( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:35:09.32 ID:XaZtPLx6O



 ――エクストが呪いを鎮めるために使った石。
 あのまま橋の下に留まっていれば、いずれ、兄者の呪いも、何もかも、
 浄化されていた筈だった。

 土砂やら何やらに埋もれた石。
 そのおかげで第三者の手によって動かされることもなくなり、
 あとは時間が経つのを待つばかりだった。

 だが、その石は、理事長の友人、とある浮遊霊によって移動させられる。

 その人は、「不思議な感じがする石」を、理事長への土産にしようと思っただけ。
 生きた人間であれば、土を掘り返さなければ取り出せなかったが、
 理事長の友人は霊体であり、石だけを掬い取ることが容易であった。

 そうして、二ヶ月前。
 呪いの浄化は、失敗に終わったのだ。

 決して彼を責めてはいけない。
 誰ひとり、石の存在も、そこにある理由も、知らなかったのだから。



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:38:22.36 ID:XaZtPLx6O



(;ФωФ)「……その、石が……」

( ´_ゝ`)「これが、どんな石かなんて知らないが……、
       間違いなくこいつだ、俺を抑えつけていたのは。
       何十年も付き合ってきたんだ、それぐらい分かる」

 兄者は、全てを語り終えた。
 町の人間の仕打ち。
 崩壊した家族。
 呪いをかけたこと。

 その呪いを、何者かに邪魔されたこと。

 石を床に向かって叩きつけ、兄者は憎々しげな顔をした。

( ´_ゝ`)「ったく、一体誰がこんなもんを使いやがったんだか……。
       ……まあ、どうせ神社か寺の奴だろうが」

(;ФωФ)(――違う……!)

 理事長の脳裏に過ぎるは、80年前の記憶。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:40:37.36 ID:XaZtPLx6O

 バッジの元となった石を貰い受けた日。
 机に上がっていた日記。
 その内容。

 七色の石の前に、ある石の説明があった。
 乳白色で、つるつるとしている、「魔を鎮める石」。
 この石が正にそれなのだろう。
 ならば、あのとき机の上に七色の石があったのは、
 魔を鎮める石を使うための、準備の跡だったわけだ。

 つまり、呪いを鎮めたのは、教会の神父――


( ´_ゝ`)「……」

 不意に、兄者は顔を上げた。
 理事長を見る。

( ´_ゝ`)「……教会……?」

(;ФωФ)「む……?」

 ――兄者の頭に流れ込んで来た、理事長の思考。
 その中にあった、教会の風景。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:43:11.05 ID:XaZtPLx6O

( ´_ゝ`)「この石……教会にあったのか?」

(;ФωФ)「確信は持てぬが、恐らくそうである。
       教会に、とある神父が集めた石……パワーストーンと言うか、
       そのコレクションがあってな。
       コレクションについて記した日記に書いてあったものと、
       その石が一致するのである」

( ´_ゝ`)「……あんたが教会に行ったとき……誰もいなかったのか」

(;ФωФ)「うむ、その当時の神父が亡くなったとかで」

 突然、兄者の手が理事長の肩を掴んだ。
 その強い力に、理事長が顔を顰る。

(;ФωФ)「な――」

( ´_ゝ`)「それは何年前だ。
       そのときのことを話せ――いや、考えるだけでいい。
       時代と、あんたが知ってる限りの状況を」

 無表情。
 冷静な声。
 それが、恐怖を煽る。

(;ФωФ)「……い、今から、80年ほど前――……そう、そうである、
       君の話が間違っていないのなら、君が呪いをかけてから間もない頃……」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:46:35.15 ID:XaZtPLx6O

 ――兄者が橋の下へ身を投げた後。
 彼の魂には、ただひたすらに、復讐の思いだけが溢れていた。
 やがて彼の思考も混濁する。
 その瞬間、彼は「呪い」そのものになった。

 だから、彼は知らなかった。
 復讐以外に何も考えられずにいた彼は、気付けなかった。

 石と共に自分を覆い隠したもの。
 それが、エクストだったことに。

( ´_ゝ`)「……」

(;ФωФ)「ど、どうしたであるか」

 彼は、今、ようやく悟った。
 全てを悟った。

 エクストは。


 エクストは、自分のせいで死んだのだ。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:48:39.67 ID:XaZtPLx6O

(  _ゝ )「――」

 ぐらり、目眩がする。


 何で。
 自分は、何で。
 守りたい人を、殺してしまうんだろう。



(;ФωФ)「……!?」

 突然、兄者から一層巨大な気が溢れ出た。
 理事長の体が勝手に引き寄せられる。
 抵抗しようとした、そのとき。

      「――理事長!」

 聖徒会長の声が、した。





最終話:七大不思議と「せいとかい」 後編



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:51:23.75 ID:XaZtPLx6O



(*゚ー゚)「クーさん、バッジ!」

 しぃがクーに駆け寄り、ピンク色のバッジを渡した。
 何とか身を起こし、クールはそれを受け取る。

川;゚ -゚)「ありがとう……すまない、巻き込んで……」

(,,゚Д゚)「気にすんな。あのとき、しぃを蛇から助けてくれただろ。
     これでおあいこだ」

 ギコが微笑み、しぃが頷く。
 クールの顔にも、笑みが浮かんだ。

川 ゚ー゚)「……本当に、ありがとう」


ノハ )「……」


 そんなやり取りを見て。
 ヒートは、ぎり、と歯を食い縛った。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:53:54.15 ID:XaZtPLx6O

ノハ# 听)「――ずるい……ずるい、ずるい!」

(,,゚Д゚)「!」

 先程ギコ達が突き飛ばしたドアが、再び浮かび上がる。

ノハ#゚听)「お前ばっかり、お前ばっかり! どうして!!」

(;*゚ー゚)「ギコく……っ!」

 そして、地面と水平になると、ギコへ向かって異常な速度で躍りかかった。

(;,-Д-)「……!」


 後ろにいるしぃとクールに当たらぬようにと、ギコは手を広げた。
 自分が全て受け止めようとしたのだ。

 しかし。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:56:11.76 ID:XaZtPLx6O


(;,-Д-)「……」

(;,-Д゚)「……?」

 予想していた衝撃が、一向にやって来ない。
 恐る恐る目を開けると。



 黒いレースの、大人な下着を纏った尻が、視界を埋め尽くした。



(,,゚Д゚)

(,,゚Д゚) ブシッ!!

 その存在を理解した瞬間、ギコの鼻から鮮血が飛び散った。
 彼は案外純情なのである。



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 19:58:29.85 ID:XaZtPLx6O

ノハ;゚听)「あ……っ」

川 ゚ -゚)「ヒート。――お姉ちゃん、少し怒ったぞ」

 その尻は、ギコの前に浮かぶクールのものであった。

 彼女が前に突き出している右手には、バッジ。
 バッジからピンク色の光が溢れ、辺りを照らしている。

 そして――ギコに向かっていた筈のドアが、全て静止していた。

ノハ;゚听)「なっ……なっ……」

川 ゚ -゚)「……相手がお前で良かった。
     私の力、さぞ効くだろう」

 ヒートには、何が起こっているのか分からない。

 バッジの存在と、その意味。彼女は何も知らない――いや、
 「知らされていない」のだ。

 ただ一つ分かることは。
 姉が、優位に立っていること。



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:01:08.78 ID:XaZtPLx6O

ノハ;゚听)「――……」

 焦り。怒り。

ノハ#゚听)「……ぁ、ああっ、ああああああああああああ!!」

 沸き上がる激情に任せて、ヒートは叫んだ。
 それが、クールにとって、最大のチャンス。

川 ゚ -゚)「私の役目は、昔から! お前を落ち着かせることだ!」

 前へ伸ばしていた右手を、そのまま上へ。

 バッジの光が肥大し、辺り一帯をピンク色が覆う。

 最も輝く、クールの手元。


(,,゚Д゚)「……!」

(*゚ー゚)「すごい……」

 ギコとしぃは、口を開けて、ただ眺めていた。

 クールの後ろに、薄桃色の円が浮かんでいる。

 その円は――まるで、月のような模様をしていた。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:04:26.14 ID:XaZtPLx6O

川 ゚ -゚)「私とバッジが司るは『月』――狂気を操る月!」


ノハ#゚听)「――!」


 「月は人を狂わせる」。
 そんな話が、昔から言い伝えられてきた。
 それに対して癒しの力もあると言う。

 狂気を煽ったり、静めたり。

 月には――心を操る力が、ある。


ノハ;゚听)「あ……あああ、あ……」


 胸を燃やし尽くすような感情が消えていく。
 宙に浮かんだままだったドアが、ゆっくりと床に着地した。

 月。
 柔らかで、気高くて、人の心を掴む。
 その美しさが。

 姉に、そっくりだった。



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:07:32.03 ID:XaZtPLx6O


 ――クールとヒートが命を落とすことになった原因は、火事であった。

 その日、クールが通う女学校は、昼前に授業を終了させた。
 ゆっくり読書でもして過ごそうと、うきうきした気分で帰宅したクールに、
 母がお使いを頼む。

 ヒートが弁当を忘れていったから持って行ってほしい、ということだった。

 快諾し、クールは弁当を抱え、ヒートの通う高等小学校を目指した。
 少し遠いところだったため、急ぎ足で向かう。

 すると、学校に近付くにつれ、周囲が騒がしくなり始めた。
 何だろうと疑問に思っていると。

 遠くで、煙が上がっているのが見えた。

 それは正に、クールが進んでいる目的地から発生しているようだった。

 火事、という声が聞こえる。
 クールは、弁当の中身が崩れるのにも構わず、全力で駆け出した。

 学校の前は、避難した学生や教師、野次馬で溢れ返っていた。
 校舎が火に包まれている。
 休憩中に教師が吸っていた煙草が原因だと、誰かが言った。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:10:15.31 ID:XaZtPLx6O

 クールがヒートの名を大声で呼ぶ。
 返事はない。
 人波を掻き分けて一人一人確認するも、妹がいない。

 ――校舎に残っている。

 制止の声を無視し、クールは学校の中に飛び込んだ。

 ヒート、ヒート――

 煙が充満する廊下を、叫びながら駆けずり回る。
 転んでも、靴が脱げても、クールは止まらなかった。

 ふと、聞き覚えのある声が耳に響いた。
 その声は、女子用便所から聞こえる。

川;゚ -゚)『ヒート!』

 中に入り、クールは愕然とした。

 一つの個室を除いて、全てのドアが外れ、あらぬ場所へ倒れていた。
 掃除用具も散乱し、足の踏み場もない。

 ドアが付いたままの個室。
 その中から、少女の声と、壁を叩く音がする。
 どうやら、散乱する物のせいで、ドアが開かなくなっているらしい。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:13:26.84 ID:XaZtPLx6O

 そうしている間にも、ひとりでに物が飛び回ったり、窓ががたがたと揺れている。

 閉じ込められてしまった少女がヒートであるのは、一目瞭然だった。

川;゚ -゚)『ヒート、落ち着け! ヒート!』

    『あああああああ! 助けて、助けて、誰か、誰かぁっ!』

 未だ抱えていた弁当を放って、クールは個室の前に散らばる用具やドアをどかした。

 障害物がなくなり、個室がようやく開く。

ノハ;;)『うわあああああ! 火、火が――』

川;゚ -゚)『ヒート……!』

 うずくまり泣き叫ぶヒート。
 クールは、妹を抱きしめた。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:16:39.87 ID:XaZtPLx6O

川;゚ -゚)『ヒート、もう大丈夫だ。
     姉ちゃんが来たからな。
     一緒に出よう』

ノハ;;)『あ、あ……?』

 ヒートが我に返る。
 自分を抱きしめてくれているクールに気付き、目を見開いた。

ノハ;;)『……姉、さ……なんで……』

川;゚ -゚)『お、気が付いたか。さあ、早く……』

 その瞬間。

 炎と共に、天井が落ちてきた――



55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:19:15.36 ID:XaZtPLx6O



ノパ听)「……」

 ヒートが床に膝をつく。
 俯き、押し黙ってしまった。

 クールはバッジを下ろすと、ヒートの傍にしゃがみ込んだ。

川 ゚ -゚)「ヒート」

ノハ )「……羨ましかった」

 ぽつり。ヒートは呟いた。

ノハ )「人気者で、綺麗で、親に好かれてて……何でも持ってる姉さんが、羨ましかった。
     羨ましくて、妬ましくて……嫌いで、好きだった」

川 ゚ -゚)「……」

ノハ )「姉さんは俺を助けようとしてくれた。そのせいで死んだ。
     ……申し訳なかった。謝りたかった。礼を言いたかった。
     なのに……なのに、気付けば、俺1人しかいなかった」

 ふるふると、ヒートの体が震え始める。
 彼女の瞳から零れた雫が、床に落ちて、弾けた。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:22:34.06 ID:XaZtPLx6O

ノハ )「姉さんはもう成仏しちまったのかと思った。
     俺は、いっぱい言いたいことがあって、いっぱい後悔してて、
     成仏できなくて、ずっと同じ場所に留まってたのに。
     ……俺を1人残していった姉さんが、恨めしくなった」

川 ゚ -゚)「……ごめんな。
     助けられなかったから、ヒートに責められるのが恐かったんだ。
     だから、この学校に逃げた」

ノハ )「……俺は、一緒にいてほしかったよ」

 クールの手が、ヒートの背に触れる。
 ヒートが拒絶しないのを確かめて、クールは、そのまま抱きしめた。
 あの日のように。

ノハ;;)「それで、……それで、姉さんがここで楽しく暮らしてるって聞いて……。
     俺のことなんかどうでもいいのかと思った。
     俺のことなんか忘れちまったのかと思った。
     結局昔と変わらないんだ。俺は除け者で、姉さんは人気者で。
     悲しいって、羨ましいって、憎たらしいって、嫌な気持ちばっかり浮かんで……」

川 ゚ -゚)「私はお前が大好きだよ」

ノハ;;)「……っ」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:25:43.45 ID:XaZtPLx6O

川 ゚ -゚)「正直で、お馬鹿で、繊細で、いじらしくて……可愛くて仕方ないんだ」

ノハ;;)「……う、う……」

 ヒートは、クールにしがみつき。
 胸に顔を埋めて泣きじゃくり――かけた。

ノハ;;)「うわああああ……うわっ……うわあああああああああ!?」

川 ゚ -゚)「えっ何びっくりするからやめて」

ノハ;*う;)「胸ぇっ! 胸ぇえ!」

 むにゅっとした姉の胸に、ヒートは普通にビビった。
 未知の感触だったのだ。

川 ゚ -゚)「それぐらい我慢しようぜ……感動のシーンだし……」

ノハ;*゚听)「ふにょんってした! 服越しじゃなくて素肌だったから本気でびっくりした!
      しっとり、もちっとしたむにゅむにゅがぁっ!」

(,,゚Д゚) ブシシュッ

(;*゚ー゚)「ギコ君の鼻血がナイアガラ!!」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:29:03.84 ID:XaZtPLx6O


  _
(#゚∀゚)「これから! 公開処刑を! 行います!」

N| "゚'` {"゚`lリ「公開プレイにしてやろうか?」
  _
( ゚∀川;д川「……先輩……」

 女子トイレ前。
 バッジの力で回復しているモララー。
 モララーを倒すべく近付いてくる阿部。
 その間に立つ、ジョルジュと貞子。

 ぴりぴりとした緊張感が空間を支配する。

川;д川(赤マント仮面様が回復するまで時間を稼がなきゃ……。
     で、でも、回復したとしても、赤マント仮面様、勝てるのかな……?
     バッジがなかったとはいえ、ここまでぼこぼこにされちゃってるし……。
     もし駄目だったら……。
     ……な、長岡先輩、喧嘩強いかな……?)
  _
(*゚∀゚)「あ、やばい、フルボッコにされてるアニキも格好良い。
     儚げ。最強」

川д川「……」
  _
(;゚∀゚)「あっ痛い!」

 無意識に貞子の足がジョルジュを蹴飛ばしていた。



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:32:17.17 ID:XaZtPLx6O
  _
(#゚∀゚)「っ何すんだ! 敵は俺じゃn」

川д川「黙れ」
  _
( ゚∀゚)「はい」

川;д川(どうしようどうしよう……頼りにならない……!)

