( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:13:07.87 ID:472FErhKQ


    『可哀相にね。落ちこぼればっかり』

    『たしか、一度与えられたトナカイは死ぬまで変えられないんだっけか』

    『そうそう。トナカイが死んだり逃げたりしない限りね』

    『ま、あいつ自身も落ちこぼれだし、いいんじゃないの』

    『言えてる言えてる』



 くすくす笑う声も、じろじろ眺めてくる目も、
 雪のように、ひどく冷たかった。


    「……」





*****



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:17:19.13 ID:472FErhKQ



( ´_ゝ`)「明日はクリスマスだな、弟者」

(´<_` )「そうだな」

( ´_ゝ`)「俺が何を言いたいか分かるか?」

(´<_` )「知らん」

(#´_ゝ`)「エクスト様にプレゼント用意すんだろうがよ!!」

(´<_`;)「本気で怒られた!」

(#´_ゝ`)「妹者にもな!!!!!」

(´<_`;)「うん……で、何あげんの」

( ´_ゝ`)「妹者はともかく、エクスト様にあげるものの方向性は大体決まっている」

(´<_` )「ふーん。ところでそのプレゼントってさ、
       『デ』で始まって『レ』で終わるものと関係ある?」

( ´_ゝ`)「流石だな弟者、大正解だ」

(´<_` )「却下」

(;´_ゝ`)「おまっ……え、まだデレさんに執着してんの……。
       もう諦めろよ、エクスト様に譲れよ」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:21:15.11 ID:472FErhKQ

(´<_` )「やだ」

(;´_ゝ`)「気持ち悪い、弟者気持ち悪いよ……」

(´<_` )「あとツンをブーンにやるのも嫌だ」

(;´_ゝ`)「曾祖父馬鹿かよ……この弟どうしようもないよ……」

( ФωФ)「おーい、兄者君やーい」

(´<_` )「あ、理事長」

( ФωФ)「おお、弟者君も一緒か。――さて兄者君、例のブツだが」

( ´_ゝ`)「来たか!」

( ФωФ)⊃。「ほれ」

(*´_ゝ`)「うっひょう!!」

(´<_` )「何だ、それ」

( ´_ゝ`)「指輪だ。見て分からんか」

(´<_` )「それは分かるが……」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:25:01.01 ID:472FErhKQ

( ФωФ)「兄者君に、用意するように頼まれたのである。
       1ヶ月間雑用を頑張った報酬として」

(´<_` )「最近やけに色々手伝ってるかと思えば、そういうことだったのか。
       で、その指輪どうするんだ?」

( ´_ゝ`)「エクスト様に、『デレさんに贈ってやれ』と渡すつもりだが」

(´<_` )

(;´_ゝ`)「ひぃいいっ凶悪な念が!!」





     ( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです





番外編:むっちりサンタとがっかりトナカイ



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:28:45.64 ID:472FErhKQ



 女性がいた。
 すこし癖っ毛の金髪を風に揺らして、女性は腕を組み、校舎を見上げていた。

ハハ#ロ -ロ)ハ「ガッ」

 赤いタートルネック。ばいんと出た胸。
 赤いジーパン。ぷりんとした尻。
 むっちりした太腿、膝から下は黒いブーツに覆われている。
 黒縁の眼鏡が、日光をきらりと反射した。

ハハ#ロ -ロ)ハ「デム!」

 桜色のリップに彩られた唇から出たのは、粗雑な言葉。

ハハ#ロ -ロ)ハ「シィイット! ファック! あああああああ!!
      あのファッキントナカイ共、舐めくさりやがって!
      糞が! 糞め! 燃やしてやろうかぁあああああ!!」

 ひとしきり喚き散らし――女性は、昇降口を通り抜け、校内へと侵入した。



 現在、12月24日の、午前7時。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:32:21.01 ID:472FErhKQ



 ――クリスマスイブ。
 町は主に緑と赤の装飾に塗れ、定番のクリスマスソングで溢れている。
 カップルは恋人との甘い一時を思い描き、
 子供は御馳走やプレゼントを心待ちにする。

 わくわく、沸き上がる気持ち。
 皆の顔には微笑みが浮かぶ。

 クリスマスイブ。
 何事も、本番より一歩手前の方がどきどきするものだ。



(゚A゚)「12月24日? 12月25日? は? ただの年末だろ? は? 何? 
    他に何かあんの? は? え? みんな年始に向けて忙しくて大変だよね? ね?」

(;^ω^)「ドクオ……」


 午後1時。
 つい先日冬休みを迎えたVIP高校の2年生、そして聖徒会長である内藤ホライゾン。
 内藤の幼馴染み、聖徒会副会長兼書記の鬱田ドクオ。
 彼らは、2人で商店街を並んで歩いていた。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:35:16.54 ID:472FErhKQ

 楽しげな雰囲気に包まれている町。
 スピーカーから聞こえてくるクリスマスソング。
 そんな中で、どす黒い空気を放つドクオ。

 内藤は困ったように頬を掻いて、「まあまあ」とドクオに笑いかけた。

(;^ω^)「何も、恋人達のためだけな日じゃないお。
       恋人がいないと楽しめないなら、僕だって――」

(゚A゚)「お前と俺じゃあ! 土台が! 違うの!!」

(;^ω^)「ええぇ」

(゚A゚)「あのね! お前がその気になればね! 今すぐにでも彼女出来んだよ!
    イニシャルT・Dの彼女が!!」

(;^ω^)「何かピンポイント……あとドクオそろそろ顔戻せお」

(#'A`)「あーあーあー。鬱だ。鬱鬱。
    帰りたい。プレゼントなんかどうでもいい」

(;^ω^)「こらこら」

('A`)「ツンへのプレゼントなんざ、ミルナ縛って突き出しゃ充分だっつの……」

(;^ω^)「ミルナ君が可哀相だお」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:38:54.82 ID:472FErhKQ

 ――明日、クリスマス当日の夜、教会に鬱紫寺と出連神社の者が集い、
 クリスマスパーティーが開催される。

 内藤家、鬱田家、出連家は家族ぐるみで仲が良い。
 なので、パーティーとは名ばかりで、実際はただ食べて飲んで騒ぐだけだ。
 主に親や祖父母の方が。

 子供達3人は、大抵内藤の部屋でお菓子とジュースを飲み食いしながら
 ゲームや雑談、冬休みの課題をして過ごす。

 もはや毎年恒例の光景だ。


 今、内藤とドクオは、出連神社の娘へ贈るプレゼントを選ぶため、
 近所の商店街へやって来ていた。
 目指す場所は、商店街の中でも大きな雑貨屋である。


('A`)「っつーか金が無いんだよ金が……」

( ^ω^)「ツンは何だかんだ言ってプレゼントより気持ちを喜ぶタイプだから、
       無理に高価なものにすることもないお。
       なんなら、僕が半分出すし」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:41:52.53 ID:472FErhKQ

('A`)「あんがと……ううう、寒い。
    ……そういや教会は何かやんの?」

( ^ω^)「明日、色々やるお。子供達や近所の人を集めてケーキ作りとか、
       プレゼント交換とか……ミサもやるし、
       エクストも来てくれるらしいお」

('A`)「あー……エクスト。楽しそうだな」

( ^ω^)「ドクオも来るといいお。ツンは美少年漁りのために来るって」

('A`)「本当の目的は別にあると思うが……。
    まあ行くけどよ。どうせ夜には教会に集まるんだし」

(*^ω^)「おっおっ、楽しみだお」

('A`)「あーあ、やっぱり今年もブーンの家で一晩明かすのかね」

(;^ω^)「毎年毎年大人がみんな酔い潰れるんだおね……」

('A`)「そのおかげで俺もツンも足止め食うからな……」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:44:25.57 ID:472FErhKQ

( ^ω^)「そうだ……お……?」

 ――2人の会話が、途切れた。

 硬質な音が断続的に耳へ入ってきたからだ。
 がきん、がきん、という、そう、「アスファルトに石を叩きつけるような」。

(;^ω^)「……って、このパターンは――」

 音がすぐそこまで近付き、途切れた。
 次いで、ひゅん、と空気を掠る音がして――

Σ ( ∵) そ シターン

(;'A`)「うぉああああああっ!?」

 突然2人の目の前に着地したものがあった。
 どうやら後方から内藤達を飛び越えてきたらしい。

 そんな芸当を仕出かしたのは、人の形をしておきながら人ではない、

(;^ω^)「ビコーズ!?」

 ――「走る二宮尊徳像」、ビコーズ。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:48:36.09 ID:472FErhKQ

 彼は自分と同じく石で出来ている本を広げ、そこに文字を浮かび上がらせた。

( ∵)[乗って、2人共。学校まで飛ばすよ]

 ビコーズが背中を向ける。
 そこには、椅子のような形になった薪――これも石製――がある。

 内藤とドクオは、顔を見合わせた。







 ビコーズに運ばれて学校に到着すると、すぐに聖徒会室に引っ張られた。
 そこに居たのは、

ξ゚听)ξ「来たわね」

 先に内藤達の話題となっていた出連神社の娘にして聖徒会副会長兼会計、出連ツンと、

<_プー゚)フ「ういっす!」

 彼女の頭に乗っかっている、丸っこい典型的な人魂の形をした霊、エクスト。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:51:25.31 ID:472FErhKQ

 そして、「七大不思議」の面々。

川 ゚ -゚)「よう」

 「男子トイレのクールさん」こと、素直クール。
 冬だというのに、上着は全開、素肌丸出しである姿は変わらない。

(-@∀@)「数日ぶりだね」

 怪人赤マント仮面、モララー。
 赤いマントを纏い、レンズの厚い妙な眼鏡をかけた美青年。

( ´∀`)「モナモナ」

 音楽室の動く肖像、音楽家モナー。
 額縁から上半身を乗り出させ、手持ち無沙汰に指揮棒をいじくっている。

ミセ*゚ー゚)リ「会長さん、ドクオさん、こんにちは」

 保健室の鏡の中の少女、ミセリ。
 10歳になるかならないかくらいの幼い少女は、鏡の中で、ぺこりと頭を下げた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:54:18.73 ID:472FErhKQ

( ゚д゚ )「ツン、放せ」

 体育館に住み着いた霊、ミルナ。
 ミセリと同年代らしき少年は、自らを抱きしめるツンを睨みつける。

( ФωФ)「会いたかったである。まずは――」

 幽霊にしてVIP高校の理事長、杉浦ロマネスク。
 小柄な強面の老人は振り返り、後ろに立つ女性を手で示した。

( ФωФ)「彼女の話を聞いてやってくれ」


ハハ ロ -ロ)ハ「ドウモ、ハジメマシテ……ハローと申しマス」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:57:53.70 ID:472FErhKQ



 ――私立VIP高校。
 南のヴィップ教会、北東の鬱紫寺、北西の出連神社に囲まれたこの学校は、
 特殊な立地条件故、霊や物の怪のような怪異に満ち溢れている。

 その中でも強い力を持ち、学校を守っているのが、理事長達「七大不思議」。

 そして七大不思議を統べているのが、聖徒会会長にしてヴィップ教会の息子である、

( ^ω^)

 この内藤ホライゾンなのだ。



( ^ω^)「――トナカイ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ハイ……」

(*'A`)(この人おっぱいでけえ)

 ハローと名乗る女性から話を聞いた内藤は、耳を疑った。

ハハ ロ -ロ)ハ『トナカイが、いなくなってしまったのです』

 こんなことを言われれば、それも当然か。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 20:59:29.71 ID:472FErhKQ

(;^ω^)「いまいち理解出来ないんですが」

ハハ ロ -ロ)ハ「――全て、ワタシが悪いのデス」

 沈んだ声で、ハローが言う。
 俯いてしまった彼女を前に、内藤は何と励まそうか考え込んだ。

 が、間もなくしてハローは顔を上げ、口を開く。

ハハ ロ -ロ)ハ「スミマセン、そういえば、まだオ2人のオ名前を聞いていませんデシタ」

 片言の言葉。イントネーションに若干の違和感がある。
 他国の人らしい。

(;^ω^)「えっと……内藤ホライゾンですお。あだ名はブーン……」

(*'A`)「鬱田ドクオです!!」

 ハローは、ちろりと内藤とドクオを見て、

(;^ω^)「お?」

 内藤の前に進み出た。

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

 女性にしては背が高く、内藤に僅かに勝る程。
 内藤の顔をじろじろ眺め回すハローに、内藤は気後れする。



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:02:56.99 ID:472FErhKQ

(;^ω^)「な、何ですかお」

ハハ ロ -ロ)ハ「クリスチャン?」

(;^ω^)「え……まあ、一応」

ハハ ロ -ロ)ハ「やっぱり。傍にいるト、心地イイ……」

 言って、ハローは笑った。
 眼鏡の奥で細めた目は、綺麗な青色をしていた。

 ぽっと内藤の顔が赤らむ。

(;*^ω^)「あ……」

ξ#゚听)ξ「近い!!」

 そこへ割り込み、ツンが2人を引き離した。
 嫉妬丸出しだが、鈍い内藤は気付かない。

('A`)「そんで……トナカイってのは、あの、動物のトナカイ?」

 ドクオが話を戻す。
 頷いたハローの隣に浮かび、理事長は言った。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:07:22.95 ID:472FErhKQ

