( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:22:20.64 ID:BsQz0h/VO


 ――おねえちゃん。
 おねえちゃん。

(´・ω・`)『けっこんって、なあに?』

     『好きな人同士が、ずっと一緒にいること』

(´・ω・`)『じゃあ、ぼく、おねえちゃんとけっこんする』

     『きょうだいは結婚出来ないよ』

(´・ω・`)『そうなの?』

     『残念だけどね』

(´・ω・`)『じゃあ、じゃあね。おねえちゃんみたいにやさしいひととけっこんする』

     『私も、ショボンが優しい人と結婚してくれると嬉しいな』

(*´・ω・`)『えへへ』



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:26:17.50 ID:BsQz0h/VO



 泣き声。
 少年の泣く声がする。

(´;ω;`)『お姉ちゃん、お姉ちゃあん……!』

 ――助けてよ、助けに来てよ。

 黒い靄が追いかけてくる。
 ぎょろぎょろとした目を二つだけくっつけた、黒い靄。

(´;ω;`)『お姉ちゃああん! うわあああああああん!!』

 生い茂る草を掻き分けながら走り続けていると、少し開けた場所に出た。
 石に躓き、転んでしまう。

 慌てて身を起こして振り返ると――靄は、遠くで留まっていた。

(´;ω;`)『……?』

 立ち上がる。
 こちらの動きを目で追ってはいるが、近付いてはこない。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:29:37.36 ID:BsQz0h/VO

(´;ω;`)『……何で……?』

 転んだときに擦りむいた膝が痛んで、思わずよろけた。

 傍にあった大きな木に寄り掛かる――

(´;ω;`)『――え?』



 ずぶり、と。
 木の中に手が吸い込まれた。




第四話:ショタコンと幼馴染みと美少年 後編



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:32:40.60 ID:BsQz0h/VO



ξ;゚听)ξ「――っ!!」

 跳ね起きる。
 どくどく、激しい鼓動が胸に響く。
 ツンは自分の手を見下ろした。

 大樹に手を飲み込まれる生々しい感触が、目を覚ました今もなお掌に残っている。
 あれは、ただの夢ではない。

(´・ω・`)「……ツンさん、せっかく眠らせたのにすぐ起きちゃったね。
      あのままずっと寝かせるつもりだったのに」

ξ;゚听)ξ「……ショボン君……」

 ツンの隣に腰掛け、彼女を見下ろすショボン。
 あの夢はショボンの記憶なのだろうか。







( ^ω^)「――ミセリちゃん、どうだお?」

ミセ*゚ー゚)リ「まだ、位置は掴めません……。
      皆さんが詳しい情報を見付けてくだされば何とかなりそうですが」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:36:40.94 ID:BsQz0h/VO

 目を伏せ、ミセリが祈るように両手を握る。

ミセ*゚ー゚)リ「申し訳ありません、お役に立てず……」

( ^ω^)「いや、そんなことないお。
       寧ろ、キュートさんの事件や蛇の事件でも
       ミセリちゃんに頼りっぱなしで、こっちが申し訳ないぐらいだお」

ミセ*゚ー゚)リ「そんな、私は大したことはしてません……」

( ^ω^)「充分、僕達の力になってくれてるお――お?」

 ぴぴぴ、と電子音が響いた。
 内藤の携帯電話の着信音だ。
 携帯電話のディスプレイには、「出連神社」の文字。

 ツンの母親からだろう。
 もう日付が変わる時間だ。

( ^ω^)「はい、内藤ですお。
       すみませんお、ツンは……まだ、見付かってはいないけど――
       ……警察? いえ、警察にどうにか出来る事態じゃなくて……。
       今、学校の七大不思議のみんなに手伝ってもらってますお。
       きっと朝になる前に助けられますお、絶対に。
       ――え? ああ……そういえば、そんなこともありましたお。
       ……はい、……任せて下さいお」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:39:33.53 ID:BsQz0h/VO

 内藤が電話を切ると、ミセリが「ツンさんの親御さんですか」と訊ねてきた。
 その問いに頷いて返す。

( ^ω^)「神社の近くを回っても見付からないから、警察を呼ぼうとしてたらしいお。
       でも、こればっかりは警察には見付けられないおね」

ミセ*゚ー゚)リ「ですね……逆に混乱を招く可能性もあるかもしれません」

( ^ω^)「それと、懐かしい話を聞いたお。
       昔、ツンが迷子になったのを僕が見付けて――」

 途中で口を閉じる。
 はたと思い付いたことがあって、内藤はミセリを見た。
 ミセリが、どうしましたと首を傾げる。

( ^ω^)「たしか、ミセリちゃんとツンはお互い木に関係があるから相性が良いんだおね?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。おかげでツンさんが異次元にいても何とか存在を確認できました」

( ^ω^)「ミセリちゃんはツンの傍にいることで、何か影響を受けるかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「えっと……安らぐと言いますか、んん……心地良い、感じがします」

( ^ω^)「――もしかしたら、あの子もツンと居るのが心地良いのかもしれないお」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:42:45.76 ID:BsQz0h/VO



('A`)「12年前か……懐かしいな。
    あのときもツンが帰ってこなかったんだよな」

 書庫。
 12年前の新聞をめくりながら、ドクオはぽつりと呟いた。

川 ゚ -゚)「ほう、迷子にでもなったか?」

('A`)「そうそう。俺とブーンとツンの3人で神社の近くで遊んでたんス。
    そしたらツンが、神社の裏山に入っていって。
    『すぐ戻ってくる』っつったのに全然帰ってこないから、ブーンが探しに行って……」

