( ´_ゝ`)兄者はバルトアンデルスのようです

269:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:21 toAC/8za0
  

その6:「みんなの2月14日のようです」



270:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:21 toAC/8za0
  

2月14日、正午。
冬だというのに日差しが強く、寒さはあまり感じられない。
いてつくような冷たい風が吹く事もなく、薄着をしていても支障はなさそうだ。

そんな気候の中、とあるコンビニにて。
集いし若者達の手によって、運命の扉――もとい、コンビニの自動扉は開かれた。



271:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:22 toAC/8za0
  

コンビニの自動扉が開き、若者達は歩み始めた。

先へ。
運命へ。
敵であった者の元へ。
かつて共に過ごした友人達の元へ。

彼らは知らずとも、運命はその道を知っている。
奇跡でも偶然でもなく、出会うべくして辿り着いた者達を。


もちろん、この文章は作品の内容とは全く関係ない。



272:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:22 toAC/8za0
  

扉が開き、客が数名訪れた。
それを確認したドクオは、テンプレ挨拶で接客。

('A`)「いらっしゃいませー」

取り繕った業務用スマイル。
よくジョルジュに「きめぇwww」とか言われるが、それはどうでもいい。

('A`)(……あ、あれは――)

今、最も重要な事。
たったひとつの事柄のみが、ドクオの思考回路を支配していた。
その事により彼の瞳はほとんど機能しておらず、ある1点を穴の開くほど見つめている。



273:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:23 toAC/8za0
  

今、最も重要な事。
それはバイトの仕事ではない。
かといって、サボっているジョルジュでもない。

今、最も重要な事。
ドクオの視線の先、漆黒の黒髪を持つ女性。

川 ゚ -゚)「このコンビニ、相変わらず品揃えがイマイチだな」

それは紛れもなく、ドクオの想い人であるクーだった。



274:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:23 toAC/8za0
  

黒い瞳に、闇夜のような漆黒の黒髪。
見事なまでに整った顔立ちに、すらりとした肢体。
それらのひとつひとつがドクオにとってストライクで、もうドキがムネムネだった。

川 ゚ -゚)「兄者、チョコを買う前に立ち読みしていいか?」

( ´_ゝ`)「かまわないぞ。俺も立ち読みしたいし」

兄者と会話しているクー。
その光景を見つめるドクオの目には、兄者の姿は映っていない。
意識して映らないようにしているのかは分からないが、とにかく映っていなかった。



275:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:25 toAC/8za0
  

ドクオは考える。
声をかけるべきなのか、かけないべきなのか。

(;'A`)(どうするよ俺!? どうする!?)

暴走するドクオ。
この程度でこれほど緊張する時点でアレだと思われるが。

(;'A`)(待て待て待て。こういう時は素数を数えるんだ)

と、プッチ神父が言っていた。
素数は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字。
私に勇気を与えてくれる――とかなんとか。

(;'A`)(2、3、5、7、11、13、17……)

1と自分の数でしか、素数は砕けない。
でも、ダイヤモンドはトンカチで叩けばあっさり砕けるらしい。
その事を考えてみると、「素数>>>越えられない壁>>>ダイヤモンド」なのかもしれない。

(;'A`)(あ、やべぇ。緊張しすぎてトイレ行きたくなってきた)



276:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:25 toAC/8za0
  

そんなこんなしている間にも、クーは徐々に進んでゆく。
その隣にやる気のなさそうな顔をした男がいるが、それはどうでもいい。

コピー機の前を通り過ぎ。

雑誌コーナーに差し掛かり。

そこで立ち読みしているジョルジュを発見し。

ふう、と息を吐いて数歩後退して距離を取り。

疾走して勢いをつけ、たん――と、力強く床を蹴って跳躍し。

川 ゚ -゚)「せいっ!」
  _
(#)∀゚)「めきゃっ!」

ジョルジュを蹴り飛ばした。



277:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:26 toAC/8za0
  

――飛んだ。

人間が飛んだ。
  _
(#)∀゚)「ヤッダーバアアアアァァァ」

翼を持たず陸に生きる生物が、飛んだ。
奇声を発しながら、まるで紙切れのように、ひらひらと。

('A`)(……わーお)