( ФωФ)「――ハロー君はな」

 続いて紡がれた言葉に、内藤とドクオは再び耳を疑うこととなる。


( ФωФ)「サンタクロースの見習いらしい」


( ^ω^)('A`)「……は?」





 ――何でも、サンタクロースにはたくさんの部下がいて、
 クリスマスイブの日に、各自決められた地区にプレゼントを運びに行くのだという。

 その仕事を与えられるのは訓練を積んだ者だけで、
 ハローは現在訓練中の新人なのだそうだ。


(;'A`)「……あんまり信じられない話だな」

(;^ω^)「でも絶対に無いとは言い切れないおね」

 2人が首を捻る。
 七大不思議やツン達は既に事情を聞いていたらしく、黙って内藤達を眺めていた。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:10:26.84 ID:472FErhKQ

ハハ ロ -ロ)ハ「信じられナイならそれでも構いまセン。
      サンタクロースは、幼い子供にダケ信じられているものですカラ」

('A`)「……そう、それだよ、それ」

ハハ ロ -ロ)ハ「ドレ?」

('A`)「子供の枕元に置かれたプレゼントってのは、実際は親が用意したもんだろ?
    なら、プレゼントを運んでくるサンタってのは物語の中だけの話じゃ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「ノーノー。ワタシ達が運ぶプレゼントは、物じゃありまセン」

( ^ω^)「物じゃない?」

ハハ ロ -ロ)ハ「願いを、叶えてアゲるのデス。
      あれがしたいトカ、こうなりたいトカ、ソウいう……。
      ンン、願いを叶えるというノハ違いますネ。ナンと言いマスか。
      願いヲ叶えるタメの運やチカラをアップさせるのデス」

('A`)「へえ……」

ハハ ロ -ロ)ハ「モチロン全てのコドモにプレゼントをアゲるのではありまセンよ。
      いいコか、悪いコか判断してカラ、いいコにだけアゲるのデス」


36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:13:55.11 ID:472FErhKQ

('A`)「なるほど。――じゃあ、さっき言ってたトナカイってのは、
    サンタを運ぶトナカイなんだな」

ハハ ロ -ロ)ハ

 ドクオの言葉に。
 ハローが、表情を冷たいものに変えた。

(;'A`)「え?」

(;^ω^)「ハローさん……?」

 ふるふると体を震わせて、唇を噛む。
 顔がみるみる赤くなって――



ハハ#ロ -ロ)ハ「ファアアアアアアアアック!!!!!」



 突然、怒鳴り出した。


(;゚ω゚)(;゚A゚)「えええええええええええええええ!!!!!」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:17:26.14 ID:472FErhKQ

ハハ#ロ -ロ)ハ「それだよ! それなんだよ!!
      アイツら逃げ出しやがったんだ!!
      畜生! クソッ! ナメやがってえええええええ!!」

(;゚ω゚)「ハハハハハハローさんどうしたんですかお!?
      しかも急に言葉が流暢に!!」

ξ;゚听)ξ「あーあ」

<_プー゚)フ「またご乱心タイムが始まった」

(;'A`)「ご乱心!?」

(-@∀@)「少々二重人格のケがあるようだよ、彼女」

ハハ#ロ -ロ)ハ「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!
      あのトナカイ共見付けたらツノ引っこ抜いてやる!!」

(;゚ω゚)「恐い! ハローさん恐い!!」





 ――かくして、内藤とドクオが事情を全て聞き終えたのは、
 ご乱心タイムが発動してから30分後のことであった。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:20:48.42 ID:472FErhKQ



( ^ω^)「要するに……」

('A`)「ハローさん達『サンタ見習い』は、
    それぞれ8頭ずつトナカイを与えられていて」

( ^ω^)「彼らをしっかり仕付けることが、最も重要な訓練で」

('A`)「今夜、『見習い』はその成果を見せる最終試験をすると」

( ^ω^)「ハローさんも今夜試験を受けるために、この町に来たと」

('A`)「だけど今朝、そのトナカイ達がハローさんのもとから逃げ出し、
    この学校に入り込んだ」

( ^ω^)「トナカイを追いかけに来たハローさんが学校に侵入して……
       理事長達と遭遇し、彼らに助けを求めた。
       これでいいですかお?」

ハハ ロ -ロ)ハ「イエス! パーフェクト! 説明オツ」

(;^ω^)(;'A`)(誰のせいで……)



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:23:30.16 ID:472FErhKQ

( ФωФ)「しかし、皆で探してもトナカイがなかなか見付からなくてな。
       人手を増やすため、ホライゾン君達を呼んだ次第である」

( ∵)[それで僕がブーンとドクオを運んだんだ]

('A`)「はあ……なるほど」

ξ゚听)ξ「私のところには赤マントが来たわ。トイレから」

(;^ω^)「トイレ!?」

(-@∀@)「我々トイレに住むお化けは、トイレを移動手段に出来るんだ。
      今回は学校のトイレと出連神社のトイレを繋げたのさ」

ξ#゚听)ξ「年頃の乙女をトイレに引きずり込むなんて最低よね」

川 ゚ -゚)「ちなみに私はドクオの家のトイレに行ったぞ。
     私ならドクオもおとなしくついてくるだろうと思ってな」

(*'A`)「ええええっ! クーさん俺の家に来たんスか!?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:26:42.11 ID:472FErhKQ

川 ゚ -゚)「うむ。母上に、ドクオはお出かけ中だと言われたから諦めて帰ってきたが」

(*'A`)「今日から便座カバー抱いて寝よう」

<_プー゚)フ「割と本気で気持ち悪いなドクオ!」



ハハ#ロ -ロ)ハ「――んなこたぁどうでもいいからさっさとトナカイ探せ糞共ぉおおおおお!!」

(;^ω^)(;'A`)ξ;゚听)ξミセ;゚ー゚)リ「サー、イエッサー!!」(@∀@-;)(;゚д゚ )(ФωФ;)



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:31:07.06 ID:472FErhKQ



 ひとまず、手分けをして探す方向で話が決まる。
 内藤、ドクオがハローと行動を共にすることになった。

ハハ ロ -ロ)ハ「――ソウイエバ、ぶーんサン達にはまだ言ってまセンでしたネ。
      トナカイは、もしものときのために装飾品へと変身出来マス。
      多分、今も変身しているカト」

('A`)「たしかに、トナカイのままじゃ目立っちまうからな」

ハハ ロ -ロ)ハ「エエ。……気配はするから、学校の中にいるのは確かなんデスが……」

('A`)「校内にいるとはいえ8頭か……大変だな」

ハハ ロ -ロ)ハ「ア、ノーノー。探すノハ6頭デス」

( ^ω^)「あとの2頭は?」

ハハ ロ -ロ)ハ「1頭は残ってくれまシタ。
      もう1頭はノロマさんなノデ、スグに捕まえられたんデス」

 言って、ハローは履いているブーツを指差した。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:34:26.93 ID:472FErhKQ

(;'A`)「えっ……このブーツがトナカイなのか?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ハイ。
      あ、ワタシが歩いテモ、彼らに痛みはナイデスヨ。アシカラズ」

(;^ω^)「へえぇ……。
       どこからどう見ても普通のブーツだお」

ハハ ロ -ロ)ハ「見た目はフツーだカラ、タイヘンなんデス。
      チョット見たダケじゃ、まず気付きまセン」

('A`)「そういや、他の奴は何に変身するんだ?」

ハハ ロ -ロ)ハ「2頭ガ手袋に、2頭ガ靴下に、2頭ガ指輪になりマス」

('A`)「ふむふむ」

ハハ ロ -ロ)ハ「それで……ヒジョウにヤッカイなのが、指輪のコ達なんデス――」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:37:12.95 ID:472FErhKQ




(´<_` )「お、ツンだ」

( ´_ゝ`)「エクスト様」

∬´_ゝ`)「どうしたの、みんなして」

l从・∀・*ノ!リ人「のじゃのじゃ」

ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは」

<_プー゚)フ「よう!」

ξ゚听)ξ「よしよし、揃ってるわね」

(-@∀@)「ちょっといいかな、みんな」

 理事長室――否、元理事長室。
 今は、霊があの世とこの世を自由に行き来できる大霊道になっている。

 その入口の辺りで駄弁っていた5人の幽霊に、ツンとエクスト、モララーは声をかけた。
 少しでも人手を増やそうというつもりらしい。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:40:37.31 ID:472FErhKQ


( ´_ゝ`)「――ふむ。サンタか」

(´<_` )「奇妙なこともあるもんだ」

 そっくりな双子、流石兄者と流石弟者。

∬´_ゝ`)「で、私達に手伝えって?」

l从・∀・ノ!リ人「さんたさんって何じゃ?」

∬´_ゝ`)「……そういや、うちじゃクリスマスなんて関係なかったわね。
      妹者は知らないか」

ζ(゚ー゚*ζ「エクスト様なら詳しいかな」

 兄者達の姉、流石姉者に、末っ子の妹者。
 エクストに微笑みを向ける、出連デレ。

l从・∀・ノ!リ人「さんたさんって?」

<_プー゚)フ「要するに、いい子にプレゼントくれる人だ」

l从・∀・*ノ!リ人「! さんたさん! 妹者のところにも来てくれるかのう」

ξ゚听)ξ「幽霊には来nむぐぐ」

 ばっさり切り捨てかけたツンの口をモララーが塞ぐ。
 子供の夢を壊すのは良くない。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:43:21.81 ID:472FErhKQ

 エクストが「手伝ってくれるか」と問うと、

(´<_` )「ま、他ならぬ曾孫とエクソシスト様の頼みだ」

∬´_ゝ`)「行ってやろうじゃない」

l从・∀・ノ!リ人「のじゃ!」

ζ(゚ー゚*ζ「頑張ります!」

( ´_ゝ`)「……ごめん、俺は行けないな」

 兄者を除いた4人が、立ち上がり、廊下へ出た。
 ――兄者は霊道を出れば、悪霊を引き寄せてしまう恐れがある。
 悔しそうな顔をして、兄者は手を振った。

<_プー゚)フ「そーだなあ……ツン、携帯あるか?
       あったら、兄者に貸してやってくれ」

ξ゚听)ξ「――ああ……、うん、いいわよ」

(-@∀@)「なるほどね」

( ´_ゝ`)「……分かった、ありがとう」

 ポケットから携帯電話を取り出し、ツンは兄者へ手渡した。
 人の心が読める「サトリ」の力を持つ兄者は、その意図を理解し、礼を言う。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:46:25.41 ID:472FErhKQ

 1人だけ何も出来ずに落ち込む兄者へ、エクストは役割を与えたのだ。
 理事長室の近くで何か見付けたら、携帯電話で誰かへ連絡しろ、と。

<_プー゚)フ「よろしくな!」

( ´_ゝ`)「任せてくれ」

∬´_ゝ`)「さてと……トナカイってのは、装飾品になってるんだって?」

(-@∀@)「そうらしい。たとえば――」

 頷いたモララーが、あるものに目を留めた。
 兄者の足元にある、赤い石が付いた指輪。
 それを拾い上げる。

(-@∀@)「こんな指輪だそうだ。はは、案外、これがそうだったりしてね」

(´<_`;)「!? おい、それ……!」

 弟者の肝が、ひやりとした。
 その指輪は兄者がエクストのために用意したものではないか。
 今それが見付かってしまえば、兄者の気遣いが無駄になる。

 しかし、指輪を奪おうとした弟者を、兄者が小声で制止した。

( ´_ゝ`)「弟者、それは違う」

(´<_`;)「へ?」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:48:30.59 ID:472FErhKQ

( ´_ゝ`)「色が違う。俺が用意したのは、青色だ」

(´<_`;)「いや、じゃあ、あれは――」

ξ゚听)ξ「誰の指輪? ……綺麗な色ね」

 持ち主不明の指輪はツンの手に渡る。
 何気なく、ツンは、それに指を通した。

ζ(゚ー゚*ζ「似合ってるよ、ツン」

ξ*゚听)ξ「……む」

∬´_ゝ`)「ぴったりね」

 何やら和やかな雰囲気に包まれる一帯。

 ――そのとき、兄者が気付いた。

(;´_ゝ`)「あれ? ……おいおい、ちょっと待て」

l从・∀・ノ!リ人「どうしたのじゃ?」

(;´_ゝ`)「その指輪、まさか――」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:51:18.83 ID:472FErhKQ


    『――ブーン』


 そこへ響く、この場に居る誰のものでもない声。


ξ゚听)ξ∩『ブーン、ブーン』


 指輪から聞こえる、声。


(;-@∀@)「指輪が……っ!?」

ζ(゚ー゚;ζ「喋った!」

<_プー゚)フ「すげえシュール」

ξ;゚听)ξ「ちょっ! な、何こいつ!」

 外そうとするが、指輪はぴったり嵌まったまま離れようとしない。
 なおも「ブーン、ブーン」と呟き続ける。

 かと思えば、台詞が僅かな変化を見せた。



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:54:38.41 ID:472FErhKQ


ξ;゚听)ξ∩『ブーン、好き、言いたい』


∬´_ゝ`)ζ(゚ー゚*ζl从・∀・ノ!リ人

ξ;゚听)ξ

ξ;*゚听)ξ


 ――皆が、気付いた。
 指輪の言う「ブーン」とは、内藤ホライゾンのことだと。
 そして、ツンの気持ちを代弁しているのだと。


ξ;*//д/)ξ「ひぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 絶叫。
 頭を抱えて、ツンはうずくまった。

 辺りに広がるツンの叫び声、指輪の呟き。
 ――携帯電話の着信音。



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 21:57:07.92 ID:472FErhKQ

(;´_ゝ`)「おわっ!?」

 兄者が持つツンの携帯電話が鳴り響いている。
 画面には「ブーン」の文字。

(;´_ゝ`)(……あれ、これどうすりゃいいの?)