( ФωФ)「――裏山?」

 ドクオの隣で13年前の新聞を開いていた理事長が、その手を止める。
 記憶を辿り、はっとしたように顔を上げた。

( ФωФ)「裏山……そうである、出連神社の裏山!」

(-@∀@)「どうしましたか理事長」

( ФωФ)「15年前の新聞を出してほしいのである! 15年前の7月!」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:46:27.18 ID:BsQz0h/VO

( ∵)[どうぞ]

 理事長の言う時期の新聞を棚から引きずり出し、ビコーズが理事長の前へ置く。
 それを急いでめくり、理事長は目的の記事を探した。
 15年前、7月。クールも思い当たる事件があったらしい。

川 ゚ -゚)「神隠し事件か!」

( ФωФ)「その通りである!」

<_プー゚)フ「神隠し?」

( ФωФ)「――あった!
       15年前、7月! 『小学4年生、鈴木ショボン君が行方不明』――……
       『ショボン君は姉と共に出連神社の裏山で遊んでいたが、
       いつの間にか姉と離ればなれになってしまった。
       捜索隊を派遣するも見付からず。近隣住民は神隠しではないかと噂している。』
       ……特徴は、青いシャツに黒い半ズボン、髪は茶色」

( ゚д゚ )「そいつだな!」

( ФωФ)「翌年に捜索は打ち切られ、未だに発見されていないのである」

( ´∀`)「行方不明の少年が、何故彼女を……?」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:49:30.45 ID:BsQz0h/VO

( ФωФ)「ふむ……――山に取り込まれたかもしれん」

川 ゚ -゚)「……なるほど、山の一部になったのか」

( ФωФ)「だからツン君の霊気に惹かれたのであろう」

('A`)「山……」

 ドクオは12年前のことを思い返す。
 山には妖怪や死霊が多いから近付くなとツンの両親から何度も言い聞かせられた。
 特にドクオは危険だから、絶対に山に入るなと。

 言い付け通り、内藤はツンを探しに行く前にドクオを神社へ置いていった。
 だから山の中で何があったのか、ドクオは2人から聞いた話でしか知らないのだが――




ξ゚听)ξ『おーっきな木の下にいたらね、
      黒い、もやもやーっとしたのが近付いてきたの』

('A`)『もやもや?』

ξ゚听)ξ『顔はね、目しかなくって』

(;'A`)『こわい……』



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:52:25.47 ID:BsQz0h/VO

ξ*゚听)ξ『でも私のところまでは来なかったの。
      きっと、おっきな木の神様が護ってくれたんだよ!』

( ^ω^)『僕がお水をかけたら、もやもやは消えたんだお。
       ツンのお家のお水はすごいお!』

ξ*゚听)ξ『とーぜんでしょ! でね、でね、私、神様に、
      ありがとーって、お水かけてあげたの。えらい?』

(*^ω^)『えらいおー』

('A`)『お水でもやもやが消えちゃったんなら、神様も消えちゃうんじゃないの?』

ξ*゚听)ξ『消えないよー。
      もやもやは悪いやつだから、私ん家の良いお水が苦手だったの!
      神様は良い神様だから、良いお水で元気になるの!』

(*'A`)『へぇー、そうなんだあ』




 ――神様。

('A`)(おっきな木……神様。神隠し……)

 ツンの話とショボンの事件。
 裏山、そして神。
 この共通点に、何かがある。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:54:20.76 ID:BsQz0h/VO

('A`)(水をあげたから気に入られた?
    でもどうして今更……それに、ショボンと何の関係が……。
    ……単なる偶然なのか?)

( ∵)[ともかく、ミセリちゃんに知らせよう!]

 ビコーズは記事を抜き取り、書庫を飛び出した。
 他の者もそれを追う。

 1人残ったドクオは、新聞を手に取った。
 例の記事より後の日付の新聞へ目を通す。
 もっと手掛かりがあるかもしれない。
 ショボンの目的を知る手掛かりが。

('A`)「……」

 手が止まる。
 ショボンが行方不明になってから3日後の新聞。
 隅の方に、小さくだが続報が記されている。

 ――ショボン君は発見されておらず――捜索範囲を拡大――隣町まで行った可能性も――

('A`)「……!」


 ――『当時ショボン君と遊んでいた姉・ダイオードちゃん(十二)によると』――



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 20:57:46.25 ID:BsQz0h/VO



ミセ*゚ー゚)リ「鈴木ショボン君……そうですか、山に……。
      今し方、理事長の推測と同じことを、会長さんもおっしゃっていました」

( ^ω^)「昔、ツンは裏山にある樹に清められた水をあげたことがあるんですお。
       そのときに気に入られたのかと」

( ФωФ)「なるほど。山の一部となり、ツン君を気に入ったショボン君は、
       彼女を自分のものにするため、学校までやって来た……」

(-@∀@)「今2人がいる異次元は、山の中というわけか」

ミセ*゚ー゚)リ「山の中にある次元の穴を探してみます!」

川 ゚ -゚)「ブーン、バッジは持ってるか?」

( ^ω^)「ありますお」

川 ゚ -゚)「ミセリちゃんに貸してやれ、バッジで力を増幅させた方が良い」

 言われた通り、オレンジ色のバッジをミセリに渡す。
 ミセリが両の掌にバッジを乗せると、バッジはオレンジの光を発しながら、
 ふわりと宙に浮かんだ。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:00:19.56 ID:BsQz0h/VO

(;‐ω‐)(どうか、ツンが山にいますように……!)

