( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:27:02.63 ID:uyNG0ccpO
- 『俺の妹の回収、そして、復讐を開始する』
- 流石兄者と名乗る男、その妹の妹者。
- その事実に驚く間もなく、
- 「――うわあああああああああっ!!」
- ミルナの悲鳴が響き渡った。
- 第七話:七大不思議と「せいとかい」 前編
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:30:34.60 ID:uyNG0ccpO
- ξ;゚听)ξ「ミルナ!」
- 真っ先に動いたのはツン。
- 体育館に向かい、駆け出す。
- (;^ω^)「な、何が起こったんだお!」
- 少し遅れて、内藤、ドクオ、モララーと妹者も続いた。
- 理事長も追い掛けようとして、一旦立ち止まり、
- (;ФωФ)「みんな、とにかくその場から動くでないぞ!」
- と昇降口に溜まる生徒と教師に告げた。
- 体育館の扉を開け放し――そこに広がる光景に、ツンは目を見開いた。
- あまりのショックに、あ、と弱々しい声が洩れる。
- そして、震える唇で、何とか言葉を紡いだ。
- ξ;゚听)ξ「――わ」
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:33:52.68 ID:uyNG0ccpO
- 「可愛い少年だなあ」lw´‐ _‐ノv(*゚д゚;)「むむむむむ胸が胸が」
- ξ#゚听)ξ「私のミルナに何やっとんじゃボケェエエエエエエエ!!!!!!!!!」
- 体育館のど真ん中。
- やたら大きな胸を強調した服装の女性が、ミルナをぎゅうぎゅう抱きしめていた。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:37:33.06 ID:uyNG0ccpO
- (*'A`)「何あのエロいお姉様!?」
- (;^ω^)「……誰だお」
- ξ#゚听)ξ「そこのアバズレ! ミルナを放しなさい!」
- どすどすと力強い足取りで歩み寄り、ツンは女性に指を突きつけ叫んだ。
- 女性は顔を上げ、首を傾げる。
- lw´‐ _‐ノv「それは出来ない相談だな」
- ξ#゚听)ξ「何でよ!」
- lw´‐ _‐ノv「私がショタコンだからだ」
- (;-@∀@)(変態が増えた―――――!)
- (*゚д゚;)「はなしてくりゃしゃい」
- lw´‐ _‐ノv「それは出来ない相談だな」
- lw´‐ _‐ノv「私 が シ ョ タ コ ン だ か ら だ !」
- (;^ω^)(2回言った―――――!)
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:40:30.92 ID:uyNG0ccpO
- ミルナを抱えたまま、女性は立ち上がる。
- 20歳ほどだろうか。真っ白な肌に、長い黒髪。
- 身につけているのは、裾が長いワンピース。
- 紫色の生地に、金色の縁取りが眩しい。
- 胸元がやけに開いていて、その大きな膨らみを存分にアピールしていた。
- ぴったりと体に張り付くような服で、
- クールにも引けを取らないスタイルをあらわにさせる。
- その随分豊かな胸をミルナの顔に押しつけるような形で抱きしめているため、
- ミルナは、その慣れない感触に顔を真っ赤にしていた。
- (//д/;)「あびゃびゃびゃびゃ」
- lw´‐ _‐ノv「欲しいなあ。一日中エロいことして愛でてえなあ」
- (*'A`)「うわあああああドックンのツボをぎゅんぎゅん押してくるよおおおおおお」
- l从・∀・ノ!リ人「ドクオは何で前屈みなのじゃ?」
- (;ФωФ)「見ちゃいけません!」
- ツン以外のメンバーは、体育館の入口の外から様子を伺っていた。
- というのも、変態と変態に挟まれる少年という組み合わせに関わるのが
- 若干、いやかなり嫌だったからである。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:43:24.19 ID:uyNG0ccpO
- ξ#゚听)ξ「ていうかミルナぁ!
- あんた私に抱きしめられるときはひたすら嫌がるくせに、
- その売女にはそういう反応するわけ!?」
- (//д/;)「だだだだだだってツンには無い柔らかい感触が、ふにゅって、ふにゅって」
- lw´‐ _‐ノv「……ふっ」
- ξ゚听)ξ
- ミルナの言葉。ツンの胸を見て鼻で笑う女性。
- ツンの額辺りから、ぷっつんという「切れる」音がした。
- (;ФωФ)「ツン君から凄まじい邪気がぁっ!」
- (;-@∀@)「ミルナ君逃げろー!」
- ξ#゚听)ξ「オレサマ オマエ ブチコロス!!」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:47:35.62 ID:uyNG0ccpO
- どこから出したのやら、いつものように玉串を構える。
- 巫女装束を翻し、ツンが駆け出した。
- 目標は、謎の女性。
- 身を屈め、ツンは玉串を振りかぶり――
- ふう、と、女性は息をついた。
- lw´‐ _‐ノv「立入禁止」
- ξ#゚听)ξ「え――」
- 途端、ツンの足が床から離れる。
- そのまま、入口へと吹き飛ばされた。
- 飛ばされた先にいるのは内藤。
- ξ;゚听)ξ「――きゃあああっ!」
- (;゚ω゚)「キャメロン!!!!!」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:50:13.32 ID:uyNG0ccpO
- 内藤を巻き添えにする形で、ツンは床の上をごろごろ転がっていく。
- ようやく止まったのは、体育館の扉から数メートル離れた位置。
- 痛む背中を気遣いながら内藤は身を起こす。
- (;^ω^)「いたた……――あ」
- ――視線の先には、仰向けに倒れ、自分を見上げているツン。
- まるで、内藤がツンを押し倒しているような体勢だ。
- 慌てて内藤は立ち上がる。
- (;*^ω^)「あっ、ごっ、ごめんお!」
- ξ;///)ξ「う、ううん……い、いいよ……こっちこそごめんね……?」
- (;ФωФ)「コテコテのラブコメやってる場合じゃねーからぁ!!」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:54:18.98 ID:uyNG0ccpO
- (;-@∀@)「今のは一体何をしたんだ……?」
- モララーが体育館の中を注視する。
- そして、目の前、開け放された扉と扉の間に、
- 何か細く光るものが、まるで網を張るようにしているのに気付いた。
- そっと指を触れさせる。
- (;-@∀@)「――つっ!」
- その瞬間、ばち、と音を立ててモララーの手が弾かれた。
- lw´‐ _‐ノv「言ったじゃないか、『立入禁止』」
- 網の向こう、変わらず体育館の中央に立つ女性は無表情で言った。
- 余裕綽綽といった態度で、その場に座り込む。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:56:46.30 ID:uyNG0ccpO
- (*゚д゚;)「は、離して……」
- lw´‐ _‐ノv「動くの禁止」
- (;゚д゚ )「――!?」
- 女性から逃げようとしたミルナ。
- しかし、すぐさま彼女の言葉に固まった。
- 入口を封じるのと同じ「細いもの」が、ミルナの体にぐるぐると巻き付いたのだ。
- 身動きを取れなくなったミルナが倒れ込む。
- (;ФωФ)「ミルナ君!」
- (*'A`)「緊縛プレイktkr!」
- l从・∀・ノ!リ人「きんばくぷれー?」
- (-@∀@)「その言葉は迅速に忘れようね」
- ξ;゚听)ξ「ミルナ!」
- ツンが再び駆け寄ろうとするも、やはり網に弾かれてしまった。
- ξ;゚听)ξ「っ、何なのよ、これ!」
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 19:58:44.19 ID:uyNG0ccpO
- lw´‐ _‐ノv「――ところで、コスプレ集団よ。
- 君達、ここにばかりかまけていて大丈夫なのかい?」
- (;^ω^)「……へ……?」
- lw´‐ _‐ノv「男子トイレ」
- ゆっくりと、女性は口を開く。
- lw´‐ _‐ノv「女子トイレ。音楽室。保健室。校庭。理事長室。――体育館」
- つらつらと並べるのは、この学校の。
- (;ФωФ)「……まさか」
- lw´‐ _‐ノv「私達の最初の目的はね。
- 『七大不思議、及び七大不思議の住み処の完全破壊』」
- 私「達」。
- 敵は、彼女や流石兄者だけでは、ない。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:01:30.36 ID:uyNG0ccpO
- (;-@∀@)「……くっ!!」
- 踵を返し、モララーは駆け出した。
- 彼の住み処、女子トイレへ向かうため。
- 既に敵が入り込んでしまっていればまずい。
- 住み処が壊されれば、結界を崩される。
- 結界――
- (;ФωФ)「――結界……!」
- 理事長が、気付く。
- ミセリが現在療養中であることに。
- そのため、保健室側の結界が手薄になっていたのだ。
- (;ФωФ)(流石め、そこから入りおったか――
- となると、ミセリ君が最も危険ではないか!?)
- 保健室へ向かうべきか、――いや、理事長室に行かなければ。
- 自分の持ち場を優先するべきだ。
- しかしミセリの安否が気掛かりで仕方がない。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:04:27.46 ID:uyNG0ccpO
- 理事長は、内藤達に叫ぶ。
- (;ФωФ)「恐らく、七大不思議の各スポットへ刺客が向けられておる!
- みんな、もう直感しかない、手助けするべきだと思う場所へ行け!
- 誰か1人はミセリ君のもとへ! 早く!」
- (;^ω^)「――分かりましたお!」
- (;'A`)「はっ、把握!」
- ξ;゚听)ξ「仕方ないわね……!」
- 3人が頷いたのを確認し、理事長は自分の持ち場、理事長室へ向かった。
- 手助けをする3人に対し、襲撃されるのは7人。
- 圧倒的に人手が足りないが、それで何とか持ちこたえるしかない。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:07:36.41 ID:uyNG0ccpO
- 川 ゚ -゚)「何やら騒がしいと思えば……」
- 男子トイレの前。
- 腕組みをし、前方を睨みつける素直クール。
- それに相対するのは、中学生ほどの年頃の少女。
- ノパ听)「……」
- 川 ゚ -゚)「随分とまあ久しぶりだな、――ヒート」
- ノパ听)「一体何十年ぶりだろうな、姉さん」
- クールの妹。
- 素直ヒート。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:10:26.04 ID:uyNG0ccpO
- (-@∀@)「!」
- 女子トイレに到着する。
- 相手は、律儀にもトイレに入ることなく、モララーを待っていたらしかった。
- 背が高い。服の上からでも分かる、引き締まった体。程よくついた筋肉。
- そいつは、とても――
- N| "゚'` {"゚`lリ「ほう、話には聞いていたが、想像以上の美形だな」
- いい男だった。
- (;-@∀@)(何か物凄く嫌な予感がするぅうううううう!!!!!)
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:13:19.78 ID:uyNG0ccpO
- ( ´∀`)「とても邪悪な気を振り撒いて、一体どうしたモナ、お嬢さん」
- 音楽室。
- 突如現れた女性に、モナーは優しく問い掛けた。
- |゚ノ ^∀^)「ちょっと、お友達にお使いを頼まれたものだから」
- 足元まで覆う、喪服のような黒い服を纏った若い女性。
- その手には、彼女の足から胸まで届くほどに長い、鎌。
- ( ´∀`)「まるで死神みたいな格好モナね」
- |゚ノ ^∀^)「あら、そうなのですか。
- ごめんなさい、私、目が見えないんですの。
- この服と鎌、知り合いから貰ったものだから、
- 自分がどんな姿なのか分かりませんでしたわ」
- ( ´∀`)「……そうモナか」
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:16:29.41 ID:uyNG0ccpO
- |゚ノ ^∀^)「ええと、モナーさん、でしたね。
- 私はレモナと申します。
- ――よろしくお願いいたします」
- ( ´∀`)「一体、何をよろしくするのやら」
- |゚ノ ^∀^)「あら、たしかにそうですわね。ふふふ」
- くすくす、おかしそうに笑って、レモナと名乗る女性は一礼した。
- |゚ノ ^∀^)「では、改めて。
- これから貴方と音楽室を破壊いたします」
- ( ∵)[……復讐……?]