 兄者が固まる。

 内藤から電話が掛かってきているのは分かった。
 だが、どうすれば出られるのか分からない。
 彼が生きていた80年前には、こんなもの、なかったのだ。

 とりあえず適当にボタンを押していく。
 すると、偶然にも通話へ繋ぐことが出来た。
 ご丁寧にスピーカー状態で。


      『――もしもし、ツンかお?』

∬´_ゝ`)「あら、会長君の声ね」

ξ;*゚听)ξ「え……」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:01:12.19 ID:472FErhKQ

(;´_ゝ`)「あ、あー、ツンじゃない、俺だ」

      『あれ、兄者かお』

( ´_ゝ`)「ツンに代わるか。つっても、何か周りにもばっちり聞こえてるんだが」

      『スピーカーになってるんじゃないかお? 
       まあ、それならそのままでいいけど。
       ――ツン、今、トナカイについてハローさんから聞いたんだお。
       ハローさんが言うには、「指輪」に気を付けろって』

 全員の視線がツンの手元に向く。
 指輪だ。

      『何でも、トナカイには特別な役割を持つのが2頭いて、
       その2頭がそれぞれ指輪に変身するんだお。
       それで……片方のトナカイが、
       対象の子供が「いい子」なのか「悪い子」なのか判断するらしいお』

<_プー゚)フ「……もう片方は?」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:04:43.11 ID:472FErhKQ

      『もう片方は、その人の欲しいものや願いごとを調べるとか――』

Σξ;゚听)ξ∩『ブーン、言いたい、好き』

      『おっ? 誰か僕を呼んだかお?』

ξ;*゚д゚)ξ「なぁあああああんでもなぃいいいいいいい!!!!!!」

      『!?』

ξ;*゚д゚)ξ「切って! 電話! 切って!!」

(;´_ゝ`)「え、待って、どれ? どれ押すの?」

ξ;//д/)ξ「右! 上から二番目ぇええええええ!!」

 指示通り、通話を切る。

 叫びすぎて酸欠に陥ったらしく、ツンは床に突っ伏し、
 ぜえぜえと荒い呼吸を整えた。

(-@∀@)「……まあ……これがトナカイだと判明したね」

ξ#゚皿゚)ξ「……ぶっ壊してやる!」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:08:02.13 ID:472FErhKQ

 復活したツンは、凄まじい形相で怒号を飛ばした。
 ペンチを持ってこいとエクストに命令する。

 すると。

ξ#゚皿゚)ξ∩『――それは困るわぁ』

 帽子が、自らの意思を言葉にした。

(´<_`;)「うおっ!?」

 そしてツンの指からすっぽ抜けたかと思うと、向かい側、弟者の指に入り込む。
 サイズを自由に変えられるのか、先程ツンの指にぴったりだった指輪は、
 弟者の指にも難無くフィットした。

∩(´<_`;)『――デレさん、デレさん』

(´<_`;)「こいつっ……!!」

l从・∀・ノ!リ人「デレはもうエクスト様のなのじゃ」

ζ(/、//*ζ「こ、こら妹者ちゃん!」

∩( <_  )『死にたい』

(;´_ゝ`)「願いごと変わった!!」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:12:09.59 ID:472FErhKQ

 さらに、指輪は弟者から離れデレへと移動した。
 妹者の発言に照れていたデレは、避けそこなってしまう。

ζ(>、<;ζ「きゃっ」

∩ζ(゚ー゚;ζ『エクスト様、エクスト様と一緒にいたい』

∬´_ゝ`)「ですって」

<_フ*>−<)フ「ハズカシイ」

( <_::;;,,. サラサラ…

l从・∀・;ノ!リ人「ちっちゃい兄者ぁああああああああ」

(-@∀@)「んー、どうにかしないと色々面倒だね、これは」

ξ#゚听)ξ「指輪になってようがトナカイよ! 燃やしなさい、赤マント!」

 指輪を指差し、ツンが不穏なことを口にした――そのとき。

∩ζ(゚、゚*;ζ『……嫌ぁね。乱暴』

 どこか艶めかしい声で。
 そう言って、指輪は浮かび上がった。



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:16:40.73 ID:472FErhKQ



ノパ听)「俺は構わないぞ!」

N| "゚'` {"゚`lリ「仕方ないな」

|゚ノ ^∀^)「協力いたしますわ」

 クールの住み処、男子トイレ。
 そこに集まって雑談していた男女。

 クールの妹である素直ヒート、
 「女子トイレの阿部さん」こと阿部高和、
 「廊下を走るテケテケ」、レモナ。

 隣町の、既に廃校となったシベリア中学校の「元」七不思議達だ。
 夏に起きた事件をきっかけに、今はVIP高校で暮らしている。

川 ゚ -゚)「うむ、ありがとう」

( ´∀`)「助かるモナ」

 彼らに協力を要請したクールとモナーに、3人は了承の意を伝えた。



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:20:14.68 ID:472FErhKQ

N| "゚'` {"゚`lリ「で、探すのは靴下と……」

|゚ノ ^∀^)「手袋、指輪でよろしいですね」

ノパ听)「すぐに見付けてやるぞ!」

N| "゚'` {"゚`lリ「トナカイか……当然、雄もいるんだよな」

( ´∀`)「君は何をするつもりモナ……」

|゚ノ ^∀^)「聞かない方が良いですわね」









lw´‐ _‐ノv「めんどいけど、ミルナが言うなら頑張るよ」

( ゚д゚ )「ん、ありがとな」

 家庭科室。
 そこを住み処としているシュールに、ミルナとミセリは協力を仰いだ。
 ツンと同類――所謂ショタコンなシュールは、あっさりと承諾する。

 シュールもまた、シベリア中学校に居た七不思議の1人だ。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:23:25.49 ID:472FErhKQ

ミセ;゚ー゚)リ「……シュールさん」

lw´‐ _‐ノv「んー?」

ミセ;゚ー゚)リ「何をなさってるんですか?」

 問い掛けるミセリの視線の先、シュール。
 彼女は炊飯ジャーを抱え、しゃもじで飯を掬っては口へ運んでいた。

lw´‐ _‐ノv「米食ってる」

(;゚д゚ )「そういうことが聞きたいんじゃないだろ」

lw´‐ _‐ノv「炊きたての米食ってる」

ミセ;゚ー゚)リ「……美味しいですか」

lw´‐ _‐ノv「うむ」

 ぱちん、ジャーの蓋を閉める。
 指に付いた米粒を唇で挟み、シュールは立ち上がった。

lw´‐ _‐ノv「さ、行くぞロリショタ共――」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:26:44.78 ID:472FErhKQ



 ――その頃、人のいない美術室で、1人の幽霊がぶるぶると体を震わせていた。

【+; 】ゞ ) サムイサムイサムイサムイ

 シベリア中七不思議が1人、死んだ美術教師の霊、棺桶死オサム。
 十字のマークが入った仮面を装着している厨二病真っ盛りな享年35歳の彼は、
 寒さに滅法弱かった。

 黒いスーツだけでは、彼の体を冷えた空気から守れない。
 さらに、美術室の暖房は壊れてしまっている。

 別の教室に行けばいいようなものだが、彼は美術室という空間がとても好きなのだ。

【+; 】ゞ )「寒い寒い……シュールにマフラー作ってもらおう……。
        手袋もいいな……靴下……どてら……」

 ぶつぶつ呟きながら、ぎょろりと目を動かした。
 そして――あるものを、見付ける。

【+; 】ゞ゚)「……あ?」

 机の上に並んだ灰色の靴下、一足分。
 生徒の忘れ物だろうかと、オサムが拾い上げる。



81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:29:20.10 ID:472FErhKQ

【+  】ゞ゚)「もふもふだ」

 今まさに自分が求めていたもの。
 もこもこ、厚手で柔らか。
 身につけたら、どれほど気持ちいいだろう。

【+  】ゞ゚)「……」

 人のものを勝手に使うのは気が引ける。
 だが――どうにも、「着けたい」という欲求が離れてくれない。

 逡巡して、結局、オサムは靴下を両足に通した。

【+* 】ゞ゚)「おうふ」

 温かい。
 まるで、誰かが直前まで着けていたかのようだ。

【+* 】ゞ゚)「あったけー。いいな、これ……」

 靴下を気に入ったか、オサムが微笑む。
 何の疑問も持たずに。

 ――「何の疑問も持たない」という点こそ、疑うべきだった。
 だが、もう遅い。



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:32:35.72 ID:472FErhKQ

【+* 】ゞ゚)「ああ……靴下の中、とってもあったかい……」

 恍惚とした表情を浮かべるオサム。

 唐突に、彼は弾かれたように立ち上がった。

【+  】ゞ゚)「へ?」

 自らの意思など関係なく、彼の足が動き始める。

【+; 】ゞ゚)「ちょっ、ちょっ……!」

 勝手に歩く足。
 教室の出入口まで来ると、

【+; 】ゞ゚)「――おいぃいいいっ!?」

 そのドアを、蹴破った。

 一瞬の間。
 それから。

【+; 】ゞ゚)「いっ」

【+; 】ゞ゚)「ぃいやあああああああああああああああああ!!!!!」

 彼の足は、猛スピードで駆け出した。



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:35:24.23 ID:472FErhKQ



( ФωФ)「どこにいるのであろうなあ」

( ∵)[皆目見当もつきませんね、居場所]

( ФωФ)「シベリア中のメンバーにも手伝ってもらうとするか」

( ∵)[じゃあ美術室が近いし、まずはオサムに……]

 のんびり廊下を歩くビコーズと、ふわふわ浮遊する理事長。
 彼らが一先ずオサムのもとへ行こうと決めた、瞬間。


【+; 】ゞ゚)「ぁぁあああああああああああああぁぁぁ――……!!」


 2人の目の前を、オサムが駆け抜けていった。

( ФωФ)

( ∵)

( ФωФ)「何事」

(;∵)[とりあえず追いましょう!]



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:39:14.63 ID:472FErhKQ

 ビコーズが、オサムを追い掛けるために直ぐさま体勢を整える。
 その肩に理事長がしがみついた。
 一瞬の間をおいて、ビコーズは踏み切る。

( ФωФ)「オサム君やーい!」

(;∵) そ

 そこでビコーズは気付いた。
 ――オサムとの距離が、全く縮まらない。

 そんな筈はないのだ。
 オサムといえば貧弱で脆弱で運動なんてからっきしのガリガリで貧弱で足も遅い貧弱な男。
 校内一の俊足を誇るビコーズより速く走れるなど有り得ない。

(;∵)[理事長、変です!]

( ФωФ)「オサム君は割といつも変だと思うが……」

【+; 】ゞ )「誰か止めてぇえええええっえぇっえええええ!!!!!」



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:42:51.52 ID:472FErhKQ


(゚A゚* )「ニダやーん、明日はクリスマスやねえ」

<ヽ`∀´>「そうニダね」

 並んで廊下を歩いているのは、シベリア中の元七不思議だった2人。

 ブレザーを着た中学生くらいの少女の霊、のー。
 着物姿の、30代半ばに見える男、ニダー。
 ニダーは、等身大の武士の人形に魂が宿ったものだ。

 ぴったりくっついて歩こうとするのーを、ニダーが押しやる。

<ヽ`∀´>「歩きにくい」

(゚A゚* )「照れ屋さんやのう。誰も見てへんでー」

<ヽ`∀´>「そういう問題じゃないニダ」

(゚A゚* )「むう。……明日はクリスマスやねえ」

<ヽ`∀´>「さっき聞いたニダ」

(゚A゚* )「……もー!」

 唇を尖らせ、のーは、ずんずん先に進んだ。
 ニダーが首を傾げる。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:45:15.16 ID:472FErhKQ

<ヽ`∀´>「何で機嫌悪くなるニカ」

(゚A゚* )「乙女心が分からんオッサンやのお!!」

<ヽ`∀´>「?」

 怪訝そうな顔をしながら、ニダーはのーの後ろを歩く。
 ふと視線を下ろし――光るものに、気付いた。

<ヽ`∀´>(指輪?)

