( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:08:45.77 ID:yBxgnfzjO


     『私は……この体で、もう一度生きたい』


ξ゚听)ξ「……!」

 通話が切れる。
 ツンはもう一度同じ番号へ掛け直したが、何度鳴らそうともキュートが出ることはない。
 ついには、電源を切られてしまった。

ξ#゚听)ξ「っ……だからやめとけって言ったのに!」

(;^ω^)「向こうは何て言ってたんだお?」

ξ#゚听)ξ「ドクオの体で生きるって――あの子、ドクオの体を乗っ取るつもりよ!」

(;^ω^)「なっ……!」



第三話:寺生まれってすごい 後編



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:11:19.18 ID:yBxgnfzjO

ξ#゚听)ξ「探しに行くわよ! 何がなんでも見つけだして、消してやるわ!」

(;^ω^)「消すって、そんな乱暴な」

ξ#゚听)ξ「人の体を奪おうとしてるのよ、もう情けなんかかけてる場合じゃないでしょう!?」

<_フ;゚ー゚)フ「ツン、ちょっと待てって!」

 ――突如、大きなトランペットの音が鳴り響いた。
 内藤、ツン、エクストの3人は思わず口を閉じる。

 トランペットの余韻が消えない内に、緩やかな曲が流れ始めた。
 優しい音が室内に満ちる。

 3人の視線の先には、指揮棒を振るモナー。
 すっかり黙った彼らを確認すると、モナーは手を下ろした。
 同時に曲も止まる。

 昨日ツンを助けたときと似ている。

( ´∀`)「――落ち着いたモナ?
       ツンさん、君が友達を心配しているのは分かるモナよ。
       でも、だからって焦ってしまっては駄目モナ」

ξ゚听)ξ「……そう、ね。
      ごめんなさい、……ありがとう」

<_フ*゚ー゚)フ「すげー」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:14:19.63 ID:yBxgnfzjO

( ´∀`)「まずは手掛かりをしっかり掴むことから始めるモナ。
       内藤君、さっきも言った通り、モナは昨日キュートさんを見たモナ」

( ^ω^)「はいお」

( ´∀`)「そこで気付いたモナが、モナは生前の彼女を知っているんだモナ」

(;^ω^)「ええっ! ほ、本当ですかお!?」

( ´∀`)「去年の吹奏楽部コンクール地区予選、
       それと今年の春先、シベリア女子高校の吹奏楽コンサート……」

( ^ω^)「シベリア女子高校……」

ξ゚听)ξ「って、隣町の?」

( ´∀`)「その通り。
       モナは額縁から離れることが出来ないから、外出するわけにいかないんだモナ。
       こんな姿じゃ目立ってしまうから。
       だから生徒たちに頼んでコンクールやコンサートの模様を
       ビデオで撮ってもらい、その映像を後で見ることにしてるんだモナ」

<_プー゚)フ「それでキュートを見たんだな!?」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:17:39.90 ID:yBxgnfzjO

( ´∀`)「モナ。
       彼女の奏でるクラリネットの音色がとても綺麗で、印象に残っていたんだモナ。
       名前は、たしか、高岡キュート……」

( ^ω^)「高岡さん、ですかお」

( ´∀`)「君達は今すぐシベリア女子高に行き、キュートさんの家の住所訊いてくるモナ。
       シベリアへはモナから連絡を入れておくモナよ」

( ^ω^)「はい、行ってきますお!」

( ´∀`)「それと、出来ればミセリちゃんを連れていった方がいいモナ。
       彼女は聡明だし物知りだから、きっと必要な情報を見付けてくれるモナ」

<_プー゚)フ「俺もついていっていい?」

ξ゚听)ξ「いえ、あんたは校舎の中を隅々まで回って。
      キュートが校内のどこかに隠れてる可能性もあるから。
      見付けたら、理事長にでも誰でもいいから知らせに行って」

<_プー゚)フ「えー」

( ^ω^)「よろしく頼むお」

<_プー゚)フ「まあ頑張るけどさあ……」

 渋々、エクストが聖徒会室を出ていく。
 それに続くように、内藤とツンは保健室へ駆けていった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:21:43.05 ID:yBxgnfzjO




 ――バスに乗って隣町へ行く。
 シベリア女子高校を訪ねると、キュートの担任だという教師に迎えられた。
 その教師によれば、キュートは一ヶ月ほど前に交通事故で亡くなってしまったのだそうだ。
 彼女に線香を上げたいから、と家の住所を教えてもらい、内藤とツンはその住所の元へ向かった。



( ^ω^)「と、いうわけで着いたお」

ξ゚听)ξ「普通の家ね」

 内藤とツンは目の前の家を見上げた。
 至って普通の、二階建ての一軒家。
 夕日の色に染まる表札には「高岡」と書かれている。

( ^ω^)「ここで合ってるおね?」

ξ゚听)ξ「住所の通りならね」

 内藤がインターホンを押す。
 少しして、スピーカーから女性の返事が聞こえてきた。

    『――はい、高岡です』



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:25:00.36 ID:yBxgnfzjO

( ^ω^)「あ、どうも。突然すみません。
       僕、キュートさんの……ええと、お友達ですが……」

    『……キュートの?』

ξ゚听)ξ「はい。以前、吹奏楽部のコンクールで知り合ったんです。
      一度挨拶に伺いたくて……」

 がちゃり、ドアが開く。
 現れたのは、銀髪の綺麗な女性だった。

从 ゚∀从「よく来てくれた。
     ――どうぞ上がってくれ」




 彼女はハインリッヒと名乗った。
 見た目はまだ30代に届くか届かないかというところだが、実際は40を超えているらしい。

 そのことに内藤達は少々驚いたが、ハインリッヒの若々しい美貌は、
 たしかにキュートの母親であると納得させるに充分な説得力を湛えていた。
 キュートもどこか幼さの見える、可愛らしい顔立ちをしていたから。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:28:20.31 ID:yBxgnfzjO

 仏間に案内された内藤とツンは、キュートの遺影の前に線香を上げた。
 遺影に写っている朗らかな笑みを浮かべたキュートは、
 間違いなくドクオと一緒にいた少女と同一人物。

 2人は、無言で視線を交わし、小さく頷いた。



从 ゚∀从「本当にな、急だったんだ……学校の帰りに車に轢かれて。
     即死だったらしいから、それがせめてもの救いだな」

 線香を上げた後、2人はリビングでお茶を御馳走になった。
 並んで座る内藤とツン。
 その向かいに腰掛けたハインリッヒは、悲しげに微笑みながらキュートについて話してくれた。

从 ゚∀从「……やっぱりさ、悲しいもんは悲しい。
     ふと気が付きゃあ、泣いちまってるんだ」

( ^ω^)「無理もないですお」

从 ゚∀从「ああ……。
     坊さんはな、四十九日の間にいくらでも泣いておけって言うんだ。
     ただしそれ以降もずっと悲しんでるのはいけない、娘さんが浮かばれません、って。
     でも、何日経とうが、悲しいもんは悲しいに決まってる。
     可愛い――本当に、可愛い子だったんだ」

