( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:01:38.83 ID:YfJoLcuHO
- 「橋であるか?」
- 遠方より参った友人が手土産に持ってきたのは、とある橋の下、
- 崖から拾い上げたという掌ほどの大きさの石であった。
- 「むう、たしかに不思議な感じはするが……」
- 石を受け取った小柄な老人は、持ち上げたり角度を変えてみたりする。
- じんわりと手に広がる、妙に生暖かくじっとりとした感触が気になった。
- この友人が持ってくるのだから普通の石でないのは確かだろうが、
- だからといって、どんないわくがあるのかは分からない。
- 友人も、気が惹かれるがままに移動していたら、この石の元に辿り着いたそうだ。
- 石自体については、よく分からないと言う。
- 「ふうむ。まあ、ありがたく貰っておくのである――」
- ( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:03:23.04 ID:YfJoLcuHO
- VIP高校という学校がある。
- 生徒数、約700人。教員数、約50人。
- おばけの数――とにかくたくさん。
- (#^ω^)「今日こそ、辞めさせてもらうお!」
- 私立VIP高校、生徒会室。
- 生徒会執行部の会長である内藤ホライゾンは、机の上に、ぴしゃりと封筒を叩きつけた。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:06:07.43 ID:YfJoLcuHO
- 「退部届」と書かれた、その封筒。
- それを持ち上げ1人の女生徒が鼻で笑う。
- ξ゚听)ξ「はん、辞められるはずないでしょ、馬鹿ねぇ」
- 女生徒――生徒会副会長兼会計の出連ツンは封筒を内藤に突き返した。
- ξ゚听)ξ「無理よ、無理無理」
- (#^ω^)「何で――」
- ξ゚听)ξ「理事長が許すわけないし」
- 内藤が話し終える前に言い切ってしまったツンは、「当然だろう」というような顔をしていた。
- その顔と返事に、内藤の表情が怒りから悲しみへと一気に変貌し、
- ( ;ω;)「……おおーん!」
- ついには泣き出した。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:09:07.47 ID:YfJoLcuHO
- ( ;ω;)「そんな、そんなの、ぼ、僕だって分かってるけど――
- でも、でも、もしかしたら、って思ったんだお!
- 試してみなきゃ分かんないおぉぉ!」
- 床に伏せ泣き叫ぶ内藤を、ツンが見下ろす。いや、見下す。
- ξ゚听)ξ「……じゃ、一応、試してみれば?」
- ( ;ω;)「それは頑張ってみるお……」
- 「一応」を強調するツンの言葉に頷いた内藤が顔を上げる、と、同時。
- 突然天井から巨大な顔が現れた。
- ( Ф ω Ф )「そぉおおおおおおおである!
- ツンくんの言うとーり!!」
- (;゚ω゚)ξ;゚听)ξ「GYAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」
- 部屋に轟く絶叫。
- 生徒会2名は二畳分はあろうかという、鬼のような形相の顔を前に、へたり込んだ。
- それから数秒後、顔の主が誰であるか最初に気付いたのはツン。
- ξ;゚听)ξ「あ、りっ、理事長……?」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:12:16.94 ID:YfJoLcuHO
- ( ФωФ)「ご名答である」
- ぽん、と軽やかな音と共に顔が縮み、小柄な老人男性へと変わった。
- 男性は、天井から足を生やしているかのように逆さまにぶら下がっている。
- ツンが、キッと男性を睨みつけた。
- ξ#゚听)ξ「おっ、脅かさないでよ!」
- ( ФωФ)「噂をすれば何とやら。
- 我輩の話をしていたであろー。
- つまり君達が我輩を呼んだのであるよ」
- ξ#゚听)ξ「だからって変な登場しないでよね!」
- ( ФωФ)「何事も刺激が大事。
- ……さて、ホライゾンくん」
- (;^ω^)「お?」
- ( ФωФ)「試してごらん」
- (;^ω^)「……おっ!」
- ツンから返された封筒。
- それを持つ手に力をこめて、内藤は男性の眼前に突き出した。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:15:25.74 ID:YfJoLcuHO
- ごくり。
- 粘つく唾液を飲み下し。
- (;^ω^)「生徒会執行部を――生徒会長を、辞めさせていただきます、お」
- ( ФωФ)「駄目である」
- ( ;ω;)「ちくしょおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
- 撃沈した。
- ――さて、この男性は、私立VIP高校の理事長、杉浦ロマネスク。
- 彼が何故天井から逆さまにぶら下がれるのか。
- 彼の顔が何故先程のように巨大化し、また一瞬で元に戻ったのか。
- その理由は至極簡単で単純明快。
- 彼は、幽霊――おばけなのだ。
- 私立VIP高校。
- ここは、様々なおばけが集う学校。
- 第一話:私立VIP高校七大不思議
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:18:45.69 ID:YfJoLcuHO
- 内藤が首から下げている小さな十字架の首飾りが、ちゃり、と音をたてて揺れた。
- その十字架を握りしめ、内藤がむせび泣く。
- ( ;ω;)「おお……こんなこと、許されますかお、神よ……。
- そもそも僕は生徒会長になんかなりたくなかったのに、いつの間にか生徒会長にさせられて……。
- それというのも、あの理事長が勝手に僕を立候補させて、勝手に決定しやがったからですお……」
- ξ゚听)ξ「めそめそと女々しいわねー。
- 私だって勝手に副会長にさせられたのよ。
- それでもちゃんと受け入れてるんだから、私を見習いなさい、私を」
- ( ФωФ)「そうである。大体、我輩がホライゾン君を生徒会長にしたのには、ちゃんと理由がある」
- ぼりぼりと煎餅をかじり茶を啜るツンと理事長。
- 霊でも普通に飲食は出来るらしい。
- ( ;ω;)「理由……」
- ( ФωФ)「君なら、君たちなら、この学校に蔓延るお化けや怪異を
- まとめることが出来そうだったからであるよ」
- ( ;ω;)「出来ないおぉぉぉぉ!
- んなもん出来てたら僕だってここまで追い詰められてないお!
- っつーか生徒会メンバーと理事長の相手だけで手一杯なんですお!?
- 学校全体の面倒なんか見切れないお!!」
- ξ#゚听)ξ「私の相手が大変だっていうの?」
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:21:33.52 ID:YfJoLcuHO
- 生徒会メンバー、といっても、内藤以外はたったの2人。
- 生徒会長の内藤、副会長兼会計のツン、そして副会長兼書記の――
- ξ゚听)ξ「……あら? そういえばドクオは?」
- きょろきょろ、生徒会室を見渡しながらツンが言う。
- 内藤も同様に視線をあちこちに向けた。
- ( うω;)「……おっ? まだ来てないのかお?