ドクオは見た。
宙を華麗に舞う、ジョルジュの姿を。
きりもみ落下しながら成人誌コーナーに突っ込んでゆく、漢の最期を。

('A`)(みんな……知ってるかい? 人間って飛ぶんだよ)

崩壊してしまった棚とジョルジュを見ながら、心の中で呟くドクオ。
あまりにも突拍子のないサプライズに、先程までの緊張感はもはや消えてなくなっていた。



278:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:26 toAC/8za0
  

  _
(;゚∀゚)「おいおいおい! なんでお前らがいるんだよ!?」

叫ぶジョルジュ。
体を覆い隠す成人誌(俗称エロ本)を払いのけながら、急いで上体を起こす。

( ´_ゝ`)「客だから」

川 ゚ -゚)「こっちのセリフだ。なんでお前がここにいるんだ?」

問いかけるクー。
無情なまでの無表情でジョルジュを見据え、冷たく言い放つ。
  _
(#゚∀゚)「なんで――って、バイトだよバイト! 文句あるか!?」

キレ口調のジョルジュ。
まあ、突然理由もなく蹴りを入れられたら、誰だって怒るだろうが。
しかし、くだらない理由で攻撃された過去を持つクーからしてみれば、はたしてどうなのだろうか。



279:◆wUOiOOQQF. :04/05(木) 19:27 toAC/8za0
  

(*゚∀゚)「なになに、なにこれ? 一体なんの騒ぎ〜?」

ミ,,゚Д゚彡「ナニナニうっせーよ」

ジョルジュの怒鳴り声を聞き、駆けつけてきたつーとフサ。
床に散乱しているエロ本をかわしながら、ジョルジュの元へと近づくが――

(*゚∀゚)「あっ!」

突如、つーが足を止めた。
嬉しそうに微笑む彼女の視線の先、そこには――

(;´_ゝ`)「げっ、変な女!」

川 ゚ -゚)「お前は……変な女!」

かつて、敵という形で対峙した――兄者とクーがいた。



296: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:55 0HZYOwW30
  

兄者は忘れはしない。

商店街で突然、つーに攻撃された過去を。
ジョルジュやフサと共に家に上がりこんできたという事実を。

だからつーは、兄者から見れば「敵」だ。
百害あって一利なしの、排除すべき存在でしかない。

もちろん、クーにとってもそうである筈だ。

筈なのだが。

少なくとも、兄者はそう思っていたのだが――

川 ゚ -゚)「久しぶりだな」

(*゚∀゚)「クーちゃんこそ元気だった〜?」

川 ゚ -゚)「私はすこぶる元気だったぞ」

クーとつー。
敵同士であろうこの2人、なかなかフレンドリーである。



297: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:56 0HZYOwW30
  

兄者は思い出す。

憤怒の形相でつーを追い、必要以上に叩きのめしたクーの表情を。
クーの圧倒的な力を前にして敗れ去り、いつか復讐せんと叫ぶつーの表情を。

そのどちらにも共通する点。
それはお互いに対する「憎しみ」や「恨み」といった感情だ。

しかし。
対面した当人達が浮かべている表情は――

(*゚∀゚)「クーちゃんはどうしてここに?」

川 ゚ -゚)「うむ、そこの馬鹿にチョコを買ってやろうと思ってな」

かたや笑顔。
かたや無表情。
激昂する訳でもなく、憤慨する訳でもなく。
いたって平和なその表情からは、いつぞやの鬼気迫る表情の面影は微塵も感じられない。

ミ,,゚Д゚彡「なにこれ? あの2人って仲良かったの?」

( ´_ゝ`)「さあ? むしろ俺が聞きたいわ」

その光景を見て、首を傾げる兄者とフサ。
当時の敵対っぷりを知る彼らからしてみれば、この状態はにわかに信じがたいものだった。



298: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:57 0HZYOwW30
  

(*゚∀゚)「へぇ〜、なら私と一緒だね」

川 ゚ -゚)「ほう、これまた偶然だな」

そんな2人などお構いなしに、喋り続けるクーとつー。
その様子を傍から見ていると、もはや仲の良い友人同士にしか見えない。
兄者の話だとか、フサの話だとか。
会話の内容は身内の話に発展し、ますますヒートアップしてゆく。