N| "゚'` {"゚`lリ「さて……どうする? 逃げるなら今の内だぜ」
  _
(#゚∀゚)「誰が逃げるかボケェエエ!」

 ついに阿部が、手を少し伸ばせば触れられるほどの位置に立った。

N| "゚'` {"゚`lリ「本当にいいのかい?
          俺は女でも構わず殴っちまう男なんだぜ」

川;д川「ひぇっ」

(;-∀・)「……それは、いただけ、ないね……」

 がくがくと震える腕で、モララーが身を起こす。
 しかし、大きく腕が揺れたかと思うと、再び突っ伏してしまった。



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:35:14.69 ID:XaZtPLx6O

(; ∀ )「……っく……さ、貞子君、ジョル君、……逃げなさい……」

川;д川「いっ、嫌です!」
  _
(;゚∀゚)「アニキ、それじゃあ何のために来たか分かんねーだろ?」

(; ∀ )「ジョル君はまだいい……。
      だが、貞子君まで危険な目に遇わせるわけにはいかない!」
  _
(*゚∀゚)「うわあ、あからさまな差別を繰り出すアニキ格好いい」

川;д川「……いいえ! 私、頑張ります!」

N| "゚'` {"゚`lリ「ひゅう、素敵な絆だな」

 揶揄するように言って、阿部が貞子に向かって手を伸ばす。
 殴られる、と、貞子は怯えた顔をしてみせた。
 しかし。

川;д川「……あ、……?」

N| "゚'` {"゚`lリ「……」

 阿部は――その手を、下ろした。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:38:08.82 ID:XaZtPLx6O

N| "゚'` {"゚`lリ「……後……後だ。
          今のターゲットは七大不思議。
          生徒に手を出すのはその後だ」

(;・∀・)「……へえ、そうかい」

 今度こそモララーが立ち上がる。
 体力は回復しきっていないようだが、体につけられた傷は殆ど消えていた。

川;д川「赤マント仮面様……」
  _
( ゚∀゚)「アニキ!」

(;・∀・)「――2人共」

川д川「……私達、逃げませんよ」

(;・∀・)「はは、そのようだ。
      何、2つばかりお願いがあるのさ」

 そう言って、貞子の耳元に、モララーは「一つ目のお願い」を囁いた。

川д川「わ、分かりましたけど……どうして――」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:40:29.98 ID:XaZtPLx6O

N| "゚'` {"゚`lリ「へい、作戦会議か?
          そんな暇あるのかい」

川;д川「きゃあっ!」

 阿部が貞子を突き飛ばし、モララーに迫る。
 そのまま掴み掛かろうとする手を、モララーは、マントを翻すことで避けた。

( ・∀・)「貞子君、ジョル君! バッジの配達、時間稼ぎ、非常に感謝する!
      そして二つ目のお願いだ!
      君達がこの場を離れたくないというならば、
      どうか、トイレの一番奥の個室に、しっかりと篭っていてほしい!」

川;д川「え……っ」
  _
(;゚∀゚)「何でだよ、俺らも戦うぜ!?」

( ・∀・)「君達がいては出せない技だ!」

N| "゚'` {"゚`lリ「何をする気か知らねえが……。
          俺は水、あんたは火。勝ち目なんざ全くないぜ」

川;д川(――水……?)



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:43:19.30 ID:XaZtPLx6O
  _
(;゚∀゚)「アニキ……!」

川;д川「長岡先輩!」
  _
(;゚∀゚)「うおっ!?」

 ジョルジュの腕を引き、貞子は女子トイレの中へ駆け込んだ。
 きょろきょろと床を見渡し、「それ」を見付ける。

川д川「先輩、これを赤マント仮面様に向かって投げて下さい!」
  _
(;゚∀゚)「あ? 何で……」

川#д川「早く!」
  _
( ゚∀゚)「はいっ!」

 ジョルジュは、渡された「それ」を振りかぶり、
  _
( ゚∀゚)「アニキィイイイイッ!!」

 モララーへ向けて、勢いよく投げた。
 阿部の追撃をひらりと躱し、モララーは「それ」を華麗に受け取る。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:46:34.14 ID:XaZtPLx6O

( ・∀・)「ありがとう、ジョル君!」
  _
(*゚∀゚)「俺とアニキなら……とても良いバッテリーを組めそうな、そんな気がする」

川;д川「先輩バスケ部でしょう! ――ほら、入って!」
  _
(;゚∀゚)「うわっ、ちょっ……」

 モララーに言われた通り一番奥の個室に入り、鍵を閉める。
 押し込まれる形で入れられたジョルジュは、貞子を睨みつけた。
  _
(;゚∀゚)「おい、貞子! アニキを見捨てる気かよ!」

 出ていこうとするジョルジュにしがみつき、貞子は首を振る。

川;д川「……あの人が水を使うなら、赤マント仮面様が火を使うなら……。
     私達は、ここを出ちゃ駄目です!」
  _
(;゚∀゚)「何で……うお腕におっぱい当たってるお前意外とおっぱいでけぇな」

川д川「呪い殺すぞ」
  _
( ゚∀゚)「ごめんなさい」



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:50:52.88 ID:XaZtPLx6O


 殴りかかる阿部を、モララーのマントが流していく。
 苛立ちを隠すこともせず、阿部は舌打ちをした。

N| "゚'` {"゚`lリ「そうやってマタドールごっこでも続けるつもりか?」

( ・∀・)「いいや……そろそろおしまいとするか」

 モララーは、受け取った「それ」――眼鏡を見遣った。

 バッジと共に、左手に握り込む。

N| "゚'` {"゚`lリ「わざわざそんなもん拾わせて……何がしたいんだ」

( ・∀・)「……」

 不敵な笑みを浮かべるモララーに、ようやく阿部は警戒心を抱いた。
 一体何を考えているのだ、と。

 阿部は一旦モララーと距離をとった。
 下手に近付くのは危険と判断してのことである。



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:53:50.60 ID:XaZtPLx6O

 睨み合いながら、モララーは言葉をかける。

( ・∀・)「……君は、七不思議だったそうだね」

N| "゚'` {"゚`lリ「……ああ」

( ・∀・)「学校霊だったわけだ」

N| "゚'` {"゚`lリ「そうさ。……それが、何だってんだ?」

( ・∀・)「――君は、優しい心を持つ霊だった……いや、今も持っている筈だ」

N| "゚'` {"゚`lリ「……」

( ・∀・)「生徒が好きだったんだろう。男女問わず。自分が住んでいた学校の生徒が。
      本当に私を仕留めたかったのなら、さっき、
      宣言通りに貞子君を殴っていれば良かったのに。
      君は、貞子君に、昔一緒に過ごしていた生徒を重ねてしまったんだ。
      だから手を出せなかった。……違うかい?」

N| "゚'` {"゚`lリ「……有り得ないな。
          俺は生徒を憎んでいる。恨んでいる」

( ・∀・)「それこそ有り得ない。学校霊とは学校に同調した霊だ。
      生徒を嫌う学校霊なんか、いるものか。
      君は嘘が下手だね。
      ――まあ……、私は君の事情なんて知らない。だから同情はしない。
      故に手加減もしない。……いいね?」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:56:29.79 ID:XaZtPLx6O

 モララーはマントを脱ぎ、阿部に向かって駆け出した。
 彼の言葉に動揺していた阿部は反応が遅れ、モララーの接近を許してしまう。

 真っ赤なマントが、阿部の視界に広がり。


N|;"゚'` {"゚`lリ「……!」


 突然、辺りが真っ暗になった。

 背中や腕に触れる、布の感触。
 マントに包まれたのだと理解する。
 一筋の光さえ入り込めないほどの密閉状態。

 そして、目の前にはモララーの気配。


(  ∀ )「ふん、むさ苦しい男と狭い空間に2人きりだなんて、寒気がするね」

N|;"゚'` {"゚`lリ「なら、暖をとるかい。お得意のしょぼい火で」



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 20:59:27.07 ID:XaZtPLx6O

(  ∀ )「ああ、そうさせてもらおう」

 モララーの左手。ぽっと灯る、小さな火。
 阿部は、その火を見て嘲った。

N| "゚'` {"゚`lリ「だから、俺の水で消してやるって――」

 阿部の手から水が溢れる。
 ほぼ同時に。

( ・∀・)「おしまいだ」


 溶け出した眼鏡のフレームの一部が、ぽたりと落ちた。




 空気を震わす、衝撃。



 個室にいた貞子達にまで届いた音は、まるで爆発。



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:02:12.70 ID:XaZtPLx6O
  _
(;゚∀゚)「なっ、なんっ、なぁあっ!?」

川;д川「やっぱり……!」
  _
(;゚∀゚)「何の音だよ今の!?」

川;д川「多分……水蒸気爆発です」
  _
(;゚∀゚)「すい……?」

川;д川「ゆとりが! 後で自分でググるなり何なりしてください!
     赤マント仮面様!」

 ドアを開け、貞子は個室を飛び出した。
 ぽかんと固まっていたジョルジュは、数秒経ってからようやくトイレを出た。
  _
( ゚∀゚)「誰か俺に優しい人いないかな……」



 女子トイレの前。
 ぼろぼろのマントを、モララーが一振りする。
 途端、マントは元通りとなった。

 モララー本人も多少の怪我を負っているが、バッジの力により次々癒えていく。

川;д川「赤マント仮面様、無事ですか?」

( ・∀・)「ああ。これぐらい、わけないさ」



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:05:37.11 ID:XaZtPLx6O

 ぴんぴんしているモララーに対し、阿部は床に倒れたまま微動だにしない。
 爆発の衝撃と熱を受けて、床に思い切り叩きつけられたのだ。
 しばらくは動けないだろう。

 ――水蒸気爆発。
 水が、非常に高温な物質に触れたときに起こる現象。

 赤いバッジが司るのは『火』。
 モララー1人で生み出す炎と熱には限度がある上、
 今は体力が不十分であり、阿部に簡単に返り討ちにされるようなものしか出せなかった。

 そこで、バッジの力を借りた。
 バッジがあれば、眼鏡を短時間で溶かす程の炎さえも、簡単に作り出せる。

 そうして溶けた金属が阿部の発する水に触れ、爆発を引き起こしたのだ。
 何か科学的に矛盾とかあっても知らん。起こったものは起こったのだ。

 比較的小規模な爆発ではあったが、一般人(の霊)である阿部には効いたようだ。



118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:08:40.97 ID:XaZtPLx6O

( ・∀・)「ああ……疲れた」
  _
( ゚∀゚)「アニキィイッ!」

( ・∀・)「……何かね」
  _
(*゚∀゚)「アニキがかっこよすぎて色々出そう」

( ・∀・)「……」

川д川「……あ、あの、赤マント仮面様」

( ・∀・)「何だい、貞子君。
      そうそう、勝てたのは君のおかげだ。本当にありがとう」
  _
( ゚∀゚)(本格的に俺の存在を無視し始めた……!)

川д川「長岡先輩のこと……『ジョル君』って……呼んでるんですね……」

( ・∀・)



122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:11:24.69 ID:XaZtPLx6O

川д川「いえ、別に趣味とか、嗜好とか、人それぞれですし……。
    私は、気にしませんけど、あの、本当に。
    でも、ちょっとびっくりしちゃいました」

( ・∀・)

川д川「えと、えと、その……随分、仲が進行したんだな、と……」

( ・∀・)



  _
( ゚∀゚)   (・∀・ )



  「えっ、ちょっ、アニキそれ何か駄目無理無理死んじゃうって熱っ熱い、アニk――」



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:14:35.35 ID:XaZtPLx6O



|゚ノ ^∀^)「嫌ですわ、ずるいじゃありませんこと?
       私1人に対して何十人も」

( ´∀`)「勝てればいいモナ、勝てれば」

(´・_ゝ・`)「モナーさん悪役みたいですよ」

(゚、゚トソン(だがそれがいい……)

 音楽室の中心に立ち、状況を把握するのに集中するレモナ。
 レモナを警戒しながらじりじりと室内に踏み込む吹奏楽部員と合唱部員達。
 モナーは、部員を不安げに見た。

 レモナは大鎌を持っている。
 このまま暴れられたら、間違いなく生徒に危険が及ぶだろう。

 だが――彼らを追い返せば、折角のチャンスをふいにしてしまう。

(´・_ゝ・`)「モナーさん!」

 悩むモナーに、吹奏楽部部長が何かを投げた。
 ちなみに、ついぞ紹介されていなかったが、彼の名前は盛岡デミタスという。
 名前を書く機会が、今やっと来た。良かった。やったねデミちゃん!



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:17:40.68 ID:XaZtPLx6O

( ´∀`)「!?」

 吹奏楽部部長――デミタスが投げたのは、紫色のバッジ。
 それを手にしたとき。
 モナーの中に、ある作戦が浮かんだ。

(゚、゚トソン「モナーさん、私達は何をすればいいですか!」

 合唱部部長、名前は都村トソン。
 指示を仰ぐ彼女に――彼女達に、モナーは言った。

( ´∀`)「この方は目が見えないモナ! その代わり……」

 それは指示ではなく、レモナの紹介。
 しかし。

( ´∀`)「耳がとんでもなく良くて、音で情報を得るんだモナ!」

(´・_ゝ・`)「……了解」

(゚、゚トソン「把握です!」

 彼らには充分すぎる程に充分な、作戦の説明であった。

|゚ノ ^∀^)「何を企んでいますやら!」

 レモナは「作戦」に気付かない。
 鎌をモナーに向けて振りかぶった――瞬間。



130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:20:26.02 ID:XaZtPLx6O

(´・_ゝ・`)「吹奏楽部準備!」

(゚、゚トソン「合唱部準備!」

 音楽室の壁へ背を向け、部員がずらりと並ぶ。
 楽器を構え。
 腹に力を込めた。

|゚ノ ^∀^)「……何ですの?」

(´・_ゝ・`)「曲の指定は無し!」

(゚、゚トソン「皆さん、自分が全力で、最大の音や声を出せるもので構いません!
     いっそ叫ぶだけでもいいです!」

(´・_ゝ・`)「音を外してもいい! 間違おうが気にするな!」

(゚、゚トソン「1!」

(´・_ゝ・`)「2!」

 モナーが、指揮棒を頭上に掲げ。

( ´∀`)「――3!」

 振り下ろす、合図。



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:23:39.39 ID:XaZtPLx6O


|゚ノ;^∀^)「――!!」


 そうしてレモナを襲う、大音響。

 曲はばらばら、楽器の甲高い音色、合唱部の歌、あるいは叫び声。
 本人達ですら辛そうな不協和音。

 耳が良い故に迫る音の暴力。
 吹奏楽部の演奏が、合唱部の声が、レモナを苦しめる。


|゚ノ; ∀ )「あっ……! あぁっ、いやあああああああ!!」


 レモナは鎌を放り、耳を押さえてうずくまった。
 逃れようがない絶望に、叫ぶ。

 まるで。

 まるで、自分が命を落としたときのような絶望感。

 無くなった足。激痛。目が見えない。
 何があったか分からず。
 凍えながら、痛みに悶えながら、死んだ、冬。



134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:26:37.71 ID:XaZtPLx6O

|゚ノ; ∀ )「ああああああああ! ――っ、――っ!」

(´・_ゝ・`)「うわっ、何、寒っ!?」

(゚、゚トソン「デミタス、演奏を止めないでくだ寒っ」

 レモナを中心に、冷気が巻き起こる。
 彼女がうずくまる床が、ぴしぴしと音をたてて凍り始めた。

( ´∀`)「……なんか、ごめんなさいモナ」

 バッジが紫色の淡い光を発する。
 ふわりと宙に浮かび、室内を照らした。

( ´∀`)「そしてみんな、ありがとうモナ!
       ……しかし、何とまあ早い逆転劇か……」

 指揮棒を再び構える。
 バッジの光は激しさを増し。

 ――モナーがレモナに指揮棒を向ける。

 そして、大量の水が、螺旋を描きながらレモナの足元から胸を覆った。



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:29:44.39 ID:XaZtPLx6O

|゚ノ;^∀^)「っ、うあぁっ!」

 水は氷となり、レモナを拘束する。
 それを確認して、モナーは紐を結ぶかのように、両の拳を左右に引いた。

 演奏が止まる。
 身動きが取れないレモナの前へ、モナーは移動した。

( ´∀`)「大丈夫モナ?」

|゚ノ;^∀^)「……本当に、卑怯ですこと……」

(゚、゚トソン「モナーさんが言ったように゙っ、けほっ、勝てればいいんです勝てれば……。
     けほ、けふっ」

 僅か1分にも満たない間に喉を酷使しすぎたためか、掠れ気味の声でトソンが反論する。
 そのまま咳をし始めてしまった彼女の背を撫でながら、デミタスは首を傾げた。

(´・_ゝ・`)「……モナーさん」

( ´∀`)「何だモナ?」

(´・_ゝ・`)「果たしてこの戦いにバッジは必要だっt( ´∀`)「言うな」

( ´∀`)「――さて。
       一体何故、襲いに来たか……説明してくれるモナ?」

|゚ノ;^∀^)「……仕方、ありませんわね」



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:32:32.31 ID:XaZtPLx6O


(;・∀ ・)「なっ、なあっ、もしかして今っ、俺達さあ!
      超かっこいいんじゃねえ!? ヒーローじゃねえ!?
      可愛い女の子を守るため敵に立ち向かってんだぜ!?
      主役と言っても過言じゃなくねえ!?」