- 教室かどこかの掃除が長引いてるのかも……」
- ξ゚听)ξ「掃除なんか、とっくに終わってて良い時間よ。
- まさかあいつ、また……」
- ツンが眉根を寄せる。
- ゆっくり、内藤と顔を見合わせた。
- (;^ω^)「……」
- ξ;゚听)ξ「……」
- ( ФωФ)「まーた」
- 煎餅を咀嚼し、お茶を一口。
- それから理事長が呟く。
- ( ФωФ)「取り憑かれてたり、し、て」
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:24:31.60 ID:YfJoLcuHO
- にやりと理事長が笑う。
- 恐面の理事長が笑うと、顔だけで悪霊認定されそうなレベルだが、本人にその自覚はない。
- ツンと内藤が同時に立ち上がる。
- そして、生徒会室の扉を開けて廊下へ飛び出した。
- ( ФωФ)「面白そうなのである」
- 理事長も見物のため、すい、と滑るような動きで生徒会室を出た。
- (;^ω^)「有り得るお……十分有り得るお……!」
- ξ;゚听)ξ「あいつは二日に一遍は取り憑かれないと気が済まないのかしら」
- (;^ω^)「ど、ドクオだって取り憑かれたくて取り憑かれてるわけじゃないと思うお」
- 廊下を並んで走りながら、2人は会話を交わす。
- 舌を噛むんじゃないかと思えるほどの勢いだったが、
- 案外早く「それ」を見付けることが出来た。
- (゚A゚)「ウキョォオオオーッ!! オンナオンナオンナァアアアアアアアアッ!!!」
- 从;'ー'从「ふえぇ〜変態だよぉ〜!」
- *(;‘‘)*「あっち行けです! しっ、しっ!!」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:27:16.00 ID:YfJoLcuHO
- 叫びながら数々の女生徒に襲い掛かる1人の男子生徒。
- 彼は、間違いなく内藤とツンの探し人だった。
- 生徒会副会長兼書記、鬱田ドクオである。
- ドクオは次々に目につく女子に抱き着こうとするが、
- 自身の貧弱な身体のおかげで、簡単に返り討ちに遭っている。
- しかし、蹴られ殴られ箒で叩かれようと、すぐに甦る姿には鬼気迫るものがあった。
- (#)A゚メメ)「ウギョォオオオォォバァァアアアーッ!! オンナァ、オンナ、オンナァアアアアアアアアアアアアッ!!!」
- 从#'ー'从「死ねっ、死ねっ!!」
- *(#‘‘)*「消えろカス!!」
- ξ゚听)ξ「……」
- ( ^ω^)「……」
- ξ゚听)ξ「なんか……」
- ( ^ω^)「うん……」
- ξ゚听)ξ「素なんだか霊なんだか分かんないわ」
- ( ^ω^)「うん……」
- 同感であった。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:29:48.88 ID:YfJoLcuHO
- ξ--)ξ「……ま、どっちにしろ何とかしなきゃいけないのは確かだし」
- 溜め息混じりにそう言って、ツンは右手を振る。
- いつの間に持っていたのやら、その手には、神社の神主が持っているような玉串が一つ。
- 内藤は、「頑張ってお」と適当な応援を送り、一歩下がった。
- ツンは、「頑張るわよ」と適当な返事をして、一歩進む。
- 数秒の溜めの後、ツンはドクオに向かって一気に駆け出した。
- ξ#゚听)ξ「ドクオぉおおおっ!」
- (#)A(##)「ウギ?」
- 玉串を振りかぶり。
- ξ#゚听)ξ「悪霊退散っ、出連スペシャル――うぉおらぁぁあっ!」
- そして、
- ぶん殴った。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:31:49.02 ID:YfJoLcuHO
- (゚A(##)「ゲボァアッッッ!!」
- (*ФωФ)「出た! ツン君の豪快除霊である!」
- (;^ω^)「あんたついて来てたんですかお」
- その瞬間、すぽん、とドクオの体から「何か」が抜け出した。
- それを引っ掴み、ツンが睨む。
- <_フ;゚ー゚)フ「……あはは」
- ξ#゚听)ξ「霊の方だったか……。
- ったく、こんな弱っちい色情霊に取り憑かれるとは、流石ドクオだわ」
- 从'ー'从「ふえぇ〜? 霊の仕業だったのぉ〜?」
- *(‘‘)*「てっきり鬱田がついに本能に負けたのかと思ったです」
- ξ゚听)ξ「私もよ。
- ほら、さっさと行きなさい」
- 从'ー'从*(‘‘)*「は〜い」
- <_プー゚)フ「は〜い」
- ξ゚听)ξ「待たんかい」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:34:10.57 ID:YfJoLcuHO
- ツンに言われ、その場を去る女生徒達。
- それについていこうとした霊魂をツンは渾身の力で握りしめた。
- <_フ;゚ー゚)フ「あいだだだだだだだだだ!!
- あっ、女が、女が帰っちゃう! 待って! 待って女!!」
- ξ#゚听)ξ「あんたは今から浄霊しちゃる」
- <_フ;゚ー゚)フ「何でー! ……あ」
- ξ#゚听)ξ「あん?」
- 振り返る霊魂。
- 漫画に出てくるような丸っこい形をしたソレは、ツンを見ると驚いたような顔をした。
- <_プー゚)フ「女だ」
- ξ#゚听)ξ「そうだけど」
- 気付かんかったんかい、と心の中でつっこむツン。
- そのツンは、これから自らに衝撃的な出来事が起こることに、今はまだ気付いていない。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:36:55.61 ID:YfJoLcuHO
- <_プー゚)フ「しかも可愛い女だ」
- ξ#゚听)ξ「そうd……」
- ξ/////)ξ ボンッ!!
- 言葉を理解した瞬間、ツンの顔が真っ赤になった。
- 可愛いなどと、面と向かって言われたことは数度しかない。
- ツンにそんなことを言うのは、せいぜい家族と昔の「あいつ」ぐらいで――
- <_フ*゚ー゚)フ「女ぁあああああああっ!」
- ξ*゚听)ξ「えっ、んむ」
- ――何が悪かったか。
- まず一つ。ドクオが、この霊に取り憑かれ、ツンに除霊してもらったこと。
- 次に一つ。この学校の霊力とツンの霊力により、霊が実体化していたこと。
- さらに一つ。霊が女を求めていたこと。
- 最後の一つ。ツンが油断していたこと。
- それら全てが重なって。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:39:16.53 ID:YfJoLcuHO
- <_フ* )゚*ξ ズキュゥゥ―z__ン
- ツンはファーストキスを奪われたのであった。
- (;^ω^)「あ」
- (#)A(##)
- ( ФωФ)「wwwwwwwwwwww」
- ξ゚听)ξ
- ξ )ξ
- <_フ*>ー<)フ テヘッ☆
- その後どうなったか。
- 三行で説明すると、
- ・ツンぶちぎれ
- ・ブーン必死で止める
- ・霊ボッコボコ
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:41:27.64 ID:YfJoLcuHO
- 場所は戻って生徒会室。
- (;^ω^)「幽霊はノーカン! ノーカンだお!」
- ξ#゚听)ξ「ブチコロス」
- <_フ#メ)ー(#)フ「ごべんばばい」
- (#)'A`)「いてぇ……」
- ( ФωФ)「wwwwwツwwwンくwwんwwwwドンwwwwマイwwwwwww」
- ξ#゚听)ξ「貴様も浄霊する」
- ( ФωФ)「まじ申し訳」
- 玉串で理事長の頭を小突きながら、ツンはドクオに顔を向けた。
- ξ#゚听)ξ「そもそもあんたがこいつ連れてきたんでしょ……?
