( ^ω^)ブーンはギアスを手に入れたようです

17: 籠屋の銀二 :2006/12/04(月) 01:23:33.13 ID:7jAMFL3B0
  

ジリリリリリという聴きなれた騒音に目を覚ます。
しかし動きは決して速いとは言えず、むしろ遅かった。

「もう朝かお? ……うわ、まだ5時じゃないかお」

折角の土曜日だというのに、と内藤は悪態をついた。昨日、間違えてセットしてしまったのだろうか。
恨む相手がいないことが余計に腹立たしかった。

「陽も昇りきってないお」

部屋のカーテンを勢いよく開けるが、日差しは入ってこない。
代わりにランニング中の中年男性を見つけることが出来た。嗚呼、なんといい朝だろうか。

「……仕方ないお。もっかい寝るお」

こんな時間に目を覚まして、もしかしたら眠れないのではないか。
そんな考えとは裏腹に、眠気はすぐに訪れた。



22: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:26:13.32 ID:7jAMFL3B0
  

目を覚まし、窓の向こうを確認すると、既に外は暗かった。
ゆっくりと布団から起き上がり、時計を手に取り時間を確認する。

寝過ぎた感は否めなかったが、疲れはとれたのだから何も言うまいとゆっくりと起き上がる。

「……行くかお」

首をパキパキと音を鳴らしながら洗面所へと向かい、冷水で顔を洗い素早く身支度を済ませる。
割と綺麗なマンションの一室。それが内藤の寝床で居場所だった。
本分は学生で、実家も学校とはそう遠くない。そんな彼が何故一人で暮らすのか。
今思えば大人気なかったかもしれないお。そう呟きながら上着を羽織った。
自分が自分としてここに帰ってくることはないだろう。
既に、一室一室が懐かしく、自分の家ではないような気すらしてきている。
この部屋で過ごす最期の一時。彼は惜しむようなそぶりも見せず、勢いよく飛び出した。
飛び出す彼は、微笑んでいた。



25: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:29:26.60 ID:7jAMFL3B0
  

どうしようか。まず何をしようか。
そんなことばかり考えながら、ひたすらに歩く。これは彼の癖のようなものだった。

「何か考えたい時はとにかく歩く。いろんな風景を見ながら考える。
すると時々、たまーにね。いいことを思いつくんだよ」
いつか昔、そう教えられた。何故だかそれは自然と身につき、今でもよく使っている。
そしてその効果も、馬鹿に出来たものでもなかったりする。

「あっ……そうだお」

丁度家から一キロほど歩いた時、彼なりの閃きが起きた。
それがいかなるものであったとしても、彼が彼の方法で思いついたことには変わりない。
自己暗示として、その言葉は正しいと縋っていることも理解していた。



26: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:32:09.80 ID:7jAMFL3B0
  

どこかに向かっている訳ではないが、出来るだけ、人目につかない場所に。
ポケットから携帯を取り出し、電話帳を調べ始める。誰でもいい、まず試せればそれでいい。

「…………」
「…………」

そう考案する内藤とすれ違う女性。些か、彼女はタイミングが悪過ぎた。
ショートの黒髪に、低めの身長。細い腕に足が、彼の欲求を掻き乱す。
鼓動が速くなるのを全身に感じた。高揚感が身を包み、震えが止まらない。そのまま彼は樮えんだ。

「……おい」
「はい……?」
「内藤ホライゾンが命じる、僕を癒し、尽くせ」

彼の眼光が深紅に輝いた。



28: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:34:34.13 ID:7jAMFL3B0
  

「……はい」

人気の少ない、小さな公園に男と女が一人ずつ。
男よりもやや年上のその女性は、彼の命令に全く背こうともせず、ただ従順と従う。
公園のベンチに座る男は、ズボンのファスナーに手を掛け、ゆっくりと降ろす。
勃起し、勢いよく飛び出した一物を彼女に見せつけると、彼女は何も言わずにそれを口内に咥えた。

「ん……んぁ……んん…………」

その様は、「させられている」のではなく「している」という方が正しいと思わせるものだった。
彼女の恍惚な表情と、意欲的な態度。
依然として咥えながらも、自らの手で扱き続ける一連の動作に、強制はなかった。
彼女の舌使いは慣らされたもので、常日頃から商売として扱っているからこそのものだ。
寒さで冷えた彼女の手も、熱く滾った一物にとっては程度に冷たく、心地いいものとして受け入れられた。

「いいお……そのまま、そのまま咥えてろお……」



30: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:37:26.40 ID:7jAMFL3B0
  

続けること数分、彼は絶頂に達した。
昇り詰める際に彼女の頭を抑え、口内に発射される液体を吐き出さないようにしたのだが、
彼女は全く抵抗しようとせずに、自らその液体を飲み干した。
そのまま休むことなく、自らの唾液と精液で汚れた一物を綺麗に舐めとり、
徐々に縮小していく一物を本気で愛しているかのような恍惚とした表情で唇を重ねた。

「も、もういいお……」

内藤は自ら萎びたものをしまい、そそくさとその場を立ち去った。
急に気が弱くなったのは放出した際の疲れからか、それとも罪悪感からなのか。
自分でも分からなくなり、そこから立ち去るしかなかったのだ。

「……え?」

彼女の瞳から輝きは薄れ、徐々に正気に戻っていく。
輝きを失うにつれ一時的な記憶障害も治まっていったが、口内に残る苦味だけは消えなかった。



31: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:40:11.44 ID:7jAMFL3B0
  

「おぇ……うぇぇ…………何よこれ……」

彼女は涙を流しながらその場で戻し、一人悪態をついていた。
その味を彼女は知っていたが、それを認めることは出来なかった。気付けば公園のベンチに倒れていて、口内には精子の味が。
認めるどころか、理解すらできない。自分はどうしていたのか。何があったのか。何も分からない。
その恐怖は更に彼女に吐き気を催した。

その様を一人、無表情で眺めている男がいた。内藤だ。
先ほどまでの、自分に求め続ける彼女の姿はそれは美しいものだった。
荒々しい息遣いに、寒さで震える細い指。何より口内のぬくもり。
だがしかし、今の彼女はどうだろう。その日に食べたであろうものを全て吐き出し、辺りに唾を吐き散らす。

「前者だったお」

場所は人通りの少ない、公園の前。無論、そこに電灯はなく
時間は既に日も落ちる頃で、お互いに、顔を確認できるほど明るくは無かった。



32: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/04(月) 01:43:14.04 ID:7jAMFL3B0
  

この能力を説明された覚えは無い。
だが、体は知っている。それが何故なのかも分からないが、それでも知っている。
だったら好きに使うだけだろう。リミットも、条件も知らされてはいないのだ。
自分で確かめるしかない。

だから自分は自分を捨てた。
今までの自分が嫌で、何も出来ないのが辛かったからだ。

「さて……今日は帰るお」

厚着をしてきたはずだったのだが、行きよりも寒く気だるさを全身に感じた。
家までそう遠くない。しかし足取りは重く、動きはお世辞にも早いとは言えない。

公園に響き渡る女性の泣き声を、小さな微笑で返した。



戻る次のページ