( ^ω^)が競技運転士になったようです

7: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU [第4話 卑劣な罠] :2006/11/28(火) 10:53:26 O
  
 社員用通路は線路の中に挟まれるようにあるコンクリートの足場のコトを指す。
 各ホームと通路の境には「危険!指差称呼しろ」の看板が立っている。
 一応左右確認をしながら操車場の方へ歩いていく。
 貨物用待避線に停まってる車両(クルマ)は、ショボンくんの「カシオペア」だと、ドクオくんは説明してくれた。
('A`)「JR東日本が誇る超豪華寝台特急さ。鉄道ファンなら一度は乗ってみたい車両(クルマ)だぜ。」
ξ゚听)ξ「へー。」
川 ゚ -゚)「これをバトルで乗るというコトは、ベンツやフェラーリで峠を攻めるのと同じ意味合いを持つのだが……。」
('A`)「まったく、俺ら庶民には理解できねぇよ。けど、金持ちの道楽で終わらないところがまたすごいんだぜ。」
 確かにさっき、ドクオくんは「俺が走るよりお前が走った方がいい」みたいなコト言ってたなぁ。
('A`)「……着いたぜ。これが俺の愛車『キハ58』国鉄カラーだ。」
 クリーム色のボディに、窓枠に赤い塗装を巻き、正面の貫通扉には他の車両(クルマ)と連結した場合にお互いの車両(クルマ)と行き来できるようにするための幌をつけた、どこか懐かしい雰囲気の列車が、そこにあった。
('A`)「今、扉を開けるな。」
 ドクオくんは乗務員室の扉を開け、中に入ると私達を招き入れる。
 運転席には、レーシングカーなどに使われてるようなバケットシートが二つ、左右に設置してあり、そのうちの1つにドクオくんが座る。



8: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU [第4話 卑劣な罠] :2006/11/28(火) 11:17:53 O
  
川 ゚ -゚)「私は客席の方に行く。」
 客室と運転席を仕切るドアを開け、クーさんは客席のボックスシートの通路側に腰掛ける。
川 ゚ -゚)「ツンさんは右側のバケットシートにきちんとシートベルトを締めて座った方がいいな。」
ξ゚听)ξ「あ、はい。」
 言われた通り右側のシートに腰掛け、シートベルトを締める。
 それを確認すると、ドクオくんはポケットからブレーキハンドルを取り出し、ブレーキ位置にはめ込む。
 続いて起動キーを差し込むと、気動車特有のディーゼルエンジンが奏でる、どこか心地いいエンジン駆動音が車内に響く。
('A`)「一度、推進運転して本線上に出る。」
ξ゚听)ξ「推進運転?」
('A`)「あー、推進運転っつーのは……。」
川 ゚ -゚)「推進運転とは、簡単に言えばバック運転だな。今いる車両が最後尾車両になり、現在最後尾車両になっている車両が先頭車両として走るコトだ。今でも朝の上野駅で見られる光景らさいぞ。」
ξ;゚听)ξ「電車でバックできるの!?」
('A`)「……正確には気動車なんだが……。まぁ、ごくまれにオーバーランした時、列車をホームに戻す時は、大概推進運転だな。」
 ……今まで車掌さんが運転してるんだと思ってた。
 ドクオくんは乗務員室の窓を開け、そこから顔を出しながらゆっくりとしたスピードではあるけど、列車を後ろ向きに走らせる。
 一端本線上に出ると今度はブーンの車両(クルマ)が停車してるホームにゆっくりと進入する。



9: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 11:40:23 O
  
 正面約1m先には、ブーンの車両(クルマ)の最後尾車両が見える。
 自慢のパノラマウィンドウの下にある、列車種別及び行き先表示機(サボ)は、昔ながらの手動式や、回転ドラム形式でなく、電光掲示に変えられ、オレンジ色の光が列車種別と行き先を交互に表示していた。
 ちなみに列車種別は「競技(BATTLE)」で、行き先は帆之望野高原になっている。
('A`)「おい、ブーン。聞こえるか?」
 ドクオくんが無線でブーンに呼びかける。
『(……ザッ)聞こえるお。』
 ノイズ混じりのブーンの声が無線機から聞こえてくる。
 けど、その声音は怒りを含んだ、不愉快そうな雰囲気を含んでいた。
('A`)「……お前、大丈夫かよ。」
『(……ザッ)大丈夫だお。あんな奴には絶対負けないお!!』
('A`)「……少し落ち着け、ブーン。冷静にならないと、勝てるバトルも勝てなくなるぜ?」
『(……ザッ)大丈夫だお、バトルは冷静に行くお。』
 ……ブーン、相当頭にきてるなぁ。
ξ゚听)ξ「ねぇ、私にもブーンと話させて。」
('A`)「ん?ああ。ほら。」
 ドクオくんが無線機の端末を私に手渡してくれる。
ξ゚听)ξ「ブーン、聞こえる?」
『(……ザッ)……ツンかお?大丈夫だお。ブーンは絶対勝つから、大船に行ったつもりでいてくれて構わないお。』
 大船に行ったつもり……どんな気分になれと……。
 って、そんなコトは置いといて。
ξ゚ー゚)ξ「ねぇブーン。私とも賭けをしない?」
『(……ザッ)ツンと賭け、かお?』