- 校内から聞こえた放送の、その不穏さに、ビコーズは思わず校舎を見上げた。
- ぴりぴりと、嫌な気配と緊張が張り詰めているような気がする。
- 昇降口に視線を移し――ぎょっとした。
- (;∵)[何あれ]
- 生徒と教師が、わらわらと玄関に集まっている。
- 最前列にいる者達が手を動かしているが、ガラス戸は開かないようだ。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:19:26.60 ID:uyNG0ccpO
- ▼・ェ・▼ キュン?
- ( ∵)[ただ事じゃなさそうだね]
- 「――君だな、七大不思議の二宮尊徳像は」
- (`∵) !?
- 後ろからかかる声。
- しゃがれたようなそれに、ビコーズが振り返る。
- ――奇妙な男であった。
- グレーのシャツの上に、漆黒のスーツ。
- ネクタイだけが血のように赤い。
- 服装だけなら、まだ普通と言えた。
- 【+ 】ゞ゚)
- 血色の悪い肌。ひょろりとした体つき。
- ひどく不健康そうな見た目。
- 何より目立つのは、顔の右側、口から上を覆う、十字のマークが入った仮面。
- その姿はまるで――
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:22:04.55 ID:uyNG0ccpO
- (;∵),,,[ちゅ……厨二病……!]
- ▼;・ェ・▼,,, ヒャウンウン (訳:さすがの俺でもそれは引くわ)
- 【+; 】ゞ゚)「おいコラ! 引くなよ! 後ずさるなよ! 犬まで引くなよ!」
- (;ФωФ)「……!」
- 理事長室のドアが開け放たれていた。
- 慌てて飛び込めば、
- ( ´_ゝ`)「やあ、理事長さん。こんにちは。俺が流石兄者だ」
- 流石兄者が、理事長の机に腰掛けていた。
- オカルトグッズを保管しているこの部屋には、様々なものが転がっている。
- その中の一つ――机の上に置かれた白い石を、兄者は優しげに撫でた。
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:25:27.72 ID:uyNG0ccpO
- ( ´_ゝ`)「助かったよ。これを取っ払ってくれたおかげで、起きることが出来た」
- (;ФωФ)「何……?」
- ( ´_ゝ`)「こうして、復讐の機会を得た……」
- (;ФωФ)「!」
- ひとりでに扉が閉まる。
- 引いたり押したりするが、開くどころか動く気配すら無い。
- 通り抜けようとしても体が跳ね返されるだけ。
- ( ´_ゝ`)「無駄だ、理事長さん」
- 立ち上がり、兄者は笑う。
- ( ´_ゝ`)「あんたをどうにかするのは最後。
- 大事な仲間や生徒がやられていった後に、
- じっくり苦しめながら消してやるよ」
- (;ФωФ)「――貴様……何故こんなことをする?」
- ( ´_ゝ`)「復讐だってば」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:28:26.79 ID:uyNG0ccpO
- (;ФωФ)「我輩が何をしたというのだ?
- 我輩は、貴様なぞ知らんぞ!」
- ( ´_ゝ`)「俺も、あんたなんかろくに知らんし、話したこともない。
- 別に、この学校だけが復讐の対象なわけじゃあない。
- 復讐の一歩目ってとこだ」
- (;ФωФ)「……何……?」
- ( ´_ゝ`)「――俺は、この町へ復讐してやるんだ」
- 川 ゚ -゚)「懐かしいなあヒート。会いたかったよ」
- ノハ#゚听)「俺は、本当は会いたくなんかなかった!」
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:30:52.91 ID:uyNG0ccpO
- 川 ゚ -゚)「はっきり言い切るなあ。……ちょっと状況を教えてくれないか?
- お姉ちゃん混乱してるんだ」
- ノハ#゚听)「俺だって難しいことは分からん!」
- 川 ゚ -゚)「相変わらず元気の良いおバカで安心したよ」
- 男子トイレの入口の前。
- 冷静に言葉を発するクール、ぎゃんぎゃん大声で返すヒート。
- 対称的で全く似ていない2人だが、彼女達は間違いなく、死に別れた姉妹であった。
- 川 ゚ -゚)「まあ難しいことが分からないなら、分かってることだけ教えてくれ」
- ノハ#゚听)「俺のいた中学校がなくなった!
- 居場所を奪われた! 人間なんて嫌いだ!
- 楽しく暮らしてるお前らが憎い!
- ――ぶっ潰す!!」
- 川 ゚ -゚)「……やっぱりよく分からん。
- お前1人でここに来たのか?
- さっきの放送と関係あるのか?」
- ノハ#゚听)「兄者って男に誘われた!
- 姉さんが幸せな日々を送っている、悔しいなら倒してしまえと!
- 姉さんがどれほど学校生活を楽しんでいるか聞かされた!
- 生徒と仲良く遊んで、みんなから好かれて、
- 住み処も保証されていると聞かされた!
- 憎い憎い憎い憎い! ぶっ、潰す!!!!!」
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:33:47.81 ID:uyNG0ccpO
- クールは片耳に指を突っ込み、「うるさいですよお嬢さん」という顔をしてみせるが、
- ヒートはそんなことを気にしていないようだ。
- びしっと音がつきそうな勢いで、クールに向かって指を差す。
- ノハ#゚听)「一個訊かせろ!」
- 川 ゚ -゚)「何だ」
- ノハ#゚听)「その!」
- さした指が、へにゃりと曲がる。
- ノハ;゚听)「……そっ、その、」
- 両手を目元に持っていく。
- ノハ*∩凵ソ)「破廉恥な格好は何なんだぁあああああああ!」
- 視界を自ら遮って、ヒートは叫んだ。
- 下着も付けずに前を開け放したセーラー服。
- スカートはとても短く、そこから伸びる足には網タイツ。
- ちらりと覗くガーターベルト。
- そんな姉の格好が、享年14歳の妹には刺激が強すぎた。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:36:26.12 ID:uyNG0ccpO
- 川 ゚ -゚)「仕方ないじゃないか。
- 私のセーラー服がだいぶ馬鹿になっていてな、上着の前が閉まらないんだ。
- スカートなんか裾がぼろぼろでみっともなかったから切るしかなかったし」
- ノハ;*∩听)「その網タイツは何なんだよ!」
- 川 ゚ -゚)「これは単なる趣味だ」
- ノハ;*∩听)「前が閉まらないならせめて下着とかシャツを……っ、
- ていうか着替えろよ!!」
- 川 ゚ -゚)「これも単なる趣味だ」
- ノハ;∩凵ソ)「こいつただの露出狂だぁああああああああああ!!」
- 川 ゚ -゚)「開放感(笑)」
- 何十年という時を過ごしてきたとはいえ、ヒートは中学生。
- 多感な時期である彼女にとって、露出狂の姉なんてものは爆弾級の衝撃である。
- それを叫ぶことによって消化し、ヒートはようやく落ち着いた。
- ノハ;゚听)「くっ……私を見習え変態め……」
- そう言うヒートの格好は、白い長袖のブラウスに、赤いプリーツスカート。
- スカートの丈は膝上で、スカートが揺れる度に黒いスパッツが見え隠れする。
- その周到さも、姉とは正反対だ。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:39:35.37 ID:uyNG0ccpO
- 川 ゚ -゚)「お姉ちゃんに向かって変態とは、姉不幸な子だなあ。
- 別に私は見せびらかしたくてやってるんじゃない。サービス、そうサービスだ。
- 勉強や部活という支配の中にいる男子生徒を癒すためのサービス。
- まあ、お前のようなまな板には理解出来ないだろうが」
- ノハ#゚听)「うるさぁあああああああい!!」
- 川 ゚ -゚)「……む。なあヒート、私はな、ツンという生徒が大好きなんだ」
- ノハ#゚听)「……何だ急に」
- 川 ゚ -゚)「その子はな、反応が面白くて、とても可愛い。
- ついついからかってしまう」
- ノハ#゚听)「どうでもいい話をっ……!」
- 川 ゚ -゚)「お前にそっくりなんだ、ツンは」
- クールの口元が、笑みの形になる。
- 川 ゚ー゚)「ヒートは本当に昔と変わってないな。
- お姉ちゃんはそんなお前が大好きだよ」
- ノハ#゚听)「――っ!」
- ヒートが動揺する。
- ぐっと拳を握りしめ、俯いた。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:42:22.54 ID:uyNG0ccpO
- ノハ )「……」
- 川 ゚ -゚)「ヒート?」
- ノハ )「黙れ」
- ばん、と。
- クールの後ろ――男子トイレの中から、破裂音が響き渡った。
- 川;゚ -゚)「なっ……!」
- 一番奥の個室、そのドアが床に倒れている。
- 新たな敵襲かと疑ってから、クールは思い出す。
- この妹の、「力」を。
- ノハ# )「あんたも昔と変わってないな。
- 俺と違って楽しく暮らし、俺を馬鹿にして遊ぶ。
- ――そんなあんたが」
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:45:23.01 ID:uyNG0ccpO
- ノハ#゚听)「大っ嫌いだ!!」
- ヒートが怒鳴ると同時、ドアがクールに向かって飛んできた。
- かろうじてクールが躱すと、ドアは壁にぶつかり派手な音を立てた。
- それを見て、クールが顔を引き攣らせる。
- 川;゚ -゚)「その『癖』、治ってなかったか」
- ノハ#゚听)「よそ見してる場合じゃねえだろぉおお!」
- 他の個室のドアが、次々外れていく。
- それらが、まとめてクールに迫った。
- 女子トイレの前。
- モララーは、とっても逃げたかった。
- N| "゚'` {"゚`lリ「どうした? もっと近付いてこいよ。
- 安心しろ、たっぷり可愛がってやるから」
- (;-@∀@)(近付いてはいけない……! 奪われる、確実に大事なナニかを奪われる……!)
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:48:20.64 ID:uyNG0ccpO
- くいくいと腰を動かす、ツナギ姿のいい男。
- モララーは無意識に尻を押さえた。
- それは奇しくも、ジョルジュ長岡と共にいるときに感じる危機感と同じであった。
- N| "゚'` {"゚`lリ「来ないってんなら……」
- いい男は、にやりと笑う。
- N| "゚'` {"゚`lリ「こっちからイかせてもらうぜ」
- (;-@∀@)「!」
- 言うが早いか、いい男は距離を詰めてきた。
- モララーが反応する間を与えず、目の前に立ち、
- N| "゚'` {"゚`lリ「近くで見ると更に綺麗なもんだ」
- モララーの纏う赤いマント、その首元を掴む。
- N| "゚'` {"゚`lリ「あらよっと」
- そのまま、トイレの方へ向かってモララーを投げ飛ばした。
- 女子トイレのタイルに背中を打ち付ける形で着地し、モララーから苦しげな声が上がる。
- (;-@∀@)「あっ、がっ……!」
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:51:39.97 ID:uyNG0ccpO
- N| "゚'` {"゚`lリ「あんたも俺と同じとはな。
- 俺も、男だってのに住み処は女子トイレだったんだ」
- (;-@∀@)「っ、あ゙……?」
- つかつかと歩み寄り、いい男は言う。
- ――「だった」。
- それにモララーが違和感を感じた瞬間、
- いい男は、起き上がろうとするモララーの頭を蹴飛ばした。
- 弾みで眼鏡が飛び、からからと音を立てて床を滑る。
- 露になった素顔を見て、彼は、ひゅう、と口笛を吹いた。
- N| "゚'` {"゚`lリ「なるほどね、あの眼鏡で素顔を隠してたわけか。
- こんなに綺麗な顔なら、さぞかし老若男女にモテることだろう」
- (;・∀・)「……君も、学校霊なのかい……?」
- 胸を踏み付けられながら、モララーは問う。
- いい男は、こくり、頷く。
- N| "゚'` {"゚`lリ「『女子トイレの阿部さん』……ある中学校の七不思議の1人だった。
- ――というのも、元々男子トイレに住んでたんだが、
- 誰も寄り付かなくなっちまったもんだから
- 泣く泣くお隣りの女子トイレに引っ越したのさ」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:54:40.58 ID:uyNG0ccpO
- 七不思議の1人「だった」。
- また過去形。
- (;・∀・)「何故学校霊の君が、他校に来る?
