('A`)ドクオの気持ちは終わらないようです

61 :猪(子持ち):2006/12/12(火) 19:38:01.62 ID:NSPKsK/90
  


( ,,゚Д゚)「それじゃ、携帯の番ご――

('A`)「はーいちょっとすいませんねぇ」

ギコとしぃの間をわざと横切り、自分の机の中を探る振りをする。

('A`)「あ、つぎは数学の授業だ! なんと、教科書を忘れてしまったー」

( ,,゚Д゚)「・・・」

完全にタイミングを外されたギコは手をポケットに入れたまま呆然としている。

愚かな。その悔しそうな表情、化けの皮がはがれてるぜ?

('A`)「ごめん、しぃさん次の授業、教科書見せてくれない?」

(*゚ー゚)「え? うん。別にいいよ」

('A`)「よかったー! いや、ほんと助かった! ありがとうな!」

(*゚ー゚)「え、う、うん。どういたしまして・・・」

・・・決まった。

さりげなく教科書を見せてもらうというイベントのフラグを立てつつ

ギコのトークを砕く見事なまでの作戦だ。



64 :猪(子持ち):2006/12/12(火) 19:43:07.48 ID:NSPKsK/90
  


('A`)・・・(ニヤリ)

行き場を失ったギコを見て、勝ち誇ったように視線を送る。

そしてそのまま自分の席に座り、ギコの入る隙はまったく無い一連の動作。

('A`)(3・・・2・・・1・・・)

カウントが0になる。その瞬間、授業開始のチャイムが鳴り響いた。

('A`)「あーチャイムが鳴っちゃった! ほら、みんな席につかないとダメだぞ!」

言いながらギコをチラ見、激しくチラ見。

もういっちょおまけにチラ見した。

( ,,゚Д゚)「・・・そ、それじゃ」

(*゚ー゚)「う、うん」

('A`)(ふ・・・ふははは・・・!!)

愚かだ、滑稽だ!! 俺は心の中で大いに笑い、勝利に酔った。

これで間違いなく俺>>>>>>>>越えられない壁>>>>>深海>>>>>>クソギコ

という方程式が完成しただろう。



73 :猪(子持ち):2006/12/12(火) 19:48:51.50 ID:NSPKsK/90
  

(*゚ー゚)「机、くっつけようか?」

('A`)「あ、おう。頼むわ」

心は酔っていても表面はクール。

それが俺クオリティ。ギコには一生わからんだろう。

(*゚ー゚)「ここの学校の数学って結構難しいらしいね」

('A`)「ああ、そんな噂はよく聞くね。ま、俺はよく知らないけど」

いつも寝てるからワカンネ。

まぁそんなことはいい、それよりもこの密着。

人は密着することにより好感度が高まり、非常に恋に落ちやすいと本で読んだ。

('A`)(しぃの匂いハーハー・・・綺麗な髪・・・ウッ!)

改めて近くにいるしぃの横顔に、俺は授業どころでは無い。

授業に集中する振りをして、少し、また少し近寄る。

(*;゚ー゚)(なんか・・・さっきより近いなぁ)



78 :猪(子持ち):2006/12/12(火) 19:53:38.03 ID:NSPKsK/90
  

('A`)(ああ・・・幸せだ・・・)

女性特有の香りとフェロモン。

いや、それはまさに天使のものであった。

俺の周りを天使が舞っている。

皆、俺たちのことをおめでとう、おめでとうと祝福する。

('A`)(みんな、ありがとう。うふふ、うふふふふ――)

(*;゚ー゚)「あの、ドクオ君・・・?」

不意に現実がリターンしてくる。

その声に、俺はすぐさまクールモードに入った。

('A`)「ん? なんだい?」

(*゚ー゚)「その、ノートに何も書いてないけど大丈夫?」

ん、ノート? ノート・・・

('A`)(ほわっちゃああああああ!?!?)

黒板にはすごい量の計算式、方程式が書き込まれていた。



83 :猪(子持ち):2006/12/12(火) 19:58:11.82 ID:NSPKsK/90
  


('A`)「はは、あ、頭の中で解いちゃってさぁ。それで書くのはナンセンスだろう?」

(*゚ー゚)「え、すごい! 数学も得意なんだ!」

('A`)「ま、まあね。オールマイティですよ、俺は。ははは・・・」

えー、非常にやばい。ただでさえ赤点です。

先生に土下座する方法は去年使ってしまいました。

でも今更ノート書けない・・・

('A`)「ごほんごほん!」

咳で落ち着かせる。まずい、今当たったら非常にまずいですよ・・・

俺は腹に力を入れ、神に祈る・・・

('A`)(あたるな・・・あたるなよー!!)

だが、それが失敗だった。

急に緊張と不安に襲われた俺の腹が悲鳴を上げ始めたのだ。

('A`)(ぐ、わ、あ、あ、あ、あ・・・!!)