( ´_ゝ`)「随分と仲良さげですね」

ミ,,゚Д゚彡「そーですね」

それを呆然と見つめる、傍観者約2名。
ただ立ち尽くしたままの状態で、兄者は考える。

はたして、こんなんだっただろうか。
一見すると違和感はないが、どうも記憶と食い違っているような。



299: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:58 0HZYOwW30
  

ちょうどクーとつーが話している時、レジにて。
悩める1人の男が今、ひとつの決心を固めていた。

('A`)「……よし、決めた! この気持ちを伝えるぞ!」

意気込むドクオ。
この決心は、もはや揺るがないだろう。
なぜなら、彼自身が決めた事なのだから。

まあ、その先に待っている結果は分からないのだが。

よし――と気合いを入れて、己が進むべき道を1歩踏み出した。



300: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:58 0HZYOwW30
  

1歩。

高鳴る心臓の鼓動を抑え、また1歩。

緊張のあまりに鼻息が荒くなってきたが、さらに1歩。

鼻の穴から何か飛び出たような気がしたが、気にせずもう1歩。

('A`)(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……)

逃げ出してしまいそうな自分の心に言い聞かせ、先へ進む為の1歩。

そして――



301: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:59 0HZYOwW30
  

ついに辿り着いた。
つーとなにやら話しこんでいる、クーの背後に。

手を伸ばせば届いてしまう範囲に。

声をかければ聞こえるであろう距離に。

もうドクオの呼吸は荒くない。
未知への恐怖を克服した今、彼に迷いはないのだから。

('A`)「ついに……ここまできたか」

ふう――と、深呼吸。
伝えたい言葉をしっかりと選び、いざ――

('A`)「クーさん! 俺は……あなたが好きだ!」

('A`)「一万年と二千年前から愛してる!」

叫ぶ。
自分の気持ちを。
嘘偽りのない、ありのままの言葉を。
かつてないほどの大声で、しっかりと聞こえるように。

そして、クーから返ってきた言葉は――



302: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 18:59 0HZYOwW30
  

川 ゚ -゚)「やかましい!」

背を向けたまま一言。
その言葉と共に、彼女は右足を1歩引く。

残した足を軸に、回転。
その勢いを拳に乗せ、後方に立っているドクオ目がけて――

(#)A゚)「べちっ!」

 裏 拳 を 放 っ た 。

振り抜いた手の甲が、標的の右頬を強打。
めきょっ、という妙な音と共に、その体ごとドクオを吹き飛ばした。

川 ゚ -゚)「大声で喋るな。耳に響くだろうが」



303: ◆wUOiOOQQF. :04/19(木) 19:00 0HZYOwW30
  

――飛んだ。

人間が飛んだ。

(#)A゚)「うわー」

翼を持たず陸に生きる生物が、飛んだ。
奇声を発しながら、まるで紙切れのように、ひらひらと。
  _
( ゚∀゚)(……わーお)

ジョルジュは見た。

宙を華麗に舞う、ドクオの姿を。
きりもみ落下しながらレジへと帰ってゆく、漢の最期を。

ジョルジュは聞いた。

背中から叩きつけられたドクオが漏らした、情けない声を。
そのままレジに突っ込んだドクオに破壊された、様々な機材の断末魔を。
  _
( ゚∀゚)(改変コピペうぜぇ)

