( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:43:24.98 ID:x/ZR47KzO
- 放課後、聖徒会室。
- 聖徒会長内藤ホライゾン、副会長兼会計出連ツン、副会長兼書記鬱田ドクオの3人が、
- 三者三様、思い思いに時間を潰していたときのことである。
- ξ゚听)ξ「ドクオ、何座?」
- ('A`)「んあ? 何だよ急に」
- ξ゚听)ξ「占い」
- 雑誌の占いコーナーを開いているツンに、ドクオは胡散臭そうな目を向けた。
- ('A`)「星座占いねえ……当たったことなんざねえよそんなん。
- そういうの信じちゃうの?」
- ξ゚听)ξ「そりゃあね、私だって信じちゃいないけどさあ」
- ツンの持つ雑誌は、心霊写真や怪談、果ては未確認生命体などを取り扱う、いわばオカルト雑誌。
- オカルトマニアの幽霊、VIP高校理事長の杉浦ロマネスクから借りたものだ。
- その週刊雑誌に載っている占いコーナーには、一週間――月曜から日曜まで――の運勢が、
- 曜日ごとに逐一記載されている。
- さらに星座に加え、男女別に分けられているため、占いだけで雑誌の6ページは消費している。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:46:54.74 ID:x/ZR47KzO
- ('A`)「どうだか」
- ξ゚听)ξ「で、何座?」
- ('A`)「蠍」
- ξ゚听)ξ「蠍座の男の……月曜は……えーっと、
- 『可愛い女の子との出会いがありそう。
- もしかしたら一生を添い遂げる伴侶になるかも……。
- ラッキーカラーは黒、ラッキープレイスはお寺』」
- +('A`)「ちょっと家帰るわ」
- ( ^ω^)「めちゃくちゃ信じてるじゃないかお」
- +('A`)「いやいや、急用を思い出しただけさ。
- じゃあ、また明日ね! 内藤君、出連さん。
- ははは、明日の俺は、今までの俺とは一味違うかもよ?」
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:49:00.49 ID:x/ZR47KzO
- 手早く荷物を纏め、そそくさとドクオは聖徒会室を後にした。
- それを見送る内藤とツンは、すっかり呆れ顔だ。
- ( ФωФ)「ドクオ君の女の子に対する執念は物凄いものであるな」
- <_プー゚)フ「今日も、女子生徒の盗撮ばっかしてたからな!」
- ぬっ、と天井から顔を出した理事長と、ツンに憑いて回る浮遊霊、エクストが言う。
- あいつは色欲の塊だから、と、ツンは投げやりな返事をした。
- 第三話:寺生まれってすごい 前編
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:52:43.85 ID:x/ZR47KzO
- ('A`)「冷静になって考えてみりゃあよ」
- 実家、「鬱紫寺」の前。
- 石段を竹箒で掃きながら、ドクオは一人ごちた。
- ('A`)「夕方に、可愛い女の子が寺なんかに来るかっつーの……。
- せいぜい来るにしても、爺さん婆さんか、霊ぐらいだろ。
- ……くっそー、掃除も任されるし……帰ってくるだけ無駄だった……」
- そうは言うものの、やはり多少なりとも期待はしてしまう。
- ドクオは、しっかりラッキーカラーとやらの黒い甚平に着替えていた。
- ('A`)「クーさんと遊んでる方が良かったぜ……」
- 箒の柄に顎を乗せ、VIP高校七大不思議の一つ、「トイレのクールさん」に思いを馳せる。
- 「……あのう……」
- (*'A`)「クーさんったら照れ屋だからすぐ隠れちゃうけど、そこがまた可愛いんだよなぁ〜」
- あんな破廉恥な格好をしておいて「照れ屋」なんてこともないだろう。
- もちろん、クールは単にドクオが気持ち悪いから逃げているだけだ。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:55:32.93 ID:x/ZR47KzO
- 「すみませぇん」
- (*'A`)「おっとっと、あのけしからんボディを想像しただけで息子が」
- 「あのぉっ!!」
- ('A`)「んぇ?」
- o川*゚ー゚)o「あぁ、やっと気付いてくれた……」
- ('A`)
- 2つに結った栗色の髪。
- 純白のブラウスと、その上のクリーム色のベスト。
- 短めのプリーツスカート。
- 紺色のハイソックス。
- 低めの身長、人並み程度の胸。
- 真っ白な肌、小さな顔。
- 頬に差す朱、赤みの強いぷるぷるの唇。
- くりくりとした、大きな目。
- ドクオと同い年か、それよりいくらか下か――。
- 可愛らしい……いや、非常に愛くるしい少女が、ドクオの立つ石段の2段下から彼を見上げていた。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 20:58:10.85 ID:x/ZR47KzO
- (゚A゚)「ききききききききききききききききききききキタアアアアアアアアァァァァァァァイァアア!!!!!!!!!!!!」
- o川;゚ー゚)o「へっ」
- (゚A゚)「こんにちはお嬢さん僕は鬱田ドクオといいます高校2年生ですウッヒョッヒョッヒョ!!
- このお寺の息子ですムヒヒヒヒヒお嬢さんお名前は!?」
- o川;゚ー゚)o「き、キュート……」
- ('∀`)「キュートさんですね名前までかっわいいいいい!!」
- o川*゚ー゚)o「……可愛い?」
- ('∀`)「可愛い! 可愛い!!」
- o川*^ー^)o「んひひ、ありがとう、ドクオさん」
- ('A`)「ウッ フゥ…」
- ('A`)「……おっと、私としたことが取り乱してしまいました。失礼、キュートさん」
- o川*゚ー゚)o「なんか急に落ち着いたね」
- ('A`)「賢者タイmいや何でもありません」
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:00:55.23 ID:x/ZR47KzO
- o川*゚ー゚)o「……ん、何か、変な匂いがしますね……生臭いというかイカくさいというか」
- ('A`)「そうですか? 気のせいでしょう」
- o川*゚ー゚)o「?」
- ('A`)「ところで、何か寺に用事が?」
- o川*゚ー゚)o「あー……えーっと。
- ……お寺に、というより――」
- ('A`)「え? ――!」
- o川* ー )o「あなたの体に」
- 箒がドクオの手を離れる。
- からからと音を立てながら、箒は石段を転げ落ちていった。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:03:50.77 ID:x/ZR47KzO
- 『蠍座・男 火曜日:新しい自分を発見できそう。人気者になれちゃうかも!』
- ('∀`)ノ「おーっす、みんなおはよう!」
- 朝8時半、VIP高校。
- 自分のクラスに入るなり、ドクオは元気よく挨拶をした。
- 賑やかだった教室の空気が、一瞬固まる。
- それもそうだろう、いつもならば、ドクオは誰にも気付かれないほどの薄い存在感でもって、
- 静かに教室に入り、静かに自分の席に着き、静かに授業の開始を待つ男なのだ。
- ('∀`)「おはよう、えーっと……またんき!」
- (;・∀ ・)「お、おう」
- ('∀`)「よーっす、……フサ!」
- ミ,,゚Д゚彡「おはようだからー」
- それが今、彼はとても良い笑顔をして、目につくクラスメートの肩を叩き、挨拶を交わしている。
- 異常と言ってもいい。
- (;*゚ー゚)(ドクオ君どうしたんだろう……?)