 拾い上げる。
 銀色の小さな輪っか。てっぺんに緑色の石。
 指輪のようだ。

 落とし物だろうか。

<ヽ`∀´>「……おい」

(゚A゚* )「何や! ……――」

 振り返った、のー。
 ニダーが指輪を持っているのを見て、固まった。



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:48:32.18 ID:472FErhKQ

(゚A゚* )

<ヽ`∀´>「お前、これ、」

(゚A゚* )「……ニダやん……」

<ヽ`∀´>「は?」

(//A//* )「な、何やねん、そそ、そんなの用意してたんか!
      もうっ、ニダやんったら!!」

<ヽ`∀´>「待て、何の話――」

 ニダーの手から指輪を奪い、のーは、ほう、と息をついた。
 その顔があまりに嬉しそうで、ニダーの口が閉じてしまう。
 なんだか、否定するのが申し訳ないように思えたのだ。

<ヽ`∀´>「あー……」

(゚A゚* )「サイズもぴったりや……」

 左手の中指に指輪を嵌める。
 窓から差す日光を、きらりと反射させ――

∩(゚A゚* )『――いい子!』

(゚A゚* )「へっ」

<ヽ`∀´>「!?」



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:51:30.38 ID:472FErhKQ

 ――指輪は、甲高い声で、言った。

∩(゚A゚*;)『合格合格! キミいい子! ハジマタ!』

(゚A゚*;)「な、何や!? 指輪が喋っとる!」

<;ヽ`∀´>「それ早く外すニダ!」

(゚A゚*;)「言われんでもぉおっ!!」

 指輪を抜き取り、投げ捨てる。
 回転しながら飛んでいく指輪は、床に到達する前に。

 まばゆい光を放ち、
 その姿を、変えた。

  f f
\(^o^)/「ドッコイショー!!」


(゚A゚*;)「指輪がツノ生えた人間に変わったー!」

\(^o^)/「説明口調オツ」

 焦げ茶色のコートを着た若い男――高校生ぐらいの、少年と言ってもいいかもしれない。
 その頭にはツノが生えている。
 鹿や――トナカイのような、ツノ。



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:54:42.29 ID:472FErhKQ

<ヽ`∀´>「……貴様、何者ニダ」

\(^o^)/「誰でしょー!」

 踵を返し、少年は逃げる。
 ニダーは追い掛けようとし――

イ从;゚ ー゚ノi、「――あっ」

<;ヽ`∀´>「ニダッ!?」

 後ろから来た女性にぶつかられ、廊下に勢いよく転がった。
 その上に、女性も倒れ込む。

(゚A゚*;)「ニダやん!」

イ从> ー<ノi、「いったたぁ……」

<;ヽ`∀´>「……どけニダ」

イ从゚ ー゚ノi、「あん、ごめんなさぁい」

 ニダーの顔を一撫でして、女性は立ち上がる。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 22:57:33.39 ID:472FErhKQ

 銀色の髪、細面の美人。
 その頭には。

  f f
イ从゚ ー゚ノi、

 先の少年のような、ツノ。

<ヽ`∀´>「……それ、」

ξ#゚听)ξ「いたぁああ!!」

 ツノについて突っ込もうとニダーが口を開いたと同時、
 大きな怒鳴り声が飛び込んできた。

イ从゚ ー゚ノi、「うるさい子」

 見れば、駆けてくるツンの後ろを、モララーとエクスト、
 弟者、姉者、妹者にデレも追いかけている。

<_プー゚)フ「ニダー! そいつ捕まえてくれ!」

<ヽ`∀´>「……ウリに指図すんな球体!!」

イ从゚ ー゚ノi、「やん」

 エクストの命令に口だけは反発しながらも、
 ニダーは膝をついたまま、女性の腕を引っ掴んだ。



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:02:26.76 ID:472FErhKQ

<ヽ`∀´>「何ニカ、この女!」

(-@∀@)「トナカイだ! サンタクロースのお供のね!」

(゚A゚* )「ツノ生えとるけど人間やん」

(´<_`;)「俺らもよく分からん! ――おい、そのまま放すなよ!」

イ从゚ ー゚ノi、「……残念でしたぁ」

 ツン達が追いつくより先に。
 女性は、姿を変えた。

(゚A゚* )「んあ?」

 赤い石、銀色の輪っか。小さな指輪。

Σ∩(゚A゚*;) ガシィイーン!!

 それは、のーの指に着地する。

<;ヽ`∀´>「……今度は女が指輪になったニダ!」

<_フ;゚ー゚)フ「おい、その指輪早く取れ!!」

(゚A゚*;)「えっ」

 エクストの忠告も、もう遅い。
 「指輪」は、のーの願望を声に出す――



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:05:58.77 ID:472FErhKQ

∩(゚A゚* )『ニダやん! ニダやん! ニダやん! ニダやんんんんんんわぁああああああああああああああああああああああん!!!
      あぁああああ…ああ…あっあっー! あぁああああああ!!!
      ニダやんニダやんニダやんんんんぁわぁああああ!!!
      あぁ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いやなぁ…くんくん
      んはぁっ! ニダやんの人工の毛をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!!
      間違えた! モフモフしたいお! モフモフ! モフモフ! 人工毛モフモフ!
      カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
      昔のニダやんかわいかったよぅ!! あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!! ふぁぁあああんんっ!!
      VIP高校に引き取られて良かったねニダやん! あぁあああああ!
      かわいい! ニダやん! かっこいい! あっああぁああ!
      こうやって一緒にいれて嬉し…いやぁああああああ!!!
      にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!!
      ぐあああああああああああ!!! ニダやんなんて人間じゃない!!!!
      あ…ウチもよく考えたら…
      ウ チ ら は 結 婚 で き な い?
      にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!!
      そんなぁああああああ!! いやぁぁぁあああああああああ!!
      はぁああああああん!! シベリアぁああああ!!
      この! ちきしょー! やめてやる!!
      幽霊なんかやめ…て…え!? 見…てる? 目の前のニダやんがウチを見てる?
      照れ屋さんなニダやんがウチを見てるで! ニダやんがウチを見てるで!
      素っ気ないくせに傍にいてくれるニダやんがウチを見てるで!!
      ちょっと悪ぶってるニダやんがウチに話しかけてるで!!!
      よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんやねっ!
      いやっほぉおおおおおおお!!! ウチにはニダやんがいる!!
      やったでヒート!! ひとりでできるもん!!!
      あ、ツンツンしてるニダやああああああああああああああん!! いやぁあああああああああああああああ!!!!
      あっあんああっああんあ阿部ぇえ!! シュ、シュー!! レモナぁああああああ!!! オサムぅううう!!
      ううっうぅうう!! ウチの想いよニダやんへ届け!! 目の前のニダやんへ届け!』



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:09:28.52 ID:472FErhKQ


ξ゚听)ξ(-@∀@)<_プー゚)フ
(´<_` )∬´_ゝ`)l从・∀・ノ!リ人ζ(゚ー゚*ζ


<ヽ`∀´>



イ从゚ ー゚ノi、「……」

 指輪が、再び女性となる。
 生暖かい目をしながら。

イ从゚ ー゚ノi、「人間って、恐いわ」

(゚A゚* )「何これ。ウチ無意味に辱めを受けただけ?」

∬´_ゝ`)「むしろ、お人形さんの方が衝撃受けてるわね」

<ヽ`∀´>

ξ;゚听)ξ(ニダーがドン引いてる……)



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:12:33.88 ID:472FErhKQ



( ^ω^)「ん?」

 不意に足を止め、内藤が振り返った。
 どうした、とドクオが問う。

( ^ω^)「何か、声がしないかお?」

('A`)「声?」

ハハ ロ -ロ)ハ「ア、何だか男の人の声ガ――」


【+; 】ゞ )「あああああっどいてぇえええええええええええええええええええ!!」


(;^ω^)「!?」

(゚A゚)「おぎゃあああああああああああああああ!!!!!」

【+; 】ゞ )「のああああああああああああああ!!!」

(;^ω^)「どっ、ドクオォオ!」

 声の主――オサムが、猛スピードでドクオに追突した。
 何が起こったか理解出来ない内藤達を置いてけぼりに、
 オサムは体勢を正して再び前進する。



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:15:37.10 ID:472FErhKQ

【+; 】ゞ )「ゼヒッだ、誰かゼー止めハーてっへぇああああっああぁぁ……」

(;ФωФ)「ホライゾンくーん!!」

(;^ω^)「理事長!?」

(;ФωФ)「オサム君を追うである! 自分では止められないらしい!」

 次いで、ビコーズにしがみつく理事長もやって来た。
 ハローは走り去るオサムを見て、「あ」と声をあげる。

ハハ;ロ -ロ)ハ「足!」

(;'A`)「足?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「アレ、靴下デス! トナカイの!!」

 叫び、オサムの足を指差した。
 灰色の靴下。それに、ハローは見覚えがある。

 まさに、今、探している最中のもの。

(;∵)[トナカイの仕業か!]

(;ФωФ)「ビコーズ君でも追いつけない速さ……流石トナカイというか」

【+; 】ゞ )「トナカイって何の話ぃいいいいい!!」



108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:18:53.45 ID:472FErhKQ

 理事長に煽られ、内藤達も駆け出す。
 だが、やはりオサムを捕まえられない。

 埒が明かないと踏んだか、理事長は内藤へ目を向けた。

(;ФωФ)「ホライゾン君! 校則魔法(レグレイション・マジック)を!!」

(;^ω^)

(;^ω^)「はい?」

(;ФωФ)「聖徒会長である君にしか出来ないである!」

(;^ω^)「いやいやいや、いきなり何を……。……れ、れぐれいしょん?」

(;'A`)「すごく……厨二な臭いがします……」

(;ФωФ)「いいから耳を貸せい!!」

 ビコーズから内藤に飛び移り、理事長は内藤の耳元で「校則魔法」の手順を告げた。
 内藤は、困惑した顔で頷く。

(;ФωФ)「さあ、早く!」

(;^ω^)「分かりましたお」



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:21:24.62 ID:472FErhKQ

 足を止め、内藤は、前方のオサムを睨むように見た。

 大きく息を吸い、口を開く。


( ^ω^)「VIP高校則魔法! オサムさんに告ぐ!」

【+; 】ゞ ) ゼヒュッ ゼヒュッ

( ^ω^)「廊下は静かに……――」


(#^ω^)「――歩きましょぉおおおおっ!!」


 瞬間。

 オサムの足が止まったかと思うと、突然ゆっくり歩き始めた。
 さっきまでの速度はどこへやら、のろのろと、普通に歩くよりも遅い。



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:25:15.92 ID:472FErhKQ

【+; 】ゞ ) ゼーハーゼーハー

(*ФωФ)「よくやった!」

(;'A`)「今のは?」

( ∵)[『校則魔法』。この学校の人間に対してのみ通じる魔法だよ]

 ――校則は、学校で過ごす上で守らなければいけない規則。
 聖徒会長が口にすることで、それは絶対的な力を持つ。

 元はシベリア中学校の者だったとはいえ、オサムも今ではVIP高校の関係者。
 彼にも充分有効なのだ。

【+; 】ゞ )「た、ハッ、助かった……あああ……」

ハハ*ロ -ロ)ハ「グレート! 最高デスよ、ぶーんサン!」

 オサムに駆け寄り、ハローは両手を広げた。
 まずはオサムを捕まえようとしたのだろうが、

【+; 】ゞ゚)「うあっ!?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「アッ!!」

 くるりと回転し、オサムがハローを避けた。
 空振ったハローが、危うく転びそうになる。



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:28:25.81 ID:472FErhKQ

【+; 】ゞ゚)「ちょちょちょっ」

ハハ;ロ -ロ)ハ「動かナイで!」

【+; 】ゞ゚)「だって足が勝手に!!」

 走りはしなくなったものの、今度は華麗な動きで逃げ回る。
 くるくる、ぴょんぴょん、回ったり跳ねたりするオサムは、
 まるで踊っているかのようだ。

(;'A`)「でぇえいっ!!」

【+; 】ゞ゚)「ほわっ」

(;ФωФ)「むんっ!」

【+; 】ゞ゚)「ひいっ! な、何だコレ! 俺もしかして今すげえ格好良くないか!?」

(;∵)[あっ厨二病の発作出やがった]

 数人で同時に飛び掛かっても、全ての動きが分かっているみたいに、
 オサムは彼らの手を避け続ける。



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:31:54.20 ID:472FErhKQ

(;^ω^)「ああ、もう! どうしたらっ!」

ハハ ロ -ロ)ハ「……仕方ありませんね」

(;'A`)「ハローさん?」

 痺れを切らしたハローが、一歩下がった。
 屈み込み、ブーツの紐を解く。

(;ФωФ)「それは――」

 右足からブーツを抜き取り、ハローは、それを天井に向かって放り投げた。

 そして、名を呼ぶ。


ハハ ロ -ロ)ハ「『ブリッツェン』――シブサワ! カモン!!」


(;^ω⊂)(;'A∩)「うおっまぶしっ!」

 一瞬、辺りが真っ白な光に包まれた。

 咄嗟に目を覆った内藤とドクオが、そろそろ、手を下ろす。
 すると、そこには――



120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:47:13.10 ID:472FErhKQ


  f_、_f
 ( ,_ノ` )「……呼んだかい、お嬢」


 ダークブラウンのスーツを着た、渋い微笑みを浮かべる紳士がいた。
 40歳は超えていそうな男だが、頭に生えたツノが雰囲気を台なしにしている。

( ^ω^)('A`)(うわあ)(ФωФ )(∵ )

( ^ω^)「……ハローさん、この方は」

ハハ ロ -ロ)ハ「トナカイの1人、シブサワといいマス」

(;'A`)「人間じゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ニンゲンの姿にもなれるんデス。
      イロイロと、カッテがききますカラ」
 _、_
( ,_ノ` )「そういうこった。……さぁて、お嬢、俺ァ何をすりゃいい?」