10: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 11:58:23 O
  
ξ゚ー゚)ξ「そ。私と賭け。もしブーンが勝ったら、学食のVIPランチ奢ってあげる。」
 VIPランチとは、手ごねハンバーグに特製ステーキ、日替わりスープとパンかライスのセットの美府高校の学食のスペシャルメニュー。
 メニューもスペシャルだけど、値段もまたスペシャルな、全校生徒憧れのメニューだ。
 これを食べてる人は当然羨望の眼差しで見られる。
 ……この間ちょっと臨時収入があって、使い道どうしようか考えてたんだけど、こういう使い方もアリよね。
『(……ザッ)……もし、ブーンが負けたら?』
ξ^ー^)ξ「48の殺人技と52の関節技をフルコースでどうぞ♪」
 ……いつものノリでやってるけど、これでブーンがいつも通りのブーンに戻ってくれるだろうか……?
『(……ザッ)おっおっ、これは負けたら流石に命が危ないおwwwwwwそれに、VIPランチは魅力的だお。だからブーンは絶対勝つおwwwwww』
 ……戻って、くれたかな?
『(……ザッ)ドクオ、すまんかったお。もうブーンは大丈夫だお。いつも通りにバトルを楽しむお。』
 よかった、いつものブーンに戻ったみたい。
『(……ザッ)それとツン。』
ξ゚听)ξ「なあに?」
『(……ザッ)ありがとうだお。』



12: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 12:18:52 O
  
ξ///)ξ「あっ……べ……別にアンタのためじゃないんだからねッ!その……そう!あんなエラの張った男の嫁になるなんてまっぴらだっただけなんだからッ!!」
『(……ザッ)それでもツンのおかげでブーンはいつものブーンに戻るコトができたんだお。だから感謝するんだお。』
ξ///)ξ「……な……なら勝手に感謝してなさいよッ!あんたなんかに感謝されても嬉しくないんだからねッ!!」
('A`)(絵に描いたようなツンデレ……。)
川 ゚ -゚)(……べ……別にドクオの車両(クルマ)に乗って嬉しい訳じゃ……って、私のキャラじゃないな。)
 ……う〜、どうして私はブーンの前じゃ素直になれないんだろ……。
『(……ザッ)あ〜、もしもし?準備ができたなら発車の合図したいんだけど。』
 無線にショボンくんの声が入る。
『(……ザッ)こっちはいつでも平気だお。』
 ブーンがOKを出す。
『(……ザッ)こっちも準備万全ニダ。』
 ニダーのはどうだっていいや。
(´・ω・`)「じゃあ、スタート合図するよ。」
 ショボンくんがブーンとニダーの車両(クルマ)よりも前の方のホームの真ん中に立ち、腕を高く掲げる。
('A`)「いよいよだな。」
(´・ω・`)「5!4!3!……。」
 シパーン!
 ブレーキを緩めた際に車両(クルマ)から空気が吐き出される。
(´・ω・`)「2!」
 プァン!
 警笛が鳴る!
(´・ω・`)「1!」
 ゴクリ。
 私は唾を飲み込む。
(´・ω・`)「GO━━━━!!」