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:06:52.05 ID:x/ZR47KzO
- ('∀`)「しぃさんもおはよう!」
- (*゚ー゚)「あ、うん、おはよう」
- クラスメートの違和感はここで最高値を記録した。
- ――あのドクオが、至って普通に、女子に挨拶をしている――
- いやらしい表情は皆無、長時間見つめることもなく、ただただ普通に、挨拶をした。
- (;´ー`)「何か悪いものでも食べたんじゃネーかヨ、鬱田」
- *(;‘‘)*「そ、そうですそうです、おかしいです」
- ('∀`)「そんなことないない、いつもの俺だよ」
- *(;‘‘)*「どこがです!?」
- ――放課後、聖徒会室。
- ξ゚听)ξ「……ドクオの奴、遅いわね」
- ( ^ω^)「おー」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:09:52.91 ID:x/ZR47KzO
- ξ゚听)ξ「まさかまたその辺の浮遊霊に取り憑かれてるんじゃないでしょうね」
- <_プー゚)フ「有り得るな」
- 「超」が付くほどの霊媒体質のドクオは、非常に霊に憑かれやすい。
- そのため、授業中に体を乗っ取られ、そのままどこかへ行ってしまうこともしばしば。
- 今日もそれだろうと各々で判断し、放置することにした。
- 凶悪な霊に取り憑かれていれば、大体ツンが気配を察知できる。
- どうせ祓うのもツンだ。ツンが動かない限り、ドクオは放置されっぱなし。
- <_プー゚)フ「俺もドクオに取り憑きたーい。人間の体で動き回りたーい」
- 丸っこい霊体のエクストは、駄々をこねるようにわしゃわしゃとツンの髪を掻き交ぜた。
- エクストいわく、ふわふわして気持ちいいらしい。
- ξ;゚听)ξ「あーっ! ちょ、やめなさい!
- ……あーあ、ぐしゃぐしゃ……」
- エクストを殴りつけて遠ざけ、ツンは髪を手櫛で直した。
- 確認しようと、コンパクトを取り出す。
- ミセ*゚ー゚)リ「ツンさんっ!」
- ξ;゚听)ξ「きゃああああっ!?」
- (;^ω^)「おっ!? ミセリちゃん!?」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:12:49.26 ID:x/ZR47KzO
- 鏡を開くなり飛び出してきたのは、七大不思議「鏡の中の少女」、ミセリ。
- 驚きのあまりコンパクトを放り投げそうになりつつも、ツンは何とかそれを抑えた。
- 鏡とはいえコンパクト。ミセリは、本来より小さな姿になっている。
- ξ;゚听)ξ「びっくりした……何、どうしたのよ」
- ミセ*゚ー゚)リ「ドクオさん来てますか?」
- ( ^ω^)「来てないお」
- <_プー゚)フ「ドクオに何かあったのか?」
- ミセ*゚ー゚)リ「あ、いえ……。
- さっき校内を回っているとき、たまたまドクオさんを見かけたんですが……」
- ξ゚听)ξ「何かに憑かれてた?」
- ミセ*゚ー゚)リ「それは分かりませんが……」
- ミセリは、言葉を選んでいるのか、口元に手を当て、首を傾げた。
- はっきり言っちゃえば、とツンが促すと、ミセリは頷き、口を開いた。
- ミセ*゚ー゚)リ「クラスメートの方達と一緒に歩いてたんです」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:15:38.61 ID:x/ZR47KzO
- ( ^ω^)「……それは」
- ξ゚听)ξ「不良に絡まれてる的な?」
- <_プー゚)フ「真っ先にそんな発想される辺り悲しい男だよなドクオ」
- ミセ;゚ー゚)リ「いえいえ、そういう感じではなくて……」
- ξ゚听)ξ「じゃあどんな感じなのよ」
- ミセ*゚ー゚)リ「えっと……、とても、仲が良さそうでした。
- 2、3人のクラスメートの方と、楽しそうにお話しして、笑ってましたよ」
- ξ゚听)ξ「……ミセリちゃん、いつも保健室での仕事やパトロールで働き詰めだから、
- きっと疲れてるのよ。たまにはゆっくりお休み」
- ミセ;゚ー゚)リ「見間違いではないと思います……」
- 慈しむようなツンの眼差しにミセリが怯む。
- ツンの肩を叩き、内藤は苦笑した。
- (;^ω^)「ま、まあまあ。きっと、何かきっかけがあって仲良くなれたんじゃないかお?