 お茶を一気に飲み干し、ハインリッヒは話を続ける。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:31:16.95 ID:yBxgnfzjO

从 ゚∀从「私はさ、女らしさってものと無縁なんだ。
     男兄弟に囲まれて育ったからさ。
     ……結婚するときに、夫は『そこが好きだ』って言ってくれたのに。
     キュートを身篭ってからしばらくした頃に、離婚するって言いやがった。
     やっぱり、女らしい方が良かったんだと。今更かよって腹が立ったね」

ξ゚听)ξ「離婚、されたんですか」

从 ゚∀从「ああ。キュートは私が1人で育てたんだ。
     ――女の子が生まれたら、絶対に女の子らしくなるよう育てようと決めた。
     私みたいにしたくなかった……」

 沈黙が流れる。
 どうしようかと内藤があぐねいていると、「あ」とハインリッヒが声を洩らした。

从 ゚∀从「ごめんな、愚痴っぽくなったよ。引き止めて悪かった」

( ^ω^)「いえ……」

ξ゚听)ξ「――あの」

从 ゚∀从「ん?」

ξ゚听)ξ「失礼かもしれませんが、キュートさんのお部屋を見せてもらってもいいでしょうか」

从 ゚∀从「ああ、別に構わないよ。おいで」

 ハインリッヒが頷き、腰を上げる。
 2人はその後についていった。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:34:14.97 ID:yBxgnfzjO

 ――キュートの部屋は、二階の一番奥にあった。
 ドアを開いた内藤とツンは、呆気にとられる。

(;^ω^)「お、おお……」

ξ;゚听)ξ「ここまで女の子女の子してる部屋も珍しいわ……」

 薄桃色に、さくらんぼ柄の壁紙。
 レースのついたピンク色のカーテン。
 ベッドはハート柄の、やはりピンク色。

 たくさんのぬいぐるみや人形が綺麗に棚に並べられている。
 脱ぎっぱなしと思われるパジャマは、リボンやレースがふんだんにあしらわれたワンピース型。

 そのパジャマの前にしゃがみ込み、ハインリッヒがリボンを撫でる。

从 ゚∀从「……キュートが事故に遭った日のままにしてあるんだ。
     四十九日を過ぎたら片付けるけれど……」

 内藤とツンに振り返り、2人が口をぽかんと開けているのを見て苦笑した。
 驚いた? と声をかける。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:37:45.89 ID:yBxgnfzjO

从 ゚∀从「可愛いものに囲まれて育てば可愛くなるかと思って。
     実際、キュートはとても可愛かった。
     可愛い可愛いって褒めまくりながら育ててきたよ。
     親戚なんかは『そんな風に育てていれば
     自意識過剰な嫌味な子になるぞ』ってよく言ってたけど、
     あの子は物静かな優しい子になってくれて……嬉しかった」

 可愛くて可愛くて仕方がなかった、と呟く。
 その声は掠れて、か細い。

 内藤が傍に寄って背中を撫でると、ハインリッヒは首を振って立ち上がった。

从 ;∀从「この部屋に来ると、どんなに我慢しようとしても泣けてくる……。
     悪い、私は下に行ってるから、2人共帰るときに声をかけてくれ」

( ^ω^)「はい。……心中、お察ししますお」

 涙を拭いながら部屋を出ていくハインリッヒを見送った後、内藤はツンに目を向けた。
 ツンは胸ポケットから手鏡を出し、鏡面へ話しかける。

ξ゚听)ξ「……ミセリちゃん、キュートの部屋に来たわ」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:40:35.75 ID:yBxgnfzjO

 手鏡の中、ミセリは頷いた。

ミセ*゚ー゚)リ「お話は聞いていました。
      それでは手掛かりを探しましょう。
      ツンさん、このお部屋に鏡はありませんか? なるべく一番大きなもの……」

ξ゚听)ξ「――あるわよ。とびっきりのが」

 内藤とツンは、迷うことなく一点を見る。

 ドアの横に佇み、内藤の背丈よりも大きく、
 オレンジ色の縁にリボンの装飾が施された、
 ――姿見。

 うっすらとだが埃を被っているそれの前に立ち、ツンは手鏡の中のミセリをそこへ向けた。

ξ゚听)ξ「これでいい?」

ミセ*゚ー゚)リ「ばっちりです!
      あの、出来れば私の手が届くくらいまで近付けてもらえますか?」

ξ゚听)ξ「オッケー」

 手鏡に居るミセリは、とても小さくなっている。
 ツンは、鏡面同士がくっつきそうな程に近付けた。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:43:39.30 ID:yBxgnfzjO

ミセ*゚ー゚)リ「鏡は、人の真実を知っています。
      持ち主の本当の姿も嘘の姿も全て見ていますから……。
      今から、この鏡の記憶を少し覗かせてもらいます」

 ミセリが手を伸ばす。
 姿見に触れた小さな手の平が、淡い橙の光を纏った。

 しん、と静まり返る室内。
 どれほど経ったか、ミセリの声が静寂を破った。

ミセ*゚ー゚)リ「……分かりました」

 その淋しげな声色が気になって、内藤が手鏡を覗き込む。

( ^ω^)「どんなことが分かったんだお?」

ミセ*゚ー゚)リ「ドクオさんの体を借りたがった理由です。
      あの方は……――」






19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:46:34.13 ID:yBxgnfzjO


『蠍座・男 土曜日:危険な事態に巻き込まれちゃいそう。自分ではどうにも出来ないかも……。』


 キュートは昨日、ドクオの家に帰っては内藤達に見付かってしまうのではと考え、
 ドクオの財布に入っていたインターネットカフェのカードを使い、その店で夜を過ごした。

 20時頃だったか、またんきから「昼に駅前集合」というメールが送られてきた。
 それを確認したキュートが感じたのは、ドクオに対する罪悪感ではなく、
 翌日に対する期待、胸の弾みであった。

 今朝店を出てから、制服のままであることに気付き、近くにあった衣料店で服を揃えた。
 着替えた後、制服や鞄を駅のコインロッカーに預け、必要な物だけをポケットに突っ込む。
 約束の時間が迫り、慌てて待ち合わせ場所へ走った。

('A`)「……あ」

(・∀ ・)「12秒遅れたぞドクオー」

('(゚∀゚∩「細かすぎるんだよ!」

ミ,,゚Д゚彡「またんきなんかいつも10分は余裕で遅れるくせに」

(・∀ ・)「ぐっ……」

 ドクオのクラスメートである、またんきとなおるよ、そしてフサ。
 今日はこのメンバーと遊ぶことになっている。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:49:38.70 ID:yBxgnfzjO

('A`)「……」

('∀`)「……ははは」

(・∀ ・)「あー、何笑ってんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「絡まない絡まない。さーて、まずは昼飯食べに行くからー」