ミ;,゚Д゚彡「逃げてる時点で全ッ然違うからぁあああああ!」

('(゚∀゚∩「あ……気が、遠く……」

ミ;,゚Д゚彡「なおるよ頑張るからああああああああああ!!」

 廊下を走る、走る、ひた走る。
 ミセリを助けるために勇気を出した、またんき、フサ、なおるよ。

 その少し後ろを走る、ニダーとのー。

<#ヽ`∀´>「おうクソガキ共、速度が落ちてるニダよ。
       ほらほら早くウリの刀の錆になるニダ」

(゚A゚* )「きゃーニダやんかっこいー」

(;・∀ ・)「いやああああああああああ!!」

('(゚∀゚;∩「死んじゃうよおおおおお!」

ミ;,゚Д゚彡「2人共、ラストスパートだから!!」



142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:36:05.14 ID:XaZtPLx6O

 またんき達の足が、最後の力を振り絞った。
 縮んでいたニダーとの距離が再び開く。

 そして、3人は廊下の突き当たり、右の方向へ曲がった。

<#ヽ`∀´>「ふん、どれだけ逃げても無駄ニダよ!」

(゚A゚* )「ニダやんかっこえー抱いてー」

<#ヽ`∀´>「後でな!」

(゚A゚* )「えっ、後で……?」

<ヽ`∀´>「いや違う、今のは勢い、勢いニダ」

 数秒遅れて、ニダーとのーも角を曲がる。
 すると――


(#'A`)「『物の怪っ界』!!」


 待ち構えていたドクオが、握りしめた数珠を真一文字に振り払った。
 その軌道に合わせて床から生えてきた大量の物の怪が、ずらりと横に並ぶ。
 結果、5体程の物の怪が壁となり、ドクオとニダーを遮った。



146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:39:32.99 ID:XaZtPLx6O

<;ヽ`∀´>「ニダッ!?」

(゚A゚* )「何や、また敵が1人増えよった」

(*・∀ ・)「やぁっべえぇぇええドクオかっけえよぉおお!
      服装も相俟って雰囲気満点だぜ!!」

ミ;,゚Д゚彡「こっ、このオカルトオタクうざいから……!」

('(゚∀゚;∩「誰のせいでっ、僕達、こんなに走らされた、とっ……」

 ドクオの後ろでへたり込む3人。
 またんきは興奮に息を荒げ、フサとなおるよは、そんな彼を睨みつける。

 ――ドクオ達が立てた計画は、
 またんきとフサ、なおるよの3人がミセリを持ち出して彼女の安全を確保した後に、
 ドクオが敵と戦うというものだった。

 もし敵が3人を追ってきた場合は、
 この曲がり角でドクオが迎え撃つことになっていた。

 実のところ、ドクオには戦う術などろくに無いのだが。
 時間を稼げればいいとこ、程度の考えだ。



149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:42:17.40 ID:XaZtPLx6O

(;'A`)「またんき、フサ、なおるよ! 今の内に逃げろ!」

 ドクオは、後ろの3人へ叫ぶ。
 ――しかし。

ミ;,゚Д゚彡「……ごっ、ごめん……実は……」

(;・∀ ・)「こ、恐いのと、安心したのと、全速力で走り過ぎたので……」

('(゚∀゚;∩「腰、腰、抜けた上、足に力が入らないんだよ……」

(;'A`)「勘弁してぇえええええええ!!」



<ヽ`∀´>「――茶番は済んだニカ」

(;'A`)「!」

 「物の怪っ界」が、ニダーの一太刀で薙ぎ払われる。
 一瞬で消えてしまった盾。

 ニダーは、じろじろとドクオを眺めて、首を傾げた。



152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:45:25.95 ID:XaZtPLx6O

<ヽ`∀´>「何ニカ、その格好。坊さん?」

(゚A゚* )「多分コスプレやと思う」

<ヽ`∀´>「……痛々しい高校生もいたもんだニダ」

(;'A`)(やだ、とっても恥ずかしい……!)

 成り行きで脱ぐ機会を失ってしまった法衣をつっこまれ、
 ドクオの中に羞恥心が沸き上がる。
 ちなみに、今はそれどころではない。

<ヽ`∀´>「その衣装、切り裂いてやるニダ!」

(;'A`)「ひっ!」

 馬鹿にするように笑って、ニダーは刀を振りかぶる。
 咄嗟に、ドクオは両腕で頭を庇った。

 そんなことをしても、刀の前には無駄な抵抗――な、筈だった。

<ヽ`∀´>「……っ!?」

 袈裟に当たった刃は、ばちん、と硬質な音を立てて――

 真ん中から、思いっきり折られた。



157: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:48:28.34 ID:XaZtPLx6O

 床に、折れた刃が落ちる。

(゚A゚*;)「――えっ……」

(;'A`)「……へ……?」

 静まる空間。
 固まる6人。

(*・∀ ・)「……法衣強ぇ……!」

 沈黙を破ったのは、またんきだった。

ミ;,゚Д゚彡「いやいやいやいや……」

('(゚∀゚;∩「法衣強ぇで済ませられる問題じゃないと思うよ……」

(;'A`)「えええええええええ何今のぉおおおおおおお!?」

<;ヽ`∀´>「こっちが訊きてえニダ!」

(゚A゚*;)「ニダやんの大事な武器に何してくれとんの!?」

 今の出来事に、またんきを除いた全員が疑問の声を漏らす。

 それへの答えは、意外なところから返ってきた。



159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:52:00.21 ID:XaZtPLx6O

    「――確かに、その法衣のおかげです」

(;'A`)「……あ」


ミセ*゚ー゚)リ「法衣の霊力が、ドクオさんを守ったんです」


(;'A`)「ミセリちゃん!」

 またんきが抱える鏡。
 そこに、少女――ミセリが、いた。

(;・∀ ・)「おおっ、ミセリちゃん復活!?」

ミセ*゚ー゚)リ「いえ……まだ完全とは言えません。
      つい先程、目が覚めたばかりですし。
      ――状況はよく分かりませんが、守っていただいたようで……。
      どうも、ありがとうございます」

(*・∀ ・)「いっ、いやあ、当然のことをねっ、したまででっ!」

ミ,,゚Д゚彡「またんきのテンションが気持ち悪いから……」

('(゚∀゚∩「何か、さっきからこいつ1人だけはしゃぎ放題で腹立つよ」

<ヽ`∀´>「……ふん、起きちまったニダね」

(゚A゚* )「かわえぇ子やのう」



161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:55:51.32 ID:XaZtPLx6O

 ニダーは、折れた刀を見下ろし、舌打ちをした。
 残った刃でどうにかしようとしても、恐らくドクオには効かないであろう。

('A`)「ミセリちゃん、法衣が守ったって、どういう……」

ミセ*゚ー゚)リ「それは、きっととても徳の高い方が着ていたものなのでしょう。
      邪気や、敵意のある霊気を跳ね退ける力があるようです」

(*・∀ ・)「す、すげえ……!」

(゚A゚*#)「『邪気』て何や『邪気』て!
     ニダやんはなあ、えっらい善い人やぞ!」

<ヽ`∀´>「……ぴいぴい五月蝿いニダ」

(>A<*;)「あう」

 柄で額を小突かれ、のーは後ずさった。
 そして、口の前で人差し指を交差させてバッテンを作り「黙ってます」とアピールした。

(゚×゚* )

<ヽ`∀´>「よいしょ、っと。……成る程、それで刀が折れちまったニダね」

 折れた刃を拾い上げ、ニダーがミセリに問う。
 ミセリは、「はい」と頷いた。



164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 21:58:52.16 ID:XaZtPLx6O

(;'A`)「……どゆこと?」

ミセ*゚ー゚)リ「その刀……本物ではありません」

ミ;,゚Д゚彡「へ」

('(゚∀゚∩「模造刀ってことかな!」

(;'A`)「じゃあ最初から斬られる心配なかったんじゃ……」

ミセ*゚ー゚)リ「いいえ、普通に斬ることは可能な筈です」

(・∀ ・)「分かった! 俺には理解出来ない!」

('(゚∀゚∩「諦めるの早いよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「あくまで推測ですが……持ち主本人の霊力を込めることにより、
      本物の刀のような切れ味を再現させているのだと思います。
      つまり、正しく言うなら、刀そのものではなく
      それに纏わせた霊力が物を斬るのです」

ミ,,゚Д゚彡「……何か、分かったような分からないような」

('A`)「――ああ。
    霊気が刃になってるから、この、霊気を防ぐ法衣には効かない、と」



166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:02:40.68 ID:XaZtPLx6O

<ヽ`∀´>「そういうことみたいニダね」

(゚A゚*;)「『ニダね』やあらへんよ! せやったらどないするん、戦えないやん!」

 人差し指を離して、のーがきゃんきゃん騒ぎ立てる。
 黙れ、と一喝し、ニダーはドクオを睨みつけた。

(゚×゚* )

(;'A`)「ひっ」

<ヽ`∀´>「それなら……――殴るまでニダ」

(;'A`)「ひぃいいいっ肉体言語!!」

(;・∀ ・)「ドクオ!」

 ニダーの左手がドクオに伸びる。
 彼の頭の中では、胸倉を掴み上げて、右手で殴り抜く一連の流れが出来上がっていた、
 のだが。



169: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:05:30.51 ID:XaZtPLx6O

 触れた瞬間、ニダーの左腕が、肩から丸ごと吹き飛んだ。

 「破ァ!」という掛け声があれば、満点だった。

<ヽ`∀´>

(゚×゚* )

('A`)

(・∀ ・) ミセ*゚ー゚)リ

ミ,,゚Д゚彡

('(゚∀゚∩


(;゚A゚)(;・∀ ・)ミ;,゚Д゚彡('(゚∀゚;∩「うわあああああああああああああ!!!!!」


(゚A゚*;)「ひぎゃああああああああニダやああああああああああん」

(;゚A゚)「ごめんなさああああああああああああああああああ」

(゚A゚* )「おいその顔ウチと被るからやめろ」

('A`)「すみませんでした」



173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:08:57.75 ID:XaZtPLx6O

<ヽ`∀´>「……ちっ。やっぱ年取ると脆くなっていかんニダ」

 痛がる様子もなく、ニダーは右手で肩の付け根を撫でる。

 血も何も吹き出さない。
 幽霊だからかと、またんきが納得しかける。

 しかし――

(;・∀ ・)「……あれ……?」

 目を凝らしてみれば。

 ニダーの、腕が付いていた筈の場所。
 そこには、ぽっかりと穴が開いているだけだった。

ミセ*゚ー゚)リ「どうなさいますか。ドクオさんがその法衣を着ている限り……、
      そしてあなた方が敵意を持っている限り、そちらに勝ち目はございませんが」

 ミセリがやや強気に言い放つと、ニダーとのーは顔を見合わせ、

<ヽ`∀´>「……仕方ねえニダ」

(゚A゚* )「ニダやんがばらばらになるんも嫌やしな」

 溜め息をつき、その場に胡座をかいた。



176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:11:59.45 ID:XaZtPLx6O

 ――数分後。
 ニダーの隣に鏡を抱えたドクオが座り、
 その鏡から身を乗り出させたミセリがニダーの腕を治療、
 もとい「修理」するという光景が、そこにあった。

 またんき、フサ、なおるよの3人はまだ警戒しているのか、
 少し離れた場所で身を寄せ合い、様子を窺っている。

 ミセリは懐から取り出したオレンジ色のバッジを右手に持ち、
 ニダーの左腕の繋ぎ目に宛がった。

 不安げにニダーを眺めながら、のーが口を開く。

(゚A゚* )「……ニダやんとウチはな、シベリア中学校の七不思議やった」

ミ,,゚Д゚彡「シベ中って、前に無くなったんじゃ……」

('(゚∀゚∩「どこかの中学校と統合されたんだよね!」

(゚A゚* )「せやねん。……その辺は追い追い話すとして。
     ウチは、『夜な夜な校内を歩き回る、学校で命を落とした少女の霊』。
     ほんでニダやんは……」

<ヽ`∀´>「……『勝手に動き出す人形』、ニダ」

('A`)「人形……」

(・∀ ・)「だから簡単に腕取れたんだな」



179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:15:07.30 ID:XaZtPLx6O

<ヽ`∀´>「ウリは、元々は博物館に住んでいた等身大の武士の人形だったニダ」

ミセ*゚ー゚)リ「そのお人形さんに、命が宿ったんですね」

<ヽ`∀´>「そうニダ。――その博物館が潰れたとき、
      館長と知り合いだったシベリア中学校の校長が、ウリを引き取ったニダ」

(゚A゚* )「懐かしいわー。そんときはな、ウチもまだ生きてて……。
     校長は歴史の資料として引き取ったらしいねんけど、
     なにぶん造形がリアルやし等身大やしでみんなビビってなあ。
     結局資料室に放置されたまま、だーれも関わらんようになってん」

<ヽ`∀´>「どうせウリは邪魔者ニダ」

(゚A゚* )「そんな拗ねんと。ウチはニダやん大好きやで」

(゚A゚)コロスコロスコロス

ミセ;゚ー゚)リ「……ドクオさん、怪奇現象にまで嫉妬しないで下さい」



180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:18:08.71 ID:XaZtPLx6O


lw´‐ _‐ノv「むう、加勢か」

/ ゚、。 /「残念ながら、私は役に立たないかもしれません」

 体育館。
 ツンを右手で支えながら、ダイオードはもう片方の手を掲げた。

/ ゚、。 /「実は、ただミルナさんにバッジを届けに来ただけですので」

lw´‐ _‐ノv「……バッジ……?」

(;゚д゚ )「!」

 左手に緑色のバッジ。
 ミルナのバッジだ。

/ ゚、。 /「しかし……ちょっと、この中に入るのは恐いですね」

 飛び交う刃物の数々を見てダイオードが呟く。
 こんな危険な場所に堂々と入り込める者がいたら見てみたい。

ξ;゚听)ξ「……そもそも、それ、どうにかしないと、……入れません」

 ダイオードに凭れかかりながら、ツンは「それ」、と、
 入口に張られた金色の網を指差した。
 そうなんですか、と言ってダイオードが手を伸ばす。



181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:20:25.79 ID:XaZtPLx6O

ξ;゚听)ξ「駄目です、弾き飛ばされますよ」

/ ゚、。 /「おっとっと」

 ツンの注意を聞き、慌てて手を引っ込めた。
 その手を顎にやり、「ううん」と唸る。

/ ゚、。 /「この金色の糸をどうにかしないといけないんですね」

ξ;゚听)ξ「はい……」

 とはいっても、どうすれば――

ξ゚听)ξ(……金? 糸?)