- ドクオにクラスメートの友達がいないの、僕も前から気になってたし……。
- 僕ら以外の友達が出来るのは、別に悪いことじゃないお」
- ξ;゚听)ξ「でも、だからって……」
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:18:35.38 ID:x/ZR47KzO
- ミセ;゚ー゚)リ「私も、お友達が増えるに越したことはないと考えていますが……。
- けれど、やっぱり急なことだったので少し驚いてしまって」
- <_プー゚)フ「何かドクオ可哀相」
- ( ^ω^)「ミセリちゃん、教えてくれてありがとうだお。
- とにかくドクオは悪霊に憑かれてるわけじゃなさそうだし、
- いずれ聖徒会室に来るだろうから、そのときに色々訊いてみるお」
- ミセ*゚ー゚)リ「はい……。お願いします。
- ……これは無いことを願いますが、もしも……万が一、
- ドクオさんにとって悪い影響がありそうでしたら、私にもお話ししてくれるよう、
- 頼んでおいていただけますか?」
- ( ^ω^)「悪い影響?」
- ξ゚听)ξ「そのクラスメートとやらが、仲良くしてると見せかけて、
- ドクオをパシリや何やらに利用しようとしてるかもしれないしね。
- 正直、私はその可能性が一番高いと思うわ」
- ( ^ω^)「……分かったお」
- ――結局。
- その日、ドクオが聖徒会室にやってくることはなかった。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:22:02.52 ID:x/ZR47KzO
- 『蠍座・男 水曜日:仲間と喧嘩しちゃいそう。人の助言には耳を傾けて。』
- ξ゚听)ξ「……」
- 放課後、聖徒会室に向かう廊下。
- ツンは絶句し、立ち尽くしていた。
- というのも、眼前に信じられぬ光景が広がっているからである。
- ミ,,゚Д゚彡「ドクオーカラオケ行くからー。一緒に行くからー」
- ('∀`)「おう、行こう行こう」
- (・∀ ・)「俺バイト代入ったから多少は奢っちゃる」
- ドクオと3人の男子生徒が仲よさ気に歩いていた。
- 昨日ミセリが言っていたのは、これだろう。
- ('(゚∀゚∩「女の子も誘おうよ!」
- ('∀`)「ははは、それも良い――」
- ξ;゚听)ξ「……ドクオ?」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:25:43.50 ID:x/ZR47KzO
- ('∀`)「ん? ああ、――……ツン、か?」
- ξ;゚听)ξ「あんた……」
- ('∀`)「……あ。――あー、あー。そうか、そうだな。
- 悪いなみんな、俺、えっと……聖徒会? の、仕事あるからカラオケ行けねーや」
- ミ,,゚Д゚彡「えー」
- (・∀ ・)「じゃあまた今度な」
- ('(゚∀゚∩「お仕事頑張ってだよ!」
- ('∀`)「おう、また明日!」
- 手を振り、男子生徒達は帰っていった。
- 妙な顔をしてツンはそれを見送る。
- ツンが想像していたより、ずっと、彼らとドクオは普通の友人のように接していたのだ。
- ('∀`)「――さて、ツン、行こうぜ」
- ξ;゚听)ξ「……ドクオ」
- ('∀`)「ん?」
- 42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:29:17.72 ID:x/ZR47KzO
- 何より変なのは、この笑顔。
- にやにや、ならともかく、にこにこと笑うドクオなどそうそう見れるものではない。
- ξ;゚听)ξ「あんた、変よ」
- ('∀`)「どこが? いつも通りだよ」
- ξ;゚听)ξ「そんな、普通の男子みたいなの変よ。
- ……あんた、いつもは気持ち悪いし女好きだし気持ち悪いし
- 他人にビビるし気持ち悪いし気持ち悪いし気持ち悪いじゃない」
- (;'∀`)「酷すぎるだろ!」
- ξ゚听)ξ「……」
- 数秒前のドクオが脳裏を過ぎる。
- ツンの名前を呼んだときも、聖徒会のことを口にしたときも、
- 何だか妙な間があった。
- 記憶を一から探すように。
- ξ゚听)ξ「ドクオ。聖徒会長の名前とあだ名は?」
- ('∀`)「はあ? そりゃ、……内藤、えっと、ホライゾンに、あだ名は――ブーン!」
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:32:48.48 ID:x/ZR47KzO
- ξ゚听)ξ「七大不思議のバッジ回収のとき、一番始めに行ったのは誰のところ? バッジの色は?」
- ('∀`)「……バッジ……――トイレ。
- 男子トイレの、えー……クール……クールさんだ。
- バッジはたしか、……ピンク、かな」
- ξ゚听)ξ「……」
- ツンは溜め息を一つ漏らし、肩にかけていた鞄を床に置いた。
- そして玉串を取り出し、ドクオを睨む。
- ξ゚听)ξ「あんたがクーのことを答えるのにそんなに時間がかかるなんてね。
- まるで、何も知らない誰かがドクオの記憶から必死に探し出してるみたい」
- (;'A`)「……!」
- ξ゚听)ξ「それとも、『みたい』じゃなくて、本当にそうなのかしら?
- もしかしてドクオの中に入ってるのかもね?
- 何も知らない誰かさんが」
- 構える。
- いつもツンが「乱暴なお祓い」をするときの構え。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:35:34.40 ID:x/ZR47KzO
- (;'A`)「まっ、待って……!」
- ξ#゚听)ξ「爽やかなドクオなんて普段より数倍気持ち悪いのよ!!
- 喰らいなさい、出連スーパースペシャルぅうううううう!!」
- (;゚A゚)「たわばっ!!!!」
- がら空きのボディに叩きつけられる玉串。
- ドクオが吹っ飛ばされると同時に、ドクオの体から何かが抜け出ていった。
- (;゚A゚)「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
- o川;゚д゚)o「ぎゃわわわわわーっ!!」
- ごろごろ、ドクオと何かが廊下を転がっていく。
- ようやく止まったのは、ツンが立つ位置からずっと向こうにある壁にぶち当たったときだった。
- ξ゚听)ξ「やーっぱり何か憑いてたのね」
- (;'A`)「え? え? 何か体がすごく痛い」
- o川 +д+)o キュー
- (;'A`)「あれ? キュートさん? ん?」
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:38:43.94 ID:x/ZR47KzO
- ξ゚听)ξ「ドクオ、あんた、そいつに取り憑かれてたのよ。
- ……あらま、女の子? 珍しいわね」
- (;'A`)「と、取り憑かれて……!?