- どこから持ってきたのよ。いつから憑かれてたのよ」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:43:38.99 ID:YfJoLcuHO
- ('A`)「さあ……朝、学校に着いた頃にはもう後ろにくっついてたからなあ。
- 授業中は何とか踏ん張ってたけど、放課後になって気が緩んだ瞬間、体に入られちまった」
- <_プー(#)フ「すごく取り憑きやすかった」
- ( ФωФ)「そうであろうそうであろう。
- ドクオ君は根っからの霊媒体質であるからして」
- ( ^ω^)「だお」
- 頷きながら、内藤はドクオを――ドクオの後ろに群がる霊たちを一瞥した。
- 小さな動物っぽいのやら、大きな化け物っぽいのやら、様々である。
- ξ#゚听)ξ「……よーし、そいつらまとめて祓ってやるわ」
- ('A`)「八つ当たりのニオイしかしない件について」
- ξ#゚听)ξ「…right.その通り。よく気付いたわね」
- (;'A`)「えっ、ちょっと待」
- 「アギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:46:26.70 ID:YfJoLcuHO
- ドクオがぼこぼこにされている間に少しばかり、この高校、そして彼らについて説明させてもらおう。
- 私立VIP高校は、特異な立地条件のもとに存在している。
- 南に教会。
- 北東に寺。
- 北西に神社。
- この三点を結ぶ線を地図上に引けば、綺麗な正三角形がそこに現れる。
- その正三角形の中心地に、私立VIP高校があるのだ。
- 教会、寺、神社によって出来上がった特殊な結界。
- その結界は霊気に溢れ、妖怪や幽霊の類には心地良いのだそうだ。
- 特に中央に位置するVIP高校などは、その霊気が非常に濃い。
- 故に、霊達が集まりやすい。
- ――結果、恐山のイタコも裸足で逃げ出す大霊場の出来上がり。
- 実際、「幽霊」である杉浦が創立以来百年近く理事長としてやっていられるのは霊気とやらのおかげだろう。
- ただし、そうなると問題も出て来るものだ。
- 最近は校内の霊も増えた上に、霊の動きも活発になっている。
- 「人と霊との共存」を旨としている理事長であれど、霊の活動も度を過ぎれば、
- 生徒へも霊へも害が出るのではないか、という不安に駆られもする。
- それならば、必要になるのは「学校全体を見通し、問題を解決してくれる」存在。
- すなわち生徒会。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:48:40.29 ID:YfJoLcuHO
- そして――もう分かっているかもしれないが。
- (;‐ω‐)「……ドクオに神の御加護があらんことを……」
- 十字架を握り、そう呟く生徒会長。
- 南のヴィップ教会の息子、内藤ホライゾン。
- ξ#゚听)ξ「オラッ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
- 手に持った玉串でドクオを殴り続ける副会長兼会計。
- 北西の出連神社の娘、出連ツン。
- (;,##,..)
- 原型を留めていない副会長兼書記。
- 北東の鬱紫寺の息子、鬱田ドクオ。
- 彼ら三人が半ば強引な形で生徒会役員にされた理由は、それだ。
- 生まれてから今まで、霊気や物の怪に触れて育ち、慣れも耐性もある。
- そのような者たちならば怪奇に塗れたVIP高校の統制がとれるのではないか。
- これが理事長の考えであり、目下内藤を悩ませている事情である。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:51:12.21 ID:YfJoLcuHO
- ( ФωФ)「満足した?」
- ξ#゚听)ξ「二割ぐらい」
- (;^ω^)「ドクオ、大丈夫かお?」
- <_フ;゚ー゚)フ「死んでんじゃね?」
- (※※※)「ギリ生きてる」
- ξ#゚听)ξ「殴り足りない……」
- ( ФωФ)「我輩見んといて」
- ( ^ω^)「あ、理事長成仏したら僕生徒会長やめられるんじゃ……?
- ツン、理事長でストレス発散するといいお」
- ξ#゚听)ξ「うっし」
- (;ФωФ)「タンマ! 待った! 待って!
- ――ぁあぁ、そうだ、じゃあ、じゃあ!
- チャンス! チャンスをあげるのである!!」
- ( ^ω^)「チャンス?」
- 内藤が右手でツンを制す。
- 理事長は、ほっと息をつき、額の汗を拭った。
- 霊でも汗をかくらしい。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:54:49.39 ID:YfJoLcuHO
- ( ФωФ)「この学校の七不思議を知っているかね」
- ξ#゚〜゚)ξ「……男子トイレと女子トイレ、音楽室と……」
- ('A`)「保健室、体育館、校庭」
- <_フ;゚ー゚)フ「復活早っ!!」
- ( ^ω^)「残る一つは……」
- 内藤、ツン、ドクオが一点を指差した。
- 彼らの前で浮遊する、理事長を。
- ( ФωФ)「その通り、七つ目の担当は我輩である!
- ――まあ七不思議とはいっても、この学校は不思議に満ち溢れているので、
- 七大不思議、と言った方が合っているかもしれんのだがな」
- カカカ、と笑う理事長を、内藤たちは冷めた目で見遣る。
- ( ^ω^)「……で、それがどうしたんですかお」
- ( ФωФ)「七大不思議たちは、その証としてバッジを持っておる。
- 我輩も、ほれ」
- 理事長は、懐から取り出したそれを内藤の掌に載せた。
- 青色の、丸いバッジ。ヘキサグラムの中央に、「聖」の字がある。
- 内藤の両脇から、ツンとドクオもバッジを覗き込んだ。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:57:10.92 ID:YfJoLcuHO
- ( ФωФ)「ホライゾン君、生徒手帳は? ペンも」
- ( ^ω^)「ありますお」
- 制服の胸ポケットから生徒手帳とペンを取り出し、理事長に手渡す。
- 理事長は生徒手帳をめくり、メモ用のページを見付けると、そこに名前を書いた。
- ( ФωФ)「杉浦、ロマネス、ク、と。
- ほい」
- (;^ω^)「な、何なんですかお?」
- 返された生徒手帳を受け取りながら内藤が問う。
- ( ФωФ)「こういう風に、七大不思議たちからバッジを貰い、名前を生徒手帳に書いてもらうのである」
- ξ゚听)ξ「何で?」
- ( ФωФ)「それが出来れば、生徒会を辞めても良いのである」
- ξ゚听)ξ「いや、だからなんd」
- ( ^ω^)「さあ行くお。やれ行くお。
- ほらほらツンもドクオもちんたらしないで早く来るお!」
- ξ;゚听)ξ「ちょっ……。
- ……ったく……」
- ('A`)「マンドクセ」
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/05(火) 23:59:32.60 ID:YfJoLcuHO
- 張り切って生徒会室を飛び出した内藤を、ツンとドクオはダラダラと追いかけた。
- それを見送って理事長はほくそ笑む。
- ( ФωФ)「せいぜい頑張るのである」
- ( ^ω^)「まずはどこから行こうかお」
- ('A`)「2階の男子トイレが良いと思う」
- ( ^ω^)「……」
- ξ゚听)ξ「……」
- ('A`)「何だよ」
- ξ゚听)ξ「あんたが行きたいだけでしょ」
- (*>A<)「エヘッ☆」
- ξ゚听)ξ「きもい死ね」
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:01:39.42 ID:AwuCcc5qO
- <_プー゚)フ「男子トイレに何か出るのか?」
- ξ;゚听)ξ「ひっ! な、何でついて来てんのよ!」
- <_プー゚)フ「乙女の唇を奪ってしまったからには責任とって憑くのが漢霊ってものだ」
- ξ#゚听)ξ「憑かんでいい……」
- ギュウウウウ
- ∽_フ;゚ー゚)フ「痛い! 痛い! 絞るな!!」
