( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです

199: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:38 Fd8YXmfM0
  

その2:「ξ゚听)ξツンの2月14日なようです」



200: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:38 Fd8YXmfM0
  

ξ゚听)ξ「……ふ〜っ、こんなもんかしら?」

汗は出てないけど、なんとなく額を拭ってみる私。
目の前にあるテーブルに置かれた変な物体を見て、ふぅ、と一息つく。

――どうも、ツンです。

2月14日という事なので、手作りチョコというモノに挑戦してみたのですが。
料理やお菓子作りなんてほとんどしないので、本を読みながらのダラダラ作業でした。

それで、正直失敗でした。

一応完成したのですが、なんだか見た目がイマイチです。
「そんなの目を瞑ってても作れるだろwww」とか思ってたんですが、現実は甘くありませんでした。

ξ゚听)ξ「……やっぱり市販のもので済ませるべきだったかしら?」

めんどくさいし、なかなかうまくいかないし。

世界各国のショコラティエのみなさん、本当にごめんなさい。
舐めてかかった私が馬鹿でした。無知な私をどうかお許しください。

ξ゚听)ξ「……さぁ〜て、どうしたものかな、これ」

完成した自作のチョコを見つめ、考える。
この「さびた大きな塊」っぽい物体に、どんな工夫をすれば見栄えがよくなるのか――と。

ξ゚听)ξ「これ使って生産してもハンマーは作れそうにないしなぁ〜……」

……なに訳の分からない事言ってんだろ、私。



201: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:39 Fd8YXmfM0
  

ξ゚听)ξ「む〜ん……」

ξ゚听)ξ「う〜ん……」

ξ゚听)ξ「――そうだ! ラッピングを工夫すればいいんじゃない!」

思考時間は、なんと約3秒。
そして出たのは、ラッピングで魅せようというもの。
でも……3秒で考え出した案にしては、なかなかマトモなほうじゃないかしら?

誰でも思いつくような気がしないでもないけど、考えたら負けだと思ってます。

そうと決まれば、さっそく行動開始。
ラッピング用紙を探すべく、戸棚やら食器棚やらの中を探す事にしました。
ナイスアイデアが思いついたので、ちょっと上機嫌だったりします。

ξ゚ー゚)ξ「ふんふふんふふ〜ん♪」

えーっと、ラッピング用紙は……っと。
普段使わないようなモノだから、普段使わないような場所にあるかもね。

まずは戸棚から。
パカッと開けて中を見てみると――あらビックリ。



202: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:40 Fd8YXmfM0
  

ξ゚ー゚)ξ「あははwwwなにも入ってないやwwwww」

なんと、スッカラカンでした。
何も入ってないなんて、生活感もなにもあったもんじゃないですね。
「しかし、なにもなかった!」なんてのは、ドラクエだけでお腹いっぱいって感じですよね。

ξ゚ー゚)ξ「ま、我が家にはよくある事――って事にしときましょう」

戸棚をパタンと閉めて、次にあたる。
次は食器棚でも探してみるかな? まあ……ないとは思うけど。

ξ゚听)ξ「――あっ!」

食器棚に手をかけた、ちょうどその時。
第2のナイスアイデアを思いつき、私はふと手を止めました。

ξ゚听)ξ「お母さんに聞けばいいだけの話じゃない!」

そうだ、それが一番手っ取り早い。
そうすればきっと、見えなかったものも自ずと見えてくる筈だ。

ξ゚ー゚)ξ「よし! では早速訊いてみるとしますか!」

それにしてもこの私、ノリノリである。



203: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:41 Fd8YXmfM0
  

ξ゚听)ξ「――そんな訳で、お母さんの部屋にやってきたのだ」

綺麗に整理されている、6畳ほどの部屋。
多くの家具は私が生まれるより前から使っているらしく、ちょっと古ぼけて見える。
けれど、母が色々と細工をしているらしく、あと10年は使えそうなほど健全。
昔から使っているものに愛着があるようで、なかなか買い換えようとはしない。

そんなこんなな母の部屋。
私はこの部屋がとても気に入っている。
そして、その部屋にいる母も大好きです。口には出さないけどね。

ベッドで横になり、昼真だというのに寝ている母。
病気でもなければ二日酔いでもなく、暇だから寝てるだけ。
そんなグータラな母ですが、やる時はちゃんとやる人なんです。