- じゃ、じゃあ、キュートさんって幽霊なのか!?」
- o川 +д+)o キュー
- (;^ω^)「えーっと、つまり、キュートさん? が、
- ドクオの体と記憶を借りてクラスメート達と仲良くなっていた、と」
- o川*゚ー゚)o「はい……ごめんなさい……」
- ('A`)「運命の出会いだと思ってたのに……幽霊……」
- 聖徒会室。
- ツンに引っ張られてきたドクオと、ドクオに取り憑いていたキュートの2人から
- 事情を聞いて、内藤は困ったといわんばかりの表情で小さな小さな溜め息をついた。
- (;^ω^)「うーん……せっかくドクオにクラスメートの友達が出来たと安心してたのに……」
- ('A`)「お前は俺の担任か」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:41:39.97 ID:x/ZR47KzO
- ξ゚听)ξ「とにかく、こいつ完璧に除霊するけど、いいわね?」
- o川;゚ー゚)o「ひっ……!」
- (;'A`)「ま、待て待て、ツン!」
- ξ゚听)ξ「あんた、こいつに良いように利用されたのよ? 無断で。
- 腹立たないわけ?」
- (;'A`)「別に、腹は立ててねえよ。
- ……まあ、あのさ、キュートさん、悪い人には思えないし……。
- 事情を聞いてやってもいいんじゃないか?」
- <_プー゚)フ「可愛い女に弱いからなー、ドクオ」
- ξ゚听)ξ「……じゃあ、その『事情』って何なの?」
- ツンは、腕を組み、椅子に腰掛けた。
- そんなツンに、キュートは、ちらりと視線を送る。
- 口をもごもごと動かしているが、声にはなっていない。
- ( ^ω^)「キュートさん?」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:44:31.03 ID:x/ZR47KzO
- o川*゚ー゚)o「……言いたくない、です」
- ξ--)ξ「……よし」
- (;'A`)「っ!?」
- ξ゚听)ξ「除霊開始!!」
- (;'A`)「待て待て待て待て待ってくれえええええええ!!」
- o川;゚ー゚)o「わっ……わあああああああっ!!?」
- 勢いよく立ち上がり玉串を振りかぶるツン。
- キュートを庇うように、ドクオはツンとキュートの間に割り込んだ。
- 当然、玉串はドクオに直撃する。
- (#)'A`)「あはぁんっ!!」
- ξ#゚听)ξ「邪魔しないでよ、この色魔!」
- (#'A`)「うるせえ! てめえは短絡的すぎんだよ!
- 第一、美少年を前にしたときのお前の方が俺より気持ち悪いわ!!」
- (;^ω^)「ちょっと2人共……!!」
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:47:47.99 ID:x/ZR47KzO
- ξ#゚听)ξ「可愛い女の子だからって甘やかして良いもんじゃないのよ、霊ってのは!
- こうして死んだ後もそこら辺うろちょろしてるのなんて、
- この世に未練たらたらな奴か、怨み持ってる奴ぐらいしかいないわよ!」
- (#'A`)「それでも、まだ悪霊じゃないだろ!
- むしろ、悪霊になる前に望みを叶えてやって、未練をなくしてやれば……」
- ξ#゚听)ξ「その『望み』を言わないじゃないの、この子は!
- もし『望み』を叶えるために誰かの犠牲が必要だったらどうするの?
- ――あんたの体に害があったらどうするのよ!」
- (;^ω^)「おっ、落ち着くお! 喧嘩はやめなさい!」
- <_プー゚)フ「オカンか」
- o川;゚ー゚)o アワアワ
- (#'A`)「俺の体は俺のもんだ!
- たとえ俺の身が危険だろうと、お前にとやかく言われる筋合いはねえよ!」
- ξ#゚听)ξ「――分からない男ね、あんたも……!
- ……こうなったら完全実力行使、問答無用でいかせてもらうわよ」
- (#'A`)「来いやぁ!」
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:50:58.27 ID:x/ZR47KzO
- ξ#゚听)ξ「ふんっ、あんたが私に勝てるとでも思ってるわけ!?」
- (#'A`)「お前こそ、俺がやられっぱなしでいると思ってんのか!?」
- ドクオは数歩下がると、スラックスのポケットから数珠を取り出し、手首に引っ掛けた。
- そして胸ポケットからは筆ペンと――
- ξ#゚听)ξ「……何それ、お札?」
- 真っ白な紙切れ。
- (#'A`)「ふっふっふ……本気出したるぜ……」
- ξ#゚听)ξ「札ごときで何が出来るっていうの?
- おふざけもいい加減にしなさいよ!」
- ツンがドクオに向かって駆け出す。
- ドクオは、さらさらと札に二つの漢字を書き付けた。
- そしてその札を、ツンの前へ掲げる。
- 札に書かれているのは――「丑寅」の文字。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:54:04.25 ID:x/ZR47KzO
- (#'A`)「『どこでも鬼門(ドア)』!」
- ξ;゚听)ξ「はっ?」
- 瞬間。
- ぶわっ、と音をたてそうな勢いで、凄まじい数の妖怪や霊魂が札から飛び出した。
- ξ;゚听)ξ「きゃああああああああっ!」
- (;^ω^)「ツン!」
- それらは、全て前方にいるツンに覆いかぶさった。
- ツンが床に転び、身動きがとれなくなる。
- なんとか玉串をゆるく一振りするも、小さな妖怪が一匹消えるだけ。
- とてもじゃないが祓いきれない。
- (*ФωФ)「ふぉおおおお! 寺の息子と神社の娘の戦いとは貴重である!
- ドクオ君、視線こっち!」
- (;^ω^)「あんた何してんですかお!?」
- <_プー゚)フ「やめて、撮影は事務所を通してからにして下さい!」
- (;^ω^)「エクストも、どうでもいいところにノらないの!」
- いつの間にいたのやら、興奮した様子の理事長がカメラのシャッターを物凄い速度で切っていた。
- こういうときの理事長の嗅覚は目を見張るものがある。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 21:57:27.71 ID:x/ZR47KzO
- ('A`)「キュートさん、今の内!」
- o川;゚ー゚)o「え……でも……」
- ('A`)「早く!」
- o川;゚ー゚)o「……うん!」
- ( Ф3Ф)「えー、もう終わりであるかー? ぶーぶー」
- ( ^ω^)「お前帰れ」
- ξ;゚听)ξ「ど、ドクオ待ちなさっ……あー、もーっ! 重いー!!」
- この隙にと、ドクオはキュートの手を引き、聖徒会室を飛び出した。
- ツンは悔しそうな顔をして、諦めたのか、ぐったりと体から力を抜いた。
- (;^ω^)「えーっと、ツン……」
- ξ;゚听)ξ「……て」
- (;^ω^)「え?」
- ξ;///)ξ「……助けて」
- (;^ω^)「あ、わ、分かったお」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:00:50.22 ID:x/ZR47KzO
- 頷き、内藤は鞄から7つのバッジを取り出した。
- ヘキサグラムの中心に「聖」と描かれたデザインは共通しているが、色は様々。
- その中から赤いバッジを選び、掲げる。
- ( ^ω^)「聖徒会執行部に告ぐ!