('∀`)「おう!」

('(゚∀゚∩「お腹すいたよ!」






( ^ω^)「今朝ドクオの家に電話してみたけれど、昨日から帰ってきてないらしいお」

ξ゚听)ξ「どこに行ったのかしら……」

 聖徒会室。
 内藤とツンは、キュートを探すために集まっていた。
 エクストとミセリ、理事長も居る。
 理事長は単なる好奇心で加わったのだが、
 詳細な事情を聞いて事態が深刻であると知ったようだ。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:52:35.97 ID:yBxgnfzjO

( ФωФ)「一晩行方不明ということは、依然ドクオ君に取り憑きっぱなしなわけであるな」

<_プー゚)フ「校内のどこにもいなかったし、ずっと外で過ごしたんかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「どこか泊まれるような場所に行ったかもしれませんね」

( ФωФ)「ホテルとかであるか?」

( ^ω^)「そういえばドクオはネットカフェの会員カードを持ってたお」

ξ゚听)ξ「ネカフェっていうと、24時間営業のところが2つあったわね」

( ^ω^)「ちょっと、そのお店に問合せてみるお!」

 内藤が携帯電話を使い、ここら一帯にある店舗を調べる。
 そこに書かれた番号へ電話をかけた。

 そんな内藤を見て、エクストがツンの服を引っ張る。

ξ゚听)ξ「何?」

<_プー゚)フ「ねっとかふぇって何だ?」

ξ゚听)ξ「えーっと……パソコンがいっぱいあって、インターネットが出来るお店」

<_プー゚)フ「いんたーねっと?」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:55:26.28 ID:yBxgnfzjO

ξ゚听)ξ「……パソコンは分かる?」

<_プー゚)フ「おう、分かるぞ。
       この間、こん、こんぷーちゃー? こんぷーちゃー室に行ったら、
       こんぷーちゃークラブって集まりがあって、そこに居た生徒に見せてもらった。
       何か色々出来て凄いなー、あれ。何をやってるのかは分かんなかったけど」

ξ゚听)ξ「こんぷーちゃーじゃなくてコンピューター」

( ФωФ)「……エクスト君は、一体いつの時代に死んだのであろうなあ……」

( ^ω^)「ドクオがネットカフェに居たらしいお!」

 携帯電話を閉じて、内藤が振り返った。
 学校からそう遠くない場所にあるインターネットカフェの利用客データに、
 ドクオの名前が残っていたという。

( ^ω^)「ただ、朝になったら店を出ていったって。
       どこに行ったかは分からないそうだお……」

ミセ*゚ー゚)リ「朝ですか……。
      もう、どこか遠くへ行ってしまっていてもおかしくない時間です」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 20:59:21.25 ID:yBxgnfzjO

ξ゚听)ξ「もう丸一日はドクオの体に入ってるのよね……早く見付けないと危ないわ」

<_プー゚)フ「危ないのか? ドクオに取り憑いてるなら、
       ドクオの体を危険な目に遭わせはしないと思うけど」

ξ゚听)ξ「そりゃあ体はね。危ないのはドクオの魂よ」

( ^ω^)「魂?」

ミセ*゚ー゚)リ「今、ドクオさんの体にはキュートさんという死人の魂と、
      ドクオさん本人の生きている魂が存在しています。
      だからドクオさんの体にある生命力は、その両方に同時に注がれていますが……」

ξ゚听)ξ「いずれ、その生命力はどちらか一方にのみ向かうことになるわ。
      2つずつに流れているんじゃ、生命力の消費も2倍になっちゃうからね。
      で、供給を断たれてしまう魂は間違いなくドクオの方よ」

(;^ω^)「なっ……何でだお!?
       あれはドクオの体で、ドクオのものだお!」

ξ゚听)ξ「今はキュートが主導権を握っているし、何よりドクオの体質がね……」

( ФωФ)「重度の霊媒体質であるな!」

ξ゚听)ξ「そう、あの体は死霊に対する抵抗が極端に少ないの。
      乗っ取られるのも時間の問題だわ」

(;^ω^)「ナンダッテー」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:03:25.23 ID:yBxgnfzjO

ミセ*゚ー゚)リ「今日中に何とかしないと、どうなってしまうか……」

ξ゚听)ξ「こうなったら、もう虱潰しに探すしかないわね」

(;^ω^)「もしそれで見付からなかったら……」

 そのとき、紫色の光が空中で弾けた。
 内藤が驚いた瞬間――

( ´∀`)「キュート君は見付かったモナ?」

 モナーが内藤の目の前に現れる。
 理事長並みに突拍子のない登場の仕方に、内藤は思わず悲鳴を上げた。

(;^ω^)「おわおわおおおおっ!!?」

(;´∀`)「モナっ!? びっくりさせんなモナ!!」

ξ;゚听)ξ「こっちの台詞よ!」

<_プー゚)フ「キュートなら今から探しに行くところだぞ」

( ´∀`)「あ、ああ、そうモナか。
       少し役に立つかもしれない情報が手に入ったモナ」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:06:22.44 ID:yBxgnfzjO

ミセ*゚ー゚)リ「情報ですか?」

( ´∀`)「今日は合唱部の練習日なんだけれども、しぃさんが良いことを教えてくれたモナ。
       どうやら、ドクオ君としぃさんのクラスメートが、
       ドクオ君と遊ぶ約束をしてたとか」

(;^ω^)「遊ぶ約束!?」

( ´∀`)「土曜日に、という声を聞いたらしいモナ。
       約束してたクラスメートはまたんき君だったモナかね」

( ФωФ)「土曜日といえば今日であるな」

ξ゚听)ξ「……しぃは今、音楽室にいる?」

( ´∀`)「休憩時間だから、みんなで音楽室でご飯を食べているところモナ」

ξ゚听)ξ「ブーン、話を聞きに行くわよ」

( ^ω^)「把握したお!」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:09:29.69 ID:yBxgnfzjO



(;*゚ー゚)「皆さんお揃いで……」

 所変わって音楽室。
 内藤、ツン、エクスト、ミセリに理事長。
 モナーが引き連れてきた面々に若干怯みながら、しぃはぺこりと頭を下げた。

( ^ω^)「しぃさん、こんにちはだお。突然で悪いけど――」

 内藤はしぃに事情を話し、ドクオの約束について教えてほしいと告げる。
 話を聞き終えたしぃは、「なるほど」と合点がいったようだった。

(*゚ー゚)「急に人が変わったみたいだったから、何があったんだろうと思ってた。
     そっか、幽霊か……」

ξ゚听)ξ「ねえ、しぃ。ドクオは、またんきとだけ約束してたの?」

(*゚ー゚)「ちらっと聞いただけだから分からないけど……。
    でも、またんき君はいつもフサ君やなおるよ君と遊んでるから、その2人も一緒かも」

ミセ*゚ー゚)リ「フサさんは、たしか……」

( ФωФ)「ギコ君の従兄弟である」

<_プー゚)フ「ギコって、しぃの彼氏だよな」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:12:32.46 ID:yBxgnfzjO