- (;^ω^)「ま、まあ、一緒に居れば成仏させるきっかけが掴めるかもしれないし……」
- ξ#゚听)ξ「……ふんっ」
- (;^ω^)「じゃ、男子トイレ行くお」
- それから数分後。とある男子トイレ。
- ξ゚听)ξ「ちゃっちゃと終わらせるわよ」
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:04:06.05 ID:AwuCcc5qO
- (;^ω^)「男子トイレに堂々と入るなお……」
- ξ゚听)ξ「いいじゃない、誰か用を足してるでもなしに。
- ほら、早く呼び出しなさいよ」
- (;^ω^)「おー……」
- (*n'A`)n「くーぅるっさぁーんっ!! あっそびっましょぉおおおお!!!!!」
- (;^ω^)「あっ」
- 渋る内藤を押しのけて前に出たドクオは、お決まりの掛け声を口にした。
- 両手を口の脇に添え、大声で、ノリノリで。
- (;^ω^)「あうあう」
- 「はーぁーい」
- 手前から三番目の個室。
- 声がすると共にその戸が開き、ぴんと伸びた足が出現した。
- 網タイツに包まれた、女の右足である。
- (*'∀`)「キタキタキタ━━━━━━━!!!!!」
- ξ゚听)ξ「ドクオきもっ」
- ('A`)
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:07:47.70 ID:AwuCcc5qO
- 「さぁて――」
- 川 ゚ -゚)「――何して遊ぶ?」
- 足が引っ込んだ直後、今度は少女が個室の中から現れた。
- ふわふわと宙に浮かび、内藤たちを見下ろす。
- 「パンツ見えそう」と呟いたドクオに、ツンと内藤は冷ややかな視線を送った。
- セミロングの黒髪、綺麗な顔立ち、豊かな乳房にくびれた腰。
- 内藤たちと大して変わらぬ年齢に思われるが、
- そこらの同年代の少女たちとは明らかに違った色気を放っている。
- 平均以上の容姿のツンだって、彼女には負ける。主に胸。完敗である。
- ξ#゚听)ξ「……相変わらず破廉恥な恰好ですこと」
- 川 ゚ -゚)「おや、ひんぬーのツン。何故男子トイレに?」
- ξ#゚听)ξ「ずっと前からあんたにしたかったわ、その質問」
- さらに彼女が普通の少女とは違う点は、2つ。
- まず1つは彼女が空中に浮かんでいることだが、それは「おばけ」だから、という説明で事足りる。
- もう1つは――その服装。
- セーラー服の前は全開、しかも下着をつけておらず、胸がほぼ見えかけている。
- 丈の短いスカートから伸びる足には網タイツ。ちらりと覗くガーターベルト。
- 気にするなと言う方が無茶だ。
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:10:12.41 ID:AwuCcc5qO
- 川 ゚ -゚)「乳首が見えなければどうということはない。
- なぁ内藤君」
- (*∩ω∩)「コッチムカナイデ」
- (*'A`)「チラリズムのエロス!」
- 川 ゚ -゚)「おっと、さっきの声は君のものだったのか、ドクオ。
- 相変わらず気持ちが悪いな」
- ('A`)
- <_プー゚)フ「なんかえろい」
- 川 ゚ -゚)「ん。何だ、この典型的なオバケの形した奴」
- (*∩ω∩)「ドクオに取り憑いて女の子に手を出した霊魂ですお」
- 川 ゚ -゚)「ふうん、ただの霊か。
- ところでブーン、何をそんなに恥ずかしがっている」
- (*∩ω∩)「目のやり場に困るんだお……」
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:12:57.57 ID:AwuCcc5qO
- 川*゚ -゚)「ういやつめ。ほらほら、見ないと損だぞ。ほれほれ」
- ξ#゚听)ξ「……」
- ギュウウウウウウウウウ
- ∽_フ;゚ー゚)フ「いだだだだだだだだだだ何で絞る!?」
- ξ#゚听)ξ「黙れ」
- 内藤に引っ付く網タイ少女。
- 「トイレの花子さん」。全国的に有名な、学校に住み着く霊――学校霊。
- それに近いと言えば分かるだろうか。
- 彼女は「トイレのクールさん」という。
- 男子トイレの個室、手前から三番目。
- 「クールさん遊びましょう」という掛け声に呼ばれ、現れる。
- いつから居るのか、何故居るのか。それは分からない。分からないが、
- クールという名前から「クー」とあだ名され、生徒たちに親しまれている。
- 特に男子生徒から。
- そんな彼女の最近のお気に入りは、生徒会長、内藤ホライゾン。
- 高校2年生にして未だ初心で奥手な内藤が物珍しいらしい。
- 川 ゚ -゚)「して、何かあったのか?
- 生徒会総出で私のところに来るとは珍しい」
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:15:29.11 ID:AwuCcc5qO
- (;*∩ω‐)「……クーさんに、ちょっと用事が」
- 川*゚ -゚)「ほう。君の言うことならなるべく聞いてやろう」
- ξ#゚听)ξ「ブーンの生徒手帳にあんたの名前書きなさい。
- あとバッジ持ってるでしょう、寄越しなさい。
- それだけよ。おしまい」
- ('A`)(あれ、段々ブーンに殺意沸いてきた)
- <_プー゚)フ「元気出せよ」
- ('A`)「うるせえ死ね。死んでた」
- 内藤からクールを引っぺがし、ツンは早口に目的を告げた。
- クールが小首を傾げる。
- 黒髪が、さらりと揺れた。
- 川 ゚ -゚)「バッジ……これか?」
- セーラー服の襟元を引っ張る。
- 自然と胸を覆っている部分も持ち上がり、内藤は赤らんだ顔を背けた。
- 襟に付けられた、「聖」の字が入ったピンク色の丸いバッジ。
- 色以外は、理事長のものと同じだ。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:18:19.55 ID:AwuCcc5qO
- ξ゚听)ξ「それよ」
- 川 ゚ -゚)「何故?」
- ξ゚听)ξ「理事長に言われたの」
- 川 ゚ -゚)「……ふむ。分かった」
- バッジを外し、ツンに渡す。
- ツンは内藤をつついた。
- ξ゚听)ξ「生徒手帳」
- ( ^ω^)「おっ」
- 内藤は生徒手帳とペンを取り出した。
- それをクールに渡し、理事長の名前が書かれたページの隣を指し示す。
- ( ^ω^)「ここに、名前を」
- 川 ゚ -゚)「把握した」
- 「素直クール」。その5文字が記される。
- 内藤、ツン、ドクオは、クールの苗字を初めて知った。
- 川 ゚ -゚)「書いたぞ。
- ……これは私だけなのか?」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:21:24.55 ID:AwuCcc5qO
- ('A`)「七大不思議全部が対象っス」
- ( ^ω^)「これからみんなのところにも行くんですお」
- クールが片眉を上げた。
- 彼女はあまり表情を変えることがない。冷淡な瞳が、ツンの手のバッジを見据えた。
- 川 ゚ -゚)「そうか。……まあ、頑張れ」
- ξ゚听)ξ「言われなくても」
- ふん、と鼻を鳴らし、ツンが踵を返す。
- 内藤とドクオも後に続いた。
- ( ^ω^)「あの、ありがとうございましたお」
- (*'A`)「また遊びに来ますぅ!!」
- 川 ゚ -゚)「ぜひ来てくれ、ブーン」
- ('A`)「俺は?」
- <_プー゚)フ「次はどこ行くんだ?」
- ξ゚听)ξ「あんた、クーにはあんまり興奮しないのね」
- <_プー゚)フ「俺は生きた女にしか興味ないよ」
- ('A`)「ねえクーさん俺は?」
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:23:47.47 ID:AwuCcc5qO
- 廊下を歩く。
- ( ^ω^)「男子トイレときたら、次は女子トイレだお」
- ξ゚听)ξ「……あそこか……」
- ('A`)「ツンは外で待ってれば?」
- ( ^ω^)「それがいいお」
- ξ゚听)ξ「じゃあ、あんたたち、女子トイレに入るの?