- VIP高等学校聖徒会室において事件発生!
- 至急現場に来られたし!
- 赤マント仮面モララー、
- ――召喚(ウェルカム)!!」
- ――内藤が口にするは、七大不思議のメンバーを呼び出す呪文。
- 赤いバッジは、赤マント仮面モララーのもの。
- しかし。
- (;^ω^)「……あ、あれ?」
- しん、と静まり返る。バッジは何の反応も示さなかった。
- 彼が現れる気配は、微塵もない。
- (;^ω^)「理事長……」
- ( ФωФ)「ふむ、どうやら赤マント君は手が離せない用事があるらしい。
- ――そのバッジを使い、先程のような呪文を唱えれば、確かに呼び出すことはできる。
- しかしそれも、向こうの同意があって漸く成功するのであるよ」
- ( ^ω^)「同意、ですかお?」
- 68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:03:34.48 ID:x/ZR47KzO
- ( ФωФ)「そう。相手の都合を無視するのは良くないことである。
- ホライゾン君とて、入浴中に問答無用で召喚されてはたまったものではなかろう」
- (;^ω^)「……たしかに、そうですお」
- ( ФωФ)「だから、ホライゾン君が呼んでも、相手が『行きたくない』と思っていれば、
- 召喚することは不可能なのであるよ」
- <_プー゚)フ「行きたくない?」
- ( ФωФ)「ほらww最近wwwジョルジュ君がwww赤マント君につきまとってwwwるwからww
- 赤マント君もお疲れwwwみたいwwでwww休みたがってたのでwあwwwるwwwww」
- ━━━その頃の赤マント━━━
- (;-@∀@)「うーん……うーん……よ、寄るなぁ……!」
- _
- (*゚∀゚)「寝ながらうなされてるアニキかっこいい」
- ━━━━━━━━━━━━━━
- ( ^ω^)「草自重」
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:06:34.26 ID:x/ZR47KzO
- ξ#゚听)ξ「いいから早く何とかしなさい! 潰れる!」
- <_プー゚)フ「元より、潰れるような乳も無いから大丈夫だ」
- ξ゚听)ξ
- (;ФωФ)「ツン君の怒りが限界を通り越してしまったあまりに表情が消えた!」
- (;^ω^)「えーっと……クーさん……」
- <_プー゚)フ「なんかクーはツンを助けずに笑って眺めてそう」
- (;^ω^)「え……えーっと……」
- 続いて手にしたのは、紫色のバッジ。
- ( ^ω^)「聖徒会執行部に告ぐ!
- VIP高等学校聖徒会室において事件発生!
- 至急現場に来られたし!
- 音楽室のモナー、
- ――召喚!!」
- 瞬間、紫色の光が室内を照らす。
- それが弾けて消えると、そこに――
- ( ´∀`)「お呼びモナ?」
- ――額縁から上半身を乗り出している初老の男性、モナーが現れた。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:09:45.58 ID:x/ZR47KzO
- 額縁は宙に浮かび、内藤の目の高さにある。
- モナーは内藤の足元で妖怪にまみれているツンを見て、すぐに状況を理解したようだった。
- ξ;゚听)ξ「うああっ! こら、餓鬼、頭かじるな! 痛い痛い!」
- (;^ω^)「……何とかしてくださいお」
- (;´∀`)「物凄い状況モナね……いやまあ頑張るけどさ……」
- 指揮棒を右手に持ち、深呼吸を一つ。
- そして、指揮棒を振り始める。
- ( ^ω^)「……?」
- <_プー゚)フ「曲だ……」
- すると――どこからともなく、ささやかな旋律が流れてきた。
- 柔らかで、そっと通り過ぎていく音色。
- ( ´∀`)「素直に、音楽に心を預けるモナ。
- 流れるままに、響くままに。
- 苦しむ心に安らぎを。痛む心に安らぎを。
- みんな、安心していいモナ」
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:12:10.93 ID:x/ZR47KzO
- ――ぽぉん、と。
- 鍵盤を弾く音が響くと、それと同時に物の怪が一体、弾けるように消えた。
- (*ФωФ)=3 ムッハー「カメラカメラ!」
- ( ^ω^)(やだ……ちょっと心が安らかになってたのに興奮してる理事長が目に入って台なし……)
- ぽぉん、ぽぉん。
- 音がする度、彼らは消えていく。
- それを何度か繰り返して――
- ( ´∀`)「――君で最後モナ」
- 一際強く音が鳴り、ツンの上から全ての妖怪が消え去った。
- 内藤が思わず拍手をする。
- (*^ω^)「すごいお!」
- ( ´∀`)「久々にやったからちょっと緊張したモナ。
- ツン君、大丈夫モナ?」
- ξ*゚听)ξ「……ぅ」
- ( ´∀`)「モナ?」
- ξ*///)ξ「あ、……ありがとう……」
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:15:24.89 ID:x/ZR47KzO
- ( ^ω^)「ツンは照れ屋だお」
- ( ´∀`)「モナモナ、可愛らしいモナ」
- <_プー゚)フ「可愛いよな!」
- ( ФωФ)「はいはい可愛い可愛い」
- ゴメリッ
- 「すげえ腹立つ!」ξ#゚听)ξ≡⊃)ФωФ)「やっぱこうじゃないとっ!!」
- ( ^ω^)「モナーさん、助かりましたお。
- ありがとうございましたお」
- ( ´∀`)「気にしなくていいモナー。
- お役に立てて何よりモナ」
- と、そこで、モナーは不思議そうな顔をして辺りを見渡した。
- ( ´∀`)「そういえばドクオ君は?」
- ξ#゚听)ξ「ああーっ! そうよ、あいつ、ドクオ!
