( ^ω^)ブーンはギアスを手に入れたようです
- 1: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:01:25.55 ID:7jAMFL3B0
- ブーンの命令だお、僕に絶対逆らうなお
- 3: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:02:45.39 ID:7jAMFL3B0
「…………」
ただただ、時間だけが過ぎていく。
そんな自分に焦燥しつつも彼は動き出せずにいた。その時を待つようにして。
「もう一眠りするかお」
そう言いながら腕を枕代わりにして机に伏せる。これが彼の、内藤ホライゾンの基本形だ。
「うっす。暇そうな顔してんな」
細身に細目の男がにやけながら話しかけてきた。名前をドクオといい、内藤の数少ない友人だ。
それはドクオにとっても言えることで、机に突っ伏したまま動かないこの男ぐらいしか知り合いがいなかったりする。
「おっおっお。なに自分に話しかけてるんだお」
「んなわけねぇだろ!」
- 4: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:04:43.67 ID:7jAMFL3B0
「やぁ。お二人とも、この後どうする?」
「おいすー、ショボ。任せるお」
「あぁ俺も任せるわ」
「…………」
「正直スマンかったお。だから背後に回るのは止めてくれお」
ショボと呼ばれたこの男も彼らの数少ない仲間だ。
彼らはいつも行動を共にするのだが、仲間内でただ一人、ショボは成績優秀だ。
本名をショボンといい、性格も穏やかで言うこと無しの人物なのだが、いかんせん、個性的な性癖の持ち主だったりする。
「……ヒッ!?」
「うん、ドクオ君はいい尻をお持ちだ。安産型だね」
「おっおっお」
依然として内藤が椅子から離れようとしないのには、理由があったのかもしれない。
- 5: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:07:39.77 ID:7jAMFL3B0
これがこの物語のいつもの風景。これが彼の世界だ。
二人のやり取りに耳を傾けながら、机に突っ伏したままの体を少し傾け、窓の方を向く。
空が青い。いや赤いのか? どっちだろう。
途端に速くなる鼓動。それに息苦しさを覚えつつも、彼は待っていたといわんばかりに笑みを浮かべる。
「……そうだお。僕、今日は帰るお」
「なんだよ。つれねーな」
「ごめんお。また今度誘ってくれお」
「遊び人の君に用事ってことは余程のことだろうね。いってきなよ。僕はドクオ君と……」
「あー俺も今日は用事があった気がするぅー。ってことで今日は解散! じゃーな!」
「……チッ」
「おっおっお」
これから自分に何が起こるのか。
分からない、何も分からない。だがそれがいい。だからこそ、尚いい。
- 6: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:12:25.26 ID:7jAMFL3B0
「こんにちは」
内藤が校舎を出ると、そこには見知らぬ女性が立っていた。
彼が目の前の人物を女性と判断したのは彼女が先に声を掛けたからだ。
膝下まである長いブラウンのロングコート、ファーのフードを被っているためその顔は確認できなかったのだ。
「……誰だお、君は」
「これは、これは。私の名前はツンデレ。ツンでいいわ。よろしくね」
「そのツンが僕に何のようだお?」
「結構警戒心強いのね。まぁーいいけどさ」
「そうかお」
内藤はあくまで冷静を装っての返答。だが、確実に、彼女の登場に内藤は高揚していた。
右の拳に力が入る。足も震えだした。
「力は欲しい?」
- 7: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:16:16.08 ID:7jAMFL3B0
そう、これだ。
僕はこれを待っていた。僕は彼女を待っていた。その選択肢を待っていたんだ。
内藤は不敵な笑みを浮かべ、ツンと名乗る彼女を見据えた。
その様に、彼女は引きつりながらの笑みで応える。
「どうかしら? えーっと……名前を聞いてないんだけど」
あぁ、そういえばまだ言ってなかったな。と後ろ髪を掻きながら目は合わさずに内藤は名乗った。
「僕は内藤ホライゾンだお。ブーンで頼むお」
「ブーン? ニックネームかしら?」
「……そこまで言わなきゃいけないのかお?」
「ううん、そんなことはないわ。……それで、どうするの? 契約、結ぶ?」
そう、先ほどの話だ。
――力は欲しい?
- 10: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:19:33.35 ID:7jAMFL3B0
「欲しいに決まってるお」
答えなんてとうの昔に決めてある。悩む必要は無い。
彼女の出現に確信を持っていたわけではなかった。ただ、ひたすらに望み続けていた。
「うん、良い返事ね。そういうとこハッキリしてるヤツって嫌いじゃないわ」
「それはどうもだお」
「それじゃ、アンタに能力を与える。その代わり、その行く末を私に見届けさせなさい」
「私にとって、アンタは……」
聞き取れたのはそこで最後だった。
ツンの不敵な笑みが内藤の視界から消える。力が抜ける。徐々に意識が薄れていくのを感じながら、内藤は倒れた。
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