- 何故私達に攻撃するんだ?」
- 問いはするが――モララーは、前者の質問への答えは、聞かずとも分かっていた。
- 学校霊が学校を離れるということは。
- その学校が、もう存在しないということ。
- N| "゚'` {"゚`lリ「……お前さんには関係のないことだ」
- (;・∀・)「……そうかい!」
- N| "゚'` {"゚`lリ「!」
- マントが火を纏う。
- 阿部と名乗った男が咄嗟に足を離すも、もう炎は阿部の足に回っていた。
- ( ・∀・)「事情を聞けないのであれば同情のしようもないな。
- 一切手加減なしでいかせてもらう」
- 66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 20:57:29.40 ID:uyNG0ccpO
- モララーが立ち上がる。
- 炎は阿部の全身へ――いや、
- N| "゚'` {"゚`lリ「ふう、なかなか熱い男だな」
- (;・∀・)「!」
- 既に、欠片もなく消滅していた。
- ぴんぴんした様子で、阿部がモララーを見る。
- N| "゚'` {"゚`lリ「で? 手加減なしに、とは、今のちゃちな火のことか?」
- (;・∀・)「どうやって――」
- N| "゚'` {"゚`lリ「どうやってだと思う?」
- 阿部がモララーの腹を殴りつける。
- 息が止まり、足がふらつく。
- 倒れそうになるのを何とか堪え、モララーは再び阿部に火を向けた。
- だが――やはり、火は一瞬阿部を覆うものの、すぐに消えてしまう。
- 瞠目するモララーの頬を、阿部の拳が強打する。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:00:27.08 ID:uyNG0ccpO
- N| "゚'` {"゚`lリ「もういっちょ」
- (; ∀ )「ぐあっ……!」
- 続けざまに顎を殴られ、モララーは床に倒れた。
- 視界が回る。
- 立ち上がろうとするが、体が激しく揺れるような錯覚に襲われ、動けない。
- N| "゚'` {"゚`lリ「イケメンの顔を殴るのは気が引けるが、仕方ないか」
- モララーを跨ぐようにして立ち、阿部はモララーを見下ろす。
- せめてもの抵抗に、モララーは阿部の足を掴んだ。
- (; ∀ )「――?」
- じわりと、シルクの手袋に広がる湿った感触。
- 思わず手を放す。
- (; ∀ )「……み、ず……?」
- N| "゚'` {"゚`lリ「ご名答」
- (; ∀ )「あ、っぐ!」
- 脇腹を踵で蹴りつけられた。
- 阿部が、くつくつと笑う。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:03:26.36 ID:uyNG0ccpO
- N| "゚'` {"゚`lリ「トイレに住むお化けなもんでな。
- 水に関しては自由自在さ。
- ――残念なことに相性が悪いな、赤マントさん。
- あんたの放つ火なんざ容易く消してやるぜ」
- |゚ノ ^∀^)「はいっ!」
- 掛け声を上げ、レモナが大鎌を振り回した。
- カーテンを引き裂き、壁を切り付ける。
- いくつも並んでいる音楽家の肖像画の一つがたたき落とされた。
- 続いて、鎌はモナーの額縁へ向かう。
- (;´∀`)「あっぶねえことすんじゃねえモナ!」
- 焦りのためか、乱暴な口調になりつつモナーは鎌を避けた。
- だが、避ければ今度は室内が破壊されていく。
- 72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:06:19.52 ID:uyNG0ccpO
- |゚ノ ^∀^)「だって私、危ないことをしに来てるんですのよ!」
- (;´∀`)「だわわっ! こっち来んな!
- ……君は本当に目が見えないモナか!?」
- 自分は盲目であるとレモナは言った。
- それは事実らしく、時折壁にぶつかりかけたりあらぬ方向へと顔を向けたりする。
- しかし、そのくせ、的確にモナーを追い詰めていた。
- 視覚ではない何かでモナーの居場所を把握しているようだ。
- |゚ノ ^∀^)「よく言うじゃありませんか?
- 一つの感覚を失うと他の感覚が発達すると」
- 鎌が蛍光灯を弾き飛ばし、床にガラス片が散らばる。
- その音に、一瞬レモナは顔をしかめた。
- |゚ノ ^∀^)「――私は、目を失う代わりに耳がとっても良くなりましたの。
- あなたの声、動く音を捉えれば、簡単に居場所が分かります」
- (;´∀`)「くっ!」
- 横に払った鎌の切っ先が、額縁を僅かに削る。
- モナーは一先ず外に逃げるためドアを開けようとしたが、
- まるで押さえ付けられているかのように動かない。
- レモナが「無駄ですよ」と言い放つ。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:10:12.88 ID:uyNG0ccpO
- |゚ノ ^∀^)「内側からは開けられないようにしてますの。
- 逃げるならば外から誰かに開けていただくしかありませんよ。
- まあよしんば逃げたとしても」
- ――邪魔者の消えた部屋を自由に壊し尽くさせていただくだけですが。
- 言葉と共に、レモナがモナーに向かって鎌を振り下ろす。
- (;´∀`)「あぁっぶないってばぁあああああ!」
- ぎりぎりで躱し、天井に触れるほどに飛び上がる。
- だが、追い掛けるようにレモナも同じ高さへ浮上した。
- そこで――モナーの目が、レモナの服に釘付けになった。
- 彼女の服の裾は、足元を覆うほど長い。
- その生地が、何の障害物もないかのように大きく揺れ、折れ曲がっているのだ。
- 足が無いのだろうか?
- ( ´∀`)「……!」
- 足が無い。鎌。……それは。
- ( ´∀`)「君は――テケテケ、というお化けモナ?」
- |゚ノ ^∀^)「……その通り。
- 隣町のシベリア中学校の七不思議が一つ、
- 『廊下を走るテケテケ』でございます」
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:13:23.94 ID:uyNG0ccpO
- ――体育館前。
- 理事長の言葉に従って内藤とドクオは行くべき場所へと移動したが、
- ツンは、その場に残っていた。
- ミルナを助けるために。
- ξ; )ξ「あうっ……!」
- 体育館の入口に張り巡らされた、きらきらと金色に輝く網。
- ツンがそれにタックルをかますも、あっけなく弾かれる。
- そのまま、入口前の通路に体を打ちつけた。
- (;゚д゚ )「ツン!」
- lw´‐ _‐ノv「無駄だっていうのに」
- 体育館中央に転がされたミルナが、ツンの名を叫ぶ。
- 出来ることならば今すぐツンの元へ駆け寄りたかったが、
- 彼の体を縛る、輝く糸がそれを許さない。
- 75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:16:29.87 ID:uyNG0ccpO
- (#゚д゚ )「くっそ、これ取れよ!」
- lw´‐ _‐ノv「君は、あのお嬢さんが大好きなんだねえ」
- ( ゚д゚ )「あ、そういうわけではないんで」
- ξ#゚听)ξ「そこはね、顔真っ赤にして『ちげーよ』って必死に否定して
- 素直になれないショタっ子をアピールするところよ……空気的に」
- 痛む体を起こしながら、ツンが見当違いな文句を言う。
- そして、網へ手を伸ばし――またしても弾かれ、その反動で倒れ込んだ。
- 段々、網の抵抗力が上がっている。
- (;゚д゚ )「ツン、もういい! もういいから――」
- lw´‐ _‐ノv「彼女の名前ばっか呼んで……お姉さん嫉妬するわ。
- シュール、って呼んで」
- (;゚д゚ )「は……?」
- lw´‐ _‐ノv「シュール」
- (;゚д゚ )「何それ?」
- lw´‐ _‐ノv「君でいうところの『ミルナ』、かな」
- (;゚д゚ )「……?」
- lw´‐ _‐ノv「名前ってこと。私の名前、シュール」
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:19:22.12 ID:uyNG0ccpO
- 面倒臭い説明だなあと思いつつ、促されるままにミルナは女性の名前を口にする。
- (;゚д゚ )「……シュー、ル?」
- lw´‐ _‐ノv「絶頂に達した。性的な意味で」
- (;゚д゚ )「ぜっ……? せーてき?」
- ξ#゚听)ξ「ミルナに変な言葉覚えさせんな!」
- lw´‐ _‐ノv「つっこむ人がいないみたいだから初対面の筈の私が言わさせてもらうが、
- お前が言うな」
- 女性――シュールは無表情のままそう言って、
- ミルナの頭を一撫でし、立ち上がった。
- lw´‐ _‐ノv「さあ、て、と。
- やるか」
- 伸びをする。
- 見せ付けるように胸が揺れ、ツンの中の憎悪が倍増した。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:22:37.09 ID:uyNG0ccpO
- (;゚д゚ )「やる、って……」
- lw´‐ _‐ノv「体育館破壊」
- (;゚д゚ )「なっ……!」
- lw´‐ _‐ノv「おいでませ」
- ぱちん。
- シュールが指を鳴らす。
- その瞬間、彼女の周りに数々の「道具」が現れた。
- それは、
- ξ;゚听)ξ「……はさみ……?」
- (;゚д゚ )「というか――刃物?」
- 裁ち鋏、ノコギリ、数種類の包丁とナイフ。
- 何本――いや、何十本もの刃物が、シュールを取り囲む。
- lw´‐ _‐ノv「シベリア中学校の七不思議、『家庭科室のシュールさん』とは私のことよ」
- ξ;゚听)ξ「知らんよ」
- (;゚д゚ )「他はともかく、何でノコギリ……」
- lw´‐ _‐ノv「中学校では技術家庭科という科目なのでね。オマケということで。
- ――さあさあ、始めますよ解体ショー」
- 80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:25:47.04 ID:uyNG0ccpO
- シュールが両手を広げる。
- 途端、自我を持っているのかと思える勢いで、刃物がそれぞれ動き始めた。
- (;゚д゚ )「! ばっ……!」
- ステージの幕を裂き、床に突き刺さり、壁を切り刻む。
- 乱雑に、そして確実に、体育館が壊されていく。
- 自分の目の前すれすれを過ぎていったノコギリに、ミルナは小さく悲鳴をあげた。
- (;゚д゚ )「ひぎゃっ!?」
- ξ;゚听)ξ「ミルナ!」
- lw´‐ _‐ノv「あ、大丈夫、少年は傷付けないから」
- くい、とシュールが人差し指を動かす。
- すると、一つの裁ち鋏がツン目掛けて真っ直ぐ飛んでいった。
- 網の間を抜け、ツンの首元へ向かう。
- ξ;゚听)ξ「うっぎゃあっ!」
- それをぎりぎりで、本当にぎりぎりで避けた。
- 鈍い音をたてて、鋏は柱に直撃する。
- 柱に突き立った鋏を見て、ツンの背筋に冷たいものが走った。
- lw´‐ _‐ノv「ごめん、うっかり☆」
- ξ#゚听)ξ「ううううううそつけえええええええええ!!!!!」
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:28:31.81 ID:uyNG0ccpO
- ( ∵)[あなたの名前は? 今、何が起こってるの? あと何歳?]
- 校庭。
- ビコーズは、突然現れた男に問い掛ける。
- 【+ 】ゞ゚)「俺の名は、棺桶死オサム。歳は……享年35歳」
- (;∵),,,[老け顔の中学生なら何とか許せたけど、35歳でその格好はないわ……]
- 【+; 】ゞ゚)「だから引くな! 人の趣味をとやかく言うなよ、もう!」
- (;∵)[厨二病は罹患してる間は楽しいけど治ってからは地獄だよ?]
- 【+; 】ゞ゚)「うるせえなあ! 放っといてくれってば!」
- (;∵)[そこまで症状が表面化しちゃってると、
- もう下手に治すよりも思い切って一生そのままでいた方がいいね]
- 【+ 】ゞ;)「泣くぞ! もう泣くぞ!
