラマの続きも気になったのでコンビニに行くついでに観たビデオを返却し、次の話の巻を借りてこようという考えに至り、私は部屋着のまま外に繰り出した。



146: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/01(水) 23:13:28 O
  
 家からビデオ屋まで、自転車で10分の距離にある。
 コンビニはそのルート内に数件あるので、適当に決めるコトにする。
 家のガレージから自分の自転車を出し、かごにビデオ屋のレンタル袋を突っ込み、いざビデオ屋へ。
 願わくば、警察に職質されないように。
 5分ほど自転車を走らせると、NR丹生即線の線路が見えて来て、踏み切りを渡るとビデオ屋の看板が見えるはずである。
 けど踏み切りを渡ろうとする少し前に、踏切が鳴り始め、遮断機が行く手を塞いだ。
ξ#゚听)ξ「んもう!こんな時間に電車なんか走らせないでよ!」
 思わずそう毒づくけど、よく考えたら保線作業車とかが線路の安全を確保するために走るのかもしれない。
 そう思って大人しく電車が通過するのを待つコトにしたけど、すぐに違和感に気付いた。
 同じ方向から、2車両分のヘッドライトが迫って来ていたのだ!!
 しかもかなりのスピードで。
ξ;゚听)ξ「な……何!?何コレ!?」



147: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/01(水) 23:36:28 O
  
 暗闇に浮かぶ白いヘッドライトが、走っている列車の姿を一瞬だけ映し出す。
 赤一色の車体は、正面に配置された2枚の大きな傾斜した窓ガラスを基調に、先頭車の1/4ほどを大きな連続窓で視界を確保した流線型のフォルム。
 運転席はどうやら車両の天井よりも上に設置されているようだ。
 ヘッドライトは、丸みを帯びた正面のボディから突き出るように前を向き、その左右のライトの間に方向幕とおぼしき板が張り付いていた。
ξ゚听)ξ(か……かっこいい……。)
 思わず見とれてしまうデザインの電車だった。
 あまりにもその電車のイメージが強すぎて、もう片方の列車のデザインは忘れてしまった。



148: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/01(水) 23:57:04 O
  
 2編成の電車は猛スピードで私の目の前を駆け抜け、そして仁井戸駅に停車したようだ。
 私はビデオ屋に行くのを忘れ、仁井戸駅近くまで自転車を走らせた。
 仁井戸駅ホームに停車した列車から、運転士らしき人が、ホーム上で談笑しているのが見えた。
 そして、そのうちの一人には見覚えがあった。
ξ゚听)ξ(ブーン!?)
 ブーンとは中学からの友人で、高校1年の時は同じクラスに所属していた。
 とりあえず二人の話に聞き耳を立てていると、相手がなにやらブーンのコトを褒めていた。
 ブーンも相手を褒めているみたいだったけど、それはブーンが謙遜しているように見えた。
 最後にブーンが「楽しいバトルだったお!また、機会があったらお手合わせ願うお!」と言って、赤い列車の運転台に登っていき、そのまま穂乃望野(ほのぼの)高原方面に消えていった



150 : ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU [第二話続き] :2006/11/03(金) 21:35:48 O
  



ξ゚听)ξ「結局、あの後ビデオ借りるの忘れるぐらい、衝撃を受けたわ。なんかこう、見た瞬間、血が騒ぐとか、そんな感じがしたの。」
( ^ω^)「………………。」
 ブーンは黙って私の言葉に耳を傾けていた。
ξ゚听)ξ「ネットとか駆使して情報集めて、それが電車同士の公道レースだって知った。ブーンは気付いてないみたいだけど、たまにギャラリーに混じってブーンの応援にも行ったわ。」
 時々いるナンパ野郎がウザかったけどねwと付け加える。
ξ゚听)ξ「速い相手と競ってる時のブーンって、すごくいい表情(かお)してるよね。速い相手と走るのが心底楽しいって顔してる。」
 それがきっかけ、って訳じゃないけど、ブーンを見てるだけで胸がドキドキと高鳴って、そんな自分を見せたくなくって、ついついキツいコト言ったコトもあったっけ……。
 でも……。
ξ///)ξ「あ……あのね、笑わないで訊いて欲しいんだけど、私……そんなブーンを見て、気付いたの。」
ξ///)ξ「私、ブーンのコト、す…………。」
 モルスァー!モルスァー!!