- そもそも『あいつ』、素直に男の言うこと聞くかしら?」
- (;^ω^)「う……」
- ξ゚ー゚)ξ「第一、……私があいつに負けるわけないでしょ?」
- ツンが不敵に微笑む。
- それもそうか、とドクオが頷いた。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:25:51.97 ID:AwuCcc5qO
- そして女子トイレ。
- 内藤達は、その光景に唖然とした。
- (;'A`)「うわ……」
- (;^ω^)「おー……」
- ξ;゚听)ξ「屍々累々、ね」
- <_フ*゚ー゚)フ「女大量!」
- 女子トイレの入口に、何人もの生徒が倒れ伏している。
- そのどれもが女子。
- 内藤は駆け寄って、1人の生徒を抱き起こした。
- (;^ω^)「大丈夫かお!?」
- (* ∀ )「うぅ………………ま……」
- (;^ω^)「お?」
- 内藤が耳を寄せる。
- 抱えられた生徒は、一気に顔を赤くさせると、小さな声で囁いた。
- (*//∀//)「ぁか、まんとかめんさま……」
- そして、がくりと体中から力を抜いた。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:28:09.98 ID:AwuCcc5qO
- (;^ω^)「……」
- ξ゚听)ξ「なんて?」
- (;^ω^)「『赤マント仮面様』、だそうだお」
- ('A`)「やっぱりな」
- <_プー゚)フ「赤マント?」
- ドクオが肩を竦め、ツンが呆れた顔をした。
- 内藤は生徒を床に横たえ、立ち上がる。
- (;^ω^)「……ツン、お願いしていいかお?」
- ξ゚听)ξ「任せなさい」
- 倒れている生徒を踏み越え、ツンは女子トイレへ入った。
- 内藤とドクオ、未だついてきている幽霊は、入口からツンの様子を窺う。
- きゅっ、と床と靴の擦れる音をたてて、ツンは立ち止まった。
- ξ゚听)ξ「……」
- (;^ω^)ハラハラ
- (*'A`)ジョシトイレハァハァ
- <_プー゚)フキメェ
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:31:47.90 ID:AwuCcc5qO
- ξ゚听)ξ「こら、赤マント。……出てきなさい」
- 子供を叱る母親のような口調で、ツンが言う。
- どこかで、衣擦れの音がした。
- 「赤いマントと、青いマント――」
- ひらり。
- 真紅のマントを翻し、どこからか、ツンの目の前に男が現れる。
- (-@∀@)「どっちがいい?」
- ――まず目につくのは、厚いレンズの眼鏡。
- それでも全体を見れば、彼の美しさに気付く。
- 高い身長。
- ウェーブがかった髪。
- 妙な眼鏡をかけていても溢れ出る気品、美しく端正な顔。
- 一目見ただけで、女性を虜にさせる恐ろしい美貌を持つ彼は、
- 七大不思議の1つ、「怪人赤マント仮面」。
- 住み処は女子トイレ。
- ちなみに仮面ではなく何故か眼鏡をつけている。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:33:52.43 ID:AwuCcc5qO
- ξ゚听)ξ「……」
- (;^ω^)ハラハラハラハラ
- ('A`)イケメンコワイイケメンコワイ
- <_プー゚)フウゼェ
- (-@∀@)「どうしたんだい、出連ツン?
- 声も出ないほど見とれtξ゚听)ξ「相変わらず魅力ないなあと思って」モルスァ」
- にこりと笑む赤マントをばっさり切り捨て、ツンは玉串を取り出した。
- その玉串で思いきり殴る。
- (;#)-@∀@)「いったい!!」
- ξ゚听)ξ「あたしにとっちゃ、あんたなんかいもやかぼちゃと一緒よ」
- (;)-@∀@)「い、いも!?」
- ショックを受けましたと言わんばかりの表情の赤マントは、殴られた衝撃で床に座りこんでいた。
- そんな赤マントをツンは見下ろす、いや、見下す。
- ξ゚听)ξ「そうよ。いもマント」
- (;-@∀@)「ぐっ、ぐぬぬぬっ!
- こっ……」
- (;・∀・)つ-@-@「これでどうだぁ!」
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:36:03.23 ID:AwuCcc5qO
- 赤マントが勢い良く眼鏡を外す。
- その素顔の威力といったらない。
- 何せ素顔は彼の奥の手、男でさえも見とれてしまうほど。
- (*^ω^)「……」
- (*'A`)「……」
- <_プー゚)フ「かっけー」
- (;^ω^)「ハッ! ドクオこっち向くお!!」
- (*'A`)「え?」
- (;^ω^)「……ふー、ドクオの顔のおかげで助かったお……。
- 動悸が一瞬で鎮まったお」
- <_プー゚)フ「その顔でも役立つんだなー」
- ('A`)「そろそろ泣くぞ」
- (;・∀・)「ふっ、ふふふふふ、これでいもとは言わせn」
- ξ゚听)ξ「残念ね」
- もう一度、玉串を振りかぶり、
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:38:34.21 ID:AwuCcc5qO
- ξ#゚∀゚)ξ「私は12歳以下の美少年(とブーン)にしか興味ないのよ!!」
- ――渾身の右ストレート。
- 何ともアレな性癖を叫びながら赤マントを殴り飛ばす。
- 顔面から壁に激突し、赤マントはそのままずるずると床に伏せた。
- 泣き声が聞こえる気がするが、みっともなさすぎるので気のせいということにしておこう。
- ( ^ω^)「おぉう……」
- ('A`)「ショタコン強えぇ」
- <_プー゚)フ「12歳以下……だと……」
- ξ--)ξ「ふっ……赤マント、あんたの見た目があと10歳若かったら、危なかったわ……」
- スカートのポケットから、近所の小学校に通う美少年たちの隠し撮り写真を取り出し、
- それに口付けながらツンは呟いた。
- ドクオもさることながら、彼女も結構な変態である。
- ( ;∀;)「わ、私の、私の色仕掛けに引っ掛からないなんて……っ」
- (;^ω^)「あのーヘコんでるところ大変申し訳ないんですが署名とバッジお願いします」
- 2人目、怪人赤マント仮面。
- その名は「モララー」。
- バッジは赤色。
- 出連ツンの性癖により、あっさりゲット。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:41:44.29 ID:AwuCcc5qO
- <_プー゚)フ「次はどこ行くんだ?」
- ( ^ω^)「ここからなら音楽室が近いお」
- ξ゚听)ξ「音楽室か……」
- 次の目的地を音楽室に決定し、3人+霊魂は廊下を歩く。
- 音楽室というものは、どこの学校でも七不思議スポットに数えられやすい。
- ここ、VIP高校もその例に洩れない。
- 音楽室の壁に掛かっている、様々な音楽家の肖像画。
- その中の一つに、「モナー」という名の有名な音楽家がいる。
- 柔和な表情の初老の男性、モナー。どんなに音楽に疎い者でも、彼の名と顔は知っている。
- それほど偉大な音楽家の肖像画が、七大不思議の一つだ。
- 内容はといえば、いたって普通、「肖像画のモナーの目が動く」というだけ。
- そんな地味なものだが、VIP高校の生徒で、この不思議に出会ったことのない者はいない。
- ('A`)「着いた」
- ( ^ω^)「おっ」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:45:59.85 ID:AwuCcc5qO
- 音楽室の前に到着する。
- 中から聞こえてくる合唱部と吹奏楽部の音色に、内藤は耳を澄ませた。
- 今日は2つの部の合同練習の日のようだ。
- VIP高校の合唱部と吹奏楽部のレベルは高い。
- 毎年行われる全国大会では、最低でも3位、調子が良ければ1位という好成績。
- 現在、世界で活躍する音楽家の中には、ここの卒業生が何人もいる。
- それというのも――。
- ( ^ω^)「……失礼しま……」
- ( ´∀`)「みんなもう少し抑えるモナ! 合唱部アルト、少し遅れたモナよ!」
- ――目が動くどころか、肖像画の縁から上半身を乗り出させて指揮棒を振る、
- このモナーのおかげに他ならないであろう。
- ( ´∀`)「……うーん、もう一回、始めからやるモナよ。
- 試しに、一度吹奏楽部だけでやってほしいモナ」
- (゚、゚トソン「はいっ! 合唱部待機!」
- (´・_ゝ・`)「吹奏楽部準備」
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:47:57.31 ID:AwuCcc5qO
- ( ´∀`)「それじゃあ……うん? 内藤君達、どうしたモナ?」
- 内藤達に気付いたらしく、タクトを下ろし、モナーは首を傾げた。
- 吹奏楽部員も、楽器を構える体勢を解く。
- (;^ω^)「あ、お邪魔します……お」
- ξ゚听)ξ「頑張ってるところ悪いわね」
- ( ´∀`)「お話でもあるモナ? あまり時間はとれないモナ……」