ハハ ロ -ロ)ハ「カレの足カラ、靴下――『ダンサー』と『プランサー』を奪ってほしいんデス」

 カレ、とハローがオサムを指差し、
 トナカイ――シブサワは、く、と喉の奥で笑った。



123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:52:05.94 ID:472FErhKQ

 _、_
( ,_ノ` )「ちょろいもんだ。……が、その前に」

 _、_
( ,_ノ` )⊃凸 スッ


 懐から瓶を取り出す。
 掌ほどの大きさの瓶は――どうやら、酒が入っているらしかった。
 きゅぽん、と蓋を取る。
 _、_
( ,_ノ` )凸「まずは景気づけにアルコールだ」

ハハ ロ -ロ)ハ「エエ」

ハハ ロ -ロ)ハ

ハハ;ロ -ロ)ハ「……アアアアアッ! マ、待ちナサッ――」

 急に慌て出したハローに構わず、シブサワは瓶の中身を一気に呷った。
 空になった瓶を放り、スーツの袖で口を拭う。



126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:55:25.12 ID:472FErhKQ

 _、_
( ,_ノ` )「さあ、可愛い可愛い靴下ちゃん」



 _、_
(*,_ノ゙*)「おいたんの胸に飛び込んでおいれぇええええwwwww」



 そして、ものの5秒で酔い潰れた。


(;^ω^)【+; 】ゞ゚)「酒弱―――――――!!!!!」('A`;)(ФωФ;)

( ∵)[何してんのあの人]
 _、_
(*,_ノ゙*)「あーやっぱめんどいwwハロたん、ちゅーしよwwwホテル行こwwww
     おじさんの股間にあるツノで遊ぼうwwwww」

ハハ#ロ -ロ)ハ「クッソがぁあああああああ!
      下戸のくせに酒飲むなっつってんだろファッキンアル中がよおおお!!」
 _、_
(*,_ノ゙*)「ハロたん恐いwwwww可愛いwwwww」

ハハ#ロ -ロ)ハ「死ねッ!!」

 左足のブーツを脱ぎ、シブサワに叩きつける。
 ごずん、と重い音がシブサワの鼻とブーツの間から響いた。



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/24(金) 23:59:21.05 ID:472FErhKQ

ハハ#ロ -ロ)ハ「『ドゥンダー』、ブーム! もうお前でいいから出てこい!!」

 ぶちギレたままハローがブーツに指を突きつける。
 先程と同じような光が溢れ、それが消えると、
 ブーツは、やはり男に姿を変えていた。

 f   f
|  ^o^ |「よばれて とびでて じゃじゃじゃじゃー ん」

 ゆったりとした口調、気の抜けた表情。
 ブームと呼ばれた若い男は、ハローとオサムへ視線を行き来させた。

|  ^o^ |

|  ^o^ |「ぼくは」

|  ^o^ |「なにを」

|  ^o^ |「すれ」

|  ^o^ |

|  ^o^ |「ば」

ハハ#ロ -ロ)ハ「……お前が役に立つかと思った私が馬鹿だった」

 だいぶ、独特の「間」を持つ方のようだ。



130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:02:08.86 ID:yeDAUPOcQ

 一体、何のために出したのやら。
 事態は一向に進展を見せないままだ。

 現状を見限ったか、ドクオが、どうでもいい疑問を口にする。

('A`)「……ブリッツェンとかドゥンダーってのは名前なのか?
    それともシブサワやブームの方が名前?」

(;^ω^)「ブリッツェンもドゥンダーも、ダンサーもプランサーも
       みんなサンタのソリを引くトナカイの名前だお」
 _、_
(*,_ノ゙*)「よく知ってんな坊主www
     俺らは、『初代』トナカイの子孫よwwww
     俺はブリッツェンの子孫なwww
     正確にはブリッツェンの分家みたいなもんだがwwwww」

 初代、とは、恐らく本物のサンタクロースを運んでいたトナカイ達のことだろう。
 サンタ界にも色々あるらしい。

 どうでもいいことくっちゃべってんじゃねえ、とハローに怒られ、
 内藤とドクオは肩を竦めた。



133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:05:41.46 ID:yeDAUPOcQ


 一方その頃。とある廊下。

|゚ノ;^∀^)「きゃああああっ! 避けて下さいなぁああああ!」

川;゚ -゚)「そう言いながらこっち来んな!!」

ノハ;゚听)「ぴぎゃあっ!」

(;´∀`)「夏の悪夢再びぃっ!!」

 大鎌をめちゃくちゃに振り回すレモナと、必死に躱すクール達。
 レモナの両手には、白い手袋が着けられている。

川;゚ -゚)「説明しよう! 何か唐突に手袋が飛んできて、
     レモナの両手にすっぽり嵌まった途端、このようなことに!」

|゚ノ;^∀^)「手が勝手に動くんですのぉっ!!」

N| "゚'` {"゚`lリ「ふむ、それが例のトナカイなのかもしれないな」

ノハ;゚听)「冷静だな阿部!!」

N| "゚'` {"゚`lリ「男は度胸、ってな」

|゚ノ;^∀^)「! 危なっ……――きゃあっ!」

 阿部が、レモナの後ろに回り込む。
 そのまま、レモナを抱きすくめた。



135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:08:41.12 ID:yeDAUPOcQ

(;´∀`)「おお……君も、そうやって女性に触れることがあるモナか」

N| "゚'` {"゚`lリ「触るだけなら、な」

|゚ノ;^∀^)「あっ」

 両手を押さえ込まれ、レモナは身動きがとれなくなる。
 鎌が滑り落ち、床にぶつかった。

 そして、阿部が彼女の手から丁寧に手袋を外す。

川;゚ -゚)「えらいぞ阿部!」

N| "゚'` {"゚`lリ「ふん、なあに、当然のことさ」

 2枚の手袋を眼前に掲げ、阿部は笑った。

N| "゚'` {"゚`lリ「――この手袋から、雄の気配がぷんぷんしやがるからな……」

(;´∀`)「手袋逃げてー!!」



137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:11:12.02 ID:yeDAUPOcQ

 同性として危機を察したモナーが思わず叫ぶ。
 それに呼応するように、手袋は阿部の手から、するりと抜けた。

N| "゚'` {"゚`lリ「おっと」

 宙を舞う手袋。
 阿部から離れようとしているようだ。

川 ゚ -゚)「むっ、止まれ!」

 クールが命令しても止まる筈がない。
 自分で何かをするのは諦めたらしく、ヒートに「出来るか」と問う。

ノハ;゚听)「おっ、俺は動いてない物を動かすのは得意だけど
     動いてる物を止めるのは苦手だ!」

川 ゚ -゚)「そうか、参ったな……」


     「――動くの禁止」


( ´∀`)「モナッ!?」


 ぐるり、手袋に金色の糸が巻き付く。
 何重にも縛られて、手袋は落下した。



139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:15:27.79 ID:yeDAUPOcQ

 ぴくりとも動かないのを確認し、拾い上げる女性――シュール。

lw´‐ _‐ノv「余裕」

(;//д// )「放して胸が当たってる胸が胸胸胸」

ミセ;゚ー゚)リ「ミルナさんしっかり!」

 右手にミルナ、左手に手袋。
 満足げな表情で、シュールはクール達を見た。

lw´‐ _‐ノv「お前ら、シュー様に感謝しながら米を捧げたまえ」

ノパ听)|゚ノ ^∀^)N| "゚'` {"゚`lリ「調子乗んな」

川 ゚ -゚)「息ぴったりだなシベリア組」



140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:18:37.30 ID:yeDAUPOcQ



 ――同時刻、別の廊下。

イ从゚ ー゚ノi、「とりあえずさようなら、色ボケ達」

 固まるニダー達に手を振り、女性は逃げようと振り返った。
 待てとエクストが制止した――直後。


∬´_ゝ`)「まあまあ、お待ちなさいな、『ヴィクセン』の、ギンちゃん」


 姉者が、耳慣れぬ言葉を口にした。
 いや、正確には女性とエクストだけは、その内容を理解出来たのだが。

ξ゚听)ξ「……ヴィ……?」

<_プー゚)フ「ヴィクセン――8頭いるトナカイの内、ある1頭の名前だ」

イ从゚ ー゚ノi、「……どうして私の名を?」

∬´_ゝ`)「分かるのは名前だけじゃないわよ」

 腕を組み、姉者は女性――ギンを睨みつけた。

 ――彼女は兄者と同様、「サトリ」の力を持つ。
 それ故、ギンの心を読み、情報を手に入れることが出来たのだろう。



142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:22:08.28 ID:yeDAUPOcQ

 皆は姉者の力を知っている。
 だが、ギンがそれを知っているわけがない。
 彼女は、見て分かるほど動揺していた。

∬´_ゝ`)「あなた、男好きね」

イ从;゚ ー゚ノi、「!」

∬´_ゝ`)「格好良い男の人が好き? 私も結構好きよ、見るだけならね」

イ从;゚ ー゚ノi、「あんた、何で――」

∬´_ゝ`)「……人の願望を覗くのは好きでも、自分の心を読まれるのは嫌いかしら」

 嘲るように笑い、姉者は視線をギンからモララーに移した。

∬´_ゝ`)「そういうわけだから。眼鏡、取っちゃいなさい」

(-@∀@)「……仕方ないね」



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:25:44.51 ID:yeDAUPOcQ

( ・∀・)⊃-@-@「こうするより他はないか」

 モララーが、眼鏡を外す。
 この世のものとは思えぬ美貌。その顔をさらけ出し、ギンの前へと立った。

<_プー゚)フ、∩;ζ(´<_` )

ξ゚听)ξ⊃∀・;ノ!リ人「なっ何なのじゃ?」

「ウリか」<ヽ`∀⊂(゚A゚* )

 ――老若男女問わず、見た者の心を奪うモララーの素顔。
 エクストと弟者がデレの目を覆い、ツンが妹者の視界に割り込み、
 のーがニダーの顔面に手を押しつける。

∬´_ゝ`) フアァ

 一方姉者は我関せずとでも言いたげに欠伸をしていた。



146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:28:37.61 ID:yeDAUPOcQ

 ギンの顎を指先で持ち上げ、モララーは、にこりと微笑む。

( ・∀・)「――お嬢さん。ハローさんを困らせてはいけないよ」

イ从;゚ ー゚ノi、

イ从゚ ー゚ノi、

イ从*゚ ー゚ノi、

( ・∀・)「ね」

イ从*゚ ー゚ノi、「やっべ何コレすげえイケメンじゃんヤッバイかっこいい好き抱いて」

( ・∀・)「さあ、分かったら、私と一緒に来てくれないかな」

イ从*゚ ー゚ノi、「行く行くついてくどこまでもいつまでも」

 効果は抜群だ。

 モララーの腕に擦り寄るギンの頭を一撫でし、モララーは、
 もう片方の手で小さくガッツポーズをとった。

 彼の周りには特殊な女性――主にツンとか――が多いせいか、
 素顔を見せても彼が望む反応をしてくれる者が、久しくいなかった。

 ここまでがっつり効いたのを目の当たりにし、失いかけていた自信を取り戻したようだ。
 哀れなイケメンである。



148: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:32:14.98 ID:yeDAUPOcQ



 ――大霊道。
 兄者は、1人、ぽつんと座っていた。

( ´_ゝ`)(ちょっと寂しい)

 ツンの携帯電話を手の中で転がしながら、兄者は溜め息をつく。

 そのとき。

 からん、と、目の前に何かが落ちてきた。

(;´_ゝ`)「うおっ」

 指輪だ。
 緑色の石が付いた指輪。

( ´_ゝ`)「……さっきのは赤色だったよな」

 それを手に取り、兄者が考え込む。

 そして。
 オサムのように。ツンのように。のーのように。
 ほとんど無意識に、指輪を嵌めた。



154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:45:32.17 ID:yeDAUPOcQ

( ´_ゝ`)「綺麗なもんだ――」


( ´_ゝ`)∩『――悪い子!』


( ´_ゝ`)

 甲高い声。
 やらかしてしまったことに、兄者が気付く。

(;´_ゝ`)「げっ……! こいつもトナカイか! てか気付け俺!!」

 指輪を抜こうとしても、びくともしない。
 きんきん響く大きな声が、兄者の耳に突き刺さる。

(;´_ゝ`)∩『悪い子! 復讐なんてしようとしたんだね!
        無関係の人を利用したね! 家族さえも利用しかけたね!
        たくさん人を傷付けようとしたね!』

 その内容。
 夏に兄者が犯した過ち。

(; _ゝ )「……!」

(; _ゝ )∩『悪い子! しかもかなり酷いレベルの悪い子!』

(; _ゝ )∩『これは仕置きが必要なレベルだね!』



160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:49:11.93 ID:yeDAUPOcQ





(; _ゝ )∩『――君、オワタァアアアアアア!!』



 今までで一番大きな声。


 その声は、校内中を駆け巡る。



161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:54:01.02 ID:yeDAUPOcQ



(;^ω^)「全ッ然止まってくれないお!!」

('A`)「もう帰りたい」

ハハ;ロ -ロ)ハ「あきらめナイデ!」

【+  】ゞ゚)「ふはははは! 貴様らの動きなど見切っておるわ!!」

(;∵)[調子こくな!]