151: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 22:08:26 O
  
( ^ω^),゚Д゚)*゚ー゚)「「「あ、チャイムだ(お)(ゴルァ)」」」
 がくっ!
 勇気を出して告白したのに……!!
ξ///)ξ(もうッ!チャイムのバカッ!神様のバカッ!!あと30秒ぐらい融通利かせなさいよッ!!)
 そうはいってもチャイムは時間を知らせるために予めセットしてある時間に鳴るだけ。チャイムに当たってもしょうがない。
( ^ω^)「それで、ツン。『す』の後はなんだお?」
(,゚Д゚)*゚ー゚)(うはwwwwwwwテラニブスwwwwwwwwww)
 ブーンが続きを促してくる。
 う〜〜〜!!ふいんき(何故か(ry で察しなさいよ!!
ξ///)ξ「よーく耳かっぽじって訊きなさい!あんたのコト、『すごく馬鹿なコトして(^Д^)9mプギャ――――!!きめぇwwwwwwwwwww』って言ったの!!」
 ああッ!また思ってもないコト口走っちゃった!!
( ^ω^)「テラヒドスwwwwwwww」
 だけどブーンは気にした様子もなく、こう語った。
( ^ω^)「確かに、他の人から見たらすごく馬鹿らしくて、滑稽なコトをやってると思うお。だけど、バトルを通して色んな人と心を通わせたし、仲間もたくさんできたお。」
ξ゚听)ξ「………………。」
( ^ω^)「ぶっちゃけ、こんなコトしても自己満足でしかないし、下手したら事故であぼーんするお。だけど、そのギリギリの駆け引きが、今一番楽しいんだお。」



152: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 22:13:18 O
  
( ^ω^)「ブーンには、何一つ光るものがなかったお。勉強もできないし、運動神経だってあまりよくないお。だけど、全部中途半端だったそんなブーンがようやく打ち込めるものがバトルなんだお。一番を目指したい。だからブーンはバトルを続けるんだお。」
ξ゚听)ξ「………。ゴメン、ちょっと言い過ぎたね。」
 例え本音じゃなかったとしても、ブーンをバカにしてしまったコトを私は本気で恥じた。
( ^ω^)「気にしなくていいお。所詮、お遊びだお。でも、ブーンは遊びであっても本気で1番を目指したいんだお。……やっぱりおかしいかお?」
 ブーンの言葉に、私は首を横に振る。
ξ゚ー゚)ξ「ううん、例えどんなものでもあろうと、打ち込めるものがあるなんていいじゃない。私、お世辞とかじゃなくてそう思う。」
 ……だって、私には打ち込めるものなんて、まだないのだから……。
(* ^ω^)「おっおっ、そう言われると嬉しいお。」
 ……こんなコトぐらいでブーンの機嫌がよくなるなら、これからはもっとブーンのいいところを褒めてあげたいな。



153: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 22:30:18 O
  
(*゚ー゚)「あの〜、お二人さん。二人の世界作ってるところ悪いんだけど……。」
ξ///)ξ「……ッツっ!?」
 しぃちゃん達の存在、すっかり忘れてたッ!!!!
(; ^ω^)「なッ……なんだお?」
 心なしか、ブーンが焦ってるような……?
(*゚ー゚)「そろそろ教室に行かないとまずいんじゃないかしら?それにツンちゃん、私達のクラス、1限目体育よ?」
ξ;゚听)ξ「アッ――――!!忘れてた!!」
 体育のジョルジュ長岡先生(本名、長岡庄司)、遅刻するとグラウンドを遅れた時間を分単位で走らされるんだった!!
(,,゚Д゚)「俺らは化学だぞゴルァ!!遅刻は荒巻センコーに人体実験の被験者にされるぞゴルァ!!」
(; ゚ω゚)「ふわッ!!もう電流と神経系統の実験はイヤだお!!」
 どうやらお互い急ぐらしい。
ξ゚听)ξ「じゃあ、お昼休みに、みんなで学食で食べようよ。」
(*゚ー゚)「内藤くんの活躍も、そのときにゆっくりと訊かせてもらうわね♪」
 私達はお互い下駄箱で、それぞれのクラスに向かってダッシュする。
 道すがら、しぃちゃんがブーンとの関係をしつこく訊いてきたけど、あえて黙殺を貫いた。