- あの野郎、絶対許さないんだから……!」
- (;^ω^)「どうどう」
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:18:55.85 ID:x/ZR47KzO
- (;´∀`)「ど、どうしたモナ……」
- <_プー゚)フ「んー、説明してもいいの?」
- ( ^ω^)「いいお。出来れば、モナーさんにも何かしら協力してもらいたいし」
- ( ´∀`)「?」
- (;'A`)「はあ、はあ……」
- o川*゚ー゚)o「あ、ありがとう、ドクオさん」
- 学校を出た2人は、ドクオの家、鬱紫寺へと来ていた。
- ドクオは何とか息を整え、キュートに答える。
- (;'A`)「いやいや、ごめんな、ツンの奴が……。
- あいつも悪い奴じゃないんだけど」
- o川*゚ー゚)o「……悪いのは、私の方だよ。
- 勝手にドクオさんの体を借りて、勝手に学校に行って……」
- そこまで言うと、キュートは首を傾げた。
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:22:14.10 ID:x/ZR47KzO
- o川*゚ー゚)o「ドクオさん、どうして怒らないの?」
- (;'A`)「え?」
- o川*゚ー゚)o「一番私に怒るべきなのは、ドクオさんなのに……」
- (;'A`)「ああ、そりゃあ……」
- 腕で汗を拭い、ドクオは顔を背けた。
- ちらりとキュートを一瞥し、頬を染める。
- (*'A`)「……幽霊でも、可愛い女の子を放っちゃおけないだろ……」
- o川*゚ -゚)o「……」
- キュートは、しばらくドクオを見つめて、
- o川*゚ー゚)o「……ありがとう」
- と、笑った。
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:25:46.66 ID:x/ZR47KzO
- 『蠍座・男 木曜日:ひとまず仲間との関係は修復出来そう。でも、他人に優しくしすぎるのも程々に。』
- ξ゚听)ξ「来たわね」
- 朝、昇降口。
- ドクオのクラスの下駄箱を背にし、ツンが仁王立ちしている。
- その隣には内藤。
- (;^ω^)「おはようお」
- ('A`)「……」
- ξ゚听)ξ「手短に済ませるわよ。
- 誰か入ってる?」
- ('A`)「俺だよ。ドクオだ。
- 誰もいない」
- ひらひら、ドクオが両手を振る。
- ツンは眉を顰め、訊ねた。
- ξ゚听)ξ「クーの胸のサイズは?」
- ('A`)「Eカップ」
- 即答だった。
- 88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:28:25.27 ID:x/ZR47KzO
- (;^ω^)「……合ってるのかお?」
- ξ゚听)ξ「知らないけど……あんなに素早く答えられちゃうとね。
- 最近クーと会ったのは、いつ?」
- ('A`)「先週の金曜日。
- カメラで撮影しようとしたけどシャッターを切る瞬間にクールさんがどこかに行った」
- (;^ω^)「先週の金曜日……たしかに聖徒会に遅れてるお」
- ξ゚听)ξ「正真正銘ドクオだとして、あの子はどこに行ったの?」
- ('A`)「いなくなっちまったよ。
- 俺に迷惑をかけて申し訳ない、って」
- ξ゚听)ξ「……そう。分かったわ。
- 疑って悪かったわね」
- ('A`)「いいよ、別に」
- ツンと内藤が下駄箱の前から移動する。
- 靴を履き替え、ドクオは教室へ向かった。
- ( ^ω^)「ドクオー、授業ちゃんと受けるんだおー、寝ちゃ駄目だおー」
- ('A`)「はいはい」
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:31:32.88 ID:x/ZR47KzO
- ξ゚听)ξ「……じゃあ、また放課後にね」
- ('A`)「はいよ」
- しばらく歩き、ツン達から離れた頃。
- ドクオは、顔を苦々しげに歪めた。
- ('A`)(……ごめんなさい、内藤さん、ツンさん。
- そしてありがとう、ドクオさん)
- ――昨夜。
- ドクオの部屋で、ドクオとキュートは、あることを決めた。
- ('A`)『学校にいる間だけ、俺の体を貸す』
- o川*゚ー゚)o『いいの?』
- ('A`)『キュートさんがそれで良ければ』
- o川*゚ー゚)o『良い、それでも良い。
- ドクオさんの体を借りて少し学校生活を送るだけで良いの』
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:34:22.93 ID:x/ZR47KzO
- ('A`)『ただし金曜の放課後までだ。
- その後はキュートさんを俺の爺ちゃんにでも任せることになるから、
- 明日と明後日の間に、しっかり目的を果たしておくように』
- o川*゚ー゚)o『でも、そんな、私は嬉しいけど……私が悪いことをするかもって、思わないの?』
- ('A`)『俺はキュートさんを信じてる。
- キュートさんが俺の体を悪用するとは思わないよ』
- o川*゚ー゚)o『ドクオさん……』
- ('A`)『で、ブーンとツンをどうするか、だけど。
- ツンは俺に質問して、キュートさんが取り憑いていると見抜いた。
- っつーことは、あいつはキュートさんの気配を感知するのは出来ないってわけだ』
- o川*゚ー゚)o『それじゃあ、私がドクオさんを完璧に演じればいいんだね』
- ('A`)『そう。とりあえずは明日の朝までに、ツンに訊かれそうな質問と答えをまとめておこう。
- でも簡単なことじゃないだろうから、後々ボロが出てくると思う。
- だから、一度ツンをやり過ごしたら、なるべく2人に接触しないようにした方がいい。
- クラスは離れてるから滅多に会わない筈。
- 聖徒会は……顔を出さないと怪しまれるな。
- 放課後になったら、人目のない所で俺の体から離れてほしい。それから俺が聖徒会室に行く』
- o川*゚ー゚)o『分かった……それじゃあ、お願いします。
- ……本当に、ありがとう――』
- 96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:37:31.28 ID:x/ZR47KzO
- ――何とかツンの目は誤魔化せた。
- このまま、今日と明日の二日間、ドクオとして学校を楽しむことが出来そうだ。
- ('A`)(二日……二日だけでも、充分……)
- ドクオは――キュートは、教室へ踏み込んだ。
- ξ゚听)ξ「……怪し過ぎるわ」
- ( ^ω^)「お? 何がだお?」
- 一方、内藤とツンのクラス。
- 内藤の隣の席に着き、ツンは憮然とした表情で呟いた。
- ξ゚听)ξ「さっきのドクオ。キュートはいなくなったって言うけど、
- 昨日あんなに庇っていたキュートがいなくなるのを、ドクオが許すかしら」
- ( ^ω^)「うーん、たしかに……」
- ξ゚听)ξ「もしかしたら、あれはやっぱりキュートが入ってたかもしれないわね。
- ドクオと前以て打ち合わせしていたのかも」
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:40:09.34 ID:x/ZR47KzO
- ( ^ω^)「じゃあ、どうするんだお?」
- ξ゚听)ξ「後でぶん殴ってみるわ」
- (;^ω^)「もっと、こう、安全な方法はないのかお」
- ξ゚听)ξ「ないわ」
- (;^ω^)「ないんだ……」
- さて、放課後。
- キュートは、昨夜ドクオに言われた通り、人目につかないところへ移動しようと席を立った。
- そこへ、クラスメートが声をかける。
- (・∀ ・)「ドクオー」
- ('A`)「あ……悪い、あの、聖徒会があるから」
- (・∀ ・)「それそれ。お前、毎日聖徒会あるじゃん?