14: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 12:53:17 O
  
 ガタンッ!
 ニダーの485系3000番台が一気に加速する!
 少し遅れてブーンの名鉄7000系もスタートする!
('A`)「俺達も行くぜ。」
 ガリッ!という音とともに、ドクオくんがマスコンを時計回りに回す。
 気動車とは思えない加速で、前の車両(クルマ)を追い掛ける。
ξ゚听)ξ「ブーン!負けたら承知しないからねッ!」
 無線機に向かって私はそう叫ぶ。
 返事はなかったけど、代わりにブーンはミュージックホーンを鳴らしながら、丹生即大橋を渡っていく。
 丹生即大橋を渡ると大きく右にカーブして、市街地方面へと方向が変わる。
 今回のバトルコースは、丹生即線で美府市のいくつかの街を結び、途中の成合(なれあい)駅から帆之望野線に入って、海抜386mの帆之望野高原駅へ向かうというコース。
 当然途中には、トンネルや上り勾配、急カーブなどが点在するテクニカルなコースだ。
 まだ、この線が電化されていなかった頃、この区間はかなりの難所で通っていて、ディーゼル機関車を補機として上り下りをしていたのだけれど、今は電化されてそんな必要もなくなった。
 けど、今でも最大傾斜22.3‰を誇る急坂が控えている。
 上り勾配の最大の難所だけに、パワーの差が勝敗を変えるほどの重要な地点だ。



15: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 13:22:13 O
  
(;'A`)「くっ……、やっぱ速いぜ!視界に収めるだけで精一杯だ。」
 戦況はスタート時とさほど変わらない。
 けどブーンの車両(クルマ)が若干追い上げてるようにも見える。
 この先、美府までは高速コースとして直線区間が長く、カーブもタイトなものは数える程度しかない。
 美府を通過したら、高速コースとテクニカルコースが交互に現れる、ある意味心臓破りのコースとなる。
('A`)「ドリフトするぜ!舌、噛むなよ!!」
 マスコンのノッチを最大に入れたまま、ドクオくんはブレーキを一気に「非常」の位置に持っていく。
 そしてすぐに全緩めにすると、車両(クルマ)が斜めに傾ぐ。
ξ;゚听)ξ「…………ッ!!」
 次の瞬間、列車は前半分を上り車線のレールに乗せ、残りは下り車線にのこしたまま、横滑りするように急なカーブを駆け抜ける。
 競技運転士なら、ほぼ必須となるテクニック「複線ドリフト」。
 レーシングカーが、コーナーを高速で曲がるためにクルマを故意に横滑りさせて走るテクニックに似ているコトから、誰が言い出したかはしらないけどこの呼び方が定着している。
 美府の駅を通過すると、すぐに丹生即川の支流である美府分水路に掛かる鉄橋が飛び込んでくる。
 美府大橋と呼ばれるこの橋は、この地方の名景、絶景100選に選ばれるほどの美しい橋。
 夕日が当たると黄金色に輝く川面と、それを反射する銀色の橋梁は、カップルで見ると幸せになれるという噂まである。



16: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 13:44:57 O
  
 だけど今の時間帯は深夜だ。
 夕日はおろか、月も出ていない。
 今夜は新月なんだろうか。
 美府の次からは、似井戸、羅雲寺(らうんじ)、猛結(もうむす)、加曽区(かそく)、北是(きたこれ)、今北、三魚(さんぎょ)、成合と続く。
 で、成合の次が帆之望野高原なんだけど、成合と帆之望野との駅間は、北海道のローカル線並の間隔がある。
 その分、駅のホームなどの障害物がなく、真っ向勝負ができる区間でもある訳でもある。
ξ゚听)ξ(ブーンはどこで勝負を決めるつもりだろう……?)
 膠着状態のまま、バトルの舞台は北是まで進む。
 このあたりまで来ると、山に来た、というような線形に様変わりする。
 今北駅との間には、全長2341mの今北トンネルというのがある。
 このトンネルは上下線に分かれていて、片方のトンネルに相手が入った場合、煽りを入れるつもりなら同じトンネルに入るのも一つの手だけど、追い抜きのチャンスのあるポイントでもある。
 ニダーは下り車線のトンネルに入ったようだ。
 ブーンは迷うことなく上りのトンネルに進入する。
('A`)「俺らはどっちに入る?」
ξ゚听)ξ「当然、ブーンの後ろ!」
 私達の車両(クルマ)は上り車線のトンネルに突入した。