- ( ^ω^)「えーっと……僕の生徒手帳に名前を書いて、
- モナーさんの持ってるバッジをくれるだけで良いんですお」
- 内藤が手短に用件だけを告げると、モナーは腕を組み、考える素振りをしながら口を開いた。
- それは容易いことだが、と前置きする。
- ( ´∀`)「ただあげるというのもつまらないモナね」
- ('A`)「……モナーさんなら簡単にくれると思ったのに」
- <_プー゚)フ「めんどくせージジイだなあ」
- (#´∀`)
- ツンが霊魂をひっぱたく。
- が、それでモナーの機嫌が良くなるわけでもなく。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:49:55.08 ID:AwuCcc5qO
- (#´∀`)「歌を」
- (;^ω^)「おっ?」
- (#´∀`)「歌を、歌ってほしいモナ。
- その幽霊君に」
- <_プー゚)フ「俺ー?」
- (#´∀`)「モナが満足できたら、内藤君の頼みを聞くモナ」
- モナーがタクトで霊魂を指すと、霊魂は内藤の頭上で一回転した。
- <_プー゚)フ「歌えば良い?」
- ( ^ω^)「それは、まあ、是非」
- <_プー゚)フ「把握。見てろよ、ツン」
- ξ゚听)ξ「気安く呼ぶな」
- ('A`)「ずいぶん気に入られたみたいだな。
- ドMか、あいつ」
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:53:31.05 ID:AwuCcc5qO
- <_プー゚)フ「何の歌?」
- ( ´∀`)「なんでも、好きな曲で。
- 伴奏は彼らに任せるモナ」
- (´・_ゝ・`)「……だ、そうだ。吹奏楽部、準備」
- 吹奏楽部の部長らしき男子生徒が指示を出す。
- 部員達は、練習を邪魔されたことに怒る様子もなく、むしろこの状況を楽しんでいるようだった。
- ( ^ω^)「無理しなくてもいいお」
- ξ゚听)ξ「失敗したら今度こそ成仏させるわよ」
- ('A`)「で、何歌うの?」
- <_プー゚)フ「ロンドン橋落ちた」
- がくり。
- みんなが脱力する。
- ('A`)「童謡かよ……」
- (;^ω^)「ま、まあ、いいお。
- えっと、じゃあ、お願いするお」
- <_プー゚)フ「おう! あ、悪いけど演奏はいらないぞ」
- 霊の言葉に吹奏楽部員は心なしか残念そうに手を下ろした。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:55:30.44 ID:AwuCcc5qO
- ( ´∀`)「……それじゃあ」
- モナーが合図をする。
- 1、2、3――
- <_プー゚)フ「――ろぉんどんぶりっじぃずふぉーりんだーん……――」
- 稚拙な歌声が響き渡る。
- ツンと内藤が目配せをした。
- ξ゚听)ξ(英語?)
- ( ^ω^)(だおね。発音は悪いけど……)
- くるくる、くるくる。
- あちこち飛び回りながら、霊魂は歌を続けた。
- 聴きながら、内藤は、脳内で日本語のそれを歌う。
- ――ロンドン橋落ちた 落ちた 落ちた
- ロンドン橋落ちた
- マイフェアレディ
- 木と粘土で造れ 造れ 造れ
- 木と粘土で造れ
- マイフェアレディ
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:57:44.35 ID:AwuCcc5qO
- ロンドン橋を修復し、改変していく歌だ。
- 木と粘土では流される、煉瓦とモルタルも崩れる、鉄と鋼ならば曲がるし、金と銀では盗まれる。
- <_プー゚)フ「……せっとぁまんとぅうぉっちおーなーい」
- それなら見張りを夜通し立てようか。
- それでもうたた寝したらどうしよう。
- それならタバコを吸わせよう。
- ――内容は、こんなもの。
- 延々続く同じメロディがようやく止まる。
- <_プー゚)フ「……おしまい」
- 少し、落ち込んだ声で締め括られた。
- 1人だけ拍手をしながら、内藤は首を傾げる。
- 何故――そんなに辛そうなのだ。
- ( ^ω^)「お……」
- ( ;∀`)ドバァ
- (;A;)ドバア
- (;^ω^)「おー……おおおおおおっ!!?
- ど、どうしたんだお2人共!?」
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 00:59:27.24 ID:AwuCcc5qO
- (;A;)「わっかんねぇ……何でだろ……ウウッ」
- ( つ∀;)「……なんだか、物凄く、寂しくなったモナ……」
- (;A;)「俺、歌詞の意味も分かんねえのに、何だよこれ……」
- ξ;゚听)ξ「……な、何なのよ……」
- (;^ω^)
- 人の感情に侵食する?
- 彼は、ただの霊魂ではないのか?
- 内藤は霊魂を見る。
- だが、当の本人はくるくる回転して、呑気にモナーに話しかけていた。
- <_プー゚)フ「これでいいか?」
- ( つ∀`)「……いいモナ。
- 内藤君、生徒手帳を」
- (;^ω^)「は、はいですお」
- モナーは彼と同じ、幽霊だから波長が合いやすいのか?
- となればドクオは?
- ……霊媒体質のせい?
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:01:56.53 ID:AwuCcc5qO
- だが、取り憑くのならまだしも、ただ歌っただけだ。
- それなのにドクオに涙まで流させるとは。
- それほど強い想いが――モナーの言葉通りならば寂しさが――あるということか。
- 彼に何があった?
- 単に女に執着しているだけではない、何かがその身にあるのか。
- ならば、ならば。
- ( ´∀`)「これがバッジモナ」
- (;^ω^)「……あ、はい、ありがとうございますお」
- 生徒手帳と紫色のバッジが内藤の手の平に乗せられる。
- 考え込んでいた内藤は、その感触で我に返った。
- ( ´∀`)「……内藤君」
- モナーが声を潜める。内藤は耳を寄せた。
- ( ´∀`)「彼は、どうしたモナ」
- ( ^ω^)「……分かりませんお。ドクオが拾ってきたんですけど……」
- ( ´∀`)「そうモナか……いや、なら、いいモナ。
- ただ、あの寂しさは……」
- 下手をすれば今すぐにでも悪霊になり得る、と。
- モナーの言葉が内藤の体を冷やりとさせた。
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:04:53.80 ID:AwuCcc5qO
- ミセ*゚ー゚)リ「はい、バッジと名前」
- ('A`)「うわーあっさりー!」
- 保健室。壁にある洗面台。そこに付いている鏡。
- その鏡の中から、モナーのように上半身を乗り出させている、小学生くらいの少女。
- 「鏡の中の少女」こと、ミセリ。
- 主に、保健室にやってくる生徒達の世話や話し相手というのが彼女の仕事だ。
- ミセ*゚ー゚)リ「だって、これがないと会長さんたち困るんでしょう?」
- (*^ω^)「ありがとうだお!」
- オレンジ色のバッジをポケットにしまい、内藤が礼を言う。
- いえいえ、とミセリは微笑んだ。
- ミセ*゚ー゚)リ「いつもお世話になってますから」
- ('A`)「いい子やでぇ……! むしろ世話になってるのはこっちやでぇ……!」
- ξ゚听)ξ「特にあんたはね」
- 貧弱な上、よく霊に取り憑かれるせいで(そしてその延長上にあるツンの除霊のせいで)、
- ドクオは保健室の常連となっている。
- 86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:07:35.01 ID:AwuCcc5qO
- ミセ*゚ー゚)リ「困ったことがあれば、どうぞこの保健室へ」
- ぺこり。ミセリが頭を下げる。
- (*^ω^)「いえいえこちらこそ!」
- ξ゚听)ξ「ありがとね。それじゃさっさと次行くわよ」
- <_プー゚)フ「……」
- ξ゚听)ξ「どうしたのよ」
- <_プー゚)フ「なんでもない」
- ぼーっとミセリを見つめる霊魂に、ツンが訝しげな視線を向ける。
- 霊魂はくるりと一回転してから、一番に保健室を出た。
- (*^ω^)「早く済んで良かったお」
- ('A`)「だなあ」
- ξ゚听)ξ「んで、次は?」
- ( ^ω^)「残るは……体育館とグラウンドだお」
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:09:54.64 ID:AwuCcc5qO
- ξ゚听)ξ「ん、あれか……面倒くさいわね。
- グラウンドのはあんたに任せるわ」
- (;^ω^)「僕かお!?」
- ξ゚听)ξ「あんた見かけによらず足速いもの」
- ('A`)「確かに」
- (;^ω^)「うー……が、頑張るお」
- さて、グラウンド。
- ここには全国的に有名な「歩く二宮尊徳像」がある。
- ……大量に。
- ( <●><●>)スタスタ
- ( ><)スタスタ マッテクダサイナンデス
- (*‘ω‘*)ピョンピョン ポッポ!