 はたと、ツンがダイオードを見上げる。

 金色の糸。金の糸。

ξ;゚听)ξ「――金糸!」

/ ゚、。 /「きんし?」

lw´‐ _‐ノv「……おやまあ」



184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:23:01.83 ID:XaZtPLx6O

 ツンの中に、ある「答え」が浮かんだ。

 シュールがツンを体育館から排除したときに言ったのは「立入禁止」。
 さらに、ミルナの動きを封じるときには「動くの禁止」。

ξ;゚听)ξ「まさか――言霊!」

lw´‐ _‐ノv「……正解」

 言葉に宿る力、言霊。
 禁止も金糸も、どちらも「きんし」という言葉。
 シュールは、「金糸」に「禁止」を掛けたのだ。

lw´‐ _‐ノv「それが分かったところでどうする?
       触れないんじゃ、何の意味もない」

( ゚д゚ )「――ツン!」

 もう何度目になるか。
 ミルナが、ツンの名を叫んだ。

( ゚д゚ )「バッジと鋏を一緒に持て!」

ξ;゚听)ξ「鋏!?」

 振り返る。
 先程シュールがツンに向かわせた鋏が、壁に突き刺さっている。



186: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:25:25.62 ID:XaZtPLx6O

/ ゚、。 /「バッジどうぞ」

ξ;゚听)ξ「あ、ありがとうございます!」

 壁から鋏を引っこ抜いたツンは、親指から中指までの指で鋏を構え、
 薬指と小指でバッジを握った。

 途端。
 薄緑色の光が、鋏を覆った。

lw´‐ _‐ノv「……どういうことかな?」

( ゚д゚ )「お前が俺を攻めに来たのが、間違いだったってことだ」

 にやりと、ミルナが笑う。


( ゚д゚ )「緑のバッジが司るのは『金』!
     金属に多大な加護を与えるバッジだ!!」


 言霊によって力を持っていようが、所詮はただの糸。

 バッジの力を得た鋏に敵いようも、ない。



187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:28:44.37 ID:XaZtPLx6O

ξ#゚听)ξ「うおらぁああああああああああああ!!!!!」


 ツンは、年頃の女の子とは思えないような掛け声――否。
 雄叫びを上げ、鋏の刃を目一杯開き。

 金糸を、縦に切り裂いた。


lw´;‐ _‐ノv「うっわ」

 シュールが動揺する。
 館内に飛び込んだツン。
 刃物は不思議とツンに近付いた側から方向転換し、彼女を傷付けようとしない。

 ツンは、真っ直ぐシュールへ駆けていきながら――

ξ#゚听)ξ「これ以上暴れるのも動くのも喋るのもミルナに触るのもっ!」


 自分の頭、金色の髪。
 二つに結ったそれ。

 その、左側を。

 鋏で、ばさりと切った。



189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:30:20.33 ID:XaZtPLx6O


ξ#゚听)「全部全部――『禁止』なんだからぁっ!!」


lw´;‐ _‐ノv「!!」


 バッジが、一気に光を放つ。
 その眩しさに、咄嗟に目を覆ったシュールは――「まずい」と、
 自分の行為を悔いた。

 その一瞬の隙が、勝敗を決定させたのだ。



 緑色の光の中。

 ツンの体を離れた金色の髪――「金糸」の束が一気に成長し、

 シュールの足元から口までを覆うように、巻き付いた。



193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:33:26.20 ID:XaZtPLx6O


lw´;‐ ‐ノv「むぐっ……!」


 動けなくなったシュールが倒れると同時に、
 刃物が全て床に落ち、ミルナを拘束していた金糸が消える。

 全力を出し切ったツンは、そのまま仰向けに転がり、
 ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返した。

 ダイオードとミルナがツンに駆け寄る。

(;゚д゚ )「ツン!」

/ ゚、。 /「出連さん、よく頑張りました」

ξ;゚ー゚)「ふふ……やってやったわ」

( ゚д゚ )「……」

ξ;゚听)「わっ」

 ツンに、ミルナが被さるように抱き着いた。
 小さな背中を撫でながら、ツンが笑う。



195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:35:50.53 ID:XaZtPLx6O

ξ*゚ー゚)「何よ急に。甘えんぼ」

( д )「……ありがとう……」

ξ*゚听)「先生、ミルナがデレた!」

/ ゚、。 /「お赤飯炊きましょうか」

( ゚д゚ )「サービスタイム終わり」

ξ゚听)「サービスかよ」

 ぱっと離れたミルナは、ツンの手からバッジを取り上げた。
 そして、ツンの頭、左側に当てる。

ξ゚听)「なあに?」

( ゚д゚ )「……頭、みっともないから」

/ ゚、。 /「おおっ」

 光がツンの頭を包む。
 すると、短くなっていた毛先が、しゅるしゅると伸び始めた。



203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:49:38.47 ID:XaZtPLx6O

/ ゚、。 /「凄いですね」

( ゚д゚ )「誰でもいつでも出来るわけじゃない。
     ツンの髪は金色だし……今、巫女さんの格好してるから」

 あっという間に、ツンの髪は左右同じ長さにまで揃った。
 ダイオードが感心したように髪の毛をさらさらと撫でる。

ξ゚听)ξ「『神』と『髪』って? ……言霊っていうか、駄洒落よね」

 上半身を起こして、左側の髪を結い直す。
 それから、ツンはシュールへ目を向けた。

lw´‐ ‐ノv「……」

 喋ることも動くこともままならないシュールは、じっとミルナ達を見つめている。
 ツンとシュールがしばらく見つめ合った後。
 ツンは、口元だけを解放してやった。

ξ゚听)ξ「……全部話しなさい」

lw´‐ _‐ノv「全部?」

ξ゚听)ξ「目的とか。あなたが知ってること全部」

lw´‐ _‐ノv「ううん……ま、いいか……負けちゃったし」



207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:52:36.60 ID:XaZtPLx6O



 ――他の中学校と合併したシベリア中学校は、空っぽになってしまった。
 正確に言えば備品や教材等は残っていたのだが、
 生徒も教師もいないのならば、何もないのと同じだった。

 そんな空っぽな箱の中、学校霊達は、じっと静かに皆を待っていた。

 きっといつか戻ってくる。
 みんな戻ってきて、また賑やかな日々が始まる。
 きっと。……きっと。

 しかし誰ひとり帰ってはこないまま。
 遂に、校舎が取り壊される。

 生徒も教師も住み処も全て失って、尚、七不思議だけは残っていた。

 彼らは、もう、待つことしか出来なかったから。



210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:55:48.91 ID:XaZtPLx6O

 そこへ1人の男がやって来た。
 男はしばらく無言で七不思議達を見つめていたかと思うと、

 『憎くはないのかい。
  あんたらのことなんか恐怖の対象としか見てなかった奴らだぜ。
  存在すら知らない生徒もいただろう。
  そんな奴らに居場所を奪われたんだ。
  憎くない筈がない』

 開口一番、そう言った。

 じわじわと、憎しみが七不思議達の胸に沸き始める。
 今まで一度も恨まなかったのが、奇妙に思える程だった。

 『恨めしいだろう、憎らしいだろう。
  ……あんたらがこんな思いをしている横で、
  随分幸せそうに暮らしてる奴もいるもんなんだぜ』

 男は、VIP高校について話し始めた。

 霊と人間が交流を深め、仲良くやっている。
 人間はみんな霊を受け入れているのだ、と。

 七不思議達も噂は聞いていた。
 だが、男が話すような、楽しげなものだとは知らなかった。



213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 22:58:38.43 ID:XaZtPLx6O

 『……そう、七大不思議ってもんがあってな』

 その内容に最も反応を示したのはヒート。
 姉の名前が出たことで、ひどく驚いたようだった。

 ――そうやって、男は七不思議達の中の憎しみを煽りに煽って。


 『そこでだ。そいつらに、八つ当たりでもしてみないか。
  ――俺の目的の第一歩となるにぴったりなんだ』


 と、持ち掛けた。

 男は――流石兄者、と名乗った。



214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:01:30.15 ID:XaZtPLx6O

( ∵)[……それで、こんなことに]

【+  】ゞ゚)「ああ。今頃、七大不思議の各スポットで戦ってるだろうな」

 校庭。
 オサムから事情を聞いたビコーズは、しみじみ頷いた。

 その脇では、

( <●><●>) ソノオトコ、ブチコロシマスカ

(;><) ブッソウナンデス!!

(*‘ω‘ *) ヨシヨシッポー

▼*・ェ・▼ キューンキュン

 他の二宮尊徳像とビーグルが戯れていた。
 さらに、

(-_-)「あ、水、飲む……? プールの水……綺麗な水だよ、美味しいよ……」

【+; 】ゞ゚)「あ、結構です……」

 騒ぎを聞きつけた、プールに住む「足を引っ張る霊」がオサムの隣に座っていた。

 こう言っては何だが、とても和やかな空気だった。



218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:04:18.66 ID:XaZtPLx6O

( ∵)[で、その男の目的って]

【+  】ゞ゚)「この町の人間を出来る限り殺すことらしい」

( ∵)

【+  】ゞ゚)「可能ならば皆殺し、そうでなくても半分以上」

( ∵)

( ><)

( <●><●>)

(*‘ω‘ *)

▼・ェ・▼

(-_-)



221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:07:43.23 ID:XaZtPLx6O

( ∵)[あのさ、八つ当たりって、え、命奪うの?]

【+  】ゞ゚)「うん。こうやって学校に閉じ込めて、
        まず七大不思議を倒して、それから全校生徒ぶち殺すらしい」

(  )        ∵

(   )     ><

(     )   <●><●>

(* ω  *)   ‘ ‘

 ・ェ・      ▼  ▼

( _ )       - -

【+  】ゞ゚)「お前ら大丈夫か色々飛び出してるぞ」

(#∵)[ふざけんなあああああああああああ]あああああ

【+  】ゞ゚)「文字まで飛び出してるぞ」



224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:10:46.22 ID:XaZtPLx6O

(#∵)[こんな所でじっとしていられるか!
    僕は校舎に行くぞ!]

【+  】ゞ゚)「死亡フラグ死亡フラグ。
        てか、入れないって言ってんじゃん」

(#∵)[邪魔しないで!]

【+; 】ゞ゚)「いや、邪魔はしないけど……入れないのは事実だって」

(-_-)「でも生徒殺されちゃうのに黙ってなんかいられないし……」

( <●><●>) ドウシテクレヨウカ

(;><) アワアワ

(*‘ω‘ *) マジアリエネーワ

▼#・ェ・▼ ギャインイン

(#∵)[復讐だか八つ当たりだか知らないけど、生徒にまで手を出すってなら
    絶対、絶対許さないよ]

【+; 】ゞ゚)「七大不思議の襲撃には焦らないくせに」

(#∵)[みんなのこと信じてるからね!]

【+; 】ゞ゚)「な、なんて絆だ……!」



228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:13:53.61 ID:XaZtPLx6O

 ビコーズが昇降口に向かった、そのとき。
 校門から声がかかった。

       「ビコーズ!」

( ∵)そ

 そこにいたのは、

<_フ;゚ー゚)フ「なあ、学校で変なこと起きてねえか!」

 黒いキャソックを着た男と、若い青年、そして女性。
 校門を抜け、ビコーズの傍に近寄る。

 ビコーズは3人組をじっと眺め――

( ∵)[誰]

<_フ;゚ー゚)フ「俺俺、俺だよ俺!」

【+; 】ゞ゚)「堂々と真っ向から俺俺詐欺……!」

(-_-)「圧倒的俺俺詐欺……!」

( ∵)[ざわ…ざわ…]

<_フ;゚д゚)フ「違えよエクストだよ! AA一緒だろ!!」

∬´_ゝ`)「エクソシスト様、そういうことって言っちゃいけないと思うの」



233: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:17:23.02 ID:XaZtPLx6O

( ∵)[エクストはそんな姿してない]

【+  】ゞ゚)「飛影はそんなこと言わない」

(-_-)「圧倒的飛影はそんなこと言わない……!」

( ∵)[ざわ…ざわ…]

<_フ;゚−゚)フ「分かった、そこの変なお面つけてる奴と水着姿の奴黙れ。
        それで話が進む」

(´<_` )(もっと緊張感って必要じゃないかな……)

∬´_ゝ`)「あら、エクソシスト様、あれよ、あいつ」

<_プー゚)フ「……何がだ?」

∬´_ゝ`)「兄者と一緒に橋を渡っていった列に、あのお面の人も入ってたわ」

 姉者がオサムを指差した。
 彼女の口から出た「兄者」という名前に、オサムが目を見開く。

 ぎょろりとした瞳が、姉者と弟者を見遣り――さらに驚愕の色を滲ませた。

【+; 】ゞ゚)「あの人を知って……――あれっ、えっ、え」

( ∵)[何]



236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:20:19.81 ID:XaZtPLx6O

【+; 】ゞ゚)「兄者さんが、え……?」

 呆然とするオサムの視線の先は、弟者。
 合点がいったのか、姉者が「ああ」と、気の抜けた声を出す。

∬´_ゝ`)「顔はそっくりだけど、こいつは兄者じゃないわ。双子の弟よ。
      ……成る程ね、兄者の『復讐』に協力してるわけ」

【+; 】ゞ゚)「――う」

∬´_ゝ`)「で……その石像さんと話してる内に、疑問を抱き始めたのね。
      『何でこんなことしてるんだろう』って」

【+; 】ゞ゚)「!? な、なっ……」

 すらすらと心の内を言い当てられ、オサムが後ずさる。
 後ずさるだけに留まらず、ビコーズの後ろに隠れた。
 厨二病真っ盛りなオッサンであっても、彼は臆病者なのだ。

 ビコーズはといえば、姉者よりも、彼女が言った内容の方が気になったらしい。

( ∵)[……そういえば、他の人はどうなのか知らないけど……。
    君は、僕に何も攻撃せず、事情を話してくれたね]

【+; 】ゞ゚)「……」

 ビコーズの肩に触れていた手が、びくりと震える。
 しばし沈黙。



239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:23:31.34 ID:XaZtPLx6O

 ――やがて、オサムはゆっくりと口を開いた。

【+; 】ゞ゚)「……兄者さんが現れてから……俺の頭は、恨みつらみで一杯だったのに。
        作戦実行のためにあの人から離れた途端――それが、弱まり始めた」


 昨夜、校内に潜り込んだ直後。
 七不思議達は、各自七大不思議のスポットに近付き、
 昼になるまで身を隠しているように指示された。

 オサムが割り当てられたスポットは校庭だったため、
 1人だけ校舎を出ることになった。

 そうして校庭の隅に隠れ、どんな風にビコーズを倒すか考えながら時が経つのを待つ。

 ――その間に、何故だか、段々と。
 胸を燃やしていた恨みが、鎮まり始めたのだ。

 いざ作戦の時間になりビコーズと対峙してみても、
 攻撃する気なんか、微塵も起こらなかった。


【+  】ゞ゚)「……出来ることなら、みんなを止めたいとさえ、思い始めていた」

( ∵)[……]



242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:26:35.05 ID:XaZtPLx6O

<_プー゚)フ「――それは」

 エクストの脳裏に過ぎる、姉者の話。

 兄者が谷へ落ちた後、姉者の胸に浮かんだという、恨みの気持ち。

<_プー゚)フ「多分、兄者の傍を離れたからだ」

 姉者は兄者から離れたことで、その感情から解放された。
 多分オサムも同じなのだろう。
 兄者や他の敵は校内にいるが、オサムだけは校外に出た。
 そのため、学校が、兄者の念を遮っていたのかもしれない。

 その推理をエクストが説明すると、オサムは納得したのか何度も頷いた。

【+  】ゞ゚)「そうだと思う。……無理矢理作られた感情だったのか。
        ――いや、多少なりとも恨んでいた気持ちはあったかもしれん。
        そこに付け入られ、利用されたんだ」

 肩を落とすオサムを、尊徳像達が慰める。
 エクストは少し迷って、ビコーズに訊ねた。



246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:29:16.91 ID:XaZtPLx6O

<_フ;゚ー゚)フ「今の状況は?」

( ∵)[・全校生徒が閉じ込められた
    ・七大不思議に刺客
    ・さすがあにじゃとかいう人がホロコースト実行予定]

<_フ;゚ー゚)フ「把握! 想像以上に最悪な状況だ!
        ――で、校内には入れるのか?」

( ∵)[無理っぽい]

<_フ;゚д゚)フ「泣きたい!」

( ∵)[僕も!]