19: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 21:01:01 O
  
 トンネルに入り、ブーンの車両(クルマ)のテールランプを前方に望む。
 その光を鉄路は冷たく反射する。
 人工的なものしか存在しないというのに、何故か幻想的な雰囲気にとらわれる。
 だけどそれは、一瞬にして打ち破られる!
 きっかけは、通常走行ではあり得ない異音。
 金属になにかが当たったような音と破砕音。
ξ;゚听)ξ「なに!?今の音!!」
川;゚ -゚)「まさか、置き石?」
 置き石!?
(;'A`)「こんなトンネルの中で置き石かよ!?あり得ないだろ、常識的に考えて!!」
川;゚ -゚)「だが、ニダー側が仕組んだ罠という可能性も……。」
 クーさんの言葉を訊き、私は思わず無線でブーンの状況を尋ねる。
ξ;゚听)ξ「ブーン!大丈夫!?ケガとかしてない!?」
『(……ザッ)大丈夫だお。置き石の1つや2つで脱線するほど鈍くは……おお━━━━━ッ!?』
 ドガァンッ!!
 今度はなにかがぶつかったような衝撃音が、無線機と実際の音とのステレオで響く!!
ξ;゚听)ξ「ブーン!?」
 前方を走る車両(クルマ)の車体が激しく上下に揺れる!!
川;゚ -゚)「コンクリートの塊!?」
 客室の窓からそれが見えたのか、クーさんが驚愕の声を上げる!



20: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 21:21:28 O
  
『(……ザッ)ふー、びっくりしたお。この車両(クルマ)でなかったら走行不能になってるところだったおwwwwww』
 無線からはブーンののんきな声が聞こえてくる。
ξ;゚听)ξ「……平気、なの?」
『(……ザッ)少し衝撃はあったけど、至って無事だお。けど衝撃でたぶん連結器とサボはいかれたと思うお。幸い、ライトは無事みたいだし、走行に支障はないお!』
 その言葉を証明するかのように、ブーンの車両(クルマ)はさらにスピードを上げる!
('A`)「流石。ダンプキラーの二つ名は伊達じゃねぇな。」
ξ;゚听)ξ「……また物騒な二つ名ね……。」
川 ゚ ー゚)「かつて踏切で立ち往生していたダンプカーを、前面に装備されてる油圧式ダンパーによって跳ね飛ばした、というコトからその名がついたと言われてる。」
 クーさんが簡単にそう説明する。
ξ゚听)ξ「そっか。ならあんなコンクリートぐらい大したコトないんだね。」
 心配して損しちゃった。
('A`)「けど、下手すりゃ床下の機器が傷つけられたかもしれないコトを考えれば、今回のケースはラッキーだと思わねぇと。」
 ドクオくんもマスコンのノッチを上げる。
 ちょっとした妨害があったけど、すべてブーンには通用しなかったみたいだし、あとはゴールまで一直線。
 スピードとテクニックがものを言う、走り屋のプライドがぶつかり合う、そんなバトル展開になると、私は安心した。
 こんな卑劣な罠を張らなきゃ勝利をつかめないような奴なんかに、本気のブーンに勝てる訳ない。
 そんな油断が誰の中にもあったと思う。



23: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 21:53:00 O
  
 ……しかし、正直相手の卑劣ぶりは私達の予想の斜め上を行っていた。
 ……それは、トンネルを抜け出てすぐに起こった。
 突然、ブーンの車両(クルマ)の尾灯が消えたかと思うと、モーターの駆動音が聞こえなくなり、徐々にブーンの車両(クルマ)のスピードが落ちてくる。
ξ;゚听)ξ「え……なに!?」
 状況を理解しようと必死に頭をフル回転させる。
川;゚ -゚)「な……、架線が切られてる!!」
ξ;゚听)ξ「ええッ!?」
 動力源を断たれたブーンの車両(クルマ)は、現在は慣性で動いているに過ぎない。
 しかも北是〜今北間はトンネルなどで高低差をなくし、勾配が全くと言っていいほどない平坦な区間!!
『(……ザッ)言い忘れてたニダが、北是〜今北間の上り車線に限り、今日から2kmほどのデッドセクションを設けさせてもらうニダ。』
 無線機から、ニダーのいやらしい声が放たれ、同時に、下りの方がやや長い北是トンネルから、ようやくニダーの乗る485系3000番台が顔を出す。
 しかし、一気に抜き去るかと思いきや、こちらとスピードを合わせて併走をする!
 こんなコトをされたら下り車線に移るコトができない!
 しかも相手の車両(クルマ)は9両編成で、ブーンの車両(クルマ)は4両、今乗ってるキハ58は2両編成!
 例え私達の車両(クルマ)が推進運転で下がって、ブーンも同じように後ろに回ろうとしても、ニダーは同じような行動を取るだろう……。
 まさに「詰み」に近い状態。