 皆が固唾を飲んで見守っていると、ドクオが慌ただしく駆け込んできた。

(;'A`)「理事長、ダイ先生を呼んでくれ!」

( ФωФ)「鈴木先生を?」

(;'A`)「ダイ先生は、ショボンのお姉さんだ!」

(;^ω^)川 ゚ -゚)(;-@∀@)「なんだってー!!」( ゚д゚;)(´∀`;)(ФωФ;)

<_プー゚)フ「……ダイオードって誰?」









/ ゚、。 /「……深夜に呼び出されたから何かと思えば……。
      七大不思議さん勢揃いとは凄い光景ですね」

 校庭へ呼ばれた体育教師、鈴木ダイオード。
 彼女は内藤とドクオにエクスト、そして七大不思議達を見て目を丸くさせた。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:03:19.43 ID:BsQz0h/VO

( ФωФ)「鈴木先生、一つ訊きたい」

/ ゚、。 /「何でしょう?」

( ФωФ)「君は、ショボン君という少年を知っているか」

 ダイオードの指が微かに揺れたのを、ミルナは見逃さなかった。

( ゚д゚ )「知ってるだろ。
     ショボンは15年前神隠しに遭った、あんたの弟だ」

/ ゚、。 /「……知りません」

川 ゚ -゚)「証拠だってあるぞ。
     当時の新聞に、ショボン君の姉である貴女の名前が載っている」

/ ゚、。 /「……」

(-@∀@)「実はだね、先生。ツン君がショボン君に攫われた」

/ ゚、。 /「へえ……」

(-@∀@)「何か知らないかい?」

/ ゚、。 /「……いいえ。何故、私にそんなことを訊くんです?
      私が関わってるはずないでしょう」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:06:21.34 ID:BsQz0h/VO

('A`)「はっきり言おうか。
    俺達は、あんたを疑っている」

 ふ、と、ダイオードの口から息が漏れた。
 嘲るように。

/ ゚、。 /「何を疑うというんです?」

('A`)「俺が撮っていた映像に、校舎からプールを眺めるショボン君の姿が映ってる。
    ――プールには当然先生も居た。
    15年ぶりに自分の姉を見た弟が、姉をスルーして、いきなりツンに向かうか?」

/ ゚、。 /「15年ぶりだからです。
      成長した私のことが分からなかったんでしょう」

('A`)「姉だと認めたな」

/ ゚、。 /「……」

( ^ω^)「鈴木先生、本当のことを話して下さいお」

/ ゚、。 /「……本当のこと? 何を言うんです。
      ――きっとショボンは、幽霊になっても私を見守ってくれていたんです。
      私の傍に居て、私の成長を見てきた。
      だから、私を無視したんじゃなく……
      わざわざ改めて私に関わる気もなかったのでは?」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:09:34.08 ID:BsQz0h/VO

( ´∀`)「ここら一帯、特に学校の敷地内は大霊場モナ。
       ごく一般的な霊魂のエクスト君が実体化するほどの。
       もしショボン君が鈴木先生の傍についていたというなら、
       先生が学校に来るほぼ毎日、ショボン君は実体を得ていた筈。
       ここにいる誰か1人でもショボン君を見ていないとおかしいモナ」

<_プー゚)フ「だけど、だーれもショボンを見たことはないぞ!」

( ∵)[話の始めにショボン君が弟であることを否定したのも怪しいし]

/ ゚、。;/「……く」

 多勢に無勢。
 矢継ぎ早に反論され、ダイオードがたじろぐ。
 今の、この彼女の動揺こそが真実に変わりなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「……先生。
      私は今から、ショボン君とツンさんのいる場所へ、この鏡を繋ぎます」

/ ゚、。;/「繋ぐ……?」

ミセ*゚ー゚)リ「お二人の居場所は先程突き止めました。
      出連神社の裏山の、とある大きな樹の、その中……。
      そこと鏡に道を通わせるんです。
      長くは持ちません。どうかその間に、正しいご判断を」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:14:12.58 ID:BsQz0h/VO


 ミセリが両手を広げる。
 間に浮かぶ、オレンジ色のバッジ。


ミセ*- -)リ「――ひとつ単の一処 引き行く先の秘奥へと
      ふたつ再び振り返る 二人の過去での踏み合わせ――」


 ミセリの鏡は淡く光り、鏡面からミセリが消えた。
 そしてそこに映る――幼いダイオードとショボン。


/ ゚、。;/「ショボン……!?」


  ――みっつ御坂と道の果て 身篭る幹に見顕す
    よっつ四つ辻選り分ける 縁を呼び寄す夜夜中――


 手を繋ぎ、楽しげに笑い合う姉弟。
 その微笑ましい光景は掻き消え、次に映ったのは、
 恐怖に涙を流しながら大樹に取り込まれるショボンの姿。

(;ФωФ)「あの樹に捕まったのであるか」

川 ゚ -゚)「神隠し、か。神は神でも、人を喰うのを好む神が宿っているようだな」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:19:32.54 ID:BsQz0h/VO

('A`)「喰う――」

(-@∀@)「きっと、ああして人の魂を溜め込んで成長していくのさ。
      ショボン君はその被害者だよ」


 ――いつつ幾重の命を抱く 今は何処や偉躯の神
   むっつ結んで迎え入れ 睦まじ無二の昔人――


(;^ω^)「……ツン!」

 鏡に映るのは、12年前、迷子になったときのツン。
 黒い靄に怯え、内藤に助けられ、大樹に清めた水をかけ。

 次に変わった映像は。
 大人になったダイオードが、大樹の前に立っている場面。
 ――ダイオードの隣に、誰かが佇んでいる。

( ФωФ)「鈴木先生、あれは……」

/ ゚、。 /「……つい先日の……光景です」

 すっかり力が抜けた様子のダイオードは、俯きながら答えた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:23:22.13 ID:BsQz0h/VO