 頭を抱えるエクストとビコーズ。
 そこへ、弟者が恐々と手を挙げた。

(´<_` )「……あの、ちょっといい?」

∬´_ゝ`)「発言を許可する」

(´<_` )「どうして中に入れないんだ? 普通に開けられないのか」

【+  】ゞ゚)「兄者さんが、昇降口や全ての窓を締め切っているんです」



247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:32:27.31 ID:XaZtPLx6O

∬´_ゝ`)「……この馬糞に敬語なんか使わなくていいのよ」

【+  】ゞ゚)「あ、そう?」

(;<_; )

(-_-)「……ふむ」

 不意に、プールの霊が地に目を落とし、考え込み始めた。
 どうしたの、とビコーズが問うと、霊は頭を掻きながら口を開いた。

(-_-)「つまり正規の出入口が開かないわけでしょ……?」

【+  】ゞ゚)「ん、まあ、そうだ」

(-_-)「じゃあ、プール使おうか……」

(;∵)[……まさか……]

(-_-)「うん……そのまさか……」

(;∵)[……でも、他に方法もないし……仕方ないか……]

<_プー゚)フ【+  】ゞ゚)「?」(´<_` )

∬´_ゝ`)「あら、嫌な予感」



250: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:35:22.66 ID:XaZtPLx6O


 男子トイレ前。
 ヒートから事情を聞いたクールは、難しい顔をしていた。

川 ゚ -゚)「……全校の人間皆殺しか」

(;,゚Д゚)「マジか……」

(;*゚ー゚)「私達、多分何もしてないよね……」

川 ゚ -゚)「よっぽど町自体に怨みがあるんだろう。
     ――ヒート、よく話してくれた。いい子だ」

ノハ;*゚听)「む、むう」

 クールに頭を撫でられ、ヒートは少しだけ嬉しそうな顔をした。


 瞬間。


     「ぎゃあああああああああああああ!!!!!」


 がたがた、という激しい音と、複数人の絶叫がクール達の背後から轟いた。



254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:38:29.79 ID:XaZtPLx6O

 音の発生源は、男子トイレの、一番手前の個室。

川;゚ -゚)「あっ、新手の敵か!?」

(;,゚Д゚)「何事だゴルァ!」

 クールはヒートを、ギコはしぃを背にしてトイレを注視した。
 ヒートによりドアが無くなってしまった個室からは、ぼそぼそと話し声が聞こえる。

 しばらくクール達がトイレを睨みつけていると――


<_フ;゚ー゚)フ「……何か、やだ、これ」

(´<_`;)「だから姉者が全力で拒否してたのか」

∬;´_ゝ`)「馬糞にはお似合いだったけどね」

【+; 】ゞ゚)「うう……一張羅が……」

(;∵)[別に水は汚くないんだけど……ちょっと嫌な感じは拭えないね]

 びしょびしょになった男女と石像が、愚痴を零しながら現れた。



257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:41:34.01 ID:XaZtPLx6O

川 ゚ -゚)「ちょちょちょ、ちょっと、おい」

( ∵)[あ、クール。ちーっす]

<_プー゚)フ「おお、クー! ……と、ギコとしぃと、……誰だ?」

ノパ听)「ヒートだ!」

川 ゚ -゚)「お前こそ誰……その声とAA、エクストか!?」

∬´_ゝ`)「そういうこと言っちゃ駄目だって……」

(*゚ー゚)「あ、ちょ、待って、寄らないで」

(,,゚Д゚)「こっち来んな」

【+  】ゞ;)「汚くないもん!」

ノハ;゚听)「オサm……うおおおおおお流石兄者!? 何故ここに!」

(´<_` )「うるさっ」

( ∵)[……とりあえず、軽く説明しとこうか]



259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:44:37.10 ID:XaZtPLx6O

 ――プールの霊が提案したのは、
 「プールの水とトイレの水を繋げる」こと。
 彼は、正規のルートで中に入れないのなら普通でない通り道を使えばいい、
 と考えたのだ。

 その通り道に、半ば強引に流されたビコーズ、エクスト、姉者に弟者、オサム。
 校内に入るためとはいえ、トイレから登場するのは少々抵抗があったらしい。
 ビコーズを除いて、皆一様に、微妙に残念な顔をしていた。


 ――それから、ビコーズとクール、エクストの3人が互いに情報を確認し合った。
 兄者が今回の作戦を実行するに至った経緯をエクストが簡単に説明すると、
 クール達はひどく驚いたようだった。

川 ゚ -゚)「成る程、時を越えての復讐か」

( ∵)[八つ当たりみたいなもんだけどね……]

<_プー゚)フ「……それを、止めなきゃいけない」

ノパ听)「――……りじちょー室」

(´<_` )「ん?」

ノパ听)「兄者は、りじちょー室に行くって言ってた」

川 ゚ -゚)「理事長室……!」

( ∵)[早く行こう!]



262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:47:54.61 ID:XaZtPLx6O


 ほんの少し時間は戻って。
 内藤と妹者は、理事長室の前に立っていた。
 恐らく――最も危険なのは、中心地である理事長室であろう。

 妹者は、「恐い気配」はここからすると言った。

l从・∀・;ノ!リ人「……」

(;^ω^)「理事長!」

 理事長室の扉を叩き、叫ぶ。
 扉は開かない。

(;^ω^)「理事長、いますかお!? 無事ですかお、理事ちょ――」


      「――あんたが聖徒会長か、内藤ホライゾン」


 返ってきたのは理事長ではなく、流石兄者の声。

(;^ω^)「あ、あなたは……――」

l从・∀・;ノ!リ人「兄者!!」

 内藤が確認するより早く妹者は兄者を呼び、扉に縋りついた。



264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:50:20.02 ID:XaZtPLx6O

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者! 何で、何でこんなことするのじゃ!?」

 沈黙。
 数秒後、ゆっくりと、扉が開いた。


( ´_ゝ`)「……妹者。おいで」


 立ち塞がる男。
 冷たい目をして、男――流石兄者は言った。

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者……?」

 妹者の小さな体が、震え出す。

 知らない。
 こんな恐ろしい顔の兄など、知らない。

( ´_ゝ`)「ほら、おいで。
       ……良かった、妹者の方から来てくれて。
       『回収』に行く手間が省けた」

(;^ω^)「……!」



266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:53:24.49 ID:XaZtPLx6O

 内藤には、一つ腑に落ちないことがあった。
 先の放送でも出ていた、「回収」という兄者の言葉。
 まるで、妹を物のように扱っているではないか。

 兄者が妹者に手を伸ばす。
 そのとき、兄者の後ろから理事長が飛び出した。

(;ФωФ)「くっ!」

l从・∀・;ノ!リ人「のじゃあっ!?」

(;^ω^)「理事長!」

 理事長は妹者を抱え、その勢いのまま廊下を転がった。
 兄者が舌打ちをする。

( ´_ゝ`)「……人の妹に何をする」

(;ФωФ)「君は……今、この子を取り込む気であったのであろう!」

(;^ω^)「――取り込む……?」

(;ФωФ)「この者は、他の魂を吸収して力を蓄えるのである!」

l从・∀・;ノ!リ人「……ふぇ……」

( ´_ゝ`)「……」

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者……?」



270: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:56:46.87 ID:XaZtPLx6O

 ――二ヶ月前。眠りから覚めた兄者は、浄化されかけていた呪力を回復させるため、
 町に繰り出し、様々な魂を吸収していった。

 そんな折、すれ違った、とある人間の心の声と記憶が兄者の頭に流れた。
 その中に、妹者の姿を見付ける。

 妹者も町を彷徨っているのだと知ったとき。
 彼は、妹を利用しようと考えた。

 一番の被害者である妹者の魂ならば、何よりも強い力を得られるのでは、と。

(;^ω^)「なっ――」

( ´_ゝ`)「妹の魂を兄がどうしようが、構わないじゃないか」

l从・∀・;ノ!リ人「……!?」

 さらりと言ってのける兄者に。
 内藤は、怒鳴りつけた。

(#^ω^)「――何てことを!」

( ´_ゝ`)「……うん?」

(#^ω^)「大事な家族じゃないかお! 大切な妹じゃないかお!
       それなのに、どうしてそんなことを言えるんだお!?」



271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/20(土) 23:58:26.35 ID:XaZtPLx6O

( ´_ゝ`)「……どうして、そんなことを言えるんだ?」

(;^ω^)「おっ……!?」

 内藤と同じことを言って、
 兄者は、ゆっくりと内藤に近寄った。

( ´_ゝ`)「俺がどんな思いをしてきたか知らないくせに。
       どんなにお前らを憎らしく思ってるか知らないくせに。
       どうしてそんな陳腐な説教が出来る?」

(; ω )「――!!」

 ぞわり。
 内藤の全身に、悪寒が走り渡る。

 兄者の体から這い出し、じわじわとにじり寄る何か。

 震える足。力が抜ける。
 そのまま、内藤は床に膝をついた。

( ´_ゝ`)「教会の息子か」

(; ω )「……あ……」

( ´_ゝ`)「……あんた、なりたくもない役職に就けられたんだろ?」



276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:01:41.26 ID:lw7MXe59O

(; ω )「……?」

( ´_ゝ`)「平凡に暮らしていたかったのに。
       あの爺さんに、無理矢理聖徒会長なんかにさせられて。
       面倒事に巻き込まれて……可哀相になあ」

 流れ込んでくる兄者の言葉。
 注ぎ込まれる、恨みの気持ち。

 ――そうだ。
 自分は、あんなこと、望んでいなかった。
 理事長の我が儘で、強引に聖徒会長にさせられた。
 嫌だと言ったのに。
 嫌だったのに。

(  ω )「……」

( ´_ゝ`)「……俺が、あんたの代わりにあの爺さんを懲らしめてやるから。
       静かにして待ってな」

(  ω )「……」

( ´_ゝ`)「決まりだ」

 兄者は内藤の肩を叩き、理事長へ振り返った。
 妹者が理事長に縋りつく。



277: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:05:14.03 ID:XaZtPLx6O

 理事長は――動けなかった。

 内藤が自分を見殺しにするのが、信じられなかった。

(;ФωФ)(――……そんなにも)

 そんなにも、自分が憎いのか。
 そんなにも、彼は苦しかったのか。
 そんなにも。
 自分は、間違っていたのか。

( ´_ゝ`)「残念だったな――」



(  ω )「それでも僕は理事長が好きだお」



(;´_ゝ`)「!?」

 内藤が兄者に飛び掛かる。
 兄者を下にする形で、2人で倒れ込んだ。
 予想外だったのか、兄者は驚愕に目を丸くする。
 ――理事長達に意識を向けていた彼は、内藤の心に気付けなかったのだ。

(;´_ゝ`)「お前っ……」



280: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:08:30.75 ID:lw7MXe59O

( ^ω^)「たしかに理事長は少々強引だったけれど、
       でも、僕は今じゃ、これで良かったと思えているんだお」

(;ФωФ)「……ホライゾン君」

l从・∀・;ノ!リ人「ブーン……!」

( ^ω^)「僕は幽霊や物の怪のような怪異を恐れていたお。
       相容れないとさえ思っていたお。……この学校に入った当初は。
       だから、ひっそり、一生徒として過ごしたかった。
       けど……それは、僕が何も知らないからだったんだお」

(;´_ゝ`)「放せ! ――くそっ、くそ!」

( ^ω^)「聖徒会長になって初めて、学校の全体を見渡せたお。
       生徒それぞれの関係のありようも色々だった。
       仲が良くても――裏では憎んでいたり、嫉妬していたり。
       ……その嫉妬のせいで、大変な事態になったこともあるお」

(;ФωФ)「……」

( ^ω^)「だけど、学校霊達がそれを救ってくれた。
       彼らでなければ助けられなかったんだお。
       ――彼らは、ただここに居るだけじゃない。
       学校に通う、生きた人間を守ってくれていたんだお。
       僕は、それをようやく知ることが出来た」

(;´_ゝ`)「っ!」



283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:12:07.52 ID:lw7MXe59O

( ^ω^)「そして、また、霊にも様々な思いや事情があることに気付けた。
       僕らと彼らに、細かな差は無いんだお。
       嬉しければ喜ぶし、悲しければ泣く。怒ったり、笑ったり。
       みんな一緒なんだお。
       一緒だから、互いを想い合える、優しさを持ってるんだお。
       ――それを、理事長は最初から知っていた。
       知っていた上で、僕を選んでくれたんだお!」

 暴れる兄者を必死で押さえ込み、内藤は言葉を紡ぐ。
 兄者へ、というよりも、理事長へ向けて、かもしれない。

( ^ω^)「僕ら人間は生きているし――、
       彼ら怪異だって、生きて、ここに存在しているんだお!
       それなのに理解し合えないなんてこと、あるかお?
       ……あるわけないお」

 ――その証拠が、今日の、この出来事。

 七大不思議はみんなを守るために。
 みんなは七大不思議を助けるために、行動を起こしたのだ。

 理事長の理念は、何も、間違っちゃいなかった。

( ^ω^)「人と霊との共存、生命と怪異との共存を目指す理事長の気持ちが、
       今の僕には、とてもよく分かるんだお!」



286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:15:18.69 ID:lw7MXe59O

(;´_ゝ`)「……綺麗事を!」

 兄者が内藤を突き飛ばす。
 理事長と妹者の前に転がった内藤は、慌てて姿勢を整えようとした。
 しかしそれも間に合わず、兄者が内藤へ掴み掛かる――そのとき。

(;^ω^)「お……!?」

(;´_ゝ`)「!」

 内藤が纏う白いキャソック、その襟元につけられた2つのバッジ。

 青いバッジから同色の光が溢れ、内藤と兄者の間に青色の壁を作った。

(;^ω^)「なっ、何だお、これ……」

(;ФωФ)「――7つのバッジは、それぞれ、月火水木金土日を司っているである。
       ……青いバッジが司るのは、『日』!」

(;^ω^)「日……」

(;ФωФ)「命を守り育む太陽である!」

( ´_ゝ`)「……ふん、それであんたを守ったってわけか」

 忌ま忌ましげに言って、兄者は内藤から目を離した。
 内藤の後ろにいる、理事長と妹者に視線を向ける。



290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:18:21.45 ID:lw7MXe59O

( ´_ゝ`)「面倒だな。そっちに行けないものか」

l从・∀・;ノ!リ人「……お、おっきい、兄者……」

 理事長が妹者を抱え直し、兄者を睨みつける。
 兄者は、そんな理事長を嘲笑した。

( ´_ゝ`)「何だ、その目は」

(#ФωФ)「……君が復讐をしたがるのも分かる!
       だが、君達を苦しめた町の住人は、今はもういないのであるぞ!
       遣り場を失った怨みを我輩達に向けたとて、何の意味も無かろう!」

( ´_ゝ`)「意味が無くったって、やらなきゃならない。
       俺の存在は、そのためにある」

 彼はもはや、「呪い」そのものなのだ。
 町の人間を殺す存在。ただそれだけ。
 それだけだから、妹さえも利用する――


l从・∀・;ノ!リ人「……違う……」


( ´_ゝ`)「……ん?」



293: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:21:34.26 ID:lw7MXe59O

l从・∀・;ノ!リ人「違うのじゃ、兄者なんかじゃない……。
        おっきい兄者は、どんなに辛くったって、みんなに優しかったのじゃ!
        妹者に、にっこり笑ってくれたのじゃ!!」