崩壊してしまったレジとドクオを見ながら、心の中で呟くジョルジュ。
声のかけようもないほど悲惨なこの状況にも、彼は一切の感情を抱くことはなかった。
  _
( ゚∀゚)「だって、俺のせいじゃねーもん」



350: ◆wUOiOOQQF. :07/15(日) 23:43 yQR8ccFQ0

( ´_ゝ`)「おお、なかなかの飛距離だな」

川 ゚ -゚)「うむ。我ながら見事な横スマッシュだった」

( ´_ゝ`)「使い勝手が悪そうな横スマッシュだな」

吹っ飛んだドクオを見ながら話す2人。
見ず知らずの男を殴り飛ばしたというのに、極めて冷静だ。

飛ばした張本人は、裏拳が綺麗に決まったのでご満足なようで。
レジ周辺が悲惨な状態になっているが、気にしちゃいけないし、気にしない。

( ´_ゝ`)「そんな事よりさ、さっさとチョコ買おうぜ」

川 ゚ -゚)「それなら問題ない。既に購入済みだ」

( ´_ゝ`)「そうか……って、いつの間に買ったんだよ?」

川 ゚ -゚)「細かい事は気にするな」

そう言うクーの手には、いつの間にかコンビニのビニール袋が握られていた。
いつから持っていたのかは分からないが……まあ、どうでもいい。



351: ◆wUOiOOQQF. :07/15(日) 23:43 yQR8ccFQ0

川 ゚ -゚)「ちょっと待ってろ」

クーはビニール袋に手を突っ込み、その中を漁る。

その光景を見た兄者は「クーのビニール袋の中身=狼のフン」なんて事を思ったり。
本当に狼のフンが出てくる事はないだろうが……ひょっとするかもしれない。だってクーだもの。

( ´_ゝ`)(まさか……な)

ほら、よくいるだろ?
「犬のフン」を隠喩するのに「かりんとう」という言葉を使うヤツ。
食欲失せるからマジ勘弁してほしいわ。マジで。かりんとうに失礼だっつーの。

川 ゚ -゚)「さあ受け取れ。ビックリマンチョコだ」

なんとビックリ。
中からはビックリマンチョコが出てきたじゃないか!
現金に換算すると約60円。100円玉1枚で買えるというローコストっぷり。

( ´_ゝ`)「わーい。ぜんぜん嬉しくねーや」

マジで。
ふざけんなっつーの。
しかも、それってオマケのシールがメインじゃねーかYO。

川 ゚ -゚)「うむ。喜んでもらえて何よりだ」

なんじゃらほい。

ダメだコイツ、早くなんとかしないと……。



352: ◆wUOiOOQQF. :07/15(日) 23:44 yQR8ccFQ0

从 ゚∀从「なぁクー。まだ終わらねーのかー?
     もうジャンプ読み終わっちまったんだけど」

クーとのやり取りに、高岡の退屈そうな声が割って入った。
どうやら、退屈しのぎにマンガを立ち読みしてて、それを読み終わったらしい。

つーか、おい。
周りにエロh……じゃなくて成人誌が落ちてるのは気にならんのか。
お前は女だからいいかもしれんが、その場にいるのが俺だったらどんな目で見られることやら。