- その数、優に10を超える。
- ξ;--)ξ「あのジジイ、またどっかの学校から輸入してきたわね……増えてるわ」
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:12:30.57 ID:AwuCcc5qO
- ジジイ、とは理事長杉浦ロマネスク。
- 彼は全国からいわくつきの物を集めるのを趣味としており、
- この大量の二宮像たちもそんな理事長の趣味によるものだ。
- そしてその中でもとびきり妙な二宮像がいる。
- 彼が、七大不思議が一つ――
- ( ∵) シターンシターンシターン
- ξ;゚听)ξ「出たわ!」
- (;'A`)「『走る二宮尊徳』!!」
- <_プー゚)フ「くだらねー」
- ( ∵) シターンシターンシターン
- ……歩く二宮尊徳像ならぬ、走る二宮尊徳像である。
- その胸に光るは、黄色のバッジ。
- どうやってつけているのかは分からない。
- ξ;゚听)ξ「ブーン早く!」
- (;^ω^)「う、お、ぶ、ブ━━━━ン!!」
- ツンに急かされ、内藤は両腕を広げて駆け出した。
- 91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:15:16.21 ID:AwuCcc5qO
- 内藤は昔から走るのが得意だ。
- その走り方は間抜けなものだが、しかしスピードならば誰にも負けない。
- だが。
- ( ∵) シタタタタタタタタタタ
- (;^ω^)「速っ!!」
- 重たい石像のくせに、内藤をも凌ぐ俊足を持つ二宮尊徳。
- 2人(1人と1体)の距離は広がるばかり。
- ( 'A`)ξ゚听)ξ
- ≡≡≡(;^ω^)オオオオオ ≡≡≡≡( ∵)シタタタタタ
- ('A` )ξ(゚Δ゚ξ
- シタタタタ(∵ )≡≡≡≡ オオオオ…(^ω^;)≡≡≡
- (;^ω^)「ムリポ」
- ξ#゚听)ξ「諦めてんじゃないわよ!」
- ('A`)「頑張れー」
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:18:33.69 ID:AwuCcc5qO
- (∵ )シタタタタタタタタ
- 二宮尊徳像の表情は変わらない。言葉も喋らない。
- だから彼の感情などというものは分からないが――多分優越感、あるいは勝利感に酔っているだろう。
- (∵ )
- ( ∵)
- (^ω^;)ゼヒーゼヒー「ま、待っ……」
- (*∵)
- (∵*)
- 「ばあっ!」<_プー゚)フ(∵;) そ
- (∵;) ズルッ ゴズン!!
- ξ;゚听)ξ「こけた!!」
- (;'A`)「でかした色情霊!」
- (^ω^;)「おっ!!?」
- ( ;)⊂(^ω^;)「ちゅつっ、つk、つかまえたああああっ!!」
- 95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:21:22.01 ID:AwuCcc5qO
- <_プー゚)フ「ふふははは」
- くるくるふわふわ、霊魂が嬉しそうに回る。
- 二宮尊徳は――やはり、何を思っているのか分からない。
- だが、多分、悔しいのではないだろうか。
- (; ω )「ゼーハー、な、名前、と、バッジ……ゼーハー……」
- (;∵)
- 二宮尊徳が、手に持った本――勿論それも石――を広げて内藤に見せる。
- すると、その本に文字が浮かび上がった。
- ( ∵)⊃[わかった]
- ('A`)「え、そうやって話すの?」
- (; ω )「あ、ありが……ありがとう……お……」
- ('A`)「……つーかよ、何であんなに逃げ回ったんだよ、二宮」
- ( ∵)[なんとなく。でも楽しかった]
- ξ゚听)ξ「ですって。今度また追いかけっこしてあげたら?」
- (; ω )「考えとくお……」
- (*∵)
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:24:14.05 ID:AwuCcc5qO
- ( ゚д゚ )
- (;^ω^)
- ( ゚д゚ )「嫌だ」
- (;^ω^)「なっ、何でだお……」
- ξ*゚听)ξ+
- ( ゚д゚ )「そいつが嫌だ」
- ξ*゚听)ξ「あぁら、照れ隠し?
- 恥ずかしがり屋のショタは可愛いわようふふふふ。
- しかも生足露出!」
- 壁 |д゚ )「……」
- (;^ω^)「……ごめんお」
- ここは、体育館。
- 二宮尊徳のバッジと名前――二宮尊徳のくせに「ビコーズ」という名前だった――を手に入れ、
- 生徒会は最後の七大不思議の元にやって来た。
- もう夕暮れ。
- 内藤の顔は、オレンジ色と疲れの色に染まっている。
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:27:44.04 ID:AwuCcc5qO
- 体育館といえば、怪談の舞台になることが多い。
- 夜中に聞こえるボールの弾む音、不慮の事故で亡くなってしまった生徒が現れる、
- 体育倉庫で首を吊った教師の霊などなど。
- そんな体育館で七大不思議をやっているのが――
- ( ゚д゚ )「この間、そいつにやたらと触られたし。やだ」
- この、ミルナだ。
- 一応は、「深夜になると体育館の中を駆け回り、ボールで遊ぶ幽霊」ということになっている。
- しかし、基本的に真っ昼間から姿を現して体育館で遊んでいるし、
- 体育の授業の際には、生徒達に相手をしてもらうこともある。
- ミルナは大きな目をした、小学校3、4年生ほどの年頃に見える少年で、
- まあ、何というか、ツンの好みどストレートであった。
- ξ*゚听)ξ「スキンシップじゃない」
- ('A`)「こんなガキにセクハラしちゃう女の人って……」
- <_プー゚)フ「しかも自覚してない女の人って……」
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:40:27.09 ID:AwuCcc5qO
- (゚д゚ )「ふん」
- ξ*゚听)ξ「そっぽ向かないでこっち見てよ」
- ( ゚д゚ )
- ('A`)「こっちみんな」
- (゚д゚ )
- ξ#゚听)ξつ<'A`)「ごめんちょっと条件反射で」
- 少年――ひいては少年の生足が大好物なツンにとって、Tシャツに短パン姿のミルナは格好の獲物だ。
- それ故にミルナもツンに対して強い警戒心を抱いている。
- ( ´ω`)「……お願いだお……残るはミルナくんだけなんだお……」
- ( ゚д゚ )「……」
- しかし、ミルナが警戒するのはツンのみ。
- 内藤の困り切った顔を見て、少し心が揺れたらしい。
- ツンのいる生徒会に簡単に従うのは嫌。
- だが内藤を困らせるのは望まない。
- ミルナは考えて考えて、そして妥協点を見出だした。
- 103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 01:43:23.68 ID:AwuCcc5qO
- ( ゚д゚ )「勝負するぞ」
- ( ^ω^)「勝負?」
- ( ゚д゚ )「バスケットゴールにボールを10回投げる。
- 1回投げるごとにゴールまでの距離を開いていって、
- 最終的に俺よりシュート出来た数が多ければバッジをやる」
- ( ^ω^)「おっ!」
- ξ゚听)ξ「じゃあ、頑張ってね。ドクオ」
- ( ^ω^)「応援してるお」
- ('A`)「え?」
- ξ゚听)ξ「私、そういうの苦手だし」
- ( ^ω^)「僕はさっきの追いかけっこで疲れてるし」
- ( ^ω^)ξ゚听)ξ「任せた」
- ('A`)「……」
- <_プー゚)フ「がんばれ」
- 105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:00:26.43 ID:AwuCcc5qO
- 経過は省略。結果を言おう。
- ドクオは勝った。
- (;゚д゚ )「な、なっ……」
- ('A`)+「ふふん」
- ミルナは子供といえど、体育館に住み着く幽霊。