 ――叫ぶ。
 言葉と一緒に、涙が溢れた。

l从;д;ノ!リ人「お前は誰なのじゃ! おっきい兄者と違うのじゃ!
       違う、違う!
       偽者なのじゃ、嘘っこなのじゃあ!」

( ´_ゝ`)「……何を言うんだ、妹者」



( ´_ゝ`)「俺は、流石兄者だよ」



     「――いいえ」


 内藤達の後ろから、声。
 振り返る。

(;^ω^)「あ……っ」



301: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:24:34.93 ID:lw7MXe59O


ミセ*゚ー゚)リ「あなたは彼であり、彼ではありません」


 ドクオが鏡を抱え、そこにいた。
 鏡の中には、ミセリ。


(;ФωФ)「ミセリ君!」

(;^ω^)「ドクオ!」

(;'A`)「……よう……」

 ぜえぜえと息を荒げているドクオ。
 どうやら走ってきたようだ。

( ´_ゝ`)「……ニダー達、しくじったか」

 兄者もそちらへ目を向けた。そしてニダーとのーの失敗を悟る。
 理事長はミセリの前に立ち、彼女に問い掛けた。

(;ФωФ)「ミセリ君、もう回復したであるか!?」

ミセ*゚ー゚)リ「いいえ……何やら騒がしかったので、目が覚めたんです。
      まだ本調子ではありません」



307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:27:47.19 ID:lw7MXe59O

(;ФωФ)「そ、そうであるか……して、彼が流石兄者であり流石兄者でない、とは?」

ミセ*゚ー゚)リ「今、彼の『本当の姿』を見たんです」

 そう答え、ミセリは鏡面から消えた。
 代わりに現れる、兄者の姿。

 それは――まさに異形であった。

( ´_ゝ`)「……厄介な」

(;^ω^)「――う……!」

l从・∀・;ノ!リ人「ひっ!」



 鏡に映る、どす黒い気に包まれた兄者。
 その体のあちこちから、彼のものではない顔や手足が生え、蠢いている。

 おぞましい光景は数秒で掻き消え、再びミセリが映り込んだ。



309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:30:58.85 ID:lw7MXe59O

ミセ*゚ー゚)リ「……悪鬼のようなもの。たしかに彼は流石兄者という方です。
      しかし、正確に言うならば、『流石兄者の怨念』が、表面化したもの」

( ´_ゝ`)「……黙れ」

 呟き、兄者が青い壁に触れる。
 だが、壁は兄者を通すことを拒んだ。

 その間に、理事長がミセリに「呪い」を説明する。

(;ФωФ)「か、彼は、昔この町に呪いをかけた!
       その方法は、他の霊を吸収して呪力を強めること!」

ミセ*゚ー゚)リ「……なるほど」

 ミセリは、ついさっきニダー達から聞いた話を思い返した。
 兄者が、「復讐」への協力をニダー達七不思議に求めたこと。
 彼と話している内、七不思議達の心に恨みの気持ちが沸き上がったこと。

 それらを照らし合わせ、合点がいく。

(;'A`)「なるほどって、何か分かったのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「私の言っていることが間違っていないことが分かりました。
      ――何への恨みかは存じませんが、彼はひどく憎んでいるものがある。
      それへの憎しみの心に他の魂が引っ張られて、
      彼の憎しみはますます大きくなります。
      ……そうすることで、彼の『憎しみ』ばかりが肥大して……。
      他の心は、覆われてしまったんです」



311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:33:40.67 ID:lw7MXe59O

(;^ω^)「つまり……」

ミセ*゚ー゚)リ「彼は、『流石兄者の恨み』。
      流石兄者の中の、たった一つの感情――
      それに引き寄せられた怨霊達の集合体。
      故に、流石兄者であり、また他の霊達でもある。
      全ての感情を持つ流石兄者本人は、彼の中、ずっと奥に隠れています!」


 弟者が己の心を制御出来なくなったように。
 兄者もまた、心を制御出来ず――

 本体である筈の己が、感情に操られるようになってしまった。


(#´_ゝ`)「黙れぇええええええ!!」


 兄者が――兄者の口を借りたそいつが、叫んだ。
 青い壁が揺らぎ、小さな罅が入る。

 内藤達は縮こまり、兄者は肩で息をする。



314: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:36:27.61 ID:lw7MXe59O

 何度か深呼吸を繰り返した彼は、

( ´_ゝ`)「……鬱田ドクオ……」

 ドクオを見て、口角を上げた。

(;'A`)「……何だよ」

( ´_ゝ`)「少し前……あんたを訪ねた女がいただろう」

(;'A`)「あ?」

( ´_ゝ`)「……高岡キュート」

(;'A`)「なっ……!」

( ´_ゝ`)「隣町へ、復讐に協力してくれる奴を探しに行っていたとき。
       そのときに、あの女に会ったんだ。
       男になりたがってた馬鹿な霊……」

(;'A`)「――まさか」

( ´_ゝ`)「あんたの霊媒体質のことは知っていた。
       ……だから、教えてやったんだ。
       鬱紫寺に行けと。
       ――本当はな、それで、あんたを潰してやるつもりだった」

(;'A`)「……っ」



316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:40:01.90 ID:lw7MXe59O

( ´_ゝ`)「あんたの体を高岡キュートにくれてやって……、
       少しでも、邪魔になりそうな要素を取り除くつもりだったのさ」


 ――『ある幽霊さんに、
    隣町のお寺にとっても取り憑きやすい男の子がいるって教えられたの』――


 キュートにドクオの存在を教えたという幽霊。
 それは、兄者だったのだ。


 ――兄者は復讐の始めとして、ジョルジュに呪いを薦めた。
 そうやって、ゆっくり町の人間を始末していく予定だった。
 しかし、最初の作戦は聖徒会によって阻まれる。

 ならば、と、聖徒会の1人であり、鬱紫寺の子孫であるドクオへキュートを差し向けた。
 だが、それも彼の望んだ結果にはならずじまい。

 次に立てた、ツンを殺すための計画さえも失敗に終わり。
 痺れを切らした彼は、今日、ついに学校の人間を全員殺してやることにした。


 全ては、この学校を崩すための兄者の策略であった――



319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:43:26.21 ID:lw7MXe59O

( ´_ゝ`)「……くっ」

 兄者から、笑い声が漏れる。
 引き攣るように笑って、彼は言った。

( ´_ゝ`)「本当に、自分の欲求に素直な馬鹿だった。
       他人の迷惑なんざ省みない。自分さえ良ければいい。
       ――それに、何だ?
       あんたとの約束破って、揚げ句、体を乗っ取ろうとしたのか。
       つくづく身勝手な女だな」

(; A )「……てめえ……」

ミセ;゚ー゚)リ「ドクオさん! いけません、あんな挑発に――」

(#'A`)「ふざけんじゃねえええええ!!」

 鏡を理事長に向かって放り、ドクオは兄者のもとへ駆け出した。
 殴り掛かろうとするドクオを躱し、兄者は「あんたも馬鹿だ」と、
 床に転がったドクオに吐き捨てた。

( ´_ゝ`)「あんな女を簡単に信じるか、普通」

(#'A`)「キュートさんは、ずっと我慢させられてた!
    死んでからようやく望みが叶ったんだ!
    多少自分勝手になったって、何もおかしくねえだろうが!!」



322: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:46:46.05 ID:lw7MXe59O

(;^ω^)「ドクオ、戻ってくるお!」

 兄者の目的は、壁の向こうから彼の方へドクオをおびき寄せること。
 それに気付いた内藤が戻るように言うも、もう遅い。

( ´_ゝ`)「本当に、馬鹿だ。
       ダイオードとかいう教師にしても、
       自分のためなら他人が犠牲になろうと関係ないってか」


 ――兄者は屈み込み、ドクオの顔を見つめる。

 ドクオの魂を引き寄せようとして、


( ´_ゝ`)「……?」

 違和感に、眉根を寄せた。

(# A )「……そういうもんなんだよ。
    死んじまっても、望みが消えない。
    ……望みを叶えたいから、やりたいことがあるから……」

(;´_ゝ`)「つっ!」

 兄者の横っ面に拳を食らわす。
 立ち上がって、ドクオは袈裟に手をかけた。



324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:49:43.51 ID:lw7MXe59O

 ドクオが法衣をはだけさせていくのを訝しげに見ながら、兄者も身を起こす。

 そしてドクオが上半身をさらけ出したのと、兄者が体勢を整えたのは、同時だった。

(#'A`)「だから、死者は生きた体を欲しがるんだ!!」

(;´_ゝ`)「! しっ……」

 「しまった」と。
 言葉を発する暇さえ、兄者にはなかった。

(;^ω^)「ドクオ!!」

(;ФωФ)「いかん、ドクオ君!」


(; _ゝ )「――!!」


 兄者の体から真っ黒な塊が飛び出した。
 それは、兄者に巣くっていた死霊達。

 彼らは、兄者の怨念よりも。
 目の前の男の、心地良さそうな、生きた体を選んだのだ。



326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:52:59.07 ID:lw7MXe59O

(; A )「う、ぐぅっ!!」

 その塊を一気に受け入れて、ドクオが無事な筈がない。
 一瞬でドクオの意識が飲み込まれる。
 細い体の中で、様々な魂が入り乱れ――

(;^ω^)「ドク……っ」


     「悪霊退散――」


ξ#゚听)ξ「ハイパーウルトラスーパーグレート出連スペシャルぅうううううう!!」

#)A゚)「オギョギョギョギョギョー!!!」


 ドクオの後ろから飛んできた3人。
 その内の1人――ツンは、玉串で勢いよくドクオを殴り抜いた。

 黒い塊がドクオの体から抜け出たのを、今度は赤い布が搦め捕る。

( ・∀・)「ひどい邪気だ。……消毒してあげよう」

 モララーの赤いマントが塊を包み込んだ直後、マントが燃え上がった。
 聞いているだけで寒気がするような悲鳴が、炎から響き渡ってくる。
 しかしそれも、徐々に弱まり――



333: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:55:46.79 ID:lw7MXe59O

( ゚д゚ )「モララーは強いな」

( ・∀・)「ふふ、唯一攻撃性に優れている力だからね」

 ついには、マントを残して、炎も塊も消えていった。

(;^ω^)「……おお……」

(*ФωФ)「何という連携……」

 ツンがドクオを蹴飛ばすと、ドクオは、はっとして体を起こした。

(;'A`)「上手くいった?」

ξ#゚听)ξ「ったく、私があと少し遅かったら、あんた完全に妖怪になってたわよ」

(;^ω^)「ど、どういうことだお……?」

('A`)「ああ……さっき床に倒れたとき、こっちに向かうツン達が見えたんだ。
    それで、ちょっと賭けに出てみた。
    流石兄者に大量の霊がくっついてたから厄介なことになってたんだろ?
    それなら、その霊を全部俺が持ってっちまえば、元に戻るかな、と」

 皆が、兄者を見た。
 兄者は、膝をついた体勢のまま、だらりと頭を垂れている。
 動く気配はない。



337: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:57:39.87 ID:lw7MXe59O

 ――不意に、妹者が理事長から離れ、兄者へと駆け寄った。

l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者!」

ミセ;゚ー゚)リ「! いけません、まだ……!」

l从・∀・;ノ!リ人「え――」

(  _ゝ )

l从・∀・;ノ!リ人「あ、」

 兄者の体に触れようとした妹者。
 その細い腕を、兄者の手が引っ掴む。

 ぎし、と、軋んだ音を立てる程に強い力。

(;ФωФ)「なっ……」

ミセ;゚ー゚)リ「まだ悪霊が残ってます!」

(;'A`)「くっそ……!」

ξ;゚听)ξ「妹者!」



339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 00:59:32.60 ID:lw7MXe59O

(  _ゝ )「ぃ、――ゃ   ぃ  あ   ……さ、……――、いもじゃ、」

l从・∀・;ノ!リ人「お、おっきい兄者……」

(  _ゝ )「――す ……、す  ……こ……     んな、みんな」



( ´_ゝ`)「殺す」


l从・д・;ノ!リ人「ひぁ」


 ずるり。
 妹者の手首から先が、兄者の掌に埋まる――



341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:02:39.09 ID:lw7MXe59O


(;^ω^)「妹者ちゃっ……」



<_フー )フ「駄目だよ、兄者」



( ´_ゝ`)



 飲み込まれていく妹者の腕が、止まった。


l从・д・;ノ!リ人「……え、えくっ……」


 こつん――靴と床の間で、音が鳴る。
 こつ、こつ。その男は、ゆっくりと近付いてきた。
 内藤の隣を通り過ぎる。



347: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:05:26.85 ID:lw7MXe59O


<_プー゚)フ「妹者は、お前の大事な家族だろ」


 黒いキャソック。
 優しい笑みを浮かべた男。


 こつん。
 エクストは、兄者の前で立ち止まった。


( ´_ゝ`)「……」

<_プー゚)フ「ほら。放してやれ」

( ´_ゝ`)「……」

 エクストが促すと、兄者は小さく頷いて、妹者から手を離した。
 綺麗に抜ける、妹者の腕。
 「よし」と、エクストは笑った。



352: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:08:59.82 ID:lw7MXe59O

 しゃがみ込み、兄者の背を抱く。

<_プー゚)フ「もう、お前らを傷付けた人達はいないよ」

( ´_ゝ`)「でも」

<_プー゚)フ「ツンやドクオはあの人達と違うし、
       この学校にいる人間なんか、それこそ全く関係ない。
       復讐なんて、そもそも成立しようがないだろ?」

( ´_ゝ`)「……それじゃあ、俺の気が済まない」

<_プー゚)フ「どうして?」

( ´_ゝ`)「妹者が可哀相だ。母者が、父者が、姉者が……弟者が可哀相だ。
       エクスト様だって」

<_プー゚)フ「妹者のための復讐なのに、妹者を利用するのか?」

( ´_ゝ`)「――あ、れ……?」

 エクストが目を細める。
 宥めるように、背を撫でた。



355: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:11:56.99 ID:lw7MXe59O

<_プー゚)フ「自分のための復讐じゃないんだな?」

( ´_ゝ`)「……」

 首を傾げ、兄者は妹者を見た。
 考え込み、

( ´_ゝ`)「……ん」

 小さく頷く。

<_プー゚)フ「妹者は、誰も悪くないって言ってたよ。
       姉者と弟者は復讐なんて望んでないし、
       俺は誰も恨んでない。……復讐なんていらないよ」

( ´_ゝ`)「でも、……だって、……だって」

<_プー゚)フ「頑張れ、兄者。もうちょっと」

l从・∀・ノ!リ人「……おっきい兄者……」

( ´_ゝ`)「だって……」

<_プー゚)フ「そうだな……それでも、まだ復讐するってんなら。
       俺も、みんなも、全力で止めるよ」



358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:14:24.92 ID:lw7MXe59O

 誰も、そんなの望んでない。
 エクストがそう告げると、兄者の顔に困惑の色が浮かんだ。

 そして、エクストが兄者の背中を叩く。

(;´_ゝ`)「う、っげぇ……っ」

 ――直後、兄者が苦しげに呻き。


 口から、黒い、小さな塊を吐き出した。


(;゚д゚ )「おわっ!?」

<_プー゚)フ「ツン、浄霊!」

ξ;゚听)ξ「えっ、あっ、は、はいっ」

 流されるまま、ツンは、床に転がる黒い「それ」を玉串で突く。
 塊は玉串に触れた瞬間に爆ぜ、盛大に散っていった。



364: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:17:14.12 ID:lw7MXe59O

 少しの沈黙。
 そして、ミセリが口を開く。

ミセ*゚ー゚)リ「……兄者さんの中の悪霊が、全て消えました」

(;'A`)「え、今ので?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい。彼自身が『復讐』を否定したため、
      悪霊を弾き出すことが出来たようです」

(;^ω^)「……まあ、それは素晴らしいことだけど……」



<_プー゚)フ


(;^ω^)ξ;゚听)ξ(;'A`)ミセ;゚ー゚)リ(誰この人……)(・∀・;)( ゚д゚;)(ФωФ;)

 ほぼ全員の視線と思考が一致した瞬間であった。



370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:20:00.53 ID:lw7MXe59O

( ´_ゝ`)「……妹者……」

 妹者を見て、兄者が小さな声で名前を呼んだ。
 あの冷ややかな表情は、もう無くなっていた。

( ´_ゝ`)「――酷いこと言って、ごめんなあ」

l从・∀・ノ!リ人「……いいのじゃ。おっきい兄者は、
        さっきまでおっきい兄者じゃなかったから……」

( ´_ゝ`)「……はは」

∬´_ゝ`)「馬鹿弟見っけ」

( ´_ゝ`)

l从・∀・ノ!リ人

( ´_ゝ`)

l从・∀・ノ!リ人

( ´_ゝ`)「えっ」l从・∀・ノ!リ人



375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:22:28.70 ID:lw7MXe59O

 兄者と妹者が固まる。
 姉者の登場に内藤達は更に混乱した。
 漂う空気に、姉者は鼻白む。

∬´_ゝ`)「何よ、この空気」

( ФωФ)「いや……いきなり割り込まれても……」

( ・∀・)+「はじめましてレディ、私は赤マント仮面モララーと申します。
       以後お見知りおきを」

ξ゚听)ξ「目の色変えんなエロマント」

(*'A`)(胸が……今まで見てきた誰よりもデカい……!!)ゴクリ

(;^ω^)「えっと……どちらさまで」

l从・∀・*ノ!リ人「姉者なのじゃ!」

∬´_ゝ`)「どうも、こいつらの姉です」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ど、どうも」



379: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:24:37.40 ID:lw7MXe59O

(´<_`;)「おい、勝手に出ていくな!」

川 ゚ -゚)「空気読んでエクストだけ先に行かせたのに……」

( ´∀`)「やあやあみんな、お揃いで」

( ∵)[到着ー]