( ´∀`)「隣にいる人は?」

/ ゚、。 /「何者かは知りません。
      ――『流石』、と、名乗っていました」

<_プー゚)フ「……え?」

 ダイオードが口にした名前。
 それを耳にしたエクストは、鏡に映る姿を凝視した。
 「流石」は背を向けていて、その顔を見ることはできない。

( ゚д゚ )「知ってる奴か?」

<_プ−゚)フ「……わからない、けど。知ってる、気がする」



 ――ななつ七色七つ子鏡 七つの星の名の下に――



(;'A`)「ぶわっ!」

( ∵)[うおっまぶしっ]

 今までよりも激しさを増した、オレンジ色の光が溢れだす。
 あまりの眩しさに全員目を覆った。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:26:51.94 ID:BsQz0h/VO

 やがて光が拡散する。
 顔を覆う手を下ろせば、そこには――



ξ;゚听)ξ「――ブーン、ドクオ……?」

(´・ω・`)「……お姉ちゃん」



 鏡の向こう、真っ暗な空間に座り込んでいる、ツンとショボン。
 ツンが無事であるのを見て、内藤は知らず知らず、安堵の息をついていた。

ξ;゚听)ξ「え、何これ」

(;^ω^)「ミセリちゃんが鏡を繋げてくれたんだお。ツン、怪我は?」

ξ゚听)ξ「別に、ないけど……助けに来てくれたの?」

(;'A`)「そうだよ。……心配かけやがって」

 ショボンとダイオードが見つめ合う。
 ダイオードは目を逸らし、その場に崩れ落ちた。

/ ゚、。;/「……ごめん、ショボン……お姉ちゃん、失敗しちゃった……」

(´・ω・`)「……そっか……」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:29:45.30 ID:BsQz0h/VO

<_プー゚)フ「ツンー!」

ξ;゚听)ξ「エクスト!」

<_フ;゚ー゚)フ「もぎゃっ!」

 エクストは一直線に、猛スピードで鏡へ向かった。
 ツンを助けようと思ったのだろう。
 だが、あっさり鏡面に跳ね返される。

<_フ;゚ー゚)フ「入れねえ……!」

川 ゚ -゚)「ふむ、ツンを引きずり出すのは無理か」

( ФωФ)「ツン君を解放してくれるように、
       ショボン君を説得しなければならないのである」

(;^ω^)「――ショボン君!」

(´・ω・`)「……」

(;^ω^)「お願いだお、ツンを返してくれお!
       僕達の、大事な友達なんだお!」

ξ#゚听)ξ「友達止まりかよ!!!!!」

(;^ω^)「えっなんか怒られた!?」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:33:16.87 ID:BsQz0h/VO

( ゚д゚ )「おいショボン、その女はとんでもない変態だぞ!
     汚される前に捨てろ!」

ξ#゚听)ξ「誰が変態ですって?」

(´・ω・`)「ちょっとそんな感じはしてた」

ξ;゚听)ξ「嘘ぉっ!?」

(-@∀@)「えーっと……とにかく解放してくれ」

ξ゚听)ξ「特に台詞浮かばないなら黙ってろ」

(-@∀@)「前々から思ってたんだけど君は私のことが嫌いなのかな?」

( ´∀`)「寧ろツン君がショボン君を解放するモナ!」

( ∵)[そっちの方が正しいかもしれない]

 何だか気の抜けた説得――とも言えない適当な言葉――が飛び交う。
 それを無視し、ショボンはツンの手を握りしめた。



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:38:30.57 ID:BsQz0h/VO

(´・ω・`)「……返さないよ。
      僕は、ツンさんと結婚するんだ」



( ^ω^)('A`)<_プー゚)フ

( ФωФ)川 ゚ -゚)(-@∀@)

( ´∀`)( ゚д゚ )( ∵)



( ^ω^)('A`)<_プー゚)フ

( ФωФ)川 ゚ -゚)(-@∀@)  「は?」

( ´∀`)( ゚д゚ )( ∵)



 時が、止まった気がした。



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:44:01.03 ID:BsQz0h/VO

( ^ω^)「いや。いやいやいや……それは……」

('A`)「ツン、脅して言わせてるんじゃないよな?」

<_プー゚)フ「えっ……正気で言ってるのか、ショボン」

ξ゚听)ξ「お前ら何急にテンション下がってんだおい」

川 ゚ -゚)「まだ子供だから敵と味方を判別出来ないんだな……」

(-@∀@)「全力で考え直した方が良いぞショボン君」

( ´∀`)「絶っっっっっ対に後悔するモナよ」

( ゚д゚ )「自ら死地に赴く気か……」

( ∵)[やめとけよ……]

( ФωФ)「あの……先生、弟が変態の被害に遭ってもいいのであるか?」

/ ゚、。 /「……『結婚』というのは、ショボンなりに言い換えただけです。
      実際は――『ずっと一緒にいること』」

ξ゚听)ξ「え、私を愛してるから結婚したかったんじゃないの?」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:48:42.45 ID:BsQz0h/VO

川 ゚ -゚)「ずっと一緒に、とは、まさか……」

/ ゚、。 /「出連さんを樹に閉じ込めるんです」

(-@∀@)「何故そんなことを?」

/ ゚、。 /「あの樹に宿る神を封じるために、です。……出連さんの……」


 出連さんの命をもって――


(;^ω^)「……!?」

 ダイオードの言葉に、内藤は殴られたような衝撃を受けた。

 ――命なんて、そんな、それじゃあ。

(;^ω^)「ツンを……殺すんですかお……」

ξ;゚听)ξ「うえぇっ!?」

(;'A`)「ふっ……ふざけんなよ! 何だよそれ……!
    何でそんなこと!!」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:52:34.46 ID:BsQz0h/VO