- あれしきのゲームで、負けるつもりはなかった。
- ……ない、はずだった。
- (;^ω^)(え、ええ〜……)
- ξ;゚听)ξ(何あいつのスナイパーっぷり)
- <_フ*゚ー゚)フ「すっげえ! 絶対ダメだと思ってた!!」
- ('A`)「俺を甘く見てもらっちゃ困るぜ……」
- 振り返り、笑みを浮かべるドクオ。
- 爽やかに見せたいのだろうが、普通に気持ちが悪い。
- 彼が立つのは、反対側に位置するゴールの下。最後の10球目を投じた場所だ。
- ミルナは9球目、10球目の二つを外してしまったのだが、ドクオは1つも外すことなく、
- 10球全てをゴールに通した。
- バスケ部でも何でもないドクオが。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:04:14.00 ID:AwuCcc5qO
- ('A`)「ふっ……。
- 穴に何かをぶち込むってエロいな、と思っただけで俺の集中力は跳ね上がるのさ」
- 「ただの変態じゃねーか!」ξ#゚听)ξ≡⊃)A`)「その通りです!」
- ( ゚д゚ )「穴……?」
- (;^ω^)「何でもない、何でもないお、ミルナ君が大人になれば分かるお」
- <_プー゚)フ「幽霊も大人になるのか?」
- とりあえず、ミルナの持つ緑色のバッジと署名、ゲットだ。
- ( ФωФ)「うわまじで集めてるし。なに本気にしてんの」
- ( ^ω^)「おい」
- ( ФωФ)「冗談です」
- 生徒会室。
- お茶を啜っていた理事長は、七色のバッジと署名を見て、しみじみ頷いた。
- 109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:07:38.06 ID:AwuCcc5qO
- ( ФωФ)「流石である。やはり君はこの学校を取り仕切るのに相応しい」
- ( ^ω^)「褒めていただきありがとうございますお。
- でも、これで僕は生徒会長を辞められるんですおね?」
- ( ФωФ)「うむ……」
- (*^ω^)
- 今にも踊り出しそうな空気が内藤の周りを取り囲む。
- その隣で、ツンは納得いかない顔をしていた。
- ('A`)「どうしたよツン」
- ξ゚听)ξ「初めにも訊きたかったんだけど……どうしてバッジと名前を集めさせたの?」
- (*^ω^)「お?」
- ξ゚听)ξ「だって、これでおしまいなんて無意味よ」
- ( ФωФ)「……」
- にやり。
- 理事長が笑む。
- ( ФωФ)「説明するのである」
- そして、懐から一枚の紙を取り出した。
- 校舎の見取り図だ。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:12:33.50 ID:AwuCcc5qO
- ( ФωФ)「ここにクール君、ここにモララー君、ここに……」
- 次々と、七大不思議たちのいた場所に印が付けられていく。
- クールの男子トイレ、モララーの女子トイレ、モナーの音楽室、
- ミセリの保健室、ビコーズのグラウンド、ミルナの体育館。
- 最後に、理事長の部屋――理事長室。
- ( ФωФ)「そしてクール君からミルナ君までの印を全て通る線を引く。
- その線を上から見ると、こうなるのである」
- 見取り図を裏返し、真っ白なそこへ一つの図形を描く。
- ('A`)「あ……」
- <_プー゚)フ「おお!」
- 六つの点をつなぐ線。
- 一筆書きのヘキサグラムが出来上がる。
- 中央には、理事長室。
- ( ФωФ)「我輩を中心にして、他の七大不思議達に強い結界を張ってもらっているのである。
- 君達の家が張る結界の中で、さらに結界を作る。
- そうすることで、この霊場を安定させているのであるよ」
- ξ゚听)ξ「つまり……七大不思議がこの学校の秩序を保ってるわけ?」
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:16:36.61 ID:AwuCcc5qO
- ( ФωФ)「そうである。
- しかし、我輩を含め、彼らには秩序を保てても作り出すことはできない。
- ここにいるのは霊だけではないであろう。生きている人間……生徒や教師がたくさんいるから」
- ('A`)「……生きている人間には、生きている人間が必要なわけか」
- ( ФωФ)「その通り。
- 霊と人間は絶対的に違う故に、霊だけによる統制や、人だけによる統制は無理である。
- となれば、欲するべきは、霊と人間が協力し合って皆をまとめること。
- そうしてようやく『人と霊との共存』が成り立つのである。
- だから我輩は考えた」
- ( ^ω^)「……何をですかお?」
- ( ФωФ)「霊と人間が協力し合う方法を。
- そんなとき、目をつけたのがこのバッジ」
- 色とりどりのバッジ。
- 手の平の上のそれを、内藤は見下ろした。
- ( ФωФ)「バッジは、七大不思議の目印であり、また、パワーを溜め込むのにも使われる。
- このバッジを人間が所有すれば、
- 常に七大不思議を傍に置いているも同然」
- ξ゚听)ξ「……なんか大体予想ついてきたわ」
- ('A`)「同じく」
- ( ^ω^)「え?」
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:20:14.92 ID:AwuCcc5qO
- ( ФωФ)「そしてバッジ――力を手渡した上で、さらに対象の所有物に名前を書くということは、
- まさに『契約』の完了である。
- 契約完了と共に、ついに霊と協力し合う人間が誕生する!」
- (;^ω^)「え? え?
- なんだかすごく嫌な予感が」
- ('A`)「……ブーン。
- お前の生徒手帳を契約書、そしてバッジがあいつらの印鑑だとしよう」
- (;^ω^)「お?」
- ('A`)「契約書に名前を書き、印鑑を押す。
- これで契約は結ばれるよな。
- 契約の内容は、そうだな……」
- <_プー゚)フ「?」
- ('A`)「……『あなたが望めば、それがいついかなるときであろうと、
- 私の力をもって協力することを誓います』
- ってなところか」
- ξ゚听)ξ「理事長のことだから、
- 『その代わり、あなたも私に協力してください』
- なんてのも付け足されるわね」
- ( ^ω^)「えっ」
- (*ФωФ)「正解!!」
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:23:19.25 ID:AwuCcc5qO
- ( ^ω^)「えっ」
- ( ФωФ)「七大不思議達の力を上手く扱うには、強い霊力を持つ者が相応しい。
- 聖なる力を持つ者たち――
- 聖徒会こそが!!」
- ( ^ω^)「……聖」
- ξ゚听)ξ「徒」
- ('A`)「会」
- <_プー゚)フ「ほうほう」
- 内藤の中の嫌な予感が、確信めいたものに変容していく。
- バッジを持つ手に汗が浮かぶ。
- 理事長が、しっかりと内藤の肩を掴んだ。
- (*ФωФ)「そういうわけである、ホライゾン君!
- 七大不思議たちは聖徒会執行部の部員、
- そして君は今日から――」
- (;^ω^)
- (*ФωФ)「生徒会長を辞め、
- 『聖徒会』の会長となるのである!!」
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/06(水) 02:26:26.19 ID:AwuCcc5qO
- (;^ω^)
- (;゚ω゚)
- (;゚ω゚)「えええええええええええええええ
- えええええええええええええええ
- !!!!!!!!!!!!!!1」
- 生徒会長改め、聖徒会長、内藤ホライゾン。
- 彼の受難はまだまだ終わらない。
- ξ゚听)ξ「じゃあ私は聖徒会副会長兼会計ね」
- ('A`)「俺は聖徒会副会長兼書記か」
- (;゚ω゚)「いや何で2人とも普通に受け入れてんの!!?」
- 第一話:終わり
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