- あー泣いたホラ泣いた!」
- ▼・ェ・▼ ワフンワフフフ(駄目だコイツ早く何とかしないと)
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:32:11.79 ID:uyNG0ccpO
- 地面に突っ伏して男泣きをするオッサン、もといオサム。
- ビコーズは、彼の背中を撫でて慰めてやった。
- ( ∵)[元気出して]
- 【+ 】ゞ;)「誰のせいだよ!」
- オサムの涙が土へ染み込む。
- 真夏の昼間。すぐに涙は渇いていった。
- 【+ 】ゞ;)「……くっ、今は昼だから。昼だから雰囲気出ないんだ。
- 夜の俺を目の当たりにしたら似合いすぎてて最悪の場合死ぬぞ」
- ( ∵)[そんなに!?]
- ▼・ェ・▼ ニャーン(ふーん)
- ( ∵)[……で、本題入ろうか。今の状況教えて]
- 【+ 】ゞ;)「いい年こいたオッサンが石の固まりに泣かされてるところだよバーロー」
- ( ∵)[あなたの状況じゃなくって。学校の状況ね]
- 涙をスーツの袖で拭い、オサムは沈黙する。
- しばしビコーズと見つめ合い、
- 【+ 】ゞ゚)「今は、七大不思議を壊滅させるところだ」
- 意外にも正直に、答えてくれた。
- 84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:35:53.44 ID:uyNG0ccpO
- 【+ 】ゞ゚)「七大不思議の各スポットを壊し、学校霊を駆逐。
- この学校を守る者を排除する」
- (;∵) !
- 表情は変わらないが、ビコーズが動揺したのはオサムにも分かった。
- 校舎へ駆け出そうとするビコーズを引き止める。
- 【+ 】ゞ゚)「校舎の中に入るのも中から出るのも不可能だぞ。
- だから、みんなああなってるんだ」
- 昇降口を指差し、オサムが言う。
- 外に出られず四苦八苦している生徒達を見て、ビコーズは納得した。
- ( ∵)[それなら、訊くけど。
- どうしてそんなことをするの? 目的は?]
- 先の放送の「復讐」に関係しているのかと問えば、オサムは静かに頷いた。
- 【+ 】ゞ゚)「……正確には、俺『達』の目的は八つ当たり。
- あの男の目的こそが、復讐」
- ( ∵)[『達』ってことは君以外にも刺客がいるんだね。
- そして、『あの男』ってのは共犯者……いや、首謀者かな?]
- 【+ 】ゞ゚)「――ああ」
- ( ∵)[……教えて]
- 87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:38:52.45 ID:uyNG0ccpO
- VIP高校が出来たのと、同じ頃。
- 素直クールと素直ヒートは、隣町に住んでいる普通の人間だった。
- ――いや、ヒートに関して言えば、「普通」を少々逸脱していたが。
- クールはシベリア高等女学校の五年生、
- ヒートは高等小学校の二年生。
- 成績も態度も優秀であったクール。
- 対する妹のヒートは頭脳も冷静さも、何一つ満足に備わっていなかった。
- 家が裕福であるという理由だけで、尋常小学校から高等小学校に進めただけ。
- そもそも彼女は学校になど行きたくなかったのだ――
- 川;゚ -゚)「ヒーちゃんらめぇ! そんなおっきいのらめなの!
- お姉ちゃん壊れちゃぅううううう!!」
- 飛び掛かる3枚のドアをすれすれで躱し、
- 彼女にしては珍しく焦りの色を滲ませながら叫んだ。
- クールが避けたことによりヒートに向かう筈だったドアは、不自然な動きで横に逸れた。
- 91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:42:27.08 ID:uyNG0ccpO
- 川;゚ -゚)「……おお?」
- ノハ#゚听)「何だ、その変な声は」
- 川 ゚ -゚)「コントロール出来るようになったのか」
- ノハ#゚听)「……つい最近だけどな」
- ――また、ヒートは「女らしさ」においても不足していた。
- その根底は、ヒートが尋常小学校に通っていた時代にある。
- 幼い頃のヒートは、姉の、あまり色っぽくない口調が好きだった。
- それを真似ようとして――だいぶ方向を間違えてしまった。
- 何故かといえば、まあ、彼女の頭があまり良くないせいだ。
- しばしば大人から「女の子らしくない口調だ」と揶揄される姉を見てきたヒートは、
- 「つまり男の真似をすればいいのだな」と解釈した。
- さらに、元より活発な子供であった彼女は、同年代の少女より、
- 少年達と駆け回って遊ぶことの方が多かった。
- そのため、男のような振る舞いが存外に馴染んだ。
- いつしか、身体以外の性差は殆ど無くなった。
- 93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:45:53.42 ID:uyNG0ccpO
- そのときになって、ようやく気付く。
- 姉は、あの口調でありながら、それが様になる容姿と気品を持っていた。
- 女性としての魅力に富んだ姿と、落ち着き払った気振り、きりりとした言葉。
- それらが相俟って、彼女の強さと高潔さを表徴していたのだ。
- ヒートには、初めから真似など出来ないことと、決まり切っていた。
- 良家の素直家にとって、ヒートの存在はひどく場違いなものであった。
- 両親は「下品だ」と顔をしかめ、周りの大人達は馬鹿にして笑う。
- 同年代には仲良くしてくれる友達もいたが、やはり時折虐めてくる者もいた。
- 姉どころか周囲よりも劣り、親はクールばかり贔屓する。
- 皆がヒートを疎外する。
- 不器用で、粗暴に振る舞いつつ、しかしヒートは誰よりも繊細だった。
- ヒートのストレスといったら、計り知れないものだっただろう。
- 彼女が高等小学校に上がった頃、それは、ある形を伴って爆発した。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:48:46.49 ID:uyNG0ccpO
- 川;゚ -゚)「ばっ、おまっ、姉ちゃん死ぬっ、あっ死んでた」
- 再び迫り来るドアを避ける。
- 短いスカートがひらりと翻った。
- ノハ;゚听)「おぎゃあっ!!」
- スカートの中身にヒートがあからさまに動揺する。
- 彼女が生前見たこともないような「大人な下着」は、
- 現代っ子が感じるよりもひどく淫靡に思えて仕方がないらしい。
- ノハ;゚听)「くっそ、卑怯な!」
- 川 ゚ -゚)「姉の尻見ただけでそんなに動揺するかね」
- ノハ;゚听)「姉のそんな姿見たくなかったわ!」
- ヒートの中で、クールはとてもストイックな女性だったのだ。
- 下手に男を寄せ付けず、ふしだらな面など見せたこともない。
- そんな姉の、この現状。ヒートのショックは生半可なものではない。
- 97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:51:49.61 ID:uyNG0ccpO
- ヒートの様子を見て、クールの頭に作戦が浮かんだ。
- 川 ゚ -゚)(……! この隙をつけば、ヒートを倒せるかもしれん。つまり……)
- 川 ゚ -゚)(乳 と か 尻 と か 見 せ て 動 揺 さ せ る !)
- 川 ゚ -゚)「……」
- ノパ听)「どうした」
- 川 ゚ -゚)(いや、やっぱちょっと駄目な気がする。何か姉として)
- 作戦は実行されることなく。却下された。
- 川 ゚ -゚)「やっぱ話し合いに持って行った方が――」
- がつ、と。
- 鈍く、重い音が、クールの後頭部から響いた。
- 99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:54:33.08 ID:uyNG0ccpO
- ――ある日のことである。
- ヒートと母親が、口論になった。
- 頭の回転が遅いヒートに対し、母は矢継ぎ早に罵声を浴びせる。
- その内容の殆どが、クールとヒートを比較してのもの。
- ヒートの中で何かが溢れ、叫び声となり――彼女の記憶は、しばし途切れる。
- 姉の怒鳴る声で、ヒートは我に返った。
- 辺りを見れば、家の中がめちゃくちゃ。
- 家具が倒れ、食器の破片は散乱し、窓やドアも壊れていた。
- 隅で震えていた母いわく、ヒートが叫んだ瞬間、ひとりでに物が動き回った、と。
- ――念動、あるいはポルターガイスト。
- 誰も触れていないのに、物が勝手に動く現象。
- 思春期で精神が不安定な年頃の、特に少女の周りで起こりやすいという。
- 多感な時期の子供が、何かしらの要因から、潜在的な「念力」のようなものを
- 発揮する、という解釈だ。
- 恐らくヒートもそうだったのだろうが、そんなことを彼女達が知っているわけがない。
- これまで以上に、ヒートは周囲から差別を受けるようになった。
- そして彼女の感情が高ぶる度、呼応するようにポルターガイストが起こる。
- 程度に差はあれ、異常以外の何物でもない。
- どんどん人が離れていく。
- 自分の味方は、もう誰もいないのだという孤独感。
- この力のせいで誰かを傷付けてしまうかもしれないという危機感。
- それがまた、ポルターガイストを助長させた――
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 21:58:07.70 ID:uyNG0ccpO
- 川; - )「ぐ――」
- 後頭部への衝撃、そして音。
- 気付かぬ内に向かってきたトイレのドアが、クールの頭を打ったのだ。
- 意識が飛びかけ、クールは床に倒れる。
- ヒートは、にやりと笑った。
- ノパ听)「やっと当たった」
- 川; -゚)「……ひ、ぃと……」
- クールが覚えている限り、「ポルターガイスト」を起こすときのヒートは
- いつも錯乱状態で、喚いてばかりいた。
- しかし、今のヒートは落ち着いていながら、ポルターガイストを自在に操っている。
- というより、落ち着いているからこそ自在なのだろう。
- それが厄介だった。
- 昔はクールがヒートの正気を取り戻させることで収まったものだったが、
- 今は、それが出来ない。
- ヒートを止めることが、出来ないのだ。
- せめて――
- 川; - )(……せめて、バッジがあれば、何とか……!)