 こちらは、依然としてトナカイを捕まえられないでいた。
 _、_
(*,_ノ゙*)「がんばーwwwww」

|  ^o^ |「がんばっ     て」

ハハ#ロ -ロ)ハ「てめえらも手伝えや!!」

 ハローが怒鳴る――直後。



164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:57:50.63 ID:yeDAUPOcQ



   『オワタァアアアアアア!!』



ハハ;ロ -ロ)ハ「!!」

(;^ω^)「うわっ!?」


 叫び声にも似た声が、迫った。
 足を止めて耳を塞ぐ面々、その中で。

ハハ;ロ -ロ)ハ「あいつっ……シブサワ、ブーム!!」

 ハローだけは、焦ったようにシブサワとブームの首根っこを掴んだ。
 _、_
( ,_ノ` )「……誰か、やっちまったか」

|  ^o^ |「あう あう」

 シブサワは酔いが覚めたようで、小さく舌打ちをする。
 ブームはじたばた暴れているが、ハローに首を掴まれているせいで思ったように動けない。



165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 00:59:27.40 ID:yeDAUPOcQ

【+; 】ゞ゚)「ごはんっ!!」

(;∵)[あ!]

 皆がハローの所作に意識を向けたが、オサムはそれどころではなかった。

 足が持ち上がり、すぽんと、靴下が脱げたのだ。
 床に転ぶオサム、浮かび上がる靴下。

ハハ;ロ -ロ)ハ「イケマセン! クルウ! ツー!!」

 ハローの制止も無視し、クルウ、ツーと呼ばれた靴下は、
 窓に向かって突進した。

 普通ならば、窓ガラスにぶつかって終わり。
 だが、靴下は――

(;ФωФ)「!」

 窓を擦り抜け、外へ出た。



168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:03:33.39 ID:yeDAUPOcQ

 内藤達も窓に走り寄り、靴下の行き先を探す。
 そして――窓の外、校庭を見下ろし、瞠目した。

(;^ω^)「兄者!」

(;'A`)「何であいつ外にいんだよ!?」

 校庭の真ん中、見知らぬ少年に担がれている兄者。

 そこへ、靴下が、ゆっくり形を変えながら下降する。
 ――地面に到達する頃には、靴下は2人の女性になっていた。

 f  f
川 ゚ 々゚)

 f f
(*゚∀゚)


ハハ;ロ -ロ)ハ「くっ……! シブサワ!!」
 _、_
( ,_ノ` )「あいよ!」

 ハローを背負いブームを片手で抱え上げたシブサワは、
 窓を開け放つと、校庭に向かって飛び降りた。
 ちなみにここは3階である。



170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:07:35.15 ID:yeDAUPOcQ

(;^ω^)「危なっ……――」

ハハ ロ -ロ)ハ「トナカイだからダイジョーブ!!」

 果たして本当にトナカイだからという理由だったのかは定かではないが、
 たしかに、シブサワは難無く着地に成功した。
 トナカイというよりは、猫の方が近い気もするが。

( ∵)[掴まって!]

(;^ω^)「わ、分かったお!」

(;'A`)「把握!」

 促されるまま、ビコーズの背に内藤とドクオがしがみつく。
 確認もそこそこに、ビコーズは窓から校庭へ踏み出した。
 理事長も後を追う。

 彼らが到着する頃には、別の窓からも「トナカイ」が飛び出していた。

イ从゚ ー゚ノi、「……あらぁ、ハロちゃん」

ハハ ロ -ロ)ハ「ギン!」

<_フ;゚ー゚)フ「何で兄者が校庭に!?」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、これどういうことよ」

 ギンの後から、エクストと、モララーに背負われたツンも下りてくる。



171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:12:51.55 ID:yeDAUPOcQ

 また、少し離れた場所から、金糸を纏わりつかせた手袋がやって来た。

ハハ ロ -ロ)ハ「……『ダッシャー』ゼアフォー、『キューピッド』ィョゥ」

 ハローが名を呟くと、金糸を千切り、手袋が人の姿へ変わる。

     f f  f f
「……」( ∴)(=゚ω゚)ノ「ぃようっ!」

 妙な仮面をつけた、男(恐らく)と、その隣に浮かぶ、溌剌とした少年。
 ィョゥという名前らしい少年は、ミルナより少しばかり年下のようで、
 ――可愛らしい、美少年であった。

     ガッバァッ!!
≡≡≡ξ゚听)(=゚ω゚)ノ「!?」

(;'A`)「速い!!」

川 ゚ -゚)「凄まじいスピードだったな」

( ∵)[みんな集まってきたね]

 目にも留まらぬ速さで、ツンがィョゥを取っ捕まえた。
 それは置いておいて。

 ィョゥ達を追ってきたクール、モナー、ミルナとミセリ。
 ――これで、校庭にはいつもの聖徒会のメンバーと、
 ハロー達サンタ組が集結した。



172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:16:50.25 ID:yeDAUPOcQ


lw´‐ _‐ノv「いよいよクライマックスかね」

ノパ听)「俺らは行かないのか!?」

N| "゚'` {"゚`lリ「こういうのは、レギュラー陣に出番を譲るもんさ」

|゚ノ;^∀^)「そういう発言大丈夫ですの?」

 残りの面々は校舎の中からの見学を決め込んだようだ。
 目の見えないレモナは、耳を澄ませている。



l从・∀・;ノ!リ人「おっきい兄者……」

∬´_ゝ`)「……エクソシスト様達に任せましょ」

(´<_`;)(姉者から怒ってる雰囲気が漂ってくる)

ζ(゚ー゚;ζ(あのトナカイさん、姉者さんに殺されちゃわないかしら……)



174: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:19:59.62 ID:yeDAUPOcQ



\(^o^)/「やっべ、つい……あーあ、ハローちゃんに見付かっちゃった。オワタ」

(;´_ゝ`)「な、なあ、俺、外に出てると危険なんだよ! 放してくれ!」

\(^o^)/「とはいえ仮にもサンタのお供として、悪い子を見逃すのは……」

(;´_ゝ`)「話聞けよ!!」



( ФωФ)「ハロー君、現状の説明を!」

ハハ;ロ -ロ)ハ「――あのコは『コメット』、オワタ!
      子供が『いいコ』か『悪いコ』か判断する役割を与えられていて、
      ……今、オワタが抱えているカレは、どうやら悪いコに認定されたようデス!」

( ´∀`)「悪い子認定を受けるとどうなるんだモナ?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「基準値を大きく上回る『悪いコ』は、ワタシたち直々にテを下しマス」

(-@∀@)「手を下すって――」

ハハ;ロ -ロ)ハ「フルボッコ!」

(;゚д゚ )「ただのリンチ!!」



176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:23:31.83 ID:yeDAUPOcQ

 _、_
( ,_ノ` )「もっと酷いガキは、直接地獄に送り込む場合もあるぜ」

ミセ;゚ー゚)リ「さ、サンタさんって案外容赦ないんですね……」

<_フ;゚ー゚)フ「いや、それ以前に! 兄者は悪い奴じゃねえって!!」

\(^o^)/「残念! 悪い子! 人を殺したね! 復讐を計画したね!
      善人を巻き込んで利用しようとしたね!! オワタァ!!」

(;^ω^)「だっ……! だってそれは、理由が!!」

\(^o^)/「勿論『理由』も視野に入れた上での判断さ!
      復讐を考えても仕方ない経緯だったからこそ、この結果だよ!
      何の意味も無くあんなことをしていたのなら、確実に地獄行きだったね!」

(;´_ゝ`)「……っ」

 オワタの言葉が兄者の心を抉る。

 無論、分かっている。
 己の愚かしさなど、全て、あの日に理解した。

 分かっているのに、改めて責められる、その苦しさ。
 胸が痛い。



181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:26:48.49 ID:yeDAUPOcQ

川 ゚ 々゚)「――とにかく悪い子なんでしょぉぉお……」

(*゚∀゚)「ハローから逃げてる最中とはいえ、見て見ぬふりは出来ねえよな!!」

 『ダンサー』クルウと『プランサー』ツーが、一歩前に出る。

ξ*゚听)(;=゚ω゚)ノ「ったく、何なんだよう、このお姉さん」

(=゚ω゚)ノ「……えいっ!」

ξ;゚听)ξ「あっ!」

 一度手袋に戻り、ィョゥがツンの手から逃れた。
 そして再び人の形をとりながら、仮面の男に振り返る。

(=゚ω゚)ノ「ゼア! やっちゃうよう!」

( ∴)「……」


( ∴)「そっスねwwwwwやっちゃいましょwwwwwwwwww」


(;^ω^)「何か思ってたのとキャラ違う!!」

( ∴)「見た目で決wめwつwけwないで下さいよwwwww」

(;'A`)「すげえ腹立つ! 何あいつ!!」



184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:30:11.42 ID:yeDAUPOcQ

\(^o^)/「……というわけで思い知らせターイム!」

(;´_ゝ`)「げぶっ」

 兄者を地面に落とし、オワタが踏みつけた。
 何かに縛られたかのように、兄者の体が動かなくなる。

\(^o^)/「ドンマイドンマイ、ほんの1時間程度だよ!」

ハハ#ロ -ロ)ハ「……やぁめろっつってんだろうが糞トナカイ!!」

\(^o^)/「おっとっとぉ!」

 ハローがオワタに殴りかかる。
 が、あっさり躱されてしまった。

ハハ#ロ -ロ)ハ「私達は、まだ一人前じゃねえんだよ!!
      勝手に手出したらダメだっつーの!!」

(;´_ゝ`)(そちらが一人前だったら俺は堂々とボコられるんですかと問いたい)



187: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:35:45.30 ID:yeDAUPOcQ

 _、_
( ,_ノ` )「……って言っても、悪いコは反省させましょうっつーのが
     骨の髄まで叩き込まれてっからな、そう簡単にやめらんねえだろ!」

|  ^o^ |「シブサワの いう  とおり」

 ブームを押さえ込むのに手一杯なのか、
 倒れたブームの上に座り込みながらシブサワが言う。

 どうやら「悪い子判定」が出た場合、トナカイ達はおとなしくしていられないらしい。
 落ち着き払っているのはシブサワだけだ。

 ハローは兄者に覆いかぶさり、迫り来るツーとクルウを睨みつけた。

ハハ#ロ -ロ)ハ「止まれぇえ!」

川 ゚ 々゚)「……だめぇえ、ハローちゃあん」

ハハ;ロ -ロ)ハ「――!!」

 クルウがハローと兄者の間に足を差し込み、そのまま持ち上げる。
 ――蹴り飛ばされ、ハローは地面に背を打ちつけた。

ハハ;ロ -ロ)ハ「っつぅ……!!」



189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:38:18.30 ID:yeDAUPOcQ

(*゚∀゚)「ごめんなハロー、あたしら、いーいこと思いついたんだ」

 ツーが、兄者の体めがけて足を振り下ろした。
 自ら体を庇おうとするも、兄者は動けない。
 襲い来るであろう衝撃に覚悟を決める――

 ――が。

(;´_ゝ`)「……っ!」

(;*゚∀゚)「うあっ!?」

 ツーの足が、その動きを阻まれた。

 兄者とツーを遮る、青く透明な壁。
 ふわりと浮かぶ、小柄な男。

( ФωФ)「――彼に手を出すと、姉者君から報復があるかもしれないであるよ」

(;´_ゝ`)「理事長!」

 理事長の手には、丸いバッジがある。
 六芒星の中心に「聖」の字が描かれた、青いバッジ。
 ――七大不思議の力を支えるもの。

( ФωФ)「あまり長くは保たぬが、バリアでも張らせてもらうである」

 理事長が言うやいなや、青い壁は肥大し、理事長と兄者を包むような半円になった。
 ツーが何度も蹴りを入れるが、壁には罅すら入らない。



192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:42:38.69 ID:yeDAUPOcQ

(#*゚∀゚)「くっそ、何だよこれ! ふざけんな! くそぉっ!!」

( ´∀`)「女性があまり乱暴な口をきくもんじゃないモナ」

(#*゚∀゚)「あ゙ぁ!?」

('A`)「いや、それも結構燃えるぜ」

 怒鳴り散らすツーへ、モナーとドクオが接近する。

 ドクオは懐から数珠を取り出すと、それを宙へ投げた。

( ´∀`)「ちょっと、おとなしくしてるモナ。トナカイさん」

 モナーが両手を掲げる。
 右手に指揮棒。左手に紫色のバッジ。

 ――指揮棒が、バッジと同色の光を纏う。



193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:46:41.01 ID:yeDAUPOcQ


( ´∀`)「竜神様の……」

(#'A`)「お通りだぁあ!!」


 モナーが指揮棒を振り上げると、それを追うように、
 夥しい量の水が現れた。

 水は数珠を飲み込み――


(;*゚∀゚)

(;*゚∀゚)「嘘だろ」


 竜の姿を、形作った。



195: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:50:59.03 ID:yeDAUPOcQ


 その後は言わずもがな。

 水で出来た竜に、ツーは吹き飛ばされた。

(;*+∀+) バタンキュー


(*'A`)人(´∀` )「いえーい」

 ドクオとモナーが勝利のハイタッチを交わすと、竜は崩れた。
 ばしゃん、と、水が一斉に地面に落ちる。

( ´∀`)「ドクオ君がいて良かったモナ」

 ドクオの家「鬱紫寺」は、竜神――水神の加護のもとにある。
 そして、モナーが司る力は「水」。
 バッジとドクオの力を合わせ、竜を作り出したのだ。
 あくまで形だけ、ではあるが。