( ^ω^)「しぃさん、ギコに電話をかけてほしいお!」

(*゚ー゚)「フサ君に連絡を取るように頼めばいいんだね?」

ξ゚ー゚)ξ「理解が早くて助かるわ」

 しぃがギコに電話をかける。
 ツンは、内藤へ声をかけた。

ξ゚听)ξ「この辺りで遊ぶ場所なんて限られるわ。
      きっと見付けられる筈よ」

( ^ω^)「そうだお……きっと、きっと大丈夫……」

 首からぶら下げた、小さな十字架。
 内藤はそれを力強く握りしめた。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:15:35.75 ID:yBxgnfzjO

(*゚ー゚)「――フサ君、今ドクオ君達と駅前のファミレスでご飯食べてるって!」

( ^ω^)「ありがとうだお、しぃさん!」

ξ゚听)ξ「行くわよ!」

( ФωФ)「むう、しかし我輩とエクスト君は人の多い所に行くのは少々難しいのである」

( ^ω^)「ドクオ――キュートさんを見付けたら学校に連れてくるから、
       学校で待ってて下さいお!」

 そう言って、内藤とツンは音楽室を飛び出した。



ξ゚听)ξ「――いない」

(;^ω^)「もう食べ終わっちゃったみたいだお……」

 しぃから聞いたファミレスへ来たものの、既に出た後らしかった。
 店員に断ってテーブルをひとつひとつ見て回ったが、ドクオの姿はない。

ミセ*゚ー゚)リ「しぃさんに、もう一度フサさんに連絡を取ってもらうよう頼みましょう!
      私、学校に行ってきます」

ξ゚听)ξ「よろしくね」

 ツンの手鏡に居たミセリが消える。
 自由に移動出来るって便利ね、とツンが呟いた。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:18:47.59 ID:yBxgnfzjO



 ファミレスから少し歩いたところにある、小さなカラオケ店。
 その一室。

(・∀ ・)「ばーりーばーりーさーいーきょーおー」

ミ,,゚Д゚彡('∀`)「なーんーばーぁーわーん!」

(・∀ ・)「俺さあ、悪い妖怪を倒したり、良い妖怪と協力したりする漫画好きなんだよ」

('(゚∀゚∩「ぬ〜べ〜の漫画はトラウマ作ることが多々あるけどね!」

(・∀ ・)「でもエロも多かったよなwww」

 けたけたとまたんきが笑い、隣に座るドクオ、もといキュートの肩を抱く。

(・∀ ・)「あんな、俺な、前からドクオと話してみたかったんだ」

('A`)「え?」

(・∀ ・)「そもそもVIP高に入ったのだって、幽霊や妖怪がいっぱいいるって噂聞いたからでさ。
      漫画みたいな経験したかったの。
      そしたらクラスメートのドクオが寺の息子だっていうじゃん。
      しかも聖徒会になって学校霊との共存に貢献! なんてさー」

ミ,,゚Д゚彡「またんきだいぶ興奮してたから」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:22:10.78 ID:yBxgnfzjO

(・∀ ・)「でも、ドクオいつもぼーっとしてるし、
      たまに元気になったかと思えば女子にセクハラするときだけだし。
      話しかけづらかったんだよ」

(;'A`)(セ、セクハラ……?)

('(゚∀゚∩「最近のドクオは話しかけやすかったから、またんき喜んでたよ!」

('A`)「……へ、え」

(・∀ ・)「? どうした、ドクオ?」

(;'∀`)「あ、いや、何でもないよ。ありがとうな、またんき」

(・∀ ・)「何のお礼だよwww」

(;'A`)「ははは……」

('A`)「……は……」

ミ,,゚Д゚彡「なおるよー、曲入れすぎだから」

('A`)(――……私は)

('(゚∀゚∩「僕の歌を聴くんだよ!」

('A`)(私は……みんなを騙してるんだ……)



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:25:33.99 ID:yBxgnfzjO



ミセ;゚ー゚)リ「ギコさんが電話をかけても、フサさんが出ないって……!
      きっと、遊んでいて電話が鳴っているのに気付いていないんだと思います!」

 戻ってきたミセリが、泣きそうな顔で告げた。
 それならばこの近辺を探すしかないだろうとツンが返す。

ξ゚听)ξ「大して遠くには行ってない筈よ、場所は限られてくるわ」

(;^ω^)「す、すぐそこにボウリング場があるお!」

ξ゚听)ξ「まずはそこに行くわよ!」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:28:52.17 ID:yBxgnfzjO



('A`)「……?」

 フサの歌声を聴いていたキュートは、ふと、目眩を覚えた。
 なんだか――ひどく、具合が悪い。

('(゚∀゚∩「ドクオ?」

(・∀ ・)「どうした?」

('A`)「なんか……変……」

 体から力が抜けるような倦怠感。
 胸が締め付けられるように痛み、息苦しい。
 呼吸が、上手く出来ない――

(;'A`)「う、えっ……!」

(;・∀ ・)「ドクオ!?」

ミ;,゚Д゚彡「どうしたんだから?」

 マイクを置いて、フサが駆け寄ってくる。
 またんき達は、おろおろと慌て始めた。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:31:26.85 ID:yBxgnfzjO

('(゚∀゚;∩「救急車呼ぶんだよ!?」

(;'A`)「い、いい、いらない!」

(;・∀ ・)「でもよぅ……」

(;'A`)「か、風邪気味、だったから。
    ――悪い、俺帰る……」

ミ;,゚Д゚彡「送っていくから!」

(;'A`)「いいよ……みんなで遊んでて。俺の分の金はカウンターで払うから……」

(;・∀ ・)「いやいや、すげー具合悪そうじゃん!」

(;'A`)「大丈夫だから!」

 目の前がちかちかする。
 足が震えて、今にも倒れそうだ。

(;'A`)(我慢しなきゃ駄目だ……!)

 ――もし倒れでもしたら、救急車を呼ばれるかもしれない。
 そうなったら、ドクオの親に連絡が行くだろう。
 それは避けなければ。見付かっては駄目だ。
 見付かったら、この体を手放さなければいけなくなる。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:34:33.69 ID:yBxgnfzjO

(;'A`)(私は、私は、生きていくんだ……このまま、生きるんだ……っ!)