 訥訥と、ダイオードは語り始める。

/ ゚、。 /「……先日、『流石』と名乗る男に、
      ショボンが居るという場所へ案内されました」

<_プー゚)フ「……あの樹か」

/ ゚、。 /「はい。ショボンが食べられてしまった大きな樹……。
      流石が言うには、ショボンはもう、
      あの樹の新しい神様に成りつつあったそうです」

( ФωФ)「前にいた、ショボン君を喰った神はどうしたのである?」

(´・ω・`)「……一度、消えかかったんだ」

 理事長の問いに答えたのは、ダイオードではなくショボン本人。
 ツンの手を握る力が強くなる。

(´・ω・`)「樹に捕まった後、僕はすぐには吸収されずに、しばらく残っていた。
      多分、一番美味しい時期まで待つつもりだったのかも。
      そしたら、ある日、ツンさんが来た」

ξ゚听)ξ「……12年前?」

(´・ω・`)「何年かは分からないけど、昔だよ。
      ――あのとき、黒い、変なのが居たでしょう? もやもやした奴。
      あいつも人を食べるのが好きなんだ。
      あのままだったらツンさんは黒い奴か神様のどちらかに食べられてた」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 21:57:47.16 ID:BsQz0h/VO

ξ゚听)ξ「……そういえば、あいつが近付いてこれなかったのは
      樹の神様が私を護ってくれたからだと思ってたんだけど。……違うの?」

(´・ω・`)「神様の方が力が強かったから黒い奴が近付いてこれなかっただけだよ。
      あのときのツンさんは、本当に絶体絶命って状況だったね」

('A`)「――そこに、ブーン……この兄ちゃんが助けに来た?」

 ドクオが内藤を指差すと、ショボンは「そう」と頷いた。

(´・ω・`)「お兄さんが水をかけたおかげで黒いのが消えたでしょ?
      あのお水は、悪いものが嫌がるお水なんだね。
      それを、お姉さんは樹にもかけた。そのせいで神様が弱っちゃったの」

ξ;゚听)ξ「……私、お礼のつもりだったんだけど」

(´・ω・`)「そうだね。ありがとうございましたって言ってたお姉さんを見て、
      勘違いしてるなあとは思ったよ。
      実際は神様が弱ったおかげで、僕が助けられたんだ」

( ФωФ)「なるほど。そして弱った神の代わりに、と、
       山がショボン君を新しい樹の神に選んだ……」

/ ゚、。 /「今は完全な神様になるための力を蓄えている時期だと流石は言いました。
      ……だけど」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:00:43.60 ID:BsQz0h/VO

(´・ω・`)「元の神様が、回復し始めてるんだ」

 ――「神様」は、12年経った今、ツンによって受けたダメージから復活しつつあるという。
 もし元に戻ってしまえば、今度こそショボンは樹の糧となってしまう。

 だから、その前に。

/ `、、 /「『出連神社の娘を贄にしてショボンの力を一気に肥大させろ』、と」

( ФωФ)「流石という男が言ったであるか?」

/ ゚、。 /「はい。
      出連さんならば属性的にぴったりだからだとか」

<_プー゚)フ「……」

( ゚д゚ )「それが、『結婚』か」

/ ゚、。 /「そして流石はショボンの魂の一部を樹の外に出し、
      今回の作戦を説明したんです。
      私と共に学校へ行き、出連さんを捕まえる作戦……。
      けど――こんなに早くバレるなんて思いませんでした」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:04:00.71 ID:BsQz0h/VO

( ^ω^)「……ツンを犠牲にすることに……抵抗は、なかったんですかお」

/ `、、 /「……ショボンが樹の養分になり消えてしまうよりは、
      神様になって、生きていてほしかったんです」



 そのとき。

 ぴしり、鏡の右隅に小さな罅が入った。


(;∵)[鏡が!]

(;ФωФ)「しまった、限界が近い……。
       このまま鏡が割れれば、ミセリ君まで巻き込まれてしまう!
       それに、ショボン君達に再度接触するのが難しくなるのである!
       そうなったら今度こそツン君は……!」

川 ゚ -゚)「おい先生。まだ死んだ弟の方が大事だと言うつもりか」

/ ゚、。;/「それは……! だって、だってショボンは!」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:07:47.87 ID:BsQz0h/VO

 教師である以前に、1人の姉。弟を見捨てられる筈もない。
 彼女は「流石」に作戦を教わったときに、
 生徒への愛より弟への愛を優先させると決めたのだ。
 それを今更撤回出来るものか――


ξ゚听)ξ


ξ--)ξ


ξ゚ -゚)ξ



    「――もう、いいわよ」




 大声を出したわけでもないのに、誰のものよりも響いた声。
 ツンの言葉。



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:12:15.84 ID:BsQz0h/VO

(;^ω^)「ツッ……!」

ξ゚听)ξ「ショボン君を見殺しにするわけにもいかないし。
      私の家の裏山に、人喰うような物騒な樹を放置するのも嫌だし」

 そんな言葉は、まるで。

( ゚д゚ )「……お前、自分から生け贄になる気かよ」

ξ゚听)ξ「何、心配してくれてるの?」

( ゚д゚ )「馬鹿か」

ξ゚听)ξ「素直じゃないのね。
      ……まあ、それに。
      早くしないと駄目っぽいし」

(-@∀@)「駄目って――」

(´・ω・`)「神様が、あと少しで起きちゃいそう。回復したみたい」

ξ゚听)ξ「嫌ーな予感がぞわぞわしまくってんのよ。
      ほんと、もー時間の問題って感じに。
      ……ミセリちゃんの鏡もね」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:16:20.18 ID:BsQz0h/VO