87 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:02:17.35 ID:NSPKsK/90
  

ふふ、ふふふ。

冷や汗が垂れてくるぜ・・・ここは戦場。

腹という名の戦場で、善玉菌と悪玉菌が戦いを繰り広げている。

('A`)「お・・・おふぅ・・・」

(*゚ー゚)「ん、どうしたの?」

('A`)「い、いや。なんでもないでござる・・・」

しまった、冷静な口調が僅かに乱れる。

この腹痛はやばい、危険度MAXだ。

その時、第一波が俺の善玉菌を巻き込み、本州に上陸した。

('A`)(うおおおおおぉぉ・・・おぉぉひゅうう・・・ひゅう・・・)

ゴロゴロと雷鳴が響く。

俺の腹の中ではち切れんばかりに門をこじ開けようと反乱が起こっている。

神、神よ! 我に加護を与えたまえ・・・っ!



93 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:06:47.89 ID:NSPKsK/90
  

「よーし、この問題を・・・今日は12日だから、ドクオ!」

('A`)「ひゃい!?」

「何をやってる、早く前に来て解きなさい」

なんという不幸・・・!!

腹痛と数学の問題という二つの波が俺に押し寄せているっ・・・!

(*゚ー゚)「頑張ってねw」

('A`)「う、うぇい」

もはや・・・言葉を出すとあっちも出る。

衝撃、衝撃を与えないように静かに立ち上がるのだ。

腹を、腹を守るべく中腰、そして猫背。

('A`)(善玉菌よ・・・! たのむ、もってくれ!!)

俺の内と外の戦いのゴングが鳴った。

俺が最後の戦いに挑むようです・・・ふ、映画化決定・・・っ!



100 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:13:21.00 ID:NSPKsK/90
  


ふらふらと猫背で前へ行き、黒板の前に立つ。

「お前、なんでそんな猫背なんだ?」

('A`)「べ、別に・・・」

冷や汗が垂れる・・・。もはや返事をする余裕も無い。

はやいとこやってしまおう、そう思い問題を見る。

('A`)(これは、なんという方程式・・・! 一目見ただけで無理と悟ってしまった!)

チョークを手に取る、だが、書けるものなど何も無い。

だが、しぃの前で数学が得意、と見栄を張った以上やらないわけにはいかない。

その時、無常にも第二波が防波堤を越え、都市に襲い掛かった。

('A`)「ハッグォ・・・な、なるほどぉ・・・」

そう来たか、俺は静かに精神を集中する――



101 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:16:32.61 ID:NSPKsK/90
  


神「あなたは、私を信じますか?」

('A`)「はい、信じます」

神「永遠の信仰を誓いますか?」

('A`)「はい! だから、この苦しみを解いてください!」

神「いいでしょう・・・ハッ!!」

光が溢れる。

聖なる加護が俺の体を包み、体の全細胞がそれに答える

そして、世界が流転し腹痛が綺麗に消えて――


ぶりぶりぶりべちゃべちゃっぶりぶりべちゃっべちゃべちゃぶりぶりぶり!!!!
ぶぼぼぼぼぼぶりりりりりぶちゃ!!!!!