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:01:41.66 ID:uyNG0ccpO
- N| "゚'` {"゚`lリ「ふう……イケメンいたぶるのも飽きたな」
- 息をつき、阿部はモララーから離れた。
- モララーの顔には痣が出来、口元からは血が一筋。
- 服の下、胴や手足にも、阿部に蹴られ、殴られた跡が隠れている。
- モララーを尻目に、阿部が手を握り、開く。
- すると、手の上に、スパナや金槌等の工具が現れた。
- それを握りしめ、トイレを見渡す。
- N| "゚'` {"゚`lリ「ちょいと時間がかかりそうだが……さて、壊させてもらうとするか」
- 手近にあった個室のドアを工具で外し、床に放る。
- 彼には、レモナやシュール、ヒートのような派手な力と武器がない。
- 代わりに、こつこつ丁寧に、そして確実に「解体」を実行する。
- トイレをバラしている阿部は、余裕の表情だ。
- 筋力も能力の属性もモララーより上であるという慢心。
- だから、
- (; ∀-)「……やめてくれないか」
- N| "゚'` {"゚`lリ「おっと、まだ起きてくるかい」
- たとえモララーが立ち上がって声をかけようと、阿部は驚きも恐れも抱かなかった。
- 106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:04:39.95 ID:uyNG0ccpO
- N| "゚'` {"゚`lリ「あんたを殺せれば、作業もスムーズに進むんだろうがなあ」
- 幽霊を殺すことは不可能。
- 成仏させるか、その存在自体を消すしかないが、
- そんなことが出来るほどの力を持っている者は限られる。
- 阿部に出来るのは、モララーを暴力で捩伏せ、動けなくさせるぐらいだ。
- だが、ただ学校に住み着いていただけの一般の霊である阿部に対し、
- モララーは「七大不思議」の「怪人赤マント仮面」。
- 霊力自体は、阿部に比べ、モララーの方がよっぽど高い。
- 腕力だけで徹底的に叩き潰すというのは、少々難しいのだ。
- N| "゚'` {"゚`lリ(……とはいえ)
- 阿部はモララーをまじまじと見る。
- 散々暴力を浴びせられた彼はふらふらで、回復がなかなか追いついていない。
- 何度立ち上がろうと、阿部がトイレ内を破壊するのを止められやしないだろう。
- N| "゚'` {"゚`lリ「どっこいせっと」
- (; ∀ )「――!」
- 金槌でこめかみを殴りつける。
- 重苦しい音がした。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:07:42.31 ID:uyNG0ccpO
- さらにモララーを蹴り飛ばす。
- それでも身を起こそうとする彼に、阿部は苦笑いを零した。
- N| "゚'` {"゚`lリ「しつこい男だな。
- 大人しくしてりゃ、これ以上手は出さない……って言っても無駄か?」
- 無駄だろうな、と、自問自答する。
- N| "゚'` {"゚`lリ「仕方ない、――その手足、ぶち壊すか」
- (;´∀`)「喰らえモナ!」
- |゚ノ;^∀^)「きゃっ!」
- モナーが指揮棒をレモナに向けると、どこからともなく水が現れ、
- レモナを螺旋状に取り囲んだ。
- 正直なところ、モナー自身、大した意味はないだろうと予想していた。
- やらないよりはマシ、といったところで。
- だが、そこで予想外のことが起きる。
- 110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:10:16.30 ID:uyNG0ccpO
- (;´∀`)「モナッ!?」
- レモナの手に触れた水が、瞬時に凍ったのだ。
- |゚ノ;^∀^)「ああ、びっくりいたしました……」
- レモナが鎌を振るい、水を散らせた。
- 手元の氷は床に落ちて、甲高い音を立てて割れてしまう。
- (;´∀`)「……今、水、凍ったモナ?」
- 恐々モナーが訊ねると、レモナは小首を傾げた。
- |゚ノ ^∀^)「言いましたでございましょ、私、いわゆるテケテケですもの。
- 冬、凍えるような寒さの中で死んだ女。
- この体には、冬が染み付いておりますの」
- テケテケ。
- 知らない者はなかなかいないであろう、下半身が欠如したお化け。
- その成り立ちについての説で最も有名なのは、
- 「冬の北海道、踏切で起こった事故により、女性の上半身と下半身を分断された」
- という内容。
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:13:34.15 ID:uyNG0ccpO
- (;´∀`)「冬……」
- |゚ノ ^∀^)「ええ」
- (;´∀`)「……1人でテケテケと雪女を兼ねるなんて、欲張りさんモナね」
- |゚ノ ^∀^)「何とでも」
- 鎌を振る。
- 黒板を鎌が引っ掻き、嫌な音がした。
- (;´∀`)「も゙に゙ゃっ」
- |゚ノ;^∀^)「つっ……」
- モナーは咄嗟に耳を塞ぎ、レモナは顔を引き攣らせる。
- ――耳が良いというのにも、多少の欠点はあるようだ。
- (;´∀`)(――それを反撃に使えれば良いモナが……)
- 生憎、良い案が浮かばない。
- ならば、水を凍らせてしまう力を何かに利用できないものか。
- ( ´∀`)… ポクポクポク
- ( ´∀`)そ チーン!!
- |゚ノ ^∀^)(そチーン……)
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:16:30.00 ID:uyNG0ccpO
- ( ´∀`)「モーナモナモナモナ! ならば氷で体を固めてやんよ!」
- レモナの体を水で包めば、凍ったそれが彼女を拘束する。
- 思いついた作戦に勝利を確信し、先と同様に水をレモナへ吹き出す、が。
- |゚ノ ^∀^)「まあ、冷たいですわ」
- ばしゃん、と、そのまま、水はレモナにぶつかった。
- 凍る気配は、まったく無い。
- ( ´∀`)「……モナ?」
- |゚ノ ^∀^)「ごめんなさい、言い忘れましたが、
- いつでも水を凍らせるわけではありませんの。
- びっくりしちゃうと無意識に冷気が出るんですけれど、
- 普段は意識して抑えられるんですのよ」
- (;´∀`)「そんなん有りか」
- |゚ノ ^∀^)「水の向かってくる『音』は、先程覚えました。
- どの方向からどんな量の水が来るか、これでもう予測出来ますわ。
- さあ、どうなさいますか?」
- ( ´∀`)「どう……」
- ( ´∀` )「なさるんでしょうねえ」
- 追いかけっこが、再開された。
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:19:30.13 ID:uyNG0ccpO
- lw´‐ _‐ノv「ノコギリぎーこぎこ、ぎこぎこ(,,゚Д゚)」
- 飛び交う刃物、壊されていく体育館、
- ξ; )ξ「い、ったぁ……」
- 何度も倒れ、何度も立ち向かう、ツン。
- (;゚д゚ )「……っ、……!」
- 自分が守るべき場所。自分が大好きな場所。
- 自分が守るべき仲間。自分が大好きな仲間。
- 次々と壊されていく。
- 次々と傷付けられる。
- 全てを見せつけられて、それなのに何も出来なくて、ミルナは、もう限界だった。
- ( ;д゚ )「……」
- ぽろり、涙が零れる。
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:22:59.39 ID:uyNG0ccpO
- lw´‐ _‐ノv「おう、どうした少年」
- ( ;д; )「……もう、やめてくれよ……」
- lw´‐ _‐ノv「……そういうわけにも、いかないんだなあ」
- 容赦なく、体育館は壊される。
- バスケットゴールが落ち、照明が叩き割られた。
- 泣きじゃくるミルナの頭を撫で、シュールは目を伏せた。
- (;ФωФ)「町への、復讐……?」
- ( ´_ゝ`)「……あんたは、本当に何も知らんみたいだな。
- 元々この町の人間じゃないのか」
- (;ФωФ)「お主は何故、町を怨むのである?」
- ( ´_ゝ`)「簡単に言やあ、化け物扱いされて、家族を奪われたから。
- 呪いを邪魔されたから」
- (;ФωФ)「呪い? ……邪魔、とは?」
- ( ´_ゝ`)「……時間潰しついでに、話すとするか」
- 123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:25:22.64 ID:uyNG0ccpO
- ――保健室。
- 一番手前にあるベッドの上に、綺麗な鏡が置かれている。
- それは、ミセリが新しく入ることになった鏡。
- 鏡面は天井を映しているだけだが、ミセリはちゃんと中に居る。
- 鏡の奥で、オレンジ色のバッジを抱えて休んでいるのだ。
- そして、無人のベッドを挟んだ向こう、一番奥にある3つめのベッド。
- そこに1人の男が横たわり、傍の椅子には少女が座っている。
- 男は30代、対する少女は中学生ぐらいか。
- 歳の差がありそうな2人は、この保健室と、ミセリの入った鏡の破壊を命じられていた。
- 少女は、男を揺り動かす。
- (゚A゚* )「ニダやん、ニダやん。そろそろ起きー」
- ブレザーを着た少女、名前は、のーという。
- のーに起こされた男は、面倒臭そうな顔をしてみせた。
- <ヽ`∀´>「……ウリ達の仕事は、あまりにも簡単過ぎるニダ。
- もう少し眠ってからでも、……くぁ」
- 着物を身につけた男、名前はニダー。
- 大きな欠伸を漏らして寝返りをうち、のーに背を向けた。
- 126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:28:54.84 ID:uyNG0ccpO
- (゚A゚* )「もー」
- <ヽ`∀´>「お前も寝ればいいニダ」
- (/A//* )「なっ、そっ、し、死んでから何年も経ってるとはいえ、ウチは中学生やで!
- それなのに一緒に寝ろとか、ニダやんのロリコン!」
- <ヽ`∀´>「誰が一緒に寝るっつった。そっちに空いてるベッドがあるニダ」
- (゚A゚* )「ノリの悪いおっちゃんやなー」
- <ヽ`∀´>「……あーあ、小煩いガキのせいで目が覚めたニダ」
- むくりと身を起こし、再度欠伸。
- ガキってウチかい、と喚くのーの額を指で小突き、ニダーは室内を見渡した。
- <ヽ`∀´>「さて、始めるとするニカ」
- (゚A゚* )「おっ、やっとか。頑張れー」
- <ヽ`∀´>「……お前は見てるだけだから楽ニダね」
- (゚A゚* )「応援係も楽やないで」
- 128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:31:51.64 ID:uyNG0ccpO
- <ヽ`∀´>「ふうん……ん」
- ベッドに立てかけていた刀を手に取り、ニダーは静止した。
- (・∀ ・)
- ミセリの鏡を抱え上げる者と、目が合ったのだ。
- (・∀ ・)「……」
- (・∀ ・)ノシ
- (;・∀ ・)「うっはwwwやべっwwww見付wかwwったwwwww」
- ミ;,゚Д゚彡「早く逃げるからぁああ!」
- ('(゚∀゚;∩「またんきの馬鹿ぁああ!」
- ベッドの陰から、さらに2人の少年が顔を出す。
- 彼らは、ドクオの友人、またんき、フサ、なおるよ。
- またんきは鏡をしっかり抱えると、保健室から飛び出していった。
- フサとなおるよも追い掛ける。
- 132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:34:30.86 ID:uyNG0ccpO
- (゚A゚* )「え? 何?」
- <ヽ`∀´>「……」
- ――ニダーは、少々プライドが高かった。
- 予定外の存在が割り込んでくるなど、ましてそれに自分の任務を邪魔されるなど、
- 許していいものではない。
- 故に。
- <#ヽ`∀´>「待てこらクソガキぃいいいいいいいいい!!!!!」
- (゚A゚*;)「ちょっ、ニダやーん!?」
- 保健室の破壊よりも、闖入者の排除を優先させた。
- (;・∀ ・)「やっぱ追ってキタ―――――――!!」
- ミ;,゚Д゚彡「刀! 刀持ってるからぁあああああ!」
- ('(゚∀゚;∩「またんきがちゃんと隠れてれば上手くいってたんだよぉおおお!」
- 廊下を全力で駆ける3人。
- 後方から迫るニダーとのー。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:39:26.99 ID:uyNG0ccpO
- <#ヽ`∀´>「止まれガキィイイイイイイ!!」
- (゚A゚*;)「ニダやんが近年稀に見るマジギレを!
- 普段素っ気なくて不機嫌そうだけど実は優しくて大らかなニダやんが!
- 近年稀に見るマジギレを!!」
- <#ヽ`∀´>「お前は黙れ!!」
- (゚A゚* )「たまらん……!」
- ミ;,゚Д゚彡「またんき死ね! 馬鹿! 阿呆!」
- (;・∀ ・)「いやっ、ほら、あれだ! あの2人が保健室に残ったら、
- 結局保健室壊されちゃうだけじゃん!?
- こうして引き付けることによって保健室は無事ってことでえええええ!」
- ミ;,゚Д゚彡「絶対今考えた言い訳だからあああ!」
- ('(゚∀゚;∩「ざっけんなああああああ!」
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:42:54.51 ID:uyNG0ccpO
- ノハ#゚听)「トドメだぁああああ!」
- 横たわるクールへ、3枚のドアが一斉に襲いかかろうとした、そのとき。
- 飛び込んできた二つの影。
- 一つの影はドアを1枚突き飛ばし、もう一つの影は2枚のドアにタックルした。
- ノハ;゚听)「――なっ……!?」
- 川; -゚)「……!」
- その影は、
- (*゚ー゚)「ギコ君、大丈夫?」
- (;,゚Д゚)「ちょっと勢いよくぶつかり過ぎたな……」
- モップを握る猫田しぃと、その恋人、羽生ギコ。
- 141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:45:50.79 ID:uyNG0ccpO
- 川;゚ -゚)「2人とも……!」
- (,,゚Д゚)「クーさん、動けるか?」
- (*゚ー゚)「お届け物があるの」
- そう言って、しぃがポケットから取り出したのは――ピンク色のバッジ。
- ノハ;゚听)「……お前ら、生徒、か?」
- (,,゚Д゚)「そうだぞゴルァ!」
- ノハ;゚听)「何で……何で来たんだ! 恐くないのか!?