 ぴし、ぴし。
 右下の罅が広がる。
 罅が入った場所は白く曇り、向こうを映せなくなっていた。
 これが全体に広がってしまったら――全て終わり。

 「だから私はショボン君と『結婚』するわ」と言って、


ξ゚ー゚)ξ

 ツンは笑った。


(;゚д゚ )「――……っ」

川;゚ -゚)

(;ФωФ)


 静まり返る校庭に。


(; ω )「……ふざけるなお……」


 震える声が、染み渡った。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:19:35.51 ID:BsQz0h/VO

ξ゚听)ξ「……ブーン?」

(; ω )「嫌だお。絶対に、絶対にツンを取り返すんだお」

( A )「ああ。樹が何だよ。神様が何だよ。
    他がどうなろうと、ツンは助けるぞ」

ξ;゚听)ξ「ドクオ……だって、私達は、こういうときに人や霊を助けるためにいるのよ。
      私がショボン君から離れたら、ショボン君が……」

( A )「らしくねえこと言って『優しいお姉さん』気取るんじゃねえよ阿呆。
    たしかにうちのジジイやお前らの父ちゃんから、
    生きた人間も死んだ魂も助けろって言われてきたが」

(  ω )「……何より一番大事にするべきなのは、僕の父さんが言ってた――」



(#'A`)「――支え合い、助け合うことだろうが!」

(#^ω^)「ドクオは僕とツンが守る!
       僕はドクオとツンが守ってくれる!
       だからツンのことは、僕とドクオが守るんだお!!」


ξ゚听)ξ「……!」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:26:05.83 ID:BsQz0h/VO

 勝手に1人で犠牲になるなと怒鳴りつける内藤とドクオ。
 ツンの顔から、表情が消え――


 ぽろり、涙がこぼれた。


ξ;;)ξ「……やだ……」

(´・ω・`)「ツンさん?」

ξ;;)ξ「ほんとは、死ぬの、やだよ……」

(´・ω・`)「……」

 ショボンは、そこでようやく気付いた。
 ツンが、本当はずっと怯えていたことに。

 少し前、怖くないかと訊ねたショボンに、ツンは怖くないと答えた。
 必ず助けが来るから、怖くないと。
 それは、全てではないにしろ、いくらかは嘘だったのだ。
 彼女は強いのではなく、強がっていただけ。
 素直になるのが、苦手だから。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:29:28.74 ID:BsQz0h/VO

 鏡の半分ほどまで罅が入る。
 時間がない。


(#'A`)「ブーン!」

(#^ω^)「何だお!」

(#'A`)「死ぬ気で! 5秒で! 解決策を考えろ!!」

(#^ω^)「……」

(#'A`)「……」

( ´ω`)「……」

('A`)「頼むマジで俺には方法浮かばんから」

ξ;;)ξ「お前らふざけんな」

( ∵)[台なしだ]



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:33:52.34 ID:BsQz0h/VO



<_プー゚)フ「――方法ならあるぞ」

 再び気が抜けた瞬間。
 思いもよらない者から声が飛んできた。



(;゚д゚ )「エクスト!?」

川 ゚ -゚)「お前には賑やかし程度の期待しかしていなかったんだが本当か!?」

(-@∀@)「ちょっとストレートすぎやしないかい、クー君」

<_プー゚)フ「要するに『神様』を消しちまえばいい。
       昔、ツンが水をかけてやった程度で弱ったのなら――」

 エクストは鏡の後ろへ視線をやった。
 その方向にあるのは、


<_プー゚)フ「あのプールの水を半分くらい樹に降らせてやれば、
       『神様』もいなくなるだろ」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:37:56.77 ID:BsQz0h/VO

(;ФωФ)「……! そうである、ここのプールの水には清めの効果が!」

(;^ω^)「で、でも、どうやってあれだけの量を山に……」

( ∵)[――僕がやる]

( ゚д゚ )「ビコーズが?」

( ∵)[モナーさんとクール、モララーはプールの水を準備して]

(*´∀`)「やっとモナの出番!」

 しばらく空気だったモナーが張り切り、クール達を連れてプールへ移動する。
 ビコーズは校庭の真ん中へ駆けていった。

(;'A`)「一体何を……」

 そのまま、ビコーズが円を描くように走り始める。
 ズレることなく繋がった足跡が、黄金色に輝いた。

( ゚д゚ )「ステップサークルだ!」

( ФωФ)「ビコーズ君お得意の魔法陣である!」

 ――ビコーズが司るのは「土」。
 彼が地面を踏み締めて出来上がる足跡には力が宿る。
 その足跡で描く魔法陣「ステップサークル」こそが、彼の真骨頂。
 グラウンドと大樹の真上を繋ぐ、水の通り道を作る。