- だからさ、土曜日に遊ぼうぜー」
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:43:20.00 ID:x/ZR47KzO
- ('A`)「土曜日?」
- (・∀ ・)「土曜日なら聖徒会ないだろ?
- フサたちも誘ってさ、どこか行こうよ」
- ('A`)「……う、ん」
- (*・∀ ・)「よっしゃー。
- 携帯出して携帯、アドレス交換しよう」
- ('A`)「あ、ああ」
- ポケットからドクオの携帯電話を取り出す。
- キュートは少し躊躇したものの、結局、アドレスの交換をしてしまった。
- 男子トイレに誰もいないのを確認し、キュートはドクオの体からするりと抜けた。
- ('A`)「――……ああ、放課後か……」
- o川*゚ー゚)o「体、大丈夫?」
- ('A`)「平気平気。
- んじゃ、俺は聖徒会室に行くけど――キュートさんは、そうだな……ちょっと来てくれ」
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:46:43.49 ID:x/ZR47KzO
- トイレを出て、廊下を歩く。
- そして階段をいくつも上り、ようやく辿り着いた。
- ドクオは屋上に繋がるドアを指差して、向こうへ行くよう促す。
- ('A`)「屋上は鍵が閉まってるから、誰も来ないと思う。
- キュートさんは幽霊だし向こうに抜けられるよな?
- 後で迎えに来るから、それまで待っててくれ」
- o川*゚ー゚)o「うん、分かった」
- ('A`)「それじゃあ行ってくる」
- o川*゚ー゚)o「行ってらっしゃい!」
- ('A`)「……」
- o川*゚ー゚)o「?」
- (*'A`)「何か新婚さんみたい……」
- o川;゚ー゚)o「そ、そうかな」
- 107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:50:05.82 ID:x/ZR47KzO
- ( ^ω^)「おっ、ドクオ」
- ('A`)「おう、ブーn……」
- ゴリメル
- 「おんどりゃあ!!」ξ゚听)ξ≡⊃)A`)「んおんどぅう!!!!!」
- 聖徒会室へ入るなり、ドクオの右頬を衝撃が襲う。
- もはやお馴染みになっている、ツンの玉串アタックだ。
- (;^ω^)「こら、ツン!」
- (#)A`)「俺って訴えたら勝てる気がする」
- ξ゚听)ξ「ふん、あの子は憑いてないようね」
- (#)A`)「その確認の仕方ってどうよ……」
- (;^ω^)「ツン、謝らなきゃ駄目だお」
- ξ゚听)ξ「……悪かったわ」
- ('A`)「うわ、ツンに謝られるなんて何年ぶりだ……」
- 頬を摩りながらドクオは自分の席に着く。
- それと同時に、エクストが壁を通り抜けて部屋に入ってきた。
- <_プー゚)フ「お、みんないるな!」
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:52:27.58 ID:x/ZR47KzO
- ( ^ω^)「こんにちはだお、エクスト」
- エクストは、聖徒会の活動時間以外は校内をぶらぶらと散策して時間を潰している。
- 最近は理事長室のオカルトコレクションを見せてもらうのにハマっているそうだ。
- <_プー゚)フ「ツンーツンー」
- ξ;゚听)ξ「ええい、寄るな」
- <_プー゚)フ「あ、ドクオ! 来てたのか」
- ('A`)「おう」
- <_プー゚)フ「ツンと仲直りしたか?」
- ('A`)「仲直り?」
- <_プー゚)フ「昨日はツン大変だったんだぞ、いっぱい妖怪にまとわりつかれて」
- ξ゚听)ξ ('A`)
- ξ#゚听)ξ ('A`;)
- ξ#゚听)ξ「そうよ、そうだったわ! ドクオ、あんたよくも……!」
- (;'A`)「いやっ、俺も必死だったし! せいぜい足止め程度になるかなって!」
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:55:27.74 ID:x/ZR47KzO
- (;^ω^)「ツン、落ち着いて落ち着いて……」
- ξ#゚听)ξ「思い出したら腹立ってきたわ! ひっぱたく!」
- (;'A`)「ごめんなさいごめんなさい!」
- (;^ω^)「あっ、駄目、椅子を振りかぶるのは駄目だおツンー!」
- 聖徒会室で惨劇が繰り広げられようとしている頃。
- 屋上で空を眺めていたキュートは、不意にドアを振り返った。
- o川*゚ー゚)o(……音楽……)
- 微かに曲が聞こえる。
- キュートは、そっと屋上を出た。
- 耳を澄ませ、音の方向を探る。
- o川*゚ー゚)o(吹奏楽部かな?)
- その音色に引き寄せられるかのように、キュートはそろそろと歩き始めた。
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 22:58:24.98 ID:x/ZR47KzO
- ( ´∀`)「みんな良い調子モナよ。
- もう一回合わせるモナ」
- 音楽室。
- 今日は合唱部は休み、吹奏楽部だけの活動だ。
- (´・_ゝ・`)「はい……あれ?」
- ( ´∀`)「モナ?」
- トランペットを構えた吹奏楽部部長が、音楽室のドアを見て声をあげた。
- 部長の視線を辿って、モナーもそちらを見遣る。
- o川*゚ー゚)o「あ……」
- そこにいたのは、閉まったままのドアから首だけ生やしているキュート。
- 音を辿ってここまで来て、好奇心に駆られて覗き込んでしまったのだ。
- 普通に考えれば、軽くホラーな状況なのだが――
- ( ´∀`)「モナモナ、見学希望モナ?」
- (´・_ゝ・`)「見学しに来る霊とは珍しいな」
- ここはVIP高校。この程度の光景なら慣れっこだし、
- そもそも指揮棒を振るっているモナーからして存在自体が怪奇現象なのだから、生徒達が動じる筈もない。
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:01:07.54 ID:x/ZR47KzO
- o川;゚ー゚)o「あ、えっと」
- ( ´∀`)「入ってくるといいモナ」
- o川;゚ー゚)o「いっ、いえ、すいません何でもないですっ!」
- モナーが手招きするが、キュートは慌てて引っ込んでしまった。
- 首を傾げながらモナーは呟く。
- ( ´∀`)「おや、行っちゃったモナ。
- ……彼女、なんだか見覚えがあるモナね」
- (´・_ゝ・`)「会ったことがあるんですか?」
- ( ´∀`)「うーん……会った、というより……」
- ふと、モナーの脳裏に昨日内藤達から聞かされた話が過ぎった。
- ドクオに取り憑いた少女の霊、その名前はキュート――……
- ( ´∀`)(……キュート)
- (´・_ゝ・`)「先生?」
- ( ´∀`)「ああ、いや、何でもないモナ。――さて、気を取り直して演奏を開始するモナよ」
- 改めて指揮棒を構え、モナーは部員達に楽器を持ち直すよう促した。
- ( ´∀`)(そう、そうモナ。あの子はキュートさん……。
- ……死んでしまったモナか……)
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:04:28.66 ID:x/ZR47KzO
- それから時間が過ぎ。
- 日も暮れる頃、ドクオは屋上のドアをノックした。
- ('A`)「キュートさん、帰るぞ」
- 数秒ほど経って、キュートは恐る恐るといった様子でドアから顔を出した。
- o川*゚ー゚)o「出ても平気?」
- ('A`)「ああ」
- o川*゚ー゚)o「よいしょ……っと」
- ドクオは、きょろきょろ辺りを見渡して誰もいないのを確認し、昇降口へ向かった。
- ('A`)「体を貸せるのは、明日の朝から夕方までだけだ。
- ……その内に、なるべく未練をなくすようにしてくれよ」
- o川*゚ー゚)o「分かってるよ。……ドクオさんは優しいね」
- 116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:08:03.11 ID:x/ZR47KzO
- 『蠍座・男 金曜日:思いもよらないことが起こる日。予定通りに事は進まないかも。』
- ('A`)「……」
- 金曜日、5時限目。現在は数学の時間だが、教師が出張中のため自習。
- ドクオの体に入っているキュートは、ドクオの携帯電話をじっと見つめていた。
- (*゚ー゚)「ドクオ君?」
- ('A`)「……」
- (*゚ー゚)「ドクオ君ってば」
- ('A`)「……ん、なに?」
- 隣の席に座るしぃに声をかけられ、キュートはぼんやりと返事をした。
- しぃが怪訝な目を向ける。
- ここ数日、明るく笑っていたばかりのドクオ。
- それが今日は、朝からずっと静かなまま。
- 以前のように戻ったと言えばその通りなのだが、クラスメート達は違和感を覚えているようだった。
- 118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:11:14.06 ID:x/ZR47KzO
- (*゚ー゚)「どうかしたの? 元気なさそうだけど」
- ('A`)「いや、そんなことないよ」
- (*゚ー゚)「ならいいけど……」
- ('A`)「……」
- 携帯電話のアドレス帳。数少ない連絡先の中に1つ混じる、クラスメートのメールアドレス。
- 昨日交換した、斉藤またんきという男子のもの。
- ('A`)(みんなは、ドクオさんに私が取り憑いているなんて知らない……。
- 私がドクオさんに体を返しても、みんなは変わらずドクオさんに接するのかな。
- ……私がまたんきさんとした遊ぶ約束も、ドクオさんのものになっちゃうのかな……)
- 沸き上がるのは――たった一つの欲。
- ('A`)(遊びたい……みんなと、私が遊びたい。
- 私が……)
- 携帯電話を握りしめる。
- 罪悪感と、それに勝るほどの欲望が胸を支配する。
- ('A`)(――この体は返さない……)
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:15:18.64 ID:x/ZR47KzO
- 放課後。
- 聖徒会室へやって来た内藤とツンは、思いもよらない者に迎えられた。
- ( ´∀`)「授業お疲れ様モナ、2人とも」
- ( ^ω^)「モナーさん、どうしたんですかお?」
- <_プー゚)フ「なんかな、昨日、キュートに会ったんだってよ」
- ξ゚听)ξ「キュートに?」
- ( ´∀`)「そうモナ。吹奏楽部の練習を見に来たみたいだったモナ」
- ξ゚听)ξ「……なるほどね。やっぱりドクオの奴、体を貸してたんだわ。
- 聖徒会の時間だけキュートを別の場所に置いといたのよ、きっと」
- ( ^ω^)「じゃあ、今日も?」
- ξ゚听)ξ「その可能性が高いわ……」
- 眉を寄せ、ツンが小さく舌打ちをする。
- そして携帯電話を取り出すと、ドクオの番号へ電話をかけた。
- 122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/13(水) 23:18:37.34 ID:x/ZR47KzO
- 数回のコールの後、相手が電話に出る。
- ξ゚听)ξ「――もしもし。ドクオ? キュート?」
- 『……キュートです』
- か細い声。ドクオの声だが、言葉を発しているのはキュート。
- ツンの語気が僅かに荒くなる。
- ξ゚听)ξ「今どこにいるの? 学校にいるなら、今すぐ聖徒会室に来なさい!」
- 『……』
- 沈黙。ツンと内藤が顔を見合わせる。
- ξ゚听)ξ「ねえ――」
- 『私は……この体で、もう一度生きたい』
- 第三話:続く
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