- どうしてこんな奴を助けに……!」
- (*゚ー゚)「そんなの」
- ――この学校が大好きだからに決まってるじゃない。
- 143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:50:02.63 ID:uyNG0ccpO
- 阿部が屈み込み、モララーの腕を持ち上げる。その肘へ向かってスパナを――
- _
- (#゚∀゚)「アニキに何しくさってんだ糞がぁあああああああっ!!」
- N|;"゚'` {"゚`lリ「うおっ!?」
- 唐突に食らわされた飛び蹴り。
- 対処しきれず、阿部は衝撃のままに床へ転がった。
- 川;д川「赤マント仮面様!」
- (;・∀・)「……貞子、君……ジョル……君……」
- _
- ( ゚∀゚)「アニキ!」
- モララーに駆け寄る、山村貞子とジョルジュ長岡。
- 2人でモララーを抱え廊下へ出す。
- 貞子は握りしめていた右手を広げ、モララーの手に触れた。
- 途端、触れ合った手が赤い光を放つ。
- 川;д川「赤マント仮面様、バッジです」
- (;・∀・)「ああ……ありがとう……」
- N| "゚'` {"゚`lリ「――やれやれ、まさかの加勢だな」
- モララーを庇うように貞子とジョルジュは阿部の前に立ち、彼を睨みつけた。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:53:09.64 ID:uyNG0ccpO
- (;´∀`)「のぎゃっ!」
- 鎌の切っ先が、モナーの胸元を裂いた。
- 切れたのは服だけだが、あと少し近付いていれば、体までやられていた。
- |゚ノ ^∀^)「惜しいですね。今度こそ」
- (;´∀`)「――!」
- レモナが飛び上がる。
- モナーの真上から、鎌を振り下ろそうとして――その手を止めた。
- 甲高いトランペットの音が、彼女の耳に突き刺さったのだ。
- (;´∀`)「……モナ……?」
- 音のした方向を見る。
- 音楽室のドアが開いていた。
- 内側からは開けられない、ならば開けたのは外にいる人物。
- 149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:56:20.80 ID:uyNG0ccpO
- その人物は。
- (´・_ゝ・`)「随分目茶苦茶だな」
- (゚、゚トソン「私達のモナーさんと音楽室に何てこと……」
- 吹奏楽部と、合唱部のメンバー。
- 吹奏楽部員は楽器を抱えている。
- (;´∀`)「みんな、来てくれたモナ!?」
- |゚ノ ^∀^)「……何やら、たくさんの人の声と気配がしますわね。
- 誰ですの?」
- (´・_ゝ・`)「――目が見えないのか」
- (゚、゚トソン「そのようです。さあ、どうやって、あの女を倒しましょうか?」
- 151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 22:59:36.05 ID:uyNG0ccpO
- ξ; )ξ「……ミル、ナ」
- ( ;д; )「つん……」
- ξ; )ξ「泣かないでよ、可愛い顔が台なしよ」
- 震えながら、ツンが立ち上がる。
- lw´‐ _‐ノv「……そろそろ、おとなしくしてくれないかなあ……」
- ξ; )ξ「誰がするもんですか」
- ( ;д; )「……」
- ξ; )ξ「待ってなさい、今、今……」
- ξ;゚ー゚)ξ「……お姉さんが、助けてあげる」
- 155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:03:09.79 ID:uyNG0ccpO
- にこりと、ツンが笑む。
- そして一歩踏み出すが、散々打ちつけた体が痛んだのが、足が縺れた。
- ξ;--)ξ「っ……」
- ――転びかけたツンを、誰かが抱き留める。
- lw´‐ _‐ノv「む」
- ( ;д; )「……!」
- ξ;゚-)ξ「……あ、」
- / ゚、。 /「本当にお優しいですね、出連さん」
- ξ;゚听)ξ「せ、んせ」
- 若い体育教師、鈴木ダイオード。
- 彼女は、困ったような顔で、ツンに笑いかけた。
- 157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:06:38.30 ID:uyNG0ccpO
- ――時間は少し巻き戻る。
- 理事長に言われた通りに体育館を離れた内藤とドクオ、そして妹者は、
- どこに行くべきか、走りながら相談していた。
- (;'A`)「俺がミセリちゃんの所に行く」
- (;^ω^)「頼んだお。――危ないから、妹者ちゃんは僕と一緒にいるお」
- l从・∀・;ノ!リ人「分かったのじゃ!」
- (;^ω^)「そういえば、ビコーズは……」
- (;'A`)「窓も開かねえから、助けようがない。
- ビコーズだけで何とかしてくれるのを願うしかないな」
- そのまま、生徒と教師が集まっている昇降口を通り掛かったとき。
- (;^ω^)「……っ」
- 思い浮かんだ考えに、内藤の足が止まった。
- どうしたとドクオが問うと――
- (;^ω^)「――みんな、聞いて下さいお!」
- 158: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:09:33.39 ID:uyNG0ccpO
- 内藤が叫ぶように言う。
- 皆、口を閉じ、内藤を見た。
- (;'A`)「ブーン?」
- (;^ω^)「今、七大不思議のみんなのところに、敵が来てますお!
- 敵は、彼らを攻撃するつもりなんですお!」
- 手短に内藤が状況を説明する。
- 七大不思議を助けるには、人手が足りない、とも。
- (;^ω^)「だから――嫌なら嫌で良い、希望する人だけでもいいから、
- 七大不思議の各スポットへバッジを届け、助けてあげてほしいんですお!」
- 元、生徒の頂点だった生徒会長として。
- 現、学校を守るための聖徒会長として。
- 内藤は、皆に頭を下げた。
- 160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:12:24.28 ID:uyNG0ccpO
- (,,゚Д゚)「かかってこいゴルァ!」
- (*゚ー゚)「あんまり余計な挑発しないの」
- _
- (#゚∀゚)「ぶち殺ぉす!」
- 川;д川「もっ、もう、死んでる人ですよ」
- (´・_ゝ・`)「鎌でけえ……」
- (゚、゚トソン「当たらなければどうということはありません」
- (;・∀ ・)「つっ、疲れてきた!」
- ミ;,゚Д゚彡「俺ら体力皆無だから!」
- ('(゚∀゚;∩「もっぱらインドア派だよ!」
- / ゚、。 /「ミルナさんを見てるとショボンを思い出すんです。
- ……この状況は、許せませんね」
- 161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:14:19.71 ID:uyNG0ccpO
- さあ。
- 反撃、開始だ。
- ( ∵)[ほうほう、シベリア中学校の七不思議?]
- 【+ 】ゞ゚)「そう」
- ( ∵)[君は、どんな学校霊なの?]
- 【+ 】ゞ゚)「自殺した美術教師」
- (;∵)[その格好で教師だったの!?]
- 元より、ビコーズの方には手助けなど必要なさそうである。
- 164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:17:19.40 ID:uyNG0ccpO
- ヴィップ橋。
- 蝉の声がする。
- 激しく照り付ける夏の日差しにも構わず、真っ黒なキャソックを着ている男。
- その男の隣に立つ、若い女性。
- 時折橋を通る人々は、その2人の存在に気付いていないようだ。
- ――教会、神社、寺の結界から外れたこの場所では、幽霊は実体を持てないのだ。
- 男はエクスト。
- 女は、流石姉者。
- 実に80年ぶりの対面であった。
- ∬´_ゝ`)「お久しぶり、エクソシスト様。
- 昨夜からずーっと立ってるわね」
- <_プー゚)フ「……久しぶり」
- 165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:20:34.23 ID:uyNG0ccpO
- ∬´_ゝ`)「成仏なんて、なかなか出来ないものね」
- <_プー゚)フ「ずっと、……ずっと、ここにいたのか?」
- ∬´_ゝ`)「ええ。……地縛霊ってわけじゃないんだけれどね」
- <_プー゚)フ「……そっか。
- ――心を読む力は健在か?」
- ∬´_ゝ`)「ごめんなさい、実は昨夜からエクソシスト様の心を読んで、
- 現在の状況を把握していたところなの。
- ……ふふ、最近楽しくやっていたみたいね」
- <_プー゚)フ「……ごめん」
- ∬´_ゝ`)「どうして謝るの?
- うちの馬鹿の尻拭いのためにこんな所で眠っていらっしゃるより、
- 楽しく過ごしてくれてる方がよっぽど嬉しいわ」
- くすくす、姉者が笑う。
- エクストは、恐々姉者の顔を見た。
- <_プー゚)フ「でも……記憶がなくなってたとはいえ、俺、勝手にこの場を離れて……」
- ∬´_ゝ`)「あら、エクソシスト様のせいじゃないわよ」
- 167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:23:08.22 ID:uyNG0ccpO
- ――エクストは浄化。
- 兄者は呪い。
- それを遂行するためだけの存在となった彼らの魂は、いつしか意識が混濁し、
- ただひたすらに、眠り続けていた。
- だから、彼らは、その後に何が起きていたのか全く知らない。
- 姉者もだ。
- 彼女も意識を失っていたから、何も知らないでいた。
- だが、一つ、彼女だけが知っていることがある。
- ∬´_ゝ`)「ある日……つい最近ね。急に目が覚めたの。
- そしたら浮遊霊さんが1人、ここから離れていくところを見たわ。
- 石のようなものを抱えていて……。
- 何だろうと不思議に思ってたけど、今あなたの記憶を読んで分かったわ。
- あの石、エクソシスト様が兄者を鎮めるために使った……」
- <_プー゚)フ「魔を鎮める石?」
- ∬´_ゝ`)「って言うのかは知らないけど、その石に凄く似てたわ」
- <_フ;゚д゚)フ「え」
- 169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:26:41.27 ID:uyNG0ccpO
- ∬´_ゝ`)「浮遊霊さんが去った後、しばらく私は混乱してた。
- 橋や、周囲の風景が丸ごと変わってたんだもの。
- 考え込んでたら、突然丸っこくなったエクソシスト様が飛んでっちゃうし、
- 兄者もどこかに消えちゃうし。
- あれね、もう『どうすりゃいいの?』ってな感じ」
- 「やれやれ」というようなポーズをしながら、姉者は言う。
- エクストは、しばし考えて、頭を抱えた。
- <_フ;゚д゚)フ「そのせいかぁああああ!!」
- 魔を鎮める石。
- ――浄化の過程で邪魔が入ってしまえば失敗に終わる――
- 日記にはそう書かれていた。
- エクストは、てっきり自分が離れたせいで兄者が解放されたものだと思っていた。
- 兄者がダイオードに入れ知恵し、ツンを危険な目に遭わせたのも自分のせいだと、
- 責任を感じていたのに。
- しかし、どうやら、兄者や自分が橋の外に出たのは
- 無関係な第三者の仕業だったらしい。
- 170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:29:28.83 ID:uyNG0ccpO
- ∬´_ゝ`)「あれも不可抗力って言うのかしら。仕方ないわ。
- ……しっかしまあ、エクソシスト様が『女ー!』って叫びながら
- 飛んでったときは、ぶっ壊れたのかと思っちゃった」
- <_フ;゚д゚)フ「……」
- ……それは。
- <_フ;゚−゚)フ「……デレを、探してたみたいなんだ」
- ∬´_ゝ`)「あらロマンチック」
- 全てが終わったときに、自分の魂が残っていたなら、デレの傍へ行く。
- 身を投げる前に、デレとした約束。
- しかし、長い時間が流れ、ようやく目を覚ましたとき、
- 生前の記憶はまだ殆ど眠ったままだった。
- というよりも――辛い記憶を、封じ込めていたのかもしれない。
- だが、そんな彼の心に、かろうじて「女の傍に」という使命感が沸き上がる。
- 「女」が「デレ」というただ1人のことであるとは、当然ながら気付けなかった。
- その結果が、あの色情霊もどきである。
- ∬´_ゝ`)「ぶっちゃけ、あれだったわ。
- 神父という立場のせいで童貞のまま死んだのを悔いてたのかと思ったわ」
- <_フ;゚ー゚)フ「違うもん! 違うもん! デレと約束してたんだもん!」
- 185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:55:30.03 ID:uyNG0ccpO
- そして、彼は、ツンに会った。
- デレの血を引き、どこかデレに似ているツンに。
- それにより、ひとまずエクストはツンの傍にいることで落ち着いたのだ。
- ∬´_ゝ`)「……デレちゃんといえば」
- ふと、姉者は橋の下、ゆらゆら揺れる川に目を向けた。
- ∬´_ゝ`)「弟者。あんた、いつまで隠れてんの。出てきなさい」
- 鋭く、圧迫するような声で姉者が言う。
- 弟者という名前に、エクストの胸が、ざわりと騒いだ。
- 静寂。
- 数秒経って、ゆっくりと、川から男が現れた。
- (´<_` )「……」
- 189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/13(土) 23:59:36.60 ID:uyNG0ccpO
- ばつが悪そうな顔をした、流石弟者。
- 彼はエクストから目を逸らしたまま姉者の隣に移動し、体育座りをした。
- 立てた膝に顔を伏せ、こぢんまりとまとまっている。
- <_フ;゚ー゚)フ「弟者?」
- エクストが名を呼ぶと、弟者は体育座りしたまま体の向きを変え、背中を向けた。
- むずがる子供のような仕草。
- 生前のエクストが最後に見た弟者は、不遜で、横柄な態度をとっていた。
- その弟者と今の弟者が食い違っていて、ひどい違和感を覚える。
- <_プー゚)フ「おーい。弟者ー?」
- ∬´_ゝ`)「恥ずかしいのと申し訳ないのと後戻りできないのとで
- ごっちゃごちゃになってて、顔を合わせられないんですって」
- (´<_`;)「ばっ、心読むな! 読んでも言うな!!」
- 姉者が代弁すると、弟者はようやく顔を上げた。
- その拍子にエクストと目が合って、弟者の表情が歪む。
- 193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:02:41.69 ID:DG6Ms756O
- (´<_` )「……」
- そろそろと顔を伏せようとした弟者の背中を、姉者が蹴飛ばした。