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:41:32.09 ID:BsQz0h/VO

( ´∀`)「さあさあ、ちょっと水を借りるモナよ」

(-_-)「何かよく分かんないけど……好きなだけどうぞ……」

 足を引っ張る霊や人面ナマコ達がプールサイドへ上がってくる。
 全員がプールから出て、準備は完了した。

( ´∀`)「御協力感謝モナ!」

 モナーが指揮棒を振り上げる。
 それに反応するように、プールの水が持ち上がった。

川 ゚ -゚)「サークルの真ん中にぶっかけるんだな」

(-@∀@)「そのために私達が水を誘導すればいい」

川 ゚ -゚)「……ぶっかけるってエロくないか?」

(-@∀@)「そういうのいいから」

 クールとモララーがビコーズの描くサークルへ向かい、
 その後をついていくように水が迫る。
 指揮棒で細かいコントロールをしながら、モナーもそれを追った。



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:44:47.77 ID:BsQz0h/VO

 大きな円の中にいくつかの図形と文字を引き、サークルが完成する。
 サークルの外へ出たビコーズは、宙へ向けて両手を広げた。

(-@∀@)「ここだ!」

( ´∀`)「――清らかなる流水よ、彼の地に向かい降り注がん!」

川 ゚ -゚)「それ呪文?」

( ´∀`)「今適当に考えたモナ!」

 クールとモララーがサークルの真上へ留まり、モナーが指揮棒を振り下ろす。
 水の塊が、一気に地面へ吸い込まれ――

 刹那、サークルから空へ向かって黄金色の光の柱が出来上がる。
 その瞬間が終わると、静かにサークルは消えていった。

( ФωФ)「成功であるか!?」

/ ゚、。;/「あ――」

 鏡からショボンとツンの姿が消え、ミセリが現れる。
 辛そうな顔をして、ミセリは小さく笑った。

ミセ;゚ー゚)リ「……ツンさんの気が、外へ出ました。助けに、行ってあげて……下さい……」

(;^ω^)「ミセリちゃん!」

ミセ;- -)リ「少し……休みます……」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:48:50.98 ID:BsQz0h/VO

 ミセリが目を閉じると、鏡の全面が曇り、真っ白になってしまった。
 内藤が理事長へ顔を向ける。
 理事長は、大丈夫だと頷いた。

( ФωФ)「鏡を直すことは出来んが、ミセリ君は無事である。
       新しい鏡に移動させて、しばらく休ませてあげればいい」

 そこへ、ビコーズ達が戻ってくる。

( ∵)[どう?]

( ^ω^)「成功みたいだお。みんな、ありがとうお。
       ――エクスト、よく思いついたおね」

<_プー゚)フ「何か、こう、ぶわーって浮かんできた」

( ФωФ)「早速だが、ミセリ君を回復させるのに何人か協力してほしいのである」

川 ゚ -゚)「把握」

( ´∀`)「分かったモナ」

(-@∀@)「私の所の鏡に移そうか」

川 ゚ -゚)「トイレの鏡はなぁ……」

(;-@∀@)「別に汚くないからね?」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:51:26.93 ID:BsQz0h/VO

('A`)「……さて、裏山に行くか」

( ∵)[乗せてくよ]

( ゚д゚ )「俺も行く」

<_プー゚)フ「俺も!」

( ^ω^)「先生も行きますかお?」

/ ゚、。 /「……いいんですか?」

( ^ω^)「ショボン君の確認と、それと、ツンに謝ってほしいお」

/ ゚、。 /「――行きます」

( ∵)[5人か……頑張って重なってね]

/ ゚、。;/「え? 重な……え?」



 ――かくして、薪の上に内藤が座り、内藤の上にダイオードが座り、
 ダイオードの上にドクオ、ドクオの上にミルナ、
 そしてミルナがエクストを抱き抱えるという壮大な光景が出来上がったのであった。



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:54:58.43 ID:BsQz0h/VO



 ダイオードが大樹への道筋をビコーズに説明し、
 何度か迷いかけながらようやく辿り着いた頃には
 内藤の足が重量に耐え切れなくなる直前であった。

(;^ω^)「ツン!」

<_プー゚)フ「ツーン!!」

 大樹の前には、横たわるツン。
 内藤達は急いでツンに駆け寄った。

ξ--)ξ「ん……」

 内藤がツンを抱き起こすと、ツンはゆっくりと瞼を上げた。

ξ-听)ξ「……ブーン……」

(;^ω^)「ツン……」

ξ゚听)ξ「……」

 自分の肩に触れる熱。
 それが内藤の手であるのを知覚したツンは、



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 22:58:50.19 ID:BsQz0h/VO

ξ;*///)ξ「気安く触ってんじゃないわよ!!」

(;゚ω゚)「なぽりっ!!」

 手加減無しの全力で内藤を殴り飛ばした。
 その一部始終を、ドクオとミルナは呆れた顔で眺める。

('A`)「こういうときぐらい自分から抱き着くなり何なりすりゃいいのに」

( ゚д゚ )「だな」

ξ*゚听)ξ「あら、ミルナ! 来てくれたのね可愛いやつ!!」

(;゚д゚ )「わぶっ! お、お前が死んでたら笑ってやろうと思って来ただけだ!」

('A`)(ツンよりもミルナの方がツンデレっぽい事実)

ξ*゚听)ξ「ちゅーしてやろう、ちゅー」

(;゚д゚ )「やめろ馬鹿!」

<_プー゚)フ「ツぅうーンー」

 内藤には恥ずかしくても、ミルナには堂々と抱き着けるらしい。
 ぎゅうぎゅうミルナを両腕で締め付けるツンの頭に、エクストが乗っかる。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:01:26.54 ID:BsQz0h/VO

<_プー゚)フ「俺にもちゅーちゅー」

ξ゚听)ξ「するかボケ。
      ……でも、あんたの機転のおかげで助かったのよね。
      なかなかやるじゃない」

<_プー゚)フ「おお、褒められた」

ξ*゚ー゚)ξ「……ブーンもドクオもエクストもミルナもビコーズも……
      みんな、ありがとね」

(*゚д゚ )「……ふん」

( ∵)[ミルナ照れてる]