154: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 22:43:30 O
  



 モルスァー!モルスァー!!
 終業のチャイムが高らかに鳴り響き、今日の授業がすべて滞りなく終わる。
 ブーン達も今日は掃除当番とかじゃないみたいだから、下駄箱前で集合し、皆で駅まで帰るコトになってる。
(*゚ー゚)「ツンちゃん、帰ろ。」
ξ゚听)ξ「うん、ブーン達より早く下駄箱ついて、ジュースでも奢ってもらお。」
(*゚ー゚)「天才ktkr!!」
 机の脇に掛けてあったカバンを手に取り、しぃちゃんとおしゃべりしながら下駄箱まで歩く。
 話題の中心は羽仁野くんとのノロケ話だったのはちょっとだけ辟易したけど……。
( ^ω^)「お、ツンだお。」
 下駄箱にはすでにブーン達が着いていた。
ξ゚听)ξ「残念、ジュースを逃したみたいね。」
(*゚ー゚)「そうだね。」
 それぞれの靴箱の前で上履きから学校指定のローファーに履き替え、生徒玄関前でブーン達と合流する。



156: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 23:03:25 O
  
ξ゚听)ξ「で、勝算はあるの?」
 私はブーンにそう訊く。
( ^ω^)「正直わからないお。相手の情報が皆無に近いお。だから今、ドクオやショボン達に情報収集を頼んでるんだお。」
 ドクオとショボン……。
 昼にブーンが話してくれた、バトルを通じて仲良くなった、他校の生徒だよね。
 ブーン以外にも学生でありながら、競技運転の世界に身を置いてる人がいるなんて、正直、意外だったなぁ……。
 ちなみに、ドクオくんの本名は弄内独雄(もてうち どくお)で、ショボンくんは羽本省吾(はもと しょうご)というらしい。
 さらにショボンくんは、あの「紙オムツからロケットエンジンまで」が売り文句の今北産業の会長の孫らしい。
(*゚ー゚)「なんか、相手のスペックわからないと不安だね。」
( ^ω^)「ホント不気味だお。」
 でも、ブーンならきっと大丈夫な気がする。
 今までブーンのバトル観てきたからわかるけど、ブーンの快進撃を止めるには、文字通り「停める」しかない気がする。
 でも、ブーンは私がギャラリーをするようになってからは、1度しか負けてないから大丈夫よね。
ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン。」
( ^ω^)「お?なんだお?」
ξ゚听)ξ「もう私に隠す必要ないし、今日からはブーンのバトル、堂々と見ていいかな?」



157: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 23:21:01 O
  
 私はおずおずとブーンに訊いてみた。
( ^ω^)「当たり前だお。遠慮せずにブーンの走りを見に来るおwwwwww」
 そしてブーンは、羽仁野くん達の方を向く。
( ^ω^)「ギコ達も見に来るお!!」
 ブーンが二人を誘うけど……。
(*゚ー゚)「ごめんね。ウチ、門限厳しいんだ。だから今度ビデオ貸すから、バトルの様子を運転席から撮影してよね。」
( ^ω^)「把握したおwwwwwギコは来るお?」
(,,゚Д゚)「すまん、行きたいのは山々なんだが、今日の深夜はクーちゃん主演の青春スポ根映画『学校の階段』やるからパスだゴルァ。」
(; ^ω^)「おっ……?あれって今日なのかお?来週だと思ってたお……。」
 クーちゃんとは、芸能人、来栖奈緒「くるす なお」ちゃんのコト。
 長い黒髪や、少し天然なところがウケてる、現役女子高生アイドルでもある。
(; ^ω^)「ギコ、それ録画しといて欲しいお。明日、視聴覚室で見るおwwwww」
(,,゚Д゚)「バトルに負けたら見せないからな、ゴルァ!!」
 遠回しだったけど、羽仁野くんも来れないけど応援してくれるらしい。



158: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/03(金) 23:32:02 O
  
( ^ω^)「おっ、おっ。応援ありがとうだおwwwww」
 皆でブーンを励ましつつ、私達は駅に着いてしまう。
( ^ω^)「今日の勝負は、きっとここが勝負の分かれ目になりそうな気がするお。」
 ブーンがホームから下の線路を見ながら、そうつぶやいた。
 きっと、今ブーンの頭の中で、勝利の方程式やら、必勝の策やらが展開されてるに違いない。
( ^ω^)「……とにかく、やるだけやるお!」



 第2話 おわり



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