世界は、消滅した。



108 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:18:42.95 ID:NSPKsK/90
  

('A`)「・・・」

(*゚ー゚)「・・・」

(´・ω・`)「・・・」

( ^ω^)「・・・」

( ,,゚Д゚)「・・・」


くるり、と俺は先生の方を向く。

('A`)「先生、トイレいってきて、いいですか?」

そのズボンからは聖なる雫がポタポタと垂れている。



113 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:24:39.78 ID:NSPKsK/90
  




そして――そして、そして。

俺は、トイレでその惨状をじっと見る。

消滅したパンツは、その脅威ゆえ誰一人として生き残った住民はいなかった。

('A`)「それが世界の洗濯か・・・」

そう、人間など無力だ。

いざと言う時、一人ではどうすることもできないのだから。

その惨劇の被害の恐ろしさに、ただ呆然とトイレで立ち尽くす。

ふふ、神だけに、紙に掛けやがって・・・



119 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:27:47.30 ID:NSPKsK/90
  

(´・ω・`)「おーい、大丈夫・・・ってこれは臭い」

( ^ω^)「どうみてもうんこですお。本当に(ry」

・・・外から、声が聞こえてきた。

ブーンとショボンの、俺がよく知る声だった。

('A`)「・・・なんだよ、お前ら」

壁越しに話かける。

笑いに来たのだろうか、ふふ。それはそうだ。

さっきまで幸せの絶頂にいた男が、今はこの有様なのだ。



128 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:33:41.43 ID:NSPKsK/90
  

( ^ω^)「ドクオー、お腹大丈夫かお?」

(´・ω・`)「着替えも保健室から持ってきたよ」

ブーンとショボンは俺にやさしく声を掛ける。

('A`)「・・・同情かよ。いいよ、お前ら笑いにきたんだろ? 存分に笑えよ」

俺はトイレの脇に小さく丸まって座る。

惨めだ。惨め過ぎる。

下半身裸で上は学ラン。まさに負け組、まさに敗者。

(´・ω・`)「病人が何言ってんだか」

( ^ω^)「病人にかっこいいもかっこ悪いも無いお。早くでてきて着替えるお」

('A`)「お前ら・・・」

不意に、目頭が熱くなる。

なんで、だよ。なんでそんなに優しくしてくれるんだよ・・・っ

('A`)「俺、俺は・・・」

感情が言葉にならない。自然と涙が目から溢れてくる。



129 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:36:51.91 ID:NSPKsK/90
  

ガチャリ、と鍵を開け、トイレから出る。

('A`)「お前ら・・・俺は、俺はこんな惨めな姿なんだぞ!?」

学ランと震える息子をさらけ出す。

その腕には、聖なる裁きを受けたズボンとパンツ。

('A`)「ほら、惨めだろ! 笑え、笑えよ!!」

俺はこれでもか、と言わんばかりに仁王立ちする。

その目には涙が溢れ、視界が歪んでいた。

(´・ω・`)「ドクオ・・・」

( ^ω^)「・・・」

二人は、優しい目をしてドクオに近づいていく。



132 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:40:43.94 ID:NSPKsK/90
  

(´・ω・`)「大丈夫、大丈夫だよ・・・」

( ^ω^)「ほら、早くこれに着替えるお。風邪ひいちゃうお?」

そう言いながら、ブーンは俺に着替えを差し出す。

('A`)「お前ら・・・うわぁっぁぁあん!!!」

俺は、泣いた。

息子も隠さず、盛大に泣いた。

嬉しかったのだ。優しさが、ぬくもりが。

('A`)「おれ、俺もう駄目だと思ったよぉぉ!! 怖かったんだよおお!!」

(´・ω・`)「うん・・・うん・・・っ!」

( ^ω^)「大丈夫・・・もう大丈夫だお!」

二人は俺の話をしっかりと受け止める。

彼らの目にもまた、涙が溢れていた。



139 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:45:29.43 ID:NSPKsK/90
  

('A`)「俺、俺、うんこもらした時もう駄目だと思った!!」

やがて、俺は不安だった気持ちを全てぶちまける。

('A`)「もう明日から学校来れないって、お前らも愛想つかしてもうだめだと思ったっ!」

嗚咽をしながら、俺は続ける。

('A`)「だけど、お前らが来た時、急に嬉しくて・・・安心して・・・っ!」

(´・ω・`)「ドクオ・・・バカだなぁ」

ショボンも涙を浮かべ、鼻をすすりながら言う。

(´・ω・`)「僕達は、どんなことがあったって友達だよっ!」

( ^ω^)「そうだお! 苦しい時は僕らに甘えてもいいんだお!!」

( ;ω;)「うっ・・・いいんだお。ドクオ、甘えていいんだおっ・・・」

三人の泣き声が、男子トイレに響く。

俺たちは、泣いた。思う存分泣いた。



148 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:50:42.24 ID:NSPKsK/90
  



('A`)「・・・よし、着替えたぜ」

( ^ω^)「おっおww着替え終わったかお?」

(´・ω・`)「教室と廊下のやつは僕達が掃除しといたから」

('A`)「おう、何から何まで悪いな」

俺たちはトイレの前で話していた。

やがて、チャイムの音が学校に鳴り響く。

(´・ω・`)「やば、3時間目始まるんじゃね?」

( ^ω^)「うーん、どうするお?」

俺は、二人に向かって微笑みかける。

そのアイコンタクトを二人は受け取り、頷いた

('A`)「たまには、さぼりもいいんじゃね?」



157 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:57:35.55 ID:NSPKsK/90
  


( ^ω^)「おっおw大賛成だおw」

(´・ω・`)「そうだね、今いっても気まずいしね!」

二人は乗り気で答える。

俺は濡れたズボンとパンツをビニール袋にくるみ、手に持つ。

('A`)「んじゃ、とりあえずゲーセンでダンレボでもやるか!!」

(´・ω・`)「いいねぇ、負けた人はアイス奢りで。」

( ^ω^)「その勝負乗ったお!!」

('A`)「んじゃ、行きますか!!」

三人は階段を降り、下駄箱へと向かう。

本当に、心から楽しそうに笑いながら、歩く。



164 :猪(カビ):2006/12/12(火) 20:59:46.54 ID:NSPKsK/90
  

――俺のお話は、これでおしまいだ。

けど、俺たち三人の友情は、ずっと、ずっと続く。

たとえ神がいようとも、ね。

神は世界を滅ぼし、そこに新たな世界を作る。

それはいいことかどうかわからない.

けど、どんな脅威が来ようとも消えない絆だってある。

その絆の強さは人それぞれで違うけれど

俺達のこの気持ちは、終わらないのは確かだった。




            fin



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