ξ゚ー゚)ξ「おかーさーん、ちょっといいかな?」

ユサユサと体をゆすり、起こそうと頑張ってみる。
すると母は横になったままで、声だけで答えてくれました。

('、`*川「……うぅ〜ん……ツン? 私に何か用?」

眠そうな、めんどくさそうな声。
まさに寝起きというような状態ですね。

ξ゚ー゚)ξ「ペニス母さん、ラッピングに使う紙ってどこにあるの?」

('、`*川「……あのぉ、ツンさん? 私の名前はペニサスなんですけど」

ξ゚ー゚)ξ「ごめんごめんwww間違えちゃったwwwww」

('、`*川「わざとでしょ」



204: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:41 Fd8YXmfM0
  

ペニサス伊藤、それが私の母の名前。
1歩間違えれば男性器になってしまう、まさに諸刃の剣。

('、`*川「朝っぱらからからテンションが高いわね、ツンは……」

上半身を起こして、けだるそうに喋る母。
普段は綺麗に整えられている長い黒髪が、寝起きでボサボサになっている。

私の髪とはまるで違う、まっすぐ伸びた髪。
いかにしてこれから私が生まれたのかと、時々疑問に思ったり。
顔つきはどことなく似てるような、あんまり似てないような。

ξ゚ー゚)ξ「今は朝じゃないよ?」

('、`*川「へえ……じゃあ夜なの? ならおやすみー……」

いや、昼ですから。
だからまだ寝ないでくださいよ、お願いだから。

ξ;゚ー゚)ξ「待ってよ。その前に私の質問に答えてよ」

('、`*川「ほいほい。質問ってなんだったっけ?」

ξ゚ー゚)ξ「ラッピング用の紙ってどこにあるの? って話」

('、`*川「なーんだ、そんな事か。サランラップなら台所に――」

ちょっと待てよコラ。
会話が微妙に噛み合ってないじゃないですか。

ξ;゚ー゚)ξ「……お母さん? それはひょっとしてギャグで言ってるの?」

('、`*川「ばれた?」

ξ゚ー゚)ξ「怒るよ?」



205: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:42 Fd8YXmfM0
  

ξ゚ー゚)ξ「……それで、ラッピング用の紙ってどこにあるの?」

('、`*川「ない」

超即答。
これぞまさしく「神速のインパルス」。

ξ;゚ー゚)ξ「え?」

('、`*川「そんなの都合よくある訳ないじゃない」

ξ;゚ー゚)ξ「……え? ないの?」

('、`*川「お店に行けばあるんじゃないの? じゃあおやすみー」

母はそう言うなり、布団を頭までかぶってしまいました。
……こうなってしまうと、起こしてもなかなか起きてくれないのが私の母です。

ξ゚听)ξ「……はあ、買ってくるしかないのかなぁ」

なんていうか、思わず意気消沈してしまいました。
まあ、事前に買っとかなかった私が悪いんだけど。

とりあえず部屋を出ようと、母のベッドに背を向けて。
1歩進もうとした、その時――

('、`*川「……ツン、ちょっといいかな?」

背後から母の声がしたので、振り返ってみました。



206: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:42 Fd8YXmfM0
  

ξ゚听)ξ「どしたの?」

振り返ってみると、あらビックリ。
布団がこんもりと盛り上がっていました。

……どうやら母は、布団から出るのもめんどくさいようです。

('、`*川「今日のツンって……なんか楽しそうだね」

ξ゚听)ξ「……そう見えるかしら?」

たしかに、そうかもしれない。
なんか妙に独り言も多いし、ノリがいつもとちょっと違うような気がするし。

('、`*川「あれでしょ? バレンタインってやつでしょ」

もごもご言ってて、ちょっと聞き取りにくい。
布団で隠れてて顔は見えないけど、なんとなく笑っているような感じがした。

ξ゚听)ξ「まあ、そんなトコかな」

('、`*川「えーっと……ブーム君だったっけ? あの子の名前」

ξ゚听)ξ「誰それ? ブーンなら知ってるけど」

('、`*川「ああ、それそれ。ごめん間違えた」

人を呼び止めておいて、何がしたいんでしょうかこの人は。
自分から話を切り出したんだからせめて顔ぐらいはみせてほしいものです。

ξ゚听)ξ「それで、ブーンがどうしたの?」

('、`*川「彼の事はどうでもいいのよ、別に。ただ――」

ξ゚听)ξ「……ただ?」

('、`*川「女としてのアドバイスをさせてもらおうと思ってね」



207: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:43 Fd8YXmfM0
  

('、`*川「特別な日だからって、別に気取らなくてもいいと思うわよ」

ξ゚听)ξ「いや、別にそんなんじゃ……」

別にそういう訳じゃない。
そういうつもりなんじゃなくて、ただ――

('、`*川「だって相手はあのブーン君なんでしょ? それに――」

……それに?

('、`*川「特別な日が特別じゃないような関係ってのも、なかなかいいものよ」

なにやら意味ありげな一言。
普段はあんな感じの母だけど、よく分からない説得力がある。

でも――

ξ゚听)ξ「……よくわかんない」

('、`*川「まあ、あくまで私の話だからね。分からなくてもいいのよ」

('、`*川「んじゃ、おやすみー」

そう言いながら、もぞもぞと動く母。
どうやら、盛り上がった布団を元に戻しているっぽい。
数秒後には布団をまっすぐ正し終え、すやすやと静かな寝息を立て始めた。

なんという寝つきのよさ……これは間違いなく最速



208: ◆wUOiOOQQF. : 03/12(月) 21:44 Fd8YXmfM0
  

部屋を出て、廊下を歩く。
頭の中では、母が言った言葉の事を考えながら。

ξ゚听)ξ「……お母さんは一体、何を言いたかったんだろう?」

特別な日が特別じゃないような関係。
その言葉は、一体どういう意味なんでしょうか。

他人、無関心。
私にはどうも、そういう言葉しか思い浮かびません。

ひょっとしたら、もう関わるな――という意味なのかな?

ξ゚听)ξ「……それはないわね」

それはない。
私の母に限って、そんな事を言うのはありえない。

ξ゚ー゚)ξ「我関せず、って感じだもんね」

そう思うと、自然と笑みがこぼれてしまった。
それと一緒に、よく分からない元気がこみ上げてきた。

ξ゚ー゚)ξ「どうせ相手はブーンなんだしね」

そう考えると気が楽だな。
ちょっと本人には失礼かもしれないけど。

ξ゚ー゚)ξ「普通が一番、だよね」

約束の時間まで、まだまだ余裕があるようだし。
それまでにできる範囲で、頑張ってみるとしますか。



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