196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:55:00.93 ID:yeDAUPOcQ


川 ゚ 々゚)「んー……んん……」

 クルウは、ぼんやりした瞳で青い壁を見下ろした。
 ぶつぶつ、何か呟いている。

(;ФωФ)(;´_ゝ`)(やだ何か恐いこの人)

川 ゚ 々゚)「ん……ん?」

 そんなクルウの背中を叩く者が1人。

( ∵)[あなた、足速いよね]

 ビコーズ。
 彼は、攻撃するでもなく、ただ普通に話しかけた。

川*゚ 々゚)「……えへえ」

 褒められたのが嬉しいようで、クルウが表情を緩める。
 「でも」と、ビコーズが続ける。

( ∵)[でも、僕だって負けてないよ]

川 ゚ 々゚)「む」

 軽い挑発。
 だが、それにクルウは簡単に乗ってしまいそうだ。
 見た目は大人だが、精神的に幼いところがあるのかもしれない。



197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 01:59:07.64 ID:yeDAUPOcQ

( ∵)[追いかけっこしよう]

川 ゚ 々゚)「……いーけどぉおお。一回だけね……、忙しいからあ」

( ∵)[決まり]

 出し抜けにビコーズが駆け出した。
 少し遅れて、クルウがそれを追いかける。

≡≡≡( ∵) シタタタタ

 決して真っ直ぐには進まず、ビコーズは曲線を描きながら走り、
 クルウとの距離をとった。

 ――彼が通った後の地面が薄く光っていることに、クルウは気付かない。

川*゚ 々゚)「おそぉい」

 どんどんビコーズの背が近付く。
 クルウが捕まえようと手を伸ばしたところで、

( ∵)[おしまい]

 たん、と力強く地を踏み締め、ビコーズは立ち止まった。

川 ゚ 々゚)「ぬ」

川;゚ 々゚)「――く、あっ!!?」



198: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:02:32.62 ID:yeDAUPOcQ

 クルウの手は、ビコーズには届かなかった。
 平伏すような体勢で、クルウが地面に倒れ込んだのだ。
 身を起こすことが出来ず、苦しげに呻く。

 地面を見ると、クルウが触れている部分が黄金色に輝いていた。

川;゚ 々゚)「む、ぐ、ぐうっ!!」

( ∵)[こんな簡単に引っ掛かると思わなかったよ]

 ビコーズがVサインをする。
 人差し指と中指の間には、黄色のバッジ。

 ――ビコーズが司るのは「土」の力だ。

 彼は、足跡で作る魔法陣、ステップサークルを得意としている。
 クルウとの追いかけっこの内にサークルを描き、
 その中心にクルウが辿り着いた瞬間に魔法を発動させたのである。

 しばらく、彼女は動けないであろう。



200: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:07:31.55 ID:yeDAUPOcQ



( ∴)「何スかwwwwみんな逆にやられちゃってんじゃないスかwwwww」

 現状を見て、ゼアフォーが腹を抱えて大笑いする。
 隣にいるィョゥの肩を叩こうとして――

 その手は、とても柔らかい何かに触れた。

( ∴)

川 ゚ -゚)

( ∴)

( ∴)「おwっwぱwいwwwwwwwwww」

 柔らかい何かは、クールの胸。
 「サーセンwwwww」と尚も笑い続けるゼアフォーに、
 クールは盛大な溜め息をついた。



203: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:11:09.33 ID:yeDAUPOcQ

川 ゚ -゚)「君は、やかましいな」

( ∴)「よく言われますwwwwwwwwwwwwwww」

川 ゚ -゚)「ちょっと眠ってなさい」

 言って、クールはゼアフォーに右手を突きつける。
 その掌に乗っているピンク色のバッジが光を放ち、
 クールの後ろに薄桃色の円を作った。

 月のような模様のそれを見ている内、ゼアフォーの胸が妙な安らぎを覚え始める。

( ∴)「……」

 クールが持つのは「月」の力。
 ――人の心を操る、月。

 ゼアフォーの思考は、ほんの少しの揺らぎも感じず、
 静かに、ゆっくり、落ちていった。

( ∴)

川 ゚ -゚)「……うっし」

 ゼアフォーがすっかり寝入ったのを確認し、クールが満足げに頷く。
 それから、ちょろいもんだ、と意地悪な声で呟いた。

川 ゚ -゚)「……しかし立ったまま寝るとか、器用だなコイツ」



205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:16:52.12 ID:yeDAUPOcQ


( ゚д゚ )

ξ*゚听)(;=゚ω゚)ノ「放せぇ! 放せよう!!」

 ィョゥを抱きしめるツン。それを眺めるミルナ。
 ィョゥは先程同様、手袋になって逃げようとしているのだが、

(;=゚ω゚)ノ「何だよう! 何だよう、この髪!!」

 ツンの金色の髪が伸び、ィョゥの首元に巻きついているのである。
 ぱっと見ホラーだ。

ξ*゚听)ξ「いい技覚えたわあ」

 怯えるィョゥに対し、恍惚としたツンの顔。
 ――彼女は、ミルナの緑色のバッジと自らの髪を使い、ィョゥを拘束しているのだ。
 「手袋になるの禁止」、とか言って。

 要するに、夏の事件で使ったのと同じ。

 このショタコンが得てはいけないタイプの技だが、
 バッジが無ければ使用できないのがせめてもの救いか。

( ゚д゚ )「……ごめん……」

(;=゚ω゚)ノ「割と真剣に謝られたぁああああ!!?」



206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:20:07.70 ID:yeDAUPOcQ



\(^o^)/「もう! まともに動けるの、僕とギンだけじゃないか!」

(-@∀@)「大丈夫、君も今に動けなくなるよ」

\(^o^)/「……何のお!!」

 モララーが歩み寄ると、オワタは背を向け、全力で走り出した。

\(^o^)/「クルウやツーほどじゃないにしろ、僕だってトナカイさ!
      追いつけるなら追いついてみな!」

(-@∀@)「……」

 モララーは、その場に立ったままオワタを目で追った。
 そして、

( ・∀・)⊃-@-@「ねえ、君」

イ从*゚ ー゚ノi、「はぁいっ!」



207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:24:22.04 ID:yeDAUPOcQ

( ・∀・)「君と彼では、どちらが速いんだい?」

イ从*゚ ー゚ノi、「私かしらぁ」

( ・∀・)「じゃ、捕まえてきてくれるかな」

イ从*゚ ー゚ノi、「喜んでぇ!!」

\(^o^)/

\(^o^)/ オワタ



( ・∀・)「……私だけバッジいらなかったな」

( ・∀・)「美しいからしょうがないか」

 「火」の力を持つ赤いバッジを見下ろしながら、モララーは呟く。
 完全に調子に乗っている彼に、ツンが「うっぜ」と言い放った。



209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:29:44.82 ID:yeDAUPOcQ



ミセ*゚ー゚)リ「会長さんがバッジを持っててくれて良かったです。
      おかげで、皆さんが力を出せました」

(;^ω^)「何だか持ってないと落ち着かなくって」

 横たわるハローのもとに駆け寄るミセリと内藤、エクスト。
 内藤は、オレンジ色のバッジをミセリに手渡した。

<_プー゚)フ「大丈夫か?」

ハハ;ロ -ロ)ハ「……チョット、体、痛いデス」

ミセ*゚ー゚)リ「動かないで下さいね」

 ミセリが、ハローの胸元にバッジを置いた。
 オレンジ色の光がハローを包み、怪我や痛みを癒していく。



211: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:34:04.43 ID:yeDAUPOcQ

( ФωФ)「……もう大丈夫であるか」

 青い壁が消える。
 理事長が兄者の体を叩くと、兄者は恐る恐る身を起こした。

(;´_ゝ`)「おお、動ける」

<_プー゚)フ「兄者!」

( ´_ゝ`)「ん?」

<_プー゚)フ「お前、悪い子じゃないからな」

( ^ω^)「だお。反省してるし、優しいし、善い人だお」

( ´_ゝ`)「……」

( ´_ゝ`)「ありがとう」

 頭を垂れる。――少し経って、兄者は顔を上げた。

( ´_ゝ`)「ちょうどいいや、エクスト様、これ……」

<_プー゚)フ「?」



 ――こうしてトナカイ達の暴走は治まり。
 ハローのご乱心タイムが始まった。



212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:38:00.68 ID:yeDAUPOcQ



ハハ#ロ -ロ)ハ「てめえらァアアアアアアアアア!!
      今から順番にツノ引っこ抜くからなぁああああああああああああ!!!!!」

 校庭のど真ん中、一列に正座させたトナカイ達にハローが怒鳴り散らす。
 シブサワが「ちょっと待て」と声をあげた。
 _、_
( ,_ノ` )「俺は最初から最後まで、お嬢の味方だったろ」

ハハ#ロ -ロ)ハ「連帯責任だボケェエエエエエエエ!!!!!!」
 _、_
( ,_ノ` )「きついわー」

ハハ#ロ -ロ)ハ「ったくよぉお! お前らそんなに! ……そんなに、」

ハハ ロ -ロ)ハ「……ワタシが、嫌いデスか」

 囁くような声。
 トナカイ達の肩が、小さく跳ねた。



214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 02:43:00.52 ID:yeDAUPOcQ

|  ^o^ |「どうして」

ハハ ロ -ロ)ハ「今夜、一人前になるタメの試験がアルでしょう。
      ……そんな大切な日に逃げるナンテ、ワタシへの嫌がらせじゃないデスか」

川;゚ 々゚)「違う!!」

(;*゚∀゚)「嫌いなわけないだろ!!」

ハハ ロ -ロ)ハ「じゃあ、ナンデ……」

( ∴)「……」

\(^o^)/「それを訊かれるとなあ」

(=゚ω゚)ノ「ちょっと、言いづらいよう」

 ――気まずい沈黙が流れる。

 少し離れたところで眺めていた内藤は、隣に立つ兄者に小声で話しかけた。

( ^ω^)「……兄者」

( ´_ゝ`)「――ん」

 内藤は、心を読める兄者ならば分かるのではないかと思ったのだ。
 兄者が曖昧に頷く。

( ´_ゝ`)「俺が言っていいか分からんが――誰も言わないよりゃマシか」



236: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:04:24.10 ID:yeDAUPOcQ

 前に進み、兄者は、ハローに言った。

( ´_ゝ`)「間違いなく、こいつらはあんたが大好きだぞ」

ハハ ロ -ロ)ハ「……ウソ」

( ´_ゝ`)「嘘なもんか。――俺は人の心が読めるんだがな、
       そのおかげで、こいつらの考えてることも分かる」

イ从;゚ ー゚ノi、「なっ……何よ、それ! ずっるー!」

( ´_ゝ`)「ずるくて結構。
       ……なあ、ハローさんとやら。
       このトナカイ達、揃いも揃って『落ちこぼれ』なんだろう」

ハハ;ロ -ロ)ハ「!!」
 _、_
( ,_ノ` )「……どうやら、本当に心が読めるらしいな」

 ハローとトナカイ達が、顔に動揺の色を浮かべる。
 皆が兄者の「力」を信じてくれたのを確信し、兄者は話を続けた。

( ´_ゝ`)「お供のトナカイは、くじ引きで決まるのか。
       ――んで、あんたは随分くじ運が無かったみたいだな。
       全員が全員、自分勝手で忠誠心に欠け、頭も良くない『落ちこぼれ』。
       周囲から、さぞ馬鹿にされただろう」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」



237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:11:05.43 ID:yeDAUPOcQ


 ――兄者の言う通り、ハローのお供に選ばれたトナカイ達は、
 サンタのお供として相応しくないことで有名なものばかり。
 また、ハロー自身も、その短気さから「落ちこぼれ」の烙印を押されていた。

 そんな彼らが集まったのだから、周りからは指を差して笑われ、
 訓練中も、ずっと馬鹿にされてきたのだ。

 一度お供に決まったトナカイは、余程のことがなければ換えられない。
 ハローは、落ちこぼれ達と一緒にいるしかなかった。



( ´_ゝ`)「それでも、あんたはトナカイ達を愛して、可愛がってきただろう。
       馬鹿にされても、ずっと」

ハハ ロ -ロ)ハ「……だって、いいコなんデス。
      勝手なところもあるし、頭も良くないケド、
      優しくて、いいコばかりなんデスヨ」

イ从゚ ー゚ノi、「……」

( ´_ゝ`)「それだよ」

ハハ ロ -ロ)ハ「エ?」



240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:17:18.27 ID:yeDAUPOcQ

( ´_ゝ`)「そう思ってくれるあんたのことが、こいつらは大好きなのさ。
       だから――」


( ´_ゝ`)「あんたのもとから逃げ出すことで、自分達の代わりに、
       優秀なトナカイがあんたのお供になるのを望んだんだ」


ハハ ロ -ロ)ハ「!!」


 ――全て、ハローのためだった。

 落ちこぼれが一緒にいるから、彼女が馬鹿にされる。
 それなら、自分達よりマトモなトナカイが彼女のお供になってくれた方がいい。

 そう考えての行動だったのだ。



241: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:22:33.03 ID:yeDAUPOcQ

( ^ω^)「……みんな優しかったんだお」

ξ゚听)ξ「ふん、なるほどね」

(*゚∀゚)「バラすなよ恥ずかしい」

( ´_ゝ`)「んで……俺についてだが。
       こいつらは、校庭に集まった時点で、逃げ切ることを諦めた」

<_プー゚)フ「全員揃っちゃったもんな」

( ´_ゝ`)「だから、俺をぼこぼこにして、
       『正式にクビになる』方向に作戦を変えた。
       長年一緒に過ごしただけあって、話さずともお互い理解したみたいだな」