(;・∀ ・)「ドクオ……!」

(;'A`)「お願いだから、今は放っておいてくれよ!」

 叫んだら、足に少し力が戻った気がした。
 今の内にと、またんき達の制止の声も無視して、キュートは部屋を駆け出す。
 カウンターでルームナンバーを告げ、1人分の金額を払い、店を出た。

(;'A`)(……)

 店の近くに、自然公園がある。
 何故だか、足が勝手にそこへ向かった。




 公園内にある水呑場で水を飲んだ。
 ひんやりとしたそれが喉を通る度、あんなに怠かった体が回復していった。
 ほっと息をつく。

('A`)「はあ……」

 完全にとはいかないまでも、気分が楽になった。
 深呼吸をして、体を落ち着かせる。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:37:21.46 ID:yBxgnfzjO

('A`)(何で急に具合が悪くなったんだろう……。
    とにかく、いつまたあの状態になるか分からないし、
    ゆっくり出来そうな所に移動しなきゃ)

 ひとまずは駅のコインロッカーに預けた荷物を取りに行こうと踵を返す。
 足取りは、先ほどに比べればずっと軽い。
 あの水には何か不思議な力でもあるのだろうかと、キュートは半ば本気でそう考えた。





ξ;゚听)ξ「ボウリング場にもゲームセンターにも本屋にもバッティングセンターにも
      カラオケにも公園にも美術館にもデパートにもどこにもいない!」

 その頃、大型デパートから出たツンは汗だくで怒鳴っていた。
 だだっ広い店内を地下から屋上まで駆けずり回って
 結局何の手掛かりも無かったのだから無理はない。

(;^ω^)「そもそもデパートって選択肢はどうかと」

ξ;゚听)ξ「少しでも可能性があるなら行くべきよ」

ミセ;゚ー゚)リ「その通りですが……行き違いが恐いですね。
      今頃、さっき私達が行ったところに来ているかもしれませんし」

ξ;゚听)ξ「そ、それは勘弁してほしいわ……」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:40:22.66 ID:yBxgnfzjO

ミセ*゚ー゚)リ「会長さん。携帯電話で、ここらの施設って調べられませんか?
      なかなか見付けられないような場所に、学生が遊べる施設があるかも……」

(;^ω^)「駅前の地図を調べてみるお」

ミセ*゚ー゚)リ「お願いします。私はもう一度しぃさんの所に行ってきますね」

ξ;゚听)ξ「今度こそフサが出てくれればいいけど」

 ミセリが消える。
 ツンは、忙しなく辺りを見回した。

 ――もう4時になろうとしている。
 せめて夜になる前にフサと連絡がつかなければならない。
 またんき達が解散してしまえば、今度こそキュートの居所が掴めなくなる。

(;^ω^)「……カラオケ!」

 携帯電話の画面を見つめながら内藤は言葉を洩らした。

ξ゚听)ξ「カラオケはさっき見たでしょ?」

(;^ω^)「違うお! 自然公園の近くに、小さなカラオケ屋さんがあるんだお!」

ξ゚听)ξ「……本当?」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:43:58.62 ID:yBxgnfzjO

 画面を覗き込み、ツンは瞠目した。
 表の通りからはビルに隠れてしまって見えないが、たしかにカラオケ店がある。

(;^ω^)「書き込まれてる口コミ情報によれば、1時間辺りの金額が安くて、
       学生のお財布にも優しいって……」

ξ;゚听)ξ「こっ、この店よ!
      曲が流れてるから、フサは携帯の音に気付かなかったんだわ!」

(;^ω^)「えーっと、ここからなら……こっちから行けるお!」

 内藤とツンは、地図に描かれた店を目指して走り出した。


 だが――もう、遅かった。


ξ;゚听)ξ「見付けたぁっ!」

(;・∀ ・)「うぎゃあっ!? びっ、びっくりしたぁ!!」

 店員からまたんき達の部屋を聞き出した内藤とツンは、ノックもなしにドアを開けた。
 室内に居た3人は心臓が飛び出るどころか飛び散りそうな勢いで驚く。

(;・∀ ・)「って、内藤に出連じゃん! 何だよ急にー!」

ミ;,゚Д゚彡「俺ら小心者なんだから驚かせないでほしいからっ!」

('(゚∀゚;∩「強盗かと思ったよ!」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:46:35.04 ID:yBxgnfzjO

(;^ω^)「――キュー……いや、ドクオは?」

 文句を垂れる3人を眺めて、内藤はドクオの姿がないのに気付いた。
 内藤の言葉に、またんき達は大人しくなる。

(・∀ ・)「それがさ、さっき……」

ミセ;゚ー゚)リ「ツンさん! やっぱり連絡が……」

 またんきが口を開いた直後、学校から戻ってきたのだろう、手鏡からミセリが叫んだ。
 ツンはミセリを見下ろし、緩く首を振った。

ξ゚听)ξ「もういいわ、フサ達なら見付けたから。ただ、キュートはいないけれど――」







('A`)「よいしょ、っと……」

 コインロッカーから荷物を下ろし、キュートは駅を出た。
 時計を見れば、もう4時半。

('A`)「どこに行こう……」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:49:45.17 ID:yBxgnfzjO

 そうだ、折角駅にいるのだから、電車に乗って遠くに逃げてしまえばいい。
 駅の中に戻ろうとして――キュートの足は止まった。

('A`)(……友達、出来たのに……)

 逃げるということは、またんき達と遊べなくなるということ。
 あの3人といるのは楽しい――

('A`)(……)



 ――いや。

 カラオケでのまたんきの言葉が脳裏に過ぎる。


   (・∀ ・)『あんな、俺な、前からドクオと話してみたかったんだ』


 彼が仲良くなりたかったのは、聖徒会の一員で、寺の息子のドクオだ。
 キュートには真似することの出来ない、本物のドクオ。

 それなのに自分が彼と友達になったって、彼の期待に応えられるはずがない。
 下手をすれば、すぐに愛想を尽かされるかもしれないのだ。

 ならば、やはりまたんき達のことは忘れてしまおう。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:52:33.11 ID:yBxgnfzjO

('A`)「……あ」

 携帯電話が鳴る。
 開いてみると、『メールを受信しました』という文字が目に入った。

('A`)(またんき、さんだ)

 差出人はまたんき。
 メールの文面は、たった一言。

   『ドクオに取り憑いてるって本当?』

 その一文だけでも、キュートの心には刃のように突き刺さる。

('A`)「……ばれちゃったのか」

 きっと、またんき達はがっかりしたことだろう。

 「友達」への未練が、完全に消えていく。

 しかし、内藤とツンは、もうまたんき達の所まで辿り着いたのだろうか?
 ということは、このまま外を出歩いていては、いずれすぐに見付かってしまう。
 電車を待つ時間も惜しい。
 一旦、どこかに隠れなければ。
 遠くに逃げるのはそれからだ。

('A`)「あそこに行こう――」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:55:25.03 ID:yBxgnfzjO


(;^ω^)「キュートさんの具合が悪そうだったって、まさか……」

ξ;゚听)ξ「生命力がそろそろ供給に追い付かなくなってきたのよ。
      急がないと……!」

 カラオケ店を離れた2人は焦りを感じていた。
 キュートは、またんき達と別れてしまった。
 どこへ行くつもりなのか、もう見当もつかない。

 当初の予定通り、虱潰しに探すしかなくなったのである。

(;^ω^)「……ドクオ……!」







('A`)「ふう……」

 ここなら、きっと誰も来ない。
 明日の早朝までやり過ごそう。

 携帯電話を開き、時間を確認する。
 もうそろそろ、6時を迎えようとしている。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 21:58:35.52 ID:yBxgnfzjO



(;^ω^)「すいません、僕らと同い年くらいの男の子を見ませんでしたかお!?
       背はあんまり高くなくて、細身で――」

ξ;゚听)ξ「顔は気持ち悪いです!」

(;^ω^)「……もう少し言い方はないのかお?」

 帰宅する人々に溢れ返る駅で、内藤達は通り掛かる人間に聞き込みをしていた。
 だが、誰も彼も知らないと言って、さっさとその場を後にする。
 ――目撃情報を得るのは、不可能だった。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:00:34.65 ID:yBxgnfzjO



 誰もキュートの元へ来ないまま、さらに3時間が過ぎる。
 キュートは満足げに微笑んだが、

(;'A`)「……っ!」

 どくん、と、心臓が大きく跳ねた。

(;'A`)(また……!)

