( ^ω^)ブーンはギアスを手に入れたようです

36: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:33:54.65 ID:duNYm6l4O
  

あれ程、騒々しかった教室が、今では円滑に授業を進めている。

「よし、それじゃ次の問題。……ショボ。お前やれ」
「はい」

担任のモララーは黒板に教科書の数式を写すと、生徒を一人指名した。
ショボは黒板の前に立つと、迷うことなく頭に浮かんだ数式を写していく。

「……よく出来たな。お前、もっといい高校狙えたんじゃないか?」
「いえ、そんな。……でも」
「ん?」
「今は少し後悔してます」
「そうか」
「自分で学校を選ばなかったことに、です」
「ふむ。……あいつらか?」
「……はい」

「彼らと仲を壊したくなかった。だから一緒に進学したんです。
 それでも結局、三人は一緒ではなくなってしまった。
 もしかしたらそれぞれの道に歩んでいればまた違ったかも、と考えてしまいます。」
「……そうか」
「ですが、僕はこれを糧にして出来る限りに進んでやろうと思います」
「…………」
「僕はこんなところで止まっていられない。一緒に、進んでいると思っていたいんです」

ショボは腕の傷跡を摩りながら、席へと戻っていった。



38: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:37:35.24 ID:duNYm6l4O
  

「あの、この人について知りませんか?」
「いーや、知らないね」
「そうですか……」

ここが何処なのか、本人にも分からない。

「ふひひ、すいません。この人を知りませんか?」
「いえ、知りませんけど……」
「そっすか。それよりこの後、時間あります?」
「あの、忙しいので……」

真っ黒く伸び放題だった髪の毛は、いつのまにかオレンジ色に染まっており
何かあるたびすぐ後ろ髪を触る癖は治っていない。

「よっし、今日も頑張るぞぉぉーー!」

そこに本人の意思はない。しかし、ドクオは歩き続ける。



39: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:42:11.34 ID:duNYm6l4O
  

「ツン、今日はどうするお?」
「…………」
「どこか、行きたいところはないかお? 僕はゆっくり寝てたい気分だおwww」
「…………」

話しかけられた少女は口を開かない。

「あ、そうだお。今日はオムライスが食べたいお」
「分かったわ」

機械的な反応で、口を開き少年に応える。
一瞬、少年の笑顔が歪み、それを隠すようにしてまたすぐに元に戻る。

「あとで一緒に買い物をするお! 今日は卵が安いんだお」
「分かったわ」
「あと、あと……」
「…………」

少女は全く表情を変えずにただただ少年の指示を待っている。
やはりそこに意志はなく、そこにいるだけだった。

「お願いだお……。……僕を、見てくれお……」
「分かったわ」



41: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:47:55.06 ID:duNYm6l4O
  

「僕は……ツンともっと遊びたいお」
「…………」
「やっぱり、ツンは違うのかお……?」
「…………」
「そうかお……。ごめんお、無理言って」
「ツン、僕の机に入ったナイフを持ってきてくれお」
「分かったわ」

とてとてと机に向かう。その姿に、愛らしさを感じた。
少女が持ってきたナイフを手に取ると、もう一度彼女に手渡しこう告げる。

「……僕の……最後の命令だお……」
「…………」
「僕を殺してくれお」
「…………」
「…………」
「…………」

長い沈黙が続く。

「…………」
「…………」

しかし、それは唐突に破られ、呻き声によって掻き消される。

「いいわよ」
「……うグッ……うううぅぅぅぅぅ…………!!」



42: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:52:13.45 ID:duNYm6l4O
  

「アンタともこれでお終いね」

先ほどまでの暗く何も考えていないような雰囲気はまるでなく、
それはかつてのツンデレに戻っていた。
その手には刃渡り十五センチ程のナイフが握られており、先端から深くまで内藤の体にずぶずぶと入り込んでいく。

「さい……ご……」
「そう、最後。今更だけど、私に能力は効かないわよ。でも面白そうだったからノッてあげちゃった。
 好きに出来るんだから襲っちゃえばいいのに……。まったく、これじゃ人形遊びじゃない」
「うぅ……うぁ……」

刃の部分が全て入りきると、それを百八十度回転させ、一気に引き抜いた。

「うがぁあぁあぁぁ!!!」

内藤の叫びが木霊する。

「そういえば、前に聞いてたわよね。能力について。この能力はね、同じ人間には一回。一つだけしか使えないのよ。
 だから同時に二つの命令を下すと最初の命令にしか従わないわよ」
「どう……い……うことだ……お」
「前に、継続力はあっても持続はしないって言ったでしょ?
 最初に命令した内容が具体的であれば、命令を受けたものは半永久的に行動を続けるわ」

内藤の意識が徐々に薄れていく。気分が悪く、その場に倒れてしまう。力も入らない。



45: ◆FpeAjrDI6. :2006/12/28(木) 03:56:04.34 ID:duNYm6l4O
  

「でもそれが、“言うことを聞け”みたいな不明確なものだと、
 その瞬間、言うことを聞くという命令で終わってしまう。分かるかしら? それが命令の継続と効果の持続ね」
「……ぅ……ぅう……」

既にツンデレの言葉は内藤には届いていない。
内藤の言葉も、ツンデレには届いていなかった。

「アンタは一度、クーにこの能力で記憶の一部を操作されてる。
 そのときの影響で、能力を渡す時の記憶が欠落したのよ。
 本来この能力は同じ人間には一度しか使えない。それを、私が無理矢理与えたから障害が起きたのかもね」
「ツ……ン……」
「割と楽しかったわ。ねぇ覚えてる? 私がアンタに最初に言ったことの続き。忘れてるだろうけどね」


「それじゃ、アンタに能力を与える。その代わり、その行く末を私に見届けさせなさい」

「私にとって、アンタは暇つぶしでしかないの」

「それを、忘れないでね」



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