- (´<_`;)「あいたっ」
- ∬´_ゝ`)「おい、何か言いなさいな」
- (´<_`;)「……」
- ∬´_ゝ`)「……」
- (´<_`;)「……」
- ∬´_ゝ`)「こんなときばっかり心の声だだ漏れにするんじゃないの。
- もう代弁してあげないから」
- エクストの分からぬところで意思の疎通が行われているようだ。
- 姉者は弟者の腕を掴み、エクストの前に押しやった。
- (´<_` )「……」
- <_プー゚)フ「弟者」
- (´<_` )「……」
- エクストは、とても懐かしい心持ちだった。
- もごもごと口を動かしている弟者からは、敵意が感じられないのだ。
- 昔の、好青年然とした雰囲気がある。
- 197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:06:46.28 ID:DG6Ms756O
- やがて――弟者は地面に膝をつくと、勢いよく頭を下げた。
- ……土下座だ。
- <_フ;゚ー゚)フ「ちょっ」
- (´<_`;)「ごめんなさい!!」
- 叫ぶように、弟者は謝罪した。
- エクストは、ぽかんと口を開いて、それを見下ろしていた。
- <_フ;゚д゚)フ「へ……」
- (´<_`;)「ごめんなさい、ごめんなさい……。
- 俺の生前の経験により洗練されきった土下座をどうか見て下さい」
- <_フ;゚ー゚)フ「その自虐ネタは本気で笑えないから言うな」
- (´<_`;)「……謝って済むもんじゃないって、分かってるけど……でも……」
- ( <_ )「――本当に、ごめんなさい……」
- <_フ;゚ー゚)フ「……」
- ∬´_ゝ`)「エクソシスト様」
- 固まるエクストに、姉者が声をかけた。
- 201: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:10:02.45 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「あなたと兄者は、死後、すぐに自我がなくなってたみたいだけれど。
- 私と、妹者と、この馬鹿は、そうじゃなかった」
- 姉者は弟者の傍らにしゃがみ込み、彼の頭へ、そっと手を伸ばした。
- くしゃくしゃと頭を撫でる。
- ∬´_ゝ`)「兄者に吸い寄せられそうになりながらも、
- 3人で身を寄せ合って、それに耐えていた。
- その間……ずっと、話し合ったわ。
- 正確に言えば、兄者の力が強すぎて、途中から引きずり込まれかけて
- 意識はなくなったけど」
- <_フ;゚ー゚)フ「……」
- ∬´_ゝ`)「何から話しましょう……――まずは、私が自ら命を絶って、
- 兄者が私の死体をここへ運んでくれた直後ね。
- そのとき、霊になった私は、谷の底にいる妹者と父者を見付けたの。
- 勿論、2人共幽霊ね」
- <_プー゚)フ「……うん」
- 205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:14:34.92 ID:DG6Ms756O
- ――妹者達を見た姉者は、どこかに逃げたくなった。
- 妹者が谷に落とされたとき、
- 彼女の「兄者と姉者のせい」という声を聞いたからだ。
- それは姉者本人もそうだと思っていたし、
- 当然妹者から恨まれているものだと考えていた。
- だから妹者と言葉を交わすのが恐かった――のに。
- 姉者を見付けた妹者は、父者と手を繋ぎ、笑顔で駆け寄って来たのだ。
- 妹者の心の声が聞こえる。
- その声は、姉者に会えたことへの嬉しさで満ち溢れていた。
- ∬´_ゝ`)『――私のこと、恨んでないの? 私のせいで、妹者は……』
- 問いかける姉者に、妹者は、
- l从・∀・ノ!リ人『妹者ね、実は、ちょこーっとだけね、
- 姉者達のせいかな? って思っちゃったのじゃ。
- でも、よーく考えてみれば、
- おっきい兄者も姉者も、望んで心を読むようになったわけじゃないのじゃ』
- そう、答えた。
- 211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:17:47.57 ID:DG6Ms756O
- l从・∀・ノ!リ人『ちょちょさん達がおっきい兄者と姉者を恐がっちゃうのも分かるのじゃ。
- 家族なのに、ちっちゃい兄者は姉者達に秘密を作るじゃろう?
- 秘密を知られるのって、きっと、とっても恐いことなのじゃ。
- だから、だあれも、悪い人、いないのじゃ。
- お互い話し合えばよかったのにとは思うけど、
- でもやっぱり、妹者、みんなみんな、悪くないと思うのじゃ』
- ∬´_ゝ`)『……妹者……』
- l从・∀・ノ!リ人『むしろ、一度でもおっきい兄者と姉者のせいにした妹者の方こそ
- 怒られるべきなのじゃ。
- ……ごめんなさい、なのじゃ。
- 姉者のこと、今も、だぁい好きなのじゃ!』
- 嘘など、一つもなかった。
- 秘密を持たぬ術を持つ妹者。
- 彼女の言葉は、全部、飾ることのない本音だった。
- 妹者は、心の声が聞こえなくても――いや、聞こえないからこそ、
- 姉者や兄者よりも、人の気持ちを考えることが出来るのだ。
- 姉者は、その言葉と笑顔に、許された気がした。
- 気付けば妹者を抱きしめ、涙を流していた。
- ごめんなさい、と言おうとして、思い直す。
- 自分のせいではないのだと妹者は言ってくれた。
- だから――ありがとう、私も大好き、と。
- 泣きながら、姉者は妹者にそう言った。
- 父者は話に加わるタイミングを逃し、始終空気だった。
- 220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:22:46.12 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「――ってところね。妹者ちゃんマジ天使」
- (´<_` )「イイハナシダナー あっごめんなさい姉者腕捻らないで痛い痛い痛い」
- <_プー゚)フ「……父者はどこ行った? 今はいないみたいだけど」
- ∬´_ゝ`)「私がここに来た直後、母者が迎えに来たのよ。それで父者を連れていったわ」
- <_プー゚)フ「姉者と妹者は、ついていかなかったのか」
- ∬´_ゝ`)「馬鹿弟共が、ここに来ちゃいそうな気がしたからね。
- 妹者と一緒に待つことにしたの。
- 私達は自分の意思で、ここに残っていたのよ」
- 髪を掻き上げ、姉者は弟者を見下ろした。
- ∬´_ゝ`)「んで次は、このビチグソね。
- 私が言えた義理かどうかは分からないけど、こいつ本当に馬鹿だわ。
- 馬鹿とかビチグソとか通り越してもう馬糞だわ」
- (´<_`;)「……」
- <_フ;゚ー゚)フ(容赦ねえな)
- ∬´_ゝ`)「生きていた頃の私が知っている、この馬糞についての情報は、
- デレちゃんの家に婿に行ったことまでだけ。
- それ以降については、馬糞本人に訊いたわ」
- 先程まで撫でていた弟者の頭をひっぱたき、姉者は立ち上がった。
- 223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:25:49.21 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「それによれば?
- ただ1人残った家族すら捨てる気満々で?
- デレちゃんと色々、もう色々やりまくって?
- エクソシスト様に頼るどころか八つ当たりして?
- ただ1人残った家族を八つ当たりの道具にして?
- 最終的に兄者を殺そうとして返り討ちに遭ったと。
- お姉ちゃんったら思わず、もういっぺん死ねって言っちゃったわよ。
- 妹者にはキツすぎたから聞かせてないけど」
- :( <_ ):
- <_フ;゚ー゚)フ(弟者が本当にもういっぺん死にそうな顔してるけどフォロー出来ない)
- 盛大な、それはもう盛大な溜め息をついて、姉者は弟者を睨みつけた。
- ∬´_ゝ`)「……ほんと、厄介なのよ、こいつって。
- 私と兄者に対して本心を隠す方法を手に入れちゃってるからね、
- 本音がなかなか分からないの」
- <_プー゚)フ「そうらしいな」
- 226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:30:51.54 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「その方法がね、えーっと、一つは何だっけ」
- (´<_` )「真っ白い紙で思考を隠す感じで……」
- ∬´_ゝ`)「そうそう。それだと、思考の断片がちらっと聞こえるだけなの。
- それは別にいいわ。こっちとしても助かるし。
- んで……すっごく厄介なのが、もう一つの方。
- 『どうでもいいことを考えて本心を隠す』ってやつ。
- 厄介な上、これの方が使われる頻度が高いの。
- 本人いわく、『真っ白い紙で隠す』よりも楽らしいけど」
- 弟者は、土下座から正座へと姿勢を変える。
- 「しょんぼり」という言葉が似合いそうな顔だ。
- ∬´_ゝ`)「要するに――本音を、嘘で固めるの。
- それに何度騙されたか分かんないわ。
- 妹者が素直まっしぐらなのに対して、こいつったら嘘ばっかり。
- 本心を隠すために躍起になるのよ」
- <_プー゚)フ「つまりどういうことだってばよ」
- ∬´_ゝ`)「……こいつは、ついちゃいけない嘘で、表に出すべき本心を隠したの」
- (´<_` )「……」
- ∬´_ゝ`)「――兄者、父者、母者、私、
- そしてエクソシスト様のことも。
- 本当は、大好きだったのよ」
- 229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:33:39.30 ID:DG6Ms756O
- ずっとずっと昔、まだ小さい頃。
- 兄者と姉者から、弟者は何度も何度も謝られた。
- 心を読んでしまってごめんなさい、
- 秘密を作れないなんて恥ずかしいでしょう、ごめんなさい――。
- 幼いながらに、弟者は思う。
- 心を知られる自分より、知ってしまう兄者と姉者の方が辛そうだ、と。
- また、弟者は、周囲の人間に恐れられて虐げられる兄と姉の姿も見てきた。
- 「お前らと一緒にいるのが嫌だ」「傍に近寄るな」「人の頭を覗くな」。
- そうは言われても、聞こえてきてしまうものは仕方がない。
- 抗えない力のせいで、2人は何度も泣かされていた。
- それならば、と、弟者は。
- 意地でも、心を読ませない方法を手に入れようと考えた。
- それで、兄者と姉者が苦しまなくなればいい。
- 町の人間が、2人を恐れなくなればいい。
- 弟者が求めたのは自分の平穏ではなく、
- 兄と姉を救うことだった。
- 231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:36:37.10 ID:DG6Ms756O
- その方法はすぐに見付かったが、それは、弟者が必死だったから、
- そして彼が器用だったからこそ出来たもの。
- 他の者には難しく、結局弟者にしか扱えぬ術であった。
- ――それでも自分だけは、兄者と姉者を苦しめないようにしよう。
- 嘘の言葉で本音を包もう。
- 弟者は、兄と姉へ嘘をつき続けることにした。
- 彼なりの、優しさだった。
- だが――それも長く続けていると、弊害が生じ始める。
- いつしか、兄と姉のため、という目的が、
- 「ひたすらに本心を隠し続ける」ことへの執念に変わっていったのだ。
- 本音を悟られぬよう、心も態度も嘘で埋め尽くす。
- どうしても気付かれてしまうこと――たとえばデレへの恋心だとか――はあるが、
- それ以外は、概ね隠すことが出来た。
- そうして、彼は無意識にすら、嘘を思い浮かべるようになる。
- そこでまた起きる弊害。
- 弟者は、自分すらも騙せるようになった。
- 232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:40:05.42 ID:DG6Ms756O
- 町の人間達とは違って、流石家に優しいエクスト。
- そんなエクストを信じきっているくせに、
- 「デレに馴れ馴れしい」「ただ優しいだけの人間」と思い込むことで、
- エクストへの本音を押し殺す。
- そうやって――小さな本音を大きな嘘が覆い尽くして、
- 彼の心は、いっぱいいっぱいになって。
- ついに、「人柱」の事件が起こったとき、心が暴走した。
- ――兄者と姉者のせいだ。
- あいつらがいるせいだ。
- あいつらを父者と母者が作ったせいだ。
- 可哀相な妹者。
- 被害者は俺と妹者だけ。
- エクソシスト様は助けてくれなかった。
- あの人も加害者。
- 何もしてくれなかった。
- みんな悪い。みんなみんな――
- 236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:43:47.36 ID:DG6Ms756O
- ショックが大きすぎて、弟者は自分の心をコントロール出来なかった。
- 溢れていく偽の憎しみは彼を満たして、満たして。
- 本心が、分からなくなってしまった。
- 隅に追いやられた本心は。
- 家族への愛と、自分達を好いてくれたエクストへの信頼。
- それに気付かせてくれたのは、
- 「二度死ぬ」と思わせるほど、弟者をぼっこぼこにしてくれた姉者の拳だった。
- 本気で消滅しかけた、と後に弟者は語る。
- 240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:46:46.45 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「……あんな酷いことをしておいて、全部嘘でした、なんて。
- 虫がいい話でしょう。
- でも、こいつの中で、その嘘が『本当』に成り代わっちゃってたの。
- 迷惑極まりないけど――」
- ――元はといえば、私と兄者のせいだったのよ。
- 姉者は、沈んだ声で、言った。
- ∬´_ゝ`)「ごめんなさい、エクソシスト様。
- あなたは、生前、ずっとご自分を責めていらしたようだけれど。
- そんなこと、全然ない。
- 私達姉弟のせいでややこしく拗れに拗れたの。
- ……巻き込んでしまってごめんなさい」
- <_プ−゚)フ「……でも、やっぱり、俺は何も出来なかった」
- ∬´_ゝ`)「出来なくて当たり前だったのよ。
- 神主様も坊様もグルになってたし、私達もあなたに頼らなかった。
- 特に、この馬糞ときたら」
- (´<_` )「そろそろ馬糞やめて……」
- 242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:50:31.56 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「あなたは、あのとき、あなたが出来る範囲で最良のことをしていたのよ。
- 兄者と弟者のことを守ろうとしてくれたんでしょう?