 カラオケのときのように、目眩が襲い掛かる。
 冷たい床の上に転がり、痛む頭を両手で押さえた。

(; A )(苦しい、苦しい――)

 このまま、死んでしまうのだろうか?
 自分は再び死ぬのか。
 そんなのは嫌だ。
 ようやく手に入れたんだ。
 欲しかったものを、ようやく。

 それを今更逃しはしない。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:03:58.06 ID:yBxgnfzjO


(;^ω^)「駅にもネットカフェにもいないお……!」

ξ;゚听)ξ「日付が変わるまで、もう2時間もないわ」

ミセ;゚ー゚)リ「どうしましょう……」

ξ;゚听)ξ「……ブーン」

(;^ω^)「お?」

ξ;゚听)ξ「もう、賭けるしかないわ。
      ――ミセリちゃん、今すぐ学校に戻って、学校中を見てきてちょうだい」

(;^ω^)「学校? でも学校なら、エクストが全部――」

ξ;゚听)ξ「だからよ。一度見た所ならしばらくは見返さないだろうと予測して、
      キュートも一か八かで逃げ込んでるかもしれないわ」

ミセ;゚ー゚)リ「行ってきます!」

ξ;゚听)ξ「いい? 行けるところ全部よ!
      私達は、これから学校に走って向かうから!」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:07:40.71 ID:yBxgnfzjO


 ――だが、ツンの策も虚しく。

ミセ;゚−゚)リ「会長さん……」

(;^ω^)「ミセリちゃん! 僕達もそろそろ学校に着くから……」

ミセ;- -)リ「……」

 しばらくして鏡に戻ってきたミセリは、涙声で、どこにもいないと言った。

(;^ω^)「……!」

ξ;゚听)ξ「そんな……もう、どうしたらいいの……?」

 思わず、2人の足が止まる。
 諦めにも似た何かがじわじわと迫り、彼らの胸を締め付けた。

ξ; )ξ「……ドクオ……!」

 ツンが悲痛な声を上げ、内藤は小さな十字架を握りしめる。

 ふと。
 ある考えが、内藤の頭を掠めた。

(;^ω^)「――まだ、探さなきゃいけないところがあるお」

 それは、絶望的な確率の中の、最後の希望であった。



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:10:22.70 ID:yBxgnfzjO





 苦しい。痛い。気持ちが悪い。

 時間が分からない。

 寝そべっている感覚すら、消えていく。



(; A )「くっ……う、う……」

 もう、指一本動かせない。
 それでも生きてやる。
 生きて、生き抜いてやる。

 そして、今度こそ自分は――



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:13:25.46 ID:yBxgnfzjO





      「み、つけたお……」




(; A`)「――!」





 強い耳鳴りの中、声がした。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:16:37.99 ID:yBxgnfzjO

(;^ω^)「はっ、はあっ、はあ……き、キュートさん、見付けたお……」

(;'A`)「な、ぃと……さ……」

ξ;゚听)ξ「でかしたわ、ブーン!
      もう諦めかけてたけど……」

 ――内藤と、ツン。
 その後ろからエクストと理事長も追ってきている。

(;^ω^)「ツンが賭けに出たように、僕も賭けてみたんだお。
       学校の中に限定して、誰も来ないような場所で、ミセリちゃんが行けない場所……
       つまり人気が少なくて、鏡になるものがまったくない所。
       階段とか、――屋上の前、とか」

(;'A`)「……っ……」

 肩で息をしながら内藤が説明する。
 内藤の賭けは、見事的中したのだ。

 キュートが横たわるここは、以前ドクオに連れて来られた屋上前。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:19:32.58 ID:yBxgnfzjO

<_プー゚)フ「早くドクオから出てけ!」

( ФωФ)「君が出ていかないと、ドクオ君が死んでしまうのである」

(;'A`)「死……?」

ξ;゚听)ξ「出ていかないなら――強制的に出すわよ」

 ツンが玉串を突き付ける。
 キュートは逃げようとしたが、それほどの体力はもう残っていない。
 逡巡して、


o川;゚ -゚)o「――っ」


 ドクオの体を、離れた。

ξ;゚听)ξ「……偉いわ。さあ、こっちに――」

o川;゚д゚)o「嫌!」

ξ;゚听)ξ「へ?」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:22:34.66 ID:yBxgnfzjO

 捕まえようとするツンを躱し、キュートが鍵のかかったドアの向こうへ消える。
 内藤達は一瞬呆気に取られたが――

(;^ω^)「エッ、エクスト! キュートさんを捕まえてきてくれお!」

<_プー゚)フ「任せろ!」

 エクストもドアを通り抜け、キュートの元へ向かった。

ξ;゚听)ξ「理事長、鍵は!?」

( ФωФ)「その鍵ボロっちいからツン君が2、3回殴れば壊れるである!」

ξ;゚听)ξ「あんた、私を女と思ってないわねマジで」

(;^ω^)「……そうだ、ドクオ!」

 内藤は足元に倒れているドクオを抱き起こした。
 息も絶え絶えだが、まだ生きている。
 ほっとして、内藤はツンの手鏡にいるミセリを呼んだ。

(;^ω^)「ミセリちゃん、ドクオを看てくれお」

ミセ;゚ー゚)リ「はいっ!」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:26:05.02 ID:yBxgnfzjO

( ФωФ)「ホライゾン君、モナー君を呼ぶである。ミセリ君は何か入れ物に水を一杯」

ミセ;゚ー゚)リ「水……保健室にあるコップに一杯入れてきます!」

(;^ω^)「モナーさん?」

( ФωФ)「モナー君が司るのは『水』。
       そしてドクオ君の家『鬱紫寺』は、竜神様――水の加護を受けているのである。
       モナー君から力を分けてもらえば、魂の回復も早い」

(;^ω^)「つ、司るとか……属性あったのかお……」

 理事長の説明を受け、内藤はすぐに紫色のバッジを掲げた。
 呪文を唱える。

( ^ω^)「聖徒会執行部に告ぐ!
       VIP高等学校屋上前において事件発生!
       至急現場に来られたし!
       音楽室のモナー、
       ――召喚(ウェルカム)!!」

( ´∀`)「ほいほい、呼ばれて飛び出て! ――おお、なんか佳境入ってるモナ?」

( ФωФ)「かくかくしかじか」

( ´∀`)「合点承知」

( ^ω^)(やだ、何かやたらスピーディに話が進んでる)