【+; 】ゞ゚)「ゼヒゼヒ」

ノパ听)「オサム、もっと運動しろー」

 そこへ次々と現れるクール、ビコーズ、モナーに姉者と弟者、オサム、ヒート。

( ^ω^)「……」(話に加われない……)

ξ゚听)ξ「……」(誰こいつら……)

('A`)「……」(乳揉みたい……)

( ФωФ)「……ちょっと……みんな、自己紹介しようか……」



381: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:27:41.41 ID:lw7MXe59O

 ――廊下のど真ん中、円になるように皆で座り込む。
 そのまま、流石家の面々が過去の事件をかい摘まんで説明し、
 オサムとヒートが今に至るまでの流れをぐだぐだしながら話した。

【+; 】ゞ゚)「えっと、んで……俺ら七不思議はみんな倒されちゃったのかな」

( ・∀・)「阿部さんといったか、彼は縛り上げて生徒達に見張らせているよ」

( ´∀`)「同じく」

ノハ;;)「うおおおお詳しく話を聞いたら兄者達が意外と可哀相だったああああああ!!」

( ;ω;)「おーん……」

l从・∀・ノ!リ人「泣かないのじゃー、よしよしなのじゃー」

ξ;゚听)ξ「あんた本当にエクストなの!?」

<_プー゚)フ「うん」

(;゚д゚ )「えええええ! 結構いい歳してるオッサンだ!」

<_フ;゚ー゚)フ「オッサン言うな! まだ若いわ!
        ……っつーか、石持ってったの理事長だったのかよ!」

(;ФωФ)「我輩ではない、我輩の友人である! でも謝るわ、ごめん!」



384: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:30:15.31 ID:lw7MXe59O

('A`)(乳でけえ……揉みてえ……)

∬´_ゝ`)「そこのガリガリ、聞こえてるわよ」

('A`)「挟まれてえ……」

川 ゚ -゚)「こいつ開き直って声に出してきよった」

( ∵)[大体予想出来てたけど状況がカオス]

 びっくりするほど、まとまらなかった。

 ――「一旦黙ろうか」というビコーズの言葉(文字)により、
 現場は一時静寂に包まれた。

 それから最初に会話を交わしたのは、流石兄弟。

( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「……殺してごめん」

(´<_` )「……色々とごめん」

( ´_ゝ`)「許す」(´<_` )

川 ゚ -゚)「軽っ!!」



391: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:32:51.81 ID:lw7MXe59O

∬´_ゝ`)「いいのよ、兄者は心読めるから全部分かってるわ」

( ´_ゝ`)「さっきから弟者の心の中が『ごめんなさい』まみれで恐い」

( ・∀・)「案外重い!!」

l从・∀・ノ!リ人「ちっちゃい兄者は、ちゃんと反省してるのじゃー。
       姉者が地獄の片鱗を見せたからのう」

( ´∀`)「なにそれこわい」

(*'A`)(ドS爆乳たまんねええええ)

∬´_ゝ`)「……どえすばくにゅーって何よ」

(*'A`)「しかも性的なことに疎いとかああああああ!!」

川 ゚ -゚)「話の流れが分からんが、つっこんでおこう。
     それは単なるジェネレーションギャップではないか」

 兄弟のいざこざはあっさり解決した、というところで。



394: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:35:18.18 ID:lw7MXe59O

 次いで――皆は、エクストを見た。

<_プー゚)フ「……」

( ^ω^)「エクスト……あの、……」

 内藤が不安に思っていたのは、エクストが悪霊になってしまわないかということ。
 こうして見ている分には、姿以外はいつもと大差がないように感じられるが、
 実際としてどうなのか。

 問おうとするも、相応しい台詞が浮かばなくて、

( ^ω^)「……大丈夫、かお?」

 それだけしか、訊けなかった。

<_プー゚)フ「大丈夫って、何が?」

(;^ω^)「こう……過去を思い出して、何か、……思うところ、とか」

<_プー゚)フ「……まあ……意外と、すっきりはしてるかな。
       学校に来る前に、姉者達と色々話したから。
       ――自分がやれることをやって死んだんだし」

l从・∀・*ノ!リ人「エクスト様あそぼー」

<_フ;゚ー゚)フ「うん……今はそれどころじゃねえな」

 若干空気を読めていない妹者の頭を、エクストが撫でた。



397: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:37:36.36 ID:lw7MXe59O

 ――彼は、たしかに生前、ひどく辛い目には遭った。
 だが、それでも、その命を捨てたとき。
 どこか誇らしい気持ちであれたのも、事実なのだ。

(;^ω^)「なら良かったお……」

( ´_ゝ`)「……」

 内藤が胸を撫で下ろす。
 一方で、兄者は暗い表情のままエクストから目を逸らした。

ノパ听)「兄者、どーした!」

【+; 】ゞ゚)「こら。呑気に口を挟むな」

<_プー゚)フ「兄者?」

( ´_ゝ`)「……エクスト様が死んだのは俺のせいだ」

( ^ω^)ξ゚听)ξ('A`)川 ゚ -゚)( ・∀・)( ´∀`)ミセ*゚ー゚)リ

     (……うわあ……)

( ゚д゚ )( ∵)( ФωФ)【+  】ゞ゚)ノパ听)∬´_ゝ`)(´<_` )


 また新たな、ややこしく面倒臭そうな事態が発生した。



402: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:40:00.68 ID:lw7MXe59O

:( ´_ゝ`):「俺が呪いなんかやったから……エクスト様、自分を犠牲に……」

<_プー゚)フ

l从・∀・ノ!リ人


 震えて、泣きそうになっている兄者。
 慌てて周囲が声をかけようとした、が。


    バチーン
<_プー゚)☆))´_ゝ`)「あふんっ!」
    ⊂彡

             ゴズン
「こっちも!?」(;#)´_ゝ(⊂≡l从・∀・ノ!リ人

(;#)´_ゝ(#)「え……何、酷い……目覚める……」

<_プー゚)フ「俺な、もう、吹っ切れてるんだ」

(;∩´_ゝ(#)「ヘ?」



406: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:42:37.79 ID:lw7MXe59O

<_プー゚)フ「ぜーんぶ、誰のせいでもないってことにしようや。
       実際そうだし。俺が死んだのは俺の判断だし」

 エクストの発言に、ツンが同意する。
 険しい顔で口を開いた。

ξ゚听)ξ「……ま、悪いとしたら……うちのご先祖様ね。
      子孫として謝るわ。……本当に、ごめんなさい」

('A`)「うちのもだ。――悪かった」

( ФωФ)「我輩も、この町に通っておきながら気付けなかった。
       大変、申し訳なかったである」

 ツン、ドクオ、理事長が頭を下げる。
 兄者が何も言えないでいると、
 姉者と弟者が代わりに「気にするな」と告げた。

∬´_ゝ`)「私は『誰も悪くない説』派だから、謝られる筋合いないし」

(´<_` )「……俺は、自分が一番酷いと思ってるから、謝られても困る」

∬´_ゝ`)「偉いわよ馬糞」

(´<_` )「お前、馬糞ってあだ名気に入ったろ」



409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:45:15.69 ID:lw7MXe59O

( ´_ゝ`)「……」

 兄者は――姿勢を正すと、
 深く深く、頭を下げた。

(  _ゝ )「……感情につられて、酷いことをしようと……いや、実際にしてしまった。
       何の罪もない人々を殺すところだった。
       ――ごめんなさい……」

(;^ω^)「……えっと」

ミセ*゚ー゚)リ「会長さん、どうなさいます?」

(;^ω^)「え?」

( ゚д゚ )「生徒の頂点として、俺ら聖徒会執行部の長として」

( ∵)[許すか許さないか、ブーンが決めて]

(;^ω^)「……」

 ――そんなの。

( ^ω^)「……当然、許すに決まってるお」

l从・∀・*ノ!リ人「ブーン!」

(;^ω^)「おわっ」



416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:47:36.04 ID:lw7MXe59O

 妹者は内藤に飛びつき、にこにこと笑った。
 とても嬉しそうな笑顔。
 思わず、周りの者の口元も綻んだ。

l从・∀・*ノ!リ人「ありがとうなのじゃ! ……みんな、優しくて、妹者幸せなのじゃ」

∬´_ゝ`)「……そうね」

 くすくす笑って、姉者が立ち上がる。
 「さて」と、彼女は兄者と弟者の手を引いた。

∬´_ゝ`)「さっさと、『上』に行くわよ。
      ……このままここに居続けるのも、危ないんでしょ?」

<_プー゚)フ「え?」

 姉者の視線の先は、ミセリ。
 ミセリは戸惑い気味に頷いた。

ミセ*゚ー゚)リ「……はい。
      長居するのは、少々危険です」

ξ゚听)ξ「どうして?」

ミセ*゚ー゚)リ「流石兄者さんは、……呪いのために、死にました。
      その魂の根底は、呪いを行うための存在といってもいいです」



418: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:49:56.86 ID:lw7MXe59O

('A`)「でも反省してるみたいだし……」

ミセ*゚ー゚)リ「そう簡単に恨みは消えません。
      それに……周りがどんなに言ったところで、
      彼の中の罪の意識が完全に消えることはありません。
      実際に人を手にかけてしまったところもネックですね」

( ´_ゝ`)「……まあ、そうだな」

ミセ*゚ー゚)リ「ですから、ずっとこのまま現世に留まっていては、
      いずれ、無意識にでも他の霊を引き寄せて、
      また同じことを繰り返してしまう可能性が高いです」

l从・∀・ノ!リ人「……よく分からんのじゃ」

<_プー゚)フ「みんなで、父者と母者がいるところに行こうってこと」

l从・∀・*ノ!リ人「! 父者達のところ、行くのじゃ!!」

<_プー゚)フ「ああ」

 エクストが妹者と手を繋ぎ、立ち上がる。
 それを――ツンは、びっくりしたように見上げた。

ξ゚听)ξ「え……」

<_プー゚)フ「うん?」



420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:52:15.31 ID:lw7MXe59O

ξ゚听)ξ「……あんたも、行くの?」

<_プー゚)フ「おうよ」

 ――嘘でしょ。
 そう言うツンの声は、か細く、弱々しかった。

('A`)「おい、ツン……」

ξ;゚听)ξ「な、何言って……あんた、だって……。
      ……本当に行く気?」

<_プー゚)フ「うん」

ξ;゚听)ξ「『うん』って、そんな簡単に……!」

 ツンも腰を上げると、エクストに縋るように掴み掛かった。
 他の者も立ち、困った顔でツンとエクストを見る。

ξ;゚听)ξ「だって……だって、明日から夏休みだし……、
      今回の事件だって、無事に終わりでしょう!?
      明日から、また、いつもみたいに馬鹿騒ぎしてもいいのよ!」

<_プー゚)フ「……」

ξ;゚听)ξ「プール……プールで遊ぶって言ったじゃない!
      学校のプール、入りたいって……ねえ!」



425: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:54:22.29 ID:lw7MXe59O

(;^ω^)「ツン、エクストを困らせちゃ駄目だお……」

ξ;゚听)ξ「乙女の唇奪ったら、責任もって憑くんでしょう!?
      エクスト……!」

<_プー゚)フ「……ごめんな」

ξ;゚听)ξ「――……謝らないでよ……」

<_プー゚)フ「俺、兄者達のこと、ちゃんと見届けたいから。
       ……ここには残れない」

ξ;゚听)ξ「嫌……」

<_プー゚)フ「……ありがとう。楽しかった」

ξ;゚听)ξ「やだ……、やだよ!」

('A`)「ツン!」

ξ;゚听)ξ「っ!」

('A`)「エクストが優先するべきなのは、間違いなく妹者達のことだろ」

( ^ω^)「僕達だって、本当は、これからもエクストと遊びたいお。
       でも、ここで引き止めるのはエクストのためにならないお」



428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:57:05.09 ID:lw7MXe59O

ξ;゚听)ξ「……」

ξ;--)ξ「……っ」

 目元を袖で擦り、ツンはエクストに背を向けた。
 俯き――ぽつりと、呟く。

ξ )ξ「……ちょっと、びっくりしただけよ。いなくなって、せいせいするってもんだわ」

<_プー゚)フ「……うん。……それぐらいが丁度いいよ」

川 ゚ -゚)「素直じゃないな」

( ・∀・)「私の胸を貸そうか」

ξ )ξ「うるさいボケ」

( ´∀`)「ミルナ君」

(;゚д゚ )「えー。……別にいいけど」

 ミルナがツンに歩み寄る。
 躊躇わず、ツンはミルナを抱きしめた。

∬´_ゝ`)「……さ、行きますか」

ミセ*゚ー゚)リ「あのっ」

(´<_` )「まだ何か問題が?」



430: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 01:59:58.11 ID:lw7MXe59O

ミセ*゚ー゚)リ「た、多分……兄者さんは、難しいかと」

(;ФωФ)「何……だと……」

ミセ*゚ー゚)リ「先程も言いました通り、彼の魂の根底は、この町への呪い。
      ……町に執着しているんです」

( ∵)[一種の地縛霊みたいなものなんだね]

ミセ*゚ー゚)リ「簡単に言ってしまえば、そうです」

 要するに。
 「兄者は昇天出来ませんよ」ということ。
 性的な意味ではなく。

∬´_ゝ`)「……上に昇るのは不可能なわけ?」

( ´_ゝ`)「多分。……そんな感じするし」

(´<_`;)「こう、俺らが引っ張ってくのは無理なのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「無理だと思います……」

∬´_ゝ`) ☆))´_ゝ`)「ほんとごめん」
   ⊂彡

<_フ;゚ー゚)フ「どうすりゃいいんだ……」

l从・∀・ノ!リ人「やっぱりよく分からんのじゃ」



437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:02:37.60 ID:lw7MXe59O

(;ФωФ)「む、むう……」

 訪れる沈黙。
 皆が、うんうんと唸っていると――


ノパ听)「はい! はいはい!!」

 今まで発言の機会を逃していたヒートが、大声で吠えながら両手を挙げた。

【+; 】ゞ゚)「ヒート、多分ろくなもんじゃないから黙っとけ」

ノハ#゚听)「なっ! 俺にしては、だいぶ良い考えだぞ!」

(;^ω^)「と、とりあえず言ってほしいお」

ノハ*゚听)「天国に行くのが難しいんだろ!?」

(´<_` )「まあ天国かどうかは知らないけど」



ノハ*゚听)「それなら!
     天国がこっちに来りゃいいんだ!!」



443: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:05:10.01 ID:lw7MXe59O

ξ゚听)ξ「うーん何かいい考えないかしらー」

('A`)「思いつかねーなー」

川 ゚ -゚)「すまん、あの子は本気なんだ。あれで全力なんだ。
     だから無視だけはやめてあげて」

 殆どの者が、取り敢えず無かったことにした。

 ――理事長を除いて。

( ФωФ)「それ可決」

ノハ*゚听)「やったー!」

【+; 】ゞ゚)「えええええええ!!」

(;´∀`)「出来んの!?」

ミセ;゚ー゚)リ「で、出来なくはないですけど……本気ですか?」

( ФωФ)「うむ」

(;^ω^)「……?」

 ミセリの様子に、内藤が首を傾げる。
 気軽に言っている理事長に対して、ミセリはあまり乗り気ではなさそうだ。
 不安そうに理事長を見ている。



449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:07:23.54 ID:lw7MXe59O

( ФωФ)「ホライゾン君」

(;^ω^)「はっ、はいお」

( ФωФ)「このバッジに使われている石が普通でないのは、もう知っておろう」

(;^ω^)「それは充分に」

( ФωФ)「これはな、外国のとある教会に、代々保管されてきた石なのである。
       いつ、どこで誰が手に入れたのかさえ分からない。
       ただ――その不思議な力についてだけは、ずっと語り継がれてきた。
       しかし、ずっと昔、とある神父がこの町へ持って来たのである」