(*゚д゚ )「うっさいバーカ」

('A`)「一方ブーンはツンに殴られた拍子に地面に頭を強打して気絶しているのであった」

(  ω ) チーン

ξ;゚听)ξ「ああっ、ブーン!?」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:05:02.86 ID:BsQz0h/VO


/ ゚、。 /「……」

 大樹の前に立ち、ダイオードは幹に手を触れた。
 湿った感触。しっかりプールの水を吸収したようだ。

/ ゚、。 /「ショボン……」

ξ゚听)ξ「ショボン君、無事ですよ」

 ツンは立ち上がり、ダイオードの隣に立った。
 ダイオードと同じように、大樹へ手を置く。

ξ゚听)ξ「『神様』は消えたみたいです。
      それと、ショボン君が『ありがとう、ごめんなさい』って」

/ ゚、。 /「……そうですか」

ξ゚听)ξ「今は自力で再び生前の姿をとることは出来ないだろうけど、
      ショボン君が力を溜めて、この樹の神様になったら、
      昨日みたいに樹の外に出られると思います。
      ――そのときに、話したいことを話してあげて下さい」

/ ゚、。 /「……」

 零れそうになった涙を抑えて、ダイオードはツンに向き直った。
 そして、頭を下げる。



77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:09:22.69 ID:BsQz0h/VO

/ `、、 /「出連さん、私の我が儘で大変迷惑をかけました。
      謝って済む話ではないのは分かっていますが、謝罪させてください。
      ……どうも、すみませんでした」

 ――ツンは、ダイオードをしばらく見つめて、

ξ゚ー゚)ξ「別に怒ってません。あんな可愛い男の子と知り合えたんだから」

 と、彼女らしい言葉で答えたのであった。










 翌日の放課後、聖徒会室。
 内藤とツン、ドクオ、エクストのいつものメンバーに加え、
 理事長とダイオードがそこにいた。
 話の内容は、ダイオードが言っていた「流石」という男について。



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:12:51.46 ID:BsQz0h/VO

/ ゚、。 /「学校からの帰り道でした。……あの日は時間が遅くて」

 ――いつもより遅い時間だったため、その日は家路に人気が少なかったそうだ。
 1人歩くダイオードに、反対側から歩いてきた男が突然声をかけてきたという。

 ――『やあ、お姉さん。昔、弟と生き別れ……いや、死に別れなかったかい』――

/ ゚、。 /「何故知っているのかと問えば、自分は何でも分かるのだ、と答えました」

 ――『だから俺は弟君の居場所も分かる。ついておいで。
    なに、怪しい者じゃない。俺は流石という』――

 怪しいとは思いつつ、本当にショボンに会えるならとダイオードは男の後をついて行った。
 着いた先は出連神社の裏山、その中の大樹の前。
 そこで男は、昔ショボンに何があったのか、そして今はどんな状態であるかを説明した。
 訝しむダイオードに、男は証拠だと言って大樹からショボンを引っ張り出す。


 ――『ほうら、本当だろう。はは、感動の再会だな。
    さあ、ご姉弟よ、俺の言う通りのことをしたまえ。
    そうすれば助かる』――


 ――『生徒を利用するのは気が引ける?
    それが何だ、たまたまあんたが教師で相手が生徒だっただけのこと。
    元より赤の他人さ。弟君と天秤にかけりゃあ
    どっちに傾くかなんて分かり切ってることだろう』――



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:16:09.74 ID:BsQz0h/VO

 何故こんな作戦を教えてくれるのかとダイオードが訊ねると、
 男は「もちろん条件はある」と答えた。

 ――『妹を探してるんだ。
    髪はそんなに長くない。白い着物を着た、
    8歳くらいの、目が真ん丸な可愛い娘』――

/ ゚、。 /「その子を見たことがあるだろう、どこに行ったか知りたい、と言われました」

( ^ω^)「実際に見たことがあったんですかお?」

/ ゚、。 /「ええ、一週間ほど前に。
      今時珍しい格好をしていたので覚えていました。
      ……それで私、流石の質問に答えようとしたんです。
      なのに……」

 ダイオードが答える前に、男は、

 ――『分かったよ、ありがとう』――

 そう言って、その場を去っていってしまった。

ξ゚听)ξ「まるで心を読んだみたいね」

/ ゚、。 /「私もそう思って、気味が悪くなってしまいました」

( ФωФ)「ふむう、流石、か……」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:19:24.32 ID:BsQz0h/VO

('A`)「――エクスト、どうした?」

 ふとエクストを見たドクオは、思わずぎょっとした。
 エクストが辛そうに震えているのだ。

<_フ; − )フ「頭……いってえ……」

ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとエクスト……」

(;^ω^)「大丈夫かお?」


 ――流石。妹。心を読む――


 ダイオードの話に出てくる言葉が、エクストの頭の奥深くに突き刺さる。
 何かを思い出させようとしているかのようだ。

<_フ; − )フ「ちょっと、外、出る……」

(;^ω^)「ゆ、ゆっくり休むお」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/10/23(土) 23:23:08.15 ID:BsQz0h/VO



 聖徒会室を出て誰もいない廊下へ移動すると、少し落ち着いた。
 改めて、ダイオードの話を反芻する。

<_プー゚)フ(……流石……)

 きっと、自分に深く関わりのある名前なのだろう。
 生前の自分に。


<_プー゚)フ「……」


 記憶を刺激される度、痛む頭。
 思い出すなということか、はたまた思い出せということか。

 少し――自分の過去が、恐くなった。





第四話:終わり



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