( ∴)「結局失敗しましたけどwwwwwwwwww」

(;´_ゝ`)「成功されちゃたまったもんじゃないぜ、こっちは」

( ´_ゝ`)「――ま、要するにそういうこった。
       以上、俺の話終わり。霊道に戻る。じゃあな」

 早口に告げ、兄者は大霊道に戻るために校舎へ入っていった。
 去り際に、理事長と内藤の肩を叩いて。



242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:26:57.84 ID:yeDAUPOcQ

( ФωФ)「……我輩達も、疲れたし、学校で休むであるー」

ミセ*゚ー゚)リ「そうですね」

(-@∀@)「あとは好きにやってくれたまえ」

( ^ω^)「……それじゃあ」

ξ゚听)ξ「さっさと仲直りしなさいよ」

('A`)「寒くて凍えそうだ……早く学校入ろうぜ」

<_プー゚)フ「じゃーな!」

ハハ ロ -ロ)ハ「……」

 聖徒会のメンバーがわざとらしく声をかけながら校舎に入っていく。
 気をきかせてくれたであろうことは、ハローにもよく分かった。

 窓から眺めていたシベリアの七不思議達や姉者達も、窓を閉め、
 どこかへ去っていった。



243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:32:31.57 ID:yeDAUPOcQ

 ――しんと静まり返る校庭。

 ハローは、トナカイ達の前にしゃがみ込んだ。


ハハ ロ -ロ)ハ「……ヘンに、気遣わないでクダサイ。
      それに、こんな方法、逆にメーワクです」

\(^o^)/「これしか浮かばなかったんだ」

|  ^o^ |「ばか ですから わたしたち」

ハハ ロ -ロ)ハ「言っておきマスケドね」

 一人一人の頭を叩いて、ふん、と鼻を鳴らす。



247: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:37:44.72 ID:yeDAUPOcQ


ハハ ロ -ロ)ハ「ワタシは、アナタタチとしか、お仕事したくアリマセンよ」


( ∴)「……まあwwwそれはwwwww」

川 ゚ 々゚)「あんなに必死になってくれたから、分かってるよう」

ハハ ロ -ロ)ハ「……ソウ」

 微笑み、ハローは立ち上がった。
 影が伸びる。
 冬は、日が落ちるのが早い。間もなく辺りは暗くなるだろう。

ハハ ロ -ロ)ハ「日が暮れてきまシタ。
      ――試験の時間デス」

 元気よく返事をして、トナカイも腰を上げる。
 校舎を一瞥し――ハローは、笑みを深くした。


ハハ ロ -ロ)ハ「試験内容――最低3人! 『幸せ』を、お届けするコト。
      ……3人ナンテしみったれたコト言わず、このマチ全体に、やってやりまショウ!」



249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:42:47.85 ID:yeDAUPOcQ



l从・∀・ノ!リ人「――ちっちゃい兄者は、デレとエクスト様が一緒にいるのは嫌なのじゃ?」

(´<_` )「え」

l从・∀・ノ!リ人「妹者はのう、デレは、エクスト様と一緒なのが幸せだと思うのじゃ」

∬´_ゝ`)「……大丈夫よ妹者。こいつも、それは分かってるから」

( ´_ゝ`)「そうそう。理解はしても、納得はしてないみたいだが」

( ФωФ)「青春であるな、青春!
       ……さ、みんな! 夜は学校霊を集めてのパーティーであるよ!!
       準備にとりかかるであるー!!」

川 ゚ -゚)「いえーい」

ノハ*゚听)「いえええええい!!」

l从・∀・*ノ!リ人「い、いえーいなのじゃー」

(゚A゚* )「楽しみやね、ニダやん」

<ヽ`∀´> ビクッ

(゚A゚* )「……ニダやんがウチに怯えるようになってもうた……!」



251: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 10:47:56.47 ID:yeDAUPOcQ

lw´‐ _‐ノv「ケーキ作りは任せろー」

N| "゚'` {"゚`lリ「生クリームは任せろー」バリバリ

(;゚д゚ )「よく分かんないけどやめて!!」



( ´_ゝ`)「……」

(´<_` )「……まあ。デレさん達のことはたしかに納得はいってないが」

(´<_` )「でも、デレさんが幸せならそれでいい、ぐらいには思えてきたよ」

( ´_ゝ`)「……そうか」

∬´_ゝ`)「えらいえらい」

( ´_ゝ`)「えらいえらい」

(´<_`;)「2人がかりで頭撫でんな!」



252: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:01:25.59 ID:yeDAUPOcQ



ζ(゚ー゚*ζ「お疲れ様でした」

<_プー゚)フ「ん……」

 屋上に続く階段。
 デレとエクストは、2人きりでそこに居た。

ζ(゚ー゚*ζ

<_プー゚)フ

ζ(゚、゚*ζ「どうしたんですか、エクスト様。
      何だか、様子が変ですよ」

<_プー゚)フ「そんなこと」

<_プー゚)フ

<_プ−゚)フ「……」

ζ(゚、゚*ζ「わっ!」

 くるん、とエクストが回転する。
 すると――真ん丸だったエクストが、黒いキャソックを纏う男へと変わった。
 生前のエクストの姿だ。



253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:07:18.33 ID:yeDAUPOcQ

ζ(゚、゚*ζ「エクスト様?」

<_プー゚)フ「……あの、さっき、兄者から、……これ貰った」

 そう言って、エクストはポケットから小さな箱を出す。
 箱を開き――その中身に、デレが目を丸くした。

 青い石がついた指輪。
 デレは、指輪とエクストの顔を交互に見た。

ζ(゚、゚*ζ

<_プー゚)フ「……俺が用意したもんじゃないけど」

 手出して、とエクストが言う。
 しかし、デレはふるふると首を振った。



254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:13:05.47 ID:yeDAUPOcQ

<_プー゚)フ「? ……嫌か?」

ζ(゚、゚*ζ「……私……おばあちゃんですよ。今は若い姿だけど……。
      本当はしわくちゃで、エクスト様よりずっとずっと年上で……」

<_プー゚)フ「……」

ζ(゚、゚*ζ「……」

ζ(゚、゚*ζ「あ、」

 デレの左手をとり、エクストは少し考えて――

 ――薬指に、指輪を通した。

ζ(゚、゚*ζ

ζ(;、゚*ζ

ζ(;、;*ζ



257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:19:59.65 ID:yeDAUPOcQ

<_プー゚)フ「……」

ζ(;、;*ζ「エクスト様……」

<_プー゚)フ「うん」

ζ(;、;*ζ「エクスト様、エクスト様ぁ……」

<_プー゚)フ「うん、うん……」

 デレが、エクストの胸元に縋りつく。
 エクストはデレの小さな顔に手を添えて、
 一瞬だけ、唇を合わせた。



259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:24:44.14 ID:yeDAUPOcQ



(゚A゚)「リア充爆発しろ!!!!!」

(;^ω^)「うわっ! 何だお!?」

('A`)「いや、何か受信した」

 校門の前に立つ、内藤とドクオ、ツン。
 これから帰宅するところだ。

('A`)「じゃ、また明日」

( ^ω^)「また明日ー」

ξ゚听)ξ「またね」

 並んで歩く内藤とツンを見送り、ドクオは溜め息をついた。
 暗くなってきたため、内藤がツンを送るらしい。

('A`)「どうせ俺は1人さ。ドクオさ……」

 寂しさを胸に、歩き出した。



260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:31:01.22 ID:yeDAUPOcQ



('A`)「?」

 鬱紫寺――我が家に帰ってきたドクオは、
 居間に見知らぬ人物がいるのに気付き、首を傾げた。

ミ*゚∀゚彡「あら、ドクオ君かな? はじめましてー」

('A`)「どうも……」

 にこにこ微笑みながら挨拶をした、中年の女性。
 彼女の隣にはドクオの母が腰掛けている。

J( 'ー`)し「ドクオ。この人ね、母さんの学生時代からのお友達。
      最近、新しくお子さんが生まれたから、って、挨拶に来てくれたの」

('A`)「はあ、おめでとうございます」

ミ*゚∀゚彡「ありがとー!」

 見れば、母が赤ん坊を抱いている。
 彼女は入口に突っ立ったままのドクオを呼び寄せた。

J(*'ー`)し「見て見て。可愛いねえ」

 抱えた赤子を、ドクオにも見えるようにする。
 あまり興味は無かったが、とりあえず覗き込んでおいた。



261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:34:36.97 ID:yeDAUPOcQ


爪*゚ー゚) キャッキャッ


 ――その赤ん坊はドクオを見ると、満面の笑みを顔に浮かべた。


('A`)

 初対面の筈だ。こんな子供、過去に会ったことなど無い。
 なのに。

 見覚えがある。この笑顔。

('A`)「……きゅ、……」

 記憶を辿ろうとするより前に、その答えが頭を過ぎった。

       o川*゚ー゚)o

 ――高岡キュート。

爪*゚ー゚) アウー、キャハハ

 ドクオが伸ばした指を掴み、赤ん坊が笑う。



264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:39:46.34 ID:yeDAUPOcQ

J( 'ー`)し「今年の夏頃に生まれたんですって」

ミ*゚∀゚彡「元気な男の子だよ!」

 夏。男の子。

('A`)「そっか」

('ー`)「……そっか、……良かった」

爪*゚ー゚) キャアキャア

 自然と、ドクオは母から赤ん坊を受け取っていた。
 少々危なっかしい抱え方だったが、赤ん坊は泣きもせず、
 ぎゅう、とドクオにしがみつく。

ミ*゚∀゚彡「随分懐いちゃったねー」

J( 'ー`)し「あら、ドクオが子供に好かれるなんて珍しい」

 気を抜いたら涙が出そうだ。
 勿論悲しみなんかじゃなく、喜びの涙が。

('ー`)「……一番の友達、な」

爪*^ー^) アウー!

 赤ん坊は、とてもとても嬉しそうに笑う。
 ドクオも――彼にしては珍しく、柔らかに微笑んだ。



268: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:45:37.34 ID:yeDAUPOcQ



( ^ω^)「はいお」

ξ゚听)ξ「別にいらないってば」

 歩きながら、内藤はツンに自分のコートを被せた。
 家から直接学校に連れてこられたツンは、防寒着を持ってきていなかったからだ。

( ^ω^)「ツンの家に着くまでだお」

ξ゚听)ξ「……じゃあ、借りるわ」

( ^ω^)「おっお」

ξ゚听)ξ「……」

ξ゚ -゚)ξ

ξ゚ -゚)ξ「ん」

( ^ω^)「お?」

ξ゚ -゚)ξ「ん!!」

 内藤は首を傾げながら、手を差し出すツンを不思議そうに見た。



270: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 11:51:04.35 ID:yeDAUPOcQ

( ^ω^)「何だお?」

ξ*゚ -゚)ξ「……あ、あんた、寒いでしょ。だから、せ、せめて、あの、」

( ^ω^)「……」

(*^ω^)「――分かったお!」

 こくり、頷いて――



 内藤は、ツンの手を握りしめた。



ξ*゚ -゚)ξ(*^ω^)


ξ*゚ー゚)ξ(*^ω^)



273: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 12:01:46.89 ID:yeDAUPOcQ





 町に雪が降り始めた。

 ――その白さと冷たさに、小さな幸せをくっつけて。










番外編:終わり



274: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 12:08:26.20 ID:yeDAUPOcQ

やっと終わった!
こんな半端な時間に投下してごめんなさい、付き合ってくれてありがとう!


代理でスレ立ててくれた方、支援保守してくれた方、読んでくれた方、絵を描いてくれた方、
まとめていただいた蛇屋さん、文丸さん、かぎまとめさん、
皆さんありがとうございました!!


これから先、せいとかいのキャラや設定で何かを書くということは、
多分無いと思います。
今回で完全に完璧に完結ってことで。多分。


質問、指摘等ありましたらお願いします

291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 15:28:26.15 ID:qseber9lO
そういえばジョルジュはどうなった
まさかずっとあのままってことはないよな?

292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/25(土) 15:38:31.89 ID:yeDAUPOcQ

>>291
  _
( ゚∀゚)「お、貞子じゃん。メリクリ」

川д川「あ……どうも……」
  _
( ゚∀゚)「最近どうよ」

川д川「あの、あれがああでこうで、……それと、」

川д川「と、友達出来たんですよ。クラスは違う子だけど……」

川*д川「えへへ……」
  _
( ゚∀゚) キュン
  _
( ゚∀゚)(……あれ、こいつ、こんなに可愛かったっけ……)



こうなってたら、とってもハートフルだよねリア充破裂しろ



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