(;'A`)「そんな凄いもんをバッジに加工したのかあんた」

( ФωФ)「ちゃんと許可は得ている。
       そうそう、神父に許可をとる際に、我輩、石について訊いたのである」

 その神父とやらは、エクストと親交の深かった神父。
 石を手に入れた後。理事長が神父へ連絡をとったとき、
 彼は手紙に、こう綴っていた。

 『何にも使わず、同じ場所にずっと置いておくよりかは、
  人を守るために使ってくれる方が嬉しい』――

 何でも、本物のエクソシストだったという彼の祖父は、
 恋人が出来たことをきっかけに神父を辞めてしまったらしい。



451: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:09:21.07 ID:lw7MXe59O

 ――というのは建前で。

 若くして司祭、そしてエクソシストになった祖父は、
 教会の年老いた聖徒達からなかなか信頼を得られず、
 半ば強制的に追い出されてしまったという。

 その際に――



( ФωФ)「……あの神父は、手紙で言っておった。
       『祖父は腹いせに、教会が大切に守っていた石を持ち出したのだ』と。
       祖父の遺品である日記を読んで初めて知ったらしい」

(´<_` )「窃盗犯じゃねーか」

<_プー゚)フ「孫に証拠品押し付けてるじゃねーか」



456: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:12:04.62 ID:lw7MXe59O

 ――世の中とは案外上手く回るもので。
 祖父が教会を追い出されてからしばらく後、
 その教会で火事が発生し、建物は全焼。
 石が盗まれていたことに気付く者はいなかったらしく、
 石は火事のせいで行方不明になったのだろう、ということで収まったそうだ。



( ФωФ)「……あの神父は、手紙で言っておった。
       『祖父が火をつけたのではないかと疑ってしまう』と」

( ´_ゝ`)「孫から祖父に対する信用皆無じゃねーか」

【+  】ゞ゚)「間違いなく祖父の日記読んだせいで株価大暴落したじゃねーか」

( ФωФ)「まあ要するに今更その石を必要にする者もいないから、
       自由にしてくれということであった」

ξ゚听)ξ「なかなか残念な背景があったわね」

( ФωФ)「それから我輩は、その祖父の日記とやらを送ってもらったである。
       石の活用法などがなかなか事細かに記されていて、非常に役に立った」

ミセ*゚ー゚)リ「私も読ませていただいたことがあります」

ノパ听)「で、天国を呼ぶ方法があったのか!」

( ФωФ)「正確に言うなら、短時間、
       あの世へ通じる大霊道に空間を繋げる方法であるよ」



459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:14:32.22 ID:lw7MXe59O

( ^ω^)「それは、どうやるんですかお?」

( ФωФ)「必要なものは、七つの石――バッジと、
       ……代償」

 代償。
 その響きに不穏なものを感じ取り、内藤の背中に、ひやりとした何かが這った。

(;^ω^)「代償って……」

( ФωФ)「それなりに大きな代償でなければならないが……。
       ――まあ、それは簡単に用意出来る」

 嫌な予感が皆を襲う。

 そして、その予感は。



( ФωФ)「我輩の命で充分であるよ」



 的中した。



463: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:16:53.15 ID:lw7MXe59O

(;^ω^)「なっ……、何言ってんですかお!?」

ξ;゚听)ξ「代償って、消えちゃうってことでしょ!?」

(;'A`)「も、もっと他にあるだろ!」

( ФωФ)「……我輩も、たしかに嫌である。
       だがこれなら間違いはない。
       ――みんな、ホライゾン君にバッジを」

( ・∀・)「……分かりました」

( ´∀`)「……仕方ないモナね」

 慌てる内藤達を尻目に、七大不思議、理事長とビコーズ以外の5人は、
 諦めたような顔をして各々バッジを取り出した。
 そして、内藤に手渡していく。

(;^ω^)「み、みんな、理事長を止めないんですかお!?」

川 ゚ -゚)「……理事長が、そうすると決めたんだ」

ミセ*゚ー゚)リ「それしか、ありませんもの」

ξ;゚听)ξ「そんな……薄情すぎない!? いなくなっちゃうってのに……!」

(;'A`)「ツンの言う通りだ! こんなの、あまりにも――」



467: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:19:07.09 ID:lw7MXe59O

( ゚д゚ )「……」

 ミルナは、ふるふると首を横に振った。

( ゚д゚ )「それ以上、言うな。……決心が鈍る」

( ∵)) コクン

<_フ;゚−゚)フ「でも……!」

( ФωФ)「みんながそこまで言ってくれただけで、充分である」

(;^ω^)「理事長!」

 理事長は微笑み、理事長室の中へ入っていった。
 扉を閉め、内藤を呼ぶ。

      「――ホライゾン君、扉の前に」

(;^ω^)「……っ、……はい、お……」

 少し迷って。
 内藤は、扉の前に立った。



470: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:21:21.91 ID:lw7MXe59O

      「バッジを頭上に掲げ、呪文を唱えるだけでいい」

(; ω )「……呪文……?」

      「詳しい呪文は我輩も分からん。
       ただ、勝手に浮かび上がる言葉を口にするだけで構わないのである。
       きっとバッジが導いてくれるから」

(; ω )「……分かり、ましたお……」

      「それでは――」



      「――頼んだであるよ、聖徒会長」



(  ω )

( ∩ω∩)

( ^ω^)


 任せてくださいお。

 そう言って、内藤は両手を頭上に翳した。



474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:23:41.13 ID:lw7MXe59O


 右手、それぞれの指の間に青、ピンク、赤、紫のバッジを挟み。

 左手、指の間にオレンジ、緑、黄色のバッジを挟む。


 内藤の口が開き。
 勝手に、呪文を紡ぎ始めた。


( ^ω^)「……遥か太古より続く昏き道よ
       白日の光と交わりて我が前にその姿を示せ」


川 ゚ -゚)

( ・∀・)

( ´∀`)

 ピンク、赤、紫。
 3つの光が浮かぶ。


( ^ω^)「薔薇の月と真緋の火は紫水を速やかに巡り――」



475: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:25:47.70 ID:lw7MXe59O

ミセ*゚ー゚)リ

( ゚д゚ )

( ∵)

 次に、オレンジ、緑、黄色。


( ^ω^)「オレンジの樹と柊の黄金の実を黄土の上に根ざさん……」


ξ;゚听)ξ

(;'A`)


 誰も、口を挟めない。
 辺り一面が六色の光に彩られる。



479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:28:42.11 ID:lw7MXe59O

 内藤の声が、震え始めた。


( ^ω^)「――来たれ! ……今こそ、道は開かれた……っ!」


( +ω+)


 何よりも大きな青い光が溢れ出す。

 理事長の色。
 みんなを愛してくれた、理事長の色だ。


( ^ω^)「……七つの意志のもと、
       青金の陽光の満ちる学び舎の中央に……
       扉よ――」




( ^ω^)「――開け(ウェルカム)!!」



480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:30:48.75 ID:lw7MXe59O

 一際激しい、七色の光が扉を覆う。
 そして、一気に弾け飛び――

 バッジのもとへ、収束していった。




 数秒経って。
 内藤は、崩れ落ちた。

 扉の前でうずくまり、時折体を震わせる。
 悲痛な声が、喉から絞り出されていく。

( ;ω;)「――理事長……理事長……!」

ξ゚听)ξ「ブーン……」

 ツンとドクオが駆け寄り、内藤の背中に手を置いた。

('A`)「ブーン、お前はよくやった。
    ……聖徒会長として、頑張ったんだ」



486: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:32:42.21 ID:lw7MXe59O

( ;ω;)「うう、う……う……。
       ああ……り、りじちょ――」



      「やった! やったである! ぃいやっほーぅい!!」



( ;ω;)「――う?」

ξ゚听)ξ「あ?」

('A`)「は?」


 ばん、と大きな音を立てて扉が開く。

 ――扉の先の光景は、理事長室のそれとは明らかに違っていた。

 白い霧のようなものが一面に立ちこめているため
 果てがどうなっているかは見えないが、
 どこまでも続いていそうな程、広大な地。

 地面は固そうな土で、緑などは一切無い。
 耳を澄ますと、どこからか、さらさらという涼やかな音がする。
 恐らく川でもあるのだろう。



491: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:34:34.10 ID:lw7MXe59O

 で。
 一番の問題は。


(*ФωФ)「凄いである、さっすがホライゾン君!
       もー痺れちゃうであるぅうう!!」


 この、宙に浮かんではしゃぎまわる爺だ。

( うω;)

( ⊃ω∩)

( ^ω^)

(^ω^ )



495: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:35:44.41 ID:lw7MXe59O

川 ゚ -゚)「wwwwwwwwww」

( ・∀・)「wwwwwwwwww」

( ´∀`)「wwwwwwwwww」

( ゚д゚ )「wwwwwwwwww」

( ∵)[wwwwwwwwww]

( ´_ゝ`)「wwwwwwwwww」

∬´_ゝ`)「wwwwwwwwww」

ミセ;゚ー゚)リ「あ、あの、会長さん、どうして泣いていらしたんですか……?」

(^ω^ )

( ^ω^)

( ^ω^ )


(#^ω^)ξ#゚听)ξ(#'A`)「説明しろぉおおおおおおお!!!!!」


 聖徒会3人の絶叫は、校内中に響き渡ったという。



504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:37:53.41 ID:lw7MXe59O

( ФωФ)「いや、だから、我輩の命……。
       この理事長室に集めていた、数々のコレクション……」

ミセ*゚ー゚)リ「あれだけのオカルトグッズなら、代償となるに充分でしたね。
      少々勿体なかったですが」

(#^ω^)「それならそうと、はっきり言えお!」

ξ#゚听)ξ「っつーか、みんな分かってたわけ?」

(#'A`)「何、ドッキリの打ち合わせでもしてたのか!?」

川 ゚ -゚)「何十年の付き合いだと思ってる」

( ・∀・)「あれぐらい分かるさ」

<_フ;゚ー゚)フ「……兄者と姉者は」

( ´_ゝ`)「心読んだから知ってた」

∬´_ゝ`)「同じく」

(´<_`;)「だろうな」

l从・∀・ノ!リ人「?」

ノパ听)「?」

【+  】ゞ∩)「くそ……もらい泣きして損した……」



509: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:39:58.08 ID:lw7MXe59O

(#^ω^)「そもそも、それなら理事長室の中に入る必要なかったじゃないかお!」

( ФωФ)「コレクションにお別れ言いたくて……」

(#^ω^)「……ツン、浄霊開始するお」

ξ#゚听)ξ「分かったわ」

(#'A`)「俺も協力するぜ」

(;ФωФ)「うっわ生徒恐ぇ」


 緊張感の欠片も無くなった理事長室前。
 各自ぎゃあぎゃあと騒いでいる。

 ――そこに、新たな声が入り込んだ。



     「エクスト様」


<_プ−゚)フ「……!」


(´<_` )「――あ」



515: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:42:23.06 ID:lw7MXe59O


ζ(゚ー゚*ζ「お久しぶりです」


 出連デレ。

 内藤が繋げた大霊道。
 そこに立ち、にっこりと微笑んでいた。

<_プ−゚)フ「……」

 エクストは呆然とデレを見つめ。

 妹者から手を離して、ゆっくり、デレに歩み寄った。

<_プ−゚)フ「デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「やっと会えた。
      ずーっと、上から見てましたよ。
      霊道を繋げるって言うから、急いで来ました」

 デレはセーラー服姿で、エクストが生前見たままの若さであった。
 恥ずかしそうに、デレは言う。

ζ(゚ー゚*ζ「本当は、もうおばあちゃんなんですけど……。
      それじゃあエクスト様に気付いてもらえないかと思って、
      昔の格好になってみたんです」



519: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:44:23.91 ID:lw7MXe59O

<_プ−゚)フ「……」

ζ(゚、゚*ζ「きゃっ!」

 何も言えなくて。
 エクストは、デレを抱きしめた。

ζ(゚ー゚*ζ「……エクスト様……」

<_フ− )フ「……」

ζ(゚ー゚*ζ「……あれから、私、赤ちゃん産んで……。
      1人で、育てました。結婚しないで、エクスト様のこと、
      ずっと、待ってましたよ」

 名残惜しそうにしながらも、デレはエクストを押しやった。
 そして、ツンに笑いかける。

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは、私の曾孫ちゃん」

ξ゚听)ξ「……そっか、曾お祖母ちゃんだ」

ζ(^ー^*ζ「ふふ、可愛いなあ」

ξ゚听)ξ「ってことは、このガチクズは曾お祖父ちゃんだわ。やだ……」

(´<_` )「死にたい。死んでるけど死にたい」



525: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:46:24.04 ID:lw7MXe59O

l从・∀・*ノ!リ人「デレー!」

 妹者が、デレに向かって駆けていく。
 兄者と姉者と、それに続いた。

( ´_ゝ`)「久しぶり、デレさん」

∬´_ゝ`)「相変わらず可愛いわね」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは。姉者さんこそ、相変わらずお綺麗で」

 ――弟者は。
 ただ1人、霊道に踏み込むのを、躊躇っていた。

<_プー゚)フ「……弟者?」

(´<_` )「行けない」

l从・∀・ノ!リ人「どーしてなのじゃ?」

(´<_` )「……デレさんに、酷いこと、したから」

( ´_ゝ`)「……おと……」

ζ(゚ー゚*ζ「――おいで」

 俯く弟者に、デレは、手招きした。



528: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:48:34.91 ID:lw7MXe59O

ζ(゚ー゚*ζ「こっちで、みんなで話そう。
      今までのこと、みんなで全部話して、みんなで全部許そうよ」

(´<_` )「……デレさん」

ζ(゚ー゚*ζ「ね?」

(´<_` )「……」

ξ゚听)ξ「いってらっしゃい」

 ツンの手が、弟者の背中を叩いた。

ξ゚听)ξ「曾お祖父ちゃん」

(´<_` )「……ツン」

 ――ありがとう。

 小さな小さな声。
 それでも、ツンには聞こえていた。

ξ゚ー゚)ξ「ん」

 弟者の足が。
 境を、越える。



531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:50:33.16 ID:lw7MXe59O

ζ(゚ー゚*ζ「みんな、ありがとうございました。
      ――ホライゾン君、ドクオ君、うちの曾孫、よろしくね」

( ^ω^)「はいお!」

('A`)「乳揉みてえ……」

ξ#゚听)ξ≡⊃)A`)「口滑ったの! 口滑ったの!!」

 ゆっくり、ひとりでに。
 扉が閉まっていく。

l从・∀・ノ!リ人「ばいばーい、なのじゃ!」

∬´_ゝ`)「ご迷惑おかけしました」

(´<_` )「……それじゃあ」

( ´_ゝ`)「――ごめん。……ありがとう。
       最後の最後に、救われた」

 流石の面々が頭を下げる。
 そして――


<_プー゚)フ「ブーン! ツン! ドクオ! 理事長!」


 大きく手を振って、エクストが一人一人名前を言っていく。



536: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:52:42.12 ID:lw7MXe59O

<_プー゚)フ「あと他のみんな!」

川 ゚ -゚)「お前マジ待ってろよいつかそっち行ったらボッコボコにするからな」

(;・∀・)「どうどう」

<_プー゚)フ「今までありがとう!
       ――じゃあな!」

 内藤達は、顔を見合わせ。
 やれやれ、といった風に、笑った。

('A`)「いっつもうるさくて、飛び回ってて……騒がしかったけど、楽しかったよ」

ξ゚听)ξ「ふん。……こっちこそ、ありがとう」

( ФωФ)「それと、『じゃあな』じゃないであろう」

( ^ω^)「『またね』、だお、エクスト」

<_プー゚)フ「……それもそうだ。
       みんな、またなー!!」



 そして。
 扉が、閉まる。



540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/11/21(日) 02:54:38.35 ID:lw7MXe59O





 生命と怪奇が共存する学校で。

 過去から巡った、この事件。

 聖徒会最大の事件は、こうして、幕を下ろした。










最終話:七大不思議と生と怪



終わり



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