- 兄者の呪いから、みんなを守ろうとしたんでしょう?
- ……自分の命まで犠牲にしたのは、ちょっと頂けないけど」
- <_プ−゚)フ「……」
- ∬´_ゝ`)「あ、そういえば――プギャーね。
- あいつのこと、エクソシスト様は殺してなんかなかったわよ」
- <_フ;゚д゚)フ「このタイミングで!?」
- ∬´_ゝ`)「プギャーが死んだのは、兄者がプギャーをこの谷に落としたとき。
- 私と弟者、目の前で見てたし。
- それまでは気を失ってただけみたい。しつこい男よね」
- <_フ;゚−゚)フ「……まじか」
- ∬´_ゝ`)「まじまじ」
- ほっとしかけて――エクストは、眉を寄せた。
- それじゃあ、結局プギャーは兄者が殺してしまったのだ。
- 弟者、荒巻、プギャー。
- 3人も手にかけたことになるではないか。
- 考え込むエクストの顔をじっと眺め、姉者は、顔を顰めた。
- エクストの額を、こつん、と叩く。
- 245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:53:49.58 ID:DG6Ms756O
- <_フ;゚−゚)フ「ん」
- ∬´_ゝ`)「どこまでもお人よしね。
- 素直に安心すればいいのに」
- <_プ−゚)フ「……ごめん」
- ∬´_ゝ`)「謝らなくていいけどね。
- さて……ここからが重要よ。
- プギャーに続いて、次は兄者がここに落ちてきた」
- ――兄者の体から魂が抜ける。
- 姉者達が声をかけようとした瞬間。
- プギャーや、その辺の浮遊霊が兄者に吸い込まれていった。
- ∬´_ゝ`)「びっくりしたわ。
- 私達まで引っ張られそうになったから、慌てて離れたの」
- 247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 00:57:03.60 ID:DG6Ms756O
- ――そして一気に広がる、どす黒い念。
- 突然、姉者の胸に、町の人間への怒りや憎しみがかつてない勢いで沸き上がった。
- 姉者は妹者を抱え、弟者を引きずりさらに兄者との距離をとった。
- そうすると憎しみは収まったものの、依然として兄者から妙な気が吹き出している。
- 寒気がする空気、引っ張られるような感覚。
- 姉者達に気付くことなく、じっと橋を見つめている兄者。
- 近付いてはいけないと、3人は察した。
- そうしている間にも、他の霊魂が兄者に引き寄せられていく。
- 姿は兄者なのに――新たに霊を取り込む度、別の何かに変わっていくように思えた。
- 3人は身を寄せ合い、兄者へ引っ張られないように耐えた。
- 耐えて、耐えて、一体どれほど時が過ぎただろう。
- 突然兄者の力が大きなものになり。
- その気にあてられたか、姉者達は意識を失った。
- 250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:00:21.73 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「今になって思えば、兄者の『呪い』ってやつだったのかしらね、あれが」
- (´<_` )「……呪い……」
- 姉者が、弟者を見る。
- それからエクストへ目を向け、「整理するわよ」と前置きをした。
- ∬´_ゝ`)「まず、あいつは出連神社にある本によって呪いを知った。
- 呪いの詳しい方法は分からないけど、多分、
- 他の魂を吸収することで成立するのかも。
- ……私達は、それに捕まりかけた――あるいは捕まった。
- そこに、エクソシスト様が来て、呪いを鎮めてくれた……。
- あくまで推測ね?」
- <_プー゚)フ「ああ」
- ∬´_ゝ`)「それから……80年? 随分経ったわね。
- 80年経った現代、ある不測の事態により、兄者が解放されてしまった。
- それに伴ってエクソシスト様や私達も目覚めた」
- エクストと弟者が頷く。
- それを確認し、姉者は話を続けた。
- ∬´_ゝ`)「――ここからは私だけが知ってることね。
- まず最初に目覚めたのは私。川の中に立ってたわ。
- 足元で弟者が寝てた。幽霊って溺れなくていいから便利ね。
- ……そこで、石を持ち出してる浮遊霊を眺めていたの。
- 次に目を覚まして、橋から離れたのはエクソシスト様。
- 続いて兄者が起きたんだけど……」
- 254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:04:21.03 ID:DG6Ms756O
- 目を覚ました兄者。
- 姉者が彼に気付いたと同時に、彼は、すぐさま川を出て町の中へ消えていった。
- 追いかけようとしたが、足元で眠る弟者を放っておけず、
- 姉者はその場に留まった。
- それから2日か3日ほどが経って、ようやく弟者が起きる。
- そして、川を離れようと話しているとき、不意に、橋の袂に立つ妹者を見付けた。
- 2人は妹者へ近付こうとしたが――突然、妹者は辺りを見渡すと
- 怯えたような顔をして逃げていってしまった。
- きょとんとしていた姉者と弟者は、直後、恐怖に身を竦ませる。
- どろどろ、ざわざわ、ぐらぐら――何と形容するべきか。
- ひどく恐ろしい気配が近付いてきたのだ。
- 妹者が何故逃げ出したのか理解した2人は急いで川の中に潜り込み、
- 昔より近く、大きくなった橋を見上げた。
- ――その橋の上を、町から出てきた兄者が、隣町へ向かって通っていった。
- 256: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:07:37.65 ID:DG6Ms756O
- ∬´_ゝ`)「きっと、町で新たに霊を取り込んできたのね。
- 前よりも、ずっとずっと多く……」
- あんな状態の兄者の傍に行くのは到底無理だ。
- そう判断した姉者と弟者は、川に隠れて、妹者が帰ってくるのを待つことにした。
- 隣町へ行った兄者が、いつまた戻ってくるとも知れない。
- 川を出て兄者に見付かってしまえばどうなってしまうのか。
- それを考えると、下手に動くのは得策ではない。
- ∬´_ゝ`)「そして数日後、再び兄者が橋を渡っていった。
- そのとき――何人か連れていたわ」
- <_プー゚)フ「連れて……?」
- ∬´_ゝ`)「何故吸収せずにいたのかは分からないけど……。
- もしかしたら仲間でも作ったのかも」
- <_プー゚)フ「……うーん……」
- ∬´_ゝ`)「とりあえずこれが話せる全て。
- あれ以来、兄者も妹者も見てないわ」
- 259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:10:50.24 ID:DG6Ms756O
- <_プー゚)フ「妹者は、……何かよく分かんないけど犬になってるっぽい」
- (´<_`;)「犬?」
- ∬´_ゝ`)「……兄者から逃げるために犬の中に隠れたのかしら」
- <_プー゚)フ「――けど、兄者はどこに行ったんだろうな」
- ∬´_ゝ`)「そうね……」
- 考え込む姉者。
- はたと顔を上げた。
- ∬´_ゝ`)「学校……」
- <_プー゚)フ「学校?」
- ∬´_ゝ`)「兄者が二度目に橋を渡ったとき、誰の心の声かは分からないけど、
- 断片だけ聞こえたのよ。
- 学校、とか、七不思議、とか」
- <_フ;゚ー゚)フ「――!」
- 264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:13:41.50 ID:DG6Ms756O
- 学校。七不思議。
- 兄者は、ダイオードとツンを利用しようとした。
- まさか、復讐を――学校で行うつもりなのか?
- <_フ;゚−゚)フ「行かなきゃ……!」
- ∬;´_ゝ`)「あっ、ちょっと……待って、私達も行くわ!」
- エクストが踵を返し、姉者と弟者が慌てて後を追う。
- ∬´_ゝ`)「……一つ確認していい?」
- <_フ;゚−゚)フ「何だ!?」
- ∬´_ゝ`)「エクソシスト様、デレちゃんの子孫の女の子にちゅーしたの?」
- <_フ;゚−゚)フ
- <_フ;゚−゚)フ「それ今言うことじゃなくね?」
- (´<_` )「……は? それマジソース」
- ∬´_ゝ`)「記憶読んだ」
- 267: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/14(日) 01:17:21.57 ID:DG6Ms756O
- (´<_`#)「おい、あんた……あんたさ……何してんの?
- デレさんの血筋だったら誰でもいいの?
- デレさんの一途さ見習えよ」
- ∬´_ゝ`)「最後のは、あんたが言っていい義理じゃないんじゃないの。
- デレちゃんの一途さ踏みにじったくせに」
- ( <_ )「ごめんなさい……」
- <_フ;゚−゚)フ「ほらぁあああ、めんどくさいことになるから言うなよぉおおおお」
- ∬´_ゝ`)「何でしたのか気になって」
- <_フ;゚−゚)フ「俺もよく分かんないけど生前し損ねたからじゃねえかなあ!?」
- (´<_` )「え? し損ねたって何?
- する寸前までいったって感じがするよ、その言い方。え?」
- <_フ;゚−゚)フ「めんどくせえええええええええ!」
- 第七話:続く
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