25: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 22:16:50 O
  
『(……ザッ)頑張れば抜け出せるかもしれないニダよ?』
 無線越しでもわかるぐらい、いやらしい顔をしながら状況を見ているニダーの顔が浮かんでくる。
ξ#゚听)ξ「こんな卑怯なことしてまで、あなたは勝利を求めるの!?」
『(……ザッ)勝てば官軍、ニダwwwww』
ξ#゚听)ξ「こんなコトして、良心は痛まない訳!?こんな勝利に意味なんかあるの!?」
『(……ザッ)両親は本国で暮らしてるニダよ?勝てばウリに二人も嫁が来るニダ。それだけでも勝つ価値があるニダwwwwwww』
ξ#゚听)ξ「こんな勝負、無効よ!!妨害ばかりして勝った気になってるんじゃないわよ!!」
『(……ザッ)無効試合にしても構わないニダよ?その代わりこの車両(クルマ)は返さないニダ。』
川 ゚ -゚)「…………仕方ない、新車の購入を真剣に考慮しよう。」
 クーさんが悲しそうな顔をする。
 ……あの車両(クルマ)に思い入れとかあるんだろうな……。
 だけど、どうしょうもないよ……。
『(……ザッ)おっ、そろそろ止まりそうじゃないニカ?。デッドセクション区間で停車した電車は自走が不可能だから、早く救援機でも呼んだ方がいいニダよ。ウェ━━━━ッハッハ……!!』
 ううッ、悔しい!!
『(……ザッ)大丈夫だお、ツン。意外とまだスピードは出てるし、このまま非電化区間を抜け出せるお。』
 ブーンが自信満々にそう言った矢先……。
『(……ザッ)おや?上り車線になんか落ちてるニダよ?あれは自転車ニカ?』



27: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 22:48:12 O
  
ξ;゚听)ξ「えッ?」
 次の瞬間、ブーンの車両(クルマ)は急ブレーキを掛ける!
『(……ザッ)なッ……なんだおこれは!!』
ξ;゚听)ξ「どうしたの!?ブーン!!」
『(……ザッ)車止めが設置してあるんだお……。自転車に立て掛ける形で車止めのマークが……。つい条件反射で止めちゃったお……。』
ξ;゚听)ξ;'A`);゚ -゚)「な……なんだって━━━━━!?」
 ブーンの車両(クルマ)は完全に停まってしまった。
 それはすなわち、自走するコトが完全に不可能になってしまったというコトだ。
『(……ザッ)停まってしまったニダね。これでウリの勝ちは決まったようなものニダ。ウリは一足先に帆乃望野高原で凱旋してるニダよ。早く救援機呼んで脱出するといいニダ。ウェ━━━━━━ッハッハッハ……。』
 ニダーがまるで動けることを見せつけるかのように、ゆっくりとその場から離れる。
ξ゚听)ξ「…………。」
川 ゚ -゚)「…………。」
('A`)「……終わったな。」
 そんな……!
 純粋にテクニックで負けたならともかく、こんな負け方、納得できない!!
('A`)「一応俺の車両(クルマ)は気動車だし、後ろから押してやりたいけど、それはルール違反っぽいしなぁ……。」
ξ#゚听)ξ「相手のルール違反はいいの!?」
('A`)「……酷な言い方かもしれないが、引っかかった奴は運が悪かったとして諦めるしかない。」
ξ#゚听)ξ「あっそう!じゃあ私がなんとかする!!」
 私はシートベルトを外し、怒りに任せて立ち上がると、そのまま乗務員室から線路へ飛び降り、ブーンの車両(クルマ)の最後尾車両に取り付き、そのまま押そうと試みる。



28: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 23:08:32 O
  
ξ><)ξ「……よいしょッ!!……よいしょッ!!」
 けど、当然ながら1両につき数十tもある鉄の塊は動かない。
 だけど、諦める訳にはいかないッ!!
 今度は前に回り、車体のスカート部分に手を入れて、前から引っ張ろうと試みる。
 ……当然結果は変わらない。
ξ;;)ξ「うッ……ぐすッ……。ブーンは……ブーンはこんなコトなければ勝ってたのに……!!」
 悔しい……。こんなコトでリタイアだなんて……。
ξ;;)ξ「動いて!動いてよこのオンボロ!!」
 なおも引っ張る。
ξ;;)ξ「キャッ……!!」
 手が滑り、そのまま仰向けに倒れる。
ξ;;)ξ「うう〜〜ッ!!」
( ´ω`)「……もう、いいんだおツン。」
 いつの間にかブーンが運転席から降りてきて、私のすぐ側まで来ていた。
( ´ω`)「罠を見抜けなかったブーンが悪いんだお。だからツン、無駄なコトはやめるお……。」
ξ;;)ξ「アンタもボサっとしてないで手伝いなさいよ!男なんだから少しは力あるでしょ!?」
( ´ω`)「……無理だお。軽く見積もっても80t以上のものを生身の人間が動かせる訳ないお……。」
ξ;;)ξ「そんなのやってみなきゃわからないじゃない!!」
( ;ω;)「お願いだから、ブーンなんかのためにツンが辛い目に遭わないで欲しいお!!」
 悔しさをぶつけるように、ブーンは拳を7000系の車体にぶつける!