( ´_ゝ`)「テニプリをあと10回ぐらい読めばよくね?」

从 ゚∀从「俺を舐めるな。もう10回は読んだわ、バカ」

( ´_ゝ`)「そっすか」

流石は高岡。
バカみたいな事を平然とやってのける。

まあ、別にシビれないしあこがれないからどうでもいいんだけど。

川 ゚ -゚)「なら帰るか? こちらの用事は済んだしな」

从 ゚∀从「よっしゃ。んじゃ、帰ろーぜ」



353: ◆wUOiOOQQF. :07/15(日) 23:45 yQR8ccFQ0

高岡はいざ帰らんと、出口に向かう。
兄者もそれに続いて、さっさと歩を進めてゆく。

そして、クーは。
店内を出ずに、その場に立ち尽くしていて。

川 ゚ -゚)「……ツン」

兄者達が店を出たのを確認すると、ツンに歩み寄り。

ξ゚听)ξ「んー? なーに?」

声を落とし、ツンになにかを耳打ちをして。

ξ*゚听)ξ「……べっ、別に嬉しくなんかないんだからねっ!」

ツンがお決まりのセリフをクーに言って。

川 ゚ -゚)b「まあ、とりあえず頑張れ」

「頑張れ」とだけ言い残して。
満足気な表情を浮かべて、兄者達の後を追うように歩いていった。



354: ◆wUOiOOQQF. :07/15(日) 23:45 yQR8ccFQ0

店先にて。
先にコンビニを出た兄者達から少し遅れて、クーが姿を現した。

( ´_ゝ`)「どうした、忘れ物でもしたか?」

それに気付き、兄者が声をかける。
何かを買ってきた訳でもなさそうだし、何か用事でもあったのだろうか、と。

川 ゚ -゚)「ちょっとした気配りさ。これでも女なんでね」

兄者の思考を読み取ったのか。
なんでもない些細な事だと言わんばかりに、あっさりと答えるクー。

( ´_ゝ`)「そうか……納得。性的な事情だな?」

流石は兄者。
どうやら、物事の捉え方が妙な方向に歪んでいるようで。

川 ゚ -゚)「OK。ハイン、コイツ縛り上げてくれ」

从 ゚∀从「おぉーう、なかなかマニアックなプレイじゃねーか」

川 ゚ -゚)「帰れ」



367: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:06 TL8ZDUuF0

クーが寄ってきて、私に耳打ちをする。

川 ゚ -゚)「私も女だ。ツンの心情は理解できない事もない」

なんだなんだ。
何を言い出すんだ、こののろし女は。

ξ゚听)ξ「……なによ、突然どうしたの?」

川 ゚ -゚)「だから、邪魔者はここらで撤収する事にする」

ああ、なるほど。
言葉ではなく心で理解できた気がする。

要は「空気読んでお前らをふたりっきりにしてやるZE☆」って事っぽい。

ξ*゚听)ξ「……べっ、別に嬉しくなんかないんだからねっ!」

とりあえずこれは言っとこう。
好意に応える為にも、消化不良防止の為にも。

川 ゚ -゚)b「まあ、とりあえず頑張れ」

クーはそう言うと、コンビニを後にした。

……そして、店内には私とブーンの2人だけが残された。



368: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:07 TL8ZDUuF0

……と、思ったら勘違いだった。
普通に人いるじゃねーか、しかも顔見知りが。

ξ;゚听)ξ(……って、私達以外にも人はいるじゃない!!)

ツンは困惑していた。
兄者達が出てしまったので、店内にいるのが変なメンバーである事に気付いて。

まったくもって「ふたりっきり」ではない。
その事に気付くまでに割と時間を要したが、そうれはどうでもいい。

ツンとブーン。
つーとフサのペアと、それにおちょくられているジョルジュ。
そして最後に、レジの残骸の下敷きになっている正体不明の存在(1)。

ξ゚听)ξ(まったく……クーったら、私に何をしろと言うのよ!?)

そもそも、クーが悪いんだ。
兄者達のうちの誰か1人でも居てくれれば、簡単に事が進むのに。

チョコを買うのも、渡すのも。
面と向かって真面目にするのは、どうも恥ずかしく、むず痒い。

それを。
何の緊張や抵抗もなく、いつもの悪ふざけの一環で済ませられたのに。

それなのに。
クーが妙な気を利かせて、私とブーンをふたりっきりにさせようとした。

……その結果、妙なメンバーだけが残ってしまい、さらに状態が悪くなってしまった。

ξ#゚听)ξ(なーにが「頑張れ」よ! 一体何を頑張れっていうのよ!?)