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:30:01.30 ID:yBxgnfzjO

ミセ;゚ー゚)リ「お水持ってきました!」

 ミセリが水の入ったコップを抱えて戻ってくる。
 今度は、いつもの保健室の鏡に入ったままだ。
 コップを持ったまま手鏡に移動するのは難しかったらしい。

 しかしまあ、額縁から半身を乗り出させているモナーと
 鏡から半身を乗り出させているミセリが並ぶと、何だかシュールだった。

( ФωФ)「さあ、水を飲ませてあげるのである。
       結界内で清められた水は、それだけでも
       ドクオ君にはよく効く薬であるからして」

ξ;゚听)ξ「よっしゃ壊れたあ!」

(;^ω^)「あ、本当に鍵壊せたんだ」

 鍵をぶち壊したツンは、蹴り破る勢いでドアを開け放した。
 屋上の柵の辺りで、エクストがキュートの服に噛み付き必死で引き止めている。

o川;゚д゚)o「放して、放してってば!」

<_フ;゚皿゚)フ「ふぁなしゃねえー!」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:34:22.40 ID:yBxgnfzjO

ξ゚听)ξ「そこまでよ、キュート」

o川;゚ -゚)o「っ!!」

 キュートはツンを見て、抵抗をやめた。
 もう無駄だと判断したのだろう。
 エクストは、そっと口を放した。

ξ゚听)ξ「……あなた、前に私が何を望んでるのかを訊いても、答えなかったわね。
      でもね、昨日私たちがあなたの家に行ったときに、分かっちゃったわ」

o川*゚ -゚)o「――家に、行ったんだ……」

 ドクオをミセリ達に預け、内藤はツンの隣に立つ。

( ^ω^)「高岡キュートさん。
       君は、姿も、部屋の内装も、何もかも可愛らしい女の子だけれど」

o川*- -)o「……」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:35:22.55 ID:yBxgnfzjO




( ^ω^)「心だけは、男の子だったんだおね」




o川*゚ -゚)o「……そう、だよ」





 ミセリがキュートの部屋の姿見から教わったのは。

 「女の子らしさ」に囲まれることを嫌う、キュートの本心だった。




72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:40:05.67 ID:yBxgnfzjO

( ^ω^)「お母さんが君を可愛く可愛く育てるのが、君は本当は嫌だったのに、
       正直な自分の気持ちを言えないままでいたんだお」

o川*゚ー゚)o「……お母さんは、私の幸せのためだって、いつも言ってた。
      だから、拒むに拒めなかったの。
      そもそも、体は女なのに、心は男である私が悪いんだと思ってたんだよ」






 ぴくり、ドクオの体が揺れた。

( ФωФ)「ドクオ君、起きたであるか?」

(;'A`)「……きゅーとさんは……」

ミセ*゚ー゚)リ「向こうです。――動かないで下さい」

( ´∀`)「まだ、ちゃんと治ってないモナ」



 日付が、変わる。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:45:14.62 ID:yBxgnfzjO

o川*゚ -゚)o「だけどね、やっぱり嫌なものは嫌だった。
      可愛くアレンジ出来るから髪を伸ばしなさい、
      可愛い服や人形を揃えなさい、
      楽器を演奏している姿は綺麗で可愛いから吹奏楽部に入りなさい――。
      ……全部、私は望んでいないのに」

<_プー゚)フ「悲しいことに、それが全部似合っちゃってたんだな」

o川  - )o「……可愛いってみんなが言ってくれる度、ちくちく、胸が苦しかった」

 胸に右手で触れる。
 そこにある膨らみが憎らしくて、キュートは爪を立てた。

o川  - )o「死んで、幽霊になったとき、初めに思ったのは
      『男の人に取り憑いてみたい』、ってこと。
      それで体を貸してくれる人を探してたら、ある幽霊さんに、
      隣町のお寺にとっても取り憑きやすい男の子がいるって教えられたの」

ξ゚听)ξ(幽霊ネットワーク恐いわあ)

o川  - )o「それで実際ドクオさんの体を借りたら……すっごく、すっごく楽しかった。
      ようやく『自分』になれた気がした」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:48:36.33 ID:yBxgnfzjO

 声が、唇が、震える。
 大きく息を吸い、キュートは思いきり胸の内を吐き出した。

o川  - )o「本当は、女の子でいたくなかった!
      髪を短くして、男の子の制服を着て、友達と馬鹿な話をして笑いたかった!」

 ぐしゃぐしゃに顔を歪めて、キュートは叫ぶ。
 ずっと抑えつけていた心を叫ぶ。

o川 д )o「可愛くなれるお化粧なんて覚えたくない、
      可愛い服なんて着たくない、
      可愛い振る舞いなんてしたくない、
      恋やお洒落の話なんてしたくない、
      『可愛い』なんて言葉、聞きたくない!」

( ^ω^)「……キュートさん」

ξ゚听)ξ「……」

o川  - )o「私は、……っ……」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:52:00.39 ID:yBxgnfzjO



o川 ;Д;)o「――僕は! 男の子になって、生きたかった!!」





( A )「それなら」





 しゃらん。
 擦れ合った数珠が、音を立てた。




83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:55:42.20 ID:yBxgnfzjO

( A )「それなら――」



('A`)「――俺を信じろ、キュートさん」

o川 ; -;)o「!」

(;^ω^)「ドクオ!?」

 現れたのは、ドクオ。
 右手首に数珠を引っ掛け、足を引きずりながら、一歩一歩、キュートへ近付いてくる。
 その後ろでミセリが心配そうな顔をして止めようとしていた。

ミセ;゚д゚)リ「ドクオさん、無理しちゃ駄目です!」

ξ--)ξ「……ま、大体予想は出来てたわ」

(;^ω^)「ドクオ、休まなきゃ……」

('A`)「……放してくれ」

 ドクオの腕を掴み引き止める内藤。
 その手を振り払い、ドクオは鈍重な動きで歩を進めた。
 まだ回復しきっていないのだろう、辛そうな呼吸と、額に滲む汗がそれを示している。

 しかしドクオは立ち止まらない。
 立ち止まれない。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 22:58:29.95 ID:yBxgnfzjO

o川 ; -;)o「……どうして? どうして、そんなに……」

('A`)「……悪いな、キュートさん。
    こう言われるのは嫌だろうが……」

 立ち止まれない理由は、非常に簡潔で、そしてドクオという人間の根本にあった。
 たった一つのその理由。

('A`)「俺、可愛い女の子が大好きだから、放っておけねえんだよ」

 端から見れば滑稽な、しかし彼にとっては真面目な。
 譲れる筈もない、ドクオの本質。

o川 ;−;)o「……ドクオさん……」

('A`)「なあ、キュートさん。
    今までの自分が嫌なら……男になりたいんなら」

 キュートの前に立つ。
 いつもドクオが異性を見るときのような嫌らしさは、その瞳に無い。
 真っ直ぐで、真剣な瞳。

 しゃらん、と、再び数珠が鳴った。

('A`)「俺を、――仏を、信じろ」

o川 ;−;)o「ほと、け……?」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:02:09.83 ID:yBxgnfzjO

 二、三度、深呼吸をして、ドクオは口を開く。


('A`)「――この世の生き物、動植物は輪廻転生を繰り返します。
    死後、別の生命として生まれ変わるのです。
    死んでは生まれ、死んでは生まれ……これは仏教では『苦しみ』と考えられています。
    自由を奪われている苦しみ、と」


 説法のように、ドクオは静かに語り始めた。
 誰もが口を閉ざし、夜の闇の中、ドクオの言葉に耳を傾ける。

('A`)「その苦しみを幾度となく繰り返す中、いつしか悟りを開き、
    輪廻転生の苦しみから解脱……抜け出すことで、
    ようやく私達は極楽浄土へ行けるのです。
    ――この話は一旦置いておきましょう」

 しゃらん。数珠が鳴る。
 しゅるり。衣服が擦れる。

 皆の耳に入るのは、その小さな音と、ドクオの声。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:05:32.02 ID:yBxgnfzjO

('A`)「死後、四十九日内に転生は行われます。
    キュートさんも、これから転生するのです。
    ……先程言った通り、輪廻転生とは今とは別の姿へ生まれ変わること。
    男へと生まれ変わることだって有り得ます」

o川 ゚−゚)o「……あ……」

 キュートの顔から、すっかり涙は消えていた。
 表情が、僅かに緩む。

('A`)「勿論、男に生まれ変わったとて、今の記憶はありません。
    ……しかし、あなたの望みが叶ったことには変わりないでしょう。
    どうか、転生後のあなたが、今のあなたの望む姿でありますよう」

o川 ゚−゚)o「男に、生まれ変わる……」

('A`)「あなたの想いが強ければ、必ずや」



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:09:26.13 ID:yBxgnfzjO

( ^ω^)(! キュートさんの足が――)

 内藤はキュートの足元を見て、ぎょっとした。
 今まではしっかり先まで存在していた足が、ゆっくりと消えていっているのだ。

 慌てて内藤がツンに振り返ると、ツンは黙ったまま頷いた。
 その仕草で、内藤は、ツンと自分の考えが一致していることを確信した。


 キュートは――ドクオの言葉通りに表すならば――転生へと向かっている。


('A`)「願わくは、あなたが幸福に次の世を生きられますことを」


 合掌し、ドクオは頭を下げた。



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:12:58.60 ID:yBxgnfzjO

 しばしの沈黙。
 それは、ドクオが頭を上げたことで破られる。

('A`)「――やっぱ、じいちゃんたちみたいに上手く話すのは俺には無理かな」

o川*゚ -゚)o「……ありがとう」

 キュートの体は、太腿辺りまで消えてしまっている。
 自らの体とドクオを交互に見遣って、キュートは、笑った。

o川*゚ー゚)o「嬉しい、ドクオさん」

('A`)「喜んでもらえたなら俺としても満足だ」

o川*゚ー゚)o「……僕、男の子になれたらいいな」

 腰から下が完全に消えた。

('A`)「……ああ」

o川*゚ー゚)o「……もし……もし、ね」

 消える速度が上がる。
 もはや胸元から上しか存在していないキュートは、しかしそれでも焦る様子もなく、
 ドクオに言葉をかけた。



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:15:51.62 ID:yBxgnfzjO

o川*゚ー゚)o「僕が、男の子に生まれ変わって、ドクオさんと会えたら……」

 首が消えかかる。

 キュートは、



o川*^ー^)o「一番の友達になってね」



 満面の笑みを浮かべて。

 空へ、溶けていった。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:18:59.58 ID:yBxgnfzjO



('A`)「……」

 目を閉じ、再び合掌し、一礼する。
 再度の沈黙。
 その沈黙を破る者は、誰も、いなかった。





 『蠍座・男 日曜日:人助けが出来る日。偽らず、本当の自分をさらけ出してみて。
           そうすれば、きっと誰かを助けられる筈!』





98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:23:00.31 ID:yBxgnfzjO





 ――月曜日。
 登校したドクオは、事態を飲み込めずにいた。

(・∀ ・)「本物? ほんとに本物?」

('(゚∀゚∩「校門で内藤に会ったときに聞いたけど、解決したらしいよ!
      しかも美味しいところはドクオが持ってったみたいだよ!」

ミ,,゚Д゚彡「さっすがドクオ、寺生まれは伊達じゃないからー」

(;'A`)「あの……何?」

 今までろくに話したことのないクラスメートが3人ほど、親しげに話し掛けてくるのだ。
 キュートに取り憑かれていた間の記憶がないドクオからすれば不可解な状況である。



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:26:29.38 ID:yBxgnfzjO

(・∀ ・)「何も知らないのか?
      幽霊inドクオのときに仲良くしてたんだけど」

(;'A`)「あ、つるんでたクラスメートってまたんき達のことだったのか」

('(゚∀゚∩「幽霊はいなくなったみたいだけど、これからも仲良くしてほしいよ!」

ミ,,゚Д゚彡「あの幽霊さんのおかげでドクオと友達になれたし、
      まあ結果オーライだからー」

(*・∀ ・)「そうそう、小さい頃から幽霊や妖怪が身近にいるってどんな感じなの?
      あ、折角だし改めて4人で遊ぼうぜ」

('A`)(あれ、もしかして俺友達増えた?)

 結果オーライ、とは、よく言ったものだ。



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:30:10.08 ID:yBxgnfzjO

 そして放課後。

(*ФωФ)「むひょひょひょひょ」

ξ;゚听)ξ「……この爺さんは何でテンション高いの?」

(;^ω^)「さあ」

(*ФωФ)「しぃ君達の事件のときは我輩留守だったから、
       今回初めて君達の大活躍を見れて嬉しいのである」

<_プー゚)フ「俺も結構頑張ったぞ」

(*ФωФ)「うむうむ、エクスト君も立派な聖徒会の一員であるぞ」

ξ゚听)ξ「――んで、例によってドクオがなかなか来ないんだけど」

( ^ω^)「そういえば……」

<_プー゚)フ

( ФωФ)

ξ゚听)ξ

( ^ω^)

ξ;゚听)ξ「……まさか……」(^ω^;)



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/16(土) 23:32:34.33 ID:yBxgnfzjO

 かたかた、小さな音がする。
 そちらへ目を向ければ、机に伏せる形で置かれているツンの手鏡が揺れていた。

 嫌な予感を全身で感じながらツンが鏡を上向ければ。

ミセ;゚ー゚)リ「たっ、大変です! ドクオさんが動物霊に憑かれてしまったみたいなんです!」

 予感的中。


ξ;゚听)ξ「……もう、いいわ」

(;^ω^)「いや良くないお」

(*ФωФ)「カメラカメラ!」

<_プー゚)フ「ま、オチはついたかな」


 ドクオの霊媒体質が治らない限り、この問題は繰り返されそうである。





第三話:終わり



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