29: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 23:27:37 O
  
( ;ω;)「このッ!このッ!!ツンを悲しませるこんな車両(クルマ)なんか壊れてしまえばいいんだお!!」
 ブーンは、なおも7000系の車体を殴りつける!
( ;ω;)「このッ!壊れてしまえお!!」
ξ;;)ξ「やめてッ!!」
 私はブーンの拳を封じるために、ブーンの背中に抱き付く。
ξ;;)ξ「お願いだからそんなコトしないでよ……。大事な車両(クルマ)なんでしょ!?それにそんな風に殴ったって、ブーンの拳が痛いだけで、車両(クルマ)を壊すのなんて無理だから!!」
( ;ω;)「ツン……。」
ξ;;)ξ「わかってるから。私だけはブーンが最速だってわかってるからいいでしょ!?こんなのでブーンの経歴に傷なんてつかないし、ブーンが負けたなんて誰も思わないわよ!だから、車両(クルマ)に当たるのやめてよ……。」
( ;ω;)「……ツン……。」
 ブーンはその場に力無く崩れ落ちる。
川 ゚ -゚)「お二人さん、傷を舐め合ってるところ悪いんだが、運転席の方に戻ってはくれないか?」
 クーさんがいつの間にか私達の横にいた。
ξ///)ξ「くっ……クーさん、いつそこに!?」
川 ゚ -゚)「説明は後だ。とにかく二人とも運転席に行け。」
 クーさんに促されるまま、まずブーンが運転席に登り、続いて私が運転席に登る。
 そして軽い衝撃が車両(クルマ)を揺らす。
『(……ザッ)俺の車両(クルマ)はキハ58。気動車だぜ。……なんのためにショボンの奴がわざわざ俺を指名したのか、やっとわかったぜ。』



30: ぬるぽ ◆Qii/KpYmWU :2006/11/28(火) 23:51:16 O
  
 えッ……?
『(……ザッ)つまりショボンの奴、こういう展開になるんじゃないかと予想してた訳だ。なら俺が架線がある場所までブーンの車両(クルマ)押しても、ルール違反は問われないはずだ。』
『(……ザッ)つーか俺はそう解釈した。というよりお前らのそんな姿見せられて、放置プレイしてたら、それじゃ俺は冷血人間だっつーの!てかニダーの奴のやってるコトに比べたら大した違反じゃねーよな。……何つまんねーコトにこだわってたんだろうな、俺。』
( ;ω;)「ドクオ……。」
『(……ザッ)礼だったら、結果で示しやがれ!いいか、俺がしてやれるのはお前の車両(クルマ)を架線がある場所まで押すだけだ。あとはてめぇでなんとかしろよ!』
( ^ω^)「ドクオ……。わかったお!必ず勝つから見てて欲しいお!!」
 ブーンはそう言うと、運転席に着く。
ξ゚听)ξ「……えっと、私、邪魔にならないように客席に行こうか。」
( ^ω^)「どうやって客席に行くつもりなのかお?」
ξ;゚听)ξ「えッ!?そりゃ、一度線路に降りて……。」
( ^ω^)「危険だから却下するお。」
ξ;゚听)ξ「……でも……。」
( ^ω^)「……ツンは、ブーンと一緒にいるのは嫌かお?」
ξ゚听)ξ「そんなコトないッ!!むしろ嬉しい……。」
ξ///)ξ「……って、何言ってんだろ私!この場合の嬉しい、っていうのは、ブーンの走りを特等席で見られるのが嬉しい、って意味なんだから勘違いしないでよッ!!」
( ^ω^)「把握したお。」
ξ///)ξ(把握しないでよッ!!)
 そんなやりとりをブーンとしていると、バチッ!という音とともに、電圧計の針が一気に動き、運転席の計器類に淡い光が宿り、モーターも再び動き出す!
( ^ω^)「システムオールグリーン!追撃開始するお!!」



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