369: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:07 TL8ZDUuF0

( ^ω^)「……ツン? どうしたんだお、変な顔して」

ξ;゚听)ξ「ん!? い、いや! 別になんでもないわ!!」

しまった。
我ながら、なんという過剰反応。
色々考えていたせいか、ブーンが近くに居る事すら忘れてた。

ξ゚听)ξ「それよりさ、女に向かって“変な顔”なんて失礼じゃない!」

( ^ω^)「いや、あまりにもすごい顔をしてたから……」

余程ひどい表情だったのだろうか。
自分ではよく分からないが、ひょっとしたらそうだったかもしれない。

ξ゚听)ξ「すごい顔って……どんな?」

( ^ω^)「う〜ん……アレだお。“まいった”を選んだ時のマッギネスみたいな顔だお」

ξ゚听)ξ「マッギネス懐かしいわね」

もういいや。
マッギネスの顔なんて覚えてないし。
ここは怒る所なのかもしれないけど、どうでもいいや。



370: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:07 TL8ZDUuF0

……さて、どうしようか。

どうやって、ブーンにチョコを渡すか。
ジョルジュ御一行がいなければ、少しはマシなんだけどなぁ……。
いっその事、ここはチョコを買わずに帰って出直してしまおうかな。

ξ゚听)ξ(それはできるだけ避けたいわね……)

冷静になるんだ、ツン。
いつものクールな自分はどうしたんだ!

私は極めて良識的なキャラ。少なくとも自分の中では。
だから、普通に行動する上では何の差し支えもない筈だ。

……いや。

ここは、良識的だからこそ動きにくいのかもしれない。
兄者やクーだったら、どんなキテレツな行動でもまかり通る節があるし。

ξ゚听)ξ(なら、馬鹿を演じてみる? だけど……それこそ愚の骨頂!!)

ダメだダメだ!
こんな些細なサブイベントで、自分のキャラを壊してたまるもんか……!

ξ゚听)ξ(……そうだ! ブーンに聞いてみればいいんじゃない!)

そうだ、簡単な話だ。
困った時は1人で抱え込まず、仲間に相談すればいいんじゃあないかッ!



371: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:08 TL8ZDUuF0

ξ゚听)ξ「ねえ、ブーン。ちょっと聞いていい?」

手短に、かつ的確に。
自分の真意を悟られずに、必要な情報のみを聞き出すんだ!

( ^ω^)「んー、何だお?」

そして冷静に。
私はマッギネスじゃない。変な顔をしてはならない。

ξ゚听)ξ「私ってさ、良識的なキャラだよね?」

( ^ω^)「そりゃあ勘違いだお」

よし。
思ったとおりの答えが……って、あれ……?

なんだこれは!?
ここは「その通り」って、肯定の言葉が返ってくる筈なのに!

ξ;゚听)ξ「何よ! 私が変なヤツだって言いたいの!?」

( ^ω^)「そうだお。今現在の妙なテンションからして異常だお」

ξ;゚听)ξ「でも、でもでも! 普段はいたって普通でしょ!?」

( ^ω^)「兄者に能力を渡す話を読み返すといいお」

いつの話だよ。
そんな前の話、もうカケラほどにも覚えてないって。



372: ◆wUOiOOQQF. :07/17(火) 23:08 TL8ZDUuF0

……でも、なぜだろう。
心が軽くなったような気がしてくるのは。

このまま行けば、一気にカタをつけられてしまいそうだ。

でも。
私の理性が、それを止めようと躍起になっているような感じもする。

せめて、あと少し。
ほんのわずかの後押しがあれば、吹っ切れる事ができるかもしれない。

だから。

ξ゚听)ξ「……もう一度聞くわよ? 私は変なヤツなのね?」

ブーンに聞いてみた。

( ^ω^)「明らかに変だお。どう見ても変人にしか見えないお」

そして、この答えを待っていた。

ξ゚听)ξ「……そう、そうよね。どう考えても変よね」

ξ゚∀゚)ξ「あは、あははははは! だよねー、普通に変だよねー!!」

OK、リミッター解除。システムオールグリーン。

後は、どうとでもなる。
為せば成る、当たって砕けろ。粉砕